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科学技術会議生命倫理委員会
クローン小委員会(第11回)・ヒト胚研究小委員会(第5回)合同委員会議事録

  

1.日時    平成11年7月28日(水)10:00〜12:00 2.場所    科学技術庁第1・2会議室 3.出席者

    (委  員) 岡田委員長、相澤委員、青木委員、石井委員、位田委員、勝木委員、

                 加藤委員、菅野(覚)委員、菅野(晴)委員、迫田委員、高久委員、

                 武田委員、豊島委員、永井委員、西川委員、木勝(ぬで)島委員、横内委員

    (事務局)科学技術庁  池田研究開発局長、三木審議官、

                 小田ライフサイエンス課長  他

4.議題

    (1)ヒト胚等の取り扱い及び人クローン固体の産生等に関する考え方について

    (2)ヒト胚等を取り扱う研究に関する考え方について

    (3)その他

5.配付資料

    資料合1−1  ヒト胚等の取り扱い及び人クローン固体の産生等に関する考え方について(案)

    資料合1−2  ヒト胚等を取り扱う研究に関するの考え方について(素案)

    資料合1−3  ヒト胚等の規制範囲マップ(案)

    資料合1−4  第10回クローン小委員会議事録

    資料合1−5  第4回ヒト胚研究小委員会議事録

    参考資料      「生命科学の世紀に向けて」

                      (今後の生命科学研究の推進の在り方に関する懇談会)

6.議事

(岡田委員長)

  時間がまいりました。まだ位田委員と石井委員がお見え になっておられませんが、第11回クローン小委員会と第5回ヒト胚研究小委員会の合同委員会を開催させていただきます。

  本日は非常に暑い中を、朝早くからお集まりいただきありがとうございます。よろしくお願いいたします。

  初めに、事務局の方で人事異動がございましたので、ごあいさつをお願いいたします。

(事務局)

  今月初め、理化学研究所の脳科学部長より研究開発局担当の審議官に着任いたしました三木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

(事務局)

  7月6日付で、前課長の藤木の後を継ぎました小田でございます。よろしくお願いいたします。

(事務局)

  同じく6日付で、前企画官の西森の後に参りました佐伯でございます。よろしくお願いいたします。

(岡田委員長)

  この二つの委員会は、なかなか難しい委員会ですが、事務局の方もどうぞよろしくお願いいたします。

  それでは、配付資料の確認をお願いしたいと思います。

(事務局)

  それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。まず1枚目は議事次第でございまして、次に資料合1−1の資料、資料合1−2の資料、資料合1−3の資料として前回お配りいたしました1枚のマップでございます。資料合1−4がクローン小委員会の議事録、資料合1−5がヒト胚研究小委員会の議事録でございます。資料番号が振ってございませんが、そのほかに「生命科学の世紀に向けて」という冊子がございます。最後に、木勝(ぬで)島委員からいただいております1枚紙が配付してございます。以上が今回の配付資料でございます。

(岡田委員長)

  皆さん、お手元に渡っておりましょうか。よろしゅうございますか。

  それでは、まず配付資料の中で最後の符号の打っていない「生命科学の世紀に向けて」につきまして、事務局の方からまず説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

(事務局)

  それでは、お手元の資料、資料番号が振ってございませんが、「生命科学の世紀に向けて」につきまして、簡単にご紹介をさせていただきたいと思います。

  一部新聞報道等でも、ヒト胚性幹細胞を使った研究所構想という形で、この報告書が紹介される例もございましたので、まず議論の前に簡単にご紹介申し上げたいと思っております。

  まず初めに、メンバーでございますが、後ろから2枚目に、この懇談会の参加者が書いてございます。科学技術会議議員の井村先生を座長といたしまして、こちらに書かれていらっしゃるメンバーの方々にお集まりいただきまして、勉強方々、今後の生命科学の進め方について、どのような形が一番望ましいかということを、正式な形ではない懇談会形式ということで、取りまとめていただいております。位置づけといたしましては、当初科学技術政策局、続きまして研究開発局の局長の懇談会という形で開催いたしてございます。取りまとめましたものにつきましては、科学技術会議の政策委員会の場でもご紹介をさせていただいております。

  その中身について、まず目次でございますが、1ページにございます。生命科学の重要性、また我が国の生命科学の状況、研究システムの弱点、こういったものを踏まえた上で、どのような戦略的推進が望ましいかということを議論し、その具体的な形として、新世代型先導研究機関というものを取り上げているわけでございます。

  その中で、3ページでございますが、生命科学の重要性をうたっている部分、こちらの下から三つ目のパラグラフ、「一方」と書いてあるパラグラフでございますが、ここで、「分子レベルの理解の進展と歩調を合わせて、発生、再生、分化、脳、疾病等の個体としての複雑な生命現象についての研究も急速に進展しつつある。特に、ヒト胚性幹細胞の作成技術の開発に見られるように、生命倫理上の評価が不可欠ではあるものの」と、こういった条件を付した上で、「適切に使用されれば、極めて高い研究上、応用上の有用性を持つと見られる革新的な新技術も登場してきた。」という紹介がされてございます。

  その上で、具体的な進め方といたしまして、10ページに「生命科学の戦略的推進」、今までの日本における弱点を検討した上で、2)の「新世代型先導研究機関の整備」とございまして、11ページに書いてございますような世界水準の研究機関、柔軟かつ流動的な研究推進方式、所長リーダーシップ重視等々、若手・外国人重視といったようなことを特徴といたします研究機関といいますか、研究システムの整備の必要性をうたっているわけでございます。

  その上で、特に推進すべき領域として、14ページ以降、重要研究領域が示されておりまして、ゲノムの領域、16ページの発生・分化・再生の領域、脳の領域がございます。この発生・分化・再生の領域につきましては、ヒト胚性幹細胞を含めた幹細胞を用いている研究とか、そういったものが重要である、特に21世紀医療を支える生命倫理観の構築とあわせて、こういったものを進めていく必要があるのではないかということで、研究所の構想を取り上げてございます。

  こちらの生命倫理の問題につきましては、特に新しいタイプの新世代型先導研究機関に関する構想といいますか、システムの概念そのものに取り組んでございまして、例えば12ページに先ほどご紹介した新世代型研究機関の特徴というものを示してございますが、その中で、人間・社会との調和への配慮、例えば生命倫理審査委員会の設置ですとか、ポイントとなることについて、書き込まれてございます。

  この指摘を踏まえて、私どもといたしまして、どのような研究テーマといいますか、どのような形で研究を推進するのがいいのか、今まさに検討しているところでございます。内容につきましては、ヒト胚性幹細胞に焦点が当たってはおりますが、まず基礎的な動物の細胞を使った研究等々から始めていきまして、視野としてはヒト胚性幹細胞を排除するものではございませんが、その点につきましては、こちらでの委員会でのまさに生命倫理上の扱い、問題といったもののご議論を踏まえた上で、今後検討されていくことになると認識してございます。

  以上、簡単ではございますが、こちらの「生命科学の世紀に向けて」という資料について、ご説明申し上げました。

(岡田委員長)

  どうもありがとうございました。新聞報道によると、2兆円の大型プロジェクトというものが出ていましたが、これが基本的なものとなっているのでしょうか。

(事務局)

  今政府部内でも、これは科学技術会議議員の先生のイニシアチブでこういう勉強をされたわけですけれども、新聞紙上に出ていますのは、政府部内でも今ライフサイエンス、特にゲノム科学を中心にしたような研究成果、基礎的な研究成果を産業に結びつけられるということで、期待感も大きいものがございますし、これについて関係する文部省、科学技術庁、厚生省、農水省、通産省といった役所が連携をとって、こういう基礎的な科学と産業創造ということで、どういうふうに協力したらいいかということでの協力を始めております。政府部内で、なかなか違った役所が一緒になって戦略議論をするということは、あまり今までなかったわけですけれども、そういう意味で、新聞紙上でも注目をされていますし、別途、井村先生の懇談会ではむしろ研究システムのあり方ということで議論をされました。若手の30代の研究者の方が中心になって研究できるようなシステムというのはどう考えたらいいか、そのテーマとして、今ライフサイエンスの最先端の部分にいろいろ焦点を当てられたわけでございますし、これをどうやってこれから予算の時期に取り上げるかというのは、これはむしろ政府側の課題でして、いろいろ期待感はありますから、いろいろな数字が動き回ったりしますけれども、これはまだ私ども何とも、これからいろんなそれぞれの役所が自分の持ち分でどう取り組むかということもございますし、それから世の中いろいろサポートがないと、こういう構想を上げましても、なかなか進める力にならないわけですから、私どもはそういう意味では世の中の関心が高まっていただいて、これを応援しようという機運が高まっていただければ、それなりにこの分野がほかの分野よりも抜きん出て重要視しようという雰囲気につながるのではないかと期待して取り組んでいるところでございます。

(岡田委員長)

  どうもありがとうございました。

  なお、前回の議事録が配布された資料合1−4、資料合1−5ですが、議事録の訂正があるようでしたら、事務局の方にお申し出くださいますようにお願いいたします。

(木勝(ぬで)島委員)

  この懇談会の報告書について申し上げたいことがありますので、一言お願いします。

(岡田委員長)

  これについてでしょうか。

(木勝(ぬで)島委員)

  はい。

(岡田委員長)

  手短にお願いします。

(木勝(ぬで)島委員)

  この懇談会の報告書が出たことに、私は非常に驚いております。今のご説明ではあいまいでしたけれども、この懇談会の報告書によって予算を請求されるということですので、国は既にヒトの胚を使う研究所をつくることに決めたのですか、そうでないのですか、その点、明確にお答えください。

(事務局)

  政府が決めますのは、それぞれの役所において予算要求の過程でいろいろなプロセスがあります。ですから、そういう過程で、役所としての判断があるわけですね。それからもう一つは、これは政府が決めるというのは、役所が決めればいいということではなくて、むしろ8月末に各省予算として、いろいろなプロセスを経て、最終的に公にするというところがありますし、政府として決めるのは、予算をまたつけるプロセスがあるわけですね、年末に向かいますから。いろんなプロセスを経て、それは最終的な政府の意思決定になるわけですから、これは決めたということではありませんし、もう一つは、諮問機関たる科学技術会議のイニシアチブでこういう方向性を出されたわけですから、政府の側がそれを最大限尊重しようという姿勢で、今取り組んでいるという状況にあります。

(木勝(ぬで)島委員)

  要するに、科学技術会議のよその私的懇談会でES細胞も含めたヒトの胚を使う研究を国としてどんどんやっていくという方針が出されたということですね。私は非常に驚いております。報告書の最後のページを拝見しますと、この懇談会はこのヒト胚研究小委員会と全く同時期に並行して行われていたようです。このヒト胚小委員会の席上では、私どもはこの懇談会での検討、特にES細胞研究を行う国の研究所をつくるという内容について、全く知らされていなかったと思います。議事録には一切そういう言及はなかったかと思います。そうすると、このヒト胚研究小委員会は何をやるのかが非常に気になります。研究推進ということがもう先に既定事実化されてしまっていて、しかもその報告書の中には、倫理への配慮が必要であると書かれていながら、全く同時並行して、正規の審議会として、その部分の倫理的問題についてはこの小委員会で検討しているということが一切触れられておりません。研究推進ということと倫理の検討ということを全く切り離して、お互い何の連絡もない。倫理の検討をちゃんと組み込んでいない研究推進のやり方は認められるものではないと思います。ですから、ライフサイエンス課の行っていくこととしては、どういう予算請求をされるかわかりませんけれども、少なくともヒトの胚を使う研究部分については、この小委員会の結論が出るまでは凍結する。そう明確にここで言っていただかないと、この小委員会が何のために存在するのか、わからなくなると思いますが、いかがでしょうか。

(岡田委員長)

  基本的には今の木勝(ぬで)島さんのおっしゃったとおりです。ただし、現実的な流れの中での討論の中では、この問題点というのは、推進側の方々にとっては推進したいという流れの中にあって、将来への一つの大きな分野ということで考えられておることは確かだと思います。ですから、この小委員会の処置については、これはやはりこの委員会としてはコメントがあるということを、少し意識しておいてもらわないと困ると思います。この文章の中には、その委員会というか、倫理的な結論を待ってというような言葉で書いてあったのではないでしょうか。

(木勝(ぬで)島委員)

  いえ、書いてません、何も。

(相澤委員)

  このヒト胚研究委員会に属し、かつこの井村懇談会にも属している立場として、発言させていただきたいんですけれども、井村懇談会で考えた基本的な問題は、先ほども説明がありましたように、そのスタンドポイントは、我が国の生命科学の研究の基本的問題が何で、そして早急にすぐできることは何かという視点です。その中で胚性幹細胞を用いた研究の、研究の側からのポテンシャリティーを議論したのであって、ヒトES細胞を用いた研究を実際にどう行うかに関しては、先生のおっしゃるように、本委員会でもってどういう結論を下すかというのがすべての前提であるという理解です。研究が行われるかどうかは、生命倫理に関するこの委員会あるいはクローン委員会がだめだと言えば、それはやらない、豊島先生も出ていらっしゃいましたが、そういう理解であると思います。ですから、事務局がそのことを今、先生のおっしゃったとおりであることを、このことを待たずにヒト胚に関する研究は行わないということを明言されすことが、あの会でのアンダースタンディングだと思います。

(事務局)

  全く当然のことですから、それは改めて申し上げることもないと思います。これは期待感が表明されているだけであって、これからやろうとするときに、役所自身も、同じ役所がそういう意味では事務局をしているわけですから、今のような議論をわきまえずに議論しているはずはないということは信用していただきたいと思います。

(岡田委員長)

  これは何ページでしょうか。ヒト胚研究小委員会が成り立たなくなりますのできちんとしておきましょう。

(木勝(ぬで)島委員)

  3ページの下から6行目ぐらいのところに、まず1カ所、「ヒト胚性幹細胞の作成技術の開発に見られるように、生命倫理上の評価が不可欠であるものの」という言及があります。

  それから4ページの1行目にかけても、「ヒト胚性幹細胞の例やクローン技術の例が示すように」という中で、「生命倫理の問題をも内包する」という言及があります。3ページの一番下から4ページの1行目にかけてです。

  それから9ページに、我が国の生命科学研究の問題点というところで、9ページの一番下から二つ目の○に、「生命倫理の問題に対応するための審査体制等について」ということで、対応し切れていないというようなコメントがあります。

  そういう感じで、わりと一般的なコメントはあるんですが、残念ながら、このヒト胚研究小委員会の検討が行われているという言及は、この報告書の中には見当たりません。

(岡田委員長)

  16ページの発生・分化・再生領域というあたりのことしか、私は気にならなかったのですが、ここでは、「我が国においても、21世紀医療を支える生命倫理観の構築と合わせて、早急な取り組みが必要であると考えられる。」という言葉、これをどう理解するかというのがあるわけです。

(相澤委員)

  いや、この井村懇談会の資料に書いてあるか書いてないかを議論するのではなくて、この場ではっきりと、この委員会を経ない限りは、そういうものはつくらないんだということが明言されればいいんでしょう。

(木勝(ぬで)島委員)

  はい、そのとおりです。

(事務局)

  それはできるはずがありませんから、それはそういうふうに理解いただいて、全然差し支えないと思います。

(岡田委員長)

  では、そういうことでヒト胚研究小委員会は継続が可能であると理解していいですね。

(事務局)

  よろしくお願いいたします。こちらの議論をもちろんそういう意味では最大限踏まえながら進めていることは事実でございますし、また一方で、こういう研究につきましても、こういう議論を整理していただかないとできないということは、改めて指摘いただいたわけですし、これはありがたいことだと思っています。

(岡田委員長)

  では、その点、よろしくお願いいたします。

  それでは、議題に入っていきたいと思います。クローン小委員会が今回で11回目ということになって、ヒト胚研究小委員会が今回で5回目ということになります。この前のそれぞれの委員会のときに、提出されたマップの中での一つのテリトリーみたいな形の、資料合1−3にあるもの、ということでの議論がありました。これを見ると、相互に関係することがあって、その中のどの部分に関して集中するかということであったわけですが、その中で、人クローンの個体産生の議論は既に中間取りまとめをやって、あとアンケート調査をやる書類をつくった段階で、人クローン個体産生は規制されなければならないというはっきりとコンセンサスが既に得られていました。アンケート調査後の作業の中で続けてまいりましたのは、規制の方法をどうするかという議論でありました。これはいわゆるガイドライン規制にするか、法律の規制にするかという二つの選択でありまして、この議論がずっと続いてまいりました。前回のクローン小委員会では、両者のメリット、デメリットに関して、相当突っ込んだ討論の場が持たれたと思っています。その討論の全体の流れ、これは前回の議事録を読んでいただけると、感じとしてわかってくると思いますが、全体としては、まずは大体討論が行き着いた、それで、このクローン小委員会の議論は終結の方向に進むべきであろうかと私自身は思っています。前回の討論の全体像を見た感じでは、やはりクローンの人個体を産生するということを規制することのウエートをうんと高く置くべきであろうという話で、そのためには法規制という形が妥当であろうという意見に大体収れんしてきたと私は判断しています。

  ただ、討論の中で、やはりこのマップの中でも相互に関係することはしごく当然のことであって、幾つかこの個体形成との関係の中で、ヒトの胚というものの取り扱いという問題に関係する幾つかのものが残されているという判断も非常にはっきりしたものであったと思います。

  今回、一つはそういう相互関係に当たる積み残しの部分も含めて、全体像として、クローン小委員会とヒト胚研究小委員会の一つの考え方の場というのを、共通の場の中で一度持っていたほうがいいだろうということで、お集まり願ったということであります。

  その中で、今回私が何とかもう一歩進めておきたいと思いますのは、人クローンの議論の終結に向かっての次の一歩をとにかく本日踏み込めないかということでして、踏み込んだことに対応して幾つか残った問題をヒト胚研究小委員会の方で引き受けるという形の全体のコンセンサスが得られると、本当にありがたいと思っているところです。

  そういうことで、本日は事務局の方でまとめていただきましたものを土台にして、今のようなことに関してのご討論をお願いできるとありがたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

  それでは、そういうことで、まず人クローンの考え方について事務局から説明をお願いします。

(事務局)

  かしこまりました。資料合1−1、こちらの資料について、まずご説明申し上げます。

  「ヒト胚等の取り扱い及び人クローン個体の産生等に関する考え方について(案)」と示してございます。現在までの両委員会での議論を踏まえまして、大方受け入れられると思われる意見をこの括弧の中に示しておりまして、それとは異なる意見が強く表明されている部分についても記述した資料でございます。

  まず、ヒト胚等の取り扱いに関する基本的考え方でございますが、クローン小委におけるクローン胚をめぐる議論、ヒト胚研究小委員会におけるヒト胚性幹細胞等をめぐる議論を取りまとめてございます。

  原則の一つ目といたしまして「ヒト胚及びヒトの生殖系細胞(以下ヒト胚等という。)は、動物の細胞や他のヒトの体細胞とは異なりヒトの個体産生につながる可能性があるものであることから、ヒトの生命の萌芽としての意味を持つものであり、その取り扱いは可能な限り慎重に行われるべきである。」これが一つ目の原則でございます。

  続きまして、これを踏まえた原則2でございまして、「ヒト胚等はこのような生命の萌芽としての性質を共通に持つものであるためその取り扱いについては共通の原則の下で規制の枠組みを考えていくことが必要。」ということでございます。「しかし、ヒト胚等を扱う行為であっても医療行為・商業行為としての意味を持つ生殖補助技術等(体外受精・胚移植、胎児診断、着床前診断、精子提供等)については、科学技術政策だけではなく、医療政策の観点からも検討を行い最終的な規制の枠組みを判断することが適切であり、科学技術会議生命倫理委員会においては、ヒト胚等の研究についての共通の原則を提示することとする。一方、ヒト胚等の臨床応用や商業化の段階についても、今後医療政策の検討の中で科学技術会議の検討の趣旨が活かされ、ヒト胚等の取り扱い全般に関して、政府全体として整合性のとれた規制が行われることを期待する。」こちらが2点目でございます。

  特にこの2点目につきまして、別な考え方といたしましては、「ヒト胚等を扱う研究すべてについて、共通の原則を考える必要はなく、クローン技術のヒトへの適用、ヒト胚性幹細胞の作成・使用など新たに問題となったものについて個別に原則を提示するべきだ」という考え方が一つございます。

  また、これとは少し両極的な考え方になるかと思いますが、「ヒト胚等の扱いは研究段階と医療行為・商業行為の段階で明確に区別できるものではなく、医療応用、商業利用まですべて共通の枠組みで規制のあり方を考えていくべきであり、研究段階のみに止めた枠組みで規制を行うべきではないとの考え方もある。」大きな流れといたしましては、この四角に囲ったものでございまして、そのほかにこういう意見があるという整理をさせていただいております。

  次のページでございますが、各論を二つ、こちらは記してございます。

  まず1点目といたしまして、人クローン個体の産生についてでございます。こちらを原則3として取りまとめてございまして、「人クローン個体の産生は、実際に個体の産生を伴うことから、産まれてくる子供の身体的安全性の問題、家族秩序の混乱、人間の育種及び手段化・道具化、生殖のあり方に対する認識からの逸脱(無性生殖)等が、現実化・明白化する。さらに、人クローン個体の産生に固有の重大な問題として、遺伝的形質が複製された人を意図的に産生することは、実際に生まれてきた子供等に対する人権の侵害が現実化・明白化することになり個人の尊重という憲法上の理念に著しく反する。よって、人クローン個体の意図的な産生は、その弊害の大きさから全面的に禁止されるべきものであり、強制力を伴った形で、法律による規制を行うことが適当である。」という整理でございます。この中の理由のところは、特に順不同でと認識してございます。

  そのほかの異なる意見といたしましては、「人クローン個体の産生も、ガイドラインによる規制で十分防止できることから法律による規制を行う必要はないという考え方」あるいは「人クローン個体の産生を禁止する必要があるとしても、他の生殖補助技術等の規制とのバランスを考えると法律による規制を行うべきでないではないとの考え方」がございます。また、今までクローン小委員会におきましては新規立法の形、新しい法律の形で、案といいますか、イメージが示されてきておりますが、それに関連した技術的な事項といたしまして、「法律による規制を行う場合でも医師法等による免許の取り消し等により対応すれば十分であり、クローン個体の産生等を禁止する新規の立法は必ずしも必要ない」、こういうご議論もございました。

  以上が、人クローン個体の産生に関する大きな取りまとめでございます。

  3点目といたしまして、人と動物のキメラ・ハイブリッド個体の産生の問題でございます。原則の四つ目といたしまして、「人と動物のキメラ・ハイブリッド個体の産生は、産まれてくる子供の身体的安全性の問題、家族秩序の混乱、人間の育種及び手段化・道具化等について人クローン個体の産生を越える問題を有する行為であるのに加え、産まれてきた個体等の人権の侵害による個人の尊重の侵害という面でも、人クローン個体の産生を越える問題を有する行為であり、その弊害の大きさから全面的に禁止されるべきものであり、強制力を伴った形で、法律による規制を行うことが適当である。」こちらにつきましても、上の2.の人クローン個体の産生と同様の考え方を、別な意見として三つ並べてございます。

  以上が、ヒト胚等の取り扱いの基本的な考え方とクローンの個体、それと対比される形でのキメラ・ハイブリッドの個体の産生について、原則的な考え方を取りまとめてみたものでございます。以上でございます。

(岡田委員長)

  これはヒト胚等の取り扱いに関する基本的な考え方と、それから人クローンの個体産生のことが2のところでありますが、1番のヒト胚等の取り扱いに関する基本的な考え方についてというところで、原則1、原則2は、ご承認願えますか。

(菅野(覚)委員)

  質問よろしいですか。

(岡田委員長)

  どうぞ。

(菅野(覚)委員)

  原則1のところなんですが、いただいたマップとも関係すると思うんですが、このヒト胚等というのは、これはあくまでも研究用のマップといいますか、研究用の言葉の定義になっておりますね。私ちょっと疑問に思いますのは、民法なんかですと、胎児というのは特別な場合に一応主権の主体になる、相続に関してとか、損害賠償に関してとかというのがありますが、民法における胎児というのはどこからがヒト胚で、どこからが、あの場合、胎児と区別できるのかという問題がちょっと気になっておりまして、もし民法では受精したところから、要するに妊娠したところからの扱いを全部胎児として取り扱っているのであるとすると、現行法で少しはかかわってきている胚の問題と、研究上で区別している胚というのがどういう重なりになってくるのか、これは法律の専門の方に伺いたいんですが、例えば受精したところがもう民法上の胎児に含まれているんだとすると、試験管の中にあっても認知することができるかとか、損害賠償の主体になれるかとか、そういう問題ももしかしたら出てくるかもしれませんし、この原則1であるヒト胚というのは民法の胎児とどこで重なって、どこで違うのかということですね。この辺は現行法がある以上、何か明らかにされていないといけないのではないかという気がいたしますけれども、いかがなものでしょうか。

(岡田委員長)

  私はこの分野については弱いですね。しかし、出発点のところ、委員会が始まったところから、もう既にヒト胚というのはどういうものをいうのかということから問題点があったわけですが、私としてはこのヒト胚研究小委員会ができた条件というのは、やはり去年の暮れにヒトES細胞が樹立されたということとの対応の中で出てきたもので、これは研究の場でハンドリングしていくような形のものを多分言っていると思っています。ただし、始原生殖細胞ということになると、これは何週間の単位でしょうか、始原生殖細胞をとるのは。20週ぐらいでしょうか。

(西川委員)

  二、三カ月はいくんじゃないですか、やる気であれば。

(岡田委員長)

  そうですか。そうすると、当然いわゆる胎児というのに入るものなわけですね。

(西川委員)

  ただ、基本的には、両親の意思の問題であって、例えば人として生まれることを親として拒絶するか拒絶しないかということが含まれています。例えば生物学的な概念だけでそれをどうこう言うことはほとんど不可能ではないかと思います。わかりやすく言えば、受精卵の段階で、両親が最終的に子供までしようと決意しておれば、それはどの段階でも胎児として扱うべき問題です。

(武田委員)

  私も法律はわかりませんので、よくわかりませんけれども、産婦人科では4カ月で届け出の義務があるんですね。人工妊娠中絶という範囲では妊娠12週以降です。それからもう一つの規制は、人工妊娠中絶の適用の上限が22週未満です。その二つがございますので、普通は4カ月以降で、相続の問題は、民法上の問題はたしか12週だったと思うんですけれども、あまりはっきりしません。ただ、下のほうの12週以前は、そういう規制はありませんので、むしろ胎児とは区別して考えたほうがいいんじゃなかろうかと思うんです。

(永井委員)

  普通生物学者としては、これまであまり胚と胎児、フィータスとエンブリオの区別はそれほどきちんとはしてこなかったように思います。ひっくるめて胚というかたちで、扱ってきたように思います。ところが、産婦人科学の分野では、人の場合には、胚と区別して胎児という言葉を使ってきたいきさつがある。このように研究分野によって考え方が違ってきているうえに、さらに法レベルでの問題が重なってきている。こうした現実をふまえて対象としているものをきちんと規定していかないと、議論が循環的な形になっていくのではありませんか。そこら辺は武田先生、いかがでしょうか。

(武田委員)

  やはり民法のご専門の方にはっきりしたことをお伺いしたいと思うんですけれども、ただ臨床上はやっぱり4カ月というのは一つの基準です。妊娠4カ月、12週が一つの基準ですね。12週までは、一つはオーガノジェネシスで、個体としての臓器の発生がほぼ完成する時期というのが一つの生物学的な境界になろうかと思います。22週というのは、生を独立して保続できるか否かという、その境です。22週に決めましたときに、相当大きな臨床的な検討を行いまして、実際19週以降からどのくらいの子供が育ち得るのかということを、学会として大きな研究をやりまして、それを22週ということで答申した記憶があります。

(迫田委員)

  私の理解では、胎児の臓器や組織の利用のことまでここでは検討していなくて、胎児の始原生殖細胞ですね。ですから、そういう意味では胎児についての研究ではなくて、生殖細胞と受精卵に関する研究であって、例えば十何週の胎児の神経細胞を研究するとか、そういう話はここでは入ってないのではないかというふうに理解をしておるのですが、つまり生殖細胞と受精卵、受精卵はそれが何日までかという問題はあるにしても。違いますか。

(菅野(覚)委員)

  違うんです。民法では胚という言葉がないんですね。胎児がどこから始まっているかという境がわからないわけです。もしかしたら既に民法に抵触するようなことが行われている可能性がある。それを確認しないといけないんじゃないか。生命倫理の問題というのは、あまり倫理の問題というよりも、文化社会的な決まりと生物学上の決まりとが抵触してくるところの境目が問題なので、現行法の中に既にあるものについての境目がはっきりしてないというのはやっぱり問題じゃないかということなんですね。だから、ぜひ民法の方に伺って、ほんとうに素人の全くの勘違いかもしれないんですけれども、その辺がどうなのかということを確かめたいという。

(岡田委員長)

  そうすると、民法の専門家の方にお任せする必要がありますね。

(石井委員)

  お答えできる自信はないんですけれども、一応民法が専門なので、発言させていただきます。そもそも民法には胚という言葉はないということですけれども、民法が胎児と言うときに、胚と区別して胎児を区別しているわけではないと思います。民法上必要があれば、受精の瞬間から、胎児として保護する。従来は、母体内にいる存在として胎児をとらえていると思います。ただ、確かめてはいないんですけれども、オーストラリアでアメリカの億万長者の死亡後に凍結受精卵が残されていたときに、国会で、受精卵にも相続権があるという話がなされたということがあり、オーストラリアのその受精卵の話だとすれば、母体外にあってもよいという発言であった可能性はあります。民法が考えておりますのは母が懐胎している、胎児が子供として生まれたときに不利益を受けないために、既に生まれたものとして、胎権利主体性を認めるというものですから、ここで胚がどう定義されるかということとは、無関係と言っては何ですけれども、胚も先ほどのような意味では権利主体として保護されるということは考えておかなくてはいけませんけれども、ここでどう定義するかということと、直接的に民法の従来の議論と結びつけて考える必要性はないのではないかと私は考えます。私の民法理解が正しいかどうかはわかりません。

  もう一つ、武田先生がおっしゃった中絶との関係ですと、私は、刑法が専門ではないですけれども、堕胎罪との関係では、日本では特にいつから堕胎罪の対象になるという規定がございませんので、胎児は12週以降ということはないと思います、堕胎罪の保護法益としては母体保護法で中絶が許されない期間になった後は胎児であると思います。出生のときから人になる。ただ、刑法上は生まれかかっている存在についても、人として殺人罪の対象にはしてきましたし、また22週で、生きて生まれた者を殺せば、殺人罪の対象になると思います。法はそれぞれのときに解釈がいろいろあり得るので、一律にこうであるということは言えないと思いますが。

(武田委員)

  誤解があったらいけませんので、申しておきますけれども、私が申し上げたのは、母体保護法に該当しかつ死産証明による提出義務が生じる中絶ということが条件なんですね。おっしゃるとおり、12週以前であっても、堕胎罪は成立するんです。それは勘違いがないように、ちょっと申しておきます。

(岡田委員長)

  どうもありがとうございました。そうすると、今の胎児とここで対象になっているヒト胚及び生殖系細胞との整合性としては、石井委員がおっしゃった民法との対応でいけば、マップの中で個体産生というのは、母体の中に着床してという形のものであって、それ以外のヒト胚のほうで問題にするところは、全部培養系という形の原則の中に入っているということで、民法という解釈で、民法とのひっかかりというあたりの問題ではなく、新しい分野の問題として、生命倫理という意味合いで対応していくということでいいんでしょうか。

(石井委員)

  誤解のないように申し上げたいんですが、母体に戻せば、権利主体として、人として保護される存在だということは考えておいていただきたいと思います。培養系でとらえるとしても、ただ母体に入っているか入っていないかで、ゼロか1かで、全く保護しなくていい存在になるというものではないと思います。

(岡田委員長)

  そうすれば、それをどんどん演繹していきますと、切りがなくなって、この議論だけで、それから先は一歩も進まないことになるわけです。やはり現実的な世の中の動きとの対応の中で、例えばヒトES細胞を考えてみますと、問題点としては、ヒトES細胞は、こういうハンドリング自体を、受精卵などを完全に規制してしまうことをもしやったとしても、なおかつヒトES細胞関係の仕事としては、いろんな手だてがあって、現実には、皆さん多分やっていくことになると思います。それを全く野放図にというのは多分あり得ないだろうと私は思っていまして、何かの形の整合性を持たすようなものをどうやったら工夫できるかということが一番気になっているところです。ですから、非常に原則的な生命倫理ということで討論していくと、そこのある意味で格好のよさがあるわけです。随分格好がいいのです。ただし、それはそれとして必要なのですが、現実的にやみで動いていくものも存在し得るような現象が出てくる可能性があるとしたときに、それをある行政レベルとしては、どういう形で整合的な格好でうまく動かしていくかということは、どうしても必要だろうと思っております。そういう意味では、最初のところでオーケーするかしないかわかっていないのに、こんなのを出してという話が今出ましたが、実際上はどうしても動いていくだろうというのがベースにはあります。そのための、そこに関係する問題点として、どういう形なら可能性があるか、全く可能性がないかということを、ヒト胚研究小委員会の方で討論していただきたいのです。そういう意味では、原則的なベースとしては、子宮に着床させることはだめ、培養系だけということで、胚、受精卵の処理は、そういう場としての生命倫理的な考え方というのをまとめていくということにしていきたいと思っております。そういう意味では、確かに着床すれば、個体ができることで、そのもとはあるかもしれませんが、これは意識的に着床させることはしないという場面が存在し得るわけですから、そういう場面として考えてみたいと思いますが、いわゆる民法の問題も含めてということのようですが、民法との関係は切れているということで動かしていきたいのですが、やはり民法も含めないといけないというご意見になりますでしょうか。

(菅野(覚)委員)

  訴訟でもめたときに問題がなければ、それでいいと思うんですけれども、それが大丈夫かどうかということだけ確認したかったんです。

(岡田委員長)

  少なくとも民法とは少し切った場面で、生命倫理の問題として、ここである形づくりをやってみて、それから民法との関係の問題が非常に大きければ、それから考えるという方がいいと思います。先に民法との対応でやろうとすると、この委員会だけではどうにもなりませんので、そういう手続でよろしいでしょうか。

(相澤委員)

  それがいいと思います。

(高久委員)

  全然違うことでよろしいですか。ここの原則の1、これで結構なのですが、細かいことですが、「動物の細胞」というのは動物の胚等のことなのですね。1行目のところです。1行目の終わりのほうに、「動物の細胞や他のヒトの体細胞とは異なり」となっていますが、「動物の細胞」のこの細胞は、胚等のことを言っているというふうに理解されますが、そうではないのですか。

(相澤委員)

  先生、これは違うと思いますよ。動物の細胞は、動物の胚性幹細胞も含めた細胞という概念だと思います。動物の胚の細胞及び体細胞も、すべてを含んで細胞と呼ぶんだということだと思います。

(高久委員)

  そうですか。

(岡田委員長)

  そういうことにしましょう。

(高久委員)

  無理に動物の細胞と挙げる必要はないと思いますが。

(岡田委員長)

  ここのところ、何か直してください。

  ここの1のヒト胚等の取り扱いに対する基本的考え方としては、非常に常識的な話になっておりますので、民法の胎児との関係も含めての問題点が、ここでは一番問題があるところかもしれません。

(青木委員)

  今の括弧の中の上から3行目、「ヒトの生命の萌芽としての意味」とありますね。ここの解釈としては、受精の瞬間から人の生命であるというとり方をしていいということになりますか。つまり人の生命はどこから始まるかという根本的なところが、ですから、これは岡田先生のおっしゃるように、培養系としても、人の生命の始まりは、受精の瞬間から始まるというとり方をしていいということですね、法律は別に考えて。こういう書き方をしますと、一般にはそうとられるんじゃないでしょうか。それはそれで私も結構だと思うので。

(岡田委員長)

  受精卵というのを先に入れておけばいいわけでしょう。受精卵も含めて、「受精卵・ヒト胚」と、そうしましょう。

(事務局)

  その点につきましては、クローン小委員会のほうで町野先生からいただいたご報告の中での言葉を引用してございますが、生命の萌芽ということ自体は、生命そのものとは一応違う概念として扱ってございます。

(岡田委員長)

  それはいいのです。「ヒト胚等」というところを「受精卵・ヒト胚」としましょう。

  それでは、この1に関しては、基本的考え方としては了解していただくということにさせていただきます。

  次に、人クローンの個体産生については、最初に私が申しましたことに尽きるわけです。できればこれに関しては大体終結させて、上部の生命倫理委員会へ報告するという形をとっていきたいと思いますが、それに関して少しご討論願えますでしょうか。

(勝木委員)

  次の2も含めて、よろしゅうございましょうか。1ですか。今は基本的考え方だけ。

(岡田委員長)

  今度、2のほうへ移って。

(勝木委員)

  よろしいですか。2のほうの意見の○のところの2番目なんですが、「他の生殖補助技術等の規制とのバランスを考えると法律による規制を行うべきではないとの考え方もある。」というのがございますね。これは私の意見なのかもしれませんが、もしこれだと誤解が多いと思いますのは、むしろ人クローンのみを取り上げることが法律的にも非常に無理ではないかという議論をしたつもりでございまして、むしろクローンの規制をすることは私は賛成ですけれども、それはヒト胚操作についての全般の規制をまず考えて、その上でクローンの規制をやるべきだという意見なんです。そのことがこの中に書いてございませんので、もし追加していただけばと思うんですが。

(木勝(ぬで)島委員)

  その点に関して、全く同じ修正をお願いしたかったので、文言を案として申し上げます。勝木先生の今おっしゃったことと私も全く同意見です。2ページ目の2、人クローン産生についての併記意見、○が三つございますけれども、その一つ目の○と二つ目の○がちょっと同じような感じになっていますので、二つ目の○をこういう表現に変えていただきたいと思います。「人クローン個体の産生を禁止する必要があるとしても、他の生殖補助技術等の規制とのバランスを」そこまではそのままで、その後を、「他の生殖補助技術等の規制とのバランスを考えた法律による規制を検討すべきであるとの考え方もある。」としていただけるようお願いします。それで併記していただきたい意見内容になると思います。勝木先生はそういう内容でよろしいでしょうか。

(勝木委員)

  もう少し包括的な意見を持っているんですが、それで十分通じればよろしいんですが、まずここで繰り返し議論になりましたのは、クローンだけを取り上げて無理がないのかという議論が一方にございましたね。それで、ヒト胚研究小委員会のほうでもそういう議論をしたわけですが、基本的にはその胚の取り扱いというのはどこの国でもまず議論されていて、その前提のうえで、クローンにしても、ES細胞にしても、新たに出た問題として取り上げているから、その前の議論が十分行われているという事態だったわけですね。日本ではそれがないということが再三再四指摘されて、その中で、ヒトのクローン個体が規制されるべきであると。

  ちょっとESのことで申しますと、アメリカでもESを使おうという議論が起こったときに、大統領がその答申を受けてしたことは、やはり胚を操作したらだめだというものです。ただES細胞はどんどん研究しなさいということでしたので、ヒト胚操作に関する規制というものが日本では全く議論されていないということが問題だということです。

(岡田委員長)

  そういうことも含めて、ヒト胚研究小委員会の存在は、人クローン個体産生を禁止することとのバランスの中で存在していると理解しておきたいのですが、それはよろしゅうございますね。

(勝木委員)

  そのことをここに1行書いていただければ、ありがたいですが。

(岡田委員長)

  3の人と動物のキメラ・ハイブリッドはとにかく、これはだめだと、これは当たり前のことです。

(相澤委員)

  僕、クローンのほうの委員でないので、もうこれはクローンのほうで検討されたことだと思うので、僕もこの場にいなければ何も言わないで済むですけれども、いちゃうので、一言だけ言わせていただきたいことがあります。法律にするかしないかというのは、ただ単に科学のことだけではなくて、日本人をどう考えるかということとも僕は絡んでいるんじゃないかと思うんです。確かに今どき日本は日本人だけで存在することはできず、これだけ世界は近くなっているのですから、世界的なスタンダードでの規制を考えるということであれば僕はいいんですけれども、ただ、日本というのは法律にしないでも大体みんなそれで守っていくという民族でありまして、それをあえて法律にするということが、日本人理解との関係の中で持っている問題を無視したままに法律にしちゃうということでいいのかということをちょっと僕は思うのです。法律にすることは反対ではありませんけれども、一言だけそのことがあるのではないかということを言わせていただきます。

(岡田委員長)

  そういう議論は、前回を含めて非常に細かい議論がありました。最終的には、いろんな問題点がありますが、それでも、例えばガイドラインというのは、今おっしゃったような話もありますし、研究者を我々は信じよう、信じたい、法規制は要らないのではないかという話から、全部ありましたが、いろいろな話し合いの中で、やはり法規制でないと実行が難しいのではないかという意見に、前回の委員会では、最終的に収れんしてきました。相澤さんの方には、クローン小委員会の議事録は送られていないのでしょうか。

(相澤委員)

  済みません。読んでないです。

(岡田委員長)

  前回の議事録を読んでほしいのです。いろいろな意見が多数出ましたが、最終的には法規制の方がいいようだと。いいようだというのは、人クローン個体産生というのを禁止したいというのを第一義的に考えるなら、やはり法規制でないとどうにもなるまいという話になったわけです。これはおっしゃっているように、こういう倫理問題での法規制は、今まで日本では全然なかった。多分最初のものになる。だから、そういう意味では、なぜ法規制をしなければいけないかということを、腹を決めてしなければならないだろうという意見が随分出たわけです。

(迫田委員)

  私の理解がもしかしたら足りないかもしれないのですが、法律というのは必ずしもすべて規制するだけのものではなくて、例えば科学技術を推進するための基本法みたいなものもございますね、科学技術かどうだったか、ちょっと忘れましたが。つまり全部の例えばヒト胚等の研究についての、あるいはそういう全体の枠組みを、これは多分ガイドラインという形にしようというふうになっていますけれども、全体の枠組みとして、例えばこの原則1が第1条に来るような、そういう法律の枠組み、ヒト胚研究すべてについての法律の国としての姿勢みたいなのをあらわした基本的な法律があって、その中に例えば最後の第何条、クローンについては、あるいは個体産生についてはこれを禁止して、強制力を持つためには何か罰則がついているというような法律の枠組みというのは考えらないんでしょうか。何か単独だけ、禁止の法律だけ、規制の法律だけつくるというのでなく。

(岡田委員長)

  法規制をするとしたら、どういう形づくりがあり得るかというのを町野委員に作成していただいたわけです。最初は、人個体産生は法規制の中に入り、ほかのいろいろな生命倫理とかかわりのある研究も法規制の中に入り、個々に審査をして、こういうものなら研究してもいいという形の一つの全体を法規制の中に入れるというのが形づくりとしてはいいということでした。しかし、その中で、法規制をするところを非常に狭くして、そのほかのところは、ガイドライン規制で審査のステップを踏んで処理していく方がよいと。今現実的に人クローンというのが存在するわけではないですね。ES細胞にしても、どれくらい発展するものか、だれも経験がないところのものです。その中で、人クローン個体に関してだけは、あれば困るというのが大体のコンセンサスです。これは法規制をしても、それほどいろいろなところに迷惑がかかるものではないと、私は判断しています。波及するところが幾つかあります。現行で動いているものがあるというのも確かだと思いますが、それにしても、それほどの法規規制をしても影響がなくて、かえって法規制をすることで、一つの倫理的なはっきりした場面を国が堅持しているという形をとれるという意味合いがあると思っております。あと、ES側の方はハンドリングも含めいろいろな問題、今まで動いている産婦人科領域のところを超えた形になるわけです。どちらにしても、まずはガイドライン規制で事態をずっと見ながら考えていくというのがいいのではないかということがありました。それで、モデルとして出してもらった、法律でやればこうなるというものの、ヒト個体以外のところは少し法規制の中から外して、ガイドライン規制ではどうでしょうかという案も私の方から出したというのが現状です。

(位田委員)

  私自身は先ほどの迫田委員の意見に全く賛成なんですが、ただ現実に一般法をつくって、その中で人クローン規制をやる、もしくはヒト胚の法規制をするという話になると、もっと時間がかかりますし、それは少なくとも現時点においてはあまり現実的なやり方ではないと思います。そういう意味でお考えには賛成ですけれども、やり方としては、あまり今のところは賛成ではない。それから法律というのは研究を促進する役割とそれから規制する役割の両方があると思いますが、どうもここでの議論は規制のほうばかり話が出ているので、法律をやっている者としては、ちょっと誤解があるかなと思います。研究の自由自身も実は憲法によって保障されているからこそ自由に研究ができるのであって、そういう意味では、あまり法をつくるということと法によって規制するということを同じに考えていただかないように、お願いしたいと思います。

  もう1点、先ほどの勝木委員のお話の2番目の○のところの「他の生殖補助技術等の規制とのバランス」という話なんですけれども、勝木委員のお考えは、生殖補助技術ではなくて、むしろヒト胚の扱いもしくはヒト胚研究そのものをどう取り扱うかということとのバランスでクローンを考えるべきではないかということだと思います。そういう意味で、ヒト胚研究全体についての法律をつくって、それからであればクローンを禁止してもいいというお考えだと思うんです。ただ、私自身はクローンについて、クローンだけを取り上げた法律というのも可能だと思っておりますので、必ずしも賛成しているわけではありませんけれども。

(岡田委員長)

  ありがとうございます。

(木勝(ぬで)島委員)

  クローン小委員会のほうで、私は迫田委員がおっしゃったような線をずっと主張してきました。最終的に、ヒト胚研究全体についてのガイドラインについても、その中に盛り込まれる原則あるいはそういうガイドラインで国が関与するということを法律に書いて、それに法的根拠を与えるということもありうると思います。法律かガイドラインかということを全く二者択一に考える必要はなく、研究審査制度をつくるべきではないかと思いますので、そうすると、法的根拠があったほうが望ましいというような議論を、これからヒト胚研究小委員会のほうでしていただきたいです。最終的な結論として、ヒト胚研究についての法律というようなものを構想して、その最後に、禁止されるべき研究という条項を作り、その中に、人クローン個体の産生とか、キメラ・ハイブリッドの産生も組み込む、そういう結論をヒト胚研究小委員会がするということは、私はあると思いますし、それに道を開いておいていただきたいと思います。

  しかし、とりあえずこのきょうの資料合1−1については、先ほど申し上げたようなことと勝木先生のご意見が並記され、相澤委員がおっしゃった日本人は法律でなくてもいいのではないかという意見も、併記意見の○の1、ガイドラインで十分防止できるから、法律による規制を行う必要はない、という考え方があると選択肢として出されておりますので、今後の科学技術会議での検討において、最終的に政策決定をされる場合、この四つの選択肢があることを打ち出しておけば、とりあえずクローン小委の検討結果としてはそれでもういいのかなと私は考えます。

(西川委員)

  相澤委員の意見を僕自身のインタープリテーションで言い直すと、法律をつくるということは、その社会の例えば姿勢なりそのすべてを映すことである。すなわち法律に書いたことによって、この日本の社会とはどういうことであるということを映すことだから、それでいいんですかという話であって、ここでガイドライン規制云々ということではないと、多分そうでしょう。

(相澤委員)

  そのことはもう議論されたそうですので、僕は一言だけそれを言わせていただければ、あとはもうこだわる意思はありません。

(武田委員)

  さっき位田委員がおっしゃったことだと、私は賛成なんですね。勝木委員のご意見と私の意見の多分違いは、位田委員がうまくコンプロマイズしてくれたと思うんですね。だから、胚研究という枠を考えるのは、これはいいんですよ。ただ、生殖補助技術と言われますと、現在行われていることと随分離反しますので、その辺はやはり私としては、生殖補助技術全体を規制する枠の中で考えるというのは少し少数意見じゃないかと。そういう意味で、一つこの中の文章で私がちょっと気になりますのは、原則2の括弧の中で、胎児診断と精子提供という二つの言葉が入っているんですね。胎児診断は一体何を意味しているのか、ちょっと私よくわからないのですが。

(岡田委員長)

  どこでしょうか。

(武田委員)

  1ページの原則2の上から4行目の括弧の中です。着床前診断と別に取り出していまして、その前に胎児診断なんという言葉がある。それから精子の提供という、精子の提供よりもほんとうはものすごく大事なのは卵子の提供で、同じようなものでも全然意味が違うんですね。だから、あまり細かくここで羅列する必要があるのかなと思ったりします。

(岡田委員長)

  これは、こんなに細かくする必要はないです。

(勝木委員)

  今の武田先生のご意見は私も賛成で、それでいいと思います。

  ただ、原則2のところは、確かにそういうこともありますし、生殖補助技術ということをここで特に考えたわけではありませんので、ヒト胚全体の操作に関して考えたのであって、したがって、ヒト胚の最後の2行の文章、「ヒト胚等の取り扱い全般に関して、政府全体として整合性」云々と書いてございますね。ここで急にヒト胚ということが出てまいりますので、途中のは少し文言を変えて、かなり具体的になり過ぎて、ここで議論してないことが出てまいりますので、そういうふうにしたほうがいいように思います、原則ですから。

  それから規制が行われることを期待するという、こういう文章が果たして原則としていいのかどうかというのは、私はちょっと疑問なんですけれども、まあこだわりませんが、その精神が伝わればいいことですけれども。

(加藤委員)

  期待するのは、整合性に期待がかかるんじゃないですか。

(勝木委員)

  ああ、そういうことですか。

(岡田委員長)

  そういうことでこの辺は処理してもらうことで、一応ここのところはパスさせてください。

  それでは、時間が大分過ぎましたが、人クローンの問題について。はい、どうぞ。

(石井委員)

  全く違う質問なんですけれども、ここでいう人クローン個体の産生として、禁止される内容ですが、それは人として生まれることを禁止するということですか。

(岡田委員長)

  恣意的に生まれるような操作にまで持っていくということも含めて、禁止です。

(石井委員)

  胚を母体に戻す行為そのものから禁止されるということととらえて、よろしいのですね。

(岡田委員長)

  そういうことです。

(石井委員)

  生まれさせなくても。

(岡田委員長)

  着床というあたりのところからの恣意的なことに関しても禁止になります。

(加藤委員)

  韓国で行われたように、クローンの受精卵を核移植でつくったけれども、着想させないで、いわば廃棄してしまったんだというのは規制の対象にならないんでしょうか。

(岡田委員長)

  規制の対象にならないというのではなくて、法律の制限という形のものに入れていないということです。

(加藤委員)

  法律上の規制は着床させることを規制する、そういう文面で、その以前の核移植による胚をつくるのは、ガイドラインのところですか。

(岡田委員長)

  着床から個体産生までのことに関しては非常にきつい法規制を行うということであって、それより前のところはこのテリトリーとして中に入ってないということです。個体産生ということですからね。ですから、それに関しては、ヒト胚研究小委員会がつくられましたから、そちらのほうの問題点として具体的にやらざるを得ない問題点があるということで、これはこれからの問題ということになろうと思います。

(木勝(ぬで)島委員)

  済みません。ごく事務的なお願いです。今の資料合1−1の最後の3のところの人と動物のキメラ・ハイブリッド個体の産生について並記する意見の○の2番目は、人クローン個体の産生についての○の2と同じ表現に直していただきたいと思います。「人と動物のキメラ・ハイブリッド個体を禁止する必要があるとしても、他の生殖補助技術等の規制とのバランスを考えた法律による規制を検討すべきであるとの考え方もある。」として下さい。

(岡田委員長)

  それが必要ですか。

(木勝(ぬで)島委員)

  同じことですから。

(岡田委員長)

  必要ではないと思います。そんなものはやめておきましょう。同じことですから。こちらのほうがウエートが高くて、それは大したことないのですから、もうやめておきましょう。

(木勝(ぬで)島委員)

  大したことはないということはない。事務的なことですから、直して下さってもいいんじゃないですか。同じことですから。

(岡田委員長)

  やめておきましょう。

(西川委員)

  ただ、一つだけ文言でキメラ個体−−キメラ・ハイブリッドまでいくと僕もイメージがわくんですが、キメラ個体の場合、例えばジェノ・トランス・プランテーションまで例えば含むものまで規制するかどうかというところにかからないような一言は、入れておいたほうがいいと思いますね。先生のほうがご存じだと思うんですけれども、例えば僕が豚の肝臓を持っていたら、一種のキメラですね。例えば豚の骨髄を持っていたらキメラですから、例えば胎児に豚の骨髄を入れてやったというのは、そこまで含まないような、キメラというと、そのまま細胞レベルでのキメラでないものは対象にしてないというのは、何か言っておいたほうがいいような気がします。

  科技庁の方に申し上げたのは、人と動物の。キメラ・ハイブリッド細胞に基づく個体という話のほうがわかりやすいかな。ジェノ・トランス・プラントに関しては別にやったほうがいいと思います。

  僕の言っているのは、このままだとジェノ・トランス・プラントもだめだということを読む人がおると、議論してないことが。大丈夫ですかね。大丈夫であればいいです。

(岡田委員長)

  そこまで考えなければいけませんか。

(永井委員)

  ただし書きをつけるか。

(西川委員)

  ただし書きをつけたほうがいい。

(勝木委員)

  よろしいでしょうか。さっきの加藤先生のおっしゃった核移植の話ですけれども、ほかの国の例を引いて恐縮なんですが、ほかの国は基本的にヒト胚操作をまず禁止しているものですから、核移植をしないということはもう自明のことになっていて、議論をしていないんです。クローンをつくるときに。ところが、日本ではヒト胚操作の規制をやっていないものですから、移植をするという段階でとめると、胚操作に対する規制がないものですから、世界で初めてヒト胚に対する核移植が可能な国になるんです。議論をしないで可能な国になるんです。私はそれは非常にまずいと思います。したがって、やはりクローンの禁止の基準のところとして、それを問題にするかどうかはやはり議論をすべきではないかと。

(岡田委員長)

  これは、逆に言うと、やはりこれから先の問題点として、瞬間的にESができた途端に皆さんが思ったことがあるわけで、その辺までのものを一挙に最初からストップさせてしまうという形をとるか、それともそのところはまだディスカスの段階の中にあるとして、空白で残しておくか、これは重大なところです。私は空白で残しておきたいほうです。どうですか、高久委員。

(高久委員)

  私も前回のクローンの小委員会のときに、基本的にはガイドラインでと思っていたけれども、皆さんが法律で進もうと言われるならあえて反対はしないと申し上げたのは、個体のことに限られたからでして、もしそれにクローン胚まで含めるとすると、それはまだ私は十分に議論されてなかったと思いますから、資料合1−3にある、これも前回議論されたと思うんですけれども、この案の範囲で私は法律でやむを得ないと思いました。

(迫田委員)

  これは科学技術会議に提出されたとしても、直ちにクローンの法律だけを先につくろうというふうに動くのか、つまり順番としてクローンの法律だけ先につくって、ガイドラインについては後から考えるという手順を踏むんだとすると、それはちょっとまずいかなと思うんですね。つまり法律で禁止した法律ができたと。じゃ、法律以外のことはやっていいというふうに普通は判断されるわけです。そうじゃなくて、これはクローンについては禁止だけれども、ここに、原則2にあるように、ほかのところについては、ちゃんとガイドラインについて考えますと、あわせた形でヒト胚研究と人クローン個体産生についての国としての、あるいは科学技術会議としての方針だというふうに言っていただければ、安心できると思うんですが、それが何か単独法だけ先につくりますというふうな形で伝えられますと、それは、じゃ、あとはいいんですねということになりかねないと思います。

(岡田委員長)

  確かにそうすべきだと思います。

(高久委員)

  ですから、私はこの議論はこれぐらいにして、もっとそちらの方向に進めていく必要が非常にあると思うんですね。

(岡田委員長)

  これもきりがないことになりますので。

  それで、事務局で準備してくださっているもう一つの資料がありますので、事務局から説明をお願いします。

(事務局)

  それでは、資料合1−2についてご説明申し上げます。

  こちらはタイトルのところに素案と書いてございますように、かなり今までの議論を大胆にまとめてございます。クローン胚の扱いに関するクローン小委員会の議論、ヒト胚性幹細胞等の扱いにおいてヒト胚研究小委員会で提出された議論を、かなり大胆にまとめてございますので、そういった点をお含みの上でお聞きいただければと思います。

  まず、大前提といたしましては、「ヒト胚等を取り扱う研究についてはさらに詳細に以下のような原則」あるいは考え方「を検討していくことが必要」であるということでございます。「現在までの、クローン小委員会及びヒト胚研究小委員会の議論を踏まえ」、ここの表現は少し苦しいのですが、「比較的受け入れられていると思われる」という形で表現させていただいておりますが、かなり多く見られたような意見を事務局なりに整理したつもりでございます。

  まず、研究の原則でございます。これは先ほどの胚の扱いの原則を引いておりますが、「人の生命の萌芽としてのヒト胚等の性質にかんがみ、ヒト胚等を取り扱う研究は可能な限り慎重に行われるべきである。一方、生命科学の基礎研究や医療の発展のためには、ヒト胚等を用いない限りは研究の進展が期待できない場合もあり、一定の場合には許容する事が妥当である。以上を考慮すると、ヒト胚等を取り扱う研究は、適切な基準に従って行う場合のみ認められるべきである。基準の策定は、公正かつ慎重に行われる必要があるため、研究実施者ではなく国が行う必要がある。」というものを示してございます。

  これに対する異論といいますか、異なった意見といたしましては、「ヒト胚等を取り扱う研究すべてについて、国が共通の原則を示す必要はなく、クローン胚の作成・使用、ヒト胚性幹細胞の作成・使用等新たに規制の枠組みを作成する必要がある分野のみについて、原則を提示するべきであるとの考え方」、これがあるということでございます。

  2点目でございますが、そのヒト胚等を取り扱う研究の規制の枠組みでございます。ここについての考え方といたしまして、「ヒト胚等の研究を行う者は、研究者又は医師という比較的自律性の高い集団であり、その自主的な規制にゆだねることで十分効果の高い規制が可能であると考えられるとともに、人間の生命の萌芽にとどまる胚については、胎児やヒト個体に比べてその侵害による弊害が小さい。したがって、胚の段階での研究については、必ずしも法律による規制を行う必要はなく、医者や研究者などの自律性の高い職能集団の自主性を尊重し、現場に即した自主的な監視を通した緻密でソフトな規制や社会情勢の変化に対して適時に柔軟な対応が可能である国のガイドラインによる規制の方が適していると思われる。」というふうにまとめてございます。

  これに関しましては、「ガイドラインによる規制では、研究者や医師の組織に属さないアウトサイダーに対する規制が十分でないこと、国民の権利義務に関わる規制は、国会の審議を経ることにより国民の意思を反映した形で行われるべきであることなどから、ヒト胚等の研究についても法律による規制を行うべきであるという考え方もある。」というものでございます。

  原則の3でございますが、この場合の手続をどうするかでございますが、「国の示す基準への適合性を担保するため、ヒト胚等を扱う個別の研究計画については、以下の手続により実施することが適当である。」1番目といたしまして、「所属する研究機関の長は、その機関内に置かれた審査委員会の意見を受けて、個別の研究計画を承認すること。」2点目といたしましては、「すべての研究計画について国が届出、確認等の一定の関与を行うこと。」

  これに関しましては、「既に十分な実績を有する研究については国の関与が必要ないとの考え方もある。」ということでございます。

  3点目からは各論に入ってございまして、人クローンの胚についてどう考えるかということでございます。原則4といたしまして「人クローン胚の作成を行うことは、人間が「個」として尊重されるべき存在であるという原則を否定するものであり、また、人クローン個体産生につながる場合があることから、原則として行われるべきではない。しかし、一方では、人クローン胚を使用する研究は、生命科学の基礎研究の向上や医療の向上に貢献する可能性があることも否定できない。また、人クローン個体の産生ほど重大な弊害をもたらさないと考えられる。以上を考慮すると、正当な理由がある場合には人クローン胚の作成・使用は、一定の限度で許容しうるとすべきである。」

  これにつきましては、「人クローン胚の作成にたとえ有用性があるとしても、許容できるものではないという考え方」、これと近いのでございますが、「科学的知見の蓄積がない現状」、こういう現状を踏まえれば、「人クローン胚の作成・使用を認めることは時期尚早であるという考え方」もございます。

  この原則4を踏まえた手続においての国の関与でございますが、「人クローン胚の規制における国の関与は、当面は」事前の「確認を伴う形で行われるべき」であるという考え方でございます。

  4.は、もう一つの各論でございます。ヒト胚性幹細胞の扱いでございますが、原則6といたしまして、「ヒト胚性幹細胞はその作成の過程において、ヒト胚又は流産した胎児」この場合、人工、自然両方を含みますが、「流産した胎児から採取した始原生殖細胞を使用するため、その作成は可能な限り慎重に行われるべきである。一方では、ヒト胚性幹細胞の使用を伴う研究は、生命科学の基礎研究の向上や医療の向上に貢献する可能性があることも否定できない。以上を考慮すると、ヒト胚性幹細胞の作成・使用は正当な理由のある場合には一定の限度で許容しうるとすべきである。」という考え方でございます。

  これにつきましては、「ヒト胚性幹細胞の使用」、作成ではなくて使用につきましては、「ヒト胚等の滅失を伴わないため、ヒト胚性幹細胞の作成とはその扱いを区別すべき」だ、一緒に扱うのではなくて、区別した考え方でよいのではないかというものがあるということでございます。

  原則7のほうに手続を書いてございまして、「ヒト胚性幹細胞の規制における国の関与は、当面は確認を伴う形で行われるべき。」と、クローン胚と同じ考え方でございます。

  これについては、特に上記6での別な考え方をもう一度繰り返してございまして、ヒト胚等の滅失を伴わない使用のみについては、その扱いを別途区別して扱うことも考えべきではないかという意見でございます。

  4ページには今後議論すべき論点、今ご紹介してきた考え方に比べて、さらにまだ議論が進んでない分野として、具体的に国の定める基準についての詳細な議論、別紙として一つのイメージを書いてございますが、研究に使用されるヒト胚等の由来、どのような研究の目的ならよいか、インフォームドコンセントをどう考えるか、研究を行う者について限定をするか、提供の対価についてどう考えるか、安全性等の研究環境をどうするか、情報の公開をどうするか、プライバシーの保護をどうするかというような基準についての議論が当然必要になってくるかと思われます。

  また、その規制の枠組みにつきまして、前のページにお戻りいただきますと、例えば研究機関に属さない個人の研究者、こういった方々の研究計画の扱いをどうするか、国の関与の程度をどうするか、また例えば一定の要件を満たす特定の研究機関を指定して、ある行為について認めるライセンス制の導入というものはどうかというような論点もございます。また各論になりますが、研究機関の審査委員会の構成といったようなこと、各機関に置かれる審査委員会についても、きちんと手続といったものを考えるべきではないかという、今後議論すべき論点はかなりございます。

  以上、大変雑駁ではございますが、今までの議論を踏まえまして、比較的今議論がなされてきたところ、それから今後特にまだ着手しなければならないような論点、こちらについて資料合1−2に紹介してございます。以上でございます。

(岡田委員長)

  どうもありがとうございました。事務局の方でこういうふうな格好でまとめてくださっていただきましたが、形式的には、ここまでまとめることができれば、もうあまり委員会をしなくてもいいだろうと思います。それより、もう一つ前の段階のところの問題の処理がまだできていないと思います。私自身はそんな感じで、これに関しては思っていますが、どうぞ、ご討論をお願いします。

(相澤委員)

  質問があるんですけれども、僕、これはどこまでがクローン小委員会で行われたことで、どこがヒト胚研究小委員会で行われたことかの区別がわからないんですけれども、少なくともヒト胚研究小委員会ではまだ胚性細胞、4番についての議論は全然されてないことだ、これからやることであるという理解で、クローン小委員会としての議論の中で出てきたことがある程度まとめられている、そういう理解でいいですか。

(事務局)

  ヒト胚性幹細胞についてクローン小委員会で詰めた議論を行っておりません。ここはクローン小委員会でのクローン胚の扱い、あるいは前回事務局のほうでお示しした手続等について整理してみただけでございまして、そういう意味ではまだ議論は進んでないという理解でございます。

(相澤委員)

  それからもう一つ、これは全く言葉の問題ですが、クローン胚と言ったときのクローンというのは、どういう言葉として使っているんですか。クローンという言葉は、これは核移植したという意味ですか。

(岡田委員長)

  多分そうだと思います。

(相澤委員)

  ちょっとそれは俗称で、クローンの言葉の定義としては、それはどうもあまり正しい言葉ではないと思います。

(事務局)

  クローン小委員会の場での議論といたしまして、法的に取りまとめた考え方としては、ヒト、既に死亡したヒトを含む、あるいはヒトの胎児またはヒトの胚の体細胞の核をヒトまたは動物の除核卵に移植して作成された胚というイメージでございます。

(木勝(ぬで)島委員)

  そこはクローン小委員会で十分検討できなかったことです。人間と動物の間での核移植などによるキメラ胚、ハイブリッド胚の研究を認めるかどうするか。それはクローン小委員会からヒト胚研究小委員会に引き継がれるべき残された重要な課題です。ヒトのクローン胚というのは、ヒトの体細胞核を動物の卵子に入れることまで含めてしまっているような定義を今おっしゃいましたけれども、それはあまりにわかりにくいので、ヒトの体細胞核をヒトの卵に移植することは3、ヒト胚の作成。3の次に4として、ヒトの体細胞核をヒト以外の動物の卵子に移植する研究の是非というのを、別立てにしないといけないと思います。その逆があるのかどうか、つまり動物の体細胞核を人間の卵子に入れるということがあるのかどうかはよくわかりませんが、人間の体細胞核を動物の卵子に入れる研究はやりたいとしているところが国内にもあると聞いておりますので、その是非の検討は明確に別立てにするだと思います。

(事務局)

  済みません。少しその点につきまして、完全に網羅的にはまだ整理されてないところがありますので、今後の議論の論点として、つけ加えていきたいと思います。

(勝木委員)

  そうしますと、相澤さんがさっき言われたのは、原則4については、原則というほど議論されていないという理解でよろしいですね。そういうことですね。

(事務局)

  はい。

(岡田委員長)

  事務局の方で、今までの全体の整理の仕方として、こういう書類の形での整理の仕方があるということでお示しになったものだと思います。それぞれの項目が、議論をしたものとして整理されたものではないと私も思います。動かしていくとしたら、多分こういう形の個々のものを気にしながら、整理していかなければならないと思いますが、その前に、生殖医学という土俵を超えた格好でハンドリングことの問題点、これは研究者としての考え方もあろうし、法律家としての考え方もあろうし、また日本の国民一般の人の感情論の中のものもあろうし、そこら辺のものをどれほどの説得力を持たせる形で、私自身としては何とか研究としては動かしていけるような道がないだろうかというのが、一つのキーポイントとして皆様方にご相談申し上げたいと思います。これはなかなか大変でして。それから勝木先生がおっしゃっているような、受精卵というのはもう既にこういう性格のものだという話のところが微動だも動かないと、これはなかなか動きがとれません。

(勝木委員)

  私は別にそんなに固執するつもりはないんですが、やはり議論は尽くすべきだということだと思うんですね。そのときに。ちょっとよろしいでしょうか。

(岡田委員長)

  どうぞ、時間がありますから。一般論としてお話ししてください。

(勝木委員)

  「ヒト胚性幹細胞の作成・使用」というふうに書いてございますね。これは一括して議論しようということになると、やはり非常に難しいのではないかと思います。それぞれの、使用については可能性その他、例えば比較生物学としてのヒトというものを扱う場合の使用というのは、私はあり得ると思うものですから、岡田先生がおっしゃるように、この胚性幹細胞を扱うということについては学問的にも非常に高い意味があると思うので、使用については私は全然問題ないと、前から申し上げているんです。ただ、作成について申しますと、すぐ考えますのは、それでは妊娠何週目の始原生殖細胞をとったらいいのかとか、それも研究対象になり得るわけですね。もっと言えば、非常に興味ある研究対象になるわけです。作成のところは除核未受精卵に核移植をして、みずからのスペアをつくるというようなことだけしか考えられていないようですが、つまり既にヒトでつくられたEG細胞やES細胞の方法以外に、もっともっと我々が知りたいことがあり、動物実験ではそういうことをやっているわけです、現実に。したがって、作成といっても、今行われていることだけをイメージしたのでは研究になりませんので、そこまで含めて考えますと、非常によく議論しておかないと、私が言う抵触するところが出てくるのではないのか。ヒトES細胞のベネフィットはものすごく認めるんです。競争があって、今日本でやらないのと負けてしまうという議論もすごくあると思うんです。ただ、それ以前に、研究者として考えますと、ちょっとグロテスクなことが行いたい最も中心的なテーマとして出てくるものですから、それで、やっぱり分けて議論していただきたいと思います。

(相澤委員)

  僕もやり方については勝木先生と全く意見は同じで、ただし、基本的に勝木先生と根本的見解を異にする可能性があって、楽しいと思っているんですけれども、まず一番重要な問題は、胚性、ヒトのES細胞の作成をどう考えるかということがすべてのことの基本的問題を包含しているので、役に立つほうのことはその後で考えればよくて、まずヒトのES細胞を作成するということについて徹底的に議論をして、それから次へいくのが一番生産的だと思うので、そのことをぜひ中心に議論をお願いしたいと思います。

(岡田委員長)

  勝木さんのほうはいかがですか、それに対して。

(勝木委員)

  私はES細胞は研究は研究としてやるべきという立場なものですから、相澤さんと違うところは、多分そこがクリアされなければ研究ができない、ES細胞を使ってはいけないという意見では、私はないんです。そこを切り離して、プラグマチックにやろうというのが私の意見なものですから。

(相澤委員)

  僕はそのベネフィットだけでやるのは反対でやっぱり。

(勝木委員)

  わかりました。議論の仕方としては、最初の入り口はやっぱり作成のところでやるのに賛成です。

(豊島委員)

  前々回、ES細胞のほうの会のときにその話が一応出て、外国からそれを供給を受けるということをオーケーしながら、日本でそのことをきちんとして議論をしておかないのはあり得ないことだろう、その議論の決着がつくまでは、日本の中でもらって、普通に研究に乗せるということは、やっぱり遠慮したほうがいいだろうというのが基本です。

  そのことと、もう一つだけ、これは全体の問題として、クローン胚という言葉がずっと使われていますが、ここで言うクローン胚とは何を言うかというのを別項目として、僕は定義しておいたほうがいいんじゃないかと思います。

(岡田委員長)

  これは事務局の方でお願いします。民法の話も出ましたが、はっきりさせておく必要があるようですね、そういう意味で。

(豊島委員)

  多分私の理解では、最終的には体細胞の核を移植した卵細胞ですね。卵細胞に移植したのがクローン胚であって、それ以外のことは、今のところ、ここで言うクローン胚には入ってないんだというふうな解釈でいいでしょうか。違う解釈の人もあるかもしれないんですが。

(木勝(ぬで)島委員)

  ヒトの受精卵を分割することによって幾つかにばらばらにするものは含まないということですか。

(豊島委員)

  例えばそうです。あるいは将来のことを考えますと、ミトコンドリア病なんかの治療を考えたときに、受精卵から受精卵へ核だけを移植するという可能性も一応残しておきたいという気がするんですが。

(迫田委員)

  もう一つお願いなんですが、先ほどの井村先生の「生命科学の世紀に向けて」についてもそうなんですが、この間、厚生省のほうの先端医療評価部会でやはりES細胞がテーマで、高久先生が座長をされていらっしゃるところで議論されていましたが、そのところでも、こちらのクローンとESの小委員会の話は一切出ないわけですね。ここでこういう議論をしているにもかかわらず、厚生省の先端医療技術評価部会では何も、ここでこういう議論をされている事実も内容も、ともかく議論されている事実もそこの委員にも伝わらないというような状況があるわけですね。ですから、そこのことについては、ぜひこういう議論が今ここまで進んでいるとか、せめて何回行ってどうであるかということぐらい、事務局から、あるいはぜひ高久先生におっしゃっていただきたいと思うんですけれども、そういういろんな場で今議論されているのを、なるべく国として、あるいはいろんな参加している皆さんを含めて、集約していく形にしないと、全くみんながばらばらという形になってしまうと思うので、それはぜひお願いしたいと思うんです。

(岡田委員長)

  高久先生との間でどうやるか、ご相談しなければならないと思います。

(高久委員)

  この委員会について紹介しなかったことを反省していますが、ES細胞が将来可能になったときにどういう医学的応用があるのだろうかという勉強会でして、特にES細胞の研究をどうするかという議論はしませんでした。

(相澤委員)

  ちょっと質問があるんですが、僕、豊島先生のおっしゃったことに賛成で、やはりここで結論が出るまでは、アメリカから細胞をもらってやる研究は日本ではしないということの方針をある程度何らかの形で出されたほうがいいと思うんですけれども、現実に研究者の中では、したい人はある程度の数はいるんです。ですから、そこら辺の結論が出るまでの間の過渡的措置をどういうふうにするのかということは、どういうふうなお考えでいらっしゃるんでしょうか。

(岡田委員長)

  どうしたらよろしいでしょうか。

(豊島委員)

  基本線としては、ヒトES細胞のことは今までそういう形で議論したことはないんですが、クローン胚全体の問題としての議論としては、文部省でやったときには、科学技術会議のそういう機関で全体としての議論をしているので、最終的にはそれに整合性のあるように、いつでもガイドラインを変えれるようにしておきましょうという申し合わせはちゃんと書いてあります。この会があるのでと書いたかどうかは別問題として、認識としては、この会があるということをみんなの前で言いまして、後で全体として整合のある形をとるべきであるということまでは書いてあります。

  そのときに、これから先の問題として考えられることというのは、やはり個別に取り扱うという話になっていますので、例えばもしヒトES細胞をもらって研究したいという人のプロポーザルがあった場合には、これは文部省へ当然上がってくる問題だと思います。上がってきたときに、委員会が開かれて、そこで議論されなければいけない。どうするかということは、全くそこには書いてありません。だから、当然ここでの議論を踏まえた上で、そこにいろんな意見が出てくるべきであるというふうに考えていますので、ここで、それまでは扱うなと、一応ここの議論としての結論が出るまで扱うなということになれば、やはり扱うなということになると考えています。

(木勝(ぬで)島委員)

  今豊島先生がおっしゃったことの中で、一つだけ気になるところを確認したいんですが、資料合1−2の原則の3と原則の5、原則の7の中に、国がどういう関与をするべきかという言葉として、「届出、確認等の一定の関与を行う」あるいは「国の関与は、当面は確認を伴う形で行われるべき」と、確認という言葉が出てきます。これはおそらく文部省の告示の表現を拾ったのかと思いますが、ちょっとわかりにくいのです。この「確認」というのは要するに事前審査という意味ですね。事前審査と書いてしまうと、国が法律なしにそういうことをしていいのかどうかわからないから、行政としては書きにくいということなのでしょうか。もしそうであれば、ここでの議論のたたき台の中では、確認という言葉はわかりにくいので、今豊島先生がおっしゃったような事前審査というような言葉にしておいていただいて、同じ資料合1−2にある論点の一つとして、これから国の関与はどういうやり方でやっていくべきかという議論をしたうえで確定していただければいいと思います。確認というのは事前審査という意味でよろしいんですか。

(事務局)

  実質上は事前にそういうチェックを行うという形になります。

(迫田委員)

  豊島先生がおっしゃった文部省のところに必ず上がってくるというのは、必ずですか。ほかの。

(豊島委員)

  基本線としては、大学等の機関では行わないものとすると、基本になっているんです。例えばクローン人間、あのときどう書いたかな。詳しく覚えてないんですけれども、要するにクローンの誕生を予測されるようなものは行わないものとすると、原則がなっているんです。それに疑義があるときは申請しろ、そうなっています。

(迫田委員)

  それは大学にかかわるものだけですね。

(豊島委員)

  そうです。

(迫田委員)

  つまり民間の研究所とか。

(豊島委員)

  だから、会社とかそういうところは関係ないわけです。

(迫田委員)

  関係ないわけですね。あるいは一個人では関係ないわけですね。

(豊島委員)

  関係ありません。

(高久委員)

  文部省のはESじゃなくてクローンですね。

(豊島委員)

  あの時点では、クローンです。ESのことはあの時点では議論してなくて、その後でES細胞が出てきたので、ESのことに関してその後議論はしましたけれども、そのことに関しては、これは疑義がある中に入るだろうという。

(勝木委員)

  今文書が届きましたので、正確に申しますと、ヒトのクローン個体の作成をもたらすおそれのある研究に該当する可能性がある云々と書いてございまして、それは明らかにES細胞を想定しております。それに関しては審査の対象にして、機関から文部大臣に行ってという図式を豊島先生の委員会で出されております。

(位田委員)

  先ほど迫田委員のおっしゃったことと関連するんですが、文部省系統はそれでいけると思うんですけれども、問題は文部省以外の例えば企業とかその他の研究機関をどうするかという問題があると思うんですね。先ほど豊島先生がおっしゃったように、もしヒト胚性幹細胞の作成の議論をやるまでは使用も一応ストップするということ、ある意味ではモラトリアムをつくるということが、もう一、二回の委員会の議論で、少なくともその点だけでもはっきりするとすれば、その点の合意ができるとすれば、そのことだけ取り上げて何らかの形で、声明という形になるのかどうかよくわかりませんけれども、委員会の見解としてまず先に出しておくという必要があると思います。

(豊島委員)

  私としては、そのご意見に賛成です。基本的には、これは法律といってもすぐできるものじゃありませんし、いろんなことを考えたら、一番現実的な枠組みだけで、こういうことの議論が終わるまではこの枠内で考えましょうという合意が先にあって、それから後のどこをどういうふうにしていきたいという議論を進めるのが、かなり現実的だろうという気はいたしております。

(青木委員)

  先ほど豊島先生からヒトの胚性幹細胞についてはとありましたが、文部省でもこれは後で追加して、平成10年に追加して、一応委員会にかけると。つまり大学等の長の確認や文部大臣の意見を求めるものとするということを出しております。

(豊島委員)

  一つだけ、そういうことをつくった一つの、何も決めてないときにそういうものを考えているというのは、例えばどうしてもしたい人があったときには、例えば出していただいたら、この会が招集されて、ここで個別審査をして、それが倫理的にここでは許可しても構わないものであるとここで言えば、許可するという感じになり得るかなという気がいたします、今の条項でいきますと。だから、個別審査。

(岡田委員長)

  ここでですか。

(豊島委員)

  ここ、例えば。

(迫田委員)

  それは、今文部省がなさったような形で、科学技術会議として声明を出すということは可能なんですか。科学技術会議というのはそれだけの力を持っているというふうに思ってよろしいんですか。

(事務局)

  一例でございますが、拘束力という点では、既に議論されてきたことで、まさに法律がない限りにおいては、強制力というのは限界があるのですが、人クローン個体産生に関しましては、平成9年3月に科学技術会議の政策委員会において、政府資金の配分差し控えという決定を行って、それは対外的に表明してございます。これはかなり政府の意図表明としては強いものでございますし、科学技術会議の政府の資金の配分のあり方に関する範囲内でそういった議論をしてきて、外に対して表明してございます。

(岡田委員長)

  今の事務局の説明は、クローン羊が誕生したとき、大急ぎで出したものです。今豊島委員からお話のあった、ここでの討論が進捗してない状況下のところでのES細胞の研究を差しとめる側の方策をとるということなのですね。

(豊島委員)

  何もなかったら、前にここで話がありましたように、だれかがES細胞をくれといって、それで実験するのに、何の規制もないし、本人の倫理観だけの問題になるわけですね。それで仕方がないと言えば、仕方がないんですが、やはりここで、先ほどからの、一番初めの木勝(ぬで)島委員からのお話なんかも入れて、やはり勝手にやられるということは非常に困るという考え方があるんだったら、何らかの形で網をかけておくというのは必要じゃないかなという気がいたします。

(岡田委員長)

  そうすると、現実的な問題に目を向けた場合には、今豊島委員のおっしゃった問題点が緊急に存在していると。それに対して、ES細胞に限って、それをハンドリングするところで、ある幅のものというのはいいのではないかとか、ここはいけないとかの判断を、ヒト胚研究小委員会で早急にしておく必要があるという提案になるでしょうか。

(豊島委員)

  それは実は次の問題になるわけです。こういう形で規制するのがいいんじゃなかろうかという、もし提案ができた場合には、それをもとにして、科学技術会議なり総合科学技術会議なりで委員会をつくられて、法律なら法律、ガイドラインならガイドラインを検討する委員会ができて、動き始めると思うんですね。それが動くまでの間何もするな、それが決まるまでの間何もしてはいけないというのは、かなりある意味では厳しいですし、それから例えば今のヒトES細胞をつくっていいかどうかの議論なんて、そんなに簡単にすっと結論が出るとは思いにくいようなところもあるんです。そういう場合に、全面禁止というのもちょっと大変だと思いますし、完全にフリーというのも大変だと思うんですね。その場合に、一番現実的な問題としては、ここで、例えばそういう網かけだけしておいて、基本線としてはこういうことで、委員会で検討してくださいという、次の問題を次の委員会にお渡しするという手があるんじゃないかと。

(迫田委員)

  現実的な問題として、ここでこういうふうに議論をしているということを伝えることも含めて、科学技術会議として今早急に議論をしているので、研究はしばらく待ってほしいというか、多分そういうようなことを表明すべきではないかというふうにおっしゃっているんだと私は理解しましたが、内容の細かいことではなくて。

(豊島委員)

  待ってくれとだけじゃないんです。待ってほしいというのは基本です。そこで、先ほどから位田委員もおっしゃっていたように、研究の自由というのもありますし、プロポーズして、ほんとうにやりたい、それはこういうふうに倫理にもとらないんだ、それで、相手のオーケーも得られるとかいうふうなプロポーザルというのは全くあり得ないとしてしまうと、ちょっと厳し過ぎるんじゃないか。だから、そこのところを正当に主張される方は正当に主張できる場を残しておきたい、そういう意味です。

(迫田委員)

  わかりました。

(岡田委員長)

  どうもありがとうございました。

(相澤委員)

  今の豊島先生のような形で当面処理するとして、しかし、やはりこの会がなるべく早急に結論を出す義務を持っているということを踏まえて、なるべく一番核心の議論から議論を進めていただきますように、お願い申し上げます。

(岡田委員長)

  どうも結論が出たような感じです。時間がまいりましたが、人クローン個体の法規制という問題に関してはそういう形で、ほかの意見も含めて、生命倫理委員会の方にまとめとして報告させていただきます。よろしゅうございますね。

  ヒト胚に関しては、最後のほうではっきりした方向性というか、作業のやり方が出てまいりましたので、こういう形でヒト胚の議論を進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

  本日は長い間、ありがとうございました。