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科学技術会議生命倫理委員会
ヒトゲノム研究小委員会(第2回)議事録 

1.日時    平成12年3月6日(月)  15:31〜17:29 

2.場所    科学技術庁第1・2会議室 

3.出席者 
    (委  員) 高久委員長、位田委員、奥田委員、小幡委員、玉井委員、寺田委員、 
                 豊島委員、中村委員、眞崎委員、町野委員 
    (事務局)科学技術庁  小中審議官、小田ライフサイエンス課長  他 

4.課題 
    (1)科学技術政策研究所の調査について 
    (2)「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対するための指針」中間報告(厚生省)について 
    (3)ヒトゲノム研究に関する基本原則について 
    (4)その他 

5.配付資料 
    資料2−1  科学技術会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会(第2回)議事録 
    資料2−2  ヒトゲノム研究とその応用をめぐる社会的問題 
    資料2−3  「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対するための指針」(厚生省)の概要 
    資料2−4  「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理問題に関する調査研究」中間報告書 
                   遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針 
    資料2−5  「ヒトゲノム研究開発動向及び取り扱いに関する調査」検討委員会活動状況 
    資料2−6  ヒトゲノム研究に関する基本原則(検討素案) 

6.議事 

(高久委員長) 
  それでは、時間が参りましたので、ただいまから第2回の科学技術会議ヒトゲノム研究小委員会を開かさせていただきます。 
  お忙しいところご出席いただきまして、ありがとうございました。 
  まず、事務局のほうから配付資料の確認を、その他コメントがあるようですからよろしくお願いします。 
(内丸課長補佐) 
  それでは、事務局よりお話しさせていただきます。 
  本日、ライフサイエンス課長の小田が出先へ出ておりまして、こちらへ向かっておりますけれども、ちょっと遅れますので、私、課長補佐の内丸がしばらくの間、ライフ課長の代理として座らせていただきます。 
  まず、きょう審議に入っていただく前に、非常に残念な事態が発生しましたことをこの場でご報告させていただきたいと思います。 
  まず、土曜日に、皆様もごらんになった方がいらっしゃるかもしれないんですけれども、一部の新聞紙上でヒトゲノム研究小委員会がまとめた基本原則が明らかになったという報道がございました。この報道を見まして外部から問い合わせもございました。私どもは事務局のほうでは、この問い合わせに対しまして、報道された内容については、現在、検討素案を練っていただいている方々の間でもいまだまとまったものではないと。また、無論この小委員会で議論を行って発言されたものでもありません。また、2点目としまして、内容についても、小委員会でのこの場での議論、さらには一般の方からの意見募集を踏まえて、審議が進むべきものでありまして、少なくとも本日のヒトゲノム研究小委員会でいきなり基本原則の最終案をまとめるという予定とはなっておりませんという旨を、その後も当たり前な説明をさせていただいております。本当に位田先生をはじめとしまして、検討の素案を練っていただいている方々、また、今回お集まりの小委員会の委員の皆様の意見が十分に反映されていない途上段階のものが最終案であるというような、それに近い表現で伝わってしまったということは非常に、本件にかかわっておられます多くの方々にご迷惑になったんじゃないかと考えておりまして、また、本当に誤解を与える残念な事態であると考えております。 
  私ども事務局としましても、このような事態が起こらないように事務局自身もより一層気をつけますし、また、このような事態が生じたことを、本日、お集まりの委員の皆様にお諮りさせていただきまして、また、今、位田先生のもとで基本原則の検討素案を検討していただきました方々のほうにも説明させていただきまして、そういう中途段階での資料の取り扱いについて、配慮につきまして、より一層のご協力をお願いしてきたものでございます。 
  また、もう1点、前回の委員会の場で中村委員にも素案の段階でいろいろとコメントをいただきながら、議論に参加していただいて素案を練っていこうということでおったわけでございますが、これは中村委員のほうに少なくともお届けする資料が、私ども不手際がございまして、届いていないということがございまして、結果として、本日用意させていただきました素案は、ちょっと資料のほうにも解説されておりますけれども、位田先生の試案と表示があったことを、これは事務局の不手際としましておわびしたいと思います。 
(高久委員長) 
  それでは、資料の確認を。 
(内丸課長補佐) 
  それでは、お手元にお配りの資料でございますが、確認させていただきたいと思います。 
  まず、資料2−1としまして、前回第1回のヒトゲノム研究小委員会の議事録をつけさせていただいております。 
  次に、資料2−2としまして、「ヒトゲノム研究とその応用をめぐる社会的問題」もつけさせていただいております。 
  次に、資料2−3としまして、「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対応するための指針」の概要(厚生省)をつけさせていただいております。 
  次に、資料2−4でございますが、「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理問題に関する調査研究」中間報告書をつけさせていただいております。 
  次に、資料2−5としまして、「ヒトゲノム研究開発動向及び取り扱いに関する調査」検討委員会活動状況をつけさせていただいております。 
  次に、資料2−6としまして、「ヒトゲノム研究に関する基本原則(検討素案)(位田委員試案)」をつけさせていただいております。 
  以上、資料2−1から2−6まででございます。ご確認ください。 
(高久委員長) 
  よろしいですか。お手元に資料があると思います。 
  まず、資料2−1の前回の議事録ですが、これは既に皆さん方のお手元に届いていて、ご訂正をしていただいているはずですので、さらに訂正するところがありましたら、事務局のほうにお申し込み願いたいと思います。 
  本日は、位田委員が中心になられまして、資料2−6になると思いますが、「ヒトゲノムに関する基本原則」の素案を作っていただきました。この基本原則についての議論を議論の中心にさせていただきたいと思います。 
  なお、位田委員が5時半にご退席されますので、できれば2時間で会議を終了したいと思っていますので、よろしくご了承いただきたいと思います。 
  早速、議事に入らせていただきます。まず、議題の1になります、科学技術政策研究所が行いました、お手元に資料がありますが、「ヒトゲノム研究とその応用をめぐる社会的問題」ということについて、科学技術政策研究所の大山さんに説明をお願いいたします。どうぞよろしく。 
(大山・科学技術政策研究所) 
  どうもありがとうございます。科学技術政策研究所の大山と申します。 
  本日は、「ヒトゲノム研究とその応用をめぐる社会的問題」につきまして、私どもの研究所で行いました調査検討の報告についてご説明をさせていただきます。 
  私どもの科学技術政策研究所でございますが、科学技術庁所管の国立の研究所の一つでございまして、科学技術政策についての調査研究を行っております機関でございます。生命倫理問題に関しましては、昨年度、クローン技術等をめぐる法的規制の問題を取り上げておりまして、今年度、ヒトゲノム研究とその応用、つまり、遺伝子診断、遺伝子治療といった問題について倫理的、法的、社会的問題について調査検討を行い、その内容を取りまとめております。 
  お手元の調査資料No.66と書かれましたこちらの冊子がまとめました印刷物でございます。この中には、関連の国際機関の宣言ですとか、ヨーロッパ、アメリカの各国の倫理委員会の報告、国内法制度、あるいは日本国内のこれまでの国や学会での動き等を取りまとめまして、また、加えまして倫理学、あるいは法律学といった社会科学、諸科学の研究論文等も紹介して、若干の考察、検討を行っております。 
  本日は、お手元の資料2−2の3枚紙のほうで簡単にご説明をさせていただきます。 
  まず1枚目、表1でございます。海外でのヒトゲノム研究、応用等、さらにはそれらを含めまして、生物医学についての社会的ルール形成についてアプローチのあり方の整理をいたしました。 
  まず、表の左半分でございますが、ヒトゲノム関係のみを中心に対象として、主として研究についてのルールを示したものとして、多国間のものではユネスコの「ヒトゲノム宣言」、あるいはHUGO(ヒューマン・ゲノム・オーガニゼーション)、これは国際的なヒトゲノム研究の研究者の方の組織ですが、その声明がございますし、また、国内レベルですと、米国NHGRI、国立ヒトゲノム研究所のガイドライン類がございます。 
  また、表の左側の下にまいりまして、主として診断や治療、応用分野についてのルールを定めたものといたしましては、WHOで遺伝子診断などの遺伝医学についてのガイドラインが定められておりますし、また、国内レベルですと、米国で、まだ連邦レベルの法律は成立しておりませんが、連邦法案は複数議会に提出されております。また、米国では、州レベルでは既に1970年代から遺伝情報に基づく差別を禁止する州法が成立しております。 
  また、表の右半分にまいりまして、ヒトゲノム関係を含めまして、周辺の生物医学全体を含めてルールを定めたものといたしまして、多国間レベルでは、ヨーロッパで欧州評議会の人権と生物医学に関する条約がございますし、また、国内レベルでは米国NBAC、大統領の生命倫理諮問委員会が人の生体材料を用いた研究についてのルール、これは遺伝的な情報を含む生体材料を含めて全体を対象にしたルールを示しております。 
  また、ヨーロッパでは、例えば、フランスでは遺伝子検査を含めまして生殖医療や臓器移植といった生命医学全体についての生命倫理法と呼ばれる法律が1994年につくられておりまして、また、この法律がつくられるに先立ちまして、国の生命倫理諮問委員会の報告書も提出されて、それに基づいて法制化が図られているなど、ヨーロッパでは国ごとの法制度等もつくられているという状況でございます。 
  1ページめくっていただきまして、表2をごらんください。このように表1でお示ししましたような国際的な対応、海外諸国の対応、あるいは日本国内のこれまでの対応、関係文書の中で共通して取り上げられております論点を抽出整理したものがこちらの表になっております。 
  まず、被験者、研究におけるサンプル提供者の方、あるいは遺伝子診断・治療などの患者さんの権利尊重をめぐって共通して指摘されております留意事項として、表の左側にございますように、自由意思、研究に協力するか、あるいは診断治療を受けるかどうかといったような点についての自己決定権の問題があります。あるいは自己の遺伝情報についての知る権利、知らないでいる権利の問題、または遺伝情報についてのプライバシー尊重の問題といったような権利尊重にかかる指摘ですとか、あるいは同意能力のない被験者、患者の方を対象とする研究、診断治療を行ってよいか。代理人による同意でこういったものを行えるかどうかといった点、さらには家族、被験者や患者の方と遺伝的情報を共有している家族の権利の尊重の問題、あるいは遺伝情報に基づく社会的差別を排除すべきだといったような点が指摘されておりますし、また、研究なり、診断・治療に固有の留意事項というのもございます。 
  こういったものに対応するための方策といたしまして、表の右側にございますように、サンプルの管理や利用システムの構築、例えば、匿名化するといったようなことですとか、インフォームド・コンセントを確保するにあたってどういった要件が必要か。あるいは倫理委員会を設置、またはそこでの審査のあり方、遺伝カウンセリング体制の整備のあり方、さらには社会への知識の普及や教育といったような点が指摘されているようでございます。 
  ここで1点、注意事項を*1として付したのですが、研究にありましても、診断・治療にありましても、被験者、患者の方の例えば自己決定権、プライバシー権といった諸権利は存在するわけですが、実際の対応を考えるにあたりましては、行われていることが研究であるのか、あるいは診断・治療であるのかという研究と診断・治療の違いといったことにも十分な配慮が必要になってくるわけですし、また、研究におきましても、その対象や内容はさまざまということで、研究内容等に即した対応策を講じるということが求められているということが言えるかと思われます。 
  それから1ページめくっていただきまして、資料の3枚目でございます。こういった表1にありますような諸外国の動向、あるいは日本での動向、さらには表2で示しましたようなその中での論点等を踏まえまして、今後の方向性がどういうことかというのを整理しましたものがこの表3でございます。 
  まず、対応の在り方につきまして、表の右側に参考で書きましたように、欧州諸国では、フランス、ドイツ、イギリスなど国の生命倫理諮問委員会による報告を受けて、国による立法化が図られております。また、米国では、連邦レベルの法制度はまだつくられておりませんが、NBAC、大統領生命倫理諮問委員会が非常に積極的に活動して方向性を示しておりまして、これに対応するものとしましては、日本では、この小委員会を含めまして、科学技術会議による基本理念、原則の確立というのが非常に重要な役割を担うものと考えられます。また、もちろんあわせまして、その基本理念、原則にのっとった形で研究機関、研究テーマに即したより詳細な手続き等が求められてまいりますし、また、研究の進展や社会の状況に応じた原則等の見直しということも必要になってくるかと考えられます。 
  また、検討課題の内容としまして、表の下半分でございますが、国際的な基本理念ですとか、諸外国、あるいは国内のガイドライン類を参考にいたしまして、日本としての基本理念、被験者の方の、患者の方の権利の保護の問題、研究者の方の研究の自由といった根本的な点についての考え方が示され、あわせましてこの基本理念を尊重するための手続き、ルールが形成されるということが必要になってくるということだと考えられます。 
  概略は以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。非常に要領よく説明をしていただきました。きょうは議題の3の位田委員からご説明がありますヒトゲノム研究に関する基本原則の検討案に十分な時間を費やしたいと思いますので、今のご報告にご質問があれば、そのときにまた随時ご質問、あるいはご意見をいただきたいと思います。 
  引き続きまして、次に、「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対するための指針」、これは中間報告ですが、厚生省から指針の中間報告が出ていますので、それにつきまして、これは現在、意見をパブリック・オピニオンを求めているということですが、この概要について、厚生省のほうから、中垣企画官、よろしくお願いします。 
(中垣企画官) 
  ありがとうございます。厚生省の厚生科学課、中垣と申します。 
  それでは、事務局のほうから約15分間で説明するように仰せつかっておりますので、資料の2−3及び2−4を用いてご説明申し上げたいと思います。 
  資料2−3は、2−4の概要を取りまとめたものでございまして、大きく分けますと、個人情報の保護、生命倫理、カウンセリング、研究の監督等について今回の案ができているということでございます。 
  資料2−4の基づきましてご説明申し上げますが、まず、今回、2−4は研究班の中間報告書となっております。2月4日付でございますけれども、これを同日開かれました厚生科学審議会先端医療技術評価部会に提出をし、そこでご議論を願ったものでございます。その結果、これをたたき台に、一般国民、いろいろな方々からの意見を聴取しようということになりまして、現在厚生省のホームページほかに掲載をし、その意見をいただいておるところでございます。 
  1枚めくっていただきますと、検討委員会名簿として14名の方が載っております。この場にもご参加願っております位田先生、ほかの方々の名前が載っております。 
  その次のページが作業委員会の名簿でございまして、検討委員会の下に作業グループを設けまして、三十数名の方々にメイリングリストを通じてご議論を賜ったものでございます。 
  その次が目次となっておりまして、1ページ目がその次から出てまいるわけでございますが、この研究班、ご承知のとおり、来年度から開始されますミレニアム・プロジェクトの特に厚生省が受け持つと申しますか、やるということになっております遺伝子解析による疾病対策・創薬に関する研究、この研究を実施するためにどのような基準が必要であろうかという観点からご議論を賜っております。言うまでもなく、このような遺伝子解析研究をする際には、さまざまな倫理的・法的・社会的な問題を招く可能性がある。よって、研究にあたっては、提供していただく方々の尊厳でありますとか、人権でありますとか、利益を保護することが重要であるというような観点からご議論を賜ったものでございまして、もちろん、最初の「はじめに」の項に書かれておりますとおり、ここにある基本理念、あるいは内容というのはミレニアム・プロジェクト以外の場面におきましても尊重されるべきものであるということが書かれております。 
  もちろん、現在、個人情報の保護に関する法律というのは国内にないわけでございまして、政府の中間報告によりますと、個人情報保護法をつくること、また、医療に関しましては厳重な規定が必要だということから個別法をつくるということが提案されておりますし、厚生省におきましても、その方向にのっとって議論をしておるところでございます。そのような現状において、この指針の案というのはできているということをご了承願いたいと思います。 
  次に、大きな2番の基本方針でございますが、6つの基本方針からなっております。まず最初は、提供者、2ページ目でございますが、提供者の自由意思に基づくというのが一つ。次が研究責任者が研究全体を管理し、適正に実施する責任がある。3番目が研究遂行者でございますけれども、人権の保護に最大の配慮を払う。4番目でございますが、既に採取されている試料の取り扱い。これは非常に貴重なものでございますけれども、この取り扱いについては、その際の同意の内容を踏まえて、倫理審査委員会の審査に基づいて決定をするということが書かれております。5番目でございますが、遺伝カウンセリングについて書かれておりますとともに、6番目といたしまして、遺伝子解析研究の実施状況を広く公にしておく。例えば、それぞれの研究機関が有しますインターネットのホームページ等を通じてそういった情報を公開していくということが述べられております。 
  用語の定義は省略させていただきまして、4ページの下のほうに「研究、審査の体制」というのがございますけれども、まず最初に、研究実施機関の長の責務といたしまして、先ほど申し上げましたような遺伝子解析研究には倫理的・法的・社会的問題が起こり得ること、これを周知徹底するというような責務が書かれておりますし、また、既にございます補助金の適正化法でございますとか、いろいろな法令を引用する形で研究計画等に反した場合には返還義務が生じる場合がある等々の記載がございます。 
  次に、5ページでございますが、研究実施機関の長が倫理審査委員会を設置する義務があること。また、小規模な医療機関、実施機関におきましては、共同研究機関に設置された倫理審査委員会に代えることができることが記載されております。さらに、4−1−4でございますが、機関長は、倫理審査委員会の意見を聞いて、それを尊重し、許可・不許可の決定をすること。また、倫理審査委員会の意見に反して決定をする場合でございますけれども、そのような場合にあっても提供者の不利益になるような決定をしてはならないということが入念的に記載されております。 
  4−1−5、4−1−6は民間機関への提供、あるいは業務委託の場合について書かれておりますし、特徴的なのは4−1−7でございますが、実施状況を外部の有識者が実地にチェックをする、実施調査をするということが4−1−7に記載されております。さらに、4−1−9でございますが、個人識別情報管理者という、いただいた試料を匿名化するというような業務を責任を持ってやる方、これを置かなければならないという規定がございます。 
  次に、研究責任者でございますが、最初に、研究計画、並びにこのガイドラインに沿ってやらなければならないということが記載されておりますし、6ページでございますが、6ページの4−2−3に研究計画書に記載されなければならない事項というのが4−2−3−1から4−2−3−14まで書かれております。この中で特に目新しいものを申し上げますと、4−2−3−6、ちょうど中ほどでございますが、4−2−3−6には痴呆等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができない者、あるいは未成年の場合、この場合においてそういうことが必要かどうかということをまず書きなさい。さらにその場合に、代諾者の選定に関する考え方を書きなさいということを書いておりますし、4−2−3−7については、既採取試料の取り扱いについて規定がございます。 
  次に、7ページでございますが、7ページの4−3に研究遂行者等の責務ということで、研究遂行者が人権の保護の観点から重大な懸念がある場合、これについては速やかに機関長、あるいは研究責任者に報告しなければならないというような規定がございます。また、4−3−2でございますが、所属外の研究機関、あるいは1機関で検体を採取する部門と遺伝子解析を行う部門、両方ある場合には、その機関において個人識別情報管理者、これによって匿名化されたヒト由来試料等を提供すること。すなわち、機関から出る、あるいは採取部門から解析部門に渡る、その間に個人識別情報管理者を置いて、この方が匿名化を行うという趣旨の規定がここにございます。 
  また、4−4に個人識別情報管理者の責務といたしまして、この識別情報管理者というのは、刑法により業務上知り得た秘密の漏示が禁じられている医師、薬剤師等ということが規定されておりますし、研究遂行者以外の方であるということが規定されておるわけでございます。 
  次に、8ページの中ほどに4−5として倫理審査委員会の規定がございます。4−5−1が倫理審査委員会の責務で、4−5−2がその構成という形になっておりますけれども、倫理審査委員会といたしましては、倫理的な観点を中心に科学的観点を含めて審査を行うということ。さらに運営方法の規則を定め、それを公開すること。さらに議事要旨は公開するということ、これらの点が決められております。 
  また、4−5−2の倫理委員会の構成につきましては、4−5−2−2でございますが、4−5−2−2を見ていただきますと、9ページの頭でございますが、委員の半数は外部の人でなくてはならないこと。さらに、外部の者のうち半数以上は遺伝子解析の専門家以外の人でなくてはならないということが規定されております。すなわち、委員の半分以上は外部、さらに外部の者の半分以上は専門家以外の人という形で規定されておりますし、4−5−2−4に会議の成立要件といたしまして、専門家以外の外部の者が1名以上出席しなければならないという規定がございます。 
  大きな5番がインフォームド・コンセントの規定でございまして、インフォームド・コンセントについて原則が5−1にまとめられております。さらに5−1−1にその説明事項が5−1−1−1から5−1−1−17までございますけれども、まず、5−1−1−1でございますが、9ページのちょうど中ほどでございますけれども、血液等の提供は任意であって、同意はいつでも撤回できるということがまず書かれております。さらに5−1−1−6でございますけれども、予測される成果と予測される危険・不利益について説明をすること。また、その下でございますが、希望によって研究計画、あるいは詳しい遺伝子解析研究の方法等の資料を入手、閲覧できることが書かれております。 
  さらに、10ページ目の上でございますが、5−1−1−10をごらんいただきますと、個々の方々、提供者に関する遺伝情報が明らかにならない場合には開示できないこと。あるいは個々の提供者に関する遺伝子情報が明らかになるという場合には、求めに応じて開示できるということが書かれております。 
  また、家族への対応といたしましては、5−1−1−11でございますが、家族等から求めがあっても、それは開示をしないということが書かれております。その下には知的財産権の取り扱い、また学会、データベースでの公表が書かれておりますし、5−1−1−15を見ていただきますと、バンクへの寄託について説明をすることが書かれておりますし、カウンセリングについても書かれております。また、最後の5−1−1−17をごらんいただきますと、提供の対価はないということが書かれております。 
  次の5−1−3が代諾の問題でございますけれども、代諾につきましては、5−1−3−1で痴呆等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと判断され、かつ倫理審査委員会が認めた場合、こういう場合においては代諾者から提供の同意をもらうということが書かれておりますし、未成年者の場合には、親権者等の代諾者からインフォームド・コンセントをもらうこと。さらに、その未成年者が16歳以上である場合には、本人のインフォームド・コンセントも必要だということで一歩踏み込んだ記載になっておりますし、16歳未満の場合には、できる限りその未成年者からも同意するよう努めなければならないという規定がございます。 
  また、5−1−3−3でございますが、代諾者の選定につきましては、家族または日常生活において深く提供者とかかわっていた者などの中から適当と考えられる者を選んでもらうよう依頼をしなさいと規定されています。要するに医療の現場はいろいろ複雑でございますので、このガイドラインにおきましては、家族、あるいはいつも深くつき合っていた方、これらの方々に選定を依頼するという形で整理がされております。 
  次に、5−2のインフォームド・コンセントの具体的な手続きといたしましては、第一群、これは遺伝の関与の程度が明らかな疾患の患者さんでございますけれども、この場合、また、第二群、これは遺伝の関与がまだ明らかではない。関与の程度が明らかではない、例えば、生活習慣病、高血圧であるとか、そういうものを考えていただければよろしいのでございますけれども、この場合、あるいは第三群、これは疫学研究の場合でございますが、疫学研究の場合、12ページをごらんいただきますと、第四群ということで、健常者のボランティア、あるいは健康診断を受けに来た方々、これらの4つにケースを分けて、それぞれごとに同意あるいは説明文書の例示をつくっておるところでございます。 
  12ページの上から3分の1のところにございます大きな6番でございますが、ここで既採取試料、既にございます貴重な試料の取り扱いについて書かれております。この場合にも、A群、B群、C群と3つに場合分けされておりますが、遺伝子解析研究を行うという同意がとれておるというものがA群でございます。既に保存された資料をいただく際に、遺伝子解析研究を行うという旨の同意がとれているというのがA群でございまして、これはその同意の範囲内で用いる。 
  B群というのは、医学研究に用いるというような包括的な同意がとられておる。すなわち、遺伝子解析研究をやるかどうかは明示的ではない、包括的な同意がとられておる場合でございますけれども、この場合には、原則として、さらに新しく遺伝子解析研究に用いるという同意が与えられた場合には当然のことながら利用できる。また、遺伝子発現解析研究、あるいは体細胞遺伝子、これは具体的に申し上げますと、一部のがんなどの後天的な遺伝子の変化に当たるんだろうと思いますが、体細胞の遺伝子解析研究というのは、既に与えられた同意の範囲内で研究に利用できるということで整理をしております。 
  さらに、1)として連結不可能匿名化、すなわち、もうその試料がだれのものかわからない、だれもわからないというような試料になっている場合、あるいは連結可能匿名化、この場合には、その連結をする部分というのは非常に厳重に管理されておるわけですが、そういう場合においては、ここに書いておりますような条件、すなわち提供者に危険・不利益が及ぶ可能性が極めて小さい、あるいは研究に高度の有用性がある、あるいは他の方法では研究の実施が不可能、あるいは極めて困難であるということが倫理審査委員会で確認されたというような例外的な場合に限って生殖細胞系列遺伝子解析研究を行うことができるという規定になっております。 
  次の6−3が試料採取の際に同意が得られていないものでございますが、これは原則論といたしましては、遺伝子解析研究に使うことができないという原則をつくっております。その例外的な場合としましては、先ほど申し上げました1)でございますが、だれのものかもうわからないという場合、あるいは2)といたしまして、厳重に管理されておるんだろうと思いますけれども、連結可能匿名化の場合、ここに書いてあります4点が倫理審査委員会で確認された場合には例外的に用いることができるという規定になっております。 
  7番で保存、あるいは廃棄の方法が述べられておりますし、最後に、遺伝カウンセリングの体制といたしまして、カウンセリングの部門の業務、構成、あるいは実施施設にカウンセリングがない場合のよその適切な施設の紹介について記載があるわけでございます。 
  これが、急ぎ足でございましたけれども、国立がんセンターの中央病院長の垣添先生を中心とする研究班の報告書でございまして、これを現在公開をし、一般からの意見聴取をしておるところでございますが、先ほど申し上げましたとおり、説明文書の例示でございますとか、同意文書の例示でございますとか、こういうものをさらに先週の金曜日に公表いたしましたので、その関係もございまして、資料の2−3に移っていただきたいんですが、資料の2−3の末尾に注としてスケジュールというのがございます。これをごらんいただきますと、当初3月の初めまでのパブリック・コメントの予定でございましたが、先ほど申し上げましたように、説明文書の例示等を新たに公表いたしまして、それらについても含めてご意見を賜るために4月の上旬、具体的に申し上げますと、3日までパブリック・コメントを受け付けることといたしまして、それらのコメントを踏まえまして、厚生科学審議会で4月中旬以降ご議論を賜るという形にさせていただいておるところでございます。 
  以上、長くなりましたが、現在の厚生省のいわゆるゲノム研究に関します生命倫理指針の検討状況についてご報告させていただきます。ありがとうございました。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。今、中間報告のご説明をいただきましたが、先ほどの研究所からの報告と同じように、議題の3に時間を費やしたいと思いますので、質問につきましては、議題の3にその議論の中で、また企画官にいろいろご質問していただけると思います。 
  それでは、基本原則について、これはヒトゲノム研究に関する基本原則でして、前回もこの委員会では基本原則について論議をするというふうに皆さん方にご了承いただいていました。その基本原則について、位田委員を中心として委員会で検討された結果、その結果が本日、資料の2−6としてまとめられています。 
  まず、事務局からこれまでの調査検討委員会の活動状況について、簡単に説明をよろしくお願いします。 
(内丸課長補佐) 
  それでは、ご説明させていただきます。資料2−5をごらんください。 
  科学技術振興調整費の委託調査としまして、ヒトゲノム研究開発動向及び取り扱いに関する調査を行っております。その委託調査の中で実際に有識者に集まっていただきまして検討委員会を開催しておりまして、それはこの資料2−5の2枚目に構成メンバーの名前を挙げさせていただいておりますけれども、このような構成メンバーで検討していただいております。 
  それで、その実施状況につきましては、第1回検討委員会を平成11年11月29日、その際にこの3点のところを議論していただいております。第2回目を平成12年1月27日、また、第1回のワーキングミーティングを平成12年2月14日、第2回目のワーキングミーティングを平成12年2月23日に開催しております。また同時に、理想的なディスカッションとしましてメイリングリストを設定しまして、この約3カ月の間さまざまな議論が出ております。 
  簡単でございますけれども、以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  それでは、この基本原則に関しまして、位田委員のほうからよろしくご説明をお願いします。 
(位田委員) 
  お手元の資料の2−6という形で「ヒトゲノム研究に関する基本原則(検討素案)」、その後ろのほうに研究指針をつけてありますが、この素案の説明に入ります前に、今回の新聞での報道について一言申し上げたいと思います。 
  今回のような形で新聞にこの委員会での議論が始まる前に、あたかもこの委員会で研究に関する原則がまとまったかのような報道をされたことは、この原則をドラフトしている私としましても、それから私がお願いをしている、下作業をしていただいている委員会としましても誠に遺憾でございます。どこからこの情報が漏れたかはまだわかっておりませんけれども、どこから漏れたかどうかというよりも、こういう形で漏れたことについて非常に遺憾でございます。 
  しかも、その新聞の報道によりますと、まだ素案を作成している段階であるにもかかわらず、あたかも意見がまとまっているかのように報道されたのは、ある意味で誤報であります。新聞がこの案をいかなる段階であるかということについての事実確認もしないで報道されたことは誤りです。また、私はこの案をメイリングリスト及びこの委員会の先生方に科技庁を通してお送りしたときに暫定案であるということを断っていたにもかかわらず、したがって、内容の変更もあり得るということを断っていたにもかかわらず、その点については一言も報道では触れられていない。 
  第3に、あたかもこの素案が事件と同じようにスクープ報道のような形で報道されたことに、ある意味では意図的な世論操作の可能性をも感じないわけにはいきません。生命倫理の問題は、本来、社会全体で落ちついた議論をするべき問題でありまして、今回のような一部マスコミの姿勢は、生命倫理についての冷静な国民的議論に正確な情報を提供するべき立場を見失ったものであって、我が国で今なおこうした状況が生じることに生命倫理そのものに対する理解不足というものが如実に感じられます。 
  将来の健全な生命倫理に関するコンセンサスの形成及びそれに基づく生命科学の適切な発展に私自身としては不安感さえ抱くようになりました。今後こういうことがないようにマスコミの皆さんには十分留意していただきたいと思いますし、私が素案をつくっている段階で、そのプロセスの中でこの暫定案が漏れたとすれば、私の責任も重大であるということは感じておりますので、この問題の適切な処理をした上で、その後の私自身に対する処理も考えております。 
  以上、今回の新聞報道について一言申し上げました。 
  この素案に関してご説明申し上げたいと思いますが、前置きばかりで申しわけないんですけれども、最初に、私がこの素案をつくるのがかなり時間的に遅れましたために、中村委員とご相談をして本来なら素案をつくるべきところを、まず、中村委員に案をつくる段階で遅れましたことと、それから中村委員に、暫定案であるとはいっても、それがどうもうまく届いていなかったこと、その他さまざまな不手際を私の側でやってしまいましたので、今回の素案ついては中村委員のコメントはないままで、したがって、位田試案という形で出させていただきました。そういう意味でタイトルの括弧の中にも検討素案と書いてございます。もっとも基本原則の部分については、先週お送りした暫定案で大体の骨子はそのまま維持しております。文章表現とか幾つかつけ加えたり、削ったりしたところがございます。 
この原則をドラフトする際の基本的な立場をまずご説明したほうがいいと思いますが、ヒトゲノム研究に関する基本原則という形で私がドラフトしましたのは、特に生命倫理の観点に立った原則案でございまして、そういう意味では現状の研究状況からすると、かなり厳しい部分がございます。しかし、ある意味では、私のドラフトいたしました原則は、机の上の勉強だけで書いた原則でございますから、現場を必ずしも十分に理解してつくっているわけではございません。したがって、この委員会、もしくはこの委員会外でも、現場の方々、とりわけこの委員会の先生方の意見を聞いて修正していきたいと思っております。したがって、この原則案はまさに検討の素案でございまして、これからどんどん変えていっていただきたいというふうに考えております。 
  私の立場としましては、一応厳しい原則をお出しして、それを具体的な状況に合わせた柔軟なルールにしていくためのたたき台であるという位置づけをしております。この基本原則をつくるにあたっての基本的な考え方は、ヒトゲノム研究は当然にどんどん進展させていきたいという希望と、同時に人の尊厳と人権を中心にした生命倫理の考え方も我が国で根づかせて、いわばヒトゲノム研究の進展と生命倫理的な考え方を調和させて進めていきたいということでございます。 
  その立場から、私のつくりました案は、どちらかといえば生命倫理の部分がかなり強く出ていると思いますので、これをある意味では跡形なきまでに変更していただいても、私自身としては全く文句はありません。 
  中身に入りますが、基本原則のところをまずごらんいただきたいと思いますけれども、4ページにわたっております。全体の構成としましては、前回の委員会で憲法的文書をつくるべきだというお話がございましたので、基本原則と、そしてヒトゲノム研究に関する指針という形で、前回、少し詳しい部分はまた別につくると申し上げましたので、いわゆる細則的な部分を指針という名前で案を出させていただきました。 
  まず、基本原則のほうですが、これを見ていただければすぐわかりますが、まず、基本的考え方というものを打ち出しておいて、そして、その後が4つのパートに分かれております。基本的考え方のところには、この基本原則を定めることの意味を、少し長いかもしれませんが、書かせていただきました。この基本原則はこれまでのさまざまな各国、もしくは国際的な原則とか宣言につながるものだという位置づけでございます。 
  内容的には、これまでの原則とか宣言とかと同じような内容になっておりますが、我が国がこういうふうな基本的な文書を策定するという事実が非常に重要なことだと思っております。内容的には、ある意味ではありふれた基本原則になっているかもしれませんけれども、我が国の生命倫理に関する現状からすると、こういうものを策定することが非常に重要だという位置づけでございます。 
  具体的な原則の内容ですが、これは4つのパートに分けておりまして、まず、1のところでは「ヒトゲノムとその研究」ということで、ヒトゲノムの意味とそのヒトゲノム研究の社会における問題の可能性という形で4つの原則を出させていただきました。1の1は、ヒトゲノムは生命の設計図であって、また同時にゲノムが独自性と多様性を示しているということを言っております。 
  2のところは、いわゆる遺伝子決定論を排除して、その遺伝的特徴がいかなるものであっても、個人の尊厳と人権の尊重がなければいけない。それから3は、ゲノムは、両親のゲノムを受け継ぐと同時に、環境の影響を受けてさまざまに発現するということを言っております。4はヒトゲノム研究及びその成果の応用が倫理的、法的、社会的問題を惹起するということを示しております。 
  それからパート2ですが、研究試料提供者の権利、簡単に被験者と言ってもいいのかもしれませんが、一応こういう形で提供者と申し上げますが、提供者の権利を書かせていただきました。 
  2の1は、人の尊厳と人権ということを、繰り返しになりますが、謳っております。それから2、3、4は、インフォームド・コンセントにかかわる問題でして、2はインフォームド・コンセントのいわば定義規定、それから3は同意能力を欠く者についてインフォームド・コンセントを与える場合には、代諾者からインフォームド・コンセントが与えられる。4は同意の撤回でございます。5は提供者が自己の遺伝子情報を知る権利、知らない権利を定めています。それから6は、これも繰り返しになりますが、差別の禁止。7はヒトゲノム研究の過程において損害をこうむった場合には正当な補償を受ける権利であります。 
  それから8は、遺伝カウンセリングを含む適切な社会的心理的支援を受けることができる。現状では遺伝カウンセリングのみでなく、適切な社会的心理的支援というのはあまり十分ではありませんが、これは将来に向かっての基本原則でありますので、こういうふうに具体的に書かせていただきました。9は遺伝子情報の保護であります。 
  それから3は、ヒトゲノムを研究する側について述べております。1は科学研究の自由は尊重される。これは研究者の人権をこういう形であらわしました。それから2は、研究応用を行う場合には、人の尊厳と人権とを十分に尊重しなきゃいけない。3で人の尊厳に反する研究をやってはいけない。4でヒトゲノムに関する研究が人間の遺伝子という極めて重要な影響を与える可能性のあるものを扱い、かつほかの人のサンプルを使うということから生物学上、遺伝学上、医学上の有意義な成果が見込まれるものでなければならない。少なくとも単にちょっとやってみようということではなくて、きちっと研究計画をつくっていただきたい。5のところでは、そういう明確で詳細な研究計画をつくりなさいということを書いております。6は倫理委員会による審査を経る。その際には、倫理委員会の地位構成として、独立、学際的、多元的ということを言っております。 
  7は、「原則」としては、今ずっと申し上げてきたことなんですけれども、現実にはそれぞれの研究の目的や対象とする因子、その他によって研究の手法はさまざまであることが知られておりますので、これらの原則を現実に適用し、もしくは運用する際にはそれぞれの研究手法に応じて適切な研究実施の手続きを定めて遵守するということをうたっております。いわば倫理的、法的、社会的な問題を引き起こさないような研究であれば、その研究実施の手続きは少し緩和されて行われる。すなわち、ヒトゲノム研究をより進展させる方向であれば緩和してもいい、そういう可能性は一応残しております。 
  それから、第4のところでは社会との関係を書いておりまして、1では、ヒトゲノム研究の進展を社会を挙げて支援する必要があるということを書いております。2では、研究の成果は公開を原則にする。それから3では、研究の成果は、特に人々の苦痛の除去及び健康の改善に用いられるべきである。4では、この原則及び附属の指針に従って、十分かつ効果的に研究が推進されるように適切な措置を講じる。と同時に、倫理的、法的、社会的問題が生じる危険性があれば、もしくは生じれば、迅速な判断と対応をする必要がある。 
  それから5では、ヒトゲノム研究もしくはヒトゲノムそのものについての一般の理解が現在ではまだ乏しいところから、教育及び情報の普及ということがヒトゲノム研究を進めていく上で非常に重要であるということを述べさせていただきました。それぞれの項目について、脚注の形で少しわかりにくいところ、もしくは補足しておいたほうがいいと考えるようなところは、細かい字で恐縮ですが、書かせていただきました。 
  ヒトゲノム研究に関する指針のほうですが、これはかなり詳しく書いております。ただ、先ほどご説明がありましたように、厚生省の遺伝子解析に関するガイドラインがございますので、それとあまり同じような形にならないように、少し厚生省のよりはコンデンスした形で書きました。一つ一つご説明しておりますと時間が足りないと思いますので、ごく簡単にポイントだけ申し上げますが、1はヒトゲノム研究の定義と、この指針を遵守しろということです。2では、これも原則とあわせまして提供者の尊厳と人権、原則のほうは提供者の権利という書き方をしておりましたが、こちらは提供者が保護される対象であるという形で差別の禁止、それからインフォームド・コンセント、そして遺伝子情報の保護という形でいろいろな状況を想定しながら細かく書いております。それから3のところではヒトゲノム研究活動ということで研究機関及び研究者がとるべき行動といいますか、立場、それからBのところでは倫理委員会、Cでは研究試料の取り扱いについて規定をしております。 
  大体は原則のところでご説明したことを少し詳しくしておりますが、特に3のAの9のところでは、先ほど原則の3の7のところで申し上げたように、具体的な研究については、それぞれ最も合理的かつ効果的な研究手法をとることができるように、その研究の手続きを定めるべきである。その際には、ヒトゲノムの研究というのは個人の遺伝子情報の特定が倫理的、法的、社会的問題を引き起こす可能性が高いということに留意をしていただいて、しかし、同時に、ヒトゲノム研究が人間の健康と疾患の予防治療に極めて重要な貢献をするという非常に大きなプラスがあるということ。そして、その研究によっては提供者に与える不利益が極めて少ないということがあり得るということを考えまして、そういういろいろな条件をクリアすれば、基本原則及び研究指針が定める条件を適切な形で緩和をしていくということを挙げております。 
  Bの倫理委員会で申し上げておくべきことは、特にBの2のところの透明性の確保ということでして、組織及び審査における透明性を確保する必要があるということを申し上げております。 
  それからCの研究試料の取り扱いについては、1から4までの部分は、これから研究試料を提供していただく場合のことを考えております。それから5はインフォームド・コンセントに関連する部分でございます。それから6、7、8につきましては、既に提供されて保存されている研究試料についての取り扱いを定めています。原則のほうでは、その後に社会との関係というのが書いてありますが、研究指針については、それは不必要だと思いましたので、その点については書いてございません。 
  以上、少し長くなりましたが。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  ヒトゲノム研究に関する基本原則ということで、位田委員の試案のご説明がありました。なお、それに続きまして、ヒトゲノム研究に関する指針ということにつきましてもご説明がありましたが、この委員会は、私の理解では基本原則を主に議論する、つくっていただくということになっていたと思いますので、まず、この基本原則についていろいろご意見をお伺いしたいと思います。後のほうを指針にするのか、あるいは基本原則を説明するものにするのかということについては、また少しご議論をいただければと思いますので、まず、基本原則について、それから先ほどの科学技術政策研究所の調査、あるいは厚生省の中間報告についても、もしご質問、ご意見があれば、それを加えて、今から1時間ほどご議論を願えればと思います。どなたかご意見がおありでしょうか。 
  中村委員、どうぞ。 
(中村委員) 
  研究指針に関しては、今は議論しなくていいという理解でいいわけですね。 
(高久委員長) 
  まず、基本原則をちょっと議論していただいて、その残りを研究指針ということで議論していただければと思います。しかし基本原則については、これは非常によく書かれていて、特にあまり問題がないというと失礼ですが、それほど異論がない。ただ、もしつけ加えることが……。 
(中村委員) 
  1点だけ私がつけ加えていただきたいのは、この差別をしてはいけないということは当然なんですけれども、基本的な理念として、遺伝的に多様性であるという考え方が欠落していると思うんです。すべての人間は平等であるということが言われていますけれども、基本的には遺伝子は違うわけだから、遺伝的に多様性があるわけで、だから社会との関係において一番大事なのは、みんな遺伝的に違うんだという教育がない限り、やっぱり本当の意味での差別がなくならない。だから、差別をしてはいけないという以前に、やっぱり多様性を認めるという考え方を基本的に浸透しない限り、これは実効というか、あまり有効でないと思うので、そういう一言を、特に多様性研究というのが始まっているわけですから、ぜひそういうコメントをどこかに加えて、違っているんだということの認識が必要だということを加えてほしいと思います。 
(位田委員) 
  多様性という言葉については、1の1のところで個人が独自性と多様性をもっているというふうには書いてありますが、多分、中村委員のご趣旨はそれだけではなくて、差別を禁止するというのであれば、多様性が互いにあるというか、それに対応することを明確に書けという、そういうことですね。 
(中村委員) 
  だから、みんな同じだというような認識があるから、ちょっとスタンダード・ディビエーションからずれているとおかしいんじゃないかというような考え方が生まれてきているんじゃないかと思うわけです。だから、みんな違うんだと。遺伝子も違うし、表現、意見も違うんだと。そういうことで差別してはいけないんだと。違っているということを認めるということからスタートしないと、やっぱり差別はなくならないと思うので、そこは強調して書いていただきたい。 
(高久委員長) 
  実際にどこの部分に入れれば一番良いのですかね。 
(中村委員) 
  社会との関係でもいいですし、そういうことを理解することに努めると。それはやっぱりゲノム研究にとって非常に大事なことだと思います。 
(位田委員) 
  その辺は、私は4の5の教育というところを強調したかったので、具体的には書いてありませんが、そのことを認識してはしているつもりでしたけど、ちょっと修文については考えさせていただきます。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたか。どうぞ。 
(寺田委員) 
  これは質問ですけれども、2ページの大きな2の3番のところに「法の定めにしたがい」、代諾者の話でございますけれども、この文がちょっとわかりにくいんですけど、どういうふうになるんでしょうかね。 
(位田委員) 
  民法とか、その他幾つかの法律で未成年のケースと、それからそれ以外の疾病とか精神異常とか、そういう異常の状態にあるために同意能力のない場合がありまして、未成年に関しては年齢で法律で定めがあります。インフォームド・コンセントについての定めではございませんが、法律上の権利能力という点で定めがあります。 
  それから、最近問題になっております高齢者に関しては、今度成年後見という制度ができますので、そういう形をとれば、例えば、痴呆のご老人に関しては後見人が代諾者になると。ただ、問題は、法に定めがないケースというのは非常に難しいので、その辺は実は少しぼかしてというか、ほうり出してございます。しかも、本当にその方が、例えば、痴呆であるかどうかという判断そのものも非常に難しいと思いますので、その辺は研究指針のほうで少し私は書いていたかと思いますが。 
(寺田委員) 
  研究指針のところにはちょっとぼかして書いてあって、こっちには原則とか法律とか書いてあったんですが。 
(位田委員) 
  そうです。原則として法の定めと書いてありますので、原則がはっきりしないときはちょっと困ることにはなると思いますが、そこまでちょっと書き切れないものですから、さまざまな状況があると思います。 
(高久委員長) 
  この文章でわかりますね。「法の定めにしたがいかつ」、私も100%はわからないけれども、大体こういう表現になるんですね。 
(位田委員) 
  勝手に代諾をしてもらっては困るので、法が決めていれば、それによる。それでなければ、その者の最善の利益を得るためにという限定をつけております。 
(寺田委員) 
  もう一つよろしいですか。その次の研究試料提供の同意は撤回することができるというのは、ちょっと厳しいときがあるかなと。例えば、実際に結果が出まして、それも10年前の、5年とか、10年というのは極端ですけれども、そういう時間的に連結不可能になったような場合がございますね。だから、連結不可能という範囲がどの辺の範囲内のことかですね、ですから、ここは原則としてということはだめでしょうか。やっぱり撤回することができると、要するに例外的なこともあり得ると思うんですけれども。 
(位田委員) 
  原則として撤回することができると書いてしまいますと、原則は撤回なんだけれども、本当は撤回できないときでも例外として撤回できることがあり得るという形になってしまいます。企画官が今おっしゃったのは、例えば、10年前とか20年前にやったものについては、これはもしそこにさかのぼることができれば撤回はできますが、しかし、もう匿名化されているとか、その匿名化されたようなサンプルについては、当然撤回はできないということになりますので、撤回が可能な状況にあるかどうかというのをまず判断して、可能な状況にあれば、撤回ができるということだと思います。 
(高久委員長) 
  私もこの文章のままでいいのではないかと思います。もし必要ならば、指針のところでも少し説明をされれば。 
(中垣企画官) 
  今の議事録のご発言で結構です。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたか。どうぞ。 
(小幡委員) 
  今の点に関連いたしますが、基本原則というのは、あまり細かなことを言い出しますと切りがないので、簡潔に要点のみを述べるというほうがわかりやすいと思います。そういう観点からいくと、このままで良いと思いますが。 
  ちょっと指針の6ページのところですが・・・。 
(高久委員長) 
  あの、指針のほうは。 
(小幡委員) 
  ただ、指針の方に今の点がございまして、要するに撤回することができない連結的期間を超えているとか、そういう記述がございますので、結局、基本原則だけではこれだけで大丈夫かなというところが指針には書いてあるというふうに思いましたので、両方読むとよくわかると思います。ちょっと1点だけ申し上げたいんですが、この基本原則の2.研究試料提供者の権利のところの2ページの一番最後7、「ヒトゲノム研究の過程において損害をこうむった場合」、わりとここが厳密に区切っているような感じがいたしまして、研究がいつ終わるかというのは、あまりはっきりしない部分がございまして、要するに研究で取得された個人遺伝子情報が何らかの偶然的な要因でほかに流出してしまうというような場合についても責任は生じると思いますので、あまり「過程において」とまで書かなくてもよいかなという感じがちょっとしたんですが、いかがでしょうか。 
(位田委員) 
  私も多分、それが一番大きな問題だろうと思いますので、それを「過程において」という言葉であらわしたつもりなんですが、イン・ザ・プロセスじゃなくて、デューリング・ザ・プロセスという感じなんですが。ちょっと舌足らずだったかもしれませんけれども。 
(小幡委員) 
  むしろ、長い経過を過程というところで読む。 
(高久委員長) 
  このものの過程においてと入れたほうがはっきりするような気がするのですが。 
(小幡委員) 
  研究の一時点に限らずもっと長い感じですね。 
(高久委員長) 
  また逆に、ヒトゲノム研究の過程においてと入れないと、範囲が非常に広くなって難しい場合もあるのかなという気が。 
(位田委員) 
  幾つか言葉遣いのオプションがありまして、「ヒトゲノム研究において」という可能性と、「の過程において」というのと、もしくは「研究途上」とか、いろいろな可能性があると思うんですが、私の感覚では「の過程において」ということにしておけば、かなり広い範囲をカバーできるかなという感覚でこういうふうに書きました。もっとベターな表現がありましたら、そちらにかえることについてはやぶさかではありません。 
(小幡委員) 
  今の位田先生の趣旨でしたら、私も同じ趣旨のことをお話ししているんです。言葉の問題ですので結構です。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたか。どうぞ。 
(眞崎委員) 
  3の7に関連してなんですけれども、多様性ということが個人情報に結びつくということで倫理的な問題が生じるこということですね。その多様性の問題から離れて、人の材料を扱うという際の倫理問題というのは別の倫理なんですか。要するに7のところが、いろいろなグレードがある、段階があるというふうにとれるんですけれども、研究の活動。 
(位田委員) 
  3の7ですね。研究のグレードというよりは、例えば、特定の個人の遺伝子だけを取り出して研究をするというケースもあれば、非常にたくさんの1,000、2,000、場合によっては1万ぐらいの非常にたくさんの遺伝子を全部集めて研究するというケースと、いろいろなケースが考えられますし、それから研究サンプルをリンクにするか、アンリンクするかという問題もありますし、それから研究しようとする対象がいわゆる原因因子であるか、危険因子であるか等、いろいろな研究、私も全部わかっているわけではありませんが、いろいろな研究の対象、方法、状況があると思いますので、あまりに一律に厳格な倫理規定を使ってしまうと、かえって研究がストップするであろうという懸念がありましたので、こういう書き方にさせていただきました。 
(眞崎委員) 
  先ほど質問いたしました件に関しては、個人情報に結びつく倫理問題と、そのほかの人のサンプルを扱う倫理問題というのはひっくるめて考えるんですね。 
(位田委員) 
  ちょっとご趣旨がよくわからないんですが。 
(高久委員長) 
  これは両方入っている。ゲノム研究では人のサンプルが主になる可能性があると思いますし、それから個人情報も当然入りますので、概念としては両方当然入っているわけですね。 
(位田委員) 
  わかりました。ある特定の人の個人情報がゲノム研究ですぐわかってしまうというような場合にはかなり厳しい倫理規定でやっていただかないといけませんし、そういう個人情報があまり漏れない、もしくはその提供した人に対して不利益を与えないような研究であれば、それは少し倫理規定を緩めるというのは、私はあまり好きな言葉じゃありませんけれども、少し調整するということが可能だと。全体としては、ヒトゲノムを研究する場合にはこういう倫理規定でやっていただきたい。原則はこうですよというのがここで出してありまして、状況を判断して、少し緩和された形か、原則どおりの厳しい形かという形だと思います。 
(高久委員長) 
  今、基本原則についてご議論していただきましたけれども、時間の関係もありますので、その後のほうの指針についてもご意見をいただきたいと思います。その前に、最初のページの欄外に、それぞれについて具体的な指針が定められるべきであると書いていますので、ここではヒトゲノム研究に関する一般的指針とか、そういう表現にすると基本原則を説明する形になって良いのではないかと思います。それでよろしいでしょうか。 
(位田委員) 
  はい。 
(町野委員) 
  この関係でちょっとお伺いしたいんですけれども、ヒトゲノムの解析についての研究だけですよね。つまり、今まで議論されましたのは、これを用いて、さらに遺伝子治療だとか、そういうような介入、侵襲の問題ですね、それについては、一応ここはこの問題は触れないということですね。 
(位田委員) 
  前回の委員会で研究と診断とはきちっと分けろという話でしたので、診断、それ以降の治療ということも含めてですが、ここは研究だけの段階の指針です。 
(町野委員) 
  それでですね、この中に負の部分として生命操作というところがありますから、それは診断もそっちにつながると、解析もつながる。そういう前提だとするならば、もうちょっともしかしたら広い原則をうたわなきゃいけないということがあるのかなというあれなんですが。 
(位田委員) 
  この原則及び指針は、基本的には研究という枠内にとどめますけれども、しかし、その研究の成果が応用される段階において、診断とか治療とかですね。いろいろな形で応用される段階において負の局面が出てくる。いわばそこの一番オリジンになる部分をこの原則及び指針で把握しようということなんですが。 
(町野委員) 
  それで、結局、もしそうだとしますと、ここで負の部分として触れられているのは、主に差別の問題とプライバシーだけなんですね。これだけかなということなんですよ、結局。だから、そこまで触れる。例えば、今までの議論というのは、それが応用されたときに遺伝子操作につながる、あるいはゲノムというのは人類の遺産であるのに、それを変更するのは許さないというような議論があったわけですが、それが今、この部分ではないわけですね。だから、それは態度決定したということなのか、しないで済むということなのか。それをちょっとお伺いしようと思いまして。 
(位田委員) 
  確かにゲノムをさわること自体が問題であるという立場はあり得ると思うんですが、それだと基本原則は要らなくなってしまいます。さわらないということであればですね、そうだと議論をする必要がなくなる。基本原則を定める以上は、ヒトゲノムをさわるという言い方はいけないと思いますけれども、ヒトゲノムを研究することによって、負の部分はもちろんあり得るけれども、プラスの部分が極めて大きいと。そういう観点から研究はそこの科学研究は自由が尊重されるというふうに書きましたけれども、研究はとにかく進めていただきたい。ただし、それは倫理的な枠組み、もしくは社会的な枠組みの中でヒトゲノム研究をやっていただきたいという、そういう立場です。そういう意味では最初に判断があって進めています。 
(高久委員長) 
  実際には研究と診断、場合によっては治療と区別ができないというか、グレーゾーンなところがありますが、この委員会では基本的には研究ということで、その研究の結果が実際に診断、あるいは治療に応用されるときにはもっと具体的な指針、遺伝子治療の場合にはかなり具体的な指針が出ておりますが、そういう形の具体的な指針で処理させていただけると非常にありがたいなと思います。実際にはなかなか難しいところがあると思いますが。 
(位田委員) 
  一つ補足させていただきたいんですが、確かに負の部分になり得るのはプライバシーと差別の話だと思いますが、他方で研究者の研究の自由というのはもう一つの倫理だと思いますから、そこはプラスとかマイナスとかあまり言いたくありません。そこの部分もやはりきちっと認識してほしいということも含めています。 
(町野委員) 
  私の趣旨は、ここで尊厳という言葉がありますから、この内容が一体何なのかということも一つありまして、ですから、この指針というのをもしやるとするなら、今、主に考えているのは、とにかく差別の禁止問題とプライバシーの問題であると。それ以外にも何かあるかもしれないけれども、主にこちらのことを考慮に入れてこういう基本原則を定めたと。そういうような書きぶりであるならばわかるかなという感じなんですけれども、おそらくそのご趣旨だろうと思いますけれども。 
(位田委員) 
  片方の側だけから見るとおっしゃったようになりますが、でもヒトゲノム研究というのはそれだけではないだろうということでプラスをしたということでございます。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたか。まだ大分時間がありますし、指針のほうでいろいろご意見があれば。 
(中村委員) 
  指針のほうについて、まず、基本的にお伺いしたいのは、先生は厚生省のガイドラインの作成委員にもなっておられますけれども、これで屋上屋を重ねた上に厚生省のガイドラインとかなり違う部分があると。先生は責任者で説明されているにもかかわらず、こういうあえて違う指針をつくられた理由というのがもう一つわからないです。 
  幾つかポイントがありますけれども、大きなポイントを2点だけ指摘させていただきますと、1点は、インフォームド・コンセントは研究者がとるということは、厚生省のガイドラインには一言も書かれていないわけですけれども、かなりきつい口調で、まるで医師が患者に心理的圧力を常にかけているかのような文面で、主治医がインフォームド・コンセントをとるのを避けるべきであるということを言われています。これは非常に僕は矛盾していると思うのは、その研究者に対して主治医がある患者さんはこういう病気を持っておられますよということを伝えないといけないわけですね、研究者が直接患者さんにアプローチする場合には。その場合に、医師の守秘義務というのは一体どう扱われるつもりなのか、全く私には理解できないです。 
  それからもう1点、厚生省側では材料を採取した機関が個人情報を管理すると。先生はそれに納得されて、そういう指針をつくられておられると思いますけれども、これは研究者が個人情報を管理するという形に置きかわっている。かなりこれは大きな違いなわけです。ほかにも細かいことは幾つかありますけれども、あえてこういうふうな細かい研究指針をつくられる。しかも、先生が別に出されているのとは違う指針をつくられて、私はインフォームド・コンセントをとるという文面に関しては、かなり患者、医師の関係についてうがった見方というか、医者とか研究者は悪で、患者さんは弱者であるというふうな非常に偏見に基づいたコメントが2の3に書かれているような気がするんですけれども、いかがでしょうか。 
(位田委員) 
  厚生省のほうの委員会は、私は別に責任者ではありませんので、かなりいろいろ意見は申し上げましたけれども、私が全部つくったわけではありませんので、私が納得している部分と納得していない部分があるということをまず申し上げたいと思います。 
  それから、2のBの3については、確かにおっしゃるとおり、かなりきつくは書いてあるのですが、しかし、お医者さんの側から言えば、確かに中村委員のおっしゃるとおりだと思いますけれども、しかし、患者の側に立てば、心理的圧力を暗黙のうちに感じるわけです。私はいつも悪い意味で言っているわけではありません。お医者さんが言っているから、やっぱり提供しないといけないかなというのは、自由意思という点では若干問題があるのではないか。そういう意味で必ず避けろとは書いてなくて、できる限り避けるべきであるということで、その辺は患者とお医者さんの人間関係がかなり実際に提供のサンプルをもらう場合には関係すると思いますので、そういうふうに人間関係と思いますので、うまくいっていれば、それほど問題なしに話はいくだろうと。ただ、じゃあ、主治医がいつもとっていいということにしていいかどうかというのは、私は若干疑問があるので、そういう意味でこういうふうに書きました。これがあまりにも非現実的であるというのであれば。 
(中村委員) 
  守秘義務はどう答えられるわけですか。研究者にある病気を持っていることを伝えていいわけですか。 
(高久委員長) 
  先程、一般的指針としたんですけれども、厚生省のほうの中間報告書をパブリック・オピニオンを求めて最終的にまとめますから、一般的指針であまり具体的に書かれると非常に困る場合があるのではないか。ですから、私は、できれば、本当は基本原則だけで良いと思ったのですが、基本原則で説明し切れない部分について、もう少し詳しく書いていただいたほうがと思いました。しかし、主治医はどうする、研究者がどうするということまでここで書く必要はないのではないか。そこのところは少し漠然として良い。実はこの中間報告についても、これをミレニアム計画だけではなくて、この報告をもとに遺伝子解析の臨床の部分も含めて幅広くガイドラインをつくれというご意見が委員の中からありまして、私も将来的には必要ではないかと考えていますので、そういうものも含める形の一般的指針にしていただくと非常にありがたい。その意味では、ここでは、あまり詳しく書かないほうが良いのではないか。そうしませんと、あちこちで別な形の指針が出ますと混乱をしてしまうと思うので、そこのところはちょっと検討していただければと思います。 
(中村委員) 
  高久先生のおっしゃるとおりで、ダブルスタンダードというのは現場に最も混乱を起こすわけで、先生、先ほど責任者ではないとおっしゃられましたけれども、厚生省側からの書類では先生が説明されたというふうに言っているわけで、やっぱりそれはその場でちゃんと言われるべきであって、納得していないから、また自分はルールを出しているのはおかしいと思います。 
(高久委員長) 
  厚生省のほうは、垣添先生が一番中心に説明されて、位田先生は追加を少しされただけですが。 
(中村委員) 
  私は、高久先生がおっしゃったように、二重のスタンダードをつくるんじゃなくて、原則案にこれをもう少し簡単にまとめたものを追加するのがいいのではないかと思います。 
(高久委員長) 
  そうしていただけると非常に助かります。 
(豊島委員) 
  今のお話があったわけですけれども、これは提供する人は基本的には正常というか、いわゆる病気でない人がほとんどなんですね。そういう意味では一般の病気でない人に当然研究者が説明することになる。病気の場合は別なので、だから、疾病に関することは除いておいてもらって一般論にしておいていただければ、その点はちょっと別の観点からになると思います。だから、少なくとも病気の人と同程度に、あるいは多分、それより多くの病気でない人、一般社会の人を解析しないと病気のとらえ方もできませんから、原則としてそうなっていると思います。 
  それからもう一つ、基本原則のところなんですけれども、どこかにこれは個人個人の善意の提供によって初めてこういう解析が成り立つ、あるいは病気の特定も成り立つというふうなことがどこかに入っていたほうがいいんじゃないかなという気がするんですが。 
(高久委員長) 
  おっしゃるとおりだと思います。中村先生、健常者と病人の両方がいますね。 
(中村委員) 
  両方います。だから、コホート的な研究では、現時点では正常な人のサンプルを集めて長期フォローをしていくということもあり得るわけです。 
(高久委員長) 
  ですから、この場合に主治医といっても、一応共同研究者になるわけですね、多くの場合は。そうでもないかな。 
(中村委員) 
  そうでもないですね。 
(高久委員長) 
  ないですね。だから、説明は「原則として研究を行う者とする」という表現でカバーできるかどうかですね。 
(中村委員) 
  私は、厚生省のガイドラインが非常によくできていて、それでいいのではないかというふうに思いますけれども。 
(高久委員長) 
  ちょっと私よく覚えていないので。 
(玉井委員) 
  今のことに関して言えば、ここで言いたかったことは、要するに心理的な圧迫を与えてはいけないということだと思います。それ以外の細かい点についてまで、例えば主治医が原則行ってはならないとか、医師の守秘義務との関係で、研究者にこの人はどういう病気なのかということを言ってもいいのかとかいうことが起きてくるような場合には、主治医が行わなければならない理由があるということに多分なるんだろうと思うんですね。ただ、そこまで詳しくこういうふうに書かれると、非常にやりにくいというか、非常に身動きがとれないという感じになるのであれば、それは心理的な圧迫をできる限り避けるべきであるというような形の記述にとどめておくというやり方はあるのではないかなというふうに思います。研究者がやるとしても、いい研究なんだよということをもし強調するとすれば、それだけで心理的な圧迫にはなり得るということもありますので、この部分の趣旨は心理的な圧迫を可能な限り避けるということですよね、位田先生。 
(位田委員) 
  はい。 
(中村委員) 
  いや、私はやっぱり、例えば、がんを考える場合に、やっぱり主治医と患者の信頼関係があって初めて患者さんは提供しようという気持ちになるのではないかと。全く見ず知らずの第三者が行って、「こういう研究をしますから提供してください」というほうが患者さんにとってよっぽど違和感があります。私は医師でもあったし、患者でもあったことがあるし、がん患者の家族でもあったことがありますけれども、やっぱり心理的圧迫というのは非常に一方的なうがった考え方であって、やっぱり信頼関係のもとにこういうふうな善意の提供というものが成り立つわけであって、あまり一面的に非常に医師と患者の関係をゆがめてとらえているとしか思えないです。 
(小幡委員) 
  おっしゃることは多少わかりますが、でも一般的にはやはりインフォームド・コンセントというのは自由意思というのが保障されていないと意味がないということもありますので、ここでは治療のための提供ではなく、あくまで研究のための提供を考えているわけですね。そうなりますと、あまり私も細かく書く必要はないと思いますが、少なくとも主治医が行う場合に、多少心理的な外圧が加わるという可能性が全くないわけではないので、原則としてというところでよろしいのではないかというふうに感じますが。 
(高久委員長) 
  中垣さん、厚生省はどうなっていましたか。 
(中垣企画官) 
  インフォームド・コンセントについてだれが説明するかにつきましては、研究責任者がその案をつくって倫理審査委員会にかけて、倫理審査委員会の中で論議をしていただくというシステムになっています。 
(高久委員長) 
  だから、あまり具体的にだれがすると書いていないわけですね。そういうことですね。 
(中村委員) 
  状況に応じて、僕はそういうふうに思いますけども。 
(高久委員長) 
  わかりました。それならむしろ言わずもがな事ですが、このインフォームド・コンセントは提供者の完全な自由の意思のもとに行わなければならないというのが一番簡単なことですね。それは当たり前のことですが。 
(中村委員) 
  それを原則に掲げていますから。 
(高久委員長) 
  それは原則に掲げていますね。 
(位田委員) 
  私は、中村先生は非常にいいお医者さんだし、人間関係が非常にいい中でこられたと思います。私自身の体験では必ずしもそうではなかったので、こういうことを書かざるを得ないというところがあります。 
  以上です。 
(中村委員) 
  この私案には患者に対する心理的な圧力となるためということが非常に断定的なコメントで書かれており、自分の経験に基づいて医師と患者の関係をこういうふうに絶対的なものにとらえていただきたくはない。 
(位田委員) 
  それはわかります。 
(寺田委員) 
  それも、結局ですね、先ほど高久先生が言われましたように、この指針というのをここへ載せるかどうかという問題がまずあります。最初、この委員会では総括的な憲法をつくるという話だったと思います。私、それがこの委員会の仕事と了解していますので、あまり細かいことをやりますと、二重スタンダード、三重スタンダード、いろいろなことが出てきます。これだけ守ってほしいということだけを総括的に書いていただいたほうが私はいいと思います。 
(高久委員長) 
  私も基本原則ということにしていただいたほうが楽なことは楽なんです。指針になりますと、どうしても細かいことを書かざるを得なくなって、そうすると、ダブルスタンダードの問題とか、あるいはサンプルの取り扱いの問題とか、非常に細かいことになってしまうのでどうかなという気はしていました。ただ、基本原則だけですと、かなりのことが言い尽くされていて、3月31日での議論の必要がなくなってくる。きょういろいろご議論をいただきましたが、どうですかね。 
(奥田委員) 
  研究委員会という言葉が出てきているんですけれども。 
(高久委員長) 
  どこに。 
(奥田委員) 
  倫理委員会と並立して指針の7ページの研究機関はというところで、3のAの3ですね、この2つを設けなければいけないという意味はどういう意味なんでしょう。 
(位田委員) 
  倫理委員会が何を評価するか、何を判断するかというのは、立場が2つあり得ると思うんですが、一つは、法的、社会的も含めて倫理的な面から判断をするだけであると。もう一つの立場は、科学的な有用性、有効性等も含めて科学と倫理と両方から総合的に判断するという立場がもう一つございます。ただ、倫理委員会が科学的な有用性まで含めて評価するというのはかなり負担になると思いますので、科学的な観点からこの研究が非常に有用であるか、もしくはちゃんと研究計画がつくられているかというのは別のところで判断していただいて、ある意味ではスクリーニングを通ったものを倫理的にやっていいかどうかということで判断をするというほうがいいのかなというのが、これは私の考え方なので、私はそっちのほうの立場をとって書きました。 
(奥田委員) 
  前段のところで、科学的に有用な研究をすべきだという文章があるから、それを受けてこれをつくりなさいと、そういうご趣旨だと考えてよろしいですか。 
(位田委員) 
  はい。 
(高久委員長) 
  そうですね、実際にはあまりたくさん委員会があると大変ですし、1つの委員会で検討していければ。厚生省の中間報告書の中には、委員会の中に専門家と、それから倫理的な問題とか、社会的な問題などの委員の両方を入れろと書いています。両方のグループの人が一つの委員会に入っていれば、専門家の方が科学的なことを判断いたしますし、社会的な問題、倫理的な問題というのは、その他の委員の方がディスカッションしていただければ良いのではないかなと。 
  どうぞ、中村委員。 
(中村委員) 
  寺田先生もおっしゃいましたけれども、やっぱりダブルスタンダードでは本当に現場が混乱するだけで、今、厚生省案は、全部納得しているわけじゃないんですけれども、私はかなりよくできたガイドラインだと思います。厚生省はちょうどパブリックコメントも求められているわけで、これを厚生省の研究の枠ではなくて、やっぱり一般的な枠にもう少し省庁連携という形でオールジャパンの研究指針という形にしていただいて、この場は本当に憲法的な全体的なものだけを指針としてまとめ上げるというのでいいのではないかというふうに、寺田先生の考えに同意いたします。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたかご意見。どうぞ。 
(玉井委員) 
  厚生省との食い違いということが先ほどから話題に出ているようなんですけれども、私も指針を読んで、かなり大きな点で違っているなと思うことが幾つかありました。その一つは、既に提供されて保存されている研究試料の使い方の点に関して、厚生省のガイドラインでは同意を取り直すことができるかできないかということは問題にせずに、幾つかの条件を満たせば目的外使用というか、同意の範囲を超えるような研究でも使ってよろしいということになっているんですけれども、位田先生がおつくりになった指針のほうにはそうではありません。改めて同意を取り直すことができない場合というふうに限定して非常に厳しい書き方になっていますし、もう一つは、匿名化されて特定の個人との連結が不可能になっているサンプルの場合に倫理審査員会が条件を満たしていることを確認しなくても、つまり連結不可能なサンプルであれば、いくつかの条件を満たしていることを倫理審査委員会が必ずしも確認しなくても使っていいということに厚生省のほうはなっていると思うんですけれども、それもこちらでは倫理審査委員会の承認を得た上でというふうになっていて、ここはおそらく研究者サイドの皆さんにとっては非常に厳しいハードルになっていると思います。 
  もちろん、こちらが憲法なので厚生省のほうを変えろということはできるのかもしれませんけれども、それはちょっとあまり現実的ではないのかなというふうに思いまして、そういうことも含めて、このゲノム研究に関する指針の部分の取り扱いというのをここで少しどうするかというのを議論したほうがいいのではないかと思います。 
(高久委員長) 
  どうぞ、位田委員。 
(位田委員) 
  問題は、基本原則にどこまで書くかという話でして、この程度の基本原則でよろしければ、私はこれでいいですし、これよりはもう少し詳しく、しかし、指針にまではならないようにというのであれば、少し考えたいと思うんですが、つまり、前回は憲法的なものをつくれと言われたものですから、どの程度の憲法かというのがよくわからなくて、この程度にして、しかし、それぞれ、実は案をつくっている段階ではもっとたくさん注がついておりまして、それぞれの文章が非常に簡単なものですから、それを説明しておかないとわかりにくいんじゃないかというのをかなり注に書いておりました。その注に書いているうちに、やっぱり別の細則的なものをつくっておくほうが、この憲法を理解するにはいいのかなということで、研究指針という名前をつけたのは一番最後の段階でして、その前は細則か何かだったと思いますが。 
(高久委員長) 
  どうぞ、中村委員。 
(中村委員) 
  今、玉井委員が指摘されましたけれども、やはり研究というか、これは前も申し上げましたけれども、それぞれの疾患に応じて状況が違うわけですね。だから、一概にこうだからということは言えないわけで、それをこういう形で断定的な形で全部の研究に対して一つのルールでいくというのはどだい無理なわけです。例えば、がんの研究というのは十何年も前からコホート研究で集めていて、そのDNAに関しては10年以上前ですから、今言ったようなことがクリアしていないものもあるわけです。さかのぼってインフォームド・コンセントをとると。このがんのコーホート研究の場合に一番大事なのは、がんになられて亡くなった方が、どういう遺伝的な素因があるかというのは大事なわけです。亡くなった方にインフォームド・コンセントはとれないわけですから、最も貴重なサンプルは使えないという状況も起こり得るわけでね。だから、病気の種類によって、あるいは研究の種類によっては、こうだというルールが当てはめられないものもあるわけで、そういうことも考えて、だから、前回にも申し上げたように、病気の種類、研究の種類によってシチュエーションが違うんだと。そういうことを理解してやっていただかないと、ある特定の病気を念頭に置いて、ガイドラインを一つのルールでやるというのは無理なわけで、そういうことが全然理解されないままにこういう研究指針がつくられるというのは非常に大きな問題だと前に先生に申し上げて、そこから高久先生が私に協力するようにという形になったわけです。だから、そういう研究の内容を理解されないままにこういうルールをつくるというのはどだい無理なことだと思います。 
(位田委員) 
  あまり論争するつもりはありませんが、問題は、ルールというのは原則を何にするかという話ですので、中村委員がおっしゃるように、具体的な状況を一つ一つルール化していくと、それはルールではなくなってしまうわけですね。したがって、3のAの9、原則でも書いていますけれど、原則のほうでは3の7、指針のほうでは3のAの9のところで、それぞれの研究の状況というんでしょうか、枠組みによって、この原則を緩和する。ただし、それにはいろいろな条件をクリアしていただければ、死んだ人からインフォームド・コンセントをとれというのは、これは非現実的ですし、そのことを考えているつもりは全くありませんが、原則はやはり取り直す。だけど、例えばコホート研究なんかでそういうことが実際にはできない、もしくはやる必要がない、またはやらなくてもいいような状況があれば、そこのところは緩和してもいいのではないかというふうに私は思っています。 
(中村委員) 
  だから、私が申し上げているのは、厚生省はそういうことも十分に検討された上でこのガイドラインはつくられているわけで、だから、あえて実情を理解されないままに別の法律をつくろうと、ルールをつくろうとされるのは問題があるということを先ほどから申し上げているわけです。 
(高久委員長) 
  この中間報告は垣添先生が主任研究員になっておられますが、山口健先生が非常に努力されていろいろな方の意見を随分たくさん聞かれてつくられたと聞いています。もう一回、パブリックのご意見を、インフォームド・コンセントの例を示して聞いていますし、そういうことをいろいろ考えますと、最初に議論されたように基本原則ということをここでしっかり議論していただいて、つけ加えることは注の形でいろいろ書いていただいたほうが混乱が少ないような気がいたします。もし皆さん方にご了解いただければ、ここは基本原則を中心に論議をするということでさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。 
(小幡委員) 
  厚生省のおつくりになっているガイドラインとこちらというのは対象は一致すると考えているんですか。全く一致しているんですか。 
(高久委員長) 
  一応、厚生省のほうはミレニアム計画の研究者ということになっておりますが、委員の方々特に専門家でない委員の方々から、これは非常によくできているので、これを広げて、ミレニアム計画だけではなくて、ゲノム研究をするすべての研究者に適用するものをつくってもらいたいという意見がありまして、この中間報告書に一般の方々のご意見を聞いたものを加えて、さらに範囲を広げる。当然内容的に少し変わる点が出てきても、基本的には変わらない。基本的には変えるなという意見が非常に強かったものですから、基本的に同じものをすべての研究者に適用するものができるというふうに考えています。 
(奥田委員) 
  厚生省の垣添先生のドラフトについて議論する場ではないと思っていたから発言しなかったんですけど、倫理委員会の構成のところで半分部外者、半分倫理関係者という規定がございますけれども、これについては、企業としてゲノム研究をする場合に、非常にそういう倫理委員会はつくりにくいなという現状がございます。これは意見として申し上げておくにとどめますけど、そういう現実があります。 
(高久委員長) 
  今、意見をいろいろな方から求めておられますので、ぜひ奥田委員のご意見として、直接厚生科学課のほうに言っていただければと思います。 
(小幡委員) 
  私も同じ対象であれば、そう幾つも違う省庁でつくる必要はないとそもそも思いまして、それであれば、ここの委員会でもっと厚生省のガイドラインについて、こちらから意見を言うというほうがよほど生産的ではないかと思います。そうすると、ここで憲法的なものつくるというのは、厚生省のガイドラインの上に乗っかるような形の憲法になるということですか。 
(高久委員長) 
  乗っかることになると思います。これはすべての指針、大部分は厚生省になると思いますが、ほかの省庁でもつくるとすれば、その上に乗っかるものだと理解しています。 
  寺田先生、何か。 
(寺田委員) 
  同じような趣旨のことでございます。 
(小幡委員) 
  そうしますと、厚生省のほうでつくられたものが細則のような形で皆さんで使っていただくようなものになると理解してよろしいわけですか。現実にはそういう形になっていくという。 
(高久委員長) 
  なる可能性が非常に強いのではないかと思いますから、厚生省のものにいろいろなご意見を言っていただいたほうがいいと思います。ここでも結構ですが、今インターネットでやっているのですね。 
(中垣企画官) 
  そうでございます。1カ月延長いたしまして、4月の上旬まで意見を公募して、その結果をまた厚生科学審議会へ報告して、という形で考えています。 
(寺田委員) 
  せっかく私は、位田先生が基本原則のところは随分うまくよくまとめてつくられましたのでそれを生かす。そこへ、先ほど位田先生がおっしゃいましたように、指針のところで述べているいろいろなものを、最初に言われましたように、いろいろな方のご意見を入れるとかおっしゃっていましたので、そういうことを考慮に入れて、基本原則に入れ基本原則をもう少しリファインしてくださるのは、ありがたいなと思います。指針のほうは、ちょっとダブルスタンダードになるのでやめるとある。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたかご意見。 
(小幡委員) 
  そうしますと、先ほど例えば撤回の話などで、こういうことはどう考えるべきかということについて、憲法は憲法なんですが、具体的に例えば、絶対撤回できないかというような質問等が来たときに、それに答えるのは厚生省のガイドラインという、その切り分けになるんでしょうかね。そこはある程度、せっかく位田先生が作業なさったので、必要最小限度のことは指針という形でなくて、基本原則の補足として生かしていただければと思いますが。 
(高久委員長) 
  私は指針というよりは、もし必要ならば、注のところでいろいろ書いていただければ良いと思います。原則には非常に原則的なことを書いていただいて、厚生省の中間報告と相反するということはできれば避けていただいたほうが混乱をしなくて良いと思います。 
(中村委員) 
  厚生省のガイドラインはあくまでも厚生省のという枠は外さないおつもりなんですか。例えば、3省庁、4省庁で意見を求めて日本のガイドラインだというふうな形にするおつもりは全くないんでしょうか。 
(中垣企画官) 
  先ほどから高久委員長からご報告いただいていますように、2月4日に開催いたしました厚生科学審議会の部会の中でのご議論もオールジャパンで考えるべきだというご議論を賜っております。したがいまして、現在出している案と申しますのは、厚生省のミレニアムプロジェクトを実施していくという前提のもとで書かれておりますけれども、部会のご議論を見てみると、その前提を少し崩して、もちろん骨格となるものは変わらないと思いますが、幾つかの点でいじる必要があるんだろうと考えております。それにつきましては、厚生科学審議会のご議論を賜りながら引き続いて議論をしていくということで考えています。 
  また、各省庁の関係で申し上げますと、2月の初めに厚生科学審議会で議論した直後に各省庁の関係者に集まっていただいて、情報連絡会を開いたところでございまして、また、そこから意見を出していただくということになっておりますし、何もこの関係、従来からの取り組みもそうだと思いますが、厚生省だ何省だという考えは全く持ちませんで、その所有権まで争う気は全くございません。 
  以上でございます。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  考え方といたしましては、先ほどの中村委員の厚生省の指針を他のところの研究機関なりが使えるどうかということでございますが、そこのところは基本的には使えると思いますが、ただ、やはり今言ったところをきちっと体系的にする場合には、この科学技術会議の生命倫理委員会で議論していますので、もし必要があれば、こちらのほうでその規定を我々としてちゃんと十分吟味した結果、これもいいということになれば、当然この中の委員もなって、ですから、まさにここで厚生省のそれを我々のもので、今、所有権を放棄すると言っていますので、いいものであるなら、そのいいものをここの場できちっと検討し、この中の一つの位置づけにすれば、これはまさに、その点は厚生省のほうに了解を得るという条件つきでございますが、そういう考え方があるかと思いますので。 
(高久委員長) 
  私も今おっしゃったとおりで、基本原則を生命倫理委員会に出すと思います。生命倫理委員会のほうで、指針については、厚生省のほうでつくったものにするかどうかということについて、皆さんにご同意を得る必要があると思います。ですから、この厚生省の中間報告を基本にして、指針はこれに基づくんだとするならば、そのことについて次回でもちゃんと議論をして、不十分な点があるならば、ここの委員会として厚生科学会議のほうに申し込んで、そこでうまく調整ができたならば、科学技術会議の生命倫理委員会で委員の方々にご説明をして、基本原則はこうだし、その具体的な指針は、この厚生省のほうにするのだという両方の了解をとる必要があるのではないかと私は思います。 
  ここでは基本原則だけで、指針は議論するのではないというのではなくて、むしろこっち側のほうの議論と、それからせっかく位田先生がつくってくださった案を少し議論して、最終的に、ダブルスタンダードは私は避けるべきだと思いますので、厚生省の中間報告のどういうところを直す必要があるのかということを議論をしていただいたほうが実際的じゃないかと思います。ぜひ、この中間報告書をよくごらんになっていただいて、次回にはその点についても少し議論をいろいろ出していただければ議論が進むのではないかな。きょうの皆さん方のご議論をお聞きになって、位田先生もご苦労さまですけれども、基本原則をもう少し皆さん方のご意見をいただいたものにして、それから次回は、それと、それから少し時間をいただいて、この厚生省の指針に任せていいのかどうかということをご議論いただければ話が進みやすい、そういうふうに考えていますけれども、それでいいですね。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  幸い厚生省のほうも、たしか、まだ確認はしていませんが、新聞報道によりますと1カ月延ばすということで、我々に合わせて検討する余裕を与えていただいていると思っていますので、時間的にも、向こうのほうは決まっているということではなく、今、意見公募を、たしか1カ月ぐらいあるように聞いておりますので、その間に我々も十分検討させていただいて、場合によっては意見、修正等も含めて、そういった時間もあると思いますのでさせていただきたいと思っています。 
(高久委員長) 
  そういうことで、次回にまたいろいろご検討願いたいと思います。 
  ちょうど5時29分ですので、位田先生が5時半にお帰りになりますので、これで第2回の検討会を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 

──  了  ──