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 第32回科学技術会議総合計画部会議事録
(平成12年  第5回) 

  1. 日  時:平成12年7月12日(水)  10:00〜12:30 

  2. 場  所:東海大学校友会館「望星の間」 

  3. 出席者:

    (委  員)井村部会長、石塚議員、熊谷議員、吉川議員、佐野議員、前田議員、阿部委員、
              池上委員、猪瀬委員、大矧O儖・¬畋式儖・⊂・喟吃О儖・⊂・嗟杪析紺儖・「
              篠沢委員、寺田委員、鳥井委員、鳥居委員、中村委員、野依委員、堀場委員、前野委員
    (事務局)科技庁:間宮科学技術政策局長、上杉科学技術基本計画室長、
              倉持同室長代理  他
              文部省:遠藤学術国際局長、井上大臣官房審議官  他 

  4. 議  題 

    (1)科学技術基本計画に関する議論の整理について 

      事務局より平成13年度科学技術振興に関する重点指針について紹介した後、資料1について説明。 

    【科学技術の振興により目指すべき国の姿】 

    • 「はじめに」に科学技術基本計画そのものの説明がなされているが、ここでは当期計画の方針も述べられるべきで、(1)の最終段落「21世紀は単なる20世紀の延長ではない・・・」に記載されている21世紀の展望を踏まえた今期の方針の理念を最初に示すべきではないか。 

    • 今後、最終的な計画を作成するときに反映させたい。 

    • ITに関し、将来的な見通しについての記載はいいが、情報技術は現在の問題を解決する一つの手段。これを最初に指摘したのが米国のゴア・クリントンであるが、将来の話になると話が発散してしまうので、今どのような問題があるのかについて明記すべき。 

    • 1.は分かり易く良くまとまっている。しかし、研究システムの所を見るとこれでいいのかという印象を受ける。基本計画は社会にこれから何をするのかということを理解してもらうためのもの。1.は日本全体の科学技術計画になっているが、それ以外は社会との関係が希薄であり利害関係者の我田引水の計画になってしまっている。これまでの指摘が生きていない。 

    • 2.以降については、後ほど具体的に指摘して欲しい。 

    • 1.の目指すべき国の姿は旨く描かれているが、個々の目標のための達成手段はそれぞれ異なる。1)の「知識の創造と活用により世界に貢献できる国」について重要なのはピークの形成であろうし、2)3)は別の戦略が必要。目標毎にその戦略を記載する必要があるのではないか。 

    • 資料1について、これは今日発表するためのものか、議論のためのメモか、どのような取り扱いとなるのか。 

    • これを骨子とし本文をまとめたい。発表までには、クリアーしなければならない手順がいくつもある。 

    • この会議の公開制の問題も関わるが、この資料は委員限りか。 

    • そうである(この会議及び資料はオープンであるが、本紙はとりあえず委員により議論をいただくためのもの)。 

    • 第2項で、高齢化社会をいきなり疾病と結びつけるのはどうか。「かつて経験したことのない高齢化社会を迎えるにあたり、高齢者が経験と技術を活かして働ける社会環境作りが大切。そのためには・・・」と表現されては如何か。 

    • 本資料はメモかも知れないが、中間取りまとめ的に表に出せる形にすべき。また、先ほど委員から指摘があった目指すべき国の姿1)〜3)については、個々にバラバラにプライオリティをつけるのではなく、三つのバランスをとって連携しながら進めることが重要。 

    • その通り。国として軽重つけることなく重点事項として実行するものである。 

    • 資料の公表について、あくまで現地点でのものであり作成途上のものとの位置づけである。 

    【科学技術振興にあたっての基本的方針】 

    • 科学技術振興の方針を考える際、どう社会に活かすかを明記すべき。ここでは産業技術への転換についてしか記載していない。国民の知的喜び等、視点として抜けている部分がある。情報発信等をどう生かせば三つの目標が達成できるかというところを書くべき。 

    • 今の発言の通り、国民に対するリターンを明記すべき。17兆円がどうだったのかという評価があって、それに対し次にこう踏み込むというのが必要。3ページの4行目の「産業化が従来弱い・・」という表現もいかがか。「社会への還元が少ない」というように変えた上で、従ってこうすべきというように記載すべき。 

    • 国際的な観点を入れないでいいのか。科学技術の振興に関する国際的な協力、分業、支援について提示すべき。 

    • 国民へのリターンについて、IT、生命科学は進展が早く、国民の意識とどのように調和させていくかという、法律、倫理など社会科学の問題がある。一方、NIHも「Health」であり「健康」という明らかな目的のための機関で「Life Science」「生命科学」の機関ではない。このような目的型の提示をすべきであり、そうでないと国民も納得しにくい。 

    • ここの基本方針は科学技術のミッションに限られている。科学技術政策がどう決められ、どのように動くことになるのかが大事。総合科学技術会議が司令塔としてしっかりコントロールできれば問題ないのであろうが、これを誰がどのように決めていくのかを示す必要がある。政策の決め方、実行の仕方を明記すべき。 

    • 6.に計画のフォローアップとして記載している。 

    • 前文で格調高いところが必要。将来について明るいことが書かれているが、過去のことが旨く書かれていない。大学では資金が多く入っているが成果出ていない等の問題がある。作文の問題もあるがこの辺りを明記すべき。 

    • 全体として科学技術のことを内向きに記載しているので工夫する。 

    【科学技術システムの改革】 

    • 研究者・技術者の養成について、大学・大学院以外にポスドクも存在し、これだけに限定する必要はない。また、需給計画について、分野によっては足らないという話も聞いており、重点指針のように、新しい学問分野への対応、社会の求める人材育成ということを示すべき。情報リテラシー、科学リテラシーのことも記載されているが、「全ての学生に身につけさせる」と表記するのは如何か。これだと必須科目にするようなことに捉えられかねず、問題である。少なくとも、研究者・技術者の養成の方策として取り上げる問題ではない。 

    • これは、大学審の中間報告を受けて記載している。 

    • 競争的環境の資金を増やせという話と、それは基盤的経費を確保してからの話だという2つ議論があった。資料には「研究に係る基盤的経費は、オーバーヘッドの導入の状況・効果を考慮し、そのあり方を検討する」となっているが、大学は教育研究を一体的に行っており、基盤的経費が研究にどれくらい向けられているかという話がないとこれ以上議論が進まない。 

    • 競争的資金倍増やオーバーヘッド(30%)には数値が入っているが、全体の規模はどうなるのか。科学技術関係経費全体を二十数兆円とかGDPの何%にするとか全体が示されているならば理解できるが、特定の所だけ数値が入っているのは異様。オーバーヘッド(30%)があっても基盤的経費が減らされると全体的にマイナス。定量化するのも重要であるが、全体的なバランスにも注目すべき。 

    • 基盤的経費を確保する一つの手段として、競争的資金の確保とオーバーヘッドの導入についてしっかり整理すべき。また、「研究に係る基盤的経費は、オーバーヘッドの導入の状況・効果を考慮し、そのあり方を検討する」という意味が分かりにくい。実施してみて、足らなければ検討するということか。 

    • 大学では基盤的経費は教育面にも必要。現状では研究費を教育に充てている。基盤的経費をオーバーヘッドで充てるというと、教育の費用にも影響を及ぼす可能性がある。基盤整備のためにも十分に基盤的経費を確保したい。オーバーヘッドは外枠で付けていただきたい。 

    • 基盤的経費の問題は悩むところ。むしろ教育にかかる経費は増やすべき。しかし、教育と研究の費用を厳密に分けることは困難であり、あいまいな表現となっている。 

    • 教育と研究の経費については分けられるものは分けるべく支出ベースで試算をしているが、容易ではない。例えば施設維持費、人件費といったものが分けがたく、校費であっても研究室によって格差が大きく大雑把な数字しか出せない。研究に係る基盤的経費を削るのは自由な発想の萌芽的研究に影響があり、将来の芽を摘むことになりかねない。 

    • オーバーヘッド(研究用途)という表現は適当ではない。Indirect Cost(研究以外も含む用途)というべき。大学にインセンティブを与える経費と認識されるべき。教育と研究が区別できないなら、その費用を研究と関係ないところにも使用できるようにすべき。 

    • 今は、学長裁量で使えるようにすることを考えている。米国では借金で建物を建てる。それを後でオーバーヘッドで賄うようにしている。 

    • 今の話は矛盾がある。米国がオーバーヘッドを30%取っているから日本でもオーバーヘッドを取るといっているが、米国は建物を建てた借金があるからオーバーヘッドを取る。日本と米国は構造が異なり、日本では国立大学や国研の施設は国が建てるので、日本では借金はないはずであるから取るのは矛盾するのではないか。 

    • 対象となるのは建物の借金だけではない。米国では内容により100%のオーバーヘッドを取るところもある。これは政府とのネゴで決まる。 

    • 今は科学技術バブル。これまでのような競争的資金の使われ方のままならば倍増は反対。金額を倍にして何をするのかということを明確にすべき。倍増の仕方も採択率を上げるのか、一件当たりの金額を上げるのか。私としては前者の方がいいと考える。 

    • バブルというのはある一部の研究室の話。各省が資金をバラバラに出すので場合によってはこのようなことが起こる。この費用の出し方については検討の必要があり、研究費のあり方についてはもう少し追記する。 

    • 大学では競争的資金を増やしてもらってプラスの効果があるが、Indirect Costが不十分で、このまま競争的資金が倍になると対応しきれなくなる。基盤的経費のあり方は別途検討していただく必要があるが、この見直しと連動してオーバーヘッドを決めるのは質が違う話。現場の希望としても、そろそろ限界に来ていることもあり、オーバーヘッドを導入していただいた上で、基盤的経費のあり方についても検討していただきたい。 

    • 今の話に加えて、オーバーヘッドの導入は研究機関において人事を考える時もオーバーヘッドを取れる人を採用しようという動きにも繋がる。そのためにも強く打ち出したい。 

    • オーバーヘッドの導入にはいくつかの側面がある。これまでの経緯を見ると、現基本計画以前から競争的資金は急増しているにもかかわらず基盤的経費は抑えられている。これにより、今は大きなプロジェクトを受け入れるだけの余裕が大学になくなってきた。従って、これ以上競争的資金を増やすなら持参金を追加し、基盤的経費を充実させないと対応しきれない。基盤的経費と競争的資金の伸びの著しい不均衡を是正するための施策と考えるべき。 

    • 多くの方の意見と対峙するが、競争的資金を増やし、オーバーヘッドを一定比率で確保する仕組みを作ると、そのオーバーヘッドは定性的には基盤的経費とトレードオフの関係になることは事実。皆さんが言うように基盤的経費が足らないというのも分かるが、この見直しは必然的なもの。先ほど、委員から「研究に係る基盤的経費は、オーバーヘッドの導入の状況・効果を考慮し、そのあり方を検討する」という文章の意味が分からないとの発言があったが、基盤的経費のあり方の検討は同時に行うべきものと考えていたし、これをすることにより国の研究を発展させるインセンティブになる。また、この30%という数字の位置づけについて、ここでコンセンサスを得るのか等確認したい。 

    • オーバーヘッドの導入とだけ記載されていて、その目的が記載されていないので混乱している。また、オーバーヘッドが機関長の裁量経費という表現も曖昧。基盤的経費、機関の運営経費と明示すべき。実際、理系の学部では基盤的研究経費はそれ程ほど必要ではなく、運営費は競争的資金から取れる。科研費についてもオーバーヘッドの導入を実現してほしい。 

    • オーバーヘッドの率について、米国の現状等とも比較し30%とした。米国でも4年に1回政府と交渉して決める。州立大学では30〜40%となっている。 

    • オーバーヘッドと基盤的経費がトレードオフの関係とすると、今後基盤的経費は競争的資金で稼げということになる。利根川委員が第1回計画部会でオーバーヘッドが取れないところは潰れるという話もあったが、そういうことはこれまでの議論とは異なる。国研、大学が設置されたのにはその目的がある。従って、その存続は担保されるべきであり、そのための基盤的経費は十分に提供されるべき。 

    • オーバーヘッドを30%とすると現在の基盤的経費の何%になるのか。 

    • 事務局から答える。 なお、基盤的経費は意外に増えており、これは講座が増えたために総額が増えている。 

    • 大学の基盤が揺らいでいる。基盤が脆弱になっていることは明白であり、率直かつ十分に反省して、大学の総点検を行うべき。研究活動の効率化は必要だが、大学には風格が必要である。これが今喪失したような状態である。次世代を担う若人があこがれるものでなければならない。現状は理想から程遠い。 

    • 米国で連邦政府はオーバーヘッドでしか経常的経費を出せないが、大学の設定者である州や学校法人が別に基盤的経費を負担していることを認識すべきであり、競争的資金にともなう間接経費で十分という話ではないと思う。基盤的経費の削減については私は反対である。 

    • オーバーヘッドはコストの中の一部であるが、研究費の外枠である。率の話をするときは分母が何かを明確にして欲しい。 

    • オーバーヘッドの話をすると、基盤的経費は不要でオーバーヘッドで賄うという議論が出るが、そうなれば、国立大学である必要はない。何故、国立大学、研究所なのか。これを明確にすべき。また、私学についてはどうか。 

    • 私学はもっと悲惨である。施設に対する費用はゼロに近い。我々は研究の場所を作るときに工夫が必要。これまでの話とは世界が違う。建物を造る場合には多数の資金源を探して、やっと小さな建物ができる。オーバーヘッドは頂く資金の内枠で取れれば取るというもの。外枠で付けばありがたい。 

    • 私学についても外枠で考えている。 

    • 研究資金が競争的になっているのに対し、研究スペースについては競争的になっていない。これも競争的にすべきではないか。 

    • この点は「大学等の施設の改善」で言及している。 

    • ここに書いてあることは、研究費の総額を増やすということか。 

    • 総額についてはこれまで議論もなかったが、私の感じでは現行基本計画では、科学技術関係経費総額17兆円を掲げたが、補正による2兆円も加わり、達成できた。次期基本計画においては、関係経費をどの程度にするかということについて経団連等からはGDPの1%との指摘がある。これは経済成長率を2%と仮定すると、2005年度には5.5兆円になる。競争的資金については、現在の3千億円を5年後に6千億円に倍増。施設の改善については、抜本的な解決に3兆円が必要との意見もあり、これをどう達成するかが大きな問題。これまでのような平等性を改めるとともに、共同利用的な使い方も検討すべき。ライフサイエンス、情報通信、環境、物質・材料の4分野について重点投資するつもりであるが、これ以外の宇宙・海洋等のフロンティア研究を加えると、2005年には1.6兆円との試算もある。科学技術関係経費の総額については、本文の起草を含めて、少人数での議論が必要と考えている。平成13年度予算は、今の検討計画を見ながら進めざるを得ない。 

    • 総額については、今後議論することになるか。 

    • そのとおり。 

    • ここにはハードのことばかりが記載されているが、研究者の心構えや覚悟は今のままで良いのか、その点が欠落している。自分の成果を実用化させるという意識が希薄であり、「成果を国とともにジョインする」とか、社会的な存在をもっと意識してほしい。「社会のための科学技術」であるべき等と、しっかり書くべき。 

    • 基本計画に書くかどうかは別にして、安全や倫理感等についてもう少し入れるべき。そういう角度の監視やチェックを行う仕組みを総合科学技術会議の中に作るようにしても良いとさえ思う。科学技術全体について、そのような考え方が入ると一般の国民は安心する。 

    • 科学技術と人文社会科学との融合は考えているが、科学技術基本法には人文科学のみに係るものは除かれている。まとめ方をどうするかを悩んでいるが、次期基本計画には反映させたい。 

    • 産学協調と言いながら技術移転やベンチャー施策にかかる予算額は、実際は全体のコンマ数%位である。科学技術が国民にいかにリターンするかが大事であり、活字だけでなく本当にやってほしい。大学にベンチャー・ビジネス・ラボラトリーが設立されているが、これらが日本のベンチャーの足掛かりになっているとは思えない。 
        地域科学技術や地域産業の活性化とは、シリコンバレーを日本でいくつ創るかというものよりも、長い歴史のもとで生まれてきた地場産業をベースにした新産業の発生が必要である。21世紀の最重要テーマである地域分権の為には地域の経済自立が前提であり、その為には地域独自の科学技術をベースにした産業の活性化以外に考えられない。 

    • 具体的な考えは。 

    • 研究には税金を使っているのであり、自分の研究が何か社会に役立てるという気持ちを研究者が持つべき。研究成果の活用を義務づける位の縛りが必要。研究成果の創出から経済の活性化まで、いわゆる川上から川下への一貫した政策が必要。経済の活性化だけを取り上げても地方の活力は生まれない。 

    • 地域科学技術の振興を含め、地域における科学技術クラスターの整備のような理念的なものは、当初の「目指すべき国の姿」にも記載すべきではないか。また、広く国民全般の理解を得ることも重要。税金を使った研究の成果の説明のため、東大では、反発はあるが教官毎にホームページを開設し、社会からの質問に応えることを義務づけるべく進めている。 

    • 国民が、科学技術の現状にどれだけ関心を持っているかは自信がない。科学技術は、研究者だけの問題ではなく、ジャーナリズムを含めて考えるべき。産業化のことも考えて、科学技術の位置づけをはっきりさせないと、社会の中にシステムが位置づけられない。 
        研究者の研究結果を将来の子供達にみせるような事は、広く社会に訴えることにもなるし、次の研究者を生むための貢献にもなる。 

    • 「安全」や「健康科学」に関する分野は、特許とは別の意味でのアウトカムの評価が必要ではないか。 
        研究期間を「3−5年間程度」と明記しているのはいかがなものか。研究内容によっては成果が出るのに10〜20年かかるものもある。 
        今は研究者が多くなりすぎて、補助者が不足している。補助者の充実に関する記載も必要か。 

    • 支援者は現行基本計画でも達成できていない事項であり重要。公務員として増やすことはできないので、競争的資金で雇用しやすいシステムにすることを検討している。月額で支援者を派遣する事業もあるが、良い支援者を雇えていないのが現状。 
        研究費のあり方の転換期が来ていると思う。総額が少なかった頃は複数の原資からかき集めていたが、研究費が増加した現在ではそのようなことをしてはだめ。メモ中の「3年」は若手、「5年」はシニアの研究者を目安とし、その期間中に相当額をつぎ込むことを意図している。研究進捗を評価して良い研究は継続できるようにするべき。特に短期的な制度については、入口だけで出口の評価がないものが多い。また、班研究が多すぎる。個人研究や少数のグループ研究は研究に対応した研究者の評価がしやすいが、例えば30〜40人も関わっているような班研究になると、一人一人の評価はとてもできない。研究費のあり方は、一気には変えられないものであるが、何年かかけても抜本的改革をすすめるべき。 

    • 地域科学技術振興においてTLOが効果を出していないなど、飽和状態になっている。行政縦割りで行うと何も起きないように思える。「フリーゾーン」なるもので別個に走らせてみて、施策の評価をしてみたらどうか。産業界は待てない。 

    • 国がベンチャーに投資するようにすべき。ただし融資はだめ。 
        地域については、例えば、かずさDNA研究所の近くにDNA関連の企業が集積し、地場産業を形成していくようなイメージ。重点化と集積が重要。テクノポリス計画では、複数の地域に同じようなものができてしまっている。総合大学のように、あれもこれもで重点を絞らないやり方はだめ。 

    • 「集積」は「クラスター」として表記している。テクノポリス計画は工場が外国へ移っており、これからは知的クラスターであろう。日本は国立、法人等の研究機関が関東に集まりすぎて一極集中が激しいが、地方大学等の研究機関を中核とした施策が必要である。しかし、そうした地域が熱心にならないとなかなか実現できないものである。 

       【重点化戦略について】 

    • ライフサイエンス、情報通信、環境、物質・材料の重点4分野があるが、物質・材料は他の3分野を横断的に扱うものである。しかし、どういう新物質が望まれているかが記載されていない。医療・健康維持・食料・自然・社会環境保全に係る物質・材料とすれば研究者にとっても分かりやすい。 

    • 「ライフサイエンス」や「ナノテクノロジー」のように「サイエンス(科学)」と「テクノロジー(技術)」とを書き分けているのは、何か意図があるのか。ある分野は基礎的なところを、ある分野は応用的なところを重点化するということなのか。食料科学もサイエンスだけに限ると狭くなる。 

    • いずれの分野も「科学技術」を意味する。基礎から応用までを含めて考えている。 

    • 「核融合」と記載されると、イーターをやると言っているようにイメージするが、そういう意味か。表現を慎重にすべき。また原子力安全技術となっているが、現在の原子力長期計画の検討において、安全技術を軽視しているところがあるが、その辺りを例えば科学技術振興費でやることを意味するのか。きちんと議論すべきである。 

    • 十分議論はしていないが、エネルギー分野は無視できない。しかし、イーターは念頭には置いておらず、ヘリカル、レーザー核融合等をイメージしている。 

    • 各分野の重点項目が列挙されているが、なぜこれらを取り上げるのかといった、十分な検討プロセスを踏まえているものなのか。5年間のことを限定することに関して心配である。これはあくまで例示として示すべきであり、更に実行の際に柔軟に判断できるようにすべき。原子力や宇宙等のナショナルプロジェクトについて、総合科学技術会議で原子力委員会等をどのように調整するかといった姿勢をみせなくて良いのか。 

    • 姿勢をみせるべきだと思うが、まだ明確には言えない。 

    • 核融合などの文字は、見る人が見ると特定の意味がある。「等」という表現を入れるか、「これらの事項を精査して重点化を図る」等と表現したらどうか。 

    • 重要4分野について、括弧内に、「高齢化社会対応、…、という観点から」と書かれているが、各々をある事項に限定的に対応させて例示することに意味があるだろうか。例えば、ライフサイエンスは高齢者にしか対応しないというものではなく、逆に高齢化社会には情報通信や環境の分野の研究も対応する必要があるのでは。 

    • ここはあくまで例示にとどめている。 

    【各研究機関の役割と課題】 

    • 公的研究機関について、ミッションの中に地域貢献を明記すべき。その地域でなければできないことは、地域の公的研究機関にがんばってやってほしい。学協会はたくさん存在するが、その中にはNGOやNPOとして強力になっているものもある。民間の育成財団をどう助成するかを含め、学協会のあり方を考えるべきではないか。 

    • 学協会については、産学官連携ができるかどうかが重要。 
        大学については、書きぶりが「大学はほっといてくれ」としか読めない。もっと大学にプレッシャーをかけていくような表現があった方が良いのではないか。特にマネジメントについてプレッシャーをかけるべき。 

    • 独立行政法人化する国研と直轄国研とが書き分けられているのがよくわからない。独立行政法人化する国研も、よりミッション・オリエンテッドな方向が求められていると思う。 

    • 日本は科学技術への関心度が減っている。政策に関するディシジョンメイキングが縦割りなのが問題。米国では科学技術関連の予算書をきちんと公開する等して国民の科学技術への関心を高めている。日本もそうあるべき。総合科学技術会議が司令塔的な役割を担うことを、もっと前段に書くべきである。 


      以上の意見交換の後、井村部会長より今後の予定を説明。 

    • メモについて、上述の意見以外のコメントがあれば、早急に事務局宛てに連絡。 

    • 本日頂いた意見等をもとにメモの内容を整理することとし、最終的には部会長に一任願いたい旨の提案があり、了承された。 

    • このメモを基にして、次回(9月14日)に向けて具体的な答申案の作成にかかる際に、少人数で起草し、できれば2、3回集まって議論したく、そのメンバー選出について、部会長に一任願いたい旨の提案があり、了承された。 


      次回会合:9月14日(木)10:00〜12:00
                虎ノ門パストラル 

     以上