資料2‐1 大学共同利用機関法人の特性を踏まえた財務分析のあり方(素案)

1.財務分析のあり方

 財務諸表等における財務データは、教職員数などの定量的データや年度計画における業務目標などの定性的データと組み合わせることなどにより、法人の財政状態及び運営状況についてより客観的かつ具体的に把握することが可能となる。
 財務データとその他の組み合わせによる数値データなどに基づき財務分析を行うことにより、大学共同利用機関法人が現状を的確に把握し、財政状態等の改善に資するため活用するとともに、国民その他の利害関係者に対する説明責任を担保し、また、評価の観点から参考資料として活用することなどが可能と考えられる。

2.財務分析結果の活用(例)

(1)大学共同利用機関法人における活用

 大学共同利用機関法人が、財政状態等を把握し、自らの改善に資するため、管理会計的な観点から財務分析結果を活用することが考えられる。
 大学共同利用機関法人は、年度計画の財務面からの実施状況について確認し、改善への計画立案に際しての具体的な数値目標を策定することが可能となる。
 また、財務分析結果を活用することにより、国民その他の利害関係者に対し財政状態等について説明責任を果たすことが可能となる。

(2)国民その他の利害関係者による活用

 財務諸表及び財務分析結果が公表されることにより、研究者、大学院生、納入業者、銀行等の資金の出し手、高等教育を研究対象とする研究者、国、納税者たる国民などの大学共同利用機関法人の利害関係者が、それぞれの立場で必要な財務情報を把握することが可能となる。

(3)国立大学法人評価委員会による活用

 財務諸表や財務分析結果により、財務会計面から法人の業務活動の実態が把握可能となるため、年度評価及び中期目標評価のための参考資料として活用が可能となる。
 また、年度評価における「各年度終了時の評価を踏まえた法人全体の状況把握について」等(国立大学法人法人評価委員会総会資料 平成17年4月26日(参考1))の参考資料として活用が可能となる。

(4)文部科学省による活用

 文部科学省は、国民その他の利害関係者に対し、財務諸表の公表に合わせて財務分析結果を説明することにより、個々の大学共同利用機関法人のみならず大学共同利用機関法人全体の財政状態について説明責任を果たすことが可能となる。

3.財務分析に活用する指標

(1)基本的考え方

 財務分析にあたっては、民間企業、国立大学法人及び私立学校における財務指標のうち、大学共同利用機関法人に適用可能なものを活用することが考えられる。
 また、国立大学法人等業務実施コスト計算書や大学共同利用機関法人等に固有の附属明細書などの民間企業等には無い財務データ、教職員数などの定量的データを活用し、大学共同利用機関法人独自の財務指標を設定・活用することが考えられる。

(2)財務指標の設定に係る留意点

 財務指標の設定にあたっては、私立学校の財務指標が一定の有意性を有することなどから、私立学校の財務指標を可能な限り活用しつつ、一方で、私立学校は、学生納付金収入等に依存する独立採算により運営を行っていることなど、国立大学法人とは財務分析における前提が相違していることに留意する必要があると考えられる(参考2)。
 国立大学法人の財務分析においては、学生収容定員を基礎とする類型別分析を行うが、大学共同利用機関法人においては、このような分析は意味をなさないことに留意する必要がある。

4.財務分析に係る検討

(1)財政構造等及び保有資産

 大学共同利用機関法人は、設置者が国であり、基本的に利益の獲得を予定しておらず、利益の測定に重要性は相対的に乏しいこと、収益に占める国からの財源措置が相当程度であること、施設整備については、原則国が財源措置を行うなど、私立学校やその他の主体とは前提が相違している。 また、大学共同利用機関法人間において、施設・設備の状況及び研究機関の機能・形態が異なることなどにより、収支構造に有意の差が見られる。
 また、大学共同利用機関法人においては、国からの現物出資が資本金を構成しているが、基本的に国の時代に使用していた財産等を出資されており、大学共同利用機関法人間において保有資産の額に有意の差が見られる(参考3)。これには、大学共同利用機関の当該分野の特性による施設・設備の規模や研究機関の機能・形態等の相違によるもの、また、主たる所在地が都市か地方かによる地価の差によるものがある。
 これらの留意点に基づき、大学共同利用機関法人に対する財務分析結果について、各法人の財務諸表等のデータから分析を行い、実態を明らかにし、法人の経営内容を評価するため、国立大学法人における財務指標のうち適用可能な指標、さらに大学共同利用機関法人の特性に応じ指標を用いることも考えられる。

(2)財務分析の手法等

 一般的な財務分析の手法を大学共同利用機関法人に当てはめると、1.期間比較、2.目標(予算)と比較することが想定されるが、平成16年度決算については、1.期間比較を行うことが出来ないことに留意が必要である。
 効率性や収益性などの一般的な財務分析の観点から財務分析を行おうとする場合は、財務分析の観点に係る財務指標には、大学共同利用機関法人の裁量によらないものも多数あることに十分留意が必要と考えられる。
 また、財務分析結果を評価に活用することも考えられるが、基本的に評価の参考資料に止まると考えられる。

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