第5期先端計測分析技術・機器開発小委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成22年6月22日(火曜日)15時~17時30分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. (1)とりまとめ報告書素案について
  2. (2)その他

4.出席者

委員

石田委員、上野委員、長我部委員、小原委員、志水委員、菅野委員、
杉浦委員、杉山委員、玉田委員、中村委員、二瓶委員、原委員、
松尾委員、森川委員

文部科学省

柳研究環境・産業連携課長、能見新技術革新室長、北郷研究環境・産業連携課課長補佐

オブザーバー

澤田独立行政法人科学技術振興機構開発総括  
本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
安藤独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進部長
平野独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター フェロー
丸山独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター フェロー

5.議事録

(1)とりまとめ報告書素案について

【主査】
 前回の小委員会において、本事業の今後のあり方について、これまでの6年間の経過を振り返り、その成果をまとめるとともに、今後のあり方の議論をきちんとまとめる作業、プラン等についてご同意いただいたところで、とりまとめ報告書の素案を提示させていただく段階となりました。
 まず初めに、原稿の執筆、査読をお願い申し上げました委員の皆様方に厚く御礼を申し上げます。本日、とりまとめ報告書素案についてのご議論をいただきたいと考えておりますが、初めに、本報告書の作成に当たっての考え方についてお話をさせていただきたいと思います。
 本先端計測分析技術・機器開発事業は、平成16年度から発足後6年が経過いたしました。これまでに約300億円という国費が投入されております。例えば国立大学法人、独立行政法人等においても同様で、中期計画の作成、中間評価、最終評価という形態が一般化しております。このような現状の中、本事業も6年経過した時点で一旦総括を行い、より広く社会に対して成果を提示し、自らが批判的に総括すること。それをもとに、本事業は極めて重要であり、かつ継続が強く求められるべき事業であることを訴えるという趣旨からも、今後のあり方についてまとめる。このような考え方で作業を行うことを今年の初めころご了承いただきました。
 したがいまして、このような報告書をまとめるに当たり、再度どういう内容が盛り込まれるべきかという点で考えると、幾つかございますが、まず本事業の問題点は解決されているか。要するに、先端計測分析技術・機器開発ということが必要であることの課題が解決されているか。この6年間にどのような状況変化が起きているのか、あるいはまた起きつつあるのか。本事業を立ち上げ創出された優れたポジティブな成果は何か。本事業の不十分な点はないかなど、これは評価の一般的な項目であるが、そのような内容、議論に耐える報告書でありたいと考えております。そのような意味で、再度本日、初めて全体像が明らかになったわけですので、全体をごらんいただくとともに、もちろん各項目の詳細についてもご意見をいただければと考えております。

 本日の議論の進行については、本報告書の構成が大きく3つの章に分かれて書かれておりますので、各章ごとにごらんいただいて意見交換するという方法を考えております。

 今回、このような形で報告書素案としてまとめたのは、全体として重複を避け、表現、テクニカルターム等の統一を行いました。また、全体の分量も考え、全体は若干短縮しています。執筆者の皆様からも、ご意見があれば頂きたいと思います。査読者の立場からご覧頂くことも重要で、既に査読者として頂いたコメントが執筆者に返され、執筆者がそのコメントを受けて再度修文しているプロセスが加わっております。そのような点もご覧頂ければと思っております。

【委員等】 
 1(2)エの5行目、「しかしながら、このような領域分断型」という表現がありますが、領域とはどこを指しておりますでしょうか。

【主査】
 領域という言葉は今のような誤解を招くことは確かでございます。従来型のプロジェクトというのは、もう少し大きな、大領域という表現をそこでは使っております。例えば生命科学、ナノテクノロジー等のレベルです。表現を検討いたします。

【委員等】
 概念としては、ナノテク、バイオテクノロジー等のイメージでよろしいですか。

【主査】
 それで結構だと思います。今までのインスツルメンテーションの開発は、どのようなレベルで行われてきたかをイメージし書いておりますが、恐らく大領域、次の中領域ぐらいでも横の連携は難しいというのが従来だと思います。ですから、この領域という表現は難しく、普通ですと、分野といえばかなり広いものをイメージします。ですから、分野横断型という表現はよく使いますので、そのあたりのほうがいいかもしれません。

【委員等】
 5ページ目に研究開発プラットフォームという言葉が出てきます。この後もこの言葉は1つのキーワードになっておりますが、ここで述べている研究開発プラットフォームの役割として、どのような事をどのような方々が集まってされるのでしょうか。

【主査】
 30ページの下側に概念図がございます。プラットフォーム概念というのはよく使われる言葉で、一言で言えば電車のプラットフォームです。いろいろな、ある目的のためにプラットフォームが作られ、そのプラットフォームは幾つかの機能を持ち、そこを自由にユーザー、メーカー、いろいろな立場の方がその場を利用し、情報の共有をする。
 研究推進機能をもちろん支えるわけですが、そのためにはマネジメント機能が必要であり、マネジメント機能にはポリシーメーキングの役割がありますので、当然調査機能も必要であります。また、成果の社会還元の機能も必要であり、その前段階としての広報等の機能が必要であるということで、この絵に一通り盛り込んでおります。
 非常に大事な概念ではあるのですが、恐らくこのような形で提言されているのはあまり例がないのだろうと思います。先端計測分析技術・機器開発という目的のためのプラットフォームですので、逆に言えば、そのプラットフォームという概念を何にどういう形で適用するのかという具体化をしないとイメージができないのだろうと思います。

【委員等】
 はい。わかりました。

【主査】
 第2章の各節あるいは項に関して、ご意見並びにご質問等、いかがでしょうか。

【委員等】
 なぜ国産を買わないのか、何となく外国製のほうがいいということがあります。もちろん、使い勝手が良い等もありますが。
 例えば科研費の審査に当たって、国産の計測機器を使う場合は優遇等、いろいろ方法はあると思うのですが、選定理由で、なぜこの機械が必要かというのを書く箇所があります。
 該当する国産機器がある場合には、それがなぜ悪いか、なぜそれを使えないかということを書いて頂いたらどうかと思います。そうすると、これが悪いから、どうしても外国製を買わなければならないという理由が出てきたら、日本製が悪いということを、機器メーカーにフィードバックして、大学とメーカーとの連携強化という形に持っていくことはできませんか。文部科学省全体で、国の政策として国産機器をもっと優遇する。それから、もう一つは、教育上の問題です。何でも格好のよい装置を持ってきて、ボタン1つでデータが出るようになっており、実験の研究室でもほとんど教育になっていません。要するに、理論屋が何か理論をつくって、それに合うようにデータをつくっていくという、昔は1点1点とってたのが、今ではボタン1つでコンピューターの上に、きれいなグラフが出てくるのです。
 このようなことが実験になってしまっているので、使いにくい装置でも、それでは絶対にデータが出ないのかどうか、きちんと買う人にわかってもらう必要があると思います。大学の場合は教育ということがありますから、いろいろな見地から先端計測で開発しているもの、あるいはクラスターやそういうところでやったもの、いろいろなものも含めて、もっと活用するということを、文書だけではなく、なぜ国産品がだめなのかということをきちんと書くということと、国産品を使う場合には、科研費などで優遇するということを具体的に政策としてやれないかと思います。

【主査】
 かつては機器購入の際には機種選定、予算ランクに従って機種選定委員会の構成も決められておりますし、必ずそれをやることが義務づけられていると思います。

【委員等】
 分析機器は道具であって、既製品があるのならばそれを用い、出口に近いところにもっとエネルギーを使うということが、一般に日本は根強いと思います。研究者が装置を購入し、自分の目的に合致したものに直せる人は非常に少ない。そういう教育もあまり十分行われていないというのが根深いところにあります。日本の分析機器は優秀だと思うんですけれども、少し立ち上がりに時間がかかったり、非常に使い勝手が悪い部分もあります。日本は高性能化をねらい過ぎているのでは。

【委員等】
 電子顕微鏡を初期のころから使っており、機械的に調整していたころには非常によくわかっていました。ところが、電気的な機器、電子機器となり出したときからユーザーはそれを使えなくなったのです。
 昔は機械が入って、メーカーの人が来て、一緒に討論しながら、ここはこうやってほしい、ああやってほしいということをやれたんです。ところが、あるときから、そこから我々は完全に手のつけられない世界に入っていった。
 ですから、開発的要素がなくなったのではなく、開発的要素に対し拒絶的な機械が売れるようになってきてしまった、売られ出したというところが一番の問題で、どんどんユーザーから離れていったのではないか。

【委員等】
 機械というものは手を入れないと動かないという認識があるけれども、今はそうではなく、なるべく中をあけて触らずにという考え方です。

【主査】
 ここの報告書で取り上げているいろいろな記述も先端的機器です。普及品に関しては、日本の産業は非常に強い分野だと思いますし、その動向というのはまたいろいろな別の要素があると思いますけれども、先端機器の開発に関して言えば、もちろんいろいろな要因はありますが、測定機器としての性能、ユーザーにとっての使い勝手、ほかにいろいろな要素があると思います。それを競っているわけですから、やはりそれ相応の先端機器の選定に関しては、機種選定をきちんとやること以外ないんですね。もちろん、目的に対応して、どんなユーザーがどういう研究分野に対して使って、これが適当であるということを複数の人間が認定するという制度をきちんとやらせることしか公的にはできない。あとは、価格の問題ですから、競争入札で価格を適正な価格で買う。
 ただ、やはり研究費がそれなりに豊かになってくると、そういうマイナスの面が出てくるという点はあろうかと思います。
 科学技術イノベーション政策とイノベーションがついてくると、大学の研究室のあり方も、やはり考え方も変わってきますので、その点も含めて適切な、機器を購入するということはもう一度徹底しないといけない。これは当然のことなんですけれども。それに耐える装置を開発する環境を作っていく役目、誘導する役目を持っていると思います。

【委員等】
 知的基盤整備委員会での議論として、先端分析機器のマーケットについて、本事業がシェア向上を目的としているのか、それは産業政策ではないのかという議論があります。平成16年の報告書では、当時の日本における海外製品のシェアが大きいと明確にありました。本見直しの段階で、平成16年と現在でのシェアに関する議論は、変わっていないと添付資料にあるわけですが、むしろ開発の成果・現状を先に持ってきたほうがいいのではないでしょうか。
 マーケットの記載部分は、ここではぼやけてしまうところがあるかと思いますので、参考資料としてはどうでしょうか。

【主査】
 シェアを上げることが本事業の目的かというと、そうではないので、誤解されないような報告書にすべきという指摘がございました。おっしゃるとおりだと思います。

【委員等】
 8ページのオにおいて、大学を含む研究開発部門と製造プロセス部門を比較がありますが、例えばライフサイエンス系のものに関して、こういう比較はあまり意味がないように思う。場合によっては、例えばDNA検査を含めて、医療機関全部を考えなければならないのでは。つまり、マーケットが全然違うんです。ライフサイエンス系では、非常に大きなマーケットの中の一部に、技術的に先端化したものを売り込んでいる、それに対して、ナノテクノロジーは、確かに日本は強いと思うが、ライフサイエンス系は、病院、医療機関、検査機関等、ほとんどが外国製品を使っており、非常に大きなマーケットを持っている。そのほんの一部の中の技術的に高いものを、研究所が買っているという形だと思うので、この比較だけでは出ていないのではないかと。もう少し全体的に見た上で書く必要があるのではと感じております。

【委員等】
 評価をする側の問題もあるかと思います。どのような成果を評価するのか。すぐに簡単に使える機器を購入し、たくさん論文を書くことを評価するような評価側の姿勢が変わらない限り、こういう問題は変わらないのではと少し感じています。むしろ、本事業は、突出した成果を出すことが大きな目的と思いますので、突出した成果に対して評価するような、評価側の意識を変えることを盛り込むと良いかと思う。

【主査】
 研究成果の評価に関して、どのポイントで勝負するかということをもう少し明確にしないといけない。先端計測分析機器の技術を高めることがさらに高いレベルの研究成果の創出に結びつくもの。言葉では言っていますが、報告書全体のニュアンスがそうなっているかという点ですね。確かに現在そう見えていると思います。テーブル等は参考資料とし本文をすっきりさせ、目標を明確に述べつつ、現状をコメントするという書きぶりの方がいいかもしれません。

【委員等】
 26ページの周知広報活動に、若手研究者の装置づくりマインドに関する文章があり、大学の問題点として、ものづくりの場がなくなっている点について指摘がありますが、このようにさらっと書いても、おそらく若手研究者は喚起されないと。企業のものづくりの問題に関する記載もない。大学でのものづくりが減っているのは、大学の中で独自にユニークな装置を開発する風土がなくなってきているため。これが問題で、それをきちんと作らせることも本プログラムの中に今後見ていくものでないと。非常にすっきりと書いてあるのがよくないと思う。

【委員等】
 まさにその問題点について、11ページのウで一番申し上げたかったのは、まず定員削減法実施における技官定員の削減。これは1999年に公務員を10年間で25%削減するという省令があり、大学は技官と事務官の定員を削減し、工作センターは3分の1ぐらいに定員を削減した。 
 2番目は、1965年に開始された科学研究費における試験研究が1996年になくなり、その後、展開研究ができた。試験研究にはAとBがあり、Bの方が予算が小さい。それは200万、300万の研究費で、85億の金額を試験研究に導入した。総額は924億であるので、ほぼ10%近くがものづくりに投資されている。これがなくなったというのは非常に痛手だと。
 では、そこをカバーできているかというと、それは要素技術が廃止された試験研究のわずか4%(2009年)。昨年は突出して高いが、今年はおそらく1%程度。つまり1996年の試験研究がなくなったときの金額の1%が、わずかにこの要素技術が支えている。これでは要素技術のプログラムが、その役割を担えない。
 若手がものを作れなくなったかというときに、もっと痛切に反省しなければいけない。1つは、定員削減法で教官定員を削減せずに技官定員を削減して3分の1ぐらいに減らしたのは、当時の大学の教官の見識を問われていると思っている。
 それから、運営交付金が入っておらず、かつての運営交付金で50万や100万で装置を改良しながら研究を行っていた時代がなくなり、競争的資金により研究費を獲得するのでは、ものづくりは育たないと思っている。
 学生がものづくり出来なくなった環境を作ったことに対する反省を踏まえた提案も、この中に組み込むようにしていただきたい。

【主査】
 現状の問題点、今後の課題、両方にかかわってくる。

【委員等】
 これは一番トップに来るべきだと思う。今一番思うのは、大学の人材育成に我々の本事業がどのように関わり合い、そしてどういう反省をしながら推進してくべきかという視点、フィロソフィーがどこかへ飛んでいるのではないか。

【主査】
 全体として、本報告書のミッションに照らし、レイアウト、ものの言い方も含めて少し検討すべきだと思います。仕上げの段階をもう一度タスクフォースでじっくり検討させて頂きたいと思います。

【委員等】
 昔は機械工作室、電子工作室、ガラス工作室等において、職人気質の人と一緒に作っていたが、そういう人たちがすごく減ってしまって、先生方はものすごく困っている。特に最近は電子機器など難しくなっているので、コンサルタントのような人にいろいろやってもらったり、大学の基本的機能として、残念ながらその辺がすごく薄れている。そこは新しく作っていくところで、非常にネックかと思っています。
 最近では、ソフトウエアでいろいろやらなければいけないから、ソフトのウエートも大分増えている。本格的に装置に組み込むソフトというのはプロフェッショナルが要るけれども、最近ラボビューなど、学生で好きな人だったらいじれる、そういうソフトも増えています。電子機器、機械工作、ガラス工作、その辺の基礎力を蓄えることが文部科学省として何か必要ではないかと。

【主査】
 若手研究者のものづくりマインドを再構築したいというアイデアは、今の項目立ての中にもある。ただ、それをもう少し上手に訴えるべきだというご指摘で、なぜこうなったのか、これを改善するにはどうすればいいのか、それをもう少し書き込んではどうかというご指摘だと理解いたします。

【委員等】
 これまでものづくりでずっと来て、経済成長もあった。そしてそれが崩壊した後、世界の情勢としては、要素技術ではなくシステム科学。システムとして組み上げる技術が非常に重要になったにもかかわらず、日本は科研費でも減ってきている。
 ものづくり大学をつくったり、ほんとうにシステムをやらなければいけない時期にそういうミスをやってしまったために、日本では設計デザインということができなくなってしまった部分がある。むしろ計測機器で今一番求められているのは使い勝手であって、決してものづくりで各研究者が自分で工夫して何かしなさいという話ではないと思う。
 例えばライフサイエンス系は、ものすごいスピードで進んでいるにもかかわらず、ノスタルジアで言っていたらだめだと思う。システム科学的な思考がもっと必要なのに、要素技術に陥ってしまっているほうが問題だと思う。

【委員等】
 大学は、競争的資金で人材を育成しなさいとなっている。例えば3年、2年ものの研究費で2年間雇い、そこで仕事をやっていいデータを出しなさいというのが今の社会。そこでシステム科学をきちんとやれるか。大学院で十分な競争資金で、今年は来るけれども来年は来ませんという中で、そういう継続したシステムをやれるか。これはプロジェクトとして、ある企業は大学に研究費を出して、このシステムをつくってくださいと。コンピューターのシステムをつくらせるようなものを企業は逆に出しているんです。
 ところが、国のほうは全部競争的資金に頼りなさいと。2年、3年で細切れにして来る。これはものづくりもできないと同時に、システム科学も勉強できず、きちんと育たない。それはなぜかというと、2年、3年で切られた人材育成が長期にわたる、例えばマッキントッシュが一時だめになってから数年の時間がかかって出てきているわけです。それぐらいの時間がないとそういうものはつくられてこないわけです。それをつくるためのベースになる人材は、さらに数年前からつくられているはずです。ですから、10年ぐらいのタイムスパンがないとできないわけです。
 ものづくりに偏っているのではなくて、すべての分野がそれで動かされているところに一番の問題がある。

【委員等】
 私のスタンスは、ものづくり文化の基盤を支える若い人たちをどうやって大学の中に育てていくかという視点。iPodようなシステムデザインに追いつくために、大学の人材を即席でシステムに移すことは、逆に大学をつぶすようなもので、それは間違っていると思う。それは教育の視点であるのか。
 先ほど来の視野を広げる、分析機器をたくさん売るという議論は、経済産業省がやるべき問題だと思っている。大学の次を背負う人材にどうやってものづくり文化を支えてもらうかという視点が重要であり、日本の大学の中でシステムづくりが中々立ち上がってこない。そこがどこにあるか、もう少し真剣に考えることが大事ではないかと思う。

【主査】
 本委員会の目的は、先端計測分析技術と機器をつくることが、我が国のトップレベルの科学に貢献するという信念のもとに議論しておりますので、出口志向の議論はいろいろありますが、それは参考にさせて頂きます。

【委員等】
 23ページの「展示会、シンポジウムを通じたPR活動」で、「Bio-Japan」とありますが、これはハイフンが間違っているのでは。
 また、25ページの一番下の「知的財産の生産性をあげる努力も必要である」という表現になっていますが、「知的財産の生産性をあげる」というのはどういうことなのか。ここで言うのは、強い特許とか非常に質の高い特許という意味ではないかと思うんですが。
 「知的財産の生産性をあげる」といいますと、短い時間でたくさん知的財産を生み出すとか、少ない人数で知的財産をいっぱい出すという誤解を招きますので、これは強い特許・使える特許という意味だと思いますので、ちょっと表現を変えて頂ければと思います。
 それから、26ページ目「周知広報活動」で、「なお、必ずしも計測分析機器の専門家ではない一般国民に対して、本事業の意義や重要性をアピールするためには、個々の開発成果が社会に与えるインパクトを評価するなど客観的で分かりやすい指標を設定し実績を数値化しアピールすることも重要と考えられる」と書いてありますが、これは何を言おうとしているのか。

【事務局】
 開発成果があった場合に、それが実用化され世の中に普及し、社会還元が行われた結果を、客観的な物差しの下で成果を説明できないのかということである。

【主査】
 もう一つ具体化できると良い。

【委員等】
 これは売り上げではないのか。

【主査】
 売上げではなく、計測、分析という道具、技術が高まると、世の中何がよくなるのか、この辺りをうまく表現できないかと考えている。この種の目論見というのは、確かにあまりやられていない。

【委員等】
 EURAMETが広報誌『Metrology-in short』という冊子を出しており、その中で一般向けにわかりやすく、実際の計測の役に立った事例を5個から10個書いてあるものがございます。

【主査】
 そのような努力が大変大事であることは承知しており、定性的な事例を幾つか見て頂くのは最初にやるべきことで、参考にさせていただきます。

【委員等】
 報告書の構成として、2番目のところに市場があるのが、やはり大きな問題なのではないかと思う。教育の問題と市場、国際的競争力というのは全く別な話ですが、何となくここに入っていると、売れるものがいい装置、バイオは技術が低いから売れない、そういう印象になってしまう。実は日本の企業で売れているものはこんなにユーザーアンフレンドリーなのに売れている。そういう意味では技術力とイコールなのかもしれませんけれども、そうではない問題がたくさんあると思う。
 ここに入れてしまうと、一緒くたになってしまい、先端研究を支える計測技術という意味合いが薄れてしまう。間に入っているために議論が錯綜しているような印象があります。

【主査】
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょう。よろしいでしょうか。大体大事な点はご指摘いただいたと思います。 それでは、第3章について、ご質問、ご意見をお願いします。

【委員等】
 客観的評価の指標について、40ページにおいて、先端計測は、成果が間接的であり非常に見えにくい側面もあるということですが、ぜひ先端計測分析の分野ならではの指標確立を進めて頂ければと思います。
 専門家以外に対するアピールもありますが、我々の分野でも、これは1つの指標になるのではないかと思います。
 イの周知広報活動で、本事業の意義や重要性のアピールについて、今、3章で基本的考え方として挙げた手法の検討を、まず最初に今後の課題のところで、小出しに出してみてはいかがでしょうか。

【委員等】
 例えばライフサイエンス関係というと、DNSA検査など、典型的なものが書いてありましたけれども、計測分野で特に質量分析というのは、先週も国際学会があったんですけれども、参加者が非常に増えており、中でも医者が多いようです。今、分光学会、質量構成学会は非常に元気で、それの応用を集めて、医者に代表されるように、ライフサイエンス関係の機器として非常に将来が期待されていると分析している。その一因は、新しいソフトとして、イオン化の開発のようなものが口火を切ったと思うし、幾つか新しいライフサイエンス関係の分析、質量分析開発も行われており、かなり我が国が先導している。ライフサイエンス分野で新しい機器が、我が国からできつつあるようなことはどこかにあってもいいのではないか。2章で取り上げれば良いと思う。

【主査】
 2章の成果でもう少し顕に、コントラストをつけて。
 それから、市民レベルでわかりやすいイラストのようなものを添えてPRする。今までのPR媒体というのは大体、専門家向けのものが多く、表現方法もそういうものです。もう一段、市民レベルに置きかえるような努力をして、添付資料につけておくことができるといい。
 開発総括の皆さんがお持ちの意見を、まとめて吸い上げる仕組みがあるとよいのですが。
 たくさん網羅的に挙げる必要はなく、顕著な例を3つぐらいピックアップすればいいのではないか。

【委員等】
 市民レベルへの添付資料ということでしたら、わかりやすいイラストだけでなく、開発秘話みたいな、少し情緒的に、興味を持ってもらえるようなものも、検討していただけるとよいのでは。

【主査】
 3つ程度の分野で成果例を作って頂く。

【委員等】
 一般の国民目線での広報という考え方に立って、できるだけわかりやすい原稿をいただくよう、各部の窓口も一本化し、戦略広報タスクフォースとの連携等、対話しながら連携して行っていきたい。

【主査】
 ぜひともよろしくお願い申し上げます。

【委員等】
 非常に重要な視点として、国際標準化があります。最初の設定時点から、強く、行うべきこととして記述されているのは、逆に、開発意欲を抑えられてしまうのではないかと。国際標準化は、後づけすることはいいと思いますが、最初からそれを前提にすることは少し不思議な感じがする。
 それから、知財の部分は、附属資料で、こういうことも検討しなければならない程度での書きぶりではどうか。

【委員等】
 今まで先端計測分析技術の中に、国際標準化の視点がどれぐらい入っていたのかが、少し前提にあり、今、日本としても標準化をしなくてはいけないと、様々なところで議論がある。そういう意味では、ここに書いてあることがそのまま先端計測に当てはまるというよりは、むしろ国際標準化をやる上で必要なことを書いたというような形になっています。
 一方で、既にある技術を標準化するのは非常に難しく、これからナノテクとかバイオも含め非常に難しい技術が入ってくる中で、初期の段階でいかに国際戦略、標準化戦略を考えるかが非常に重要です。これは国の方針にも出ていますので、先端計測というのはオンリー・ナンバーワンの技術をつくるということであり、最初にどのような戦略を持つか、じっくり考えるのが大事ではないか。そういうことで、最初にというのは意識して入れてあります。
 それが同時に、プラットフォームの戦略に効いてくるのではないかと思っており、今回は6年間やってきた1つの見直しの段階ですので、数々のいい成果を国民にわかりやすい形で説明できれば、今後もそれを継続すればいいと言い切るだけでいいわけです。ですから、そういうことを言いつつ、国民にわかりやすく説明するためには、初期の段階で、こういうことに役に立つのではないか、国際標準もこうなっていくのではないか、そういう設計思想が入っていれば常にわかりやすく説明できる。これは非常に難しい課題を背負うことなんですけれども、多分そういうことをプラットフォームで議論していくのだろうと考えております。

【委員等】
 事業開始から6年が経ち、特許が出願され、一部は権利化されているが、一部においては利用されないままの状況になっている。国費を投入して獲得した、ないしは出願した特許がそのままで置かれるのは、国費の浪費ではないか。それをなるべく使えるような形にしていくこと、これはJSTとして、先端計測事業以外でも大きな課題になっております。大学等で発生する特許をなるべく利活用するような仕組みをつくっていこうと、文部科学省と協力して、パテントコモンズという制度を発足させることで進めており、それを若干含めて説明したということです。

【委員等】
 研究開発プラットフォームという言葉について、最初マイナスのイメージがあったのですが、知の創造、融合を目指すということで、今改めてその重要性を説くのであれば、知の融合の例のようなものをもっと表に出しては。例えば6年の成果であっても、例えば医学系の人が質量分析のような新たな展開が今回のこういう試みで出てきているということを、売れた、売れないというよりも、新しい発想が出てきたという点をアピールする。そのためにプラットフォームが重要であると。そういうところを意識的に入れてもいいのではないか。

【主査】
 学術分野ではそういう意識が乏しかったというのは事実で、それを乗り越えることが大きな発展につながるということを気がつき始めた。ご指摘のようなプラスのイメージを強く、プラスの成果を強調する形で主張するというような文脈にしたいと思います。

【委員等】
 本プログラムで画期的な技術に基づく分析機器が開発され、それがデファクトになり、自然と国際標準化になる。そういうストーリーは、なかなか例としては想定が確率的に低い中で、これまでの6年間ですばらしい成果が上がってきていると思うんですけれども、それを国際標準化の視点からもっと後押しするような施策もこのプログラムに補っていくべきではないか。そういう問題意識があり、本事業の出口の中でノーベル賞になるとか、何か先ほどから出ている一般国民の皆さんにわかりやすいと言っても、難しい技術をただわかりやすく説明するだけではなかなか理解が得られなくて、何らかの成果として具体的な指標の1つに本事業から出たすばらしい技術が国際標準まで到達し、それが世界的に普及していくというような視点も考慮させて頂いた。

【委員等】
 国際標準というのはどういうことをイメージされているか。国際標準をどのようにとらえるかが問題。

【委員等】
 国際標準は、多分個別に、それぞれ考え方が違うだろうと思います。先端計測の中でできる国際標準は何かと考えたほうがいいのではないかと思っております。計測の観点から、長さを測る、物を測る、それから質量を決める、そういった視点からいきますと、あらゆる産業において、長さ、重さ、そういったものが国際標準化になっていきます。そういうところに使う機器であり、そこで正確な数値を出すこと等、さまざまな視点で考えられます。

【委員等】
 例えば感度さえよければいいと、質量だったら、そういうふうになりませんか。

【委員等】
 例えば質量でいったときに、感度を出すときに、その感度が国際標準になる分野があります。要するにこの感度でこの範囲内にデータを出さなければいけない。それが国際標準になってしまいますと、それに見合った製品をつくっていかないと事業が成り立たない。そういったときに、そこにどの装置ではかりますかということになってくると思う。そういったものに先端計測がなり得るかどうか。

【委員等】
 どんな装置でもその範囲に入っていればいいわけですね。

【委員等】
 測る側と測られる側、両方ありますので、対象によってまた全部違ってくると思います。

【委員等】
 つまり、自分たちがここで開発した機器がその感度に到達した最初の機器だったとしても、後からもっと安く使いやすい、同じ感度を持っている機器が別の会社から出たら、マーケットとしてはそちらのほうに全部行くわけですね。

【委員等】
 そうです。

【委員等】
 そうすると、ここでの成果というのは、最初の基準をつくったけれども、その基準はお金を稼ぐというような観点からは役に立たなかったという結論になってしまうかもしれない。しかし、それでも国際標準化したと考えるということでしょうか。

【委員等】
 そういう観点でいきますと、1つの技術ができたら、何年かすれば必ず置きかわっていくと思うんですけれども、置きかわらないケースもあるし、寿命を延ばすこともできるわけです。今の時点である感度ができたときに、その感度を満たすような国際標準化ができ、その装置でしか測れないような条件が入ってきますと、その装置はしばらくは延命します。つまり、今、アジア、それから欧州を含めてどういう基準でつくっていけば自分たちの産業、商品を広く普及することができるか、産業界は必死に考えています。そこで必要な計測装置が仮にあったとすれば、その計測装置の許容範囲は決まっていますので、それが長い間、寿命を持つような国際標準に持っていけばいいわけです。つまり、技術というのは必ず寿命がありますので、国際標準を使って寿命を延ばそうとしているのが今、1つの競争です。ほかにもいろいろなやり方があると思います。

【委員等】
 最初の開発者に名を連ねただけで終わらせないような標準化の戦略というのは技術力だけではなくて、政治的なものもあり、開発者の方の名誉だけじゃなく、それを標準化することによって国益にまでなる。標準化推進によって、いろいろな国の認証機関がまず、オリジナルが日本にあるとすれば、日本の認証機関のスタンダードに合わせていくようなことにもつながっていく。最初の開発者だけで終わらせているのが我が国の現状だと思いますが、そこを補完していくことは、非常に重要だと。
 それを文部科学省の先端的な分野でそういうストーリーを何とかつなげていけないか。少ない予算の中でもそういう工夫は可能ではないか。そういう視点をぜひ持っていくべきではないかと思っています。本事業の中で標準化の予算をつくると意味ではなく、そういう視点からまず戦略がとれるのではないかという意味だと理解しています。

【主査】
 標準の議論は、学術の世界では一般的に認識が十分に行き届いていないという現状です。ただ、先ほど、ものづくりの議論にありましたとおり、世界のいろいろな意味でのイノベーションの時代の戦略としては、標準に関わることが極めて重要であるというのが、既にいろいろな事例で明らかになっております。
 したがって、開発と研究と製品レベルの国際競争力の議論において、学術の分野では十分に認識が届いていないんですが、明らかに研究開発の領域で標準をどこまで念頭に置くのかで将来の勝負が決まるという風潮に現在なっております。文科省レベルでも標準の議論というのはまだこれからという部分があるんですけれども、これは必ず今後、非常に重要な議論になるというトレンドでございますので、ご理解をいただければと思います。

【委員等】
 JSTのプログラムで、製造も見事で、製品としても見事だったんですが、これで国内標準を立ち上げてスタンダードに持っていこうという矢先に、ヨーロッパが光学顕微鏡で形状を見るというのを標準としてやられた。標準をねらったというところが抜かれてしまって、汎用型の装置で市場に出して、このこと自身は成功した。ただ、そのときに、チームのバックアップをもう少し広い視野で標準という視点でバックアップできなかったか。

【委員等】
 日本が独占しそうな技術を開発したから、ヨーロッパは違う標準をつくるんです。ヨーロッパの強みというのは今、技術ではなくて、国がたくさんあるということにあるんです。
 経済産業省はオープンにしない。文部科学省はオープンにするというのは悪くないんです。使い分けられるので。アメリカは、自分の強いところでは全部オープンでいく。例えばソフトウエアとか。でも、機械の工作といったら、今、日本が圧倒的に勝っていますから、そんなところでは一切オープンなんて言わないんです。日本もそういうふうにうまい使い分けができると国際標準には対応できると思います。

【主査】
 そういう見方はあります。しかし、日本の戦略を立て直さなければいけないのが今の時点ですから、そうあきらめてはいけない。
 今日の議論では、原案作成者は問題意識が明確で、執筆者サイドのご意見もありました。今後のプロセスをご理解頂いて、さらなるご意見は、事務局にぜひ寄せていただきたいと思います。ご発言なさった委員の皆様でも、もう少しかみ砕いて、こういうことであるとご意見をお寄せいただければ、なおありがたいと思っております。
 第7回の小委員会は7月21日に予定させていただいております。その前に、タスクフォースのレベルでの検討を1回させていただきます。その時点で成案に向けての最終調整をし、その結論を第7回の小委員会の少し前に、委員の皆様方に配付をさせていただいて、それを点検していただいた上で最終的な結論を第7回の委員会で得るという段取りを考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、本日の委員会はこれで終了とさせていただきます。本日は大変ありがとうございました。

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