第5期先端計測分析技術・機器開発小委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成22年1月15日(金曜日)15時~17時15分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成22年度予算案について
  2. 産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成22年度重点開発領域について
  3. 産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成22年度の実施について
  4. 産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成23年度以降の実施について
  5. その他

4.出席者

委員

石田委員、上野委員、長我部委員、近藤委員、佐近委員、志水委員、
菅野委員、杉浦委員、竹内委員、田中委員、玉田委員、中村委員、
二瓶委員、原委員、松尾委員、森川委員、山科委員

文部科学省

柳研究環境・産業連携課長、能見新技術革新室長、北郷研究環境・産業連携課課長補佐

オブザーバー

眞峯独立行政法人科学技術振興機構理事
澤田独立行政法人科学技術振興機構開発総括
本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
安藤独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進部長

5.議事録

(1)産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成22年度予算案について

【事務局】
 資料1は産学イノベーション加速事業【先端計測分析技術・機器開発】平成22年度予算案でございます。先端計測分析技術・機器開発事業がこの産学イノベーション加速事業の中に含まれております。予算案金額ですが、1ページ右上の平成22年度予算案にあるとおり、事業全体として6,224百万円となっております。そのうち先端計測分析技術・機器開発は事業概要の中に書いてあるように、平成21年度が63億円、平成22年度の政府原案では4,951百万円となっております。
 予算案は今年度予算額の63億円と比較して非常に厳しい数字でございまして、予算が大幅に縮減をされるという非常に厳しい状況となっております。こうした中においても、すべてのプログラムにおいて新規採択を行うことが重要と考えておりまして、全ての課題において新規採択を実施するという前提で、予算要求をしている状況でございます。
 2ページ目は、先端計測分析技術・機器開発の概要を1枚にまとめたものでございます。研究開発成果の社会還元を推進するということが一番下の部分に書いております。これも非常に重要であり、こういった活動経費についても予算全体が縮減されている中において削減をしつつも、予算要求として入れてあります。

【主査】
 若干補足させていただきますと、49.5億という予算で、4つのプログラムがございますが、そのプログラム、いずれからも公募ができるという枠組みが維持されたということが大変大事なポイントでございます。形の上では、それぞれ1件ずつということで、公募を実施するには大変厳しい状況ですが、現行の事業において、予算面での詳細な点検を実施し、可能な範囲で、かなりの縮減を継続事業にはお願いするということをお考えいただいております。
 そのような形で新規事業の新たな公募を可能な範囲で充実させたいという発想で22年度の事業実施に向けて検討したいというのが基本的なスタンスでございます。第2の議題は、それではどういう開発領域が重要であるかというご議論をお願いいたします。その前提は、今のような考え方に基づくということでございます。それで、第3の議題で、22年度の実際の事業の実施についてJSTの立場から詳細にわたってご説明をいただき、本委員会で十分議論いただいた上で、22年度実施体制を組み上げるということになります。このように22年度、事業実施に向けての基本的な事柄をご議論いただきたいというのが本日の一番大事な議事でございます。
 とにかく可能な限りしっかりした内容の新規事業を採択したいという方向で、本日の議論を進めたいと考えております。

(2)産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成22年度重点開発領域について

【事務局】 
 資料2「産学イノベーション加速事業【先端計測分析技術・機器開発】平成22年度開発領域について」の1~2ページは、先般、重点開発領域候補案に対する各委員の投票結果をまとめたものです。15名の委員の方から、ご意見をいただいております。
 1ページは、新規の領域に対する投票結果を示したものでございます。当初ご議論いただいた際には、候補の1~4まで、4つの領域案をご提示しておりましたが、来年度の予算案の状況その他を踏まえ、主査ともご相談させていただき、当初の候補1~4のうち、先般いただいたご意見の中で最も委員の指示が多かった候補4について、事務局案として提示しています。また候補4は、当初、4-1~4-3までの3パターンを示しておりましたが、委員から追加のご提案があり、4-4という形で案に追加し、合計4-1~4-4までの4案として提示しております。
 それから、2ページは既存の領域、今年度の重点開発領域に対する投票結果について示したものでございます。既存の領域に関しては、これまで2年連続での同一領域の設定はなかったかと思いますが、引き続き継続して設定する必要性についてもあわせてご検討いただく必要はないかということで提示しています。
 それから、3ページ以降は、それぞれの領域に対する領域名、概要、期待される効果の例という形でまとめたものでございます。なお、10ページ以降は、参考にこれまでにご検討いただいた領域候補について添付してあります。
 それから、参考資料1はこれまでの機器開発プログラムの開発領域の一覧になります。参考資料2は各委員からご提出いただいた意見をまとめた資料です。

【主査】
 これまで、来年度の領域に関して幾つかの考え方を検討してきましたが、2回にわたる委員の先生方のご意見を踏まえ、本日、資料2の形にまとめさせていただきました。4-1~4の4つの領域候補はいずれも「高性能レーザー」をキーワードとした領域になります。これについては昨年の小委員会で専門の先生から現状をご説明いただきましたが、近年のレーザー技術の進歩というものが極めて著しいものがあり、従来の計測分析技術の中でかなり大幅なレベルアップが期待できるということで、その分野の領域が必要ではないかというご意見が多数を占めました。従いまして、「高性能レーザー」をキーワードとする新たな領域設定を考えたいというのが1つの結論でございます。
 ただし、どのような表現の領域設定とするかというのが第1の議論になります。候補4-3と4-2は非常に内容が重なっておりますが、違いは、4-3は「必要とされるスペックを満たす革新的なレーザーを開発し」とし、レーザーを開発するところに若干のウエートがありますが、4-2は「進歩に有用となる新たな高性能レーザーを実現し」とし、一般に既に開発されたものをもとにシステムを考えるということも可能にするというニュアンスになり、いずれも高性能レーザーをもとに新しい計測分析システムを開発する領域候補になります。
 4-2は4人の委員の支持を集め、4-3は5人の委員の支持を集めたということで、この2つの領域候補に多くの委員の賛同を得たということになります。このため、結論のまとめ方といたしましては、4-2と4-3、これをどのように考えるかということが1つの論点になります。
 一方、候補5、6、7に関しては、いずれも21年度の領域設定になります。前年度の領域を再び重点開発領域として設定する理由としては、予算の大幅縮減を受けて、新たな領域を幾つも設定する状況にはないということがございます。したがいまして、高性能レーザーに関して新規領域を1つ設定し、さらに、従来公募した課題を含め再度レベルアップした応募をしていただき、その中からすぐれたものを採択するという意思表示になります。また、内容の相当なレベルアップが実現できるという提案があれば、再提案していただくことをエンカレッジしたいという意思表示にもなります。委員の先生方のご意見をいただきまとめたいと思いますがいかがでしょうか。

【委員等】
 この候補4で大変結構だと思います。4-1~4の中を見ると、特に候補2と3について、3のほうは高性能レーザーを開発するということを明記し、2のほうはそれを「キーテクノロジー」とするとしている。この「キーテクノロジー」の意味をどう理解するかということになるが、「キーテクノロジーとする」というのが具体的ではないため、高性能レーザーを実現し、あるいは開発するということも1つのテーマなのだというふうに考えれば、何かそういう候補4-3のような文言がないとわかりにくいのではないか思います。

【委員等】
 4-3は、レーザーを開発する要素が含まれるため「高性能レーザーの開発及び」など、「の開発」を入れるべきではないでしょうか。

【委員等】
 やはり本領域の出口は計測分析システムになると思います。4-1と2にはいい表現がありまして、「従来の特性を進化させた」といういい表現があり、この中に今ご指摘の点も含まれると思います。「開発及び」とすると、開発だけも認められることになり少し趣旨が違うのではないでしょうか。レーザーはあくまで手段であり、レーザーの開発だけでも認められるようなニュアンスは避けたほうがいいのではないかと思います。

【委員等】
 それに関して、前回の小委員会において、レーザーの開発自体も日本は立ち遅れていたことがあったのではないかという議論から、レーザーの開発そのものもエンカレッジしてはというニュアンスの議論もあったように記憶していたため4-3に投票しましたが、そこはもう一度確認させていただきたいと思います。

【主査】
 確かに光源は重要な要素技術であります。このため、従来の仕組みの中でレーザーの開発も含めた開発も課題として可能なニュアンスだったと思います。いかがでしょうか。
 また大規模な予算、数億円に上る予算を計上するのは、特に今回のような状況では厳しいと思います。そのあたりが的確に伝えられるといいのですが。

【委員等】
 レーザーの開発が申請、あるいは審査のときに必要条件になるのであれば、レーザーの開発が含まれるほうが望ましいと考えていることがはっきりしないと混乱するかもしれません。

【委員等】
 そうですね。レーザーを開発しなくても既存のレーザーでできるのか、それともやはりレーザー開発が大前提なのか。

【委員等】
  それは重要なポイントだと思います。

【委員等】
 「開発」という言葉を入れるか入れないか、そこで少し分かれるのではないかなと思います。

【委員等】
 審査にも影響するため、現在のテクノロジーを踏まえた必要性などどう判断するかということが重要になると思います。

【主査】
 4-2と4-3については、今の点が重要なポイントというご指摘ですので「従来の特性を進化させた」という表現はいかがでしょうか。開発だけでなく使い方の工夫も含まれるため、この表現を4-2と3をあわせた領域設定の表現とし、それで説明の中でレーザーの開発または、使い方により進化した性能を得た新しい計測システムを開発するというような表現はいかがかでしょうか。

【委員等】
 他の委員の意見も聞いたほうがいいと思います。例えば半導体レーザーの開発などは巨額の開発費で企業が開発しています。このため、開発を含む場合、限られた予算の機器開発の中でそこまでカバーするよりはむしろ、例えばプラズマレーザーなどはかなり広い領域、紫外の領域から100ナノぐらいからかなり後ろのところまでカバーしていて、それを用いた光脱離システムなどは、もう商品化されています。そういう開発されたレーザー技術を計測にどう持ち込んでくるかというあたりにウエートをかけたほうが良いのではないでしょうか。レーザーの開発までと入ると、すごい大きな領域になってしまいます。核融合プラズマのレーザーから半導体レーザーから全部入るとすると、この予算の枠の中では大きすぎますので、カバーできるのかどうか議論をお願いします。

【委員等】
 開発という意味が改良も含むのかどうかということだと思います。全然原理の違うものをつくるのか、それとも性能アップすることを開発とするかどうか。また、改良せずに既存のものの組み合わせになるかその差だと思います。

【委員等】
 大きな開発をすると固体にしても、半導体にしても恐らく数億円以上の規模になると思います。しかし、例えば半導体レーザーでも、近赤のスペクトロスコピーに少しだけ波長を変えたいといったときには十分このオーダーで計測に適した波長帯域のレーザーを製作して、それで計測ということも考えられます。まさにここに書いてあるように、ゼロからレーザーを開発するのではなく、波長を少しだけ変えるとか、モディフィケーションを加えるとか、そうして計測にフィットさせるというようなところは、スコープには入れたほうがいいのではないかなと思いますが。

【委員等】
 先端計測という趣旨でありますので、そちらにスペシファイできる形に落とし込めるように、レーザー単体の特性向上も非常に重要なことはありますが、そこに重点を置くというよりは、出口に重点を置いたほうが良いのではないかと考えています。

【主査】
 わかりました。「革新的なレーザーを開発し」という表現は避け、それにかわる表現に置きかえて、あくまでも計測分析の新しいシステム開発を目指した領域設定だというニュアンスをより明確に表現したテーマ設定が必要ではないかというご趣旨ではないかと思います。よろしければ、この点は本日の議論をもとにもう一度、事務局と私の方で表現をまとめ直し、委員の皆様のご意見をいただいて、それを新領域とするということでいかがでしょうか。
 それでは、既存の21年度公募課題でございますが、まず、候補6というのは大変多くの賛同を得ているため、これを生かすというのは妥当な結論だと思います。その他は候補5と7の投票数が接近しています。何かご意見いただけますでしょうか。

【委員等】
 この候補7は去年の採択課題がなかった領域ではないでしょうか。それから、応募数も7件と非常に少ない。これは応募が少ないから採択される適当なものがなかったのか、全般的にこの領域が何かやりにくい、応募しにくいのか、その審査のあたりはどんなだったのか、そのニュアンスはわかるのでしょうか。

【委員等】
 まず、この経年使用材料の寿命測定について上げるかどうかというので、かなり評価委員会でも調査し、特に鉄鋼関係等に調査したときには、みんな困っているがどんな方法があるかその方法が見えないという状況で、それで、私ども評価委員会としては調査研究というのを立ち上げて、調査を実行してもらっています。
 もう一つは、ちょうど二、三年前から急速にこういう経年劣化に対する産業界の意識が非常に高くなっています。例えば化学プラントの事故がありました。ああいう事故を受けて、日本学術振興会が早稲田大学を中心に行った調査結果を2年前に発表して、的確な評価技術、そういう技術を企業と官と一体になってそれを開発しなければいけないという提言が出ています。このような状況ではやはり文科省としてもこういうものが大事だという警鐘を鳴らす意味で、とにかく組み込んではどうかという意見で、そういう新しい領域をつけて出してみたらどうでしょうかということでありました。
 それで、結果、採択に至らなかったのは既成の技術の延長、改良、大型化でもって対処しようという提案が主で、経年劣化をしっかりとらえて取り組むという課題は残念ながらありませんでした。このため採択は無かったというのが評価委員会の評価結果です。

【委員等】
 参考資料2で、候補6と7については可能であれば統合してもいいという意見を読んで、何となくそういう印象は持っていたのですけれども、新規技術で劣化その他を評価するためには、3次元での評価ということになってくるので、新規的な技術を取り込んで、出口はそちらというのであれば、6と7をうまくあわせた形があるのではと思います。

【委員等】
 候補6と7を一緒にするというのは、一緒にしたときに重なる部分というのはあると思いますが、本来ねらっている主要な部分からすると、一緒にするのは少し難しいのではないかなと私は思います。
 それから、今回、新規の採択案件数が1つ、努力しても恐らく2つぐらいまでしか伸びないだろうと予想されるため、領域の数を増やすよりは、この継続案件については1つに絞っていいのではないかと思います。

【委員等】
 私はこの継続案件については非常に否定的な意見を提出しています。2つ問題がありまして、1つは、昨年度いずれの領域も公募数が少ない。5が12件、6が15件、7が7件。それを予算が減ったからといって領域課題として、23年度も予算が横ばいになったらどうするのか。一貫性が感じられないので、幾ら予算が減ったからといって新規は1個で、昨年の領域を継続してやるという考えはどうかと思います。
 それと、昨年の課題の中でレベルアップしたものが1年後に出てくるのか。昨年度の本テーマに関する調査研究課題というのがありますが、これは将来、そういう発展の課題があるとしたものであれば、その調査研究課題について審議するということは、僕は意味があると思うのですけれども、同じのを2年続けて公募するというのは、今までにそういうことがあったかどうかもお聞きしたいのですけれども、将来のことを考えてまずいのではないかという意見を私は持っています。予算が減ったからというのは理由にならないと思います。

【委員等】
 まず、調査研究の内、候補7の領域に関する2件ですが、この2つは内容としても非常に将来への展開に対しても非常に大事だなという評価をいたしました。期間は1年半になるため、ちょうど来年度いっぱいで一応何らかの結論が出るという形になっていて、それをもとに何か新しい機器開発への提案が出てくればというのが評価委員会の評価だったと思います。そういう点でこの2件は調査研究としては非常にふさわしいと思いますが、開発までは、まだその時期ではないであろう。ただ、ここでご議論いただきたいのは、ここで消して、来年その調査研究の成果を持って打って出るというときに、調査研究の結果によって復活させるのも問題ではないかと。
 やはり将来を見据えた、大事な開発領域はあげておいたらどうかということはあります。また、今走っている調査研究の結果でもって我々は次の可能性があるかないかということを判断するということになります。そうすると、確かに採択はゼロでしたけれども、旗印を掲げておいてはいかがなものかなという願いもあります。
 それから、その他も時期尚早でないかということでありました。

【主査】
 前の年度の領域を継続することに関する疑問について、毎回、いま一歩でいいテーマになるなという申請があることも事実です。落ちたものは、もう二度と浮上できないのかというと、この事業は全体として十分に競争的な環境で採択されているというように考えておりますので、一度落ちた、不採択になった課題が、その後もちろん、研究というのは日進月歩ですから、1年あるいは2年たって状況が変わって、今度なら大丈夫だ、自信があるというご提案は当然あると思われます。そういうことから、再度募集するということが必ずしも全面否定されるものではないのではないかと思っております。

【委員等】
 今の考えだったら問題ないと思います。ただ、今年だけ予算が減ったからというようなニュアンスはいかがかと。今後もそういう考えで前年度の領域も拾っていくという考えであれば全く問題ないと思います。

【委員等】
 今のようなスタンスは、前年もやはり持っていて、これはJSTサイドで応募件数の非常に多いものというのは、内容を見ていてそれで採択数が限られているということもあって、候補6はその1つであります。それからNISTが今調査中の、次世代の計測技術というリストの中に3次元計測がかなり重要なところに出ているので、これは一般的に考えても、恐らく非常に大事な計測技術であるととらえております。

【主査】
 新規領域を1領域、それから、継続から1ないし2領域というように設定し、いろいろな形でご意見をいただけたと思います。それからもう一つ、公募についてお願いしたいのは、この領域設定された課題以外であっても、新たなすぐれた課題というのは、常に出てくる可能性がありますので、それを受ける受け皿は常に用意していただきたいと思います。
 それでは、高性能レーザーの領域は先ほどの議論で1つ設定をするとさせていただきましたが、継続課題については皆さんご支持が多い、候補6のみを領域設定させていただき、従来どおり領域設定していないものも募集するという枠組みを保つということではいかがかと思います。
 それから、ただいまの議論で非常に重要なのは、イノベーション志向の課題、応募をエンカレッジするというような表現を公募の表現として強調するようなやり方で全体に新たな募集をするというようにしてはいかがかと思っております。
 委員の先生方には何回もご意見をちょうだいいたしまして大変ありがとうございました。22年度に関しましては、このような形で領域を決めさせていただいたと思います。

(3)産学イノベーション加速事業(先端計測分析技術・機器開発)の平成22年度の実施について

【説明者】
 22年度の予算削減に伴う基本方針案についてご説明いたします。21年度63億の予算から、22年度につきましては49.5億ということで、約21%減ということでございます。
 まず、(1)ですが、既存の課題につきましては、進捗状況や中間評価等を踏まえ、平均1課題2割縮減しなければならない状況です。それから、新規課題については、評価委員の先生方に精査いただき、厳選して採択することになろうかと思います。今回、領域が決まれば、昨年と同じぐらいのタイミングの2月下旬くらいから公募を開始し、夏にかけて選考して10月からスタートというようなスケジュールで考えております。
 ちなみに、実証・実用化プログラムにつきましては、21年度は秋に公募し、4月から開発スタートができましたが、22年度は、4プログラムをまとめて公募ということで、10月スタートになります。また、調査研究は、今回、募集を見送りたいと考えております。
 それから、募集の条件ということで、特に実証・実用化につきましては、申請の際に基本特許、あるいはそれに関連する特許の記載を義務づけ、審査の対象にしたいと考えております。それから、21年度からスタートしたソフトウェア開発プログラムですが、21年度の反省を踏まえ開発チームに、専門的なソフトウェアを開発する企業を組み込んで提案をしていただくということがいいのではないかと考えております。そのほか、関係する経費も精査し、極力節約しながら事業を進めたいと考えています。

 続きまして、そのほか、見直しが必要な事項でございます。まず1点目は開発成果についてですが、未利用特許の問題等についても考えなければいけないかなと考えております。
 まず1つは未利用特許の活用促進について考えております。チームに徹底するということと、それから、知財を長期間活用していないというような場合におきましては、実用化に向けて検討していこうと考えています。さらに、JSTにJ-STOREという広く企業等の皆様に情報を公開して活用していただく特許のデータベースがありますので、その中にこの先端計測で得られた特許を掲載することにより、積極的に情報発信をしていこうと考えています。

 それから、機器開発プログラム、あるいは実証・実用化プログラムについては、特許マップの作成を検討中です。機器開発については、特許マップで技術の整理をした上で、例えば中間評価の対象として見るというようなことを考えております。さらに義務化というふうに少し強く書くことにより、開発者の知財に対する意識も向上していくのではないか。さらに開発そのものが明確化していくのではないかと考えております。

 成果普及活動については、まずは、従来からやっている展示会への出展等も効果的に実施していきます。また、企業へのPRということで、特に要素開発プログラムを中心に技術を企業の皆様方に説明する新技術説明会を開催し、広く技術を活用していただくというような機会も設けたいと考えています。さらに、一般国民への広報については、JSTの持つ「サイエンスチャンネル」という番組(高校生、大学生等向けの科学に関する番組)を活用するために、昨年、DVDも作成しました。積極的にPRしていきたいと考えています。

 それから、JSTでは新聞社の論説委員に対するJSTレクチャー会というのを年に数回やっており、その中で先端計測事業やその成果の紹介をしていきたいと考えております。さらに、いろいろな現場ニーズの把握もしていかねばならないだろうと考えております。

 最後は、行政刷新会議等々でも議論があった部分ですが、マッチングファンドの割合を、今現在、大企業とJSTが1対1なのですけれども、それを例えば割合を変えるとか、あるいは収益が出てきたときには、それを国に還元するような仕組みの必要性等について検討していく必要があるということで、JSTの中に、今後の運営のあり方の検討会みたいなものを設置して検討し、今後改善すべきところを改善していきたいと考えております。そのほかにJSTの中にある開発戦略センターや知財センターとの連携を強化し、より効果的な事業運営ができるように考えています。

【主査】
 それでは、ただいまのご説明に関連して、ご質問、ご意見お願いします。

【委員等】
 総括の先生方はオンサイトビジットのときに実用、出願するように、出願していれば審査請求を必ず出すように指導していると思います。総括としてはいかがですか。

【説明者】
 我々は一応、エンカレッジして、特許になるようなものはとにかく出してくださいと伝えています。

【委員等】
 実証・実用化に関する限りは、評価のときに出願についてチェックしている。また、評価委員会で採択のときに出ていなくても3カ月以内に必ず出してくれますねということは、その回答をとった上で採否を議論しています。
 それから特許マップの作成について、特に実証・実用化プログラムでは採択されている中小企業も多いと思います。中小企業に対して、大企業が実施するようなマッピングを求め、それを中間評価に義務づけた場合、特に計測機器メーカーの中小企業にとっては非常に厳しいことではないでしょうか。もう少しJSTサイドで検討いただきたいと思います。
 また、ものづくりのバックグラウンドを広げるためには、大学だけではできなくて、企業の技術力と大学のシーズとうまく組み合わせて、大学と企業がお互いに学んで、モノづくりの底辺を広くしていくことが必要です。

【委員等】
 3ページの(b)の企業とのマッチング推進について、質問等提言したいと思うのですが、この事業は広く産業界への普及ということが大変重要な要素として取り上げられています。それで、5周年記念シンポジウムや、こういう企業とのマッチングの技術説明会など、JSTからメールでよく配信していただいています。これは大変いいやり方ではないかと思います。ただ、この登録している人たちをもっと増やしていかないといけないのではないかと思います。特に中小企業もこういうJSTの活動とか、こういう役割というのは重要視している傾向があるため、こういう面でどんなことを考え、今後進めようとしているのかということを聞き、今後ぜひ力を入れてやっていただきたいと思っています。

【説明者】
 産学連携部門で新技術説明会を随分前からやっておりまして、今までにJSTを利用いただいた方を中心にメールをお送りする結果になっているかと思います。ただ、比較的中堅・中小企業の方も多く、そういう意味では大企業向けというわけではなくて、かなり中小にも、あるいはベンチャーにもご案内しています。産連のほうの説明会では毎回100人ぐらいの企業の方がいらっしゃいますので、先端計測もぜひ本制度を活用し、少しでも企業への普及を多くしていきたいと考えております。

【委員等】
 特許マップをつくるのは、出願数が多いときで、出願数が少ない分野はなかなかマップになりにくいと思います。とはいえ、特許は重要ですので、基本特許が記載されていることと、先願特許、公知例がないかといった項目は、チェックすべきだと思います。RFIDの例の場合、恐らく4桁特許が出ていますから、分析できるのだと思います。その辺をお酌みになって、かつ特許は大切だという心は確かに重要だと思いますので、マップではなくて公知例調査、先願調査とかいったような形はいかがかと思うのですけれども。

【委員等】
 既に先行の特許を記載させて、関連特許も含めて評価委員会で評価しています。

【説明者】
 申請の際にはしていますが、採択後の課題については検討する必要があります。

【委員等】
 マッチングファンドの段階的拡充のところで、今の比率を企業の負担を増やすようにというお考えですが、私が知っている範囲ですと、結構、企業のほうもマッチングの負担が結構苦しくてなかなかできないと聞いています。決定されたのでしょうか。

【説明者】
 要検討事項を記載しており、特に先般の事業仕分けにおいても意見がありましたので、検討する必要があるということであります。

【委員等】
 今の質問と同じことで少し疑問を持っていたのですが、実際に機器開発などで、収益の回収の可能性のあったものはあるのでしょうか。僕が知っている限りでもほんとうにわずかですが。回収するという例が具体的にあったのかどうかということを抜きに、それを提案するというのはどうかと思います。

【事務局】
 先ほど説明がありましたように、マッチングファンドの段階的拡充、それから、収益納付制度導入というのは、まさに刷新会議の仕分けのときに言われた話であります。我々もマッチングファンドも大体マックス50%負担というのが一般的であるという説明に対して、仕分けにおいても段階的にもっと取る制度があってもいいのではないかという議論があって、それに対してしっかり議論した上で、その結果を説明する必要があると考えています。
 あと、収益に関しては、この事業について言うと、事業仕分けの場でも非常に商品化されているものもあるじゃないか、売り上げが出ているじゃないか。そういうのに対してマッチングファンドで多少負担したとしても、大きな利益につながった場合に何で回収しないのかという議論がありました。それに対して例えば先ほどのJSTが既にやっている委託開発などは、実際は融資に近い形の制度で、開発が成功すれば全額返してもらいながらも、売れたものに対して2%とか設定して回収しているというのがあって、本事業の場合も、非常にもうかったら返してもらったらいいのではないかという発想もありますので、我々も何も議論せずに回答するわけにはいかないのかなと、そんな認識です。

 知財について補足しますと、国もしくはファンディングエージェンシーの委託により研究を実施した際に、研究成果の発明について特許を取得する権利を相手方に帰属させることができるというのが今のバイ・ドール規定で、本規定は導入時に大変支持され、国会の附帯決議などもあり、国もしくは独法の委託契約はほぼ全て、相手方に特許を帰属させています。

 本制度は、研究課題や技術の特性をよく理解している相手方に帰属させることで、その実用化もしくはライセンスを適切に行うことができるはずだという想定に立って導入された制度であります。受託者に特許の権利が帰属するということで支持が強く、常識のようになってきていたのですが、事業仕分けの場においては、逆に指摘をいただきました。バイ・ドール制度で相手方に帰属しているという説明だけでは不十分であるという印象です。これについてはまず、バイ・ドールで相手方に帰属しても、うまく実用化されていなければ相手方に特許を帰属させる必要がないというアプローチがあり、例えば特許プールのような形で複数の特許を集めた事業をやる場合には集めるという議論もありますし、あるいは、そもそも特許は管理コストがかかるので、集中管理という方法もあるという議論もあります。また、逆の議論として、バイ・ドールで相手に帰属しているのであれば、しっかり相手方に管理をしてもらい実用化もしくはライセンスに向けた処理をしてもらうということもあります。JSTの提案は、バイ・ドールの取り組みを強化してはどうかというアプローチの提案をされたというふうに理解できると思います。

【委員等】
 ある意味いい機会で、文部科学省として先端計測分析技術・機器開発をどうしていくべきなのか。そこの中の特許戦略をどういうふうに考えるのかということについてある程度考える必要があると思います。大きく変える必要があるのかどうかわかりませんが、先端機器事業の実態に合わせた検討が必要と思います。

【事務局】
 ご指摘のとおりでして、我々も仕分けを踏まえて全般的に見直さなければいけないと思っています。仕分けの対象になった理由もあると思いますし、一般の方からはそのように思われているところがあると思いますので、この指摘を受けたというのが1つの見直す機会であって、本事業も16年からスタートして今後どうあるべきか、我々事務的にも議論はしていますが、ぜひご協力いただきたい。

 特許の話も、文部科学省でも特許数の集計をしていますので、それがある意味、大学のプレッシャーになってきていて、最近では量より質と言われる中で、どういう精査をしていくのか、各大学自体でもいろいろな動き方があって、文部科学省の対応も議論していく必要があるという話をしています。その意味で、特許については数を取ればいいという世界ではだんだんなくなってきているので、成果の保有の仕方についても議論があろうかと思っています。是非お知恵をいただきたいと思います。

【委員等】
 数だけの評価は無理ですよという話は、企業の側は最初のころから申し上げていたと思います。また、特許のサポートをする必要があります。審査請求をしても大体審査官から反論が返ってくるのですが、それに対して特許の専門家と発明者が作戦を練って、対応し登録されるため、そこのケアを相当してあげるマネジメントがないと審査請求しても登録は難しくなります。そこの体制をちゃんとつくり込むということと、役に立たないと判断される特許は捨てるというライフサイクルマネジメントをして特許維持コストが異様に上がらないような管理も重要です。そのようなことを踏まえた上で、現状が適正かどうか、一から考え直さないと、数字だけとらえてというのは無理があると思います。仕分けを機会に特許のマネジメントは、よく考えたほうがいいと思いますが。この委員会だけではないと思いますが。

【主査】
 大分特許の議論になりましたが、ここだけの議論ではなくて、このような問題点を含んでいるため今後検討する必要があるということで、その点を正しく認識してください。それから、特に大学の特許出願が安易に流れているということは、我が国全体の問題であり現状を批判するだけではなく、どうすればいいかを本気になって考えなければいけない。
 企業の方から見ると、大学の特許によって日本の科学技術のノウハウが流出しており、日本の企業の足を引っ張っている。その責任をどう感じているのかと我々も言われていますので、問題点の1つとしてぜひ検討を進めていただきたいと思います。これはJST内の検討委員会における検討を第1のステップとして、仕組み作りを考えたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 それから、特許マップについては指摘があったように、もう少し実行可能な形に直していただくのがよろしいのではないでしょうか。いかに実態のパフォーマンスをレベルアップするかということが一番大事であって、形式的な見直しではいけないと思いますのでご議論を進めていただきたいと思います。
 それから、この項目をもとに運営のあり方に関して、項目を整理した上で3カ月ぐらいをめどにJSTの検討委員会で検討を進めるというのが適切ではないかと思います。事業運営面の検討は、JSTのあり方検討委員会にお願いした上で、本委員会においても別の観点、もう少し大局的な事業の位置づけに関する検討をしたいと考えております。

【委員等】
 国民・社会一般への周知広報活動の実施について、だれに向かって広報するかが重要になるため、例えば全国の中学、高校に送るとか、一般の人に周知したいわけですから、ねらいと効果を考えて実施する必要があると思います。

【主査】
 それでは、議題4に入りたいと思います。本事業の平成23年度以降の実施に関して、先本委員会に検討の体制を整備したいと考えていますので、まずは説明をさせていただきます。
 委員の皆様方はご存じのとおり、平成23年度から科学技術基本計画の第4期に入ります。第4期科学技術基本計画というのが取りまとめられた上で、政府の方針として閣議決定され、各省庁がそれをもとに実施するということでございますが、その第4期の基本計画の基本的な部分について、文部科学省の科学技術・学術審議会の基本計画特別委員会において、昨年の6月から12月まで、合計10回の会議の議論を経てまとめたものが本資料になります。もちろんこのまま第4期の基本計画になるわけではありません。今後もあと1年かけて議論していくもので、中間報告という表現になっています。しかしながら、文部科学省レベルではかなりの議論を集約したという位置づけでありますので、その内容をご紹介し、第4期、すなわち23年度以降、どのような考え方がこの委員会で議論している事業の基本方針になるかという点をご紹介したいと思います。
 特に注意してもらいたいのは、今後の科学技術政策における基本的方針の中に1、2、3になりますが、「 1、科学技術政策から「科学技術イノベーション政策」へと転換する。」これが1つの大事な基本姿勢であります。それから、「2、科学技術イノベーション政策を「社会とともに創り、実現」する。」、これは仕分けの議論にありましたように、市民にわからないものが政策として成り立つはずがないという姿勢と関係があり、国民の税金に基づいて行われているため、社会的理解を十分に得るということを重視するということであります。「3、科学技術イノベーション政策において「人と、人を支える組織の役割」を一層重視する。」、実は第3期も人材育成、人ということを非常に重視した目標を掲げております。第4期も当然のことながら人が重視されますが、特にここでは組織よりは研究者そのものの役割を重視するというような意味であります。
 それから、基礎科学力を大幅に強化する。これが1つの重点であります。次に真ん中に重要な政策課題に優先的に対応する。一番右側が社会と科学技術イノベーションとの関係を深化させる。こういう分類でございますが、特に真ん中の重要な政策課題に優先的に対応するというところで、これは第3期と何が違うかといいますと、第3期では重点推進4分野、あるいは重点分野4分野、合計8分野という分野ごとの重点的な推進がうたわれましたが、第4期では分野ごとの重点化から、そこにございますように重要政策課題対応での重点化へ政策の方針を変えるという点が重要な事柄であります。
 この時点において何が重要課題かということは、具体的には述べられておりませんが、例えば地球温暖化対応というようなことが1つのシンボリックな分野、課題と挙げられておりまして、その推進のための仕組みが幾つか書いてある。イノベーション共創プラットフォーム、あるいは科学技術イノベーション総合プログラム、それから、国家戦略基幹技術プロジェクトの創設、そういうような枠組みが提案されておりますが、10課題程度の重要課題を挙げるというようなことが表現としてございます。その具体的な内容は、この1年間でさらに詰めるというようなスタンスだというふうにご理解いただいてよろしいかと思います。
 本委員会にかかわる部分は、世界的な研究開発機関の形成及び先端研究基盤の整備とあり、先端研究施設・設備、知的基盤等の整備及び利用促進、この項目が直接的には本委員会の事業と一番かかわりのある部分と理解いただいて結構です。また本文の抜粋版について、先端研究基盤の整備という部分だけ関係の文を抜粋したものになります。 (3)先端研究施設・設備等の整備・運用及び共用促進という項目がありますが、ここでは主として大型研究施設の整備と共用促進というような表現で書かれてございます。最後に少し一般的な研究施設の共同利用、共用ということの整備も方策を講ずるという表現がございます。実は本事業において成果としてつくられましたオンリーワン、ナンバーワンの先端研究機器の共用という問題、これは成果の社会還元という観点から本委員会の事業においても1つの重要なねらいどころになるだろうと考えております。
 それから、(4)知的基盤の整備とございます。知的基盤整備計画が5年ごとにつくられてきていますが、その流れをさらに強化をするということが議論されております。この中間報告の中で、i)新たな知的基盤整備計画の策定及び推進というところに、中段あたりに「知的基盤4領域の1つとして計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器について、引き続き整備を進めるとともに、知の創造やイノベーションに向けて、今後重点的に整備するべき領域の設定や成果創出につながる質的目標の設定に配慮する」という表現で触れられています。
 それから、ii)の知的基盤の充実・高度化及びその整備に係る体制構築について、「国は、先端的な計測分析技術・機器について、開発当初から事業化の実施主体やユーザー等を交えた連携体制による開発を進めるとともに、開発された技術・機器の市場への普及を促進する」、こういう形で本事業に関係する記述があります。既に第4期基本計画の重要文書の中にこのような内容が記載されているということをご紹介したいと思います。第4期がスタートする平成23年度以降の5年間に先端計測分析技術・機器開発事業をどのように位置づけるのかということについて、この時点からかなり精力的に検討を進めさせていただきたいと思います。
 例えば3月に次の委員会を開催し、3月から6月ぐらいにかけて、平成23年度以降の本事業の推進にかかわる基本的な議論をさせていただきたいと考えています。その内容について、ここで議論していただくべきでありますが、本日は時間的に難しいため、第4期基本計画を念頭に置いて、本事業を今後どのように再構築し、かつ世の中からより高く評価される事業にしていくか議論をお願いしたいと考えていますがいかがでしょうか。

【委員等】
 日本の得意とするメタボローム、あるいはグライコーム関係のデータベースの開発、それの活用に関して質量分析関係のものがかなり貢献しています。なぜこの分野で日本がわりと世界に冠たる貢献をしているのかということは、日本の文化的バックグラウンドがあるのではないかと思っています。それに対してこの今回の資料4ということを振り返ってみると、日本が一体なぜ科学技術をやらなければならないのかということが何かあまり読めないような気がします。
 科学、サイエンスというのは世界共通で、どの国がやっても当然、同じ自然の法則を解明するということにはなると思うのですが、その解明の仕方、順序、考え方はかなり文化に影響されていると思います。またそれがあるからこそ、例えば日本がうまく切り開いているという分野があると思います。日本だからこそできる、切り開ける科学技術というのはあるはずですし、特に科学に関してあると思います。それが一体何であるかということを多分、皆さん薄々わかっているところが、それが今回この表に出てきていないのが残念だと思います。特に先端計測分析に関して、従来、なぜこれをやる必要があるか。
 それは海外のメーカーの装置を買って税金が海外に流れているとか、日本は科学技術しか残っていないのだというように、悲観的な話で進んでいたのは少し物足りないなと感じています。ほかの柱が出てきたら科学技術は要らないじゃないかという話になる可能性もあるので、例えば文化、アニメ、観光などで十分と言われ、その時点で、もう科学はだめじゃないか、要らないのではないかと言われるのは残念なのです。そうではなくて、日本だからこそできる科学技術というのはあると思いますし、実際、例としてこの分析計測というものは、分析計測全体について日本が得意かというとそうではないのですが、そういった面はもちろんあると思いますし、その一面は先ほどお話ししたところなどにあらわれているのではないかと思います。
 そういうものをもう少しきちんと切り出して見ないと、先端計測分析というのは他でやってもいいじゃないかという話になってしまっては困るなという点で、私だけでは残念ながら日本の得意とするところは何であるかについて、そんなに網羅的に見ることができないのですが、そういうことを1つの観点として見ていったらいいのではないかなと思います。

【主査】
 最先端プログラムの採択された30課題の中で先端計測分析関係の課題が、何課題採択されているかというのを数えましたら4課題ありました。これを少ないと見るか、多いと見るか、いろいろ意見があると思いますが、かなりきちんと世の中からこの分野の重要性が認められつつあると思いました。
 トップを支える研究課題に対する研究投資と基盤を支える研究投資とは、それは同じ分野であっても役割は全く違うものであり、トップはもちろん大事であるが、基盤こそ大事だというように主張したいと考えています。7年目に入りますが、この先端計測分析という分野が次第に研究者のコミュニティで重視されつつあるということは、これはトレンドとして正しいと思います。しかしながら、我々の主張がまだまだ十分社会に理解されていないという部分もあると思いますので、そのあたりの再検討をもう一度やってみたいという気持ちでございます。
 そんなことでご賛同いただけましたらば、3、4、5ぐらいの時間を使って、再度そのあたりの議論、周知を先生方にお願いしたいわけですが、委員の先生方から有益なご意見、ご助言をいただきまして、レポートをまとめたいという気持ちを持っております。そういう方針で今後考えさせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは、事務局と再度具体的なやり方について協議をさせていただきます。それでまた先生方にご意見をいただくようにいたしたいと思いますので、その方向で今後進めたいと思います。

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