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 科学技術会議生命倫理委員会 
ヒト胚研究小委員会(第12回)議事録 


1.日時    平成12年1月25日(火)    3:00〜5:00 

2.場所    科学技術庁第1・2会議室 

3.出席者 
    (委  員) 岡田委員長、相澤委員、石井委員、勝木委員、迫田委員、武田委員、 
                 豊島委員、西川委員、木勝(ぬで)島委員、町野委員 
    (事務局)科学技術庁  池田研究開発局長、三木審議官、小田ライフサイエンス課長、佐伯企画官 

4.課題 
    (1)ヒト胚研究小委員会報告書案について 
    (2)その他 

5.配付資料 
    資料12−1  ヒト胚小委員会報告書案 

6.議事 

(岡田委員長) 
  それでは、時間になりましたので、第12回ヒト胚研究小委員会を開催いたします。 
  きょうも寒い中ご出席いただきまして、ありがとうございました。 
  それでは、事務局のほうから、配付資料の確認をお願いいたします。 
   
(事務局) 
  確認申し上げます。 
  議事次第の紙の後ろに、資料12−1といたしまして、ヒト胚研究小委員会報告書の案を用意してございます。そのほかに、木勝(ぬで)島先生からいただいた第2章の書きかえ案、結論の新設案の二つの資料がございまして、もう一つ、迫田先生からいただきましたヒト胚研究小委員会報告書案への意見というものがございます。  
  本日ご用意しております資料は、以上のとおりでございます。 
   
(岡田委員長) 
  よろしゅうございますでしょうか。 
  それでは、議事に入らせていただきます。きょうの議事は、ヒト胚研究小委員会報告書案についてというのが主なものであります。前回の議論で、ヒト胚性幹細胞を扱う研究につきましては、おおむね結論が出ました。クローン胚等の扱いを含む当小委員会の報告の取りまとめ方につきましては、いろいろご意見がございました。それらを踏まえて、事務局ので報告書の案を作成して、議論していただくということに今回はなっております。報告書の案につきましては、事前に委員の皆様方のご意見をいただいて、反映させたものを、今回お配りしているという次第であります。  
  そういうことで、まず事務局から報告書案について、主な変更点を中心に、説明をしてもらいます。 
   
(事務局) 
  それでは、お手元の資料12−1に基づきまして、ご説明申し上げます。委員のお手元には、先週の金曜日の時点で、第1次案といいますか、お送りしてございます。一部到着が遅れたものもございまして、非常に申しわけございませんでした。今回ご用意いたしております報告書案に下線が引いてございますが、その下線の部分が金曜日にお送りしたものから変わった部分でございます。  
  それから、大きな構成といたしまして、目次、2ページ目をごらんいただきたいのでございますが、第5章に加えまして、第6章、今後検討すべき課題という章を新たにつけ加えてございます。  
  それでは、内容についてご説明を申し上げます。 
  第1章につきましては、ヒト胚研究をめぐる内外の動向、事実関係を中心にまとめてございます。特に研究系の委員の方々からいただいたコメントを中心に、事実関係等の修正あるいは補足というものがなされております。  
  まず、体外受精とヒト胚研究についての動向、産科婦人科学会からご紹介いただいた、100件の研究課題の報告について言及してございます。 
  2番目がヒト胚性幹細胞の樹立でございまして、米国における樹立の件につきまして触れてございます。さらに(2)といたしまして、胚性幹細胞の性質、どういう性質を持つものかということについて、簡単にまとめてございます。(3)に、4ページでございますが、ヒト胚性幹細胞の応用といたしまして、どういう分野で期待されているかということが記されてございます。移植用材料の作成といったようなことが期待されているということでございます。  
  4ページの3.でございますが、クローン胚の研究について。金曜日にお送りしたものはかなりクローンの個体の部分を大きく書いてございましたが、これは胚を中心に、記述をコンパクトなものとしてございます。  
  次の5ページでございますが、4.といたしまして、今まで記述がなかったんですが、キメラ胚、ハイブリッド胚のところも触れておくべきだろうというご指摘で、ご意見をいただきましたので、その部分について触れてございます。これにつきましては、マウスなどではこのようなキメラ個体の作成を通じて、胚の形成、機関の形成、個体形成の仕組みといったものを明らかにする方法として、既に広く研究が行われているということでございます。  
  同様のことはヒト胚でも行うことが可能でございますが、ヒトの胚と動物細胞を用いるキメラ胚研究は、個体の産生につながる場合には、ヒトの種としてのアイデンティティーがあいまいな生物をつくり出すことになるという懸念を書いてございます。  
  その上で、現在のところ、それぞれの胚由来の細胞が体の各組織にどのようにまざり合うかを制御する技術は確立していないが、ヒト以外の動物胚とヒト胚性幹細胞を用いたキメラ胚による個体産生については、近い将来に特定組織のみにヒト胚性幹細胞由来の細胞を集める技術が開発され、医療応用が可能となることも予想されるというような記述としてございます。  
  またハイブリッドにつきましても、ハムスターなどの動物卵子を用いたヒト精子の検査が行われていることについて、言及してございます。 
  その上で、5.でございますが、主要諸外国の動向といたしまして、イギリス、フランス、ドイツ、それぞれ法律等の枠組みについてご紹介してございます。またアメリカは、委員会でもご紹介しました大統領倫理諮問委員会の報告についても簡単に触れてございます。また、現在調査中でございますが、やはりアジアの韓国や中国についても、もう少し記述を充実させる方向で、調べておるところでございます。  
  7ページでございますが、6.として、我が国におけるこれまでの対応というものを示してございまして、生命倫理委員会の議論のことですとか、当小委員会の設置の経緯あるいはクローン小委員会の報告などについて、簡単に触れてございます。  
  続きまして、第2章……。 
   
(相澤委員) 
  先生、これ、一遍に全部説明すると、わからなくなりますので、1章ごとにやっていったほうがいいということはないですか。全部包括してやりますか。 
   
(岡田委員長) 
  事務局の予定としては、変更したところを全部説明して、それから後に、具体的なご提案のあったお話をして、それから今度、個別に、その中で一番問題になる章のところから議論を始めて、最終的に全体の一つ一つをやってみたいということですが、それでもよろしいでしょう。  
   
(相澤委員) 
  はい。 
   
(岡田委員長) 
  そうしてください。 
   
(事務局) 
  それでは、説明を続けさせていただきます。 
  第2章、タイトルを若干変えてございまして、ヒト胚の研究利用に関する基本的考え方としてございますが、この中で、基本認識、ヒト胚の位置づけ、ヒト胚の研究利用に関する基本的な考え方を示してございます。  
  基本認識につきましては、今までは産科婦人科学会の会告に従って行われてまいりましたが、特にヒト胚性幹細胞の樹立など、研究の展開によって、新たな視点から検討する必要が生じてきているということ、それを踏まえた上でのヒトの胚の位置づけといたしまして、生命の萌芽としての意味を持ち、他のヒトの細胞とは異なり、倫理的に尊重されるべきものであるという考えをまとめてございます。  
  3といたしまして、ヒト胚の研究利用に関する基本的な考え方を記してございまして、2段落目でございますが、ヒトの胚の研究利用については、この可能な限り慎重に取り扱われるべきという要請と、その研究利用の有用性を比較考量した適切な規制の枠組みのもと、一定の範囲で許容され得るというような考え方、ただし、その際に配慮すべきことといたしまして、生命の萌芽たるヒト胚を用いる科学的な必要性と妥当性、礼意をもってヒト胚を扱うことといったこと、2番目といたしましては、基本的なインフォームドコンセントでございますが、提供者の同意、3番目といたしまして、ヒト胚の売買が行われないということ、4点目といたしましては、個人情報が保護されること、5点目といたしまして、可能な限りの情報公開。追加しておりますのは、6点目といたしましての第三者的な立場からのチェックを受けることが必要だということを、1項目追加いたしてございます。  
  以上が第2章でございまして、第3章、ヒト胚性幹細胞の部分でございますが、こちらについては、基本的には前回までの議論を取りまとめたものでございまして、今回大きな変更は加えてございません。ただ、一部形式の変更をしてございまして、1の基本的考え方の最後の段落の部分でございますが、規制の形態という形で起こしておきました段落を、この基本的考え方のところに移してございます。まだ端緒についたばかりで、実績もない分野であることから、技術的な進展に適宜対応していく、そういう自主性を尊重した柔軟な規制というものが、このヒト胚性幹細胞の規制には望ましいのではないかということを書いてございます。  
  2点目といたしまして、樹立の要件、これは今まで議論してきたことを取りまとめてございます。ヒト胚の由来、それからヒト胚を使用する際の留意点、インフォームドコンセント、樹立機関の満たすべき要件等をまとめてございまして、個々の細かい規定ぶりにつきましては、別途の紙にまとめてございます。  
  それから、1点移動したものがございまして、10ページでございますが、(2)ヒト胚を使用する際の留意点でございますが、これの(2)の2)の凍結保存胚であることということは(1)のほうに書いてございましたが、(1)は由来として整理いたしまして、余剰胚という観点から、凍結胚という留意点のほうに移してございます。  
  戻らさせていただきまして、11ページでございますが、ES細胞の樹立に関しての条件、樹立に関する手続を踏まえまして、3といたしまして、ヒト胚性幹細胞の使用に関する検討、使用のことについて、前回までの議論を取りまとめてございます。  
  この中で、少し加えてございますのは(1)の最後の部分でございますが、臨床利用につきましては、ヒト個体へのES細胞の導入だけではなくて、ヒトES細胞及びそれが分化した細胞といったものにつきましても、しかるべき基準が定められなければならないだろうということで、追加してございます。  
  (2)として、使用する必要性があるということ、(3)禁止事項、この辺につきましては、これまでの議論をまとめたものでございます。(4)も同様でございます。  
  (5)成果の取り扱いにつきましては、前回、特許等につきましてかなりご議論いただきましたので、そのご議論いただいたものをそのままつけてございます。  
  (6)(7)も、基本的に前回までのものでございます。 
  その上で、個別の事項につきましては、14ページ以降、インフォームドコンセント等のあり方、それから樹立機関の満たすべき要件、18ページですが、医療機関の満たすべき要件、これは今まで樹立機関の満たすべき要件の中にあったのですが、これを特記したほうがいいだろうというご意見がありましたので、ここに特に1枚まとめてございます。19ページ、樹立に関する手続、20ページ、使用機関の満たすべき要件、21ページ、ヒト胚性幹細胞を使用する研究に関する手続、この部分につきましては、基本的に今までの議論を表としてまとめたものでございます。  
  第4章、ヒトクローン胚等の取り扱いについてでございますが、ここにつきまして、金曜日にお送りしたものからそれほど大きな変更は加えてございません。  
  まず基本的考え方として、生命倫理委員会における議論を紹介した上で、クローン胚等についての基本的考え方、第2段落でございますが、クローン胚等を作成・使用する研究は原則として行うべきではないとした上で、動物による実験が十分に行われており、ヒト細胞を用いて研究を行うことが必要な段階であり、科学的にその実施を是とする十分な必要性がある場合に限り、厳格な審査により個別に実施の妥当性を判断する余地を残すということを基本的考え方としてございます。  
  その上で、ヒトクローン胚、キメラ胚について、それぞれ検討する余地のあるものについて、どういったところかということを、今までご紹介した議論をベースに、まとめてございます。  
  23ページのキメラ胚の議論、24ページのハイブリッド胚に関する説明を踏まえまして、2として、ヒトクローン胚等の規制のあり方を24ページにまとめてございます。基本的な考え方は、先ほども申し上げたとおり、原則として行われるべきでない。ただ、例外的なものとして、個別に判断する余地があるということでございます。  
  次の下線を引いている部分につきましては、これは実は基本的考え方のところに、前回、金曜日にお送りしたものでは整理されておりましたが、規制の考え方に関する記述でございましたので、こちらに移してございまして、前回ご説明した法律とのリンケージの話でございます。厳格な個別審査の結果、クローン胚等を作成・使用する研究の実施が妥当と判断された場合においても、国がその際のクローン胚等の取り扱いのあり方を明示するとともに、その取り扱いの現状を把握することより、クローン胚等の適切な取り扱いが行われることを国として担保する必要がある。そして、適切なクローン胚等の取り扱いから逸脱するような作成・使用者に対しては、クローン胚等の取り扱いが禁止すべきクローン個体などの産生とも密接に関連することから、必要な是正措置を講じることができる枠組みを構築することが必要である。したがって、これらのことについては、法律に一連の手続として位置づける必要があるとしてございます。これは前回ご紹介した枠組みについての記述でございます。  
  その上で、前回のご議論もありました個別審査につきましては、個々の基準等、議論に至ってないというご議論もございまして、考え方だけをまとめてございます。個別に検討するに当たって、どういう点を見るべきかということについて、個体産生に至らない、あるいはその必要性、妥当性が十分にあるということ、そういったような事柄について、項目のみ示すという形にしてございます。  
  その上で、規制の考え方の(1)の上のほうにございますが、仮に実施を検討する場合においても、ES細胞の樹立と同様の厳格な審査といったものをしていく。その際に、こういう考え方というものを見ていくという簡単な記述にとどめてございます。  
  以上がクローン胚、キメラ胚でございまして、第5章、情報公開、25ページでございます。こちらにつきましては、金曜日にお送りした時点では目次だけでございましたが、中身は今回初めてだと思います。  
  まず、近年の生命科学技術における研究の急激な進展によりまして、研究内容が一層高度化、専門化し、その正確な内容の理解は容易ではなく、ともすれば国民一般との乖離が生ずるようになってきた。このため、これらの研究に対する漠然とした懸念というものが存在する。この点は既にクローン小委員会の報告でも指摘されているところでございます。したがって、ヒト胚性幹細胞、クローン胚等を扱う研究を初めとするヒト胚を取り扱う研究の実施に当たっては、その研究に関する情報を可能な限り公開し、研究の透明性を確保することにより、人間の生命に関連した科学技術に対する国民の懸念に答えていくとともに、これら科学技術と社会のあり方について判断する材料を提供し、国民の納得を得て進めていくことが必要であるとしてございます。このため、研究者自身が研究の実施状況及び成果の公開に配慮することはもちろんとして、国においても、研究の独創性や知的所有権に配慮しつつ、これらの研究の実施状況や成果、成果に基づく応用事例の積極的な公開に努めることが望ましいとしてございます。  
  また、情報公開に加えまして、研究活動の国際化が進む中、ヒト胚性幹細胞等のヒト胚に関する研究に対する考え方について、国際的な情報公開の議論を深めることの重要性というものを指摘してございます。  
  26ページ、今回追加した資料でございますが、第6章として、今後検討すべき課題を整理してございます。本報告書においては、生命科学に関連する生命倫理の問題として、ヒトの生命の萌芽と言えるヒト胚に関連した研究を中心に検討を行ったとしてございます。その中で具体的検討の対象としたのは、緊急にその検討が必要であったヒト胚性幹細胞をめぐる問題と、クローン小委員会から議論が当小委員会にゆだねられたクローン胚等の取り扱いであったとしてございます。これらの検討の過程においても、そもそもヒト胚とは何か、その取り扱いがどうあるべきかということを議論していく中で、現在、日本産科婦人科学会の会告にのっとって行われている生殖補助技術に関する研究などについても、ヒト胚の研究利用という意味で共通項があるとの指摘がなされたということでございます。  
  生命の萌芽であるヒト胚を扱うという観点から、今後ヒト胚の研究利用について総合的に検討していくことも必要であると考えられる。また、学会の会告にのっとって行われているヒト胚研究は生殖補助技術と非常に密接なかかわりを持つものであり、ヒト胚研究一般の枠組みを検討するに当たっては、その点についても考慮が必要であるとしてございます。この生殖補助技術のあり方については、現在、厚生省の諮問機関である厚生科学審議会の先端医療技術評価部会で検討が行われており、その結果や最新の科学的知見に基づいて、我が国のヒト胚の研究利用のあり方について、今後も議論を継続していくことが必要であるとしております。その上で、その際には、第2章に述べたように、本報告書で示した考え方を基本とし、ES細胞の樹立などに関する規制の枠組みを考慮して、検討が行われるべきであるという、今後に残された課題について、特にヒト胚研究一般といった観点の検討が必要だということを、報告書の最後に取りまとめてございます。  
  前回もお配りしたインフォームドコンセント説明文書、同意書のイメージを参考資料として添付してございます。 
  以上、今回事務局で用意いたしました報告書の案でございます。 
   
(岡田委員長) 
  どうもご苦労さまでした。この間の委員会から後、時間がないところで、随分大変だったと思うんです。相澤委員から少しコメントがあったように、全体を通しましたので、少しややこしかったかとも思いますけれども、一応皆様方のところに前もって原案をお送りしてあるというようなことも含めて、勘弁してください。  
  それで、その次に、この報告書について、木勝(ぬで)島委員と迫田委員のほうから、別紙のとおりの意見が出されているわけでありますが、このご紹介をいただいたらどうかということのようですが、どうでしょうか。よろしいですか。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  報告書案、大分煮詰まってきたなと思いますが、やはり最大の論点はヒト胚についてどういう考え方をするかという、第2章の書き方であると思います。それは、この委員会でも第1回目から議論が出たり、引っ込んだりしてきたところであります。きょう、その総括ということで、この第2章の書き方が一番重要だと思いまして、こういう書きかえの文章の案を検討していただきたく、メモをお出しいたしました。ヒト胚研究小委報告案第2章の書きかえ案という、私の名前だけで出されております、1枚紙です。  
  簡単なところから申しますと、後半部分の3、研究の認められる条件というところについては、既にきょうの案でも一部採り入れられていて、かなり引っ込めてもいいところもあるんですけれども、その3番にいく前に、やはり最初からいきます。ごめんなさい。  
  第2章の1、基本認識というところには、なぜわざわざ日本の政府が初めてヒトの胚の取り扱いについて、生命倫理委員会の名のもとに議論を行って、政策を示す必要が生じたかという点を、この原案よりもう少し社会の側に立って書くべきではないかと思いまして、文案を用意してみました。読み上げさせていただきます。  
  「基本認識。第1章で述べたようなヒト胚研究の展開は、医科学上大きな可能性を期待される一方、生命の始まりを操作することが人の尊厳に抵触しかねないとの危惧も予想される。この相反する二つの点について、社会の認識はまだ十分でなく、本小委員会もそれを組織的にくみ上げるには至っていない。しかし、当面する課題において、人の生命の尊厳を守りつつ、発生学、再生医学及び生殖医学の研究の適切な実施を保障するために、ヒトの胚をどこまで、どのような目的と条件で研究に用いていいかを検討する必要がある。」  
  要するに、可能性もあるんだけれども、ヒトの命の始まりをいじっていいんだろうかという相反する観点があって、その二つをどう調整するかが中心問題だということです。その一つずつの点について、まだ社会の認識が十分でないだろう。それから、本小委員会もクローン小委員会のときにやったようなアンケート調査やヒヤリング調査を全く行っておりませんので、その点についてちゃんと言う必要があるのではないか。しかし、直面している課題もあるので、やはりここでヒトの胚をどこまで、どのような目的と条件で研究に用いていいかの原則を示すべきであろうという趣旨です。  
  第2章の2、ヒト胚の位置づけについてはこれで結構だと思います。次の3の研究の認められる条件で、きょういただいたバージョンで、まだ私が言いたいことがあるとすれば、(3)と(5)です。  
  まず(3)ですけれども、事務局案の8ページの4)になりますけれども、研究利用に提供されるヒト胚には個人情報は一切つけられないということでありましたので、そのことをはっきり書いたほうがいいのではないかと思います。8ページの3の4)にかわるべき文言として、私のほうは(3)という番号になっておりますが、「研究に用いられるヒト胚は、提供者を特定できないように、また提供者の個人情報が一切付されることなく提供されること」としたらいかがでしょうか。これは3章以降でのこの委員会の合意をただまとめただけです。保護されるというよりは、このほうが明確な表現になるのではないでしょうか。  
  それからもう一つ、事務局案の3の5)、公開に関するところです。私のほうの案でも(5)になっておりますが、主な相違点は、公開の対象に審査のプロセスも入れろということです。「(5)ヒト胚研究の審査過程、審査結果、実施状況と成果は可能な限り公開されること。」国と研究機関の二重の審査が行われる以上、現在同じように行われている遺伝子治療の審査と同じに、研究計画の審査経過と結果も公開されるべきではないかということです。遺伝子治療の国の審査委員会は公開されておりますし、その結果についても公開されておりますので、それに合わせるべきであるという意見です。  
  私の申し上げたい点、第2章については以上です。 
   
(岡田委員長) 
  もう一つ出されております。迫田委員のほうからお話しいただけますか。 
   
(迫田委員) 
  私は、先週の金曜日の段階でいただいた報告書案で、細かいところを指摘して、意見を言うというレベルではなくて、やはりちょっと全面的に違うと思ったので、意見として出させていただきました。  
  その一番大きい点は何かといいますと、一番最初に書きましたが、ヒト胚を扱う研究について、国のレベルでの議論、報告がこの委員会が初めてであるということで、そのことについては非常に慎重に考えなくてはいけないと思うという意味でした。  
  ただし、結論としては一緒なんです。つまり、一方で、ES細胞の研究のためには、厳しい条件のもとで、研究を認める方向で意見が集約されてきたということについては、十分に理解をしているということです。ですから、第2章の1の基本認識、ここだけ少し読ませていただきます。  
  これまでヒト胚の研究利用については、日本産科婦人科学会の会告に従って、生殖補助技術の研究などが行われてきた。しかし、その実態については、この委員会で例数が報告されただけで、事後の検証等は行われておらず、その内容も不明確である。ヒト胚を扱う研究について、これまで国レベルの機関で検討されたことはなく、人の生命の萌芽としての意味をどのように一人一人の国民がとらえているのか、議論もまだ不十分な段階である。一方で、体外受精の結果得られた受精卵の中で、凍結された後に廃棄される胚が多数存在することも事実である。アメリカで樹立されたヒト胚性幹細胞はこうした余剰受精卵から作成されている。我が国でも、ヒト胚性幹細胞の樹立は今後の医療の進展に欠かせない研究であり、研究の可能性は全く否定してしまうものでないと、一応私の意見としては、このような文章に、言葉はまだ未熟かもしれませんが、書かせていただきました。  
  それから、3番のところの基本的な考え方について、一番配慮してほしいことは、この提供者は不妊治療をした患者さん夫婦であるということを頭の中に必ず入れておいていただきたいということであります。それは、胚の提供者は患者さんであるということで、その方々の意思を十分に尊重することと、その善意の提供に対して礼意を持ってほしいということを、ぜひ加えてほしいということであります。  
  基本的には、ヒト胚を研究目的に利用し、滅失する行為は倫理的にはむやみ勝手に行ってはならないということをまず基本的な考え方として持って、しかし、許容され得ると考えられる範囲を挙げるというふうなことにしていただきたいということであります。  
  それから、最後の章については、ここに先週金曜日の段階ではなかったものですから、ぜひこういう趣旨のことを入れてほしいということを書かせていただきました。きょういただいたのでは、緊急の課題だったのでという書き方でありますが、私の考えでは、ほんとうはもっとやるべきだったのにできなかった、不十分であったという、非常に委員としての反省を込めて書いた文章であります。  
  ただし、生殖補助技術全般についても、ヒト胚性幹細胞の研究においても、胚の提供者になるのは同じ不妊治療を受けた患者さんであるということで、そういう意味では同様の配慮が求められるということは、ぜひ書き加えていただきたいと思っております。  
  以上です。 
   
(岡田委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  そういうコメントが出ておりますので、特には、多分基本認識というあたりの第2章の問題と、第6章の問題というところのどんな表現の幅を持たせるかということが、まずは多分相当皆さん方が気になるところだと思います。  
  今の木勝(ぬで)島委員と迫田委員のご意見、それから事務局からの案というのを三者合わせた格好で、この第2章と第6章に集中することにして、とにかく基本的な立場みたいなところになりそうですが、そこで、報告書でどういう表現を使うのが一番妥当性があるかというようなことを含めて、ご意見を聞かせていただけるとありがたいと思うんですが、いかがでしょうか。どうぞ。  
   
(武田委員) 
  三つ拝見いたしまして、微妙にニュアンスが違うんですね。私は、非常に難しい条件下であるけれども、やはり肯定に進める必要があるというニュアンスがほんとうは非常に必要じゃなかろうかと思います。そういう意味で申しますと、迫田委員のお書きになったのは非常にネガティブなお書きようではなかろうか。特に一番最後の文章、「研究の可能性を全く否定してしまうものではない」という書き方です。これはどちらかと言えば、非常に例外的に認めますよということにつながるのではなかろうかと。そういう意味で申しますと、木勝(ぬで)島委員のお書きになったのが、私は非常に妥当性があるような感じがいたします、この三つの中では。  
  それからもう一つ、ついでに申しますと、第3のところで、木勝(ぬで)島委員が、提供者が特定できないように個人情報を一切つけるな、こういう書き方をなさいというふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、この保護は、胚の樹立機関にいったときの保護だけではなくて、提供機関でもやはり保護されないといけないと思うんですね、患者情報は。だから、患者情報というのは、コンセントをとった場合、その同意書はカルテと同様、あるいはそれ以上に厳重に保管されることというニュアンスになっていたと思うんですけれども、そういうニュアンスを踏まえますと、提供者の個人情報が保護されることと、これはもう少し強い言葉で言ってもいいと思うんですけれども、個人情報がともかく保護されるということを全体として言及しておく必要があるのではなかろうかと思います。  
  二つ、今の段階で気づきましたので、申しました。 
   
(岡田委員長) 
  ありがとうございました。 
  もう一つ添付書類で、結論、ヒト胚研究に対する基本指針新設案というのが、勝木委員と木勝(ぬで)島委員の名前で出ていますけれども、こっちのほうは……。  
   
(相澤委員) 
  先生、済みません。2章だけを先にやって、6章と分けて議論して頂けませんでしょうか。両方やると混乱すると思うのですが。 
  それで、僕の意見は、僕も2章に関して木勝(ぬで)島委員の案を取り入れたらどうかと思います。事務当局がつくってくれた案よりも、こちらのほうが少し精神論みたいなのが基本的に入っているので、そういう形で、第2章は多少格調高くと言うと何ですが、入ったほうがいいんじゃないかという意味で。基本的な考え方は変わらないことだろうと思うんです。  
  それから、3番目の項に関しては、僕も武田先生と同じように、木勝(ぬで)島委員はそう書いたつもりではないんでしょうけれども、「提供されること」と言うと、提供されるときだけ守られればという疑問を生むおそれがあるので、それは武田委員の言ったとおりだと思います。  
  この5番目の審査過程、審査結果も公開するということは、事務の案の中にそれは入れたほうがやっぱりいいと思います。そういうので大体いいんじゃないでしょうか。  
   
(石井委員) 
  私も、木勝(ぬで)島先生の案の基本認識に賛成しますが、迫田先生の現状認識的なものは入れても良いとも思います。二つを折衷して、つくるのがよいと思います。  
   
(相澤委員) 
  これ、両方とも同じじゃないですか、迫田委員と木勝(ぬで)島委員の、変わらないような気がするんですけれども、どこら辺が違いますか。 
   
(石井委員) 
  現状認識の部分です。 
   
(相澤委員) 
  その部分ですね。 
   
(石井委員) 
  はい。 
  それと、3番の5については同意見ですが、3については、私は、ES細胞については、個人情報が一切付されることないということで合意はしたと思うのですが、一般原則としてそうして良いのかどうかは、私自身はわからないのですけれども、研究者は構わないのでしょう。  
  それ以前の問題として、事務局から出された案で、読んでいてどうしても気になるのは、3の2段落目の「この可能な限り慎重に取り扱われるべきという要請とその研究利用の有用性を比較考量した」という部分です。「慎重に取り扱うべき」というのは、これは結論ではないだろうか。どちらかと言えば、研究目的として利用を制限するということが片方にあって、片方に利用するというものがあって、中間として慎重な取り扱いという形が導かれるような気がしたので、片方が慎重に行うべきであるという要請にしてしまうと、違うような気がします。  
  以上です。 
   
(岡田委員長) 
  そこら辺は事務局で検討して下さい。 
   
(迫田委員) 
  私はきっとへそ曲がりなんだと思うんですけれども、例えばヒト胚の位置づけの一番最後、可能な限り慎重に取り扱わなければならない、今の石井先生のお話のところの「可能な限り」という、この「可能な限り」という言葉は非常にひっかかるんですね、つまり。可能でない場合はいいというふうに読めるというか、何で「可能な限り」ってわざわざ書くのだろうと。つまり倫理的に尊重されるべきものであり、慎重に取り扱わなければならないというふうに言い切ってしまってはいけないのでしょうか。そこのところがとても気になって、ここだけいつも外したいと思ってしまうのですが。  
   
(事務局) 
  特に「可能な限り」ということに深い意味はございません。強調するつもりで書いたんですが、そういう懸念を生むようであれば、この可能な限りは取っても構わないと思います。  
   
(岡田委員長) 
  確かに気になります。 
   
(勝木委員) 
「可能な限り」というのは、隠そうと思えば隠せるという意味が入っているような気がするので、そういうあいまいな表現でなくて、「すべて」にするか、入れないか、どちらかにしていただきたいと思います。  
   
(町野委員) 
  今の最後の点からなんですけれども、先ほど石井さんの言われたところですが、言葉としては確かにおかしいので、慎重に取り扱うことという要請と比較考量するということ、これはあり得ないので、研究の有用性あるいは必要性と、それからヒト胚の価値が尊重されなければいけないことと比較考量した上で慎重に進められなければいけないということにおそらくなるんだろうと思います。そこらは事務局のほうで整理いただければ結構だろうと思います。  
  それから木勝(ぬで)島委員と迫田委員の両方の基本認識のところで、いずれもこの委員会としては十分まだやっていないし、あるいは産婦人科学会のほうもどうもルーズであるというようなのが、おそらくお二方の意見を突き合わせたのだと思うんですけれども、これを入れるかどうかは、もう一回私は議論すべきだろうと思います。そして、入れるとしたら、これは基本認識の問題ではないわけですから、今後の検討課題の中にこれを組み入れて、第6章のほうでむしろ議論すべきだろうと思います。  
  しかし、いずれにせよ、今のような認識の仕方、この委員会としては十分まだ議論していないということと、それから産婦人科学会についてのそれをどう考えるかということは、もう一回これは議論せざるを得ないだろうと思います。  
  それから、第3点目で木勝(ぬで)島委員の幾つかのヒト胚の利用に関する基本的な考え方の修正点なんですけれども、一つは、木勝(ぬで)島委員の3番目の個人情報についてのお話は、私は実は前回も休んで時々出たり入ったりするのでどこまで議論されたか合意がどこにあるのかわかりませんけれども、一切胚の提供者が特定できず、その人の例えば病歴なども全部カットされるべきだということまでここで合意されたということであるとするならば、これはかなり思い切ったものです。もしそこまでほんとうに合意されたのであれば、やっぱり書くべきだろうと思います。  
  それからもう一つは、その審査過程、審査結果等々の公表なのですが、この場合の公開の意味ですけれども、書面による公開なのか、例えばインターネット上で見せたりするのか、それともいわばライブで見せるという意味まで含むのか、木勝(ぬで)島委員の話を伺いますと、どうもライブで見せるところまで含んでいるようにも聞こえましたけれども、もしそうだとすると、この点もさらに議論される必要が私はあるように思います。  
  以上です。 
   
(武田委員) 
  今までの胚研究の経緯で、産婦人科学会のことが出ましたけれども、産婦人科学会がこういうふうに少し拡大した会告を出しましたのは2年前なんですね。まだ2年ぐらいしかたってないんですよ。その課題は既にもう全部公開しているわけなので、この間委員長が言いましたように、その結果について十分サーベイできてなかったというところは、学会としてもこれからやるというふうに、この間、ここで申し上げたように思うんですね。  
  そういたしますと、今までの報告がなされていないからルーズだというふうなとられ方は甚だ心外なんですね。だから、もしそれがルーズであるかどうかでしたら、今度学会がフォローして、その経過を出すというふうに、この間ここで申したと思いますので、その結果を見てから、ルーズであるかどうかは私は判断していただきたい。ここでこれを書くのは構いません。産婦人科学会がイニシエイトしてやったということを書くのは構わないけれども、ルーズかどうかという個別的判断は、これは別物だと思います。  
   
(岡田委員長) 
  今の町野委員のコメントが幾つかあったものの中で、今お話のあったことも含めてのこの委員会の立場はどういう立場であったかというあたりのところと、基本的な認識というのと少し違うところがあると思うので、これをどうするかというのはやはり考えてみなくちゃいけません。  
  結局事務局案としては、最後のところに、将来の問題として残したところをまとめてくれたということになるわけですね。だから、そういう格好でやったものを、基本理念のところで足らなかったという点を書いていただいて、それで、最後のところで、将来に残したものというような形のつくり方をしてある、一応これはそう考えていいんだろうと思うんですが。  
  あと、木勝(ぬで)島委員の2章に関するところは−−どうぞ。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  町野先生のご指摘が僕には理解できないので、もう一度私の案をよくお読みください。産婦人科学会がルーズであるなんて、私のほうの文案には一言も書いてございません。  
  これを後ろに回すというのは、僕はおかしいと思います。何でこういううるさい検討をやらなければならなくなったかということについて、私のこの基本認識の文案の趣旨は……。  
   
(相澤委員) 
  どちらの案について言っているかが混乱しているので……。 
   
(迫田委員) 
  多分私のほうです。 
   
(相澤委員) 
  先生のほうじゃないと思うんですよ。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  そうですか、ちょっとそういうふうに聞こえたので。ひっくるめて言うと、この私の文案を採用していただけるのであれば、この第2章の基本認識の最初の部分に置いていただかなければ意味がないということを申し上げたいということです。  
   
(岡田委員長) 
  どうぞ。 
   
(迫田委員) 
  多分私のところをおっしゃっているんだと思いますので。私は基本的にはルーズだというふうに書いているつもりは全くないんですが、まだ国民の世論とか、一体受精卵の研究が行われているということすら伝わっていない段階で、そういう意味では非常にこの報告が先走りをすることを危惧するということが一番のことであります。  
  ただ、木勝(ぬで)島先生が書かれた基本認識のここの部分がそっくりそのまま基本認識として書かれるんだとすれば、私はこれで同意することはやぶさかでありません。  
   
(岡田委員長) 
  基本認識をどうするかというのは、まだ少し議論の余地があるわけだと思ったんですねこの委員会のスタートのときから、私がいつも言ったことは何かというと、このヒト胚の問題で、産婦人科学会で今取り扱っている生殖医学の土俵を超えた格好で、医学の研究に新しい分野が生まれようとしている、それをどうするかというところに問題がある。そのための、その緊急度のためにできた委員会ということで、私自身は理解していたわけで、それは皆さんに何回も私はお話ししたと思うんです。  
  確かに今ご議論になっているような幅の問題点というのはあるわけですけれども、これをどう取り扱います?今私自身がスケジュールの意味でやっておきたいことは、いつか勝木委員がおっしゃってくださったけれども、とにかく狭い道、細い道なんだけれども、何とかそこのところを歩いていけるような、ES細胞を取り扱うというのがいけるような工夫をしてみたいというのが第一義的なものであったわけでして、これに関しての報告という一つのステップというのは、はっきり出しておきたいと私は思っています。  
  それで、いわゆるヒト胚全般の問題に関しては、できることだったら、これの案が、こういう格好での一つのステップというのをやった後で、この委員会でも私は結構だと思いますけれども、ほんとうにやってみてください、ヒト胚というのを中心に置いて。それで、どういう格好でまとまるのか、教えてほしいと思っています。  
  ですから、私の意見というか、希望は、とにかくES細胞を実験系の中に入らせていくために、一般の人たちとの対応も含め、社会的な一つの理解度も含め、こういう形ならあり得るであろうというあたりのところを討論してもらったと思っているんです。  
  どうぞ。 
   
(勝木委員) 
  今の点ですが、そういう形で議論していって、具体的な議論をさらに理由づけたり、あるいは倫理についてそれぞれのお考えのある方が直接生殖医療ともこれは考えざるを得ないんだということが、集約されてきているんだろうと思うんですね。それを基本認識の中に木勝(ぬで)島さんのような案で書く分には、先生がご心配になるような外れたことにはならないと思うんです。むしろ先生がおっしゃるような意味で、特に木勝(ぬで)島先生の表現は、ヒト胚をどこまでどのように、適切な実施を保障するために条件を検討しましょうということがきっちり書いてございますので、先ほど先生がわざわざ引用してくださいましたように、細い道を渡るということは、その背景にあるものについての、国民の不安というものをここできっちり出すことが、むしろそれを実施することを保障するんだという書き方だと私は思うものですから、むしろこれは積極的に書いておくべきではないかと思います。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  その辺はずっと第1回から、この委員会はES委員会なのかヒト胚委員会なのかというのでさんざん議論してきたことですので、もう繰り返しません。ここで私が申し上げたいことは、この報告書全体をごらんになっていただければ、27ページの報告書のうち12ページ以上をES細胞に費やしている。細い道どころか実に太い道が開かれたというふうに読む人もいると思うんですね。この報告書の大半はES細胞研究を許していい条件、実施条件について事細かに書いてあるわけですから、報告書全体で見れば、非常に太い道が開かれている。それを、この第2章のところだけで、この基本認識のパラグラフだけで見るのはおかしいと思います。岡田委員長のご危惧は当たっていないと僕も思います。  
   
(西川委員) 
  ただ、僕もなるべく言わないでおこうと思っていたんですが、基本的な認識に関してはかなり僕の倫理観と違いますから、ただし、もちろんコンセンサスをとるというところに関しては、僕も言わないでおこうと思ったけれども、今の細い道か太い道かということに関しては、僕は木勝(ぬで)島さんにもEメールで送ったと思うんですが、やっぱり事の経緯をきちっと見れば、どういう形でこれが明らかになってきたかというのは明白だと思うんですね。すなわちクローンというのは、ロスリン研究所でクローン技術ということがされた。もちろんそれより前にジョン・ガードンがやっていますけれども、それをちゃんと科学者が、いろんな可能性があるのではないか、いわゆるソサエティーとしてきちっとプレゼントしているわけですね。その後、ES細胞に関しても、例えばEG細胞の樹立過程ですら、樹立がスタートしたときから、いろんな問題があるということも含めた上で、プレゼントしているわけですね。ですから、これ、例えば、多分そういう形で物事がこれから明らかになっていくんだろうと思うし、社会のほうが何かはっきりとした倫理観というのがほんとうに存在しているのではないか。変な言い方をすると、結局僕らが住んでいるところはポストモダンな社会であって、そういう中で物事のあらわれ方を見たときに、やはり今クローンが問題になり、ES細胞が問題になるというのは当然であり、ほかのものに関して、その問題が提起することも事実ですから、やはりクローンであり、ES細胞を中心に考えるというのは、科学者がきちっと責任を果たして、つまびらかにしてきたそのプロセスに関して、全くアプリシエートしないということにつながるんじゃないかと思うんです。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  今西川委員のおっしゃられたことは、第1章にもう十分以上に書き込んであることではないでしょうか。 
   
(西川委員) 
  ただ、それだからといって、今何がイシューであるかということは、要するに科学者は、例えば生殖医療、それから例えばクローン研究のときに、生殖医療まで考えて、プレゼントしていないわけですね。ただし、それがプレゼント、要するに議論の対象になるということは、今この会議でもわかると思うけれども、それが当然議題に上ってくるということは認識しているわけです。ですから、ES細胞について、実際にはやるのであるということに関しては極めて明々白々な問題であり、そこに関する手続をどうするか、なるべく言わないでおこうと思ったんですけれども、結局倫理の問題というのは、はっきり僕自身においては、ディスクロージャーをどう手続化して、物を見せるかというプロセスに回帰すると思っているから、これは、しかし、そこに関して議論を再度喚起する気はないです。  
   
(相澤委員) 
  ちょっと抽象論で、問題のポイントが……。 
   
(西川委員) 
  どれだけよく見せるかということに……。 
   
(相澤委員) 
  要するに問題点として西川先生が言っているのは、この基本認識の木勝(ぬで)島案は、これではいけないというふうに言っているんですか。 
   
(西川委員) 
  僕はかなり絶対的なものがある可能性はあると思いますよ。ただ、これに関しては、別にゼネラルなコンセンサスとして、ここの雰囲気を見ていても、皆さんがほとんどオーケーとおっしゃっているんだから、そこに関して議論はする必要はないし、その後、例えばやればいいと思う。当然オープンエンドにするわけでしょう……。  
   
(相澤委員) 
  僕は町野先生の意見がもっともだと思うんですけれども、迫田委員や事務局の案にあった日本産婦人科学会の問題は一番最後の章に持っていってはどうでしょうか。実際、日本産婦人科学会の会告というのは、これについて我々はそんなに十分議論したわけでもないし、またこれはES細胞とかそういうことが出てくる前に出たものなので、産婦人科学会の現在の方針を基本的考え方の中で議論することは、あまり適当だと思えません。問題があるとするなら、町野委員かおっしゃるように、一番最後のところですか、そこのところで、今後の課題として述べたらどうでしょうか。産婦人科学会も現状においてこの会告だけでは十分でないと考えていることはこの間おっしゃっていたことです。後に回すことにすると、その部分だけを除けば、迫田委員の書いていることと木勝(ぬで)島委員の書いていることは基本的に同じなので、基本認識の部分はそれぐらいで終わらせたらいかがでしょうか。  
   
(迫田委員) 
  私は木勝(ぬで)島さんの意見に賛成、同意しますので。 
   
(豊島委員) 
  一番の問題は、やっぱり基本認識に何を盛るべきかということだと思うんですね。それで、僕もスタートは木勝(ぬで)島先生の書かれたものがいいと思うんです。基本認識の中に、ヒト胚研究の展開に当たって、なぜこれが必要かということが、一応一番先に書かれているわけですね。第1章までにそういうことが書かれているかと思ったら、集中的に書かれているところはないわけですね。だから、基本認識のところにはやっぱりそれが書かれたほうがいいんじゃないかというのが一つ。  
  それからもう一つは、木勝(ぬで)島先生と迫田先生、両方がおっしゃっている、社会認識が十分にはまだくみ上げる暇がなかったということだと思うんですね。それも事実なので、やはりここで盛っておいたらいかがかと。それは後で検討すればいいと思うんです。  
  お二人というか、木勝(ぬで)島先生の中に入ってないのが、やはり産婦人科学会で先行して扱っていたという現状認識がここには入ってないので、それは事務局案程度にここへ入れていいんじゃないかなという気がいたします。今後の検討は後ろでいいけれども、現状認識としては、産科婦人科学会で扱ってきたという現状認識があってもいいんじゃないかという気がするんですが。  
   
(迫田委員) 
  一言言ってもいいでしょうか。その産科婦人科学会のことをここに書いたほうがいいと思ったのは、事務局案は産科婦人科学会の会告によるヒト胚研究は既に行われていると、それで、胚性幹細胞については、それにプラス新たな視点があるから、検討が必要であるという書き方をしておられるんですけれども、そこのところは同意できないということでありまして、つまり現実に行われているということと、それに対する評価はここへ書く必要はないとは思うんですけれども、実際に行われているから、既に実績があるという書き方だけは納得できないということの指摘だったんです。  
   
(勝木委員) 
  その点は、以前の原案よりもはるかに追認の姿勢が緩やかになっているので、木勝(ぬで)島先生の文章−−豊島先生がおっしゃったことと全く同じですが、の下にこの事務局案をつなげて、それを基本的認識にするので多分いいんじゃないかと思いますけれども。  
   
(事務局) 
  それでは、事務局の提案した基本認識の部分は木勝(ぬで)島先生のを基本的に採用することとして、少し後でクオリファイをいろいろさせていただきたい点はございますので、ちょっとそこは事務的にさせていただいて、言葉の使い方とか確認させていただきますが、木勝(ぬで)島先生の案をベースに書くという……。  
   
(勝木委員) 
  いや、事務局案もそれにつけ加えるというのが木勝(ぬで)島さんの案ですよ。 
   
(事務局) 
  産婦人科学会、はい、現状認識のところですね。 
   
(勝木委員) 
  先ほどの町野先生がおっしゃった件なんですが、そこまで完全に切り離すかどうかということですけれども、それは多分条件だったと思います。それを認めるときの、完全に切り離すという。  
   
(勝木委員) 
  ES細胞についてですけれども。 
   
(事務局) 
  ただ、今3.の書き方はヒト胚研究、ES細胞ではなくて、ヒト胚研究に関する一般的な書きぶりとして書いてあるものですから、そこについて、そこまではっきり書き切るかどうかというのはちょっと私は疑問があって、事務局のほうは定性的に表現してございます。  
   
(相澤委員) 
  僕もそうだと思うんです。ヒトES細胞の取り扱いについて3章以降でそのことをはっきり書くのはいいと思うんですけれども、この時点では基本的な考え方ですから、ですから、提供者の個人情報が保護されることという一般論でとどめておくことで、別に差しさわりはないんじゃないかと思うんですけれども。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  おっしゃるとおりで、先ほどの私の提案では胚の提供機関のほうに個人データが存在するということをきちんと考えておりませんでした。ですから、提供者の個人情報が提供機関において厳重に保護されることとか、そういう文言にしていただければ、非常に明快で、わかりやすいのではないかと思います。  
   
(石井委員) 
  3では、迫田委員の提案の3の1)の「ヒト胚は研究目的のために作成してはならない」という点は、事務局案にはないようですが。 
   
(事務局) 
  事務局案の考え方をちょっとご説明しますと、一つ非常に包括的にいわゆるヒト胚という広い範囲でとらえる場合に、例えばハイブリッド胚はヒト胚でないのかもしれませんが、ハムスターですと、あれは一種の受精試験ということになるので、それが果たしてこの一切ヒト胚は研究目的のために作成してはならないということで言えるのかどうかと。あと、これは武田先生にご確認したいんですが、以前いただいた産科婦人科学会の会告の中では、受精試験に見えるような研究テーマが入っているところもあったと思うんですが、そこが果たしてすべて研究目的で胚を作成してはならないという言い切った形でよろしいのかどうかというのが、ちょっと自信がなかったものですから、落としてございます。  
   
(武田委員) 
  キメラ胚で精子生殖試験が行われるというのは今までもやられていたことで、それはこの場でも私は申し上げたことなんですけれども、これは明確に胚から個体をつくるという方向にはいっていない。受精が成立するかどうかということだけを調べているんですね。そういう条件下で今までやられてきた事実がある。だから、それをここでどう考えるかというのは、またここでの問題だと思いますね。  
  もう一つ、何をおっしゃいましたか。 
   
(事務局) 
  以前、産科婦人科学会の研究のテーマの表を見たときに、一種の受精試験のようにとらえられる、精子、卵子という材料といいますか、そのもののところにありまして、受精を調べるような、そういう試験のテーマみたいなものが見当たったものですから、これは完全に言い切っていいのかどうかというのがよくわからなかったものですから、確認したかったんです。  
   
(武田委員) 
  受精の仕組みについては、これは動物のものを使いまして、随分前から行われているわけなんですね。それと同じような受精の仕組みをヒトのものでやったということは、基本的にはないはずなんですね。これは何回も出ておりますけれども、いわゆる余剰胚をどう使うかということに研究は限定されています。だから、それ以前の問題とか、着床させるとかいうところには一切いってないはずです。もしそういうテーマがあるということでしたら、そのテーマを直接倫理委員会にお問い合わせいただきたいと思います。そういうことはないはずです。  
   
(岡田委員長) 
  どうぞ。 
   
(石井委員) 
  精子の受精能力を調べる場合はヒト胚を作成することはないと思います。もう一点は、受精の研究が必要なのかどうかは、私全くわからないのですが、それを認める可能性があるとするとしても、研究材料としてヒト胚をつくらないということは言えるのではないかと思います。  
   
(武田委員) 
  おっしゃるとおりです。研究材料としてヒト胚をつくるということ禁じておりますので、そういうことはないと。その中で今までの受精実験というのが成り立つわけなので、したがって、受精実験は基本的にないというふうに私は認識しています。  
   
(岡田委員長) 
  大体ある方向性が出ました。いいですね。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  審査結果の公表のところの文言については、まだ合意をいただいていないのではないでしょうか。 
   
(相澤委員) 
  要するに公開でやるという、公開の意味ですよね。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  審査過程の公開ということをここに盛り込んでいいかどうかということですね。 
   
(岡田委員長) 
  これはもう公開という原則をここで決めたらいいことで、あとの細かいところは具体的に案をつくるところでやってもらったらいいことじゃないですかね。ここで非常に細かい縛りをして、しかも、それに関してちゃんと責任を持ってやれるかと言われると、これはどうもそうはいきませんね。だから、ここではできるだけ、まあいろいろな討議の中で、例えばES細胞をつくってくれる研究所がどうこうというコメントもずっとあったけれども、それは条件を設定しただけのことであって、どこの研究所がそれに当たるべきというのをここで指定する必要は全くないと思いましたけれども。  
  そういう幾つかのことがたくさんあると思いますね。細かいことを言ってしまうと、ここで言えるほどの根拠を持っているかと言われると、これは非常にそこまでのことのないことが多いですね。ただ、原則論としてはこうあるべきであるというのは、ここで言えると思いますね。だから、今のところで、あまり細かい条件のところまでの公開というのを指定する必要はなくて、公開という原則でいいと思うのですが、これはどうなんですかね。  
   
(相澤委員) 
  僕もそれでいいと思います。 
   
(勝木委員) 
  「可能な限り」という言葉はどうなるんでしょう。先生、細かいことにこだわるなとおっしゃっているのに、細かいことにこだわるようで恐縮ですが。 
   
(岡田委員長) 
  これこそ、それがついていたほうがいいような感じがありますな。(笑)ちょっと弱過ぎるかな。そのほうが現実的ですか。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  では、とらないのですか。 
   
(迫田委員) 
  ひとつ検討いただきたいのは、私の3の2)で書きましたが、研究目的で提供されるヒト胚は廃棄する旨の意思決定が既に別途明確にされることと、これはESの場合のインフォームドコンセントの中にも入っているんですけれども、研究目的でヒト胚の研究に使われるヒト胚は、あらかじめ別のきちんとしたところで廃棄の旨が決定された後の胚であることということを、私はここに入れておいたほうがいいのではないかという意見を持っております。  
   
(岡田委員長) 
  具体的にこの案でいくと、何ページのどの辺になりますか。 
   
(迫田委員) 
  私が書いた3.の2)、一番下のところです。つまりヒト胚の研究に使われる胚というのは、既にもう用いられないということがはっきりわかっているものであることという意味なんですが。  
   
(岡田委員長) 
  これは、おっしゃったようにインフォームドコンセントの中に入っていることですよね。 
   
(迫田委員) 
  はい、インフォームドコンセントの中に入っています。 
   
(岡田委員長) 
  それで、別途にこれもくっつけていくということになりますか。 
   
(迫田委員) 
  できれば基本的な考え方の中に入れておいていただきたいという私は考えを持っていますということです。ただ、皆さんの意見が合わなければ−−インフォームドコンセントのほうにも入っています。  
   
(武田委員) 
  現状をひとつ申し上げますと、現状でも余剰胚は出ているわけですね。その余剰胚については、こういった条文を既に学会でつくって、やっております。つまりはっきりコンセントをとってから廃棄するということになっていますので、それを追認する格好にはなりますけれども、私は現状でも、この廃棄についてはそういうふうな厳重な管理がなされていると思います。  
   
(西川委員) 
  僕も入れたらいいのではないかと思いますが、なぜかと言ったら、僕自身の倫理の問題に関しては、要するにペアが廃棄するという決意をしたということが基本的なスタートですから。  
   
(豊島委員) 
  今の問題ですけれども、9ページの2番の(1)のES細胞樹立に用いられることが可能なヒト胚の由来というところで、「やむを得ず廃棄される運命にあるいわゆる余剰胚に限定されるべきである」というところに、「運命にある」というのを削ってしまえば……。  
   
(岡田委員長) 
  そういうことにしましょう、これ。 
   
(相澤委員) 
  僕も「運命」は削ってしまったほうがいいと思うんですけれども、第3章で書くことと第2章で書くことの区別−−第3章はあくまでヒトES細胞についてのことだと思うんです。で、第2章はもっと広い意味でヒト胚という考えなので、僕は迫田委員のご指摘の1番と2番、これはその精神みたいなものとして、一応書いておいたほうがいいんじゃないでしょうかと申し上げます。  
   
(岡田委員長) 
  どうもありがとうございました。 
   
(勝木委員) 
  それは取り入れられないような気もするんですが、やっぱり廃棄という言葉は、ちょっと私、言葉にこだわる人間なものだから、やはりこの場合は、研究に使用されることに同意したというような意味ですね。そうではないんですか。独立にやるわけですか?  
   
(迫田委員) 
  つまり不妊治療……。 
   
(勝木委員) 
  そういうことね、はい、わかりました。 
   
(岡田委員長) 
  2ステップあるということになりますかね。 
   
(勝木委員) 
  そういうことですね。 
   
(岡田委員長) 
  それでは、大体こういう格好でまとめてもらうということにしましょうか。 
  それで、第6章のところの取り扱いは……。 
   
(事務局) 
  済みません。ちょっと1点だけ確認させていただきたい点がございますが、木勝(ぬで)島先生の資料、ペーパーでは(5)の下、「またヒト胚を用いる研究を行う際は、事前に研究計画を研究実施機関と国の審査にかけ」という形でまとめてございます。それに対しまして、事務局は「第三者的な立場からのチェックを受けること」と書いてございまして、これは、まさにどういう形で審査が行われるべきかということについては、まだヒト胚全部についての議論を尽くしておりませんので、この第三者的なチェックが国であるものもありますでしょうし、結果として国になる場合はあると思うんですが、今この場でもって、すべて国の審査にかけるというところまでは議論がなされてないかと思って、我々、6)の第三者的なチェックを受けることとしてございますが、この点はいかがでしょうか。  
   
(武田委員) 
  私も、実はこの辺、少し気になりました。特に、木勝(ぬで)島委員のお書きにあった案で、胚研究が全く特定されてないんですね。どのぐらいの広がりを持っておっしゃっているのか、そこが理解できなかったんですね。例えばES細胞をつくる、あるいはES細胞絡みの胚研究をおっしゃっていらっしゃるのか、あるいはそういうことじゃなくて、例えば出生前診断なんかで、一つ細胞を取り出して、それで染色体分析をやる、それも胚研究なんですね。そういうこともおっしゃっていらっしゃるのか、ちょっとこの範囲がわからなかったものですから。むしろ事務局原案のように、第三者で一応それを検討する機会をつくっているというほうが、現状では妥当じゃなかろうかと思うんですね。これは、そのうちもう少し限った状態に消化していかないといけないとは思います。  
   
(勝木委員) 
  今のことは、木勝(ぬで)島先生がお答えになるべきことかもしれませんが、私はそれは入るんだろうと思います。先生の出生前診断の問題はヒト胚のことに入るんだと思います。それは、私は何もかにもやれるとは思っておりませんけれども、ここでの精神は、私がもし読み解くとすれば、個々にクローンが出た、胚性幹細胞が出たということに対して、後追いで我々はいろいろ議論しているわけですね。それに対して、ヒト胚に関するものについては、過去、未来を問わず、とにかく一たん大きな倫理規定を設けよう。それを次の課題としようということが、この基本認識のポイントではないかと思うんです。  
  ES細胞にしろ、クローンにしても、それは細かくやってきて、その成果として、その次に何かが起こる、あるいは過去においても考えさせられるものがあるということがあって、その大きな認識のもとで、これは書かれているのではないかと私は思うものですから。  
   
(武田委員) 
  理念として勝木委員のおっしゃるのは私も賛成です、そういう意味では。ところが、現実に診療に類するようなものが、果たしてこういうふうな検討の対象にしないといけないんだろうか。しかも、そういう卵のものにしましても、時期的には極めて限られたところでやらないと、少なくとも生命を救う方向にはいかないわけなんですね。そういう臨床にあるものをこれから全部審議するという形は、医療を阻害する大きな要因になると思います。全体認識としての、概念としての考え方には全く賛成ですけれども、それと現実は少し違うということをご理解いただきたい。  
   
(勝木委員) 
  私はそれは十分に話されてから臨床にいくべきではないかと思います。個々の問題についても検討される。あとはそのルールに従って行われるという、その基本的なコンセンサスがまず必要ではなかったかということが、個別の問題で出てきたのではないか。だから、基本認識として、岡田先生が盛んにご心配になるような一般的な議論の必要性というのが繰り返し出てくる。私が出して、いつも恐縮しているんですが、それはそういう具体的な提案の中から出てきたんだということがここに書いてあるのではないでしょうか。  
   
(武田委員) 
  個別のことを、これは第2章の問題ではないのかもしれませんけれども、第3章以下のことでそれを引きずりますと、非常に煩雑な審査機構をつくらなければいけないことになりかねません。  
   
(勝木委員) 
  第3章以下は個別になっているんです、ESとクローンに。 
   
(武田委員) 
  ES、クローン以外にもいっぱいあるわけですね。だから、これを書くので……。 
   
(相澤委員) 
  先生、それはこれから先に検討するかどうかの問題で、その議論はこれまでずっとされてきてないことを、いいか悪いかということを今この時点で議論しようとしてもしようがなく、将来の検討課題の中で処理することにするより仕方がないんじゃないでしょうか。  
   
(西川委員) 
  これ、またスキームを考えると、例えばドイツやフランスのヒト胚保護法のような、例えばトップダウン式のスキームでやると、あらゆる行為が胚としてカバーされて、規制の対象になっていく。いわば基本的認識として、木勝(ぬで)島先生がおっしゃったものに関して、僕自身がアローアンスを十分持てるのは、基本的な問題ではよくわからないということが1点。それからもう1点は、やっぱり日本はボトムアップでいくんだ、要するに、はっきり言ったらトップダウンというシステムはとらない。すなわち基本的な理念というか、例えば胚は保護されるべきであって、侵してはいけないという法律をつくって、その基本法にのっとって、すべての例えば個別の問題を考えるのか、逆に、それぞれ、例えば勝木先生が何かしたということは常につまびらかにはされるんだけれども、それがいいか悪いかに関しては、その議論をするシステムを持っておこう。よくなかったら、それは次のときからやめるというボトムアップですね。だから、プロブレム・オリエンテッドというのと、それからアイデアがオリエンテッドの話でいくと、やっぱりここで多分考えられているのは、要するによくわからないから、完全な基本法的なシステムをとることに関しては、やっぱり逆にコンセンサスはないと思っているわけですね。勝木先生は、これはもう基本法であると、要するに基本で絶対的な概念があるという……。  
   
(勝木委員) 
  そんなこと思ってないです。私は先生の議論がちょっとよくわからなかったんですが、一言で申しますと、今までのものを追認するという姿勢では、基本理念もへったくれもないんだということなんですよ。具体的に、なぜ、それじゃ、ヒト胚とかクローンとか、わざわざここで議論せにゃいかんかという背景があるんだと思うんですね。それを大事にすべきであって、だから、そこからしてみると、後ろも前もやっぱり考えにゃいかんという基本認識に達したということではないでしょうか。  
   
(相澤委員) 
  今議論のポイントはどこにありますか。 
   
(西川委員) 
  その産科のものをすべてに広げていいかどうかでしょう。 
   
(町野委員) 
  やっぱり今事務局がおっしゃられたとおり、これは総論的な問題ですから、ヒト胚について非常に広くとってある。そして、その中でもやりたい放題というわけにいかない、やっぱり第三者的なチェックが必要だということは合意を得て、おそらくここでとどめておくのではと思うんですね。そしてあと、やっぱりそれぞれの例えばES細胞をつくるときに、ヒト胚を使うときはどうかというときについては、木勝(ぬで)島さんが言われるような、厳しいものになるということも、おそらくそっちは合意だろうと思いますけれども、ヒト胚研究一般について、木勝(ぬで)島さんの提案されているようなものをここに入れるということは、やっぱり合意はおそらく得られてないだろうと思いますし、今は妥当ではないだろうと思います。  
   
(相澤委員) 
  別のことを申し上げてもよろしいでしょうか。 
   
(岡田委員長) 
  どうぞ。 
   
(相澤委員) 
  今の問題を、けりをつけるならけりをつけて、それで移るなら移ればいいんですけれども、僕はやっぱりそれは科学技術庁の事務局の案にあるようなことにしておいて、ほかの問題について、すべてのヒト胚を用いる研究を事前に国の審査にかけるかどうかということについては、まだ議論は全然されてないので、そのことをここですべてをかけるというふうにするのは、今までの議論を僕は逸脱していると思うんです。精神はそういうふうな精神で考えましょう、なるべくそう考えましょうでいいでしょうけれども、ヒト胚研究全般は今までのところここでは考えてないんですから、ある程度は考えましたが、それは今後包括的に考えなくちゃいけないと思うんですけれども、その議論をする委員会が、生殖医療もあわせて、その委員会でどういう審査をするかということをきちんと考えるべきだと思います。科学技術庁の案の一番下のところに、この点について、関係者の間で留意されるべきものと考えるとして、一番最後の第6章に引き続く構成になっているのだから、僕はそれでいいんじゃないかと思うんです。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  この問題を第6章とのつながりということで、そちらに回されるということになりますと、私どもは今の相澤委員その他の委員の方の意見とは反対の提案をしようと思っておりましたので、勝木先生と連名で出させていただいている、報告書の結論に共通指針というのをまとめてつけてほしいという提案を先に申し上げて、反論したいと思うんですが、勝木先生のほうからお話しいただけますか。  
   
(勝木委員) 
  いや、木勝(ぬで)島先生、どうぞ。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  私でいいですか。この2枚組みで……。 
   
(町野委員) 
  済みません、委員長。今の問題は決着がついたんですか、つかないんですか。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  ついてないです。反論をします。 
   
(町野委員) 
  つまり今問題なのは、第2章のところのこの部分ですね。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  その表現にはこだわりません。 
   
(町野委員) 
  だから、第2章のこの部分についてはもうよろしいわけですね。 
   
(相澤委員) 
  第6章のことに話が移るんです。 
   
(町野委員) 
  ですよね。第2章は、だから、事務局が言われたような案で結構だということですね。第2章のこの1)から6)のところの、特に6)のところの文言のそれはということですね。  
   
(相澤委員) 
  いや、第2章のところでは、迫田委員の1番と2番をこの丸の中に加えるということが合意されて、それから木勝(ぬで)島委員がおっしゃった審査過程、審査結果も公開の中に入れるということは一応合意されて、そして、それを事務局案に加えるという上で、6番目の第三者的な立場からのチェックを受けるという表現にするか、木勝(ぬで)島委員の言う、事前に国の審査にかけるかということが今問題になっているんです。その問題はもう事務局案でいいということなんですか。それとも、それと連動して、だめで、別の提案があるという……。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  連動することになると思います。 
   
(町野委員) 
  どういう意味で連動されるか、ちょっと説明していただけますか。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  これから説明しようと思っていたんですが。 
   
(町野委員) 
  つまりこの2章のところを変えるかどうかの問題ですね、今一番大きいのは。第6章のところをそうするということは、2章を変えるということなのかと……。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  という必要があるかどうかも含めて、検討していただきたい。いけませんか。どうして遮られたのかわかりません。 
   
(町野委員) 
  いや、遮るつもりはないんですけれども、第2章は、先ほどから皆さんの合意のあるとおり、ヒト胚一般についての研究の審査の問題ですね。だから、そちらについては、事務局のような程度のチェックということで一応満足しておいて、そして、そこからあとは、ES細胞の樹立についてのヒト胚の使用についての審査の問題ということになるだろうということですから、第2章はそちらにまだ入る手前の問題ですから、これはこれで結構じゃないかというのが、皆さんの今まで出ていた議論だったんですね。そこらはまずご理解いただけるかどうかということが最初だと思います。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  ですから、それに反論を申し上げると言っているんです。 
   
(町野委員) 
  だめだと、全体についてやり直せということですか。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  最後の点について反論を申し上げているというので、何で遮られるのか……。 
   
(町野委員) 
  遮ったかもわかりません。はい。(笑) 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  私どもの基本指針という結論を新設せよという提案の最大の趣旨は、西川先生のボトムアップというお考えに対して、私どもは、勝木先生が言われたように、もう既に始まった、科学者が提起したことはすべて追認していけ、そういう意味のボトムアップになることを非常におそれているということです。  
   
(西川委員) 
  いやいや、ノーでもいいんですよ。ボトムアップというのはノーもあるんだから。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  わかりました。前回の議論の続きですが、この委員会が結局はES細胞研究の指針とクローン胚研究の指針しか出さないというアウトプットで終わってしまうのでは、この小委員会をつくった意味がないと思うんです。それで、報告書の末尾に、ヒト胚研究全般に対する基本指針という形で、この報告書の結論の部分を全部抜き書きして、わかりやすい形に示して、何をやっていいか、何をやってはいけないかを、明確に一覧表にしたものをはっきり示してほしいということです、ばらばらにしておかないで。その上で、こういう文言にしていただきたい。「以上の検討を経て」、第5章までの検討を経て、「本小委員会は、ヒト胚研究について、以下のような結論に達した」。こういう強い言い方がいけないのであれば、保留します。これは幾らでも直してください。「これらの事項は、ヒトの胚を用いる研究を行うにあたって守られなければならない、基本指針となるべきものである」、これはいいのではないかと思います。皆さんおっしゃっていたことだと僕は理解しています。  
  基本理念の部分は、今の第2章のところをそのまままとめただけです。ここでは、比較考量されるのは研究の必要性と人の生命の尊重の要請としてあります。  
  問題は次の2です、「認められる研究の範囲」。ヒトの胚に対して何をやっていいかをはっきり示すべきです。「ヒトの胚を用いる研究は、次のアからウまでの目的に限り、以下の4に定める倫理原則及び以下の5に定める審査手続に従って行うことができる」。  
  その中で、アとして、もう既に事務局案でも、別途の検討ということが出されておりますように、「別に検討されるべき生殖補助医療の規制のもとでの、その技術的向上のための研究」ということを、1項入れるべきだと思います。  
  イとウはES研究などと、それからウの点については、それとの絡みでのそのほかの研究ということで、包括できると思います。 
  次、3の「禁止事項」という中に、先ほどの議論で、「研究目的でヒト胚を作成すること」というのは入れてもいいだろうということになりましたので、ここにも当然入ってまいります。その他は、第3章、第4章にばらばらに散りばめられていることを、すべてそのままつなげただけです。  
  次の、4の「倫理原則」について、第2章、それから第3章などで補強された表現をとっておりますが、イの匿名原則のところは、先ほどの表現に修正するべきであって、この書き方はよくないと思います。ですから、提供者の情報はヒト胚の提供機関において厳重に保護されなければならないという表現に改めていただきたいと思います。あとは同じです。  
  5の「審査手続」についても同じです。この報告書に盛られている内容の要約になっているだけです。 
  6の「情報公開」もそうだと思います。今合意いただいた審査過程の公表も盛り込まれています。 
  それから、7の「見直し規定」というのは、3年を経過したら見直すということを言っております。 
  要するに先ほど反論と申し上げたのは、年末の会合で、産婦人科学会の倫理委員長にわざわざお越しいただいて、学会に届け出られているヒト胚を用いた研究について一覧表を出していただいて、そのことについて既に議論したわけです。その場の感じでは、これはこのままでほうっておいていいのであろうか、やはりこのことについても言及しなければなるまいという感じだったと思うんです。僕はそういう感じを非常に強く持ちました。  
  ですから、この小委員会の結論としては、別に生殖補助医療の規制ができた下で、そちらのほうのヒト胚研究も、国と研究機関での研究計画の二重審査制にする。先ほど武田先生がおっしゃったような医療への影響というご懸念はないと思います。生殖医学におけるヒト胚研究も対象にするという方向性を出しておくべきではないか、そういう趣旨です。  
  以上です。 
   
(相澤委員) 
  あっち行ったりこっち行ったりですけれども、この案のほとんどのことはいいんですけれども、国の審査ということ、ヒト胚研究でまだよく議論していないことについて、あらかじめ審査を国にするとかしないとかいうことを決めてしまうのは、いかがなものかと思います。やっぱりヒト胚を用いる研究をもっと包括的に議論する場があって、その場でどういう審査体制にするのが最もいいか議論されるべきで、今の時点で、そのことをきちっとまだ議論していない段階で、あらかじめもう国の審査ということを言うのには僕は反対です。それは科学技術庁の言うように、第三者的立場のチェックということぐらいに、現時点ではとどめておくより仕方がないと思います。  
   
(武田委員) 
  私も相澤委員のご意見に賛成なんですね。今包括的な規制ということになりますと、先ほど西川委員が言ったことにも通じるんですけれども、上から大枠で規制してしまうと、研究の方向を阻害することが非常に懸念されるんですね。そのあらわれが、ドイツの胚研究がそういうことでほとんど沈滞化してしまっているという現実が、それを示しております。だから、ボトムアップというのを多分誤解されたんだろうと思うんですけれども、そのときに起こってきた課題について、一定の機関で審査されて、それに対して、規制が必要であるかないかというふうなことを決めること、これは非常に大事です。そういう意味で、原案にあります第三者機関で検討するという表現で、ここのところはとどめておいたほうがいいんじゃなかろうかという感じがいたします。  
   
(西川委員) 
  僕は、先生、ドイツが悪いと言っているわけじゃなくて、(笑)そういうことをとらないということを、少なくともここではある程度コンセンサスとして持ってもらっているのかどうかのポイントなんですね。ですから、基本法を持つということはものすごく大事なことだし、それに照らしていろんなことを決めていくという仕組みというのは、大事なことだと思うんですね。ただし、今までの議論で、何も言わないのではないけれども、ドイツの胚保護法のような基本法の仕組みはとらないというポイントに関しては、僕はそう理解しているんですけれども、それでいいのかと。それはほんとうのところの基本理念の見えない一番大きなベースではないかと僕自身は思ったんですから。  
   
(勝木委員) 
  木勝(ぬで)島さんとご一緒の提案の趣旨は、今木勝(ぬで)島さんがお話しになったことに尽きるんですが、個別に申しますと、今のヒト胚の審査、これについては、確かに第三者によるチェックが必要だというのにとどめてもいいと思うんです。ただ、書き方は、必ずヒト胚に関しては議論するということが前提でなければならないと思うんですね。それはこういう国の倫理委員会は、ある程度世論を反映するし、しかも専門的な知識もある人たちのところで必ず議論をするんだということが前提のもとで、そこで、さらにその中からチェックしなくちゃいけないという、国の審査機関をつくるというスキームが必要ではないか。おのずから前例としてES細胞やクローンについてできていますから、うまくできるのではないか。  
  ですから、提案のところに、審査手続については、ヒト胚研究については、今後すべて、まあ時限を切ることができるかどうかわかりませんが、いついつまでにできる倫理規定と審査方向まで含めて、個別に対応するような委員会で検討し、それに従う。ただし、ESとクローンについてはもう既にできていますから、それに従うという、ちょっと木勝(ぬで)島さんとはニュアンスが違うかもしれませんが、それだったら、十分対応できるのではないかと思います。  
   
(豊島委員) 
  今いろいろ話がありましたのは、基本線としてはわかるんですが、産科婦人科学会というのは今動いている学会ですね。そこで現に行われてきたこと、それを急に国の機関で審査するとか言っても、これは基本線としても無理だと思うんですね。だから、やはりそうじゃなくて、これは第三者機関でということが書いてあるし、この方向で検討を進めてほしいという希望条項も入れたら、それで、現在まで行われてきた産婦人科学会も、その見直しも入れて、学会で中心で検討していただいて、それを持ち出していただいてから検討するということが、僕はほんとうじゃないかなという気がするんです。  
   
(岡田委員長) 
  どうぞ。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  この委員会で、問題の所在を認識した以上は、それに対して何も言わないのはよくないでしょう。今後に検討をゆだねるという書き方は、日本の行政省庁の報告書の文言としては、何もやりませんというのに等しかったわけです。そういう不信は非常にあると思うんですね。ですから、パブリックコメントに開いたときに、結論として、今後取り組むべき課題ですというような程度で社会が納得するかどうかわからないです。それが一つ危惧するところです。  
  それからもう一つ、豊島先生は既に動いていることであるとおっしゃいましたが、そうすると、日本では既にもう始まってしまったものには一切何の手も及ばなくなるのかという非常な懸念があります。それはかえってその分野の信頼を損なって発展を阻害するのではないかと思います。  
  それから最後に、もう一言だけ、この小委員会で何らかの結論を出すべき事項について、しなかったというのはやはりよくないと思うんですね。方向としてどういう形が望ましいかという議論をしたということが必要だと思うんです。ですから、私はあえてこの提案を出させていただきました。生殖医学の規制を盛り込むべきだと思います。  
   
(岡田委員長) 
  わかりました。 
   
(豊島委員) 
  一言だけ。さっき言い忘れたんですが、何もしてないわけじゃなくて、厚生科学会議は生殖医療も含めたところで問題を提起して、それで高久委員長のもとで検討していただいた。結果として早急にまとめられるものじゃないということで、ものすごくいろんな意見が出てきた上で、逆に言えば、こちらのほうでこういう意見が、あるいはこういう答申がまとまってきたら、その時点とは異なるわけですから、現状が。それに対応して、もう一度産婦人科学会のほうへ持ち出して、検討していただきたいという要望でいいんじゃないかと私は思います。  
   
(岡田委員長) 
  産婦人科学会との調整を全然やったわけではないという認識を、我々はちゃんと持っておかなければいけません。今まで相当いろんなお話があったけれども、ほんとうのことを言うと、原則的にはほとんど変わってない。ちょっとしたところが非常に大きな問題として表現されるか、あるところがそれを小さく表現したがというあたりのところのものの外には出てないと思いますね。  
  ここでちょっと整理しておかなければいけないのですが、やはり産婦人科学会との対応という、今やられている生殖医学という形のものが横にあるということは認識して、報告書を書かねばなりませんけれども、ただし、我々のこの委員会の一番の目的としたところはそこから少し離れたところにあって、それに関しては非常にはっきりしたことを書くというデューティーがあろうと思うんですね。それで、それを見てみると、オーバーラップのところをやはり相当私は緩めておいたほうがいいと、産科婦人科学会との対応に当たるようなところ。  
  だから、そういう意味では、私は木勝(ぬで)島さんの基本認識というのは非常にいいという案がたくさん出ましたけれども、これを読んでいくと、やはり……。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  それを蒸し返すんですか。 
   
(岡田委員長) 
  生命の始まりの何とかというあたりでは……。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  それはおかしいでしょう。 
   
(岡田委員長) 
  やはりいろんな問題点というのが入り込む余地を持っている。やはり今我々がずっとやってきた委員会というものの流れのことから考えていくと、事務局案のこの基本認識という形のものの中に、読めばちゃんと入っていることなんだから……。  
   
(迫田委員) 
  第2章の1の基本認識を事務局案に戻すというお話をされているんですか。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  それは委員会の先ほどの合意とは違いますよ、全然。おかしいです。 
   
(岡田委員長) 
  僕はそうしたいと思うんです。 
   
(迫田委員) 
  そんなのおかしいですよ。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  それは委員長の個人的なご希望ですね。そう思っていらっしゃったのは大体わかっていましたけれども、それでは今まで1時間半議論して何の意味もないじゃないですか。  
   
(岡田委員長) 
  いや、同じことやろう。多分武田委員のほうからは少し気になられることがあると思うけれども……。 
   
(迫田委員) 
  だって、武田先生も木勝(ぬで)島案がいいとおっしゃったんですよ、一番最初に。 
   
(岡田委員長) 
  どうも非常に一般的な言葉で格好よく書いてあるんだけれども、読んでいくと、少し抵抗があるんだな、現実のところ……。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  はい、申し上げます。それはおかしいです。もともと僕がこの対案を出したのは、産婦人科学会のヒアリングをしたときに、お名前を出すのは恐縮ですけれども、相澤委員が、ES細胞を使うヒト胚研究だけ厳しく規制されて、それ以外のヒト胚研究はこのままほったらかしでというのはあまりにも差があって、おかしいのではないかとおっしゃったことが大きなきっかけになっています。その論点をちゃんと議論したかったのです。それと、先ほど合意した基本認識の文案とは全く違う議論なので、そこははっきり切り離してください。  
  それから、あえてもう1点申し上げますが、厚生省の生殖医療の専門委員会は、ヒトの胚、精子、卵子の研究利用について、論点から外しています。一切議論していません。ですから、厚生省がやらないのだったら、今どこもやってないんですから、ここでやらないとしようがない。今のところ存在しているのは、ヒト胚研究利用についてはここだけなんですから、この小委員会が何らかのちゃんとした議論をしたということを言っておかないといけないのではないでしょうか。  
   
(岡田委員長) 
  そうですか。私はここの委員会の一つの流れという格好のものは、ここの基本認識の外に出てないと実は思っているんだけどな。 
   
(西川委員) 
  ただ、僕は木勝(ぬで)島さんのものは、要するによくわかってないということがはっきり書いてある意味では、ある意味ではいいと思うんです。ただし、議論を進めるときに当たって、わかってないということの意味が要するにないがしろにされて、何か基本原理がまた基本認識の中にあるように思われると、やっぱり多分間違いになるので、ここでも例えばくみ上げてないですし、それから社会の認識は全く十分ではないわけですから、将来やればいいというふうに思うんです。  
   
(相澤委員) 
  僕は基本認識は、それに事務局案をつなげてということでいいと思うんです。ただ、問題として残っていることは、木勝(ぬで)島先生と勝木先生とちょっと違うところは、もともと一番最初からの問題に戻るところですけれども、ヒト胚全体の研究をどう考えるかということは結局この委員会では議論できなかったわけです。ヒト胚研究全体を考えるということは。メンバーの構成においても、もっと生殖医療に携わっている人、産婦人科学会の人が入って包括的なところでその問題は議論しないと、この委員会でヒト胚研究に関するすべてを議論するということは、この構成メンバーでは僕は無理だと思うんです。我々がここで言うべきことは、そのことについての議論はまだされていないので、今後そういう検討を絶対しなければいけないと言う以上のことは、出来ないのではないかと思います。心配なことは、そう言って、結局はサボってやらないんだろう、そういう不信感みたいなものが背後にあることが問題ですけれども、そういう不信感はあるにしても、僕はこの会としては、ヒトES細胞の問題、クローンの問題を考えたあげくとしては、そういうことをきちんと議論するような委員会を科学技術会議の中に設けるべきであるということを今後の課題として提言することで議論をとどめておくより、この委員会ではできないんじゃないかと考えます。それをあえて、議論もしてないのに、ここで何か一定のヒト胚研究について全般的な結論を出そうとするのは、かえってそちらのほうが僕は危険だ、そういうふうに考えます。  
   
(石井委員) 
  今の相澤先生の話は6章の問題として議論すべきで、今は2章のところの結論を出したほうが良いと思います。幸いにして、木勝(ぬで)島、勝木両委員のも6章の結論部分として提案されているわけですから、2章についてまず結論を出してから、今相澤先生のおっしゃったことを議論するのが良いと思います。今論点になっていたのは、2の3の6)をどうするかということでしたから、木勝(ぬで)島先生がこの第三者的な立場からのチェックということでは絶対にいけないとおっしゃるのかどうか。つまり6章の議論で、みんなが木勝(ぬで)島委員たちの案を受け入れた場合には、もう一度それを国のに変えても良いけれども、それが達せられない限りは、第三者のチェックでということでとりあえず合意をしたというところで一歩進めたほうが、話は進むと思います。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  今石井委員のまとめてくださったとおりで僕は結構です。 
   
(町野委員) 
  私も先ほどからずっとそう言っていたわけで、これで一応終わって、結構でしたと。(笑) 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  その上で、この小委員会の構成が……。 
   
(相澤委員) 
  6章の問題ですね、今度は。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  はい。この小委員会がヒト胚研究全般について結論を出すには構成メンバーが足らなかったというのであれば、この小委員会はヒトの胚をES研究利用に差し出せという、当の不妊治療の患者さんたちを代弁する人も入ってないし、そういう人たちからの声を一度も聞いたことがないのに、どうして産婦人科学会ばかりそうやって念頭に置かれるのかわかりません。不妊治療の患者、家族団体などからのヒアリングなども一切受けてないわけですから、そういうことを言うのであれば、ES細胞研究についても言えない委員会になるということになります。  
   
(相澤委員) 
  産婦人科学会を弁護するつもりは毛頭ないですけれども、今ここで、特に産婦人科学会を非難したり、あれだこれだということをする根拠を我々は持っていないと思います。そこまで議論してないんです。何となくって感じることはありますよ。それはありますけれども、それだけに基づいて、どうだこうだということを言うのは、ちょっとそれはできる相談ではないと思います。  
   
(勝木委員) 
  そんなことを私は少なくとも申し上げているわけではなくて、ヒト胚全体についてのということが常にリファレンスとして個別のことを議論するときにしょっちゅう出てきたということが、具体的に端々に出てきたことをまとめるべきだという話なんですね。そうしないと、また同じ土俵を議論しなくちゃならなくなるから、これは既に議論されたことを、しかもここから抽出して持ってきてありますから、それはそういうふうにしたほうが具体的でいいと思うんですね。  
  先ほど西川先生がおっしゃった絶対的な倫理の問題は、議論をすると長くなりますから、簡単に申しますと、私はそんなことは一切考えていません。ですから、私の議論の中心は、何も産科婦人科学会を攻撃することでも、私の倫理観というのを押しつけたいと思っていることでもないのです。  
   
(相澤委員) 
  先生の出された案の中で問題なのは、僕はほかのところには、別に今までの議論の全体とそごすることは基本的に、細かい文章を読めば別かもしれないけれども、ないと思うんですが、要するに審査手続だけだと思うんです。  
   
(勝木委員) 
  それについては、先ほど申し上げたとおりです。 
   
(相澤委員) 
  そうであったとしたら、それはそれほどもめるということではないのではないかなと思うんですが。 
   
(勝木委員) 
  だから、それについては、具体的な、先ほど木勝(ぬで)島さんはそれじゃやらないのと同じだとおっしゃったけれども、表現としては、ヒト胚全般についての前提となる議論をすべきだということをここに入れれば、あとは具体的な問題になるんだと思います、私は。木勝(ぬで)島さんは、それは信用してないからだめだとおっしゃるならば、おっしゃってくださって結構ですけれども。  
   
(町野委員) 
  よろしいですか。 
  まとめるつもりはないですけれども、結局、木勝(ぬで)島、勝木案ですけれども、これを最後にくっつけるというのが具体的な提案なんですね。これをやりますと、ヒト胚一般について議論をして、このような指針をこれからつくりましょうということをこの小委員会が決定したということなんですね。それは到底できる状況にないだろうと思います、報告書として、今の段階では。  
   
(勝木委員) 
  それは驚くべき発言だと思いますよ。 
   
(町野委員) 
  ちょっと続けさせていただきますと、ヒトの胚の保護一般についてまで踏み込んだ議論は、まだ私はしてないだろうと思うんですが、つまり議論の焦点としては、ヒト胚を使ったES細胞の樹立について、その観点からの議論だったと私は了解しておりまして、もちろんそれを議論するときには、一番最初に私が申し上げましたとおり、ヒト胚の保護一般について意識しないで議論できるわけではないことは確かですね。しかし、すべてについて、ヒト胚一般の研究利用についてこういうポリシーを出すという議論は、まだしていないわけですから、私は報告書としてはやっぱり今これをつけるわけにはいかないだろうというぐあいに思います。もう1点、しかし、それでおしまいにするということでは到底ないことは明らかなんですから、第2次報告書をつくるつもりで、このお二方の意見をたたき台にしまして、もう一回議論をするというのが適切じゃないか。そして、この場が適切かどうかは、確かに相澤先生が言われるように、また問題があるかもしれません。しかし、そのときはもう一回、また考えなければいけないということじゃないかと思います。  
   
(勝木委員) 
  今の御発言ですけれども、幾つか反論する余地があるんですが、あんまり混乱させても申し訳ないので、基本指針というのを、わざわざ基本指針と書いてあるわけですね。それで、この間の日程表を見ますと、指針については、この後、後回しにするということが書いてあったわけですよ。それでは十分な、先生は出ておられなかったかもしれませんが、十分なここの役割を果たしていない。これは明らかに全体をまとめてあるだけの話でありまして、つまり明晰にこれをサマリーとして出しましょう。そうしないと、これをずっと読んでくだされば結構なことですが、ここに書いてあることを出してあるだけなんですよ。これで何もそんな大げさなことは、もちろん趣旨としては入っていますが、個別のものを出したのでは、また同じことをやらなくちゃいけない。その基本指針として一つ書きましょうと、そして、具体的にはES細胞なりクローンなりが書いてありますから、それをリファレンスすればいい話ですから、生命倫理委員会に我々が答申するとすれば、非常に具体的な材料になるようなものを出すということは極めて重要なことではないかと思います。結論という書き方は確かに強過ぎるかもしれません。  
   
(西川委員) 
  ただ、勝木先生がおっしゃるのでよくわからなかったのは、例えば本小委員会もそれを組織的にくみ上げるには至っていないとか、相反する社会の認識がまだ十分でなくという、私たちの基本認識に関してどういう形で−−済みません。ちょっと僕も理解しにくい……。  
   
(勝木委員) 
  何ですか。 
   
(西川委員) 
  これはもちろん木勝(ぬで)島案をとるとしてなんですが……。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  それは私のほうからお答えします。要するに今この時点でできる限りのことを示すべきであるということで、私が提案しているのは、産婦人科学会の非難ではなく、生殖医学におけるヒトの胚の研究も対象におさめる方向を出すべきではないかということを言っているわけです。ですから、整合性はとれています。認識が十分でないのだから結論は出せないと言うのであれば、ES細胞についての認識もまだ十分じゃないですから、そういうことを言ったら、何もできないでしょう。  
   
(西川委員) 
  逆に言うと、という提案をしたらどうかということだけですね。要するに、これは例えばガイドライン云々と言ったときに、第三者の立場からチェックを受けることというのと、国の機関のチェックを受けることというのは、基本的には手続が違うわけですね。ですから、提案をされたのか、要するにここの文面を基礎にして、はっきりとした例えばそのガイドライン化が可能なのかという問題を聞いているわけです。  
   
(相澤委員) 
  ここの中に書いてあることは……。 
   
(池田研究開発局長) 
  ちょっとよろしいでしょうか。この2章の書きぶりと6章についてのご議論があるわけですけれども、ちょっとコメントさせていただきたいのは、国の審査、国の関わりというときに、こういう報告書に我々が書くときには、非常に注意深く書きます。国のというときには。それは国のというと、政府のどこなのかとか、それからそれは法律に基づいてやるのか、行政指導と、いろいろ議論が今までありましたけれども、そういうものでやるのか、そこまで姿が書けない、見えないと、書くときに注意をします。  
  もう一つは、国のといっても、これは財政措置、人の確保、みんないろいろありますから、どういう体制でやれるか、そこまで自信を持たないと、なかなか報告書というのは責任を持った書き方ができません。  
  そういうことをまずご理解いただきたいのと、国といっても、公的機関、公益法人、いろんな法人がありますし、今は学会その他もいろんな機関があるわけですけれども、こういうところに国としての役割を委託してやってもらう場合もあります。今いろんな規制措置、いろんな事業をやるときは、そういうやり方もあります。ですから、これはいろんな仕組みがあるわけでして、そういう意味合いを込めたときに、どれだけストレートに報告書に文言として書いたらいいか、これはよくそういう意味での検討をさせていただきたいと思うわけですね。  
  例えば2章のところに今第三者的なチェックと書いてあるのは、そういう意味合いも含めて書いているというふうにご理解いただいていいと思います。いろいろこの中には、取り扱い、これからの実現の仕方としては、選択の幅はいろいろあり得るという前提で書いたときに、そういうことまで含めたときに、こういう書き方が適当なのではないかなという意味合いで、第三者的な性格のほうをむしろ書いて、それは国なのか、いろんな公的機関等も動員して仕組みを考えるのか、いろんな可能性はあるんじゃないかなという意味合いで、書かせていただいています。  
   
(相澤委員) 
  木勝(ぬで)島委員とか勝木委員の問題点の提示は、国とか、その問題じゃ多分ないだろうと思うんですよ。それは第三者のチェックでお二人とも合意されることだろうと思うんです。むしろお二人の問題点は、ヒト胚の研究に対して総括的に考えるということが結局どこでも行われないままにされてしまうのではないか、そして、この委員会を閉じてしまったら、やるやると言っていて、結局やらないことになるのではないかという不信感が物事の基本にあるんだと思うんです。ですから、僕は町野委員がおっしゃられるように、これを結論として出すことはできないんですけれども、結論を提案にかえて、この中に書かれていることは、今まで議論してきたことと国の問題を除けばほとんど同じなので、これを提案として、議論を今後生命倫理委員会で別の委員会を設けるなどして、してくださいという提案の形でこれを出したらいいんじゃないですか。それを結論として出すのは、僕は町野委員のおっしゃるように、包括的にしてないにもかかわらず、することはできないんじゃないかなと思うんです。  
   
(岡田委員長) 
  時間になりましたけれども、僕自身が結論という格好でまとめることはちょっとできそうもないな。 
   
(勝木委員) 
  結論というのは、それはよろしいかと。先生はどうか知りませんが、結論というのは、やはりちょっと不適当かもしれないと思いますね。 
   
(岡田委員長) 
  まとめとしての結論なんですが、ここの。 
   
(勝木委員) 
  済みません、別のことを申し上げて。 
   
(岡田委員長) 
  またもう一回考えていただかないと、これはしようがないですね。 
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  結論の章の書きぶりを、もう一度きょうの議論を踏まえて、完全に書きかえて、次の会合にどうぞお出しになってください。それから、その上での提案ですが、私どもの提案を争点として、生殖医学分野でのヒト胚研究も規制対象にすべきかどうかということをパブリックコメントの争点としてぜひ出してください。それで私はおさめたいと思います。  
   
(岡田委員長) 
  そういう立場もあろうし、それから現実にちゃんとやった議事録という格好のことから出てくる一つの結論というのを非常にはっきり出していくという形のことというのが一つ必要な問題点であろうかと思います。それで、やはり何かなかなか難しい、幅の広い問題というあたりというのは、皆さん、随分きょうのお話を聞いても、みんな大変だ、大変だと思っておられると思います。非常に議事的には重要なところだと思うけれども、多分これ、どこに焦点を置くかということになると、西川さんがおっしゃったみたいに、トップダウンですぽっと決めるぐらいしか格好のつけようのないものという形のところで、非常に僕も、今度のこのESの議論の中で、やはりそれの一つの形が出てきたと思うんですけれども、ES細胞というのはやはりとること自体は非常に大変だぞという話から始まっています。だけど、ずっと話をしている間に、やっぱりそれじゃいけないということになったわけですけれども、どうしてもヒトの受精卵をハンドリングするという格好のこととの原則的な問題点も外しかねるという条件が、多分ESの話がなかったら、出なかったと思いますね。ところが、ESという現状が出たという格好のことで、それとの対応の中では、産婦人科領域でやっておられる体外受精からの使わない卵というのをどう判断するかというあたりでは、皆さん多分オーケーされた。オーケーされた理由の中に、いろんなことが入っていると思います。やはりそういう一つの条件下の中で、具体的にその問題点が出てくるものであって、それで、抽象論的な中で、これを非常に大きな意味で理論構成をしても、なかなかしんどくて大変だと思うんですね。  
  だから、確かに第6章のところで、ここで積み残したものというのを書くにしても、それを一番気にしていることをずぼっと書いて、それで自分はできんけどという意味を含めて、出してしまうという格好のことが意味があるかどうかと言われると、それはどういう書物であったかということとの対応で決まることだと思いますけれども、この報告書に関してだと、やはり何か積み重ねていけるものという形の、具体的に形ができる可能性のあるものというものが出ていて、その言葉の裏返しに、裏をのぞいてみると、全体的な大きな問題点があるというのがわかるような一つの表現の仕方という格好でやっていく必要があるんじゃないかなと僕は思うんです。  
  確かに産婦人科領域での問題というのは勝木さんがずっと昔から問題にしておられるけれども、言われれば、確かにそのとおりですよ。だけど、そのとおりというのはわかっていても、医療としては動かせれる条件があるというところで、多分ESの場合と同じような一つの流れの中で、産婦人科の方々はやっておられると思うんですね。やはりそれぞれ非常に苦痛を感じながらやっているというところが実際上は出てないような気がするんですね。それで、第三者のほうがえらいいい格好するというあたりもなきにしもあらずと思うところもありますので、だから、やはり具体的にやったものというのをとにかくまとめてみて、それから、それを深読みしてもらえれば、そういう問題点がわかるという形のところでおさめられたらどうかなと私は思っています。  
   
(迫田委員) 
  きょうの議論の第2章はどういうふうにまとめられていらっしゃるんですか。 
   
(西川委員) 
  ちょっと、一つだけ基本認識に関しては、皆さんコンセンサスを持っておられるし、これは言わないでおこうと思ったけれども、はっきり言うと、例えば事務局のほうは、胚を滅失する過程を含むこととか、僕自身いろいろ問題があるのではないかという表現を含んでいるんですが、逆に、木勝(ぬで)島さんのほうは要するにそういう表現は全部削除されていますから、これは一応置きかえて、そういうことに関してはコンセンサスをとったということでいいんじゃないですかね。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  先ほどの委員長の発言が非常に気になるのですが、今後検討すべき課題という章をつくること自体にも反対されているかのようなお口ぶりでしたね。この小委員会は結局何を議論できなかったか、取りこぼしたものが最終的にあるとすれば、それは生殖医学の扱いをどうするかということだ、という結論すらすべて書かないようにしたい、そういうご発言ですか、確認させてください。  
   
(岡田委員長) 
  いや、そのつもりで言ってないです。直接それに具体的な何か力を及ぼすような格好の文面という形が今の委員会でとれるような条件はないと思うんです。  
   
(木勝(ぬで)島委員) 
  検討すべき課題という中に生殖医学におけるヒト胚研究の規制の検討を入れるのか入れないのか、そこを確かめたいのです。それは入れるという方向にきょうの議論のコンセンサスはあると思いますが、それが委員長の今の一言ですべて覆されるというのはあり得ないことで、あってはいけないことだと思います。  
   
(石井委員) 
  私は、6章はまだ検討してないんだと思います。だから、次回、6章を検討する、そのときに、委員長はそういう立場をとられるということをきょう最後に述べられたという事だと思います。そういう形で次回は始めて、きょうは2章の検討について一応の合意がなされた。それに基づいて、事務局に書き直していただく。6章についても幾らか提案があって、それについて検討されて、訂正されることは構わないし、次回は6章の検討をするということで、私は合意をとって終わりたいと思うんですが。  
   
(岡田委員長) 
  どうもありがとうございました。それでいきましょう。 
   
(町野委員) 
  若干異議がありまして、6章について全然終わってないわけじゃなくて、一つは結論が出ておりまして、このような指針を結論としてつけることはしないということは、私は結論は出ていると思うんですね。  
   
(石井委員) 
  いや、まだそれも結論は出ていないと思います。 
   
(勝木委員) 
  私はこれの結論は指針だと思うんですよ。最終的な報告書は。内容はともかく別ですよ。 
   
(町野委員) 
  わかりました。こういう格好でヒト胚一般についての指針的なものを6章の最後のところでつけるということはしないということは、合意を見たんですか、見てないんですか。  
   
(勝木委員) 
  いや、してほしいということを提案したんですよ。 
   
(町野委員) 
  はい、わかりました。 
   
(岡田委員長) 
  そういうことで何とか処理できますか。 
   
(事務局) 
  今のご議論を踏まえて、6章を多少書きかえたいと思いますが、また事前にお送りして、その形で議論を進めさせていただければと思います。 
   
(岡田委員長) 
  では、そういうことで終わりましょう。ご苦労さまでした。 

−−  了  −−