第5期先端計測分析技術・機器開発小委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成21年11月27日(水曜日)13時~16時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 先端計測分析技術・機器開発事業の平成22年度概算要求等について
  2. 先端計測分析技術・機器開発事業の平成22年度重点開発領域について
  3. その他

4.出席者

委員

石田委員、上野委員、長我部委員、佐近委員、志水委員、菅野委員、
杉浦委員、竹内委員、田中委員、中村委員、二瓶委員、広瀬委員、
松尾委員、森川委員、山科委員

文部科学省

柳研究環境・産業連携課長、能見新技術革新室長、北郷研究環境・産業連携課課長補佐

オブザーバー

澤田独立行政法人科学技術振興機構開発総括
本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
安藤独立行政法人科学技術振興機構産学基礎基盤推進部参事役

5.議事録

(1)先端計測分析技術・機器開発事業の平成22年度概算要求等について

【事務局】 
  資料1「先端計測分析技術・機器開発事業平成22年度概算要求等について」のとおり、産学イノベーション加速事業の中に、先端計測分析技術・機器開発事業を入れている。もともと先端計測分析技術・機器開発事業1本で1つの施策であったが、今回、イノベーションを加速するような産学の取り組み、すなわち産学イノベーション加速事業という枠組みの中に、本先端計測事業を位置づけた。ただし事業内容がこれまでと大きく変更するものではない。
  資料1の5ページ以降にある、行政刷新会議ワーキング「事業仕分け」の結果の概要のとおり本先端計測事業も対象となり、11月17日にヒアリングが行われ、予算要求の縮減、1から2割という評価結果となった。8ページ目にあるとおり、評価者の方からは、基本的には事業の重要性・必要性をお認めいただいている一方、事業の意義や必要性等、コスト的な問題で厳しいご意見も頂いている。 

【委員等】
 事業仕分けに実際に参加し、予算等見直しがすべてではなく、かなり中身を理解された上で批評されていた。
 科学技術というものを真剣に考える場にできると思うので、何か次回があるとすれば、それに対し、説明責任を我々も磨かなければならない。もっと国民に理解していただき、日本はこのように科学技術で頑張らなければならないというようなコンセンサスができるような場にできればいいと思う。

【委員等】
 科研費の中で試作研究というのがあった時代は、その科研費でもって町工場で旋盤を回しながら物をつくるというようなことをやってきた。それがなくなり、基礎研究という形になってから物づくりが大学の中で消えていくのではないかという危機感がある。
 科研費の中で、要素技術が果たしているような役割が期待できていれば、要素技術はなくても確かにいいのだろうと思うが、実は科研費の中で物づくり、試験研究的なものの採択が難しい中で、この要素技術が果たす役割というのが非常に重要なものがあるのではないか。些か認識不足であるというのと、科研費というのをひと括りにし、そこでいいのではないかということ。その科学研究の中を調べていくと、実は本当の物づくりを支えるような部分が欠落しているということもぜひ理解してほしい。
 ソフト開発というのは多くあり、なぜ本事業の中にソフト開発を入れるのかという質問が出た。ソフトウェア開発プログラムは共通プラットフォームを構築するという非常に大きな目標があり、これが実現できれば大学院の修士学生がつくったようなソフトがきちんとした汎用ソフトとして役に立っていく時代になるということで、事業仕分けの委員の方々にご理解いただいたのは大変よかった。

【委員等】
 こういった委員会では、やはり何回も練り上げ積み上げていったものの結果を、きちんと考えているということを、その場では難しいので、折に触れて発信していくことが重要かと感じた。

【主査】
 一般市民の目線から見て科学技術に関するアクティビティに対する評価が十分に理解されていない感じがするので、国民に対する理解を増進するための活動をさらにきめ細かくしなければならない。
 もちろん、これはJST方々にも数年前から特に力を入れてやっていただいており、1つの重要な要素である。もう一つは、国費により研究、開発を行う者は、1年に1回は必ず市民との対話、できるだけ公開の場であればあるほど望ましいが、そういう努力が必要な時代になりつつあるという印象を持った。

(2)先端計測分析技術・機器開発事業の平成22年度重点開発領域について

1 極低温放射線検出器

東京大学大学院工学系研究科 教授 高橋 浩之 氏

【説明者】
 放射線測定では、放射線の発生部分、放射線を集める部分、そして最後に位置する放射線の検出部分。この3つの部分が放射線計測において相補的であり、全部が関係して1つの測定ができる。
 放射線検出器を分類すると、大きく分けて気体と固体のものがある。気体の放射線検出器では、気体中に放射線が入射した際に気体のエネルギーを用いて気体分子を出入りさせてイオンと電子のペアをつくるのだが、大きなエネルギーが必要になる。30eV程度を大きなエネルギーとして考えているが、大体どのような気体でも同程度のエネルギーが必要になってくる。
 固体の放射線検出器では、半導体検出器、シンチレーション検出器、金属を用いた放射線検出器など3種類ほどある。半導体検出器は、半導体中に放射線を入射した際に電子とホールをつくるのに必要なエネルギーが大体バンドギャップの3倍程度(3eV程度)必要であるが、気体のものに比べるとかなり小さい。それでもエネルギーが制約となり、電荷量は限定的になってくる。統計的な揺らぎというのが測定に際しては大きな誤差要因を持ち込むことになる。
 シンチレーション検出器とは、絶縁体の検出器であり、バンドギャップの大きなものを用いる。シンチレーション光というので一旦光に直し、その光を集めることで信号キャリアとして高速動作が可能になるが、光子発生には大きなエネルギーが必要になり、大体、気体と同じような話になってくる。
 金属を用いた放射線検出器は、直接金属に電場をかけて電荷を集めると電流が流れ過ぎてしまい実際には機能しないので、電荷をつくる際には超伝導体を使い少し工夫する必要がある。超伝導体を使うと、様々な動作が可能となり、電荷信号を用いずに超伝導体の抵抗値を見るような手法が使え、非常に小さなエネルギーで信号キャリアをつくることができる。具体的にはミリエレクトロンボルトからマイクロエレクトロンボルト程度まで、3桁から場合によっては6桁程度下回る。その分、正確に入射した放射線のエネルギー測定も可能であり、極僅かな変化をもたらすような放射線測定も可能である。但し、温度揺らぎの影響を受けるため、極低温での動作が必要になってくる。
 そこで、極低温を利用した放射線検出器について紹介する。これはエネルギー情報を極めて正確に検出でき、現在は半導体検出器に比べ数十倍程度を実現している。このようなエネルギー情報を用いると、例えば蛍光X線分析等でも数eV、或いはサブeV程度までいけば、化学状態の情報も検出可能であり、1段レベルの高い分析が可能となる検出器が既に出来つつある。本放射線検出器としては、超伝導のトンネル接合を用いたもの、マイクロカロリメータを用いたものと2種類あり、動作原理が少し違っている。
 極低温検出器の応用分野は様々な分野に渡っており、基礎の物理から化学、生物、考古学、応用の原子力工学、あるいは材料開発等、様々な分野を横断する基盤技術として位置づけられるものになると思う。しかし、開発が実際は難しく、1つの応用分野での予算で何かを考えると、非常に小さな話になり、本来はもっと広い分野に展開できるような技術であるが、分野毎に細分化され、技術としてのスケールの大きさが十分活用できない。これは研究者の間でも同様であり、研究者がそれぞれ違う学会に所属していて、お互い会う機会はあまりない。国際学会等で会ったときに情報交換する程度で、あまりうまくいっていないところがある。技術としては、高いエネルギー分解能と、極僅かな変化を捉える高感度の検出技術の2つが言える。
 超伝導トンネル接合素子は、日本がリードする分野として、1970年代に倉門先生が熱心に取り組まれ、現在では産総研においてテラヘルツ光への応用や質量分析機器装置への応用が進んでいる。原理としては超伝導体中に入射した放射線のエネルギーによってクーパー対を壊し準粒子をつくり集めるという方式になっている。
 マイクロカロリメータは、エネルギー入射によって吸収体中で温度上昇が生じるが、温度上昇を温度計を用いて計測する方式になる。本方式では、実際にはフォノンを計測することになるので、先ほどの超伝導体を用いた場合のように電荷を検出するわけではない。したがって、信号に利用できるキャリアとしてはフォノンを使うので、非常に高いエネルギー分解能が期待できる。エネルギー分解能の式は温度揺らぎに依存するということで、こういった式で書ける。ただ、動作速度に制約があり、温度上昇とともに、その温度上昇を元の状態に戻すために熱コンダクタンスを用いて放熱をしなければならないが、熱容量÷熱コンダクタンスという時定数になり、この制約によって動作速度が決まってくる。
 世界情勢について、NISTは非常に高い技術レベルと広い応用分野、人材も豊富であり、世界をリードしている。また、NISTと密接に協力して宇宙への応用を行っているのがNASAであり、特にゴダードの研究所でX線天文への応用として、エネルギー分解能では最高の1.8eVという値を出している。UCBでは周波数のマルチプレキシング、これはNISTと少し違う方式での読み出し回路の開発を行っている。ドイツではハイデルベルグ大学が独自のカロリメータを開発している。
 日本では、我々のイリジウムを用いたデバイスによる高エネルギー領域への展開を行っており、宇宙への応用を宇宙科学研究所、JAXAと首都大学で行っている。産総研では質量分析、量子暗号通信。理化学研究所ではテラヘルツ応用。大阪府立大学では中性子検出等が現在の状況。日本の技術レベルとしては、海外のものとほぼ同程度のエネルギー分解能が得られるところまで来ている。高感度・高分解能の超伝導分光技術ということで、基盤技術としての計測技術開発が日本の科学技術を支える点でも重要ではないかと思い、今回のご提案をさせていただいている。様々な人たちが活躍できるような、開発領域というのができるのではないかと思う。
 提案としては、X線顕微鏡が考えられる。従来の代表的なX線分光手法は、線源を大きくし、SPring-8のような大型施設をつくり、強いX線を試料にあて、分光結晶のような計測手法でもって測定するのが現状である。
 そこで、高分解能の検出器があれば、例えばX線顕微鏡を用いて、卓上で実現することも可能になってくると思う。このときには、検出器の効率を上げるマルチプレキシングの読み出し技術も必要になり、低温のエレクトロニクスも含めて日本の持っている現在の技術が全部活用できるようなになる。日本人の特性として、小さなものを細かくつくるというのが得意とするところであると思い、製品として実現できれば、かなりのインパクトを与えるのではないか。
 このような検討は、電子顕微鏡の分野では一部進んでいるが、X線によるものは未だないので、X線顕微鏡を提案させて頂いた。

【委員等】
 本技術を顕微鏡に組み合わせた場合、細胞中の極小分析はどの程度可能か。細胞1個、あるいはその中のオルガネラについて、マッピングできるか。特にリン、硫黄、カルシウム等軽元素についてはどうか。

【説明者】
 検出効率によるもので、現状では効率が非常に小さく、検出器の読出し回路を、現在は数個程度の検出器の同時動作までしか至っていないが、例えば1,000個程度の同時動作までいけば、十分に可能だと思う。

【主査】
 細胞中の分布を調べるという、要するに空間分解能はどのくらいをねらわれるのか。

【委員等】
 例えばミトコンドリア1個、直径1ミクロン程度。さらにミトコンドリアの外膜・内膜での元素、組成の違い等がわかれば、素晴らしい装置になると思う。現状このような計測装置は10ミクロンぐらいではないかと思うが、もう1桁小さくなれば、相当使い勝手はよくなるのではないか。また、逆に、細胞の方を装置に合うようにどのようにつくっていくか、標本作製の問題の方が難しいかもしれない

【主査】
 イメージングの際には、検出器のスループットが問題になると思う。多チャンネルの検出器が必要とのことだがどの程度可能か。

【説明者】
 NISTでは30チャネルが同時に動くものができているが、日本の技術としてはそこまでは至っていない。開発しなければいけないと考えている。

【委員等】
 バイオ分野では、タンパク質に医薬品の低分子が付いたときの、発生熱・吸熱等を指標にして、医薬品として可能な低分子かを測ることが、開発ターゲットになっている。カロリメータそのものにアプリケーションがあるが、溶液中のタンパク質に低分子を入れたときに熱がどれぐらい変わるか、測定はどの程度可能か。
 今、タンパク質の使用量は、熱の発生量に関係する。1ミリグラム程度のタンパク質で、ターゲットの種類も多いので、一遍に1,000個程度マルチプレックスで測定することができれば、医薬品業界でのスクリーニングの際に有用となる。

【説明者】
 動作の仕方等、それに合わせたセンサを作れば、十分、何らかの貢献ができると思う。

【委員等】
 陽電子消滅、テラヘルツに応用が可能ということだが、既存技術に比べてよくなる点は。

【説明者】
 陽電子の消滅に関しては、目標としては、100eV程度のところで分析ができると考えている。スペクトルの歪みは、光子間にある原子等が不純物が原因となるもので、スペクトルをきれいにとることにより、このような不純物の状態も見ることが可能になる。
 テラヘルツは、感度が高くとれるというのがポイントであり、理化学研究所では高い感度を利用してテラヘルツ光のイメージングを行っている。

【委員等】
 波長分散型の分光と本方法の比較を教えていただきたい。また、分光とX線顕微鏡はどのように結びつくのか。

【説明者】
 波長分散というのは線源に依存するものであり、線源が強ければ検出器の性能をあげることとほとんど同じ話になる。結局、線源の強さX検出効率としてトータルの計測ができるので、それで波長分散方式では検出効率は非常に低いのだが、我々の方式に比べるとエネルギー分解能は、同程度か、少しいいかというところ。実際には線源を選んでしまうので、強い線源のあるところに行かないと計測はできないということになる。3桁程度、おそらく我々のほうが検出効率としては高くなっており、アレイをすればもっと高くすることができる。

【委員等】
 そのときの効率はサイズに依存性があるかと思うが、タイリングしてどのぐらい並べたら同じとかいう、比較はあるか。

【説明者】
 もちろん距離もあるが、波長分散ではいろいろなバックグラウンドが大きくなるので、近くに持っていくとまずい。本方式は、幾らでも近くできるということがあり、具体的なセットアップがないと効率の比較は難しいが、我々の技術でも3桁ぐらい高いところまで行ける。全体のミニチュア化が大きなポイントであり、放射光に比べはるかに弱い線源で済む。その線源から出てきたものでも検出効率の高い検出器を使い、結晶分光ではセットアップができないような分光が可能になる。X線顕微鏡ではビームを絞る必要があるので、ビームを絞った分だけ検出効率、X線の効率が低くなる。そこで、その分を補うように検出効率の高い検出器でもって計測をするということ。

【委員等】
 最初に分光結晶を置いて試料に当てるか、当たった後、分光結晶を置いて選ぶかという違いだとすると、もともとの輝度が高くない線源でやってしまうと、結局、後ろで選んでも到達するX線の数が少なくなって、あまり顕微鏡にならないような気もするが。

【説明者】
 分光結晶に比べると全く自由なセットアップがまずできるので、例えばディテクタの中にサンプルを置いてしまうようなことも可能。それに近い、あるいは近いような形での計測ができるので、後ろの分光の効率もかなり高いことが分光結晶との違いになる。分光結晶に比べると、どこに置いても3桁ぐらい効率が高い、これはエネルギー分散と言っているが、波長分散の方式とは違う技術になっている。

【委員等】
 分光効率が3桁高いので、輝度が3桁低くても問題ないということか。

【説明者】
 簡単に言うとそういうことになる。

2 「シグナル伝達の定量化ハイスループットイメージング技術」

東京大学大学院理学系研究科 教授 黒田 真也氏

【説明者】
 現在注目しているのは、生体試料の可視化技術と呼ばれるもので、生体内の様々な分子の動態観測に向け多色で染色することがポイントであり、1細胞レベルで複数の分子を同定する技術である。
 例えばiPS細胞は万能細胞と言われ、皮膚等いろいろな細胞からiPS細胞をつくり出すことは可能であるが、すべての細胞がiPSになるわけではなく、ごく一部の細胞だけがiPS化するということが知られている。今その効率化が問題になっており、元々のターゲット細胞の数が多い中、なぜごく一部だけがiPS細胞になるのか。
 もう一つは、一旦iPS化や幹細胞になっても、別の細胞に分化を誘導することができるが、すべての細胞が一斉にある細胞へ分化するわけではなく、その1,000個や数百個のうちのごく一部のものだけが別の細胞に分化することがわかっている。細胞の集団で計測しても欲しい情報が得られないので、1細胞で複数の分子を同定することが重要。なぜ複数の分子かというと、iPSになる場合や、iPSから別の幹細胞になるという場合は1つの分子で決定されるわけではなく、複数の遺伝子産物によって制御するということがわかっているので、1つの細胞で同時に複数の分子を計測する技術が必要になる。
 今まで癌細胞は全て同じだと考えられてきたが、実際は癌幹細胞という癌の塊の中でもごく一部のものが、癌化を促進し、薬剤抵抗性を示してしまっている。癌全体に対する薬というよりは、癌幹細胞を同定し、それに対する薬の開発が求められている。癌幹細胞というのは癌細胞全体を見ているだけではなかなか同定することができない。1分子レベルで測定することにより、癌幹細胞を特徴づけている複数の分子の発現パターン等によって同定することが可能ということがわかっている。
 さらに、最近、システム生物学と呼ばれるコンピュータシミュレーションを用いて細胞の応答を予測することが最近盛んになっている。今までは文献からモデルをつくり、それからデータ取得を行っているが、いろいろなデータが精度よく大量にとれてくると、データから逆に元々の分子ネットワークなりが推定できる。これはデータドリブンモデルと呼ばれている。さまざまな多変数から将来、未来を予測するということで天気予報などに用いられている手法であり、ハイスループットイメージング技術ができるようになると、同じモデルでも非常に予測精度の高いモデルができると期待されている。
 今回提案する定量化ハイスループットイメージング技術においては、要素技術は主に2つある。1つは1細胞レベルでの多重染色により、1つ1つの細胞で複数の分子を可視化する技術。それから、可視化したデータを画像処理して、細胞を1個1個同定して情報を漏れなく抽出する一種のアルゴリズム及びソフトウェア解析。今回提案する技術は、多色対応の顕微鏡の開発と、画像解析による定量的なデータ抽出の2つからなる。
 多色対応顕微鏡においては、方法としては分光によるか、可変フィルタで幾つかの蛍光の波長をバンドパスを分けて計測するか、大きく分けて2つの方法がある。フローサイトメータと言われる1細胞ずつを計測する技術があり、どちらかというと競合分野になっている。
 画像処理においては、観測精度の向上等が、テクニカルな部分でのブレークスルーをもたらす大きな課題の1つ。画像処理として、我々が使っている免疫染色方法、既存技術のWestern Blotと呼ばれる方法がある。Western Blotが生物分野の中では、タンパク質、リン酸化等については定量性が高いと言われており、本方法はそれとほぼ同等の定量性がある。
 またロボットによるサンプル調整の自動化。今のところは市販機でもある程度の自動化は可能であるが、どうしても観測ノイズ、機械によるノイズが入ってしまう。
 多色での同時観測は可能であり、また画像解析のアルゴリズムが、市販のアルゴリズムに比べて圧倒的にすぐれた細胞の認識能力を持っているので、この2つを組み合わせることにより、日本が今の段階でもし開発することができればイニシアチブをとれると考えている。最先端の分野では、今までは細胞集団を相手にすることが多かったが、細胞集団の中でもごく特定の一部だけ見ることへのニーズが高まりつつある。

【委員等】
 ハイスループットイメージングにおいて、固定しないと抗体等が入っていかないので、一遍細胞を殺す必要があるのでは。

【説明者】
 ライブイメージングという、蛍光プローブを細胞に入れ生きたまま観測するという技術がある。多色のプローブさえ用意すれば、この手法に適応できるので、基本的には、念頭にあるのは死んだ細胞であるが、ライブの細胞にも十分対応できると考えている。

【委員等】
 6回免疫染色をやって、6色の光でもって見ていけば、今ある既存の方法でできないか。

【説明者】
 多色を同時にはかると、1つの細胞で複数種の分子の発現パターンが追えるので、いろいろな細胞集団の分離能が上がる。

【委員等】
 画像処理に行く前の顕微鏡の問題だが、普通の顕微鏡で見るという格好にしている。画像処理で、解像力を超えたように見えているが、実際にはそれ以下のレベル。サブセルラーのレベルはほとんどピクセルの数で見て大きくなっているだけで、ほとんど解像していないのでは。それが6色に対応した分子のレベルまで細胞の中で見ているのか。このアルゴリズムを変えただけでは対応できないので、顕微鏡の解像力の問題、6色を使って解析することの問題はどのように処理されるのか。

【説明者】
 解像度の問題は、基本的には顕微鏡の性能と対物レンズの倍数で決まるものであり、基本的には既存の倍率で十分だと考えている。細かいところまでとると核、細胞死、細胞内小器官、いろいろなところが追えるようになるが、今考えているレベルでは、ある細胞を同定するということだけを念頭に置いており、核、せいぜい細胞質レベルでの解像度になる。具体的なiPSなど、細胞質、核が分かれる程度で、十分な情報はとれると考えている。

【委員等】
 免疫染色をwesternとちょうど定量化することができればいいと思っているが、今ある免疫染色の中で6色うまく対応してやれるような生体標本、バイオ細胞の標本の技術というのはどこで買えるのか。モノクローナルでものすごいスペシフィックな2次抗体でもつくれればいいのだが、今のところないときに、どのようにそれを考えられるのか。

【説明者】
 6色対応するときには2次抗体は使わずに、1次抗体を直接ラベルするということを考えている。6色程度の蛍光色素は存在するので、1次抗体はまず別々にやってみて、この場合は2次抗体を使わないという方法を6色の場合は考えている。抗体を使うのは、当然のことながらその抗体のクオリティーによって精度のいい悪いはあるので、1つ1つは必ずwesternと比べて同じ感度を持っていることを確かめた上で使わないといけない。多少、そういう制限はあるかと思うが、市販の抗体を使えるというメリットがあるので、十分いろいろな用途に使えるのではないかと考えている。
 2種類の分子を今同時にはかっており、同時にはかったもののwesternと比べたものと、1つ1つ比べた場合で同じドーズ・レスポンスカーブをとったとするならば、同時に染色しても大丈夫だと考えている。今のところは2色、3色しかやっていないが、多色で染めたものと、1色1色で同じ定量データを得られるかということで判断している。

【委員等】
 物づくり、ナノ、材料、環境等、他の分野への波及性、あるいは汎用性として、どのような展開が考えられるか。

【説明者】
 基本的には生体試料しか考えていないので、直接環境やナノにかかわらなくても、ナノの技術で開発したプローブをこの手法に用いて使うとか、環境に対する影響を調べることであれば、この技術も十分、スクリーニングという意味では、細胞に対する毒性等に対する評価ということには使えるのではないかと思う。

【委員等】
 細胞の中の抽出してきたものしか見ていないが、例えばリン酸化等が起きたら、どこでどう起きているかということを見たいという先生方がたくさんいらっしゃるので、非常に注目される。ここで紹介されているのは2次元の情報で、やはり3次元で見たいということになると思う。おそらく、ほかの既に開発されている顕微鏡の3次元表示等で解釈できるとは思うが。

【説明者】
 基本的には3次元、例えばコンフォーカル・マイクロスコープを使って共焦点レーザー顕微鏡で、3次元画像をとれる。今のところは細胞の局在ということまでは考えておらず、細胞全体での信号をとれるかどうかということをメインに置いている。局所は撮れるが、全体はどうしても粗くなってしまうので、2次元でCCでとったほうが細胞全体での信号というのは拾えるのではないかと考えている。将来的には3次元も考えるが、現段階では局在、3次元をあまり問わずに、細胞全体で精度よく撮れるかどうかということにフォーカスしたいと考えている。

【主査】
 バイオの分野で日本の計測・分析技術が負け続けてきているという歴史からすると、これでイニシアチブがとれるかという感じを持つが。

【説明者】
 どこでイニシアチブをとれるかはなかなか難しいことかもしれないが、多色により測る顕微鏡開発自体がないことと、画像解析が非常にすぐれており、それを組み合わせるところに、おそらく一番大きなポイントがあると思う。
 市販のいろいろな顕微鏡、画像認識については、本画像解析のアルゴリズムがすぐれており、基本的には全く新しい機械になると考えている。最終的にはフローサイトメトリに代替するような機械なので、将来的には基礎研究分野だけではなく、応用分野でも広がっていくと考えている。

【委員等】
 複雑なものを可視化するというところで、日本の文化として何か得意なところがあるかと思う。日本はかなり複雑なものを根気よく解き明かしていくということに長けており、何かうまく結びつけていけば、もう少し説得力が出てくると思う。

【説明者】
 1つの要素というよりは、1つの要素技術の積み上げ。1つ1つを見れば、一見、大したことがないように思えるかもしれないが、最終的には質的に違うものが組み合わせることができ、サンプル調査の自動化、ロボットを使うところも、基本的には日本は得意としている分野だと思う。定量性を上げるような努力を1つ1つ積み重ねていけば、最終的にでき上がったものは全く違った質のものになると考えている。

3 固体レーザーの最前線 - 計測分析に変革をもたらすレーザー

自然科学研究機構分子科学研究所 准教授 平等 拓範 氏

【説明者】
 レーザーは環境、エネルギー、ナノテク、バイオ、医療等、全般に係る基盤技術である。レーザーは非常に高輝度な光をつくり出すことができるが、波長領域にいろいろ制約があり、SPring-8のような放射光施設に比べると非常に限定された使い方しかできないが、大型の装置でもできないような高輝度な光をつくり出すことができ、それによっていろいろな物質と光との強い相互作用を簡単に引き起こすことができるという特徴を有している。
 そこで、レーザー技術の現状と課題ということで少し、特に計測分析分野から見てみたいと思います。UV領域では、エキシマレーザー、窒素レーザー等のガスレーザーがある。可視光の領域では、アルゴンレーザー等がある。赤外領域ではCO2レーザーがある。このようにいろいろな波長でレーザーが出ているが、どちらかというとガスレーザーが主役である。性能としては良いかもしれないが、何かの機器に組み込むとなると非常に大きな障害になっている。トランジスタに相当するような固体レーザーがあれば状況は変わるであろう。
 レーザーの波長は、物質で限定され、波長可変性というのはなかなかとれない。いろいろな物質を測定したい、いろいろな物質と共鳴させたいということになると、可変性が重要になってくる。さらにスループット、イメージング等考えますと、繰り返し周波数が高くないといけないのではないか。いわゆる低くもできるけれども、高くもできないといけない。十分にパワーがないと、信号が弱く、見えない、反応を起こせないということになる。
 そして、組み込みのためにはサイズ、安定性が必要になるものでこの表のように、Nd:YAGレーザーをベースに幾つか合格点をあげられる。
 最近、UVのほうも固体レーザーがよくなってきた。MALDIで使われていたのは窒素レーザーである。窒素レーザーは放電励起の、ガスレーザーであり、非常に大型、不安定で操作性も悪く、研究室から持ち出せなかった。高電圧、大電流が必要で、またビーム品質がよくない。
 そこで、ある企業と一緒に波長変換によるコンパクトなUV固体レーザーを開発しMALDIに適用したところ、癌に特有な、マススペクトルのピークを検出でき、さらには癌組織の2次元のマッピング、イメージングに成功した。このUVレーザーは、窒素レーザーに比べ非常に小型になり、100ボルトで動くので、ノイズもなく安全であり、小型構成で繰り返しが高い。レーザーが小型になるというだけで、いろいろな展開が期待できる。
 UV領域でのレーザー小型化ができると、他の装置との組み合わせがよくなってくる。イオンビームと組み合わせると、微小な少量のSPMを分析できるのではないか。要するに工場とか、車とか、いろいろなところで発生してきたものが、こういう化学反応を起こして体にかなり害を起こすと言われているが、一体どういう履歴で起こってきたのかということを全く解明できない問題があったが、これに対してこの組合せは非常に威力を発揮する。
 小型の高繰り返しのUVレーザー、これも波長が固定されたレーザーであるものの、これにより例えば2次電子像でペリレンがほとんど見えなかったのが、266のUVレーザーを使うと、このように2次元のイメージがとれる。すなわち、キロヘルツのUVレーザーにより今まで出来なかった実時間で有機物のマッピングが可能になる。これも空間分解能が大体47ナノメートルと非常に高い分解能でマッピングできる。
 中赤外(MIR)の領域でも波長変換により高輝度光発生が最近少しずつ可能になっている。このMIRレーザーを使うと大気中に含まれている微小なガス、エアロゾルを3次元的に実時間でマッピングできる。そのためMIRレーザーを小型にして可搬にするということは、防災も含めた環境計測に非常に有用ではないかと考えている。
 温暖化以外で、例えば今、自動車メーカーなどではエンジンの高性能化を図るということで、エンジンの動作をリアルタイムに計測したいというニーズがあり、コンパクトなMIRレーザーができれば可能になる。環境、防災の問題に赤外のレーザーというのは非常に貢献するのではないか。
以上、UVとMIRの領域はいろいろな物質を同定、選択励起できるということで大変有用であると思う。

 ところで我々が開発しているようなバッテリー駆動のレーザーでも、実はSPring-8に比べると、1ミクロン領域であるが、数桁以上高い輝度を出すことができる。ただ、波長域が非常に限定されているので、いかに興味有る物質の波長域に持っていくかが問題になる。先端計測のフロンティアとなるような光源をつくるとすれば、1つは紫外(UV)レーザーで、狭線幅で波長のチューニングが可能となると、いろいろな物質を選択、共鳴させることができる。そして、中赤外(MIR)レーザーは分子を1個1個仕分けできる。
 例えば広帯域で出すというものになるとSPring-8なのだが、輝度は非常に低い。従って輝度の観点から言えば、やはりこのMIRとかUV領域は未踏の波長域であると我々は考えている。こういったところをよく俯瞰してみると、レーザーも既に、いろいろなものがあるが、結局はこの領域は殆ど埋まっていないのではないか。MIR、UVの領域のよいレーザーは今後、計測技術を進歩させる上で重要なのではないか。
 そういう中で、狭線幅で波長可変もしくは広帯域で当てるようなブロードバンド分光手法などを十分な感度で行いたいとの分析・計測からの要求もある。キロヘルツ以上の高繰り返しが必要な事、十分な相互作用を持たす必要があるなどの事からまずは高出力でないといけない。
 ブロードバンドと言うと最近は、フェムト秒のさらに3桁短いアト秒パルスレーザーでは必然的にブロードバンドとなるが、非常に装置がでかくなってしまう。それよりも効率が桁違いに低く、計測に十分な出力は望めない。結局はナノ秒からサブナノ秒パルスの輝度の高いレーザーを波長変換でブロードバンド化する手法は狭線幅化も可能で種々の要求に柔軟に対応できるであろう。
 以上の事柄を考慮して、波長、繰り返し、マルチプローブ性等が満たせるような光源ができれば、新たな分析分野が開かれるのではないか。いわゆる電子デバイスが真空管からトランジスタ、そしてLSIになって世の中が変わったように、ガスから固体化、そして集積化されたマイクロ固体フォトニクスの領域に行くと、もっと我々が生活で実感できるような、そういうものができないかと考えている。
 環境、エネルギー、ナノテク、バイオ・医療、次世代燃料電池、自動車触媒に貢献するようなもの、もしくは低燃費、低排出エンジン開発に貢献するようなもの、環境防災に貢献するようなもの、FIB、MPに貢献するようなもの、半導体や有機物のナノテクデバイスの分析に貢献するようなもの、光脳科学の創出に貢献するようなもの、次世代のIR/UV-MALDIに貢献するようなものが、こういう高性能のレーザーを研究することでできると信じている。

【委員等】
 未踏の領域であるということだが、UVと中赤外の領域で海外動向はどうなっているか。

【説明者】
 世界情勢として、90年代までは、日本はアメリカの次ぐらいだったと思う。アメリカは軍需があり、また、国立研究所も立派なので枯れることはないが、日本の場合は最先端と言うより産業応用ということで加工を中心にやっていた。しかし、90年代になりドイツ等が欧州連合(EU)で、これからは光の時代ということで国やEUが資金と人を投入しレーザーに取り組んだ。ドイツの場合は車があり、物づくりに対する非常に強い執念がある。テーラードブランクというのがあり、例えば重量そのものは軽くなるが、当たっても壊れない車。危ないところだけ強くつくるというのがレーザーでできるということで、ドイツなどは非常に成功している。一方、レーザー装置の廉価版は、韓国、中国がキャッチアップしてきて非常に手頃ないいものをつくってきている。中国は産業と、先端科学の両面からもかなり大きな予算をかけてやっている。日本はセラミックで成功した。これは、東洋の歴史と半導体のバックグラウンドが素地にあって、うまく結合したことがあると思う。光は、ミクロンオーダーで相互作用しながら進んでいるので、その状態を利用できる構造をつくると、相互作用をうまく高める事ができる。そのために欲しい光の特性を、光リソの技術を使ってデザインできるというようなことが今来ているが、装置という最終的なもので見ると、かなり遅れている。
 しかし、デバイス等では日本のほうが進んでいる面もある。確かにレーザーのメーカーは、日本にほとんど無くなったが、それはある意味で幸いだと思う。何故なら今後のレーザーはデバイスにシステムを造り込むようになるため従来のレーザー装置は次世代では必要無くなる。むしろレーザーのシステムを理解する人がデバイスの人たちと、それを使いたいというユーザーが協力することで、欧米、アジア諸国とは一線を画した新しい領域が作れるのではないか。そういう意味でUV、MIR領域は、非常に高い可能性を有していると思う。

【委員等】
 今、実際の小型化というのはどのぐらいのサイズまで来て、どのぐらいの目処で小型化というのは進められていて、どういうようなレーザー光が出せるような状況になっているのか。

【説明者】
 企業と一緒にレーザープラグというものを開発している。エンジンをレーザーで点火しようという話。レーザーのほうがでかくて車に載らないし、バッテリーで動かない。そこで我々のマイクロチップレーザーをエンジン点火に応用を絞って高輝度化を進めている。これはプラグサイズのメガワットレーザーだが、繰り返しは低く、平均出力は大した事はない。分析応用だと、高繰り返し化に対応できるように高出力化を図ること、UVやMIRへの波長変換を効率良く行えるようにするなどの研究が必要かと思う。

【委員等】
 レーザーの応用において、日本は航空宇宙、燃料電池など、幅広い産業分野で使われており、ほとんどの発振器はドイツ、アメリカ製等のものが多い。故障すると外国で修理することになり、メンテナンスが十分できていない。最先端の研究開発、生産を担っているレーザーのシステムが、実は非常に重要な国益を担っているプロセス。このように実際に使うところで海外に依存するということが大きな問題ではないか。

【説明者】
 なかなか大変な状況だと思う。三菱電機はレーザーテレビというのを昨年米国で発売した。これは液晶と比べ色が鮮やかなだけでなく液晶テレビに比べても消費電力を30%カットできるので、実はレーザーテレビのほうが省エネになる。レーザーというのは輝度が高いので効率よく光を目的の場所や波長に持っていくことができる。このように欲しいレーザーが準備できると商品に付加価値を与えられる。
 レーザーは開発費が高く、低価格化が困難で開発も利用もかなり苦しい状況にあるかと思うが、テレビや自動車に使われるようになると状況が変わってくる筈。我々としては、マイクロフォトニクスでユーザーと一緒に解決したいと思っている。将来は故障したら修理するのではなく、ごみ箱に入れてもらうような高性能ながらもユーザーフレンドリーなレーザーをつくりたいと考えている。そして半導体と同じようにリサイクルしてもらう、このようなレーザーはこれまで無かったものであり、この方向からレーザーについて新たな展開ができればと思っている。

【委員等】
 我々がこの波長が欲しいという赤外、中赤のレーザーは設計、作成可能か。

【説明者】
 4ミクロンから11ミクロンぐらいまで、大体ミリジュールのオーダーで、分解能は大体1.6カイザーぐらいのものはつくれる。

【委員等】
 本日の提案領域の内2つが非常に重要な要素技術にかかわるもので、広がりがある。一方で、計測手法を検討するときに、検出器・光源等の要素技術でスペックが自ずと決まってくる。例えばレーザー、検出器を公募にかけると仮定した場合に、公募する側がスペックを実現する技術を公募する方法と、公募側で応募者をジョイントさせるような方法があってもいいのではないかと思う。

【主査】
 本日の提案領域を公募領域にどのように結びつけるか、うまく行えば、これまでと違う展開が期待できるので、十分に検討したいと思う。
 今日の話題提供はこれまでの分野提示というよりは、かなりシャープに絞り込んだ要素技術のご提案があり、多色顕微分光による3次元イメージングというような話題もあった。ご検討いただきたい点は、本日のような要素技術志向のテーマ設定ができるかどうか、今後の公募あるいは領域設定というものをどのような考え方で進めていくのか、ご検討いただきたい。

【委員等】
 具体的なイメージとしては、例えば何か調査をした上で、調査そのものも公募してもよろしいかと思うが、計測分析技術のネックになっているようなレーザー・検出器等のスペックを明らかにした上で、次の段階としてそのスペックを満たすような技術を公募するという形。
 もう一つは、別の分野で、従来型で公募をかけた場合に、あるいはかける前でもよいが、検出器・光源等、要素技術が決定的に重要だという場合に、そこの部分を分離しパラレルで募集するということ。あるいは後づけでその部分を公募して、既に走っているものとジョイントさせて最終的にいい計測分析技術ができ上がるというような方法。

【委員等】
 今年の調査研究課題として、経年劣化の複雑系解析、ソフトも絡んだ多点計測法等がある。可能性、将来性という、ある程度ターゲットを詰めるものとして、このような枠をつくったのは非常によかった。
 最初の低温の放射検出器はもう既に走っており、電子顕微鏡に搭載して測定ができるところまで行っている。
 多色で2次元マッピングというのは、例えばNISTが今進めているX線マイクロアナライザーがある。鉱物などの資源解析のため、国家プロジェクトとして進められている。この中には画像処理の輪郭処理まで全部入っており、ソフトの高速化という意味では、日本は大きな遅れをとっているのではないか。計測機器の立場から言えば、ソフトの高速化への対応が日本はおくれているので、これはソフト開発の中の1つの新しいターゲットになるのではないか。
 固体レーザーについて、小型化というのは、ハンドユーザー産業などにとっても画期的で、むしろ半導体デバイス、3次元基盤を見据えて、計測のような小さな枠ではなく、もっと大きなプロジェクトが考えられるのでは。
調査研究を活用するという視点は、公募にあってもいいし、目標をきちんと見定めた調査研究をまず行い、その後、どのようなドッキングをすれば新しい機器開発に行くのか、そういう考え方をとってみるのもよいと思う。

【委員等】
 レーザーについて、日本の政策として進めていくことは考えられる。国レベルで推進していくという場合には、コーディネーターのもと、幾つかのチームをまとめて前へ進めさせるような、本当の意味での共同研究というのはなかなか日本では生まれにくい。これからは、コーディネートしていく機能というものもどこかに1つ設定しないといけないのではないだろうか。

【委員等】
 固体レーザーはもっと大きなテーマで取り組むべきだと思うが、先端計測で募集する場合はレーザーの開発がキーテクノロジーであるが、新しい機器が出るというような提案ができれば一番いいのではないか。例えば中赤で環境計測だとか、そういう切り口のほうがいいのではないか。

【委員等】
 MALDIに関してはもう既にある程度道筋ができている。相乗効果という点で、1つ1つの応用を築いていくという点でポイントを絞り、それ以外のところで行い、もう一度日本でレーザーをというところにつながればよいと思う。日本の産業全体からすればまた別の枠があって、それと一部重なっても構わないが、出口として少なくともここは確実に出すというような、すみ分けができてもいいと思う。

【委員等】
 現在、国家プロジェクトとして、次世代産業用のレーザー開発が検討されている。次世代産業用レーザーは今までのCO2・YAGではなく、ファイバーレーザーをベースにし、さらにセラミックレーザーを投入して大出力化しようと考えている。ファイバーレーザーをさらに進化させるという点で、小出力、さらに微細化の点で広がっていく可能性は非常に高いと思う。しかも、レーザーの発信器自体の研究開発は、多くの大学で研究されている。
 日本の総合力として高めていくという点で、加工技術と計測というのは非常に重要な組み合わせだと思う。このような意味でも、レーザーの開発ということも重要である。

【委員等】
 目的の明確化は必要であるが、ベースにある要素技術に近いが、出口がイメージできるような、そういう分野を取り上げてみるのも1つの方向性ではないかと思う。

【委員等】
 先端計測事業で開発実施中のレーザー関連課題とタイアップさせる等を提案し成果を上げるということも考えられる。

【主査】
 小型計測用レーザーを利用した先端計測システムや、このような枠組みの募集ができるかどうか、今まであまりなかったものであり、検討の価値があるのではないかと思う。

(3)今後のスケジュール

【事務局】
 平成22年度重点開発領域案に関する意見調整を踏まえ、12月の上旬頃に事務局にて、重点開発領域の候補案として提示させて頂く予定である。
 その後、各委員からご意見等をいただき、12月中には事務局から修正案をもう一度ご提示させて頂ければと思っている。それに対するコメントをいただき、それを踏まえ1月15日開催予定の委員会において最終決定を頂ければと思う。
 今後の事業実施について、予算との関係を含め今後どういった募集、事業を進めていくのが適切か、刷新会議等でもいろいろなご指摘もいただいているので、事業を見直すべき部分があるかも含め、この場で議論いただいて方向性を示せればと思っている。

【主査】
 来年度に関しては、いろいろな可能性があり、今までの延長線というよりは、これを機会に本事業の持続性を念頭に置いて考えられること、あるいは実施できること等いろいろ考えたい。

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研究振興局基盤研究課