国立大学法人・大学共同利用機関法人の改革推進状況(平成20年度)

平成21年11月6日
国立大学法人評価委員会

※ ここにあげる取組については、国立大学法人評価委員会が把握した各国立大学法人等(90 法人)の特色ある例をまとめたものであり、全法人が一律に行わなければならないと考えているものではない。
 各法人においては、特色を活かし、様々な取組を行っているところであり、過去に取り上げた取組については、具体的取組の一例を幅広く紹介する趣旨から基本的には取り上げないこととしている。

1.管理運営組織の改革と柔軟な資源配分の実施

管理運営組織の改革

 中期目標期間の5年目となる平成20年度においては、これまでの管理運営組織の在り方を検証し、管理運営組織の改革が進められてきており、管理運営コストの削減に向けて、管理運営組織のスリム化・効率化及び他大学等との共同実施等の取組を積極的に進めている法人も見受けられる。

1. 管理運営組織のスリム化・効率化

(具体的取組例)
○ 機能強化のため、大学教育センターを3部門から2部門へ再整備するとともに、共同研究開発センターとベンチャービジネスラボラトリーの統合を決定するなど、組織の再編整備を行っている。【茨城大学】

○ 業務組織の効率化のため、国際交流関係業務と留学生関係業務、事務情報化関係業務と情報基盤センターの支援業務をそれぞれ一元化し、運営組織のスリム化を図っている。【電気通信大学】

○ 全学及び部局の産学官連携問題委員会の見直しを行い、7部局の産学官連携問題委員会を廃止し、当該部局の教授会等での審議を行うことができるよう運営のスリム化を図っている。【大阪大学】

○ 城北地区4学部(法文・教育・理・工)の教務事務業務及び学生支援業務を集中化し、図書館1階に「学生サービスステーション」を設置して学生の利便性を高め、集中化に合わせた事務組織改編を行い、業務合理化を推進している。【愛媛大学】

2.他大学等との共同実施等の取組

(具体的取組例)
○ 事務の効率化・合理化の推進に向け道内各国立大学との協力により、研修や教員免許更新講習の共同実施を決定するなど、大学間の自主的な連携・協力を図っている。【室蘭工業大学】

○ 名古屋工業大学及び豊橋技術科学大学との連携による「愛知建築地震災害軽減システム研究協議会」を通じて、地震防災に関する共同研究プロジェクトを実施している。【名古屋大学】

○ 新潟大学と共同で設立した「国際・大学知財本部コンソーシアム(UCIP)」を中心に、様々な知的財産の国際展開を行い、海外に向かって事業を推進して国際的な産学連携活動を強化している。【山梨大学】

○ 鹿児島県内すべての大学、短大、高等専門学校、放送大学及び地方公共団体等が加盟し、大学地域コンソーシアム鹿児島を設立している。コンソーシアムでは、「職員研修」「産学官連携」等の部会を設置し連携体制を整備している。【鹿児島大学】

 大学・機構全体としての戦略に基づく法人内資源配分の実現

 各法人においては、学長・機構長のリーダーシップに基づき、それぞれの法人の特色に応じた資源配分が行われているとともに、その資源配分が適切かつ効果的に行われたかどうかを検証し、その結果を踏まえて見直しを行う仕組みの整備が進められている。

◆ 学長等の裁量の定員・人件費を設定している法人:83法人(92%)
【平成19年度:82法人(90%)、平成18年度:75法人(82%)、平成17年度:66 法人(69%)、平成16年度:64 法人(69%)】

◆ 法人内における資源配分が適切かつ効果的に行われたかどうかを検証する仕組みを整備している法人:90法人(100%)
【平成19年度:90法人(99%)、平成18年度:67法人(74%)、平成17年度:54法人(57%)】

(具体的取組例)
○ 教育研究基盤校費の配分に当たり、教育・研究・診療・社会貢献に関する活動状況について貢献度評価を行い、その結果に基づいて傾斜配分を行っている。【旭川医科大学】

○ 財務内容の改善によって捻出した財源の活用により、大学改革・改善推進経費、教育支援重点経費について対前年度比8億円を増額し、老朽化した施設の改修、省エネルギー対策、留学生支援、ティーチング・アシスタント(TA)・リサーチ・アシスタント(RA)経費等に充当している。【筑波大学】

○ 各部局の枠を超えた全学的な視点から教育研究の一層の充実発展を図るため、学内公募プロジェクト、学長発信プロジェクト及び学長プロジェクトの3つの制度を構築し、各プロジェクトの特色に応じた戦略的な配分を行っている。【東京芸術大学】

○ 機構長のリーダーシップの下、目的積立金を活用し、「機構長裁量経費」の大幅な増額(約3億7,700万円の増額)を図り、老朽化が著しく円滑な共同利用・共同観測の実施に支障を来している国立天文台45メートル電波望遠鏡の改修に着手するなど、各機関の喫緊の懸案事項に対し予算を措置している。【自然科学研究機構】

2.法人としての経営の活性化

業務運営の効率化及び合理化

 各法人においては、業務の積極的な見直しを図り、事務の一元化等の効率化、業務コストの分析等を通じて、業務運営の改善への取り組みを進め、業務運営コストの削減に努めている。 

(具体的取組例)
○ 契約事務の一元化、財務会計システムと連携させた旅費システムの導入、人事及び給与計算事務を一体化した人事・給与システムの導入を行い、業務運営の効率化を図っている。【宮城教育大学】

○ 「業務の効率化・合理化、サービス向上に向けた改善の課題と改善方策」について、各事務部の実務担当者から、改善課題に係る実情調査を実施し、改善すべき事項とした30事項のうち、各事務部での重複業務の見直しによる事務効率化等の26 事項について改善を実施している。【新潟大学】

○ 教育研究評議会、役員会及び事務連絡会においてパソコンを活用したペーパーレス会議を実施するなど、各会議において議事運営の円滑化を図っている。【北陸先端科学技術大学院大学】

○ 情報の一元管理と共有をコンセプトに、業務システムの構築指針を示し、「ワンライティング(重複入力の回避)」、「ワンストップサービス(同一端末による多様な事務処理)」を基本とし、情報処理業務の効率化を図っている。【鹿児島大学】

人事評価システムの構築

 教職員の個人業績評価システムについては、多くの法人で導入に向けた検討、試行が本格化するとともに、教育・研究・社会貢献・管理運営等、大学の特色に基づいた評価システムを構築し、評価を本格実施し、処遇へ反映する法人も増えてきている。

◆ 新たな個人業績評価システムを構築し、評価を本格実施して給与等処遇へ反映している法人:47法人(52%)
【平成19年度:32法人(35%)、平成18年度:17法人(19%)、平成17年度:9法人(9%)】  

(具体的取組例)
○ 教員については、各教員が入力する「教員の個人活動評価データベース」の内容に基づき評価を実施し、その評価結果を昇給等処遇に反映する仕組みを策定し、事務系職員については、昇給に係る勤務成績を判定することを目的とした「個人評価実施方針」を定め、それぞれ平成21年1月の昇給から反映している。【東京海洋大学】

○ 大学教員について、大学教員業績登録システム(エフォート)に登録した活動実績データを活用して人材評価を実施し、その結果を平成20年12月の勤勉手当から反映している。【上越教育大学】

財務内容の改善・充実

 財務諸表・財務指標の経年比較や同規模大学との比較等、財務分析結果を大学運営の改善に活用するとともに、各法人においては、その特色に則した様々な方法により、外部資金の獲得等による自己収入の増加や、経費の節減に努力しており、それぞれ一定の成果を上げてきている。また、全法人において部局等の自己収入増加のインセンティブ付与に関して特に予算配分に反映させる取組が行われている。

◆ 部局等の自己収入増加のインセンティブ付与に関して特に予算配分に反映させている法人:90法人(100%)
【平成19年度:90法人(99%)、平成18年度:83法人(91%)、平成17年度:59法人(62%)、成16年度:32法人(34%)】

1.財務分析結果の活用

(具体的取組例)
○ 中間決算、年度末決算、財務諸表等の財務情報を役員会に報告したほか、毎月合計残高試算表を作成し、外部資金の獲得状況、人件費等の執行状況、大学病院における病院収益及び診療経費状況等の財務データ分析を行い、その結果を月次報告により毎月の執行状況や病院運営等の改善に活用している。【北海道大学】

○ 財務分析結果の活用については四半期ごとに予算比較を行い、各組織の配分済み予算額に対する予算執行状況の分析を通じ、執行予定額等を把握し、部局間で資金を貸借して有効活用する「部局間貸借制度」の活用により、約1億4,700万円を寄宿舎整備経費に充当している。【広島大学】

○ 四半期ごとに大学運営費の収入支出、目的積立金の支出、外部資金の収入支出状況や部局ごとの予算執行状況等を検証し、平成21年度予算編成方針及び予算配分基準の算定に活用して、経営戦略を促進している。【高知大学】

2.外部資金の獲得

(具体的取組例)
○ 外部資金獲得に向けた説明会の開催、受入窓口体制の整備、各種産学連携イベントにおける広報活動、コーディネーターによる活動支援等により、受託研究、受託事業、共同研究、寄附金等の増加に努めた結果、外部資金比率は12.4%(対前年度比0.7%増)となっている。【東京海洋大学】

○ 公募情報の全教員に対する電子メールでの周知やウェブサイトへの掲載等申請支援体制の整備により外部資金の獲得に努め、受託研究及び寄付金(120 周年記念事業募金を除く)は平成19 年度に比べ、144%の増収となっている。この他、外部資金比率は1.1%(対前年度比0.2%増)となっている。【奈良教育大学】

○ 重点研究領域等への研究費配分の重点化の強化及び関西TLO と強固な連携の推進、研究テーマに関連付けた情報発信と申請支援等の取組により、外部資金は、2億8,077万7,000円(対前年度比6,179万8,000円増)となっている。【和歌山大学】

○ 株式会社長崎TLOと協働して、シーズ・ニーズ情報の共有化を図るとともに技術分野別に役割分担を進め、運用活動に重点を置いた結果、ライセンス契約数は17件(対前年度比3件増)、契約料は4,671万円(対前年度比3,773万円増)となっている。【長崎大学】

○ 国立天文台では、「天文学振興募金」を設立し、ウェブサイトからの寄附の申し込みや、クレジットカードでの寄附も可能とするなどの寄附金の受入れ体制の整備を進めている(231件、約1,009万円)。また、外国の大学との研究協力を前提に複数年にわたり多額の寄附金を受け入れる協定の締結等により、前年度に比べ約2億9,700万円増の寄附金を受け入れている。【自然科学研究機構】

3.コスト削減

(具体的取組例)
○ 経費節減実施計画に基づき、電話料の基本料金の見直しや公用車の削減・軽自動車への変更等の取組により、約3,102万円の節減を図っている。【静岡大学】

○ 光熱水料の経年比較、部局別実績一覧をウェブサイトに掲載するなどの取組により対前年度比で約2,500 万円削減、医薬品購入や患者食提供業務委託等の価格交渉落札方式による契約を見直したことにより約1億円を節減している。【九州大学】

○ 高効率の変圧器、省エネルギー機器の導入、エコガラスへの取替等を実施するとともに、集約管理による冷蔵庫台数の削減を図るなど、光熱水費の削減に向けた取組を推進した結果、対平成19年度比の使用量は、電気0.9%、ガス13.9%及び上下水道7.4%の減となっている。【九州工業大学】

○ 加速器施設の保守点検にあたり、冷却効率が低下する夏季(7、8月)に集中的に保守点検を実施することに加えて、電力需給が特に逼迫する指定日を電気設備定期点検日とすることにより、電力使用量が増大する夏季の運転を回避し、約4億1,958万円の経費を削減している。【高エネルギー加速器研究機構】

健全な財務運営のための定員・人件費管理の推進

 各法人が中期計画において総人件費改革を踏まえた人件費削減目標を定めており、この達成に向け、それぞれの法人の特色に応じた人件費削減に係る取組が着実に行われている。また、全法人において中期目標期間における人件費所要額を見通した人件費管理計画が策定されている。 

◆ 中期目標期間における人件費所要額を見通した人件費管理計画が策定されている法人:90法人(100%)
【平成19年度:91法人(100%)、平成18年度:63法人(69%)、平成17年度:21法人 (22%)】

(具体的取組例)
○ 非常勤講師手当額の見直し及び事務処理の簡素化・効率化を図る観点から、非常勤講師手当額の単価の決定方法を見直し、定額制に移行するなどの取組が行われている。【小樽商科大学】

○ 「人件費削減計画及び教員の戦略的配置について」を策定し、教員の管理方式を定員(ポスト)から人件費管理に変更することにより、戦略的かつ弾力的な運用が図れる体制を整えている。【静岡大学】

○ 多様な勤務形態が可能となるように特任教授制度を改正するとともに、外部資金で特命教授等の雇用ができる非常勤教員制度を整備し、重点プロジェクト研究等に特任教授、特命教授、特命助教を採用している。【香川大学】

施設・設備マネジメントの推進

 各法人において、教育研究の基盤となり、その活動を活性化させるための施設設備について、全学的視点に立った既存施設の有効活用、適切な維持管理、多様な整備手法による施設設備の充実等の施設マネジメント等の取組が進められている。また、全法人において共同利用スペースを確保している。 

◆ 共同利用スペースを確保している法人:90法人(100%)
【平成19年度:91法人(100%)、平成18年度:89法人 (98%)、平成17年度:83法人 (87%)、平成16年度:83法人(89%)】

(具体的取組例)
○ 札幌キャンパス内に、定期借地権(事業用)を利用した民間製薬会社による創薬基盤技術研究棟、産学連携施設として「北大ビジネス・スプリング」をオープンさせるなど新たな施設整備の手法により教育研究の整備充実に取り組んでいる。【北海道大学】

○ 建物状況調査に基づいた劣化防止度を判定するほか、緊急性・必要性・利用頻度・学習環境への効果及び部局の特殊性等を考慮した要望等を踏まえ点数化し、客観的・総合的に判断した施設の維持管理計画書を策定している。【千葉大学】

○ 配分した学長裁量スペースのさらなる有効活用を図るため、全学長裁量スペースに企画担当理事・副学長による立入調査を実施して、使用状況の確認を行い、一部のスペースの返還、再配分をしている。【東京工業大学】

省エネルギー対策・地球温暖化対策の推進

 環境保全対策については、省エネルギー意識の向上を促す法人や環境に関する取組について外部表彰を受ける法人があるなど、全学的な取組が進展している。 

(具体的取組例)
○ 東大サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)を総長直轄の本部組織として位置付け、実質的なCO2 削減への取組、「国内クレジット制度(国内排出削減量認証制度)」の採択による事業の展開等、環境負荷低減に向け積極的に取り組んでいる。【東京大学】

○ ペーパーレス会議によるゴミ減量の取組、プラスチックゴミの燃料化等を図った結果、名古屋市の「第2回エコ事業所特別賞」を受賞している。【名古屋工業大学】

○ エネルギー消費量、温室効果ガス(CO2)排出量を原単位ベースで毎年1%削減するための具体的な方策の一つとして創設した環境賦課金制度による賦課金を原資としてエネルギー消費効率向上のためのハードウェア改修を計画的に実施しているなど積極的に取り組んでいる。【京都大学】

○ エネルギー使用量の概ね0.5%に相当する額を省エネルギー対策に投資するための「省エネ推進経費(省エネファンド)」を創設し、機器の更新や取替えの際に、同経費を活用して、省エネルギー機器等の積極的な導入を図ることを可能としている。【高エネルギー加速器研究機構】

学術情報基盤の整備

 コンピュータ、ネットワーク、学術図書資料等の学術情報基盤の整備について、情報セキュリティ体制の構築等による全学的な整備に関する取組や、機関リポジトリ等の充実による、学術情報発信強化に関する取組が進められている。 

(具体的取組例)
○ 統一認証・統合基盤システムのポータルサイトから、シングルサインオンによる各種システムへのアクセスを可能としている。さらに、統一認証サーバーの二重化による増強及びメディアセンターの認証サーバーとの連携によるパスワードの一元化等についても検討を行い、今後導入予定の文書管理システム及びシンクライアント等への対応をも考慮した詳細設計を行っている。【東京農工大学】

○ 附属図書館のパソコンルーム利用者増に伴い、デザイン性に富む簡易型のパソコンデスクを設置し、学生の利用拡大を図っており、ラーニングコモンズとして、学生支援の充実に取り組んでいる。【お茶の水女子大学】

○ 「著者名解決ツール」を開発・公開し、「名古屋大学学術機関リポジトリ」と「教員プロフィール」、「蔵書検索」、「名大の授業」、「名大の研究」、「ReaD」をリンクさせており、特に、「教員プロフィール」と「名大の研究」との相互リンクを実現し、学術論文へのアクセスを容易にするよう取り組んでいる。【名古屋大学】

○ メディア基盤センターは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の導入のため、内部監査及び最高情報責任者(CIO)に対するマネジメントレビューの実施に基づき、ISMS の点検を行い、改善のための措置を進め、情報セキュリティ管理に関する国際規格「ISO/IEC 27001」の認証を取得している。【山口大学】

危機管理への対応

 全法人において、危機管理マニュアルの策定等、全学的・全機構的な危機管理体制が整備されている。

◆ 危機管理マニュアルを策定している法人:90法人(100%)
【平成19年度:91法人(100%)、平成18年度:90法人 (99%)、平成17年:75法人 (79%)】

(具体的取組例)
○ 3,000 名規模の全学一斉避難訓練を実施するとともに、地震災害時の食料等確保のため、大学生協と「災害時における食料等の提供に関する協定書」を締結するなど、災害対策に取り組んでいる。【埼玉大学】

○ 新型インフルエンザ対応マニュアル(第1版)を作成し、ウェブサイトへの掲載により周知を図るなど感染対策に取り組んでいる。【東京外国語大学】

○ 愛知県全体の不審者情報の連絡が入手できるシステム体制に加入したほか、附属学校の児童生徒の通学路の再点検を行い、地域の自治体等に働きかけ、防犯灯の設置を要請するなど、安全管理に取り組んでいる。【愛知教育大学】

○ 実験中の事故及び災害等が発生した際の対応等について、効果的に活用できるよう緊急時の連絡先、各種規程、マニュアル等を保管した危機管理ライブラリーを設置し、全学の状況を把握し適切な対応がとれるよう努めている。【神戸大学】

自己点検・評価及び第三者評価

 自己点検・評価、認証評価、国立大学法人評価(年度評価)及びその他の外部評価等の結果を活用し、教育研究等の充実を図っている。また、ウェブサイトの活用や大学独自のデータベースの構築等を通じて、評価作業の効率化に向けた取組も進められている。 

(具体的取組例)
○ 教員が一定の年齢に達する年度に、その前年までの6年間の貢献度実績・自己評価表を基に部局長評価及び学長評価(総合評価)を実施し、それら評価結果を対象教員に通知するとともに、個人評価及び大学評価の向上に取り組んでいる。【岐阜大学】

○ 中期目標・中期計画の進捗状況管理にとどまることなく、大学執行部が大学のパフォーマンスを把握し、戦略的な大学運営を行うためのシステムを開発するため、新たに情報工学及び経営工学の専門教員による開発チームを発足している。【名古屋工業大学】 

○ 独自に目標・計画データベース「進捗ナビ」を構築し、中期計画・年度計画の進捗状況管理、実績報告書作成作業等の効率化が図られ、関係教職員の実務負担が軽減されている。【滋賀医科大学】

○ 神戸大学情報データベース(KUID)を活用して、全学的な状況を俯瞰し、効率的にデータの収集、確認ができる環境を整備するとともに、評価作業のノウハウについて作業履歴を基にマニュアルを作成しており、平成21年度から評価実務担当を7名から5名に減員することとしている。【神戸大学】

3.社会に開かれた客観的な法人運営

外部有識者の積極的活用

 経営協議会の学外委員をはじめとする外部有識者を積極的に活用し、法人運営の一層の活性化を図る取組が進展している。また全法人において経営協議会からの意見を活用している。

◆ 経営協議会からの意見を活用している法人:90 法人(100%)
【平成19年度:91法人(100%)、平成18年度:89法人 (98%)、平成17年度:85法人 (89%)】

(具体的取組例)
○ 退職した教職員が、報酬を受けないで教育研究活動等を行うために登録する宇都宮大学人材支援バンクを整備し、非常勤講師等として採用している。【宇都宮大学】

○ 国際交流や広報戦略について提言・助言を求めるために、国際金融機関の責任者やインベスター・リレーションズ(IR)会社の元社長を顧問として委嘱するなど、外部有識者の積極的活用が行われている。【一橋大学】

○ 広報室の外部アドバイザーとして、学校長・企業役員等の学識者を委嘱し、社会からの幅広い意見を広報活動に活用している。【佐賀大学】

監査機能の充実

 監事や会計監査人による監査結果を適切に法人運営に反映させる取組が行われている。また、内部監査については、全ての法人において、事務局から独立した内部監査組織の設置など、監査対象組織からの独立性が確保された内部監査の実施体制が整備されている。 

◆ 独立性を担保した内部監査組織が整備されている法人:90法人(100%)
【平成19年度:91法人(100%)、平成18年度:81法人 (89%)、平成17年度:73法人 (77%)、平成16年度:49法人 (53%)】

(具体的取組例)
○ 監査室を事務局組織から切り離し、学長直轄の組織としての位置付けを明確にするとともに、監査室規則を新たに制定し、目的、業務内容、体制を明文化している。【北海道教育大学】

○ 監査室を「法人内部監査室」に名称変更するとともに、新たに研究費の不正使用防止を目的として「監査室」を設置して、内部監査体制の充実・強化を図っている。【弘前大学】

○ 法人監査室、会計監査人、監事の監査結果のデータベース化を行っている。【高知大学】

情報公開の促進

 社会に対する説明責任の観点から、各法人とも、教育研究等の状況について引き続き積極的な情報提供に努めている。

 (具体的取組例)
○ 民間企業等が経費負担し、共同制作による大学情報発信番組「ガンダイニング」を放送するなど、積極的に地域社会に情報発信を行っている。【岩手大学】

○ 「総研大ニューズレター」を新たに発行し、大学ウェブサイトに公開するとともに、全学生及び教職員に配信するなど、学外はもとより、各基盤機関にいる教員・学生等に対する広報にも取り組んでいる。【総合研究大学院大学】

○ 平成19年度に導入した「教員情報総合データベースシステム」についてWebアプリケーションベースで本格運用を開始し、情報の一元的な蓄積のほか、学内外への情報発信等にも効率的に利用している。【長岡技術科学大学】

○ 大学の講義等の情報をインターネットを通じ無償で公開する活動(オープンコースウェア)の充実を図り、150以上の講義ノートと360の映像コンテンツを公開し、アクセス数は200万アクセスを超えている。【京都大学】

4.教育・研究の活性化に向けた取組

 これまでに引き続き、各法人において、法人化のメリットを活かし、教育方法等の改善・充実や研究活動の活性化に向けた取組等が行われているほか、全国共同利用を通じた学術研究の推進や附属病院、附属学校における機能充実のための様々な取組が行われている。

教育方法等の改善

1.指導方法等の改善・充実に向けた取組

(具体的取組例)
○ 「履修指導員」制度の効果的な運用を図り、過去の履修指導の結果についてデータを蓄積するとともに、各教員が閲覧できるよう整備し、教員間の連携が可能となるなど改善に取り組んでいる。【小樽商科大学】

○ 数学力の不足する新入生にマンツーマンで大学院生のティーチング・アシスタント(TA)を配置し、数学リテラシー教育を実施しているほか、語学(英語)教育では効果的な指導を行う目的で、習熟度別クラス分けについて検討し、平成21年度から実施することを決定するなど、指導方法改善に向けた取組が行われている。【北見工業大学】

○ 幅広いリベラル・アーツ教育の効果を確実に高めるために、初年次教育プログラムの拡充に取り組み、駒場ローマ数字1キャンパス(教養学部)に初年次活動センターを設置し、サイエンスカフェ、相談事業、初年次活動に関する授業、教職員と学生との昼食会等の新しいプログラムを積極的に展開している。【東京大学】

○ 学部1年次に副専攻希望調査を実施し、履修抽選における配慮、共通教養副専攻科目の新設、副専攻科目「原子力・エネルギー安全工学」等の新設により副専攻制度の充実を図っている。【福井大学】

○ 「地域連携学校教育のできる教員養成」等の大学教育改革取組支援プログラム(GP)の取組を通じて、学士課程教育の充実と大学院教育との接続をテーマに、教育内容、方法の改善に努めている。【大阪教育大学】

○ 高校での未履修科目への対応や学生の多様なニーズに応えるため、学長裁量経費による「放送大学を活用した共通(教養)教育改善プログラム」を組織的に推進している。【山口大学】

2.個性・特色の明確化を図るための組織的な取組

(具体的取組例)
○ 社会的要請の強い分野の研究及び大学の特色を生かした文理融合的研究の推進を可能にし、自主的な研究活動の強化及び新しい教育研究分野の発展に資することを目的とし、これまでのプロジェクト研究における研究成果を基盤として、4つのプロジェクト研究所を設置している。【福島大学】

○ ものづくり技術者育成として、問題設定解決型学習法を取り入れた「フォーミュラーカー設計製作」等を正規課程に組み入れ、成果を上げている。【横浜国立大学】

○ 再編教務委員会を中心に、新教育課程の中核をなす、学部・大学院一貫教育システムの中で「基礎」と「専門」を繰り返す「らせん教育」を柱とした全課程にわたる基礎・専門科目に関する新カリキュラム案の編成を行っている。【豊橋技術科学大学】

○ 卒業生アンケートを基に「わかやま食文化論」、「わかやままちづくり実践論」、「和歌山県トップ企業経営論」といった“わかやま”をキーワードとした科目を開講することとしている。【和歌山大学】

○ 「瀬戸内研究講義群」を設け、特別主題「瀬戸内」、高学年向け主題科目「瀬戸内海の浅海環境」等の4講義を開設している。【香川大学】

学生支援の充実

1.学習支援等の充実

(具体的取組例)
○ 聴覚障害のある学生に対して、学生実習のために音量調節機能付補聴器の貸与やパソコンテイク(教員の声やその場の音などの情報をIPtalk を使用してパソコンに入力し、2台のパソコンにより連携して文章を表示すること)による就学支援を行っている。【群馬大学】 

○ 新学務情報システムの本格稼働を開始し、ウェブサイトで、履修登録、成績確認の他、単位修得情報、卒業・進級判定情報、カリキュラム、シラバス、学務情報(休講、呼び出し、連絡)等を学生の登録メールアドレスに配信している。【静岡大学】 

○ 国際学術交流奨励事業制度による優れた大学院学生(25名)の海外派遣の実施や、学術奨励賞奨学金制度により特に優れた大学院学生(200名)へ年額30万円を継続給付するなど、大学院博士後期課程学生の支援に取り組んでいる。【名古屋大学】

○ 民間奨学団体の新たな推薦枠を開拓し、平成20年度に2つの奨学団体から奨学金を受給している。また、新たに民間株式会社からの寄附金を基金として、現職教員の学生を対象とした教員育成研究奨学金事業を開始している。【兵庫教育大学】

○ 「ぴあルーム」を設置し、就学に問題や不安のある学生に対し、総合的な相談に当たっている。【大分大学】

2.就職支援、キャリア教育等の充実

(具体的取組例)
○ 聴覚障害者の就労環境の改善及び最新のテクノロジーを活用した情報保障をテーマとしたシンポジウムを開催している。【筑波技術大学】

○ 採用内定取消等を受けた学生に対して、キャリアカウンセリングを行い、新たな就職活動を支援するなど、学生の不安に直ちに対応できるよう、24時間対応の特別相談電話を設置している。【新潟大学】

○ 就職支援のさらなる強化を図るため、学生支援センター就職専門部会を拡充整備し既卒者を含む学生の進路指導及び就職支援について、総合的に企画、立案、実施する「キャリアサポートディビジョン」を設置している。【京都工芸繊維大学】

○ 新入生の進路・職業選択に関する意識調査、卒業・修了予定者の進路選択・就職内定状況等に関する実態調査を実施し、その分析結果を平成19年度に実施したアンケート分析結果と併せて、総合的・体系的なキャリア支援策の企画・運営に反映させている。【広島大学】

研究活動の推進

1.資源の重点配分による研究活動の活性化に向けた取組

(具体的取組例)
○ 総長主導の重点配分経費を活用して、全学教育、学部専門教育及び大学院教育の充実等を目指した教育改革促進事業を学内公募により支援しており、これらの取組の中から外部の競争的経費等の採択につながるなど効果が現れている。【北海道大学】

○ 地域的な特色を持つ「環日本海における学際的環境科学の推進」プロジェクトを理工・医薬で学際的に推進している。【富山大学】

○ 特色ある教育研究活動を支援するため、滋賀大学教育研究プロジェクトセンターとして、「重点教育」、「重点研究」、「萌芽的教育」、「萌芽的研究」のプロジェクトを採択し、研究活動の一層の推進を図っている。【滋賀大学】

○ 未来医療の確立を目指す基礎研究と大学病院及び産業界と連携して先端医療の実用化を目指す開発研究を推進するため、「ゲノム機能研究センター」を改組し「疾患ゲノム研究センター」を設立している。【徳島大学】

2.女性教員・若手教員等に対する支援

(具体的取組例)
○ 「女性研究者支援モデル育成」事業により、研究環境の整備や意識改革等、女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みの導入を進めている。【東北大学】

○ 萌芽的研究を活性化するため、若手教員の独創的・萌芽的研究成果を検証する「東工大挑戦的研究賞」の要項を改定し、受賞者数の上限を上げており、平成20年度は10名を表彰し、総額2,417万円の研究費の重点配分を行っている。【東京工業大学】

○ 若手教員(40歳以下)支援のため一般の研究プロジェクトとは別枠で学内公募を行い、学長等によるヒアリングにより優れた研究に経費を配分している。【浜松医科大学】

○ 若手教員の自律的な研究テーマや融合領域研究について学内募集を行い支援するなど、研究推進のための戦略的な取組が行われている。【奈良先端科学技術大学院大学】

○ リサーチ・アシスタント(RA)雇用の促進、博士論文提出可能な者を対象としたRA採用、博士研究員制度による若手教員の育成等、若手女性教員等に対する研究支援と研究者育成を行っている。【奈良女子大学】

3.柔軟な研究実施体制の整備

(具体的取組例)
○ 「大学院教育改革プログラム」を実施し、急速に変化する食の安全に関する国際状況を的確に把握・理解し、食の安全確保のための「国際標準」に適切かつ迅速に対応できる人材育成を目指している。【帯広畜産大学】

○ 研究支援及び国際交流に関するセクションに、研究助成分野での経験が豊富で英語力堪能なスタッフを国際交流基金から人事交流で受け入れ、長として配置するとともに、新たにアジア科学教育経済発展機構(Asia SEED)の勤務を経験した英語力堪能なスタッフを採用し、国際共同研究プロジェクトのコーディネートを行うなど、研究支援スタッフの強化・充実を図っている。【政策研究大学院大学】

○ 観測所「能登スーパーサイト」を設置し、黄砂が環境や人体に及ぼす影響解明のための先端的な観測研究を開始している。【金沢大学】

○ 教員組織について、講座制を廃止し、学問領域に応じた4つの教育部(基礎・臨床系、人文・社会系、自然・生活系、芸術・健康系)に改組し、教育研究活動を柔軟かつ弾力的に実施できる体制としている。【鳴門教育大学】

全国共同利用の推進

※ 全国共同利用とは、大学共同利用機関及び国立大学の附置研究所等において、所有する大型研究設備や資料・データを全国の研究者の共同利用に供し、または共同研究や研究会を組織することにより、大学の枠を超えた当該分野の研究を効果的かつ効率的に推進することを目的とした我が国独自のシステムである。(平成20年度現在、4大学共同利用機関法人・16大学共同利用機関、19国立大学49附置研究所・研究施設において実施。) 

1.全国共同利用を通じた学術研究の推進

(具体的取組例)
○ 計算科学研究センターは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。東京大学・京都大学と共同仕様策定したスーパーコンピュータ「T2K-tsukuba」の稼動を開始し、学際共同利用プログラムの下で全国共同利用を開始している。また、計8件のシンポジウム等を開催し、稼動予定のスーパーコンピュータの有効活用に向けた運用体制・利用方法・研究展開等について情報提供を行っている。【筑波大学】

○ 原子炉実験所では、固定磁場強集束型(FFAG)加速器と京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)との結合に成功し、世界初の加速器駆動未臨界炉実験を開始している。【京都大学】

○ 蛋白質研究所では、日本蛋白質構造データバンク(PDBj)を管理・運営し、蛋白質の立体構造情報のデータベース化を推進しており、平成20年度は新たに世界全体の28%(1,993件)のデータ登録を行っており、ウェブサイトから取得されるデータ件数は1,891万3,247件(対前年度比1,781万4,716件増)となっている。【大阪大学】

○ 乾燥地研究センターでは、グローバルCOEプログラムの中で、国際乾燥地農業研究センター(シリア)との間で共同研究を開始している。さらに、中国科学院水土保持研究所等との連携を強化し、現地研究の質的向上を図るとともに、砂漠研究所(米国)との間では、共同研究に向けた協議を行うなど、乾燥地科学分野の研究を推進している。【鳥取大学】

○ 日本DNAデータバンク(DDBJ)では、150億塩基対増の1,018億塩基対のDNA 配列情報を格納し、月20 万件のアクセスを得るなど、利用数が拡大している。また、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)では、情報センターとして生物資源データベースを21生物種43種に拡大し公開するとともに、ストックセンター活動として、5生物種の中核機関・分担機関として、国内外に向けて活発なリソースの配布活動を行っている。【情報・システム研究機構】

2.全国共同利用の体制の整備・充実

(具体的取組例)
○ サイバーサイエンスセンターでは、次世代高性能計算基盤構築に向けてグリッドコンピューティングに関する研究開発に取り組み、大阪大学との計算資源の協調動作に成功し、スパコン資源の利用効率や利用者の利便性の向上を図っている。また、利用者講習会を年間14回開催(受講者196名)し、秋田大学への遠隔地配信(試行)、テクニカルアシスタントにおける利用相談(329件)や学外3大学に利用相談室を5か所設置するなど、遠隔地の利用者のニーズに応えている。【東北大学】

○ 情報基盤センターにおいて実施している「先端的大規模計算シミュレーションプログラム利用サービス」では、延べ33件の民間企業ユーザーがスーパーコンピューターを利用しており、採択企業と定期的にミーティングを行うことで企業側の意見の把握に努めるなど、共同利用施設である7大学のセンターとも協力して支援を行っている。【東京大学】

○ 生存圏研究所および生態学研究センターでは、樹木を含む様々な植物の生長制御、植物と共生微生物との相互作用、ストレス耐性など植物の生理機能の解析を行うとともに、植物の分子育種を通じ、有用生物資源の開発を行う研究設備である「持続可能生存圏開拓診断(DASH)システム」を設置し、全国共同利用を開始している。【京都大学】

○ レーザーエネルギー学研究センターでは、高速点火実証実験(FIREX-1プロジェクト)等の推進を目指し、世界最高出力のLFEX レーザーを完成させている。また、特定非営利活動法人レーザー技術推進センターの協力を得て2シフト制を導入し、稼働時間の延長(18時以降)が図られ、激光12号レーザーのショット数が649 ショット(対前年度比14%増)となっている。【大阪大学】

○ 地球物質科学研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。平成20年度から博士号取得者で、センターにおける研究内容を理解し、機器の管理、基本的な分析・実験の指導に関し優れた見識を有する者を「スーパーテクニシャン」として採用し、教員、共同研究者、学生等の研究活動や技術的支援を行う体制を導入している。【岡山大学】

○ 各機関が有する研究資源を共有化し、有効活用するために進めている「研究資源共有化推進事業」において、各機関のデータベースを横断検索できる「統合検索システム」及び研究者自らがデータベースを作成・検索できる「nihuONEシステム」を公開している。また、「時空間データ検索・分析システム」については、開発成果の一部を「統合検索システム」のインターフェースに組み込み、機能拡充を図っている。【人間文化研究機構】

○ 分子科学研究所が中心となって各大学が所有する研究設備の相互利用・共同利用を行う「化学系研究設備有効活用ネットワーク」の登録利用者数は、72機関5,600名となり、登録設備は197台となっている。また、インターネットを活用した設備の利用予約・利用料課金ソフトの大幅なアップグレードを実施している。【自然科学研究機構】

3.全国共同利用を活かした人材養成

(具体的取組例)
○ アジア・アフリカ言語文化研究所では、「中東イスラーム研究教育プロジェクト」により、中東・イスラーム教育セミナー、中東・イスラーム研究セミナー、オスマン文書セミナーを実施するとともに、ベイルートに設置している中東研究日本センターにおいて、公募による日本人若手研究者が研究発表を行うなど、諸大学に開かれた研究者の養成を行っている。【東京外国語大学】

○ 応用セラミックス研究所では、共同利用・共同研究の採択において、企業研究者等を大学の研究者と同等に受け入れている(平成20年度受入:16名)。また、CPD 制度に基づくコンクリート診断士資格取得等社会人の人材養成に協力している。【東京工業大学】

○ 加速器科学に関連する分野の発展を図るための大学等に対する活動支援として、大学等連携支援事業の公募を実施し、19大学36件の加速器科学分野事業の連携支援を行い、大学の学部専門科目の開講や施設見学等を通じて、高エネルギー加速器実験と物質科学・生命科学・医療分野での加速器の利用等について系統的な知識を提供している。【高エネルギー加速器研究機構】

4.研究者等に対する情報提供

(具体的取組例)
○ 空間情報科学研究センターでは、寄付研究部門を中心にロボットやマーケティング、高度道路交通システム(ITS)、電子政府等、異分野交流シンポジウムを2か月に一度開催したことにより、民間・公共部門の参加者が増加し、直接的な対話・意見交換を通じて、共同研究や人材育成支援、新たな研究課題の発掘・深化等を進めている。【東京大学】

○ アジア・アフリカ言語文化研究所では、広報誌「Field+」の対象を広く一般まで拡大するなど、フィールドサイエンスの拠点としての研究活動の広報に重点を置いた内容に刷新している。【東京外国語大学】

○ 情報連携基盤センターは、大学博物館に「計算機シミュレーションで解き明かされる世界」を展示し、スーパーコンピュータの活用成果を公開している。【名古屋大学】

○ 源氏物語一千年紀にちなみ「源氏物語の魅力」をテーマに国際シンポジウムを開催している(参加者462名)。また、「千年紀の源氏物語」をテーマに5回の連続講演を開催している。【人間文化研究機構】

社会連携・地域貢献・国際交流等の推進

1.地域貢献の推進

(具体的取組例)
○ 「秋田学」や「白神学」といった地域に密着した研究を進め、学内外との連携を行ってその研究成果を地域に還元しているほか、中学校、高等学校等と連携した理工系人材の育成に取り組む事業等を行っている。【秋田大学】

○ 千葉県との連携包括協定に基づき、職員研修会の開催や共同研究等を行うとともに、千葉県の観光振興にも協力している。【千葉大学】

○ 「宗像市元気な島づくり事業」として、留学生を含む学生が地島(じのしま)の行事に参加し、島に国際交流等の機会を提供するとともに、学生を派遣して子どもに学習指導を行う「出前塾」を行うなど地域貢献活動に取り組んでいる。【福岡教育大学】

○ NIFSスポーツクラブ(4種目、16事業、会員350名)をはじめ、スポーツボランティアを積極的に展開し、地域社会に貢献している。【鹿屋体育大学】

○ 沖縄市に「琉球大学司法センター」を設置し、沖縄固有の基地問題等に対応した法律相談を実施している。【琉球大学】

2.産学連携・知的財産戦略のための体制の整備・推進

(具体的取組例)
○ 「米国特許セミナー(基礎編)」、「国際共同研究契約実務セミナー」の開催、中国深圳ハイテクフェア、サンフランシスコ・ベイエリア大学間連携ネットワーク(JUNBA)(米国)、BioSquare(フランス)への出展による研究シーズの国際展開、新潟県内企業の海外進出状況調査等の事業により国際的な技術移転の促進に取り組んでいる。【新潟大学】

○ 「信州産学官連携機構」を設置し、「ナノテク・材料、IT」、「ライフサイエンス」、「地域ブランド」の3分野において産学連携活動の推進や知的財産等管理の連携・充実を図っている。【信州大学】

○ iPS細胞研究に係る発明の円滑かつ適切な管理・運用と、その事業化を通じた研究成果の社会還元等の推進を図るため、有限責任中間法人及び株式会社を設立し、強固な知的財産リスク対策等の諸課題に対応する具体的な事業を進めている。【京都大学】

○ 「ナノバイオExpo2009」に、プロジェクト研究推進機構「S-匠ナノメディシンプロジェクト」の「酸化亜鉛ナノ粒子を用いた蛍光標識剤」等5つの研究テーマについて展示を行うなど、研究成果を社会へ普及する取組を行っている。【島根大学】

○ 研究推進産学官連携機構を部局化するとともに、産学官融合センター、新技術研究センター及び社会連携センターを同機構に一元化している。また、「JSTイノベーションブランチ岡山」が開設され、津島キャンパス内に独立行政法人中小企業基盤整備機構の事業により「岡山大インキュベータ」が設置されるなど、外部機関との連携を一層強化している。【岡山大学】

○ 知的財産室において「利益相反マネジメントポリシー」を制定したほか、四国地域の活性化を目指すため「四国力協創産学官共同体構想」に参画し産学連携を進めるなど、共同研究の推進に取り組んでいる。【鳴門教育大学】

3.国際交流、国際貢献の推進

(具体的取組例)
○ ユネスコ・スクールに加盟が承認されたほか、「ユネスコ・スクールの集い」を開催し、宮城教育大学が中心となって他の7大学と「ユネスコ・スクール支援大学間ネットワーク」を設立している。【宮城教育大学】

○ 「歯と骨の分子疾患科学の国際教育研究拠点」として、国際的に活躍する研究者をチューターとして招へいしたほか、国際シンポジウム、国際ディベート・リトリート等を実施し、国際的な研究拠点形成及び若手研究者の育成等の取組を推進している。【東京医科歯科大学】

○ 海外拠点を活用して、国際大学院等へ入学希望の学生に対して、募集案内及び留学説明会を実施しているほか、非営利研究機関バテル記念研究所(米国)と連携を進める一方、国際的共同研究の創出に尽力し、16件の国際共同研究の実績を上げている。【東京工業大学】

○ 大学院教育の国際化を目指し、国際共同修士プログラムを欧州5大学と共同開発・実施、韓国及びオーストラリアの大学とINU ダブルディグリープログラムを開始している。【広島大学】

○ 黒潮圏科学の創成を目指して、ビコール大学(フィリピン)に高知大学初の国際共同オフィスを開設して常駐スタッフを置き、共同研究のサポートと大学間の緊密な連絡に当たっている。【高知大学】

附属学校の機能の充実

(具体的取組例)
○ 附属4校園の新たな連携の取組として、「KeCoFuプロジェクト(Key Competency of Fukushima・Fuzoku project)」を組織し、子どもの学びを幼・小・中をとおした長いスパンで捉え、そのための授業づくりなどの研究を推進している。その中で新たに「カリキュラム開発室」を開設し、大学教員と共同で研究交流を図り、幼・小・中一貫カリキュラムの作成等新たなカリキュラム開発を進めている。【福島大学】

○ 附属学校委員会では、「音声言語を土台にした小学校における英語リテラシー・カリキュラムの開発」や「音楽の基礎的な能力、表現力を育てる小学校音楽科学習指導のあり方」等のカリキュラム開発や学習指導法に関する28 件の連携研究が展開されている。【千葉大学】

○ 「学校教育実践研究1-4 」等において、学生を附属学校園に派遣し、日常的に教育補助者として教育実践を体験することにより、教職への関心・自覚と教育力の向上を目指す機会を設けるなど、現場対応実践力の向上を図る取組を進めている。【静岡大学】

○ 文部科学省研究開発学校の指定事業において、地域の「子育て支援プログラム」との連携を推進し、地域における保護者支援に貢献しながら「親育ちの評価システム」を作成、検証と提言を行っている。また、同省委託事業「小学校における英語活動等国際理解活動推進事業」では大学教員と附属小学校教員のほか、地域の教育委員会と連携した実践的な共同研究を実施している。【兵庫教育大学】

○ 文化教育学部・附属学校共同研究実施要領により、文化教育学部及び附属学校園の教員からなる組織的な共同研究の推進体制を整え、学術論文の発表(9件)、学会及び研究会での発表(96件)、学部の教員及び学生が実施する調査研究への実施協力(76件)を行っている。【佐賀大学】

附属病院機能の充実・強化

1.教育・研究面

(具体的取組例)
○ 医師減少の著しい小児科、産婦人科、救急医学、外科の医師養成のために、3年間の学費免除等を盛り込んだ、学部教育から卒後研修・専門医研修まで一貫した医師養成コースを新設している。【山形大学】

○ 茨城県厚生農業協同組合連合会との緊密な連携と協力、地域医療の向上を目的とした水戸地域医療教育センターを設置する協定を締結している。【筑波大学】

○ 看護師の安定的な確保を図る目的で、教育研修センター等が中心となり、看護師復帰支援プログラムを開発して復帰支援講習会を開催するなど魅力あるプログラム提供している。【信州大学】

○ 世界初のMR 対応内視鏡やMR対応ロボット等の新しい技術を開発し、臨床例への応用を行っている。【滋賀医科大学】

2.診療面

(具体的取組例)
○ 短時間勤務制度を医師にも適用させ、医師14名(うち女性12名)が利用しており、また、時間外特別料金の徴収を開始して、医師が重症患者の診療に集中できるように負担軽減化を図っている。【山形大学】

○ 移植医療については、心肺同時移植の一例目を実施するとともに、国内で最も多い脳死臓器移植を実施するなど、大学病院として高度な医療提供の役割を担っている。【大阪大学】

○ 重症熱傷、多発外傷等、重症患者救急病棟の稼働率も130%を超える状況で、重篤な事例の入院治療を多く実施しており、また、岡山市消防防災ヘリコプターによるピックアップ方式による現場への出動(14例)等、地域救急医療に貢献している。【岡山大学】

○ 緊急被ばく医療推進センターを中心に、各地域で開催された被ばく関連の協議会・講習会等へ講師を派遣、また、救急被ばく医療セミナーを開催するなど、我が国の緊急被ばく医療体制の確立に大きく貢献している。【広島大学】

○ 医療の質を可視化するため、「診療の質指標(クオリティ・インディケーター)」の測定と公表を行うために診療情報管理室を設置、併せてがん手術後の治療成績フォローアップシステム化も進行させている。【高知大学】

3.運営面

(具体的取組例)
○ 社会との情報交流窓口として「パブリック・リレーションセンター」を設置し、広報体制を強化・推進した結果、平成20年度は約400件の取材申込が入っている。【東京大学】

○ 病院情報の開示を進め、診療科ごとに手術実績を公開、最新治療法の紹介など、患者が求める情報を豊富に掲載し、病院ウェブサイトの充実に努めている。【富山大学】

○ 地域連携と地域医療を強化するため、愛知県地域医療推進会議の下の「公的病院再編ネットワーク化有識者会議」を主宰し、県内病院への医師配置計画を取りまとめ、愛知県知事に答申している。【名古屋大学】

○ 全国の大学病院としては初めて、医員及び研修医に対して年俸制を導入し、常勤化と医員のパート勤務を実現するなど処遇改善を図っている。【島根大学】

○ 経営基本戦略を定めて、病院長による診療現場ラウンド、効率的な病床運用、ホットライン(通称:UPライン)の設置等、種々の方策を行い、病床稼働率90%以上を推進している。【熊本大学】

○ 鹿児島市内の中学生を対象に「キッズ外科手術体験セミナー」を開催し、大学病院への親しみや医療への理解を深めてもらう取組を行っている。【鹿児島大学】

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)