知的基盤整備計画(答申)のフォローアップと見直し

平成16年3月
知的基盤整備委員会

目標値・整備方策について

 国が重点的かつ主体的に整備すべき知的基盤の現状は、2010年の戦略目標に対して概ね着実に進捗しており、引き続き知的基盤整備計画(答申)に従い、知的基盤の整備を着実に実施するための具体的な方策に取り組むこととする。また、現在整備されつつある知的基盤の一層の有効活用あるいは、新たに整備を検討する必要があると考えられる知的基盤整備のあり方等については、今後の課題として適切に認識されるものであり、それぞれ対応する必要がある。


知的基盤整備における今後の課題

1.早急に取り組むべき課題
利用者ニーズを踏まえて広く研究活動に利用・活用される知的基盤の整備
知的基盤整備の一環としての大型研究施設・設備及びその運用(共用化)
利用者側に立った有効な知的基盤整備の状況把握

2.中長期的課題
知的基盤の整備に関する質的な目標の設定及び評価方法の検討
データや情報等の研究成果が利用されることを第一義的に考えた研究実施・管理体制の実現
安定して良質なデータベースが広く提供されるための公的機関のあり方
知的基盤の整備に対する貢献を適切に評価する体制の検討


現在の推進状況(戦略目標に対する進捗状況及び関係府省における主な取り組み)

(1)研究材料
 
各府省庁の研究機関、大学の保有する生物遺伝資源の総数は概ね着実に増加しており、特に動物細胞の保有数はこの一年で急増した。(文部科学省研究振興局研究環境・産業連携課アンケート調査)
微生物 約29万株(前年度比4万株増)
動物細胞 約2万株(同、1万2千株増)
動物(マウス) 約2600系統(同、400系統増)
植物遺伝資源(作物) 約34万点(同、増減なし)
植物遺伝資源(シロイヌナズナ) 約7万4千系統(同、2千系統増)
文部科学省「ナショナルバイオリソースプロジェクト(平成14年度開始)」において、バイオリソースのうち、国が戦略的に整備することが重要なものについての体系的な収集・保存・提供等を行うための体制整備を推進している。
1 中核的拠点整備プログラム:15機関、25リソース(調査を含む)
2 情報センタープログラム:国立遺伝学研究所
厚生労働省・国立医薬品食品衛生研究所「細胞バンク事業」において、培養細胞の収集・品質管理・分譲を開始し、毎年約50種を目標に新規資源の収集を行う。また、」「薬用植物資源保存供給事業」において、薬用植物資源250種(前年度比23種増)2,600株(同、100株増)を収集・同定・保存・分譲している。
農林水産省・独立行政法人農業生物資源研究所「ジーンバンク事業」において、植物23万点(前年度比2万点増)、動物896点(同、247点増)、微生物2.0万株(同、0.2万株増)、DNA15.3万点(同、増減なし)を収集保存、提供しており、新たにゲノム情報を活用したコアコレクションの作成、公開に関する事業を加えた。
林野庁・独立行政法人林木育種センター「森林・林業に関するジーンバンク事業」において、林木遺伝資源の探索・収集、保存を推進し、林木28,000点(前年度比1,000点増)を保存している。
経済産業省・独立行政法人製品評価技術基盤機構「生物資源保存供給施設整備」において、2010年に10万程度の生物遺伝資源の供給体制の確立を目標に、有用微生物等、微生物を中心とした生物遺伝資源の収集、分類・同定、保存、分譲に取り組んでいる。
環境省・独立行政法人国立環境研究所「環境微生物、試験用生物の整備」において、環境微生物、試験用生物の収集・保存・提供に取り組み、微細藻類を中心に環境微生物1,450株(前年度比300株増)、絶滅危惧野生動物細胞・遺伝子を96点(新規)保存している。
文部科学省・理化学研究所「リソース関連技術移転人材育成」において、理研バイオリソースセンターより提供されるリソースの有効性・利便性を高めるため、国内の研究者等に対し、高度な技術の普及を目的とした研修を平成16年度より実施する。

(2)計量標準
 
計量標準は152種(前年比26種増、平成15年10月調査時)で、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構(経済産業省)を中心に、2010年の目標(約250種)達成に向けて着実に整備が進められている。
総務省・独立行政法人通信総合研究所において時刻周波数標準の整備・運用を行っている。
標準物質は150種(前年比31種増、同調査時)で、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構(経済産業省)を中心に、2010年の目標(約250種)達成に向けて整備が着実に進められている。また、標準物質の総合情報システムについても独立行政法人製品評価技術基盤機構において整備が進められている。
環境省・独立行政法人国立環境研究所において知的研究基盤事業として、環境基盤技術ラボラトリーを設置し、環境標準試料24種類の分譲を行っている。

(3)計測方法・計測機器
 
2002年度のバイオ関連機器(核酸・タンパク・酵素関連機器)の国内企業シェアは41.9%(前年度比0.7%減少)で、ライフサイエンス分野の計測方法・機器等は依然として海外に依存している。
計測方法・計測機器の開発に関する研究課題数は、853件、研究者数3,213人で重点4分野を中心に幅広い分野で研究が行われている。(文部科学省研究振興局研究環境・産業連携課アンケート調査)。
ライフサイエンス分野   234件、 1,066人
情報通信分野   29件、 69人
環境分野   91件、 405人
ナノテクノロジー・材料分野   225件、 667人
その他   274件、 1,006人
文部科学省は、世界先端の研究者のニーズに応えられる世界初のオンリーワン/ナンバーワンの技術・機器の開発を推進するため、「先端計測分析技術・機器開発プロジェクト」を平成16年度より開始(一部継続)する。
  このプロジェクトにおいて、1最先端の研究ニーズを踏まえた先端計測分析機器開発、2新規かつ独創的な計測分析技術・手法あるいは分野横断的な要素技術の開発等を行う。
経済産業省は、生物遺伝資源関連の解析機器の開発、人間特性の試験評価方法等の開発、化学物質安全性の試験評価方法等の開発に取り組んでいる。
環境省・独立行政法人国立環境研究所において、生体試料中の化学物質の挙動を解明するため、超高感度分析手法の開発に取り組んでいる。
文部科学省・科学技術振興調整費、独立行政法人航空宇宙技術研究所「機能性分子による熱流体センシング技術の研究開発」において、光機能性分子を利用した圧力、温度、気体組成などの実用計測ツールの開発と実証を行い、様々な産業への応用展開、センサー機能の高度化を目指す。
文部科学省・科学技術振興調整費、独立行政法人物質・材料研究機構「国際的先進材料の実用化を促進するための基盤構築に関する研究」において、超伝導材料・極低温構造材料、強度特性、表面・薄膜、データベース、セラミックス、生体適合材料等の先進材料の特性試験・評価方法を開発、国際的な標準化を図る。

(4)データベース
 
各研究機関・大学において構築されているデータベースは総数で474件(公開可のもの)で、昨年度比115件増加しており、着実に進捗している。(文部科学省研究振興局研究環境・産業連携課アンケート調査)分野別の状況(公開可のもの)は下記のとおり。
生物・生体に関するもの   204件 (昨年度比55件増)
材料・物質に関するもの   128件 (同、22件増)
国土・地球に関するもの   129件 (同、30件増)
その他   12件 (同、6件増)
ゲノム配列等のデータベース(塩基対数)について、DDBJに平成14年10月から平成15年9月の1年間に登録された塩基配列データ数は、1,020Mbps(前年同期比80Mbps増)であった。
文部科学省「タンパク3000プロジェクト(平成14年度開始)」において、平成15年7月現在、362件のデータがPDBに登録済み。
人間特性に関するデータベースについては、経済産業省を中心に整備が進められている。
文部科学省・独立行政法人科学技術振興機構「バイオインフォマティクス推進センター」事業において、生命情報データベースの高機能化のため、1生命情報データベースの高度化・標準化、2高機能生体データベースの開発、3普及活動、4GBIF参画のための活動を行っている。
材料物性データベースのデータ数は約980,000(前年比180,000増)で、独立行政法人産業技術総合研究所(経済産業省)、独立行政法人物質・材料研究機構、科学技術振興事業団(文部科学省)等で整備が進められている。
化学物質の安全性データベースのデータ数は約3,000(前年比100増)で、経済産業省、厚生労働省、環境省を中心に整備が進められている。
経済産業省・独立行政法人製品評価技術基盤機構「化学物質ハザードデータシステム」事業において、国内で年間100トン以上製造・輸入実績がある化学物質、化学物質管理法令の対象物質等4,000物質程度を対象に2005年までにハザードデータベースを整備する取り組みを進めている。
地理情報データベース(GIS)については、国土交通省において、日本全国の2.5万分の1地形図相当のGIS基盤情報を平成13年度中に全て整備し、平成14年度末に全国のデータ提供を行うとともに、インターネットによる閲覧を開始している。
地質データベースについては、経済産業省において、20万分の1地質図幅:103(前年比2増)、5万分の1地質図幅:913(同、8増)、海洋地質図:33(同、増減なし)、火山地質図:11(同、増減なし)、活構造図2(同、増減なし)が整備されている。
総務省・独立行政法人通信総合研究所「高精度時刻比較データベース」において、アジア/オセアニア地域の高精度時刻比較ノード局(機関)として、計測データをGGTTS形式で蓄積し、さらにインターネット上で公開している。
文部科学省・独立行政法人科学技術振興機構において、国公立試験研究機関や独立行政法人等の試験研究情報のデータベース化を行う「研究情報データベース化事業」、研究機関や研究者の情報を収録し、複数のデータベースの統合検索が可能なデータベースを構築する「研究開発総合DB(ReaD)構築事業」が行われている。

(研究振興局研究環境・産業連携課)