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第4回動燃改革検討委員会議事要旨

  1. 日    時:平成9年6月17日(火)10:00〜12:00

  2. 場    所:科学技術庁  第1、2会議室

  3. 出席者  :
    (委員)
    吉川座長、今井委員、岸田委員、久米委員、那須委員、野中委員、古川委員、矢野委員、吉澤委員
    (科学技術庁)
    石田事務次官、加藤原子力局長、今村官房審議官
    (動力炉・核燃料開発事業団)
    近藤理事長、植松副理事長

  4. 議    事:
      (1)資料確認
      (2)前回議事要旨確認
      (3)議  題
        1)委員及びコンサルタントによる調査の報告について
            ○コンサルタントによる調査の報告について
            ○委員による個別調査結果の報告について
        2)動燃改革の基本的方向について
            ○動燃改革の基本的考え方(動燃改革検討委員会座長試案)
            ○自由討議
        3)その他

  5. 配布資料:
    ○資料第4−1号  第3回動燃改革検討委員会議事要旨(案)
    ○資料第4−2号  動燃職員を対象とする意識調査中間報告書
    ○資料第4−3号  動燃事業団の経営・組織改革の方向について
                              (野中委員調査報告資料)
    ○資料第4−4号  動燃改革の基本認識
    ○資料第4−5号  動燃改革の基本的考え方(動燃改革検討委員会座長試案)

    (参考資料)
    ○原子力委員会(1997年6月10日)議事録ー抜粋ー

  6. 概    要:
    (1)吉川座長による開会の挨拶の後、事務局による資料の確認があり、前回議事要旨について了承された。

    (2)事務局より、資料第4−2号に基づき、コンサルタントによる調査の中間報告として、動燃職員を対象とする意識調査の結果について報告された。

    (3)委員による個別調査の結果として、野中委員より資料第4−3号に基づき報告が行われた。報告の要旨は以下のとおり。

    ○基本的に組織の使命、組織のあり方の観点から調査を実施。
    ○動燃の特徴は、1)動燃の基礎研究は実用化研究と並行して行うことにより効果的に推進される、2)研究に必要な知識はルーティンな仕事の中で蓄積される、3)動燃は特定の事業目標の問題解決に寄与することが研究者の任務である、4)リスクを伴う研究開発のミッションと放射線を出してはならないという危機管理の間で常にダブルバインドの状況にある、という4点。特に、3)に関連して、動燃内部から明確なビジョン、強いリーダーシップへの待望の声があるが、それを主体的に生み出すような土壌がないことが問題の基本。また、4)に関連して、本来TQC的発想になじまない研究開発部門の危機管理にもTQC的視点で対応する傾向があるが、これは、研究開発における動燃のミッションの定義が曖昧であることに起因している。
    ○また、動燃の組織特性としては、1)「産官学の隙間組織」であるという点と2)「プロジェクト志向で時限付きの性格を持つ」点が指摘できる。1)の特性から、動燃の事業には様々なステークホルダーが関わっており、それらとの調整を行うトップリーダーがとりわけ重要となる。また、2)特性から、環境変化に応じてプロジェクトのスクラップ・アンド・ビルドの経営判断を行う強いリーダーシップが必要であったが、近年の動燃は、これらが不在であった点が指摘できる。
    ○調査結果に基づく若干の提言として、以下の提案をしたい。まず、動燃改革にあたっては、研究開発型組織としての使命を再定義して「高速増殖炉及び新型転換炉並びに核原料物質及び核燃料物質に関する」研究開発までを行う中核機関としての性格を明確にして、この枠を超える事業については、民間へ移管することを基本方針とする。その使命の遂行にあたっては、1)強いリーダーシップと裁量権の確保、2)国の知的資産を活かす組織改革、3)ミッション間の相互作用への配慮、4)アウトソーシング(外部委託)等の見直し、5)研究開発成果の公開および技術移転の促進、6)緊急時における情報公開のあり方を含む危機管理や合意形成に向けての社会学的な視点の導入、といった点に留意することが必要である。

    (4)吉川座長より、資料第4−5号に基づき、動燃改革の基本的考え方に関する座長試案の説明が行われた。なお、説明に先立ち、前回の座長試案「動燃改革の基本認識」を各委員の意見に基づき修正したものが資料第4−4号であり、今回の試案はそれを踏まえ、作成したものである旨、説明があった。

      <座長試案の要点>

      第1章  問題点の整理(経営不在の詳細)
      ○安全確保と危機管理の不備
      ・研究開発への偏重(安全への資源配分が不足)
      ・他産業の一般防災の進歩を積極的に学ばなかった
      ・異質な性格を持つ研究開発部門と施設運転部門との役割分担が不明確
      ○閉鎖性
      ・変動し進化する国民の負託に応える感受性を喪失
      ・使命に関して、常に公表し、理解を求め、外界の反応を得るなど発信を怠った
      ○事業の肥大化
      ・肥大化により、組織等の適正な管理が困難となり、事故防止に進歩が見られない状況を創出
      ・長期展望のない肥大化により、主体的意志を喪失、モラルの向上を阻害

      第2章  改革のデザイン
      ○デザインの基本
      ・最適な組織(新組織)の目標は、必要な安全確保を条件として、競争力あるエネルギー源としての核燃料サイクルを実現することであり、その際、動燃に蓄積された技術及びノウハウを活用し、併せて、国内外、産業分野を問わず入手可能な人材や技術などを利用
      ・目標達成のための最適性を常に保持するための強力な経営が必要であり、その経営は三者(国、原子力委員会、新組織の経営体)によって構成される
      ○新組織に導入される経営の条件
      ・事業目標の設定
        明確な事業目標の設定と社会によるその常時評価が必要
      ・経営者の選定
        経営者には、十分な専門的経験と知識、洞察力、決断力等が必要
      ・組織の基本原理
        組織改編は経営体の裁量で実施。また、研究者と運転者とは車の両輪で対等
      ○開発領域の限定(新組織の事業の基準)
      ・原理的可能性が発見されているが、実用化の可能性は不明なもの
      ---新組織には馴染まず、別の研究組織で実施
      ・実用化の可能性はあるが、完成までに多くの開発研究を必要とし、実用時期、経済性等について明言できないもの
      ---新組織に相応しい
      ・実用への道が見え、資源投入によって実用化可能であることがかなりの確度で言えるもの(経済性を推定できるもの)
      ---新組織に相応しい
      ・技術的実用としてほぼ完成し、部分修正により経済性向上が期待されるもの
      ---ユーザーへの技術支援、ユーザーとの共同研究などを考慮し遂行
      ・市場における競争力のあるもの
      ---民間に移管
      ・開発研究は十分に完成しているが、市場における競争力のないもの
      ---別の研究所へ移管し基礎から革新又は廃止
      ○安全性確保の体制
      ・研究開発偏重を排し、運転管理部門と研究開発部門とを独立に運営
      ・品質保証の考え方を徹底し、そのための部署を設置
      ・一般防災の知見を全面的に導入し、地域と連携一体化した管理体制を導入
      ○社会に開かれた体制
      ・地元との共生が経営の基本の一つ
      ・情報公開の徹底、広報体制の充実
      ・外部との協調の積極化(民間との活発な人事交流、国際共同研究等)
      ○専門性の均衡と研究者の拡がり
      ・大学との連携により核燃料サイクルの各領域の人材の裾野を拡大

      第3章  改革の実現
      ○改革のデザインに従って、動燃を抜本的に改組し、新しい法人を組織
      (具体的な姿は事務局で整理し、次回会合で審議)

      <自由討議での各委員の主な意見>
      ○報告書に盛り込まれない少数意見、対立意見についても、例えば最高裁判決のように内容、委員名を含めて付記するような処理をすべき。
      ○少数意見を付記するとの意見に賛成。
      ○委員会そのものがオープンであることも考えると、少数意見を付記する扱いは妥当。
      ○少数意見とともに、整理の都合上報告書に盛り込まれないような有用な意見についても、将来利用可能な意見として付記することとしたい。
      ○公開の場で行われた委員会の成果物は、委員会での様々な意見がわかるようなものであることが望ましい。そうした意味でも、少数意見などを付記するやり方は意味がある。ただしその場合、対立的なものとそうでないものは分けるといった整理は必要。
      ○昭和20年代に電力会社の再編問題が議論されたが、当時の電気事業再編成審議会では、委員長のみが他と対立する少数意見であった。国会等でもめた末、結局マッカーサー指令でその委員長の意見が通って、現在の電力会社になったということもある。動燃問題も法律事項が絡んでおり、この委員会での結論と国会でどう決まるかは別であるので、少数意見も堂々と出して行くべき。
      ○実用化には研究者だけでなくユーザーの論理が必要。効率の高い開発のためには、シーズとニーズの協調、つまりユーザーである電力と動燃の技術との交流を積極的に行うことが必要。
      ○安全確保の面では、平常時、事故時、事故後に分けて対策を整理すべき。特に、緊急時に配慮した、専門的な教育を行った実働的な面を持つ別働部隊を作るなど、安全を考慮した組織体制とすべき。
      ○事業の縮小整理をする際は、その行き先の安全管理が十分でなければ、危険分子を拡げるだけである。プロジェクトの移管先は、安全管理面でグレードの高いところにもっていくよう配慮すべき。
      ○既存の事業の整理縮小は大変重要な課題。その際、当委員会では、「抽象的な指摘」、「例示的な指摘」、「全てを明示した指摘」の3つのうちどの程度まで踏み込むかをこの場で確認すべき。
      ○事業の整理縮小については技術的な問題もあり、最終的な具体案は当委員会では提案できないと思う。考え方を示す例示程度はできるのではないか。
      ○明確なミッションを持った技術者集団を動機付けることが大切。使命感を自分の問題として持つために、自ら研究テーマを発掘、提言するような裁量権の確保が重要。
      ○新テーマの発掘も研究者には必要だが、そればかりしていると既存のミッションを忘れてしまう。その辺のバランスが難しいところで、それが他にあまり例のない動燃の研究者の特色ということになる。
      ○基本的には安全管理は、そこに携わる現場の人間が行うもの。安全に関する別働部隊に言及する際は、独立した組織でそれをバックアップ、または評価するシステムであるということを明確にすべき。
      ○安全監査、安全教育を行う機関を別に作るのは望ましいかもしれないが、事故を起こした際の責任者はやはり現場の工場長であるべき。
      ○現在の動燃は、現場の対応能力のレベルが下がっているので、安全のことに関しては、全くプロ集団みたいなものに託してしまうというのがもともとの別働部隊の発想。通常は、そのプロ集団により現場のレベルを向上させるための教育、訓練を行ってもらってはどうか。
      ○安全に関する別働組織については、次回素案で組織の例示を示すようにしてはどうか。
      ○安全管理に関しては、動燃の職員に能力がないように言われているが、動燃には優秀な人材がいる。むしろ、トップマネジメントの理解がないことと縦割りの弊害により、問題が生じている。
      ○安全管理や社会に開かれた体制は、今の動燃だけに限る問題ではなく、もう少し幅広くなる可能性もある。そのため、原子力に関する施設全体に及ぶような法制上の措置等の検討が必要となることもあり得ると考える。

    (5)自由討議の結果、今後の進め方について、座長総括として以下のとおり提案があり、了承された。

    ○本日の試案はご意見を踏まえ修正する。また、本日の議論を踏まえ、座長試案における「改革のデザイン」に従って、事務局より、関係者とも協議しつつ、具体的な改革の姿を提示させ、次回会合において、全体をまとめて当委員会報告書の素案として審議する。
    ○報告書に盛り込まれない少数意見等については、最終報告書に付記することとする。そのため、付記したい意見がある場合は、次回までに各委員より提出いただく。提出いただいた意見は、報告書に極力盛り込むよう検討の上、対立意見等の理由で盛り込めないものを付記の扱いとする

    (6)次回は7月7日(月)14時から科学技術庁・第1,第2会議室にて開催されることとなった。