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 § はじめに 


  科学技術会議による答申、意見等を自らがフォローアップし、これに示された目標の達成状況、問題点の分析等を行うことは、これら答申等の実効性を確認し、また、状況の変化に対応して適時的確に答申等に対する意見の追加、見直し等を行う上で重要である。  

  このような観点から、科学技術会議政策委員会の下に「研究開発基本計画等フォローアップ委員会(地球科学技術)」を設置し、諮問第17号「地球科学技術に関する研究開発基本計画について」に対する答申(平成2年6月、以下「基本計画」という)についてフォローアップを行った。  

  本報告は、関係省庁の本分野の研究開発に関する取組みについてのヒアリングや研究者等に対するインタビュー調査等を参考としつつ、基本計画が策定された後の情勢変化等を踏まえ、本委員会において行った検討の結果をとりまとめたものである。  

  関係各位におかれては、本報告を踏まえ、地球科学技術に関する研究開発の推進について、一層積極的な対応が図られることを期待する。 



 §1 基本計画の概要 


 (1)基本計画における基本的考え方 

  地球は宇宙において人類が生活の基盤としている唯一の星であり、かけがえのないものであるという意識が人々に芽生え、地球上で起こる諸現象を解明しようという人間の欲求は、気圏、水圏、地圏、生物圏及び人間活動圏における各分野の探究を推進させてきた。基本計画をとりまとめた平成2年当時、これら研究の進展による地球に対する理解の深まりは、人類が地球に対して知的挑戦をすべき領域が多く残っていることを認識させ、各分野で対象としてきた諸現象間の相互関係の重要性が認識されるようになっていた。  

  地球科学技術を推進するに当たっては、このような認識を踏まえ、個別的に発展してきた各分野を総合的、一体的なものとして捉え、全体を一つの体系として研究を推進することの必要性を重要な視点として位置づけた。また、人間社会の持続的な発展の維持という観点から、「人間と自然が調和した科学技術」への指向を重要なテーマとしている。基本計画では、地球科学技術に関する研究開発への取組み方として、以下を掲げている。  

  1)関連する科学技術を統合的視点で捉えた研究開発を推進
  2)地球全体に目を向けた巨視的観点と長期的展望に基づいた研究開発の実施
  3)科学的探求と技術開発との密接な連携のもとでの推進
  4)自然との調和を図りながら自然を積極的に活用する研究開発の実施
  5)社会科学的視点を含めた検討、地球環境に対する人間の倫理観の側面の考慮
  6)国・地域の特性に配慮した我が国にふさわしい国際的活動の積極的な実施 

 (2)基本計画の構成・内容 

  基本計画では、上記の基本的考え方に基づき、以下のような重要研究開発課題を設定するとともに、研究開発の推進方策を提示している。 

(重要研究開発課題)

1)地球に関する科学的知見の増大
  地球を一つのシステムとして捉え、歴史的変化の研究、気圏・水圏・地圏・生物圏・人間活動圏ごとの研究、さらに各圏域間の相互作用についての研究が必要。
2)地球に関する科学的知見に基づいた地球の諸現象の予測・予知
  地球規模の自然変動やそれによる各種影響、及び災害等について、モデルやシミュレーション手法の開発を図り、それらに基づく予測・予知の研究が必要。
3)地球に関する科学的知見を応用した持続的発展のための科学技術
  人間社会の持続的発展のため、環境に適応した生活文化の研究、資源調査及び資源変動に関する研究、自然エネルギー有効利用の評価手法の開発、環境影響評 価手法開発が必要。
4)地球環境を保全・改善するための科学技術
  温暖化、砂漠化、熱帯林減少、酸性雨、オゾン層破壊、海洋汚染の対策技術、及び環境負荷低減技術の開発が必要。
5)共通・基盤技術
  人工衛星、航空機、船舶等による観測技術及び情報処理技術やネットワーク技術等について研究開発が必要。 

(研究開発の推進方策)

○地球科学技術は、国を中心とし産学官の連携により目標を明確にして実施する。
○地球科学技術は長期的、学際的、横断的な研究開発が必要であり、関係省庁、関係研究機関等の活動を長期的・総合的に推進していくための仕組みの確立を図る。
○教育の充実、普及・啓発、研究開発の場の拡大、海外派遣、国際発表の活発化に努める。
○我が国にふさわしい研究開発資金の確保に努める。
○我が国の国際的な地位に応じた役割を果たすため、積極的な国際活動を推進する。特にアジア・西太平洋地域を中心とした地球に関する知見についての研究、国際的な研究交流・研究協力の推進、開発途上国との交流・協力の推進を図る。
○観測センサー及び試料採取技術の開発、観測設備の充実、観測・情報ネットワーク、データベースの構築等を図る。
○地球科学技術に関する広範な関心を喚起し、その推進について理解を得るための普及・啓発活動の充実を図る。地球環境の保全・改善に関する知識の普及と意識の向上を図る。  

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