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 第30回科学技術会議総合計画部会議事録
(平成12年  第3回) 

  1. 日  時:平成12年5月31日(水)  13:30〜16:00 

  2. 場  所:虎ノ門パストラル「桜の間」 

  3. 出席者:
    (委  員)井村部会長、石塚議員、熊谷議員、前田議員、池上委員、石井委員、猪瀬委員、、
              大崎委員、金井委員、木村委員、小林正彦委員、関澤委員、寺田委員、鳥井委員、
              鳥居委員、中村委員、西澤委員、野依委員、堀場委員、前野委員
    (事務局)科技庁:青江科学技術政策局長、崎谷科学技術基本計画室長、 丸山同室長代理  他
              文部省:工藤学術国際局長、井上大臣官房審議官  他 

  4. 議  題 

    A.科学技術システムの改革について
      事務局より科学技術システムの改革(2)(案)(資料1)について説明。 

    【開かれた研究開発システムと産学官連携の促進】 

    (1)公的研究機関における社会、産業界への解放性の拡大 

    • 予算編成については、繰越明許費、継続費等を柔軟に活用する等複数年度で使い勝手の面も良くしないと効率が極めて悪くなる。本件については強く改善を申し入れている。 

    (2)産と学官の間の人材、資金、成果の流通環境の整備 

    • 成果を上げた研究者を奨励する工夫は一般的には重要であるが、評価の対象を、産学官連携の促進のみに限定して奨励するというのは少なくとも大学については不適当。 
        また、インターンシップについて、これは専門職のOJT等のトレーニングのことか、企業のためのトレーニングか。資料の「外部人材の活用促進」で述べているところの目的は何か。 
    • 米国のNSFでは、学部からドクターまで年間約3万人の学生が企業と交流しトレーニングを受けており、これが最も実践的・効率的な教育と評判が高い。ポスドクは一般には大学や国の機関に所属するが、年間3ヶ月と短くても産業界と交流することにより何らかの刺激を受けるとともに、産業界のニーズを理解したり、産業界に人が流れることにも繋がると考えている。 
    • 大学院博士課程修了後のキャリアパスの一つと理解していいのか。 
    • これまでは、産業界がポスドク等の採用を敬遠する傾向にあった。本施策によりポスドクが産業界とコンタクトを取り、人が流れていく仕組みを作りたい。 
    • インターンは教育の一環であり、大学院の学生が企業で実習するのも意味がある。しかし、今の問題が、大学院の問題かポスドクの問題か混乱しているところもあり、資料の記載からはそのあたりが読み切れない。ポスドクの就職の話とトレーニングとを分けて考えるべき。また、企業はニーズに合わせて採用等を行っており、計画的な受け入れは約束できることではない。 
        ポスドクの採用については今でも採用していないわけではない。本人の希望と企業のニーズが合えばやれる話であり、現実に企業はポスドクも外国人も採用している。ポスドクについて問題があるとすれば、どういう人がどのような研究をしているかという情報がないこと。ポスドクが1万人になったといってもどういう専門の人がいるのか全く分からない。基本的にニーズがあって採用になる。ポスドクの能力、研究内容、就職希望等を産業界に知られるようなシステムが必要である。 
    • 外部人材の活用の項目にインターンが何故入るのか。企業にとっての外部人材というのであれば、派遣制度ではなく受入制度。また、ポスドクは別に手当をもらっている人を研修させるということか、それとも浪人をポスドクで雇用してくれということなのか。ポスドクにも種々あり、多くは大学院で基礎研究を行った科学者で、これは企業が望む実用化向きのタイプではない。産業界で採用して貰いたいのは科学者になりきれなかった者の如く読める。技術研究者の方はポスドクになる前に採用されており、これを整理して考えるべき。基本的に公的研究機関と企業の二つのカテゴリーに分けることに無理がある。公的研究機関の中でも大学、特殊法人、国研や新たにできる独立行政法人があり、大学の中にも国公私立があり、また、総合的な大学と単科大学、地域密着型大学など多様である。更に産業界といっても企業ばかりではない。これらの違いを考えないと的確な施策は取れず、このくくりが問題を生じる。 
    • 研究者になれなかったから企業にとってくれというのではなく、キャリアパスの多様化に向けて企業でも採用してもらえないかということ。 
    • どのようなポスドクがいるか分からないということについて、求人情報は世界中で利用されているが求職情報については十分ではない。国立情報学研究所で産業界等多くの人が利用できるようJSTとも協力してこのようなシステムの実現を目指したい。以前、米国にいた時、ベル研では優秀な若手研究者を獲得するためのリクルートシステムがあった。つまり、若手研究者のグループを出身校へ送ってリクルート活動を行う。日本で何故そのようなシステムがないのか。特定の人をピンポイントで、この人を採用したいという話は非常に少ない。大学でも国研でも若手研究者情報を提供するとともに、コミュニティブな活動があってもいいのでは。 
        裁量労働制についても、個人の裁量にまかせるより、本来はきちんと制度化して進めるべき。例えば、大学からの給与は9ヶ月分とし、年3ヶ月は自由なことができるようにして、その間はどこでどのような仕事をして収入を得ても一切束縛を受けない、とか、週2日半は大学の職務に従事し、残り2日半は大学から給与は受けず、自由な活動を認めるとか、根本的に考える必要が必要ではないか。 
    • 公務員型では困難ではないか。 
    • インターンは、医学部ではプロになるためのトレーニングであり、これはプロを育てる場と捉えるべき。しかし、日本の大学に対して不満なのはプロ意識が足りないこと。これを高めるためにインターンは必要。民間からは良い人がいれば採用しようという動きもあるであろうが、プロを育てるためにはインターンは重要なことである。大学、国研間の人の流れがうまくいかないツケが民間に回っている。産業界からのネガティブな発言はこれによるところが多い。企業にダイナミックなループの中に入ってもらいたいのなら、 Market driven というか、参加者によって決定されるような市場という形がないと企業側からは参画できない。これまでの学官だけの単純な原則の中に企業が入ることにより、優れた人材をとろうとする様々な流れが発生する。出口が大学と国研だけでは誰も行きたがらない。人の流れの中に市場原理を導入してほしい。特許についても、学官の特許だからといって高く買ってくれる訳ではない。ここにも市場原理の導入が重要である。 
    • 分野によっても違うと思うが、種々のバックグラウンド持った人を企業も採用したい。独国のバイエル社、BASF社、米国のメルク社等の企業では新たに採用する人は90%以上がポスドクである。博士号だけでは背景や視野が狭くて十分でなく、ポスドクの採用が中心になってきている。日本ではそうはいかない。背景の広さ以前に、若者の実力そのものが不十分なのであろう。大学関係者としては立派で活力のある人材を育成できていないことを反省している。人材市場の大きさや需要と供給のバランスにミスマッチがある。大学でポスドクを多く養成しているが、企業で求められている分野でないという問題がある。これは、研究者は自分の興味のある分野の研究をしているが、これが市場のニーズに合っていないことを意味する。人材について産学官共通の場(それが市場かもしれないが)を持ち、どういうニーズ・人材が必要か周知徹底することが重要である。 
    • 論点整理の中で、基礎から実用化まで一貫した支援というのがあった。しかし、今回は大学は研究成果を出すまで、民間はその点からという印象を受ける。重要なことは、自分が出した成果を実用化するまで面倒を見ること。多くの企業にベンチャー提案制度がある。外国でも大学が支援金を出してベンチャーを立ち上げるところもある。国研、国立大学については、国が設立時に投資してベンチャーを立ち上げるシステムはできないか。そして、ベンチャーがいくつ成功したかが評価の一項目とする。一部には日本のベンチャーへの融資は米国の7倍あるが、融資なので返さないといけない。リスクマネーが必要である。国からの投資や、国有のようなものがあっても良いのではないか。 
    • 全面的に賛成。企業が買わないなら自分が企業化するという位のものでないと企業も関心は持たない。ポスドクも分野毎に種々に異なり、ポスドクという集団を一つにまとめて議論するのは無理。成果の評価、知財の評価については市場性を考慮することが重要。例えば、電波は国の財産であったが、今は一部の国で入札になっている。国の財産を最も高く価値を付けた人に権利を与えたいすることは市場原理の中では当然のことであり、米国でも積極的に行われている。知的財産権も、その所有者、機関が外部に売り出せばよい。もっとオープンにして、是非欲しいという人には高値で売り、売れなければその程度のものとの評価、これこそ正当な市場性である。 
    • 特許について、公的な資金で得られた発明は国のものにすることが義務づけられるのか。 
    • 義務づけるのではなく、欧米のように研究機関が管理し、実施料が上がれば個人に還元するというもの。 
    • それは結構。機関や個人の活力が出るようにして欲しい。大学の研究者は普通研究により国内国外で名声を得るのが第一目的で、特許等によりお金を儲けるのは二の次であることが多い。大学の研究者の特許は企業が出願し、研究者自身は発明者として名を連ねる形になることが多いが、殆どの特許は死蔵となっている。特許をフリーにして世界各国で使ってもらえれば、社会への貢献、波及効果をもたらしたということで研究者の名声も高くなり、満足度は高い。しかし、企業のものとなると他社も使えない。迂回して特許を取られる場合もある。特許を公的な機関で運営してくれれば世界中で同じ条件でよりよく使えるので、研究者の特許出願の意欲が湧く。ただし、工業化されてはじめて特許の意味があるので、そのような機関でしっかり管理・活用し、セールスできる力を持ち経営感覚のある機関として欲しい。 
    • 企業が他社の特許を使うのは、自分がしたいことがあるのにそれに抵触する場合。営業能力を持たないと名はあるが実はないということ。 
    • このためには特許を管理できる人を養成しないといけない。現在そのような人は全くいない状態。これができないと折角の特許も死蔵してしまう。 
    • 大学の特許はごく少数の国有特許になるものは殆ど死蔵され、大部分の民間企業とのものも防衛的にしか使われていないのが現状だ。TLOは特許の評価と活用で生きていくもので、マーケットを持っていなくてはいけない。大学にその機関を持つのは本来的ではなく、現在、私の部局では民間のTLO企業との契約で実効を挙げている。安心して契約できる民間のTLO企業を育てることが重要でないか。 
    • 大学等も今後独法化のことがある。自分の機関で組織を持つべきでないか。米国の大学では研究が完成したら翌日に特許担当者が来て、1週間後に製薬会社に売り込んだという例もある。 

    【研究施設の重点的整備】 

    • 資料に国立大学という言葉が欠けているようであるが、国立大学が単に施設・設備を良くするだけでは駄目。国立大学の抱える問題を全て明確にし、その対応の中で施設・設備の整備が重要であるというストーリーとすべき。 
    • ここの表現では今の施設を改修して使え、優れたところだけに新たなものを作ると読めるか。施設の現状は極めて深刻。裾野をしっかりすべきといった表現がない。勘ぐれば財政当局の考えを代弁しているのではという感じである。 
    • 本問題は非常に重要な問題。科学技術基本法を制定し、基本計画を作成することとなった動機の1つであり、現基本計画においても大きな柱の一つ。全委員が賛同してこの整備を主張した。振り返れば4.5兆円の増額がどこへ行ったのか。この説明は別途事務局からあると思うが、現基本計画が始まってから大学の施設・設備費が7%減少している。何故こういうことが起こったのか。大学関係で増えたのは科研費と日本学術振興会の「未来開拓学術推進事業」という、科学技術振興費にカウントされているものだけで、施設費等には殆ど回っていない。科学技術関係経費の重点は科学技術振興費。これに入っているかいないかが重要。大学の施設費等はこれに入らず国立学校特別会計に含まれている。特会には研究だけではなく教育もあり、研究に特化されない。この構造をよく分析して見直さないと駄目。実効性の伴う計画を立てて欲しい。 
        また、表現も「研究施設」でなく「研究・人材養成・施設」とすべき。また大学が対象となることを明記すべきである。更に大学院は戦略的重要性を持ち、その施設整備もしっかり書くべき。今のままでは、現計画と比べても後ろ向きな表現である。 
    • 施設整備の総計は平成3〜7年度で11,086億円、平成8〜12年度で10,656億円と減少している。これは、この5年間で財政構造改革があったことが影響している。補正でいくらかは投資したがトータルでは減となった。 
    • 特会に入っていることが最大の問題。 
    • 大学院生の養成、人材、研究者の養成が大きな問題でありながら、そのスペースのことが欠落している。理系の研究室には大学院生の机を置くスペースもない。これではその研究室の教授の研究テーマに関する実験をサポートすることはできても、自分の研究をすることはできないから、結局ユーティリティープレーヤーは生まれない。今のものはシステマティックに考えられておらず、物事の片面しか見ていない感じ。人材養成の面も考えて欲しい。 
    • 国立大学では、大学院の研究科の整備の予算要求等をして認められてから建物の予算要求をする。したがって、卒業生が出る頃でも建物ができていないという状況もあり、実際、大学院の整備は進んでも、その半分は建物がない状況となっている。 
    • 数年前に実験中の女子学生の目の前の壁に大きなひびが入り、いきなり外が見えるようになったことがある。研究費を使って調査したら震度5以上の地震があると確実に崩れる状態ということであった。応急措置をしたが、いまだに決死の覚悟で実験を行っている。科学技術振興費だけからではなく、公共事業費から施設整備として大学等に回すとか、基本的に予算の構造を見直して欲しい。 
    • 大学のあるべき姿を見据え、総点検して欲しい。今問題となっている施設1200万m2を早急に整備すべき。何故、前年を基準にして何%増やすという理屈になるのか。元がなければ永遠にゼロになる。経済大国の我が国を代表する大学においてトイレをつぶして装置を入れるなど環境は劣悪であり、グローバルスタンダードに程遠い。悲劇的な事態が起こらないと改善されないのではないか。本当に研究ができない実体をみていただき、ハード、ソフトだけでなくヒューマンウェアについても抜本的な改善をして欲しい。 
    • こういう議論だけしていては国民の計画にならない。知的存在感のある国ともうたっており、文化の発信基地にふさわしい、国民にとっての私たちの大学施設というところから議論すべき。 
    • 大学の施設のあまりのひどさに関して、某大学では10年前にそういう場所を回る見学コースができた。別の大学でも図書館の割れたガラスを替えれず鳩が巣を作っている状況だった。 
    • 大学は知識社会の源泉。やはり行政が、この5年間に17兆円貰って建物等どう直したか、今後どうするのかを教えてほしい。また、そのために公共事業の予算を使えるようにするとかいったことを実現しないと駄目。大学がこのようになることは以前から分かっていた。やるべきことをやっていないと言うことである。 
    • 国立大学の施設の整備に約3兆円必要と試算されているが、これを実行すれば高等教育に対する公財政支出がGDP比0.5%から0.8%位に上昇するのではないか。インフラ整備は極めて重要である。 
    • 10年ほど前に国立大学の施設が問題になったとき、不要になった土地を売却して施設整備を行う仕組みを作った。しかしながら、バブルがはじけて、皮算用となり、例えば大阪大学の大阪市中ノ島の一等地などのように、売却が思うように行かなかった。 
        財政については、国全体で四苦八苦しているところであるが、国立大学全体として困っている。昭和56年以来、前年予算にもとづくマイナスシーリングという方式を取っていることも一つの問題。その当時すでに大きなパイを持っていたところはよいが、そうでないところは工面が難しい。国立大学の施設整備の財源が不足しているからといって、教育以外の他の分野の予算を削減しても施設に回すなどするような大きな査定機能は、大蔵省も発揮しにくくなっている。不景気になると景気対策のため、補正予算がついて、大学の施設整備できるから、大学関係者はありたがっている。施設の整備費にでこぼこがあるのは、補正のチャンスが多かったか少なかったという補正予算頼み、ある意味で場当たり的に対応せざるを得なかった結果である。 
    • 施設整備は特別会計からはずすというのがよいのでは。 
    • 大学の場合、研究と教育は一体であり、施設の狭隘化の大きな原因は留学生と大学院生が増えたこと。科学技術の中でこれをどう取り上げてもらえるのかである。教育面も含めた施設整備費であり、予算の括り方の技術的な問題として、研究面ではこれこれという括り方ができず、施設整備費の一部のみを科学技術関係経費として切り出しにくい。今後さらに検討しないといけないと考えている。 
    • 非常に重要な発言である。従来の予算編成、配分の仕方ではうまく行かなかったことを官僚のみなさんに不満があるということ。今、行政改革の中で、従来の予算配分の仕組みを抜本的に変えようとしている。現状は前例踏襲の結果として起こっていることである。思い切ってそこを変えていくことをこの部会の意見として、実行していくべき。 
        現在、予算を査定するところは大蔵省である。あまり科学技術のことはご存知なく、実態をよくわからないところで予算配分を行っている。場当たり的な対応をやめるべきである。国家的に重要なプロジェクトで遅れを取っていることが多いのに、先ほどの発言のように場当たり的な対応をしている。予算配分の仕組みを抜本的に変えないといけない。行政改革の中では、総合科学技術会議が経済財政諮問会議と相談をしつつ科学技術予算の基本的配分方針を決めるということになっている。こうした方がいいということを改善するべきで、そうでなければ不毛な議論になってしまう。 
    • この部分は再度検討したい。 

    【独立行政法人、私立大学】 

    • この書き方では、事務局から説明があったように外部資金を獲得した場合、運営費交付金が減らされないとは読みきれない。外部資金を獲得した独法は成果を挙げ、評価される。独法は、それぞれ中期目標を与えられ、それにもとづき必要な資金を交付金として交付される。目標を達成するために、外部資金を獲得せよということにならないようにするべき。 
        個人の能力を最大限発揮という表現はあるが、これだけではなく組織の能力も最大限に発揮するようにするべき。外部資金は個人が獲得するもののように読めるが、あくまで組織の中で行うものである。 
    • 競争的資金としての外部資金は個人に行くものと理解している。 
    • 組織の枠からはずれることがあっては困る。 
    • それはないようにするべき。 
    • 実力のある私立大学に対する国の支出をもっと増やすべき。国からの補助が少ないまま私大が国立や公立と同じように競争するのは困難であり、そのような低い次元の競争では科学技術の発展にもつながらない。国が実力のある私大を支援して国立と対等に競争することにより、国の学術研究のレベルが向上する。米国の私大が立派にやっているというが、連邦や州の資金がどれだけ投入されているのかは統計をみれば明らかである。現在の私大なみに国立への支出を減らせとか、民営化しろというような低次元の競争に押し下げた競争論はダメである。 
    • ここまでの議論では国立大学を想定して、国立大学についての種々の施策が盛り込まれており私学関係者としてはうらやましい。本来、「国家産業技術戦略」等でも、大学とは、国立、公立、私立のこととなっている。私立大学については、資料の7.のみが頼みの綱であるのに、太字がなく、3行のみであり、内容は要するに競争的環境の中で支援していくということである。 
        622校ある大学の中で、国立は99校、公立は66校、私立は457校で、大学数でいうと73.5%、学生数では短大も含め80%である。また、国公立大学を退官した先生の活動の場ともなっており、基本計画の中で私立大学の研究推進について十分に扱って欲しい。 
        私大の老朽施設についても、10年前に2兆円が必要との試算を行った。これに基づき、利子助成が平成9年度より行われているが、助成額は決して十分でない。  経常的経費についての助成は、昭和50年の議員立法により、1/2以下の助成となっているが、現状は約12%の助成率である。施設・設備等についての助成は、平成12年度で243億円であるが、単純に一校平均で見れば5000万円で、決して多くない。外部からの研究委託は、平成12年度で約300億円で、軽減税率が適用されてはいるが、請負業として課税されている。「研究機能の強化のための経常費補助金の充実、施設・設備等整備のための助成の拡充など私学助成の充実、研究委託の非課税化などによる多様な民間資金の活用の促進」というように書き換えていただきたい。 
        基盤的経費をゼロシーリングとして、競争的資金にシフトするという考え方は間違っている。また、オーバーヘッドでは余りにわずかで施設整備をするには足りない。経常的経費は大学院など人材育成にも必要である。 
    • 私立大学の件は重要な問題である。公立大学はどうか。 
    • 県は強力にサポートしてくれている。検定料収入が15%という点が将来問題になるかもしれない。スペース的にはよい状況である。広い場所は地方にあり、活性化にも役に立つ。 

    【研究開発評価】 

    • 研究費と評価は裏腹の関係にある。グラント審査にはまだ不十分な点がある。機関評価は、大学評価、独法評価が行われるようになる。課題評価、機関評価、研究者評価の三つに分けて考えている。 
    • 三つの中では研究者評価が新たな提言であるように感じる。研究者評価は、機関長による評価とあるが、大学についてはピアレビューが原則であり、これを崩すということであれば問題がある。機関評価の一環として受け止めるとわかりやすい。人事評価とは別次元と考えるべき。また、よくやった人に対する報酬をどうするかという問題がある。 
    • 研究者の個々の成果の積み上げが機関の評価となる。大学では研究者の評価については公開しないのでは。 
    • 現在、検討中ではあるが、研究者の個々の成果の評価を公表することにはならないであろう。 
    • 研究者の評価は、機関評価の際のデータを利用するということも考えられる。さらに、競争的資金による評価もある。 
    • 課題評価、機関評価、研究者評価は三位一体である。独法では、課題の評価がなされ、実行した結果の達成度の評価が機関の評価となり、中期目標の内容自体で評価の基準も異なることになる。基準として論文、特許などとあるが、それだけでは不足で、目標と達成度によることになる。研究者の評価も課題に対してどこまで達成したかによりなされる。 
    • 評価は、人を勇気づける方向でやるべき。役人は何でも数値化したがるが、Log座標でやるのがよい。無効数字をもてあそぶのではなく、桁が大切である。ランキングとは、世界を先導している、日本で一流、もうちょっと頑張りが必要などのように、格とか位を付けるということであり、順番に並べることではない。評価結果を処遇などに反映することが重要。 
    • 大学評価・学位授与機構はあくまでコーディネータであると考えている。英国でやっているような評価を日本でやろうとすると、世の中でとやかくいわれているようなランキングを固定することになってしまう。それぞれの大学の個性に応じた評価をすべきであると考えているが、それが本当にできるかどうか、これから研究してみたい。 
    • 参考資料は経団連において、現計画の反省にもとづき次期科学技術基本計画に盛り込むべきこととして検討した内容をもとに作成した。ポイントは、「国家としての戦略性」の明確化、科学技術政策推進体制の改革、科学技術予算の拡充と予算編成・配分の仕組みの改革である。具体的には、省庁ばらばらでなく、総合科学技術会議による一元的な科学技術行政の推進、経済財政諮問会議との連携のもと予算の運営、重点プロジェクトの産学官連携。産学官連携については各省庁の下での連携では大きな連携ができない。ミレニアムプロジェクトでライフサイエンスに600億円の予算がついたが、配分となると既存ベースで公共事業と同じやり方である。官僚はわかっているのに、自分がその立場になるとできない。これは政治家がやるべきことであろう。国としてやること、省庁がやることのメリハリをつけるべき。 
    • 資料にある科学技術政策の評価というのはすばらしいこと。今まで検討の場において何か割り切れないものを感じていたが、まさにこの点が欠けていたことである。事務局から、予算配分の根本的問題についての発言があったが、予算の使い方とその評価は重要なことである 
    • 総合科学技術会議が行う評価と総合科学技術会議に対する評価があるが、後者を誰がやるかうまく整理できていないところがある。 
    • 科学技術の評価は難しい。10年かけてやるような独創的な仕事もやるべき。また、教育にもいろいろなレベルがあり、最高の教育とは吉田松陰のように若者の心に火をつけること。教育にも評価があるべきだが、教育も研究も評価が難しいものである。研究については実績をみて人を選んでいくことがよい。即効性を求めるあまり、物まね的な改善提案のようなものばかりになっては困る。文部省では実績を蓄積しているが、もっと実績の調査を行うべきである。 
    • 評価者もまた評価を受けるべき。 
    • 評価結果をどう使うのかを考えて評価をするべき。宇宙開発事業団(NASDA)の評価をしたときに、事業団自らでは対処できず、宇宙開発委員会が解決すべき課題の指摘があった。これが改善されず、打ち上げ失敗が起こった。機関評価の結果により、所管行政機関が改善すべき点を対処する、よい成果を挙げた機関に資金をつけるなどを行うべき。評価のための評価になってはいけない。 
    • 評価結果は資源配分に反映させるべき。評価結果を生かすことが重要である。 
    • 現場の省庁が評価を実施するとむなしい結果になる。評価の仕組みを変えるべきではないか。 
        今までの仕組みの外に、研究特別区であるPilot Instituteを作るべき。基礎研究から実用化まで全体を知っている企業の人にそのマネージメントを委託するとよい。 
    • 企業の人が優れているということではなく、いろいろなことを知っている人にリーダーになって欲しいということである。 
    • 大学の評価には企業人も加わることになっている。 
    • 学術的評価については企業は能力がない。しかし、産業に結びつくことについての評価はやさしい。いくら先生が優れていると言っても、全然売れなければだめである。そのような分野の評価は産業界ができる。 
        産学官連携といっても、企業は日本の大学や国研と一緒に滅びることはなく、例えば海外との連携も選択肢となる。企業は精神的にしか大学の支援を行えない。国の予算にて支援するべき。 

    次回会合:6月15日(木)10:00〜12:00
              虎ノ門パストラル

     以上