技術・研究基盤部会(第2回) 議事録

1.日時

平成13年7月25日(水曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

霞ヶ関ビル 33階 「望星の間」

3.出席者

委員

 阿部、飯塚、末松、井戸、岩田、岡、桂、川崎、岸、北村、小原、澤岡、清水、平石、古澤

文部科学省

 遠藤研究振興局長、山元科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長

4.議事録

(1)知的基盤整備計画(案)について

 資料3及び資料4に基づき事務局より説明の後、下記概要のとおり意見が交わされた。

(2)その他

 産学官連携推進委員会で審議が行われている「産学官連携推進委員会中間取りまとめ」の内容について事務局より説明が行われた。

(1)について

 他の省でも、知的基盤整備について議論なりレポートを作成しているのか。

【事務局】
 経済産業省では、産業技術審議会日本工業標準調査会の合同会議の下に、知的基盤整備特別委員会が設置されており、経済産業省の所掌の範囲で部分的な形ではあるが、知的基盤に関する議論をしていると承知している。本年6月に報告書が出ている。先程ご説明した知的基盤整備計画(案)の38ページでは2010年の戦略的目標達成ということで、2010年の目標値が記載されているが、そ数字の一部は産業技術審議会の委員会の報告書の数字を、こちらの委員会の目標値ということで使わせていただいている。

【委員】
 3点指摘したい。まず第1点目は、こういうようなデータベース化とか、コマーシャルになっているような機器だとか、こういうものを集めて、一体、最先端の研究を狙いとしたデータベース、研究資材になるのかどうか。要するに、例えば悪い例だが、理研の岡本さんのように、ある研究グループだけが持っていて、そこでいろいろ最先端の研究をやるというケースが非常に多い。1人か2人しかいない分野でやっているというのは、そういう意味でいうと、研究コミュニティー自身がまだ小さいために、こういうデータベースに上がってくるのかどうかというのは、終わってからの話としては、あるいは産業化を前提としてならば、別の意味があると思われるので、どちらが主要になるのか。第2点目は、民活のお話が一応出ているが、ここまで行政が介入して、何か協議会を持たなきゃいけないようなものなのか。むしろこういうことをやるためにそれぞれの学会があるのではないか。もう少し自立的な学会とか協会のそういう活動をどう助けるかという視点があってほしい。第3点目は、計量標準なり、計測方法・機器といったようなものは、まさに、これが研究と直結した新しいベンチャーの種。要するに外国は、そういうものをどんどんつくって、それを日本の研究者が買ってくるというのが実態。日本でそういうものをつくらせるような、まさにここがベンチャーのメーンになる場所だということを、もう少し方法論も、単なる民間の活用ではなく、ベンチャー育成の視点からも、そういうのを活用すべき。

【委員】
 1番目について指摘について、最先端の分野では、研究と機器開発が表裏一体で同時進行している。この部分を知的基盤の整備に取り上げるのは、あまり適当ではないのではないかとの議論もあった。機器開発というのは表裏一体で取り上げていくべきだと思うので、その辺の表現が、本文の中でも十分に表現されていないと考えるので、その点、事務局と工夫、相談させてもらいたい。

【事務局】
 協議会といっても、役所関係だけではなく、学会も含めた形での相互の連携を取ってやっていくという趣旨のことを報告書に記載している。それから、ベンチャーの観点に関しては、あまり報告書のほうでは指摘していないので、工夫してみたい。

【委員】
 あえてベンチャーと申し上げたが、実は、こういう問題が顕在化してきたのは、定員削減の中で、いわゆる各研究所にあった試作室だとか、工作室だとかというのが、大学からも、国研からもみんな、消えていった。自ら自分でつくるという機能が研究所、あるいは研究室の中になくなってしまった。昔は、旋盤を削ってもらいたいと言えば、工作室に持っていけばやれる。そういう試作工場とかというものが研究者の意を受けて加工をする。そういう補助機能というのを定削の中ですべて切ってきてしまった結果、起こっている問題も実はあるんだろうと思うので、それが逆に言うと、今だと、新たに、そういう企業の経験者を入れて、ベンチャー的にやっていく。要するに、なくなっていた試作室の再現をどうやるかというのをベンチャーで再現していきましょうというのにもつながるんではないかというのが、自分が申し上げた背景。

【委員】
 2つ質問したい。1つ目は、これは総合科学技術会議のほうで重点的に整備したいとおっしゃることに、かなりオーバーラップされているが、実は日本のデータベースが、世界的に見て非常に貧弱だというのは通説。日々、例えば、いろいろな大学の中の研究等を通してデータが生み出されているが、そういうものをデータベース化したいというような、もっと、これ以外の部分のデータベース化を支援するようなことは、どういうふうに考えいるのか。2番目は、これはどうしてもデータとしていきたいというものを、重点化以外の分野かもしれないが、集めていくような方式も含まれているのか。日本全体でのデータベース化が非常に遅れているので、何とか底上げを重点的な分野以外に全般的にもお願いしたいということ。

【委員】
 例として、科研費を使った研究から出てきたもの、大学の日々の研究から出てきたようなデータベースすべき事項がたくさんあるが、それを組織的に支援して、データベース化することはもちろん大変重要であるが、そこまでこの報告書の中で重点項目として指摘してやるべきかどうかという議論が少しあった。そのときの議論では、この報告書の1つの目的として、当面の予算配分のガイドラインになるようなものということで、範囲が非常にすそ野が広く、1つ1つの金額については、あまり大きくないようなものについては、この中であまり強調することは差し控えようという傾向で、特に強調はされていない。非常に重要であることは認識するので、本日議論していただいて書いたほうがいいということであれば、その点ははっきり明記したほうがいいと思う。

【委員】
 ちょうど今、基礎研究と目的研究という研究の分類があるが、データベースも同じように、重点化されたデータベースと、そうでないもので、非常に重要なものがあるわけで、両方を支援するという立場が欠けていると、確かにサーチされた部分は非常に充実していくだろうが、それ以外のもので、既に低位にあるところがますます低位になっていくという状況が続く。それ以外のところも、同時に支援する必要があるというコメントが必要じゃないかと思う。

【委員】
 オールジャパンで考えるということで、総合科学技術会議に上げていただくというのは、是非やっていただきたいと思う。省庁間の協議会の問題であるが、やはり1度はやってもいいのではないか。継続的にずっと長くやる委員会が必要かどうかは問題だが。私の専門は計量標準と計測・分析方法だが、その分野の研究開発に対する評価が出される場というのがない。総合科学技術会議の中でも、なかなか取り上げていただけないのではないかと危惧している。要するに、いろいろな用途があって、各分野の中のごく一部として、そういう研究開発が据え置かれてしまうと、やはり本命のターゲットである研究のほうが、どうしてもハイライトになってしまって、その部分は、単なるツールの開発だね、ということで、軽く見られているんではないかという気がしている。事実、そういう例があったので、研究基盤というような柱を立てていただいたというのは非常に大事なことで、今後も、ぜひ継続していただきたい。学協会の中でも同じことが起こっているので、学協会なんかを、これから活用していくのは必要であるが、是非そういう1つのきっかけとして、各省庁間の協議会というものをまず1度立ち上げていただいて、こういう分野の重要性を議論していただくというのは大変いいのではないか。これが第1点。第2点は、国際共同研究が、もう少し計量標準と計測試験方法の標準化を含めて必要だと思っているんが、その辺が欠落していたかなという気がしている。例えば28ページには、国際的な取り組みというのが計量標準について書かれており、32ページには、計測方法のほうで標準化への取り組みというのが書かれているが、是非、この中では、国際共同研究を主導的に強力に進めるというスタンスを取っていただくといいんじゃないかと思う。第3点に、人材の問題は既に発言があったが、計量標準のほうについてはかなり詳しく書いてあるが、計測方法・機器のほうの利用を促進するための体制の構築という31ページのところには、あまり人材のことが強く書かれていない。やはり高度な分析とか、あるいは試験をするための技術者の重要性というのを、もう少し、ここでも強調しておいていただいたほうがいいのではないか。最後に、同じくベンチャーの話に関連して、31ページの(2)の計測方法・機器等の研究開発のところで、ぜひいろいろなプロジェクトの中で、こういう計測方法とか機器の新しいアイデアが出てくるとすれば、特に汎用的なものに重点を置いて、国としてもっと支援をしていただくべきではないかと思っているが、ほとんど、そこのところは民間に任せるという感じになっている。もう少し重視をして、ほんとうに研究開発に役立つような計測方法・機器の開発というものを国が主導してやっていく部分が、まだまだあるんじゃないかと思う。

【委員】
 総合科学技術会議のどこで、これを議論する可能性があるのか。産官学はやるというような話は聞いているが。

【事務局】
 システム開発専門調査会でやる可能性があるが、まだ、これは事務的に相談したわけではないので、はっきり今の段階では申し上げられない。本来、今回の審議を始めさせていただいた経緯というのは、総合科学技術会議のほうで、この知的基盤に関する議論が、なかなか始まらないという経緯もあり、こちらの科学技術・学術審議会のほうで横断的に検討をしようというのが始まった背景としてはある。

【委員】
 サイレントマジョリティーの意見をちょっと申し述べさせていただく。最終的にはサイエンスのフロントラインまで連れて行ってくれるような、いい情報資源がほとんどなくて、大部分は外国のリソースに頼っているというのが現状だと思う。ほんとうの意味での知的基盤を考えたときには、かなりロングタームで、いろいろな介入をしなければならないので、科学技術をほんとうにやるような学生が満足するような、とても良いものを国として、きちんとつくらなければならないので、そういう次の世代のことを一つ考えていただきたい。2つ目は、中小企業で非常に高い技術を持っている人はいるけれども、科学技術全体のオーバービューは必ずしも十分にできないために、自分の技術を生かせなていない。そういうグループが、たくさんいろいろなところに存在して、しかも、烏合で、そういうふうになっているというのが国としてはシリアスな問題なので、そういう人がほんとうに使えるような、しっかり標準とか、あるいはほんとうの意味での知的基盤に相当するようなものを、ユーザーサイドの立場できちんと考えることも必要。

【委員】
 データばかり集めて、使いものにならないじゃないかということで、今、NEDOのほうで、それを有機的につないでいって使えるようにする活動をしている。それから、将来の研究者の卵が入門するときに、順番を追ってアクセスしていくと、だんだん自分で勉強しながら、ついにはねらっているものに行くと。中小企業の人でもできるようにしようと。大変理想的なことで、これは大変だが必要。

【委員】
 知的創造のほうは関心が高いし金も要るしということの中で、知的基盤は地味な分野で、今回の報告書を実現するためには、相当意図的な予算措置というのが必要ではないかと思う。18ページに、現在、200億強というような記述もあるが、今後、どれぐらい必要かというのは、必ずしも報告書にある必要はないかと思うが、掲げた目標の実現のために、予算はどうあるべきかという議論はなされたのか。また、いろいろな目標を実現するにあたって、省庁の連携というのは、もちろん必要だと思うが、ここで扱っているような分野の中で、文部科学省が扱っているものは何割程度あるのかというのを教えて欲しい。

【委員】
 事務局が言いづらいと思いますので、最初の部分だけ申し上げると、今年度は補正を除いて200億という数字が出た。それで、重点化していって、さらに、こんな予算ではだめと。この辺に、さらに大きな金額をという具体的な数字を最初は掲げるつもりで意気込んで作業をしてきたが、事務局のほうが財政当局のほうからストップがかかりまして、これ以上、お金のことは書くなと言われたような経緯もあって、どのぐらいのお金が欲しいかということは、あまり具体的に、この中で述べられなくなってしまったという事情があった。議論の中ではメリハリをつけて、もっと金額を増やしてという議論はあった。

【事務局】
 現在、200億円と知的基盤のための経費を算出しているが、2010年にこの目標を達成するためには、これがほぼ3倍、600億円ぐらい、目のこ換算でかかるんじゃないかと試算した。2番目の質問について、現在の200億円の金額で言うと、大体3分の1ぐらいが文部科学省の関係のものになっているんではないかと考えている。

【委員】
 データベースに関して、データベースにはいろいろな議論があったが、これは非常に長期間にわたって存続するものですから、アーキテクチャーのデザインをきちんとしないとだめだと。それがいろいろな面で、長期的に使いやすい状態が保てるかどうかが決まってくると思う。それから、必要とする情報が非常に容易にアクセスできるとか、またメンテナンスが容易であると。そういった条件を満たすようなデザインというのがしっかりしてないと、形骸化して、ある程度も使われないという状態になるんじゃないかと。もう一つは、そこへ登録されるデータ、あるいは一定のメンテナンスで改廃されるデータを審査する何らかの機関がないと、非常にレベルがまちまちになって、結果として、これも使いにくいというところにつながってくるんじゃないかと思う。したがって、もしデータベースついて、今までのを母体とするようなものがなければ、データベースのところでは、アーキテクチャーデザインに力点を置いたコメントがあってもいいんじゃないかなと思う。

【委員】
 さっきNEDOの話が出たが、NEDOは、一定の何かレフェリーみたいなチェックがあるのか。

【委員】
 8つのぐらいのプロジェクトをまとめ上げるのに、ある基準をつくって、そして、てんでんばらばらなデータを1つの方向に持っていこうということで、要するに、今までは、材料のつくり方やなんかが入らないようなデータベースが多かった。だから、つくり方と構造と性質を一体にしたようなものでないと、結局、使いものにならないんじゃないかということで、レフェリーはないが、8つのプロジェクトのうちの1つが、それを全部見るプロジェクトにした。7つを全部、監視しながら、そこに集約していこうということ。若干、レフェリー的な意味もあるかもしれない。

【委員】
 基盤整備ということで、計測機器とか、そういうものを重点的に整備すると、この産学連携の、ある意味で柱というのは、例えば大学から技術者がどんどん減っていって、教官ばっかり増えていると。実際に、いろいろな物づくりその他の技術が抜けていっているということを考えると、産学連携のキーポイントとか、ベンチャーの輩出とか、そういうところは、そういう不足したところをいかに工夫してやるかということに大体かかっている。これは欧米の例でも大体そうなんですけれども。特に分析機器が精密になってくると、オペレーターの腕次第でもう学生の手には負えないというのが現状なわけで、機械を買っても動かせない。こういう現状認識から言うと、こういうところに今の国立大学の、あるいは公共機関の機器の使用に対する、いろいろな規制をなるべく撤廃する必要がある。ただし、しっかりと、それを計画する、ルールをしっかりつけて、外の人をうまく利用して効率を図ると。こういう知恵が欧米の大学で随分と進んでいる。こういうことも少し、いわゆるガチゴチに規則で縛らないで、知恵を出して、足らない分はそれぞれの民活を入れたり、あるいはいろいろな部分から引き取ると。それは置かれた立場によって全部違うので、各大学あるいは各公共機関が、それぞれ知恵を出し合って工夫をすると。産学連携というのはもともとそういう事業なものですから、その辺が、どこか、この30ページ近辺にもう少し強調して書かれていただけると、我々と連動しやすい。こういうふうに考えます。

【委員】
 データベースの関係であるが、先ほどの最初のデータベースのデザインのところが非常に重要だというのは全く同感。もう一つ、データベースをつくるときに、一般的に言うと今存在しているデータをデータベース化しようというような発想になりがちだと思うが、先端的なもののデータは、どんどんこれから生まれていくわけなので、これから生まれていくであろうデータベース、例を見ていますと、機能性ペプチドのデータベースのようなもの、あるいはタンパク質の構造に関連したようなもの。こういう新しく生まれてきたデータが、どんどん蓄積されていくような仕組みを合わせて考えていかないといけないのではないかと考えている。過去にあるものを整理するのは、むしろそれから後にもできるので、これから生まれていくところがきちんといろいろなところでデータが生まれてきたものがあるところで、データベース化されるような仕組みを考える必要があるのではないか。文献データベースは、それに近い形になって、自然とケミカル・アブストラクトでも、インスペクトでもできると思うが、それと同じような仕組みを考える必要があるのではないかと思う。

【委員】
 さまざまなご意見が出たが、委員長のほうも、この点はプラス、加筆すべきだと何カ所かおっしゃっておられたので、できれば、部会長預かりにさせていただいて、委員長あるいは事務局とご相談して、今後、進めさせていただければ大変ありがたい。合わせて、もうここまで来ましたので、意見募集を行って、その結果を踏まえてまた再度、審議をしたい。それでは、事務局のほうで意見募集の手続について、紹介して下さい。

【事務局】
 意見公募については、8月の中旬を目処に公募をさせていただきたいと考えている。

(2)について

【委員】
 大学の基礎研究というものと目的型の研究というものを、うまく両立させていくことが非常に大事だということで、特に基礎研究がないと、持続的にはブレークスルーが出ないということを前提に置いて、産学官連携をどういうふうにやっていくかという構成になっている。それから、産学官連携は3つあって、産学官連携という問題と、技術移転という問題と、ベンチャー創出の3つのフェーズで行われている。それから、今まで産学官連携というのは急に始まったわけではなく、既に長い歴史があって、それぞれの分野で非常に大きな貢献をしてきた。しかし、個人ベースであったので、もっとこれを組織的な産学官連携にしていかなければいけないということ。更に、社会的なコンセンサスといいますか、こういうことを国立大学、大学の先生がおやりになるということに対して、社会的なコンセンサスが必要である。

【委員】
 今日のところは、ご報告をいただくということが主であるし、また、検討中の項目も多くあるようなので、それについては引き続き、産学官連携推進委員会のほうでご検討いただくと理解している。いろいろご意見があるかと思うが、未定稿ということですので、あとは主査と事務局にお任せをして、精査をしていただきたい。
今後の部会の日程については部会長とご相談しながら調整していきたい。

5.今後の日程

 次回は委員会の審議状況に応じ、各委員との日程調整の上、事務局からあらためて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)