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第3回動燃改革検討委員会議事要旨

  1. 日    時:平成9年6月6日(金)15:00〜18:00

  2. 場    所:富国生命ビル  28階会議室

  3. 出席者  :
    (委員)
    吉川座長、今井委員、岸田委員、久米委員、野中委員、古川委員、矢野委員、吉澤委員
    (科学技術庁)
    近岡大臣、岡政務次官、石田事務次官、加藤原子力局長、今村官房審議官
    (動力炉・核燃料開発事業団)
    近藤理事長、植松副理事長

  4. 議    事:
      (1)資料確認

      (2)前回議事要旨確認

      (3)議  題
        1)委員及びコンサルタントによる調査状況報告について
            ○コンサルタントによる調査の中間報告
            ○委員による個別調査結果報告
        2)動燃改革の基本的方向性について
            ○動燃改革の基本認識について(動燃改革検討委員会座長試案)
            ○自由討議
        3)その他

  5. 配布資料:
    資料第3−1号  第2回動燃改革検討委員会議事要旨(案)
    資料第3−2号  コンサルタントによる調査の中間報告を踏まえた主な問題点の抽出
    資料第3−3号  動燃事業団における管理者の意識及び管理の方法について(久米委員資料)
    資料第3−4号  現地調査報告(矢野委員資料)
    資料第3−5号  動燃改革の基本認識(動燃改革検討委員会座長試案)
    資料第3−6号  動燃改革における各委員の意見の整理
    資料第3−7号  動燃改革に関する主な検討項目(改訂版)

  6. 概    要:
    (1)吉川座長による開会の挨拶の後、事務局による資料の確認があり、前回議事要旨について了承された。

    (2)事務局より、資料第3−2号に基づき、外部コンサルタントによる調査の中間報告として、事業の具体的目標の設定、事業規模、人事管理等について、現在までに抽出された主な問題点について報告が行われた。

    (3)委員による個別調査の結果として、久米委員より資料第3−3号に基づき、動燃事業団における管理者の意識及び管理の方法について報告が行われた。また、矢野委員より、資料第3−4号に基づき、動燃事業団の危機管理体制や地域との関わりなどについて報告が行われた。

     両委員の調査結果報告の要旨は以下のとおり。

      <久米委員報告要旨>
      ○実際に現場を見ることが重要との観点から東海事業所の調査を実施。その結果、以下の点を指摘したい。
      ・管理者の意識に自分の立場での論理が強すぎる傾向がある。ヒアリングの印象では、自分で基準を決めて、自分の論理でやっている風潮が見られ、基本的に管理に問題があると感じた。
      ・管理者にこうあるべきだとの論理が強い。事実を事実として受けとめる謙虚さが必要である。
      ・作業者、管理者の情報の共有化が現場のモラルの向上には必要。その点、さらに目に見える管理の導入、工夫をすることが課題と感じた。また、特に現場の長は待ちの姿勢でなく、現場に出ていく態度が必要。
      ・調査した印象では、変更管理の体制が弱い。そうした面での現場管理体制のレベルをあげることが必要。

      <矢野委員報告要旨>
      ○東海事業所を現地調査するとともに、茨城県、東海村とも意見交換した。その際、聴取した主な意見等は以下のとおり。
      ・動燃は核物質の防護や放射能に対する安全管理では、高度の知識・技術による細心の注意が払われているが、一般の化学物質を多量に扱う化学工場としての意識や知識・技術は不十分。また、事故があった建物の構造も、放射能の封じ込めの配慮はされているが、そもそも爆発等は未然防止することを前提としており、爆発に耐えるものではなかった。
      ・日常の教育・訓練については、内部の世界に閉じこもっており、化学工場の安全管理など外の世界に目を向ける積極姿勢が欠如していたとの印象。それは、事業団そのものの閉鎖的性格に起因するのではないか。
      ・今回、東海村当局として一番困惑し、不満だったのは、迅速かつ的確な情報が把握できなかったこと。結局のところ、村民の安全を護るには、原子力安全協定による迅速的確な連絡通報が頼り。今回の経験に鑑み、政府として責任ある機動的かつ即時的な情報連絡体制を整備してほしいとの要望があった。
      ・茨城県においても初期情報の混乱に対する指摘があった。この意味で、政府の機動的常設チームを現地派遣して、一元的かつ迅速的確な情報連絡体制が取れないかとの要望があった。また、原子力防災に関する特別措置法の制定等により、国、県、市町村の役割分担を明確化すべきといった意見や安全協定に法的根拠を置くべきとの意見等もあった。

    (4)吉川座長より、資料第3−5号に基づき、動燃改革の基本認識に関する座長試案の説明が行われた。説明に際し、吉川座長より、各委員から事前に出されたコメントが深さ、幅とも様々であり、具体案としてまとめるに到らなかったこと、そのため、今回は問題の本質が何であるかを明らかにし、各委員の基本認識の共有をはかることが必要であると考え、そうした観点から試案を作成した旨の発言があった。また、今回は、座長試案に基づき議論し、基本認識を確認するとともに、各委員の意見を整理した資料第3−6号も参考に、より具体的な改革の基本的方向についても議論したい旨説明が行われた。

      <座長試案の要点>
      ○原子力政策と動燃
      ・将来のエネルギー源確保に向けた原子力開発は、エネルギー安全保障とともに、国際貢献につながるものとして、国民が支持。
      ・その開発の主役として、動燃は国民の付託を受けているものと認識。
      ○動燃における潜在的困難の存在
        動燃の業務には、基礎研究・開発・実用化の三つの直列した要素があり、これらは思考様式や作業形態の面で異なった性格を持つものであり、これらが混在していることが潜在的な困難。
      ○潜在的困難の顕在化
        次のような動燃を取り巻く状況変化により潜在的困難が顕在化。
      ・先駆者の消失
      ---他に学ぶべき先駆者が不在であることから、自らが自律的システムを構築することが必要であった。
      ・経済のグローバリゼーション
      ---メガコンペティションと言われる中、あらゆる技術は競争力を持ってはじめて存在可能であるが、動燃にこの点が欠けている。
      ・急速な技術進歩
      ---我が国の産業技術の進歩との接触といった外界に開かれた研究開発の基本的態度を取り入れることなく、閉鎖的なままできた。 ○動燃における問題の構造
      ・事業体としての課題
        先例のない研究開発/高い安全性/競争力ある技術の供給の同時的実現。
      ・動燃の失敗
        事故の防止と措置、コスト高のために技術を売れなかったことが大きな失敗であり、この問題の本質は状況の変化に的確に対応できないことである。
      ○問題の本質
      ・経営の不在に起因
        動燃問題は、組織全体の行動決定者が特定できず、真の責任が不明となる、いわゆる日本病の現われの一つ。

      <座長試案に関する自由討議での各委員の主な意見>
      ○我が国の中核機関として、動燃と原研が与えられた使命を果たすという構造を明確にする必要があり、試案の動燃の使命への言及部分において、原子力基本法第7条に言及すべき。また、軽水炉を超える原子力技術開発については、日本とフランスのみならず、ロシア等もあることを明記すべき。さらに、平和利用だけに限定している我が国が、核保有国とは違う面を視野に置いた研究開発を行おうとしていることもはっきりさせるべき。核保有国は軍事技術を単に民生に転用しているだけであるが、先進的核燃料リサイクルなど、日本はまさに先駆者である。
      ○事業の統合が強調される傾向があるが、事業の分化も統合と同時に組織の環境適合にとって重要。また、企業の場合、市場からのフィードバック機構が自然発生的に起こり、それなりに対応できるが、動燃のような非営利組織ではグレイな部分が多く裁量権が大きいが、かえって俯瞰的な目を持った経営者のリーダーシップ、先見性が必要。特殊法人という性格もあり、国の行革の議論もある。動燃のリーダーシップと行政庁の監督と総合的に経営を考えるべき。
      ○国の行革自体は、この委員会での議論の対象ではない。国の監督のあり方については検討する。
      ○試案は動燃に温かすぎる感じ。今の動燃には、取り去るべき悪いところはとって、もう一度再起してもらうという、多少の痛みの伴う外科的治療が必要。
      ○軽水炉時代は考えていたよりも長くなると予想される。軽水炉の次の高速増殖炉までの期間として、どれくらいの年数を念頭に置いているかを共通認識としておくことが必要。
      ○エネルギーの問題は長期的である点が難しい点。オプションシェアリングを世界的に分担するしかない。
      ○動燃は経営不在というよりは管理不在というべき。むしろ、原子力委員会、科学技術庁を含んだ経営不在と考えるべきではないか。
      ○人事権と予算が自由にできる権限があってはじめて義務が果たせる。そうした意味で、経営不在というよりも、経営ができないという状況。動燃のような組織の経営がどうあるべきかという観点からの検討もすべき。
      ○経営というのは、いろいろなレベルがあり、動燃が明確なミッションを主体的に持つのであれば、様々な階層が上位にあったとしても、まさしく動燃の経営の問題と考えるべき。
      ○当初のミッションから状況が変化してきたことを、動燃の経営陣はうまく捉えてきたのか。捉えていたとすれば、状況変化に伴うミッションの変更を国等の設立主体に対して提案すべき。それがなかったことは、まさしく動燃の経営不在の問題。
      ○現場の経営者は上位機関に対して提案すべき。しかしながら、提案したとしても、上位機関がそれを通す仕組みになっていないとすれば上位機関の責任。現在の日本においては、どちらに責任があるか不明確。外に手本がある時はそれでもよいが、フロンティアに立つとそれでは駄目で、国も、現場の経営者もどうすればいいかを考えるべき。
      ○基礎研究を主とする原研と、新型炉までの開発をする動燃では、組織の文化に大きな隔たりがある。分化と統合のバランス上、両者を有機的に統合するのは、困難と考える。統合したときには、組織運営の柔軟かつ迅速な意思決定や、一貫した評価システムはどうなるか、また、研究開発のミッションの定義が逆に曖昧になるのではという懸念もある。知識、ノウハウ、スキルといった問題については、ドラスティックに変革することが本当によいのか疑問。極めて現実的な案は、現状の事業を抜本的に見直した上で動燃を再出発させる方向と考える。
      ○平和利用国だからこそ新しい技術開発計画を思いつくといった点と、軽水炉時代が長く続くという点、その2点を前提とすると、野心的な研究開発体制ができる体制を日本は作る必要がある。94年6月の原子力開発利用長計では、先進的核燃料リサイクル技術の研究開発は、動燃、原研の両方で検討していくとなっており、それぞれで予算も付き、関係する技術開発もすでに動いている。そうしたことも含めてどういう決心をするかということが問題。
      ○原子力の基礎研究と応用研究には、想像以上の差がある。統合するのでなく、むしろある程度分けてマネジメントする方が、効率があがるのではないか。
      ○国が基礎研究から競争力まで一種のミッションという形で経営していくことの難しさを我が国はこの分野で経験すべきであり、そのための最適形態は何かを考えるべき。基礎研究については、大学等も含めて研究の裾野を広げることも提案し、それとは別に競争力をつけるような技術を作る組織を新しい組織として作るという方向で考えてはどうか。
      ○現存の事業を抜本的に見直し、あるいは解消、移管し、残った部分で動燃を再出発させる方向しかないと考える。そこに視点を置いて作業を進めていった方が効率的。
      ○報告書のとりまとめに際して、意見の食い違いがある場合、多数決とならざるを得ないが、少数意見を消してしまわない取り扱いをしてほしい。また、網羅的で焦点がぼやけたようなものでなく、鋭角的な結論の報告書の方が良い。
      ○動燃改革がどのような形になろうと、原子力施設は今後とも存在するものであり、安全管理と対社会性の二つは常に問題として存在する。そういう点も含めて、一つの方向付け、提案をしてほしい。それが国民や地域社会に対する責任。
      ○全てに安全管理と対社会性をベースにした形で、その上で各部門の統合、分割といった話をするという方向性に賛成。それは、例えば、研究開発をしている組織のある部分を基礎研究を行っている組織に依頼した方が安全管理、対社会性についてメリットがあるのであれば、そういう形にすべきということ。
      ○安全性と対社会性を組織改革の条件と理解したい。
      ○病人を手当する際、全ての症状を同時に治すことはできない。そこで、最も重要で肝心な症状はどこかをさぐり、直ちに治すべきところは何かを考える。委員会の取りまとめにおいても提案が実現されなければ駄目で、少なくともこれだけはという重点的な指摘をすべき。

    (5)自由討議の結果、今後の進め方について、座長総括として以下のとおり提案があり、了承された。

    1)本日の試案は一応ご意見を踏まえ修正することでご了解を得たものとして取り扱いさせていただく。また、次回会合において、本日の議論を踏まえて、委員会としての提案の原案を座長試案の形で提示し、審議を行う。
    2)座長試案の方向性としては、以下に配慮して座長に一任する。
    ・基本的に多数意見を中心としてまとめるが、少数意見も明記する。
    ・動燃を抜本的に見直し、部分的に解消、移管し、残った部分で再出発させる形を基本とする。
    ・その際、基礎研究は新しい組織とは別に裾野を広げて行うというのも一案。その上で、CEO(最高経営責任者)に近いような形のリーダーシップと裁量権を持たせるなど経営の刷新を図ることを考える。
    ・さらに、条件として、安全性、対社会性の確保を満たすものとする。

    (6)次回は6月17日(火)10時から科学技術庁・第1,第2会議室にて開催されることとなった。