「新時代の産学官連携の構築に向けて」 ~大学発の連鎖的な新産業の創出を加速するために~ (中間取りまとめ)概要

1.「中間取りまとめ」の経緯

 科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会の下に置かれた「産学官連携推進委員会」(主査:末松安晴国立情報学研究所長)において、大学等(国の試験研究機関等を含む。)の研究成果等を活用して新産業を創出する産学官連携の在り方と関連方策を検討するため、平成13年5月から7月まで計5回の会議を開催。これまでの審議の結果を「中間取りまとめ」として公表。

2.「中間取りまとめ」の概要

1.産学官連携の意義

 「知」の創造と活用を図ることに価値が置かれる「知」の時代において、産・学・官それぞれの連携・協力への動機が高まりつつあり、今後、大学等の活性化と国家・社会の発展のために産学官連携の一層の強化が必要。

2.産学官連携の課題

1)我が国の産学官連携と近年の進展

 従来は、特定研究室と特定企業との「おつきあい型」で個人ベースの連携が主流。特許の有効活用等を考えると、契約やルールに基づく「組織的な産学官連携」への転換が必要。近年、共同研究契約の急増等変化の兆し。

2)これまでの関連施策における問題点

 これまで研究面の産学官連携等を推進し、近年では、インターンシップなど教育面での連携やTLOによる技術移転施策も開始。しかし以下の点で問題。

  1. 現在の国立大学は組織としての自主・自律性が低い。大学等が主体的に研究成果を企業に移転するシステムが形成されていない。
  2. 規制緩和も含めて各種制度改善が進められてきているが、それぞれの施策が全体として有機的に稼動していない。
  3. 大学等や研究者にとって、急速に進む制度改善の状況を把握することが難しく、「何ができるのか」について現場レベルで迷う例が見られる。
  4. 大学等の研究成果等を活用したベンチャー起業件数が欧米諸国に比べ少ない。

3)産学官連携の今日的課題

  1. 我が国の大学システムにおいて優れた教育・研究水準を保つために、評価に基づく透明な競争的環境の整備や大学の自主・自律性の強化など抜本的な改革を早急に進めることが必要
  2. 基礎研究の自前方式から、短期的な開発重視へ移行しつつある企業にとって、大学等とのパートナーシップによる独創的技術シーズの確保が課題。一方、我が国の企業から国内大学等への研究開発投資額が海外研究機関へのそれに比べて相当低い。
  3. 産学官間の人材移動の促進、ベンチャーなど新産業創出の担い手となる人材(起業家、優れたアドバイザー等)の育成等

3.今後の産学官連携と関連施策の在り方

1)今後の産学官連携の在り方

 「個人」の能力が最大限発揮でき、組織間の人材交流を容易にする環境を整備し、社会における「知」の創造と活用のダイナミックな循環状況とそれに伴う連鎖的な新産業や技術革新を生み出すことを目指す。

2)中・長期的観点に立った施策の方向性

  1. 「知」の源泉としての大学等の発展
    a.大学等の教育・研究における競争的環境の整備、能力主義の徹底と国際競争力強化
    b.優れた「個人」が活躍できる魅力ある「場」の形成
    c.組織体としての大学等の経営強化と自主・自律性の確立
    d.産学官の「利益相反」問題等に対応するルールの整備
  2. 産学官連携に対する企業の理解と協力
     国際競争力向上のために、ブレークスルー実現のためのパートナー、研究開発・人材育成の委託先として、企業が我が国の大学等の能力を一層戦略的に活用するという観点が必要。
  3. 大学等を核とした総合的な産学官連携システムの構築
    a.経済・社会ニーズに対応した大学等の研究開発の推進と実践的教育の実施
    b.大学等の研究成果の効果的な社会還元の推進
    c.大学等発ベンチャーの支援・育成
    d.産学官連携を推進する組織の強化・人材の育成

4.大学等発の新産業創出を加速するため早急に取り組むべき施策

1)ニーズに対応した研究開発の推進等(教育・研究面での産学官連携)

  1. 産学官関係者による対話の場の形成
     ⇒ 地域レベルも含めて「産学官対話会議(仮称)」の開催検討。
  2. 経済・社会ニーズを汲み上げる仕組みの確立と共同・受託研究の推進等
     ⇒ 企業との共同研究を促進するため、大学等への「マッチングファンド」の提供。

2)研究成果の効果的な社会還元の推進(技術移転、コンサルタント)

  1. 大学等における特許等知的所有権政策・方針の確立
     ⇒ 法人化後の国立大学における特許等の組織有原則・組織管理への転換を検討。
  2. 研究者・大学等の産学官連携への誘因強化
     ⇒ 国家公務員の発明補償金の上限撤廃。
  3. 大学等の研究者の兼業・休職等の一層円滑な活用と更なる規制緩和
     ⇒ 国立大学において、週一日程度、兼業を可能とするルールと運用の明確化等について検討。
     ⇒ 非役員兼業(技術指導兼業等)の報酬としてエクイティ(株式等)の取得について検討。

3)大学等発ベンチャーの促進等(ベンチャー起業)

  1. 大学等内ベンチャー育成システムの整備
     ⇒ 国立大学の研究成果等に基づくベンチャー企業等を当該大学に直接受入れ。またその際の使用料軽減等を検討。
  2. 大学等発ベンチャーのスタートアップファンドの充実
     ⇒ 大学等の研究成果等に基づくベンチャー企業への研究開発助成と優れた経営指導者等の確保。
  3. 起業家人材育成等による大学発ベンチャーが出やすい環境の整備
     ⇒ 理工系学部における起業家育成に関する授業科目の開設促進。
  4. 知的クラスター等の整備
     ⇒ 地域ポテンシャルを活かしつつ、大学等を核とする産学官連携を推進し、「知的クラスター」を創出。
  5. ベンチャー起業や新産業創出を促進する経済・社会環境の整備等
     ⇒ ベンチャー起業や支援に関する窓口の充実。
     ⇒ 大学等の特許化推進のための特許制度の改善。

4)産学官連携を支える組織の強化と人材の育成(産学官連携のインフラ)

  1. 組織的産学官連携活動を推進する総合窓口の整備
     ⇒ 産学連携に取り組むすべての大学において、一本化された対外窓口と関連部署の連携体制や学内の産学連携相談体制の整備。
  2. 大学のリエゾン機能、TLO機能、インキュベーション機能等の強化
     ⇒ 企業経験者を産学連携コーディネーターとして共同研究センター等へ派遣。
  3. 産学官連携を支える人材の育成
     ⇒ 大学等、技術移転機関(JST、TLO)が協力して養成プログラムを開発し、技術の目利き人材を育成・確保(5年間で700人)。

5.新時代の産学官連携の構築に向けて

 新しい「知」の時代の産学官連携を推進していくための六つの観点
 1)個人の能力が最大限に発揮できる環境の整備
 2)競争原理に基づく大学等における高度な教育・研究の実施
 3)組織体としての大学等における経営の充実
 4)産学官連携による国際競争力向上のための企業の協力
 5)研究開発過程における産学官のルールの共有
 6)先端技術分野における新産業の創出

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)

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