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第4回科学技術会議ヒト胚研究小委員会議事録

  

1.日  時    平成11年6月11日(金)10:00〜12:00 2.場  所    科学技術庁第8会議室(通商産業省別館9階) 3.出席者

  (委  員) 岡田委員長、相沢委員、石井委員、位田委員、勝木委員、迫田委員、

               高久委員、豊島委員、西川委員、町野委員、村上委員

  (事務局)科学技術庁研究開発局長  他

4.議  題

  (1)規制の枠組みについて

  (2)ヒト胚性幹細胞を取り扱う研究について

  (3)その他

5.配付資料

  資料4−1  人胚等の規制範囲マップ

  資料4−2  ヒト胚性幹細胞を取り扱う研究計画の審査制度について(案)

  資料4−3  ヒト胚性幹細胞の使用のみを行う場合の考え方について(案)

  資料4−4  ヒト胚性幹細胞の作成を行う場合の考え方について(案)

  資料4−5  第3回ヒト胚研究小委員会議事録

6.議事

(岡田委員長)

  それでは、定刻になりましたので、まだ相沢委員がお見えになっていませんが、始めさせていただきたいと思います。     

  それでは、ただいまから第4回科学技術会議ヒト胚研究小委員会を開催いたします。本日は、ほんとうにお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。

  それでは、まず、事務局のほうから配布資料の確認をお願いいたします。

                              (配布資料の確認)

(岡田委員長)

  皆さん、よろしゅうございますでしょうか。     

  なお、議事録の訂正等がございましたら、後ほど事務局のほうにお伝えくださいますようにお願いいたします。

  それでは、議事に入らせていただきます。

  前回の小委員会におきまして、今後の議論の進め方につきましてご議論をいただきました。まず、外国でつくられたES細胞を使用する基準から議論をいたしまして、順次、ES細胞を作成する基準、必要な範囲でヒト胚の取り扱いの原則などを検討していくということで議論されることになったと思います。ES細胞の使用にしましても、作成にしましても、結局はその背景となるヒトの胚の扱いに、若干踏み込まねばならないということもありまして、事務局とも相談いたしまして、より全般的な視点から基準の対象とか、研究計画の審査方法につきまして、幾つか議論のたたき台となる資料を準備しております。それにつきまして、事務局のほうから説明をしていただきます。

(事務局)

  それでは、資料4−1とまず2をもとにご説明させていただきたいと思います。     

  前回の委員会におきまして、議論の進め方といたしまして、ただいま委員長からお話がありましたように、まずES細胞から入っていって、必要な範囲でヒト胚についても考えていくということとなったわけでございますが、前回の委員会でも大分議論がございましたように、まずES細胞の使用を考えるということにいたしましても、そのES細胞が作成されてきた作成の履歴を考えざるを得ないし、作成の履歴を考えるということになると、そこにどういう材料が使われてES細胞がつくられてきたかという、そういうところまでどうしても立ち入らざるを得ないということであったと思います。

  そこで、今回、資料4−1では、そういったいろいろな材料が考えられるのを、全体を対象として網羅いたしまして考えていくというための資料を用意してみました。この資料4−1の箱の上に対象という欄がございますが、ここが今回考える対象である細胞ないし胚ないし個体を、ずっと掲げてございます。

  対象といたしまして、まずヒトの胚がございますけれども、このヒトの胚は、幾つか属性によって分けられると申しましょうか、つくられ方によって分けられます。1つは、いわゆる余剰胚、余剰という言葉を問題にされる方があるかもしれませんが、本来、体外授精でつくられて生殖用にとっておかれた胚が、両親のご意思等でもう使われないという状況になったものがあります。それから、新たに研究用に作成される胚というのがある。また、いわゆる受精によって得られる胚以外にも、クローン技術によって得られる胚があります。

  また、胚のもとになります生殖系の細胞がございます。ES細胞をつくる1つの方法として、始原生殖細胞からES細胞をとってくるというのがございましたが、始原生殖細胞、さらには、それが1Nの状態になりまして、精子、卵子の状態になった細胞がある。そのほかに、これは横並びが少し変かもしれませんが、胚としては、キメラ胚やハイブリッド胚があるということでございます。またさらに、そういった胚が育っていくと、最後には個体になるということで、これは主にクローン小委員会のほうで議論されておりますけれども、クローン個体やキメラ・ハイブリッド個体というのが考えられるということで、対象として包括的にとらえてみようというのがこの横の欄でございます。

  この中で、特に胚や細胞と個体につきましては、クローン小委員会のほうでも議論をされておりますが、胚と細胞と個体というものは、かなり質的にも違ったものとして考えることができるのではないかというご議論もございます。また共通する側面ももちろん持っているわけでございますが、ここでは、規制するとすると、個体のほうが程度が強い規制が必要ではないか、胚や細胞につきましては、それよりは強弱としては、より弱い規制でいいのではないかということで考えて、胚のところについては、基本的にはガイドライン規制、個体については、法律またはガイドライン規制というふうに書いてございます。この個体のところの議論につきましては、現在クローン小委員会のほうで議論がされているところでございます。

  またそのほかに、左のほうの縦の欄にフェーズというのがございます。これは、胚の扱い方を考えてまいりますと、いわゆる研究のフェーズと、それが実際の医療に使われるフェーズ、さらには商業利用になっていくケース、そういったフェーズが考えられると思います。

  このうち、特に実際の実医療、あるいは商業利用といった段階になりますと、科学技術政策という側面のみでなく、医療政策、さらには産業政策といった側面が、非常に色濃くなってくるということになると思います。したがいまして、この科学技術会議のこの委員会におかれまして、どこまでここで議論をしていただくかということを考えるときに、将来の実医療ないし商業利用ももちろん視野には入れつつも、研究段階を主に視点に入れていただいて検討をしていただいてはどうかなということで考えて、こういう資料をつくってございます。

  研究のところにつきましては、ただし、その全体をとらえてヒトの胚、あるいは生殖系細胞等々を全体の視野に入れて、1つの考え方でとらえていくということを考えてはいかがかということでございます。ちょっと見にくい表になってございますが、そういう考え方に立ってこの表をつくってございます。

  ただし、この中には、中にも書いてございますけれども、既存の産科婦人科学会等の会告による規制が既に存在している部分もございます。したがいまして、そういった部分について、さらにそういった学会関係者を巻き込んだ議論が今後必要になるだろうと思います。

  そうではありながらも、包括的に全体をとらえて、その中で具体的にまずES細胞を使用する場合、さらにES細胞を作成する場合について、考え方を具体的に詰めていってみてはいかがかということでございます。

  このES細胞の使用につきましては、研究の欄の下のほうに、横に長く書いてございます。ES細胞を使用する場合には、その作成の由来がいかがであったかということがどうしてもついてくるということで、それを考えますと、余剰胚のところにも、新たに作成された胚からも、クローン胚からも、始原生殖細胞からも出てくるということでございます。途中でキメラ・ハイブリッド胚の下のところに、やはりES細胞の使用というのが箱の中に入ってございますが、これは由来というよりも、ES細胞を使用してキメラをつくったりするという、そういった意味合いがございますので、ここではちょっとほかの部分とは違う意味合いがございますけれども、同じくES細胞の使用の枠としてカバーしております。

  またその上に、ES細胞の作成というのがございます。これにつきましては、ヒトの胚と生殖系細胞のところ、すなわち始原生殖細胞からのところがその枠に入っているというものであります。

  また、クローン小委員会のほうで議論しておりますクローン胚につきましては、そういったクローン胚からES細胞をつくるということもあるし、それをさらに使用するということもあるし、あるいはES細胞と無関係に何らかの研究をするということもあるので、縦に四角くコンセプト上は囲っております。

  こういった全体像をとらえた上で、今後、どういうふうに考えていくかということでございますが、研究の細胞ないし胚の研究の段階につきましては、1つの統一した考え方のもとに、研究計画の審査制度を考えてみるというのが1つの考え方であろうと思います。資料4−2にその考え方を少し整理しております。こういった研究計画の審査を考えますときに考慮すべき原則について、ここに幾つか書いてございます。

  ここでは、まず、ヒト胚性幹細胞を作成使用する研究については、国が作成した基準に適合するもののみ認めることとするということでございますが、先ほどの図で申しますと、ヒト胚、あるいは生殖系細胞の研究の大きな四角の中のうち、国がある考え方を示していって、その考え方に合致する部分については、研究計画の審査を具体的に行っていく。考え方がまだ示せない部分については、研究計画が出てきても、それについては待っていただくということで、基準が示せるところから順次審査を可能な状況にしていって、その基準に合致したところは、研究計画の実施を認めていく、そういったステップ・バイ・ステップでだんだんと大きな箱の中に順次基準が示され、その中で個別の計画が認められていくという、そういった形が考えられるのではないかということであります。

  その際、審査につきましては、これは既に文部省や厚生省でやられております遺伝子治療の審査形式、あるいは既に文部省の告示でされるクローン研究の審査形式でございますけれども、2段階審査を想定した資料としております。まず研究機関の長が審査をする、その際、その研究機関の中の審査委員会においてきちっと議論をした上で、研究機関の長が承認するということでございますが、全体として国がまず最初に、研究計画の承認の基準をコンセプトとして示すということがございますので、そのコンセプト、基準への適合性について、研究機関の長が国への確認を求めるというようなステップが考えられると思います。

  国のほうにおきましても、しかるべき審査委員会を設置して、その意見を聞いた上でその確認をするということであります。もちろんだんだんといろんな経験が蓄積され、研究計画の実例が積み重なっていきますれば、この中のある部分につきましては、簡素化されていくということが可能かとは思いますけれども、当初につきましては、個別の1ケースごとに審査をする、最初はこういったシステムで考えてはいかがかないうことでございます。

  それでは、具体的に、まずヒト胚性幹細胞の使用のみを行う場合から議論してはいかがかということが、前回の小委員会での議論だったかと思います。もし委員長、お許しいただければ、資料4−3、資料4−4についても、続けてご説明させていただいてもよろしゅうございましょうか。

(岡田委員長)

  では、そのほうが都合がよろしければ、そうしてください。

(事務局)

  それでは、資料4−3でございます。これは、前回、特にアメリカのベンチャー企業、特にジェローン社という名前が出ておりましたけれども、ベンチャー企業は既にこのヒト胚性幹細胞を作成し、それを供給する体制に入っているということがございまして、国内で仮に作成されなくても、そういったところから入手をして直ちに使うことが、すぐにでも起こるかもしれないというご議論がございました。したがいまして、この使用のみを行う場合の考え方というのをまず整理したものでございます。      

  これにつきましても、幾つか考えられる論点がございます。

  1つは、使用のみを行う場合と申しましても、そういった胚性幹細胞の由来について、無頓着ではいらないだろうということであります。ある一定の定められた適切な基準に従って作成されたものについては、使用を認めていいのではないかということでございます。

  それでは、定められた基準というのは一体何かということですが、そこは、今度は資料4−4の作成を行う場合の考え方に若干影響してくるわけでございますが、例えばヒト胚性幹細胞をつくるもととなった材料は適切な材料であったか、あるいはその材料を提供していただいた方々に対して、適切なインフォームド・コンセントがなされているか等々の基準が考えられると思います。

  そういった由来について、まず1つ論点がございますのと、もう一つは、その使われ道、利用目的についての議論があり得ると思います。当然、科学的、医学的価値の高い研究利用のみを認めるということが考えられると思います。先ほど大きなマップで出てまいりましたとおり、実際の商業利用等々については、研究の進捗状況等を踏まえてさらに検討するということであると思います。

  ただ、この科学的、医学的価値の高い研究利用と申しましても、その中には、動物のES細胞を使えば十分それができるというような場合もあると思いますので、そういったヒトES細胞を用いる必然性があって、科学的、医学的知見を得るための方法として、合理性がある場合というのが一つポイントになるのではないかという考え方で書いてございます。

  そういったことを考えてまいりますと、論点3になりますけれども、具体的にどういった形でこのES細胞の研究が行われるのかということが、類型として議論しておくべきことではないかということで、論点3に掲げてございます。ES細胞の使われ方につきましては、全部で4つ、1)から4)まで書いてございます。1)から3)までが、ES細胞を細胞や胚の段階で使用する形態のもの、4)が個体にまでする形態のもので分けてございます。

  まず1)でございますが、このES細胞はキメラ等々をつくることによって、新たな胚を生み出すということがおそらく可能だと思いますが、この1)は、そういった新たなヒト胚を生み出さないような形態での使用でございます。これは、ES細胞を培養系で育てていって、ある一定の分化をさせていく。そのときに、その分化のメカニズムを研究したり、あるいはどういう細胞をどういう状況になったらなるのかといった研究をしたり、あるいはさらに、そこから移植用の組織や臓器を胚性幹細胞から作成するといったような研究が考えられますし、外国の論文を読んでおりますと、薬剤等の評価研究につきましても、ES細胞は非常に有用だというようなことも言われていると思います。さらにそういった中には、遺伝子組換えを伴う場合も研究として考えられると思います。そういったケースについて、議論をしていくということが必要であろうと思います。

  それから2)は、このヒト胚性幹細胞を使用いたしまして、新たなヒトの胚を生み出すような研究でございます。この3)も同じでございますが、2)は、ヒトとヒトのキメラの胚をつくるような研究、3)は、ヒトと動物のキメラの胚を生み出すような研究でございます。4)は、さらにそれらの胚を育てていきますと、理論的には個体が生み出てくるかもしれないということでございます。理念的にはこの4つのパターンが考えられるわけでございますが、前からご議論いただいておりますように、4)につきましては、こういうのはあまり有用な研究とは考えられないのではないかということで、スペース的には非常に小さく書いてございますし、2)と3)についても、キメラということでございますので、相当難点があるというような議論がなされてきたと思いますが、そこについても、議論が必要と思います。

  さらに論点4以下は、研究環境につきまして、安全性等が十分確認されているかというような確認、あるいは情報が十分公開されるということは、一体どのようにしたらいいのかということ、あるいは論点6といたしましては、この胚性幹細胞の材料なりを提供された方のプライバシーの保護というのは、どういうふうに適切に保護されるのかというような論点があると思います。

  また全体として、基準につきましては見直すということでございますけれども、最近の非常に早い研究の進歩を考えてみても、3年程度ということをとりあえずここでは入れてございます。そこについても、もちろんこれは事務局のところのほうで用意したもののみてございますので、ご議論をぜひお願いしたいと思います。この使用のみを行う場合というのを、今考えてきたわけでございますけれども、論点のまず冒頭に、どういった由来からこのES細胞が出てきたのかということを考えざるを得ないということを掲げてございますが、そこを考えますと、今度は資料4−4でございますけれども、作成を行う場合の考え方についてということも、やはり考えざるを得ないということであろうと思います。

  この胚性幹細胞は、現在、方法として3種類の方法でつくられているというふうに聞いております。

  まず第1の方法が、ヒトの死亡胎児から始原生殖細胞を採取して、それを使って胚性幹細胞をつくった。すなわちいわゆるEG細胞と呼ばれるものかと思いますが、そういう場合が報告されております。これは、前回、武田委員からもご説明がありましたので、詳細は省略いたしますが、既に死亡胎児の組織を研究に用いることの是非や許容範囲については、産科婦人科学会の会告が出ておりまして、そこに書いてありますような死体解剖保存法の定めに従う、あるいはそれ以外に研究の方法がない、研究成果が極めて大きい等々の条件を前提として許容してございます。ただし、今の段階で臨床理論については見解がないということでございました。

  この死亡体組織の研究利用につきましては、こういった見解を踏まえて、既にある一定の研究は行われているということであろうかと思います。また前回、やはり武田先生から、国際社会においても、一定条件のもとでこういった研究が行われているという御説明がありました。一定条件としては、生命科学、医療技術の向上が大きく期待されるといったようなことになっていると思います。

  ここではご議論をいただくために、ある1つの考え方を論点を明確にするという意味で出しておりますけれども、このES細胞を死亡胎児組織から作成するということは、適切なルールに従って行う。例えば中絶の決定が、研究利用の決定と完全に独立して行われて、いささかでも強制的にならないことなどといったルールをきちっと整備していって、そういった条件に合致した場合には許容し得るという考え方がございます。ここでは、そういった考え方を論点のために出してございまして、ここでこうすべきだとか、こうすべきでないということを書いているわけではございませんが、そういった考え方についてご議論をお願いできればと考えております。

  それから、2つ目の方法といたしまして、ヒトの胚から胚盤胞時期に内部細胞かいを取り出してES細胞をつくるという方法がございます。これにつきましても、前回、武田委員からお話ありましたように、現在の産科婦人科学会の会告で、ヒトの胚の研究利用については、ある一定条件で認めているという会告が出ておりまして、そこでは、生殖医学発展のための基礎的研究、あるいは不妊症の診断治療の進歩に貢献する研究、そういった研究を許容しておりまして、提供者の承諾やプライバシー保護が適切に行われ、受精後2週間以内の使用に限る、あるいは原則として医師による取り扱いを行うこと等々を前提といたしまして認めてございます。

  このヒト胚につきましては、もちろんヒトの生命の萌芽という性質を持つということで、動物の胚や通常の体細胞とは異なる意味合いを持っているということで、可能な限り慎重に取り扱わなければいけないというのは当然でございますけれども、一方で、この胚を使用することによりまして、さまざまな医療技術の向上を図れるという視点、あるいは生命科学の向上が図られるという視点において、有用性が認められる場合もあるということで、この2つの立場を十分考慮して検討していく必要があるということであると思います。

  したがって、ここでは、先ほどと同様でございますけれども、適切なルールに従って行われることを満たすことを前提といたしまして、研究利用を許容し得るという考え方、こういう考え方を1つの論点として提示いたしまして、これについてご議論をいただければと考えてございます。適切なルールといたしましては、先ほど産科婦人科学会の会告の中で出てきた考え方等々が参考になると思います。但し、今回、ES細胞の使用先を考えてみますと、現在のヒトの胚の研究使用の目的としては、先ほど出てまいりました生殖医学発展のための基礎的研究、ないし不妊症の診断治療研究ということに限定されておりますけれども、もしかしたら、もう少しES細胞というのは、広い意味合いが使用先として考えられるのではないかということで、ここでは、例えばヒトの発生分化研究の解明を目的とした生命科学の基礎的研究や、新しい治療法、これは移植医療法や再生医療法といったものが考えられておりますけれども、そういった新しい治療法を開発していく。あるいは先ほど医薬品の評価ということが出ておりましたけれども、医薬品開発のための研究といったようなところについては、ES細胞の有用性という視点から見ると、新たな使用の目的ということで考えることができるのではないかということで、ここにつきましてもご議論をお願いできればと考えております。

  それから、ヒトの胚がどのようにして由来してきたか、どのような由来のヒト胚からES細胞を作成するのかということを考えました場合に、先ほど全体のマップでも出てまいりましたけれども、1つには、不妊治療の余剰胚を用いる場合、2つ目が、新たに体外受精により作成された研究用の胚をつくって使用する場合、3つ目が、人のクローン胚を作成して、それから作成する場合が考えられます。

  不妊治療の余剰胚に関しましては、もともとは生殖目的で作成されたものが、両親の同意を得て研究目的で使用されることになったものということで、凍結保存されてはおりますものの、一定年限がたちますと、やはり廃棄されていくものということでございますので、提供者の承諾等々の適切なルールに従うことを条件に、使用を許容し得るとする考え方がございます。こういう考え方について、ご議論をお願いできればと考えております。

  2つ目といたしまして、新たにこのために体外受精により胚を作成し、それを使用する場合がございますが、先ほどの余剰胚というのは、本来は生殖という目的があってつくられたものが、種々の事情により、あるいは合法的にやむを得ず廃棄されることになるというものでございますが、そういうやむを得ない事情によってそうなるものと、新たにある意味で最初からES細胞をとるという目的だけのために、ヒトの胚を作成するというのは、やはり質的に若干異なるという考え方もございます。すなわち余剰胚を使用した研究よりは、より慎重にこういったケースについては判断する必要があるのではないかという考え方でございます。

  現在、産科婦人科学会の会告では、概念上は、この余剰胚も、新たに作成された胚についても、含んで記述していると思われますけれども、具体的なそれに関する見解が示されたことはないようでございます。しかしながら、余剰胚を使用することで、十分な研究が可能であるのであれば、新たなヒト胚をこのためにつくるという必然性は認められないので、それを研究に使用することは認められないという考え方がございます。これにつきましてもご議論いただければと考えております。

  それから、3番目に、これは先ほどつくり方の3番目といたしまして、動物の未受精卵にヒトの体細胞核を入れて、ある意味で動物、人がまじったようなクローンをつくりまして、そこからさらに胚を作成し、ES細胞をとるというケースが報告されているようでございますけれども、このクローン胚につきまして、したがって、ES細胞の作成する1つの作成経路になり得るということで掲げてございます。ここにつきましては、現在クローン小委員会で議論されていますが、当然ながら、ヒトの胚ということでございますので、新たにヒトの胚をつくるという意味では、先ほどの点と同じである上に、さらにクローンにつきましては、人間が個として尊重されるという存在であるということで、そのクローン胚としての観点も考慮に入れていく必要があると思います。

  その次に、以下クローン小委員会の議論を踏まえるというふうに書いてございますが、現在、このクローン小委員会では、人クローン胚の作成を伴う研究は、発生学との基礎研究の向上や医療の向上に貢献する可能性があることも否定できないということで、かつクローン胚の作成は、固定の産生ほど重大な弊害をもたらさないというふうにも考えられるということで、研究・医療の向上のため、それを行うことに非常に正当な理由があるという場合には、一定限度で許容し得るのではないかという考え方が、まだ途中段階でございますけれども、ございます。これにつきましては、さらにクローン小委員会のほうでも議論されることになってございますが、そういった考え方についても、議論をしていただきたいと考えております。

  それから、論点2といたしましては、そういった材料を提供する方に対して、どのようなインフォームド・コンセントをすることが適切であるのかということでございます。このインフォームド・コンセント自体は、必ず必要だと考えますけれども、どういった形で具体的にインフォームド・コンセントを行っていくのかということについて、議論をしておく必要があると考えまして、論点として掲げてございます。提供者の自由な意思に基づいて、このES細胞をつくる、あるいはそれをさらに研究使用するといったことについて同意が得られている。あるいは非常に先端研究ですので、ES細胞って一体何だろうというようなことが、なかなかわかりにくい可能性がありますので、そういった十分な知識に基づいて、同意を得ていただくということはどうやっていったらいいんだろうかとか、あるいは中絶あるいは体外受精治療の終了の意思決定と研究への提供の意思決定というものが連動しておりますと、そのために最初の決定がゆがめられるということがあると思いますので、その辺の独立性をいかに確保するのかといったようなことも、論点としてあると思います。

  また、論点3といたしまして、作成を行う者は、やはりヒトの胚、あるいは死亡胎児を取り扱うということで、原則、医師ないし医師の監督を受けた研究者のみという考え方がございます。こういった考え方についても、ご検討いただければと考えております。

  最後に、研究段階といえども、ある意味で流通性が出てくる可能性がございますので、そういった死亡胎児組織、あるいは余剰胚等の提供は無償という考え方にすべきではないかということがございます。これについても、論点としてその是非についてご議論をお願いしたいと思っております。

  あと論点5以下は、先ほど使用の段階で出てきた論点と共通でございます。

  以上、非常に雑駁なところもあるとは思いますけれども、一応論点として議論されてきたことを整理させていただきました。以上でございます。

(岡田委員長)

  どうもご苦労さまでした。長いことお話しいただきました。     

  資料4−1のところで、この委員会での検討すべきテリトリーの幅を図示していただいてておりまして、これは相当はっきりしたものになっているように思いますが、まずは、これに関しては、こういう形で委員会としての方向性を持っていくということでよろしゅうございますでしょうね。

(石井委員)

  前回欠席いたしましたので、確認のために質問させていただきたいのですが、第1点は、新聞情報で確かかどうかわからないのですけれども、厚生省の厚生科学審議会でも、ES細胞について高久先生を長として、検討をするというような記事を見たのですが、そういうものがあるのか、それと本委員会の関係がどうなるのかということでございます。      

  第2点目は、この枠組みで、本委員会で考えるのはガイドラインということを示しているのでしょうか。そうとして、初めから法律は枠外という形でよいのかどうかということです。法律が必要だということを言うつもりはないのですけれども。それと関連いたしまして、ガイドラインというものが、どういう形で遵守されるということを前提にして、ガイドラインをつくろうとするのか。違反があった場合に、それに対する制裁とかそういうことの可能性をどう考えているのかということが2点目です。

  ガイドラインという意味では、日本産科婦人科学会の会告は、それに違反した行為が出てしまって、それについて除名はしたのですけれども、違法行為を行わせないという形では機能しないものになっているということでございます。第3点はその産科婦人科学会会告のことです。参考として何回か言及されました。参考ですから、それをもとにするということではないと思いますけれども、産婦人科学会の会告は、学会の閉ざされたところで決められたものであって、ここで議論するときに、それを前提にはできないのではないかということ以上でございます。

(岡田委員長)

  最初のところは高久先生がつくったものですね。

(高久委員)

  そういうことを決めたわけではありません。厚生省の委員会で議論するとすれば、この資料4−1の一番下にあります臨床応用の場合になると思います。それまでは、この委員会の動きを見ていくのだと私は思っています。      

  それから、ガイドライン違反への罰則については研究ですから、おそらくガイドラインに従わない研究に対しては、研究費が出ないという形で行われると思います。文部省の場合、ガイドラインができたならば、このガイドラインに従わない研究は、科研費の審査の段階で認められません。厚生省の研究費でも、おそらく科技庁の研究費でも、そういう形の規制が行われるものと理解しています。

(岡田委員長)

  ありがとうございました。     

  そういうことで、まずは1つのマップですね。この中でそういう格好の組み上げとして、これは理解していただいてよろしいですか、厚生省とか何かのですね。

  上のほうは、利用というよりも研究側の問題点としてのいろいろなことをどう処理していくかという問題点はここであるということで理解して良いですね。

(石井委員)

  ここではまず研究について検討をする。ここは研究について検討する場だからそうするのか。とりあえずは臨床応用は認めないという前提のもとに、まず研究についてだけは認めるということで、それを今ここで考えるのかは、かなり違うと思いますけれども、その点はいかがなのでしょうか。

(岡田委員長)

  この小委員会は、生命倫理委員会の作業部会ですので、今のご質問のベースにあることも原則的には含めることになると思います。

(事務局)

  ただいまのフェーズ分けのところの研究と実医療、あるいは商業利用のところでございますけれども、私ども、基本的には、この科学技術会議のこの場におきまして、どういう視点から議論するかということを考えますときに、主として、科学技術政策という議論があると思います。臨床医療ないし商業利用につきましては、冒頭申しましたように、そこは科学技術政策のみでなく医療政策、あるいは産業政策といった別の視点が、相当色濃く反映されるべき領域だというふうに思います。      

  したがいまして、科学技術会議のこの場といたしまして、この研究段階について議論をお願いしたいということであります。ただし、研究フェーズでありましても、そこでの議論は、かなりコモンな原則に及ぶことが当然考えられると思います。ヒトの胚は一体どういうふうに扱うべきなのかということは、いろいろな面に共通的な原則を考えることになるという意味で、ここで議論していただいた成果が、そういった医療政策を含む全体的な視野での議論に反映されていくということを、当然期待しておりますし、そういう意味で、厚生省ともよく議論をしながら、将来、全体像として一番下までを含めた、整合的な体系ができますようにしていきたいということであると考えています。

  それから、ガイドラインの効力という点がございました。高久先生がおっしゃいましたように、ガイドラインに沿わなければ、もちろん国の研究費は配分しないということは当然でありますけれども、そもそもこのガイドラインに沿わなければ、新しい研究費の配分をしないというにとどまらず、そもそも、人頭研究費等で行われる研究についても、そういったものは行わないということになると思います。

  しかしながら一方で、法律とは違いますから、いわゆる強制力、違反した場合に何か処罰をするという、実際の不利益処分を行うことはできないと思います。ここは、前回までのこの委員会でも、あるいはクローン小委員会のほうでも大分議論されてきている点でございまして、こういった先端研究分野のようなところを、法律で規制を行うべきなのか、ガイドラインで行うべきなのかということ自体が、ここで議論されている事項でございます。

  ここでは、論点のマップとして整理いたしましたものですので、既にこれで決めたとそういうものではございません。この資料を参考に議論をしていただきたいというものですので、その点についての議論を排除しているわけではございません。

(村上委員)

  石井先生がおっしゃったことで、まだリスポンスがない問題が1つあって、それは産科婦人科学会のガイドラインが、我々の物を考えるときの前提になってしまっていいのかというご意見、あるいはご質問だったと思うんです。そのことは、このマップを書いていただいたので、非常にすっきりしてよくわかるようになりましたし、私たちの委員会の差し当たっての役割が、黒い線で囲われている中であるという、とりあえずそこに限定して話をしていこうということもよくわかるわけです。      

  ただ、上に書いてある対象と書かれている部分について、それらをどのように考えるかという本質的な問題は、おそらくここで議論をしていると、非常に長くかかるだろうし、ES細胞を差し当たって問題にしようとしている我々の目的から言えば大変だとは思うんですね。ですけれども、ここで出てくるさまざまな議論の集約が、最終的には国のこういう問題についての基本的な考え方として、それがガイドラインなのか、例えばドイツにおけるヒト胚法になるのか何かよくわかりませんけれども、産科婦人科学会という1職能団体が、自分たちで決めていることであるのではなくて、日本の国家なり社会なりとして、こういう考え方のもとでこういうものを扱うんですよということに、最終的にインテグレートされていくような可能性というものだけは、残しておきたいというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。

(事務局)

  産科婦人科学会で、実際に規制が行われている状況がございますので、ここでご紹介させて戴いているわけですけれども、国レベルの議論が行われるのは、ある意味で初めてのことでございますので、そこでは質的に違った議論があることは当然と思います。      

  武田先生も、きょうご欠席ではございますけれども、おられますので、ここでの議論が、国のレベルで行われる初めての議論だとすると、それをよく産科婦人科学会の考え方とも議論していく必要は、当然あるだろうと思います。そういった意味で、武田先生も入っていただいておりますので、その辺の議論を、そちらは前提で動かないということではなくて、よく議論をするべき内容だということで、議論を進めていただければと考えております。

(位田委員)

  私は、この小委員会に初めて出席させていただきます。最初の3回欠席しておりましたので、もう既に議論されてしまったことをご質問するかもしれませんが、このマップそのものは非常によくわかるんですけれども、研究(含む臨床医療研究)と、それから、臨床医療、商業利用というのが、こんなにきれいに線を引けるものであるのかどうか。特に臨床医療研究というのは、まさに臨床医療にまたがる部分ですので、先ほど一方は科学技術政策に関連し、他方は医療政策というふうに申されましたが、概念的には確かにそうなんですけれども、しかし、現実の研究及び臨床医療の進み方を考えてみると、当然、ヒト胚に関する研究は、どこかで臨床研究がされる。そうすると、臨床研究そのものは、ほんとうに研究の範囲にとどまると考えていいのか、やはり臨床医療のほうに当然足を突っ込んでいるというふうに考えていいのか。確かにこの委員会そのものは、科学技術会議のほうの委員会ですので、研究に限定せざるを得ないとは思うのですが、ここまではっきり引けるものかどうかというのが1つお教えいただきたいと思います。      

  それから、2つ目に、先ほど石井委員がおっしゃったように、ガイドライン規制というのが最初に黒枠のところの頭に書いてあるのですけれども、こういうふうに書かれると、やはりガイドラインに決まってしまったように見えます。今までの委員会の議事録を読ませていただいた限りでは、そこまではまだ決まっていないと思いますから、どういう形で規制するのかということについても、まだオープンであるということを、最初にご確認いただければと思います。

  それから、3つ目に、産科婦人科学会の会告の件については、私は単なる例に過ぎないという理解をしておりますので、これをもとにして議論をするというのではないとは思っております。ただ、何もないままで議論をするのは大変でしょうから、1つの例としては取り扱えるんだろうと考えております。

  ただ、産科婦人科学会というのは、一定の領域に限定づけられた学会だろうと思いますので、それに対してここで議論をするヒト胚というのは、もう少し一般にES細胞の研究全般だとすると、研究に携わる者を医師に限定するかどうかという問題とも関連するんですけれども、医師と関係ないところでES細胞の研究がなされるということについては、やはり産科婦人科学会には関係がなくなる部分がある。これについては、そういう性格が非常に強いと思いますので、その辺のご確認をいただければというふうに思います。

  それから、4つ目に、やはり規制をするという場合には、許容する部分と禁止する部分、2つに当然分かれると思いますから、許容する部分については構わないんですけれども、禁止する部分については、どの程度の、こういう言い方をすると、ちょっと問題かもしれませんが、「覚悟」を持って禁止するのか。それは絶対に禁止するというつもりなのか、できれば禁止したい。でも、やってしまったらしようがないという程度の規制にとどまるのかということがやはり問題かと思います。これは、ガイドラインにするにしろ、法規制にするにしろ、規制の実効性にかかわる問題だと思いますので、もしほんとうに禁止するのであれば、最終的には法律しかないと思います。法律は最初から規制する道具ではありません。最終的に何らかの形で違反が出た場合に、その実効性を担保するということですから、最初から研究者に対して不信感を抱いているとかそういうことでは全くありませんけれども、ただ、仮に日本の人たちは、ガイドラインで守るとしても、たまたま守らない人が出た場合にどうするかという、そこの一番最後のところを考えて、ガイドラインにしろ法にしろ、規制を考えるということを最初に確認していただかないと、ちょっとこのままのガイドライン規制ということだけが出ているのは、私としてもこのマップについては、若干承諾しかねるところがあるんですけれども。

(岡田委員長)

  もう既に資料4−4とか資料4−3のところまでも言及されたことになろうかと思いますが、まずは、マップ自体としては、全体としての枠組みがはっきりしているということで、ご質問したわけですが、これはよろしいようですね。      

  問題点として、今、お2人の方から出たのは、ガイドライン規制がどうかということです。ガイドラインで決めてあるのかということですが、これを進めていくことを、1つの前提として考えると、それに関しては、審査という形を通してできるものをやっていくというのが、1つの形であろうということで出したものです。全体がガイドライン規制してということであって、法律規制ではないというような形の流れというよりは、むしろこれは進めていくための1つの道筋として存在している、審査の方法論としてこういうものがあるということで、まずは理解しておいていいのではないかと思います。

(豊島委員)

  先ほどからの議論の中で幾つか出てきたんですけれども、1つは、文部省サイドの規制というのは、ガイドライン規制をとりあえずしたわけですね。なぜしたかということは、少なくともここに書いてあるようなことはすぐできるような立場の人たちが非常に多いし、そういう場であってとりあえず規制をしておこうという形で、ガイドライン規制を出したわけです。そのときに規制しているのは、クローン個体をつくることと、それからもう一つは、受精卵に核移植をするという、この2つが規制されているわけですね。そのほか疑義あるものは、中央へ持ってきて議論をする、そういう形の規制になっている。      

  先ほどおっしゃった厚生省での議論というのは、クローンのことを議論しなきゃいけないという話でスタートしたわけですが、このことを独立で議論するというのはなじまない。これは例えばどういうことかというと、生殖医療全体を少なくとも見た上での議論の中に、これはその一部としてどういう形の議論になるかということまで含めて議論しないと、これだけ独立で規制とか法律とかいうことはなじまないだろうという話になって、議論されたあげく、基本的にはいろんなヒアリングをやったあげく、コンセンサスはないということなんですよね。

(高久委員)

  ESに関しては、将来臨床的な応用が可能になるから、少し勉強をしておく必要がある。ヒアリングぐらいしたらどうかということ位で、議論をするということは決めておりません。ESだけに関して。

(豊島委員)

  すみません。ESに関してだけは確かにそうなんですね。今おっしゃったことは、結局、ESに関しては、ここではガイドラインと書いてあるのは書き過ぎだということだと思うんですが、この前、この会でしたか、ガイドライン規制か法規制か議論したのは。クローンのほうですか。クローンのほうでそういう議論がかなり深まったときに、法規制というのは理論上非常に難しいという話が出て、もう一度戻って、少なくともとりあえずやっていけることから順番に手をつけるということに、戻ってきているんだと思います。

(迫田委員)

  このマップは非常にいろんなことを、全体像を見るのはとてもわかりやすくなっています。一般の感覚で言うと、ES細胞ということも、それからクローンも、そこから個体が生まれてくるということも、どこにどういうふうに差があるのかということはよくわからないんですね。研究者の方々は、個体が生まれることはほとんどあり得ないでしょうとかというふうに簡単におっしゃって、多分そうなんだと思うんですが、そこはとてもわからない。つまり、ES細胞の不安というのは、すぐそのままクローンで人が生まれることに、一般の感覚の不安としてはつながっているというふうに私自身は思っています。      

  これはだから私の個人的な意見ですが、そういう意味では、ある部分、ここは禁止、つまり、それは法律という意味ですけれども、で、全部が同じガイドラインだと、ESのガイドライン、クローンのガイドラインというと、レベルとして全く同じに聞こえるということでは、禁止事項というのははっきり法律で決めて、そこで安心してこのESについての議論ができるというふうに私は思うんですね。

  ですからそういう意味では、確かにここの委員会では、ESのこの四角で囲ったところの議論をするということであると思うのですが、じゃあ、ほかのクローンのところ、あるいはキメラ・ハイブリッド、そこで個体が生まれるかどうかということについて、どうなっているかということがやっぱり気にかかるというか、ここはここの部分だけですというふうに言われてしまうと、一般のこの不安のところはどういうふうに対処したらいいんだろうというのが、私の個人的な心配というか意見です。

(西川委員)

  前から主張しているんだけど、大きなフレームワークで考えていくときに、何となく位田先生がおっしゃっているのが順序が逆のような気がするんですね。法律をつくっていくというのは、基本的には大事なことだなと思う。例えばわかりやすい例を挙げると、表現の自由とわいせつの問題みたいなもので、結局、ガイドラインなり法律なりがあって、しかもそれは国によって全然違うわけですね。今、いろんなことができる。サイエンスというfieldにはいろんな材料があって、いろんな可能性が開けている。いろんなことをしましょうという一種の表現の自由みたいなものがある。しかしその中で行われることは、今ある社会のコンセンサスなりセンティメントから考えると、例えば極めてグロテスクなことまで含んでいるかもしれないという心配をしているわけですね。      

  そのときに、例えば要するにわいせつ規制をやるような形での法律を社会のコンセンサスの側からインディペンデントにジェネラルにつくっていくということは、僕はいいと思うんだけれども、一番聞きたいのは、じゃあ、そういう法律ができたときに、例えば表現の自由を侵すのかという問題です。表現の自由の問題に移すとちょっと悪いみたいな感じがするけれども、例えば法律ができるまでは、実験をしないで法律ができるのを待てというのか、それとも、ガイドラインでとりあえずやって、法律は粛々とつくっていただくという形で待ったほうがいいのかという問題ではないかと思うんですが、位田先生なんかは、それまではあらゆるものを全部しないという形で、レギュレーションすべきだと思っているのかどうかなんですね。

(位田委員)

  西川先生が私の議論の順序が逆だとおっしゃったのは、私から言わせると、西川先生の議論のほうが多分逆なんだろうと思うんですけれども、法律はつくれば全部規制するとかそういう意味ではなくて、どこまでは認められるか、少なくとも法律をつくる段階ではっきりする。それが未来永劫に続くかどうかは別として、法律をつくる段階で、どこまでは許される。許されるのは、これも法律に基盤を持って許されるわけですから、だれが何と言おうと許される。ここは表現の自由と言おうと研究の自由と言おうと、それは何でもいいんですけど、そこは自由である。      

  ただし、ある時点で、これだけはやってはいけないということをもしコンセンサスで決められるものであれば、それは絶対にだめなものかどうかをまず判断をして、もし絶対にだめだということであれば、法律しかその絶対に禁止するということをとめられるものはないということですね。

  これは、ガイドラインではできないものですから、私が法律をつくるべきだと申し上げているのは、ES細胞のどの辺を禁止するかはこれからの議論ですけれども、もし作成にしろ使用にしろ、クローンも含めてですが、ここは絶対に禁止をするべきものであるということがわかれば、そこの部分を禁止するのは法律によるべきである。だから、そこのところはやってみないとわからないと言われると、議論はそこから進まないんですけれども、それは科学者の方々が、例えばES細胞を研究すれば、こういうことができるだろうということが、当然に枠といいますか、計画というか、概念ができるわけですね。ただし、その概念の中のここの部分は、やはりどう言ってもやってはいけないことだということがあれば、それは法律で規制する。もしそういうところがなければ、法律は要らないと思いますし、ガイドラインも要らないと思う。

(相沢委員)

  2人の議論に反対なんですけれども、法律にすることもあり、ガイドラインにすることもあるでしょうが中身がわからないときに、この議論をやってみたところで、プロダクティブだとは思えません。その議論は後のこととして、やめたほうがいいんじゃないでしょうか。後でいくらでも法律にすべきであるとなったら、法律をつくりなさいという話に行ってもいいでしょうし。そこら辺の議論は今はやめて最も核心的なことの議論に進んだほうが……。

(岡田委員長)

  中身ということで、相当生々しい考え方の案になりましたが、資料4−3と資料4−4に基づいて議論しましょう

(高久委員)

  その前に資料4−2のほうは議論しなくてもいいんでしょうか。

(岡田委員長)

  資料4−2のほうは、私としては、研究を進めていこうという条件になったときは、大体こんなものかなという考えがあったものですから飛ばしましたが。

(高久委員)

  遺伝子治療が例に出されるのですが、確かに施設の中のRIBの許可を得るということは非常に重要なことだと思います。ただ、例えばES細胞をジェローン社から買って、筋肉の細胞に試験管の中で分化させるという研究まで、中央の審査を受ける必要があるのかということです。試験管の中でES細胞を分化させるという研究まで、一々中央の審査会に持ってくるかということは、考える必要があるのではないか。

(岡田委員長)

  そのとおりだと思います。一応そういうことをファクターの中に入れさせていただくということで、資料4−2については簡単にして他のところを議論しましょう。

(石井委員)

  研究機関に属しないものの場合はどうなるのでしょうか。

(相沢委員)

  それも内容を見ていってから、そういうケースはどうしましょうという議論をすればいいんじゃないですか、これから。

(岡田委員長)

  そうしましょう。先に進みます。

(迫田委員)

  ちょっと待ってください。今の高久先生がおっしゃったことをそのまま認めるということは、もうES細胞はジェローン社から買って使用する分については、国で審査しなくていいということをおっしゃっているんですか。そうではないんですね。

(高久委員)

  私は、IRBからの許可は取る必要があるけれども、すべての研究を中央まで持ってくる必要があるのかどうかということは、検討する必要があるのではないかということを言っているわけです。極めて単純な試験管内の研究もありますから、そこまでやられても良いのですが、何か非常にむだなような気がしているものですから。

(迫田委員)

  ということは、理解の仕方として、最初にいろんなことが初めて行われる研究については、多分いろんなガイドラインとか、国のレベルの審査委員会に行くと。だけれども、途中からそれはもういいと。

(高久委員)

  まだそこまでは考えていません。今後の検討の中で、どういうレベルのものは中央に持ってくるし、どういうレベルのものは施設のIRBということは、検討していく必要があると思います。規制を具体的にやる場合にですね。

(岡田委員長)

  審査基準としては、スタートのときには、相当厳密のものから始めていくのが原則だと思います。議論になれがあり、安全度がありということで、審査基準そのものも変わっていくものだと思いますので、まずは相当厳密なものにしてあると理解してください。      

  資料4−3のヒト胚性幹細胞の使用のみを行う場合の考え方の案ということで、こことこことこことに関して討論していただけるといいのではないかというものがあり、また資料4−4では、今度は作成ということでの問題点が出てまいりましたが、この項目に関して、相当生々しいものまでちゃんと入れてくださっていますが、まずは項目として、大体こういうものでいいかどうかを討論してくださいませんか。

(勝木委員)

  結局、ほかの動物の胚と違って、ヒトの胚を特別に考えるかどうかということに、最終的にはなると思うんです。そういう意味で申しますと、順序としてヒトのES細胞を研究に使うことについては、認めていいという立場なんですが、それをきちんと合理的にといいますか、今せっかくここで委員会ができている意味は、それをきちんとみんなが了解できるかということだろうと思うんですね。      

  ですから、ヒトのES細胞は研究によってさまざまな有用性があることもわかるし、研究したいことも、自分自身にもありますから、いくらでも説明できるんですが、しかし、それはもう議論するまでもなく、そういうものだと思うんです。もし認めるということになると、一番の論点は、ヒト胚をどう取り扱うかということに結局はなりますので、そこを十分議論しておかないと、引っくり返ることが起こると思うんですね。

  先ほどの産科婦人科学会の会告を前提にしないというのは、大変重要なことだと思います。それはなぜかといいますと、今のような議論をした後に、もしかしたら、この会告はおかしいということが出得るということを、我々は前提として議論をするんだということだと思うんですね。ですから、会告がおかしいという意見が出ることを認めていただいた上で、ヒト胚の基本的な扱い方についてが問題だと思います。

(岡田委員長)

  資料の資料4−3、資料4−4に分かれている理由は、資料4−3のほうは、大体こういう討論でいいということと思います。今の勝木委員のお話も多分、資料4−3のほうはこれでよかろうということのようですね。ですから、まず資料4−3の考え方について、ちょっと整理しておきましょうか。

(高久委員)

  資料4−3では、資料4−4と違いますから、基本的にはジェローン社のES細胞を買うということになると思います。それしかありませんから。そうすると、提供者のプライバシーの保護とかいうことはあんまり意味がない。向こうの問題で、日本の研究者の問題ではない。      

  それから、最初のほうで、動物のES細胞では研究不可能な場合と書いていますが、これは当たり前のことではないか。動物のESと人のESは違うから人のESで研究をやるのであって、動物でどんなにうまくいってもヒトのESとは別なストーリーだというふうに思います。

(迫田委員)

  先生方にとっては当たり前のことだったら、ぜひ逆に書いておいていただきたいと思うんです。それが多くの人に納得してもらえる条件だと思うんですね。つまり、動物でできないことをヒトだからこそやるんで、そういうものに限ってやるんですというふうに、このヒト胚以外のものを扱うんですということを、多くの人に納得してもらう必要があると思うんですね。当たり前なら余計きちんと書いておくべきだと私は思います。

(石井委員)

  せっかく進んでいるところをまた元に戻すようなことを言って申しわけないのですが、今、高久先生がジェローン社から買うということを前提にするということをおっしゃったのですが、だれでもが買えるという状態でいいのかどうかということは、問題にしなくてよろしいのですか。先ほどの研究機関に入らない人のことを考えるときには、買える人を制限しない限りは、買って自由に研究してしまうということが起こるのではないかという危険を感じるのですけれども、その点はいかがでしょうか。

(豊島委員)

  今のことに限定して言いますと、今の状態だったら、だれが買って日本で何をしても構わないんです。国からお金が出ないからです。ですから、それをもし規制するとしても、ガイドラインをつくっても無理ですね。

(石井委員)

  そうですね。

(豊島委員)

  だから、買う人を規定するところまで法律でつくるというのは、これはほとんどそういう意味では、現実的じゃないと思いますね。だから、その辺からの問題を……。

(西川委員)

  研究側から言えば、買える人と買えない人が分かれてしまうと、初めから規制が差別をつくるのと同じことになるから。持っている人と持っていない人とで、例えばただ業績に差が出るとしてしまうと、初めから規制することによって差別をつくっているわけですよ。だからやはり、基本的な態度としては、だれでも買えるというシステムで、ただし申請するとかいう方向のほうがいいと思いますけどね。

(迫田委員)

  そうすると、先ほどの資料4−2の審査制度のところに戻ってくるんですが、つまり、途中からルーティンに乗ればいいということになるにしても、最初はとにかくこの審査制度に必ず乗るという保証が、どういうふうにとれるかということなんですね。つまり、それはここで決めたら、全員がきちんとここの審査制度とか登録するということになるのかどうかということが、一番問題になってくるような気がします。

(相沢委員)

  議論が同じことで、重要な議論をしないままに、仮定でこれはどうなるんでしょうかと言い合っても仕方がないので、先ほど勝木先生がおっしゃった問題も含めて、一番問題なのは、資料4−4をちゃんとどう考えるんですかということを議論してから後に行ったほうが、議論がプロダクティブになると思います。それを置いておいたままでいろんなこ、この場合はどうですか、こうですかと言っていると、それはしようがないので、この資料4−4についてまず議論を始めたほうがいいんじゃないんですか。

(岡田委員長)

  そういうご意見が出ましたが、どうですか。

(村上委員)

  私も資料4−4をやっぱりきちんとやるべきだという意見です。そのときに、例えばこれもまた仮定と言って笑われるかもしれませんけれども、日本に完璧な商業的ジェローン社が例えばあらわれたときに、どうやって規制ができるかという問題も多分あると思うんですね。これはつまり、研究者でもなければ、こういうラインの上に全く乗らないあるエージェンシーが、例えばジェローン社のようなことでつくって売り始めるというような可能性も念頭に置いておく必要があるような気がいたしますが。

(岡田委員長)

  土俵があっち行きこっち行きでなかなか大変ですが、多分、資料4−3という形の流れのものも、資料4−4といつも一緒になっていっているということで、資料4−4のほうを討論をしていけば、結論が出てくると思いますので、時間の許す限り、資料4−4の作成を行う場合の考え方について(案)をたたき台にして討論していただけるといいと思います。ヒト卵の操作ということからいけば、何人かの委員がお話になったように、産科婦人科領域のテリトリーを外れた意味で使うと。産科婦人科領域というのは、とにかく生殖医学に使うということでテリトリーはちゃんとつくっておりますから、そこから同じような操作でも一歩踏み出すことになるわけです。そういう意味で、産科婦人科学会の今までの会則の考え方などとの整合性についても、随分考えていかなければならないと思いますが、このあたりのところで、資料4−4についての問題点のとり方とか、中身も含めて、少し議論していただきたいと思います。

(豊島委員)

  石井委員は出られるんですか。

(石井委員)

  11時半に出ないと、午後の講義に間に合わないものですから。

(豊島委員)

  基本的には、一番私がおそれているのは、位田先生、石井先生が、ES細胞の使用というのを頭から否定される可能性というのを考えておりますか。

(石井委員)

  いえ、そのようなつもりは全くありません。

(位田委員)

  全くありません。全くないです。

(石井委員)

  適正に利用されることをどう確保するかということを考えているつもりでございます。

(位田委員)

  そうです。

(勝木委員)

  よろしいでしょうか。むしろ私にそういう不安があるかもしれませんけれども、先ほどの資料4−4からするときに、諸外国ではヒト胚の倫理規定といいますか、取り扱いの倫理規定、あるいは法律というのが、アメリカでさえ整っていたわけですね。その段階にクローンの問題やES細胞の問題がでたということがありますので、前提としてヒト胚の扱いについては経験もあったし、それをどうやって規制するかというのが、コンセンサスとして得られていたという土壌にあるんだと思います。      

  したがって、ジェローン社が国の予算を使わないでES細胞ができた。しかし、その由来は、ヒト胚操作を規制するという常識と少し違うものであった。だから、その辺を議論しないでES細胞の有用性からだけで使おうという議論を米国ではしている。

  日本の場合も、それをよく考えておく必要があります。日本の場合は、ヒト胚に関する規制は全くないという状況の中でこれが出てきているわけですから、文部省の、豊島先生を委員長とする分科会なんかでは、そのときにはクローンというものが出たときに、ヒト胚に関する規制が全然ないときに、そのヒト胚に対する規制まで議論したら大変だし、役目ではないから、ヒト胚に対する操作を核移植のところでとめましょうという議論が行われました。一般的な規制として具体的に出た案の最初だと思うんですね。

  それだけではES細胞を使うときに十分な議論でありませんので、このヒト胚についての取り扱いについては、あらためて議論の必要があると思います。例えば顕微受精をどうするかとか、そういう生殖医療に関して議論が行われていないことを追認するんではなくて、おそれず議論することが大事だと考えます。

  基本的な考えを申しますと、私は、ヒト胚については十分慎重に扱うべきであると考えます。基本的には規制をまず行って、その中からその安全性がきちっと認められるもの、それから、みんなの常識的な倫理にかなうものを一つずつ認めていくという、ステップ・バイ・ステップで窓を一つずつ開けていくという方式がいいのではないかというふうに思います。

(岡田委員長)

  そうすると、例えば資料4−4のところで、どんな順番で実施できる可能性があると思われますか。

(勝木委員)

  私は、ES細胞を使うことについてはあまりちゅうちょはしないんですが、胚性幹細胞を作成することに関しては、基本的にまだ十分コンセンサスが整っていないというふうに思います。今、文部省や何かに尋ねてこられている例を申しますと、核移植その他で、あるいはES細胞をヒトからつくるというのを、パイパスするためだと思いますが、動物のジョカクミジュセイ卵に、ヒトの体細胞核を移植して、それをヒトのES細胞に分化させるというようなものが、実際に日本の中でも、その試みとして手を挙げる人が出てきた状況にあります。      

  ですから、それ自身は、十分議論する段階に来ていると思いますし、あまり先走って結論を言うとあれですので、ES細胞から作成することを、どの段階でするのかというふうに、初めから前提として議論するのではなくて、ほんとうに作成していいのかどうかということを議論しないと、最後に引っくり返るようなことになるんじゃないでしょうか。

(相沢委員)

  僕、勝木先生の意見と、もしかしたらものすごく違うかもしれないんですけれども、アメリカのやり方をするのは、研究者にとってこれは健全な考えじゃないと思います。要するにつくったことに関しては見て見ぬふりをする。有用だったら使いますよというのはこれは矛盾で、アメリカはそうせざるを得ない国情があるからそうしたということを、我々はまた同じことをやって、人がつくったものを使うのはいいけれども、つくることは認めないよというやり方をするのは、先生、おっしゃったのはそういう意味ですか。

(勝木委員)

  そうです。

(相沢委員)

  もしそうだったとしたら、それはちょっと論理矛盾で、つくることに対して、これの厳しい規制の下で、こういう条件でならば、みずからつくるということも認めるということがないと、それを使うことだけはいいよというのは、僕は論理的に成り立たないんじゃないかなと思うんですが、どうですか。

(勝木委員)

  まことに痛い点をおつきになる。前回もそういうふうに矛盾しているということを申し上げました。これは、ちょっと例がよくないかもしれませんが、原子力をどう利用するかということと非常によく似ているところがあると思うんですね、ES細胞について言えば。それ自身が持っている科学的、あるいは技術的な意味の将来については、非常によく見通せるような気がするし、非常に有用なものであるというふうに思います。      

  だから、そこで矛盾が生じるわけですけれども、しかしながら、胚を扱うことについては、これはまだ日本人のというか、まあ、私がそうなんでしょうけれども、生命観に対して、胚を操作することに関して、どうも私は非常に納得できないところがあるんです。ですから、そこは矛盾しているということは認めた上で、しかし、原子核の利用についてと同じように、これはそれ自身の性質を見ると極めて有用である。そこから出発するならば、。

公開しながら行う必要があるのではないかと考えたわけです。

(相沢委員)

  そう言っていると、おいしいことだけはやるけれども、自分の手は汚さないというのと同じ議論になっちゃうんじゃないですか。

(勝木委員)

  いや、それは選択だと思うんです。私は、もし相沢先生がおっしゃるような観点から申しますと、ヒトES細胞は使えないと思っているんです。

(相沢委員)

  もし、ヒトのES細胞をつくることも認めない。であるから、どんなに便利であってもそれは使わないというのは、1つの論旨のある主張だと思います。でも、有用だから使う。だけれども、一番手を汚すところはやらないというのは、それは成り立たないと思うんです。

(勝木委員)

  相沢先生、手を汚すところとおっしゃったところが、やっぱり問題なんですよ。もしそこに何らかのやましい気持ちがあるとすればですよ。例えば余剰胚というのがある。この言葉について、私は非常に激しく反応しましたけれども、余剰胚という観念はやっぱりおかしいと思います。なぜかと申しますと、もし凍結に委ねたご夫婦がいらっしゃって、それが余ったとしたら、埋葬すべきものだと思うんです。それが余ってほかのことに使うというのは、我々の今の生命観からすれば、余剰胚も利用価値だけではなくてやっぱり埋葬すべきものだ。そうなると、余剰胚という観念は出てまいりませんので、そういう意味で胚に関する考え方については、私は非常に保守的なんです。ですから、ヒトES細胞について申しますと、そこは今のところ分けて考えない限り、ES細胞を使う道はないだろうというふうに、それが私の意見なんです。

(村上委員)

  今の勝木先生を責めても、何の意味も出てこないと思うんですよ。勝木先生のおっしゃっているポイントの1つは、一般論としてヒト胚というのをどう考えるかということを、さっきも私申し上げましたけれども、職能集団である産科婦人科学会の判断だけに委ねて、我々はそこにあるからとか、あるいはそこでこうであるというだけで議論をしないでいいのかと言われたときに、その問題を提起していらっしゃるんだと思うし、この委員会が、その点ですべての問題をきちんと議論できるとは、ちょっと時間的にも役割から言っても、難しいかもしれないけれども、しかし、大ざっぱな筋だけは通して、この委員会としての見解を通しておいて、それを例えば法律なら法律に、それこそ外国の例にならって、ヒト胚本みたいなものをつくるにせよ、あるいはヒト胚に関するガイドラインをつくるにせよ、将来の、例えばこういう提案をしておきましょう。こういう法律ないしはガイドラインが欲しいですねという提案を、我々の結論の中に1つするべきではなかろうか。今すぐガイドラインや法律が、我々の委員会でぴしっと決まるとはとても思えないんですけれども、しかし、少なくともその基礎作業はあったほうがいいのではないかというのが、第1点なんですけれども。      

  そのことについてはだから、先ほど申しましたように、対象というふうに書いてあるヒト胚とか、余剰胚とか、死亡胎児とかいうようなものについて、私たちは社会的コンセンサスとしては、産科婦人科学会のコンセンサスしかないんです。何にもない。それはその点で、何もないというところが、やっぱり我々は問題じゃないかと思うんですけど。

(西川委員)

  ただ、基本的な職能集団というだけではなくて、例えば僕がそういう胎児にアクセスしようとしたときに、基本的には産科学会のメンバーである、(メンバーでない人もいるかもしれないけど、)産科医のルートを通らないとアクセスはできないということがあるから、これは別に産科学会のガイドラインは意味があるとか言うのではなくて、現在すでにボトルネックとして存在しているということです。

(村上委員)

  もちろんだから、産科婦人科学会がだめだと言っているんじゃなくて、産科婦人科学会のほうが妥当であるならば、我々はそれを妥当だと認めればいいわけです。ただ、その作業だけは、我々やらなきゃいけないんじゃないかという提案ではないかと思うんですが、勝木先生のご提案。

(勝木委員)

  非常に近いことだと思います。

(高久委員)

  ただ、4の議論をしておかないと、もしもES細胞を日本でつくることを認めないという議論になりますと、資料4−3を議論してもあまり意味がないのですね。資料4−2も意味がなくなる。

(勝木委員)

  確かにそれは1つの立場で、高久先生も相沢先生もおっしゃったとおりだと思います。しかし、ヒト胚からES細胞をつくるということの前提に、このES細胞の非常な威力といいますか、能力というものが前提にあって、だから、つくるんだという議論になっていくんだと思うんです、基本的には。それは、ここで前提としているヒト胚についての扱い方とは違う観点ですから、私はそこを分けたいという意味で申し上げているんです。      

  ですから、倫理ということから考えると、ヒト胚だから、お2人の先生方がおっしゃることも、私もそう言いたいぐらいの議論ですが、それをやっていると、やはりできなくなるのではないか。どうしてもその先にある有用性に関しては、我々は日本としても、絶対に持っておくもの、必要のある技術でありサイエンスではないかと思いますので、いわゆる前提となるところを無視して始めるということについては、アメリカと同じように図太くやったほうがいいのではないかというのが私の議論です。

(西川委員)

  しかし、つくるかどうかということを議論すればいいわけでしょう。胚を操作して、要するに胚から細胞をとってきてつくるということを、もちろんある一定のガイドラインなり規制の下でつくるということを、基本的には倫理的に認めるかどうかということがクエスチョンであり、その議論をしようということですね。ですから、どっち側をとるかというよりは、だから、まずそっち側をしていただいたほうがいいんじゃないですか。

(豊島委員)

  今の議論の中で、過去のことを認めるというのを簡単にやってはいけないという議論が幾つかありますけれども、とは言っても、過去のことは現実にあることですから、それを前提にしますと、例えば始原生殖細胞から一応ES細胞的なものはできるし、そういう一応の体細胞的なものからいろいろつくるということは、全部やられてきているわけですね、いろんな形のものを。それは現実に皆、研究にも使っているし、人間の細胞も、ストレームは山ほどあるわけです。      

  この場合に、新たにというのは、ただ、トータルのエンブリオか何かが問題になるから、エンブリオ以前の問題ですけれども、胚が問題になるから、それをどうするかという、その1点に絞られると思うんですね。

  もう一つの問題は、それじゃ、今の例えば抜け道で、始原生殖細胞からやる道だけはあけておけばいいじゃないかということはあると思うんですけれども、それをした場合には、やはり元の受精卵細胞から来るのとは違った欠点があり得る可能性というのは十分残るわけですね。だから、そういうことを含めてどうするかという問題になるんだと。

  先ほどからの議論を聞いていると、後ろのほうの有用性に関しては、皆さん大体、もういいんじゃないか。だから、その1点じゃないかなという気がするんです。

(西川委員)

  もう少しわかりやすく言うと、例えばドイツのグルンドゲゼッツみたいな形での、胚は傷つけてはならんという立場をとるのかとらないのかという問題を議論しているわけですね。

(豊島委員)

  うん。

(相沢委員)

  いや、勝木先生のおっしゃるのは、ヒト胚性幹細胞の作成については、これは全面禁止ということで、資料4−4は一切議論をしないで全面禁止ということで、議論は資料4−3から入りましょうと、こういう主張なんですか。

(勝木委員)

  個人的意見です、それは。

(相沢委員)

  それにはやっぱり反対で、結論は全面禁止ということになっても、それはいいと思うんですよ。しかしやっぱり資料4−4について、一つ一つの項目がどうであるかを内容を詰めていった上で、結論として全面禁止したほうがいいではないでしょうかという結論になるならば、僕はそれでいいと思うんですけれども、資料4−4を議論しないままで、最初に全面禁止、それで資料4−3からというのには、ちょっと僕は……。

(勝木委員)

  すみません。全面禁止というのは議論すべきことでして、私の考えを申し上げて先走りすぎました。相沢先生のおっしゃるとおりだと思います。ですから、そこの辺を十分議論する。西川先生がおっしゃったような意味でですね。ほんとうに胚を傷つけてはいけないのか、胚をヒトと見るかどうかということだと思いますが。

(迫田委員)

  勝木先生の言葉の中に、日本人の生命観として、受精卵に対して、そういう傷つけることについて抵抗があるようなニュアンスのことをおっしゃったと思うんですが、今、現実に14日までについては、いろんな研究が行われているという事実があり、それは議論されたり、きちんとオープンになっていないだけであって、現実はいろんな形で行われているということを考えれば、それはきちんと今ここで、どういうことは行ってよいと。それはさっきの相沢先生の言葉で言えば、みずから厳しい条件を課した上でそれは認めていくというようなことが、きちんとオープンになるということが、私は一番大事なことだと思いますね。

(町野委員)

  ちょっと議論を戻すようですけれども、勝木先生のご意見というのは、結局、資料4−3の論点1を認めるかどうかという問題だと思います。つまり、出所に問題のある胚性幹細胞を使わないようにしようというのが、資料4−3なのですが、それを切り離すというご議論だろうと思います。私は、基本的にはそういう勝木先生のような考え方はとるべきじゃないと思います。皆様がおっしゃられるとおり、生命倫理の問題というのは、日本が手を汚さないでいるのなら、それで済むという問題ではなくて、ほかの国でそういう変なものをつくったというのを、日本がどんどん買い込むということは、ほかの国のそういう状況というのを助長するわけですから、やはり基本的に認めるべきじゃないと思います。資料4−3の論点1は、おそらくその考え方に従って書かれているんだろうと思います。私はその点では、勝木先生のご意見にちょっと反対だということです。まあ、だけど、将来、次の問題だと思いますね。

(岡田委員長)

  とにかく資料4−4の問題というか、余剰胚や新たに胚を作成することの妥当性は、討論して結論が出るでしょうか。

(相沢委員)

  問題点は明らかになるんじゃないですか。

(西川委員)

  結論は出ないですよ。

(岡田委員長)

  ここのところは、今おっしゃったように、産科婦人科学会が現に動かしているものがあります。産科婦人科学会としての妥当性をどう持ってきたか。大体皆さん、もうご存じだと思いますが、ということを含めていくと、余剰胚というのをどういう観点で見る人もあり、どういう観点で見る人もあるかという条件は、整理できることになろうかと思いますが、そういう整理をしていけば何とかなると思いますが、どうしたらよいと思われますか。

(事務局)

  今の議論を伺って、資料4−4についての議論をいただく過程で、ちょっとクライファイする意味でも、あるいはちょっと触れていただきたいなと思いますのは、いろいろな方法からヒト胚をつくるということについての議論をいただいているわけですけれども、そのヒト胚をつくること自身についての研究要素というか、そこにどういう研究者を引きつけるようなものがどこにあるのか、あるいはそこは研究要素はほとんどなくて、ほとんど知見も明らかであって、意思決定さえすればすぐできるという状況なのか、その辺が皆さんの議論の中で、やっぱり幅があるような感じがあって、そこを全くスキップして、だれかがやってしまうことなんだから、後はその扱いをどうしようという議論に一足飛びに行くとなると、これまたちょっといかがかと思いますし、もともとはこれをどう規制したらいいか、扱ったらいいかという議論をしているわけですけれども、その自身に研究内容として中身があるんだ、あるいはそこ自身もまだかなり不確定要因なりに漠としたものがあって、それをどういうふうに育てたらいいかという議論が、私はあるような気がするんですけれども、その辺についての議論に触れていただかないと、そこはあいまいのままで議論を行き違いをしているような気がしてならないんですが、いかがかなものでしょうか。

(岡田委員長)

  実際上は、西川委員からその有用性についての、非常にきっちりしたレポートをこの委員会に出していただいており、皆さんご存じなわけです。ですから、その点に関しては、あまり気にしなくてもいと、私は理解していますが、よろしいですか。

(西川委員)

  ご質問の問題は多分、つくるプロセスそのものですね。基本的には僕もいろんな問題があると思いますから、例えばますますやったほうが僕はいいと思いますから、細かくサイエンティフィックにどういう意味があるかということを、いくらでもまたまとめようと思ったらまとめれると思うんですが、ただ、経験がまだないですよね。例えば人間でつくられたのが何ラインあるかわからないですが、例えばネズミでできないと思っていたことが人間でできるということがわかってきているわけですね、たくさんやられてないにもかかわらず。      

  そうすると、どうしてそういうことができるのかということは、人間の有用性だけではなくて、新たな問題を生み出しているわけですね。ですから、いろんな種でやるということの一環としてすら、積極的な理由はいっぱいあると思いますが、もちろん勝木先生がおっしゃるような、じゃあ、どこまでがグロテスクなのかという問題に関しては、幾らでも議論するという気はしますけれども、有用性はやっぱり同じようにあるというふうには思っていますが……。

(迫田委員)

  ヒトの胚がそもそも命の始まりであるというふうにお考えになる方もあれば、ヒトが生まれた瞬間に、それこそ命が始まるというお考えの方もあれば、そこのところを今ここで1つの意見にしようなどというのは、無理だというのは、皆さんそれは納得されていると思うんですね。      

  そこで、このことについて、ある原則を皆が、これだけはだめだと思われるものってあると思うんです。例えばそれが研究の過程で個体の産生にまでつながるということは、多分納得できる禁止事項とか、あるいは提供者に対する情報、インフォームド・コンセントやあるいはプライバシーの保護の問題はどうかとか、そういうようなちょっと回りから攻めるみたいな形にはなりますけれども、その辺のまず共通の原則、つまり、生殖細胞、精子、卵子、それから受精卵についての取り扱いについての基本的原則というものを、まず考えてみたらどうかというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

(相沢委員)

  それは、物事のポイントに行く一番近道は、どうも見たところ、勝木先生は全面的反対のようでして、西川先生はかなりやったほうがいいという意見なんで、西川先生に、まずどういうのはだめだ、どこからはやっていいよという案を出していただいて、それを勝木先生がことごとく論破できるか論破できないかということを、2人の討論の中で問題点を明らかにしていくというのが、一番ゴールに近く行けるのではないかなと思います。観客になって申しわけないんですけれども。

(高久委員)

  まず議論すべきことは、先ほども言いましたように、日本人の研究者が日本人のES細胞をつくるのを認めるか認めないか。認めないのなら、それですべての議論はおしまいです。認めるならば、今迄、紹介された3つの方法のうちのどれを認めるのか、その議論をしないと、いつまでたっても進まないと思います。

(位田委員)

  今、高久先生が、日本人のとおっしゃったんですけれども、私は、日本においてということだと思いますので、そこは例えば外国人が来たときにどうなるか。日本人とか日本の研究機関ということに限定してしまうと、若干問題があるんじゃないか。ちょっと私の理解不足かもしれませんけれども。

(高久委員)

  産婦人科のお医者さんが関係せざるを得ない、もしも日本でつくるとすれば。ですから、ほとんどの場合は日本人と思います。無理に日本人ということにしなくてもいいのですが。日本人への医学的応用ということを考えるならば、日本人の胚を使ってやる必要があると思います。

(勝木委員)

  相沢先生から私の名前が出ましたので……。私も全面的にそんなに反対というよりは、先ほど西川先生がおっしゃったのを、皆さんにご説明するのにいい例だと思うんですが、比較生物学の1つの対象としてヒトを選ぶという観点ですね、さっきの話。そういう観点は私はあると思うんです。先生から言われて私も、そのことを申しているんだなと今気がついたんですが、既にES細胞になっているものを、比較生物学の観点からきちんと見るというような意味で、自分はやりたいと思っているということに気がつきました。しかし、先ほどの繰り返しになりますけれども、それとヒトの胚を扱うということについての議論というのはやっぱり少し違うんです。ですから、私と西川先生が議論しても、完全にすれ違いますので、先ほどの相沢先生の提案はちょっと……。

(迫田委員)

  西川先生がおっしゃった、必ず産婦人科の先生の力が必要だというところで、一般の感覚で言うと、去年の問題が起きてから、産婦人科学会の会告というのが、やはり破られてしまうものだという認識がどうしても出てきてしまう。そこのところはもう少しきちんと議論しなきゃいけないというふうに思うんです。

(岡田委員長)

  どうもいろいろありがとうございました。予定の時間がほとんどありませんので、これできょうのフリーディスカッションは終結ですが、事務局のほう、その後はどうしましょう。      

  一応事務局のほうで、この次の会を、クローン小委員会と合同の会をやりたいということで予定を考えておられましたが、今のディスカッションはまた続けていただきますが、このマップの全体像ということでの位置づけも、テリトリーも含めるということで、次回は2つの委員会を合同で開かせていただくことで、よろしゅうございますか。事務局は、そういう形でいいですか。

(事務局)

  はい。よろしくお願いいたします。

(村上委員)

  1つだけ提案があるんです。先ほどから議論になっているヒト胚に関する基本的な考え方をどうしようかというときに、確かに具体的にここでコンセンサスを得るのは難しいので、日本産科婦人科学会のガイドラインを、会告で十分なのか、これはどうなのか。足りているのか、足りないところがあるとすればどうなのかということだけは、多少やっておいたほうがいいんじゃないかと思います。その手続があると、産科婦人科学会のガイドラインで、このラインは我々も共有するラインだというふうに言えるし、それは別に産科婦人科学会にちょっかいを出すという意味では全くなくて、参考にさせていただくわけですから、それをもし足りないところがあるとすれば、あるいは問題になるところがあって、我々としては、独自にこう行きたいというところがあるのであれば、それは何なのかということをはっきりさせたらいかがでしょうかということを提案いたします。

(岡田委員長)

  武田委員から、もう既に産科婦人科学会の会告の全体像を教えていただいていますから、やろうと思えば、ディスカスの場はもう既にあるわけです。

(事務局)

  武田先生のところに、きょうご欠席でございますが、お話を事前に若干伺った段階では、この問題、村上先生がおっしゃるように、現実の既存のシステムとして、産科婦人科学会の会告のシステムが存在いたしますので、そこの範囲について、産科婦人科学会のほうともよく話してみることが、やはり必要であろうということをおっしゃっていました。もし可能であれば、次回の小委員会までの間に、武田先生にもご助力をいただいて、そういう機会を持てればというように思います。

(岡田委員長)

  それでは、次回の日程はどうでしょうか。

                                  (日程調整)

(事務局)

  7月上旬あたりを1つの念頭に置いていただければと考えております。

(岡田委員長)

  きょうはどうもありがとうございました。

                                                                −−  了  −−