第5期先端計測分析技術・機器開発小委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成21年6月23日(火曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 第5期先端計測分析技術・機器開発小委員会について
  2. 先端計測分析技術・機器開発事業 事業報告について
  3. 計測技術分野に関する動向について
  4. 今後の予定

4.出席者

委員

石田委員、上野委員、近藤委員、志水委員、菅野委員、杉浦委員、竹内委員、
田中委員、玉田委員、中村委員、二瓶委員、原委員、広瀬委員、松尾委員、
森川委員、山科委員

文部科学省

倉持大臣官房審議官、田口研究環境・産業連携課長、北郷研究環境・産業連携課長補佐

オブザーバー

本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
澤田独立行政法人科学技術振興機構開発総括
野田独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進部長
安藤独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー
丸山独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー

5.議事録

(1)第5期先端計測分析技術・機器開発小委員会について

【事務局】

 科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会の知的基盤整備委員会において、当該小委員会の設置が決定されている。先端計測分析技術・機器開発関連事業の計画及び進捗状況の把握、内外の関連する技術動向、ニーズ等の把握状況を踏まえた関連する事業の推進に当たっての基本的な考え方の整理・検討を行うこととされている。
 資料1-1は、本小委員会の運営規則を定めるものである。委員の過半数の出席を定足数とすること、代理人出席は認められないものの書面による意見提出は可能、会議は原則公開とし議事録は主査の承認のもとに作成し公表する等としている。
 また、先端計測分析技術・機器開発事業は平成16年より開始した事業であり、現在は、要素技術プログラム、機器開発プログラム、プロトタイプ実証・実用化プログラム、ソフトウェア開発プログラムの4つのプログラムが設けられている。
 機器開発プログラムにおける開発領域は、これまで毎年度、本小委員会において審議・特定しており、これを踏まえJSTが募集等を行っている。
 本事業は総合科学技術会議から21年度概算要求時に指摘事項を頂いている。具体的には、「テーマ数も多くなってきており、本施策の方向性を再整理する事を期待する」、「海外が強い分野、日本がイニシアチブを取るべき分野の選択と集中が重要であり、産業界との一層の共同体制が必要である」とある。本小委員会におけるご議論を踏まえ対応したいと考えている。
 本小委員会において、計測技術分野の動向把握、日本がイニシアチブを取るべき分野、ユーザーニーズをすくい上げる方法の検討を踏まえつつ、必要に応じて事業の運営方法の再整理ということをご検討いただき、これを踏まえ対応したいと考えている。

【主査】
 本事業は平成16年度から要素技術プログラム、機器開発プログラムを並行してスタートさせ、昨年新たにプロトタイプ実証・実用化プログラムを開始し、本年からソフトウェア開発プログラムを加え、事業規模も急速に拡大している。CSTP指摘事項の第1項目は、事業内容が多岐にわたり、テーマ数も増えている中、現状を再確認した上でプログラム内容をさらに精選するという考え方をもって全体事業を見ていくべきということである。
 第2項目は、日本がイニシアチブを取るべき分野を選択し、集中すべきであるということである。計測技術分野の世界の動向、あるいは日本の現状等を出発点として、本委員会で今後の方針についての議論をお願いしたい。

【委員等】
  欧米の分析計測装置はスループットが高く、ソフトも非常にすぐれている。逆に、欠点として、細かい部分を見ずに、とにかくたくさんのものを一度に処理してしまうところがある。日本の特徴として、細かい部分・複雑なものをきちんと見るということがあり、そういう点を生かし分析計測を発展させていけば良い。
 ライフサイエンス関係の分析計測においては、人間の体は非常に複雑であることから、要素に分解してやるより全体を俯瞰するような見方があってもいいのではという考え方がある。うまくイニシアチブを取り、文化に裏書きされた何かができるのではないか。

【主査】
 生命科学における計測分析はフロンティア分野であり、ただ今のようなご意見が特に重要であると思う。計測分析のフロンティアは急速に広がっており、生命科学がまさに象徴的であるが、知れば知るほどさらに複雑な様相が見えてくるという分野もある。従来のプログラムに加えて、今年度からは「調査研究」というメニューを加え、直ぐには研究スキームを具体的に提示できないけれども、それを前進するために問題そのものを解きほぐすということを開始している。研究費としては数百万円のオーダーで、チームを組んでいただいて、そのチームで検討するというものである。 全体をシステム的に見通して要所、要所の開発をするというような狙いの事業は今まであまり例のない試みである。本試みを通して先端計測分析技術の次の課題を明らかにし、道を切り開くものであると理解していただければと考えている。以上のようなこともあわせて今後の方針についてお考えいただきたい。
 資料1-1本委員会の運営規則(案)について、この内容でよろしければ本日の日付で本委員会決定という手続きをとらせていただきたいと思うがよろしいか。

(各委員より「異議なし」の声あり)

(2)先端計測分析技術・機器開発事業 事業報告について

【説明者】
 先端計測分析技術・機器開発事業については、第二期科学技術基本計画の中に「計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器の戦略的・体系的な整備を促進する」ということが示されている。これを受けてJSTにおいて先端計測分析技術・機器開発事業をスタートしている。経緯は資料2のとおり、平成15年に文部科学省で先端計測分析技術・機器開発に関する検討会を設置、平成16年から要素技術プログラム、機器開発プログラム、平成20年からプロトタイプ実証・実用化プログラム、平成21年からソフトウェア開発プログラムを開始し事業を推進している。事業の仕組みは、開発課題を公募、選定・評価し、採択されたチームにおいて研究開発を実施するというスキームになっている。
 研究開発チームとJSTは委託契約を締結し、研究開発実施中は開発総括が課題のサポートをしている。
 開発チームの構成としては、チームリーダーのもと、産学官でチームを組むことが基本となっている。プロトタイプ実証・実用化プログラムにおいては、ユーザーとなるような方々にもご参加いただき、非常にユーザビリティの高い装置の実証・実用化、研究開発を進めている。
 各プログラムの概要であるが、要素技術プログラムは計測分析機器の性能を飛躍的に向上させることが期待される、新規性のある独創的な要素技術の開発を行うことを目的としており、開発費は数千万円から億の単位で、開発期間は最長3.5年となっている。応募領域としては、主に研究現場で使われることを想定している「一般領域」と、主にものづくりの現場で使っていただく「応用領域」がある。
 要素技術プログラムの次フェーズとして、産学官が連携してチームを作り応募いただく機器開発プログラムがある。チームリーダーは、大学または企業とし、要素技術開発から応用開発、プロトタイプまで全体のシステムを開発するという目的で実施している。領域を特定しており、例えば、平成21年度は、一般領域として「進化工学、分子デザイン手法等による高機能性バイオセンサー・デバイスを備えた計測分析」というような領域、あるいは応用領域として「経年使用材料の寿命推定を可能にする計測分析」というような領域を指定し募集している。また、両プログラムに関しては、よい提案を出していただく準備として、最長1.5年での調査研究という枠組みを設けている。
 平成21年度からスタートしたのはソフトウェア開発プログラムで、先端的な計測分析のプロトタイプ機があることを前提としている。ユーザビリティを上げるアプリケーション等により、信頼性の高い機器・システムに仕上げることが目的になっている。アプリケーション、データベース、プラットフォームの開発を行うもので、チームを組んで応募するものである。また、調査研究として、先端的な計測分析機器関連のソフトウェアの標準プラットフォームを開発する構想のもと、標準プラットフォーム開発の実現可能性調査や最適なプラットフォームの仕様設計を募集している。
 平成20年度からスタートしたプロトタイプ実証・実用化プログラムは、最終的に商品化につなげる一歩手前のプロトタイプ機を、実用可能な段階まで仕上げることを目的として、産学官のチームで応募するものである。チームリーダーは企業の方としており、企業とはマッチングファンド形式により、実用化に向けた開発を促進するスキームになっている。
 また、研究開発された技術の実用化を出来るだけサポートするため、開発目標が達成された課題はプログラムをステップアップしていき出口に近づけていくことを目指しているという特徴を持っている。科学技術研究費補助金等、様々な研究支援プログラムから出たシーズ、また企業で研究されているシーズについて、要素技術プログラムで要素を固め、機器開発プログラム、実証・実用化プログラムにより企業化、その間にはソフトウェア開発という形で支援することを考えており、出来るだけ速やかに世の中に実用化されるよう運営している。
 課題評価については3段階での評価をしている。1番目は事前評価で、提案課題を選別、選考するという評価で、書面審査、面接審査で実施している。その後、開発開始から1年位を目処に、中間評価として、報告書による書面審査、面接審査を行っている。開発終了後に事後評価として、書面、面接、開発現場での評価を実施している。これらの評価については、先端計測技術評価委員会をJSTの中に設置し実施している。なお、開発終了一定期間内に追跡評価を行うこととしている。
 開発総括には、年2回程度サイトビジットをして頂き、チームと密接にディスカッションし研究のサポートをして頂いている。また、開発総括に集まっていただいて会議で問題点を議論いただくなど、積極的に事業の推進を図っている。 事業化に関して支援する事業化推進顧問には、特に特許化の戦略や事業化のビジネス戦略等についてアドバイスをいただいている。
 平成21年度の公募状況として、プロトタイプ実証・実用化プログラムについては4月から開発に入っていただけるように昨年度からこの課題の選考を進めており、4月1日から開発に入って頂いたところである。機器開発、要素技術プログラム、ソフトウェア開発プログラムについては現在、選考を行っているところである。特にソフトウェア開発プログラムを今年度から実施することになり、様々な場所で制度説明を行っている。
 幾つかの開発成果について、平成16年度に機器開発を開始したチームの中から4チームがプロトタイプ実証・実用化プログラムにステップアップしている。「顕微質量分析装置の開発(浜松医科大学 瀬藤教授、島津製作所)」、「疾患早期診断のための糖鎖自動分析装置開発(北海道大学 西村教授、日立ハイテクノロジーズ)」、「生体計測用超高速フーリエ光レーダー顕微鏡(筑波大学 谷田貝客員教授、富士フィルム」、「高精度高安定pH計測用イオン液体塩橋の開発(京都大学 垣内教授、堀場製作所)」等、すばらしい成果が出ている。
 成果の普及に関しては、開発が終了する前からいろいろな方々に成果を知ってもらうため、分析展、全日本科学機器展、ピッツバーグ分析科学・応用分光学会議(海外)といったところに、開発の途中段階でも積極的に展示を行っている。
 本年度はこれらに加え、ライフサイエンス系の計測装置の開発も増えてきていることもあり、バイオジャパンに出展予定である。

【委員等】
 資料2の7ページのロードマップ中で、要素技術、機器開発、プロトタイプと移行するような図がある。採択の中でこの移行はどのように行われているのか。移行が進んでいるか、要素開発がそのまま要素開発で終了したのか等が見えないと、この3つのプログラムがきちんと行われているということが分からないと思う。 

【説明者】
 ステップアップという考え方で評価、選考しているのが去年からで、平成16年度に採択した機器開発のチームから4つが実証・実用化に行っている。ステップアップに関しては、これから4つの制度をどのように連携していくかが課題と考えている。 

【委員等】
 要素開発から実証・実用化プログラムに入った等、ステップアップした課題はあるか。 

【説明者】
 要素から機器開発へ移行したのが2件、機器開発から実証・実用化に移行したのが12件となっている。

【委員等】
 東京大学との共同研究スタートが報道されたが、その中身は、プロトタイプ実証・実用化プログラムに相当するものである。その前に、もちろん要素技術や機器開発、ソフトウェア開発も行われている。このような取り組みをやるべきだと思っていたところで、JSTの方々が、先端計測事業をコンセンサスを得て始められたということに勇気を得て、始めることができた。 

【委員等】
 プログラムが始まった当初は応募がすごく集中し、採択率が低いのではないかというお話だったが、20年度は予算が増え採択が増えたと理解してよろしいか。

【説明者】
 平成16年度に2つのプログラムを実施し、最初はかなりたくさん応募いただいた。平成20年度から実証・実用化プログラムが増えており、少し応募も増えているかと思う。昨年は各地を回り事業説明を行い、応募をたくさん頂くことができたと考えている。 

【委員等】
 実証・実用化のプログラムについて、機器開発プログラムで良い課題が育ち、非常にいいものだけが出てきたから高い採択率になったとは理解しているが、企業の方から見て十分に魅力的なプログラムになっているか。 

【説明者】
 プロトタイプ実証・実用化に関し、企業の方にも研究開発費を負担頂くという制度になっている。応募頂くには相当の準備が必要であり、景気の状況も影響するかと思っている。企業にうまく活用頂ければ、今後の展開に非常に重要で強力なツールになることをご理解いただけるよう、説明を続けていきたい。 

【委員等】
 理解いただくとともに、魅力的なプログラムにしていかれる手立てがあるといい。 

【事務局】
 日本分析工業会の活動とも連携しながら、そこにこの分野の産学のプラットフォームみたいなものをつくっていけないかという話もさせていただいている。
 今までプログラムが要素技術と機器開発しかなかったものを、この後、プロトタイプ実証・実用化、それからソフトウェアとつけ加えたのは2つの意味がある。1つは、公的資金を投入した成果を出す側からの普及戦略と、企業側からプロトタイプ実証試験を文科省のプロジェクトで、実用化まで行うプロジェクトは初めてだということである。
 ソフトウェアは、プラットフォームという点で、企業との関係で若干、企業側に抵抗がある。自社製品のプラットフォームだけ作ってくれるのならよいが、他社も一緒のプラットフォームはいかがかと。ただ、ある程度こちらから介入して、企業文化もちょっと変えてもらわなければいけないのではないかと思っている。うまくいくかどうかは企業との関係で、大学の先生、あるいは企業の中でも「こういうことが出来るとよい」と言っている人がいる一方、なかなか個々の企業にとってみると、プロトコルを統一すれば中身をそんなに出さなくてもいいはずという考えもある。
 普及戦略を詰めてソフトウェアまで来たが、その次は何かというところで、もう1回始めに戻って、今度はグローバルに計測ニーズをどうやって集めるか。CSTPの指摘にあったように、重点化として、日本が勝てるところ、しかもマーケットが世界にあるものをどうやって狙っていくかと考えている。 

【委員等】
 12ページのところで、平成21年度公募状況について、機器開発プログラムが非常に増えている。この予算は非常に重要なので、22年度は相当、予算を申請していただいたほうがいいのかと思う。倍率10倍というのは、22年度に急激に公募が減るのではないかと逆に心配している。 

【委員等】
 18年、19年あたりに、やや応募が落ち気味になったことがあり、いろいろな計測機器を挑戦的に取り組んでもらうということでこの一、二年、全国的な掘り起こしに取り組んできた。その効果も若干あったかと思うが、21年度は、今ご指摘をいただいたような応募件数になっている。JSTの事業で、採択率というのは非常にいつも目を光らせており、採択率が低いと応募していただく方々にディスカレッジングになる。 

【委員等】
 課題採択状況に関連して、どうしても領域非特定に応募が集中してしまうという問題があったかと思う。領域特定と非特定に関し応募の偏りはどのようになっているか。 

【説明者】
 今年度は、機器開発で90件の応募があり、領域特定に応募いただいたのは34件、非特定のほうが56件ということで、非特定のほうが多い。これは、特定いただいた領域についての周知や、計画を立てていただくときに時間がない等、幾つかの要素が考えられる。調査研究ということで、今年度は機器開発のところでは17件応募があったが、機器開発までには少しタイムラグが生じる。出来れば、領域特定のタイプについては、準備が必要であればできるだけ調査研究で準備いただき、それから本格的に領域に応募いただくことも考えていきたい。 

【委員等】
 今年度、調査研究を領域特定で申請し、その後、進んだ段階で、前年の特定領域のテーマであるけれども、それで申請できるという形を設けるといった方向をご検討ということか。 

【説明者】
 そのとおり。 

【主査】
 本日出たご意見、ご質問の内容を一目瞭然にわかりやすく表をつくっていただいて、次回にでもお配りいただけないか。特に採択率の変化とか、幾つか大事なご指摘がある。評価委員会の立場からどういうふうにその中身を評価するか、動向を評価するかということを検討してはどうか。財務当局にきちっとした現状を言い、重要であるから予算を増やすべきであるという有力な根拠になり、また執行されている予算がどういう意味を持っているのかということをレポートする必要もある。そういう努力をぜひしたいと思う。

(3)計測技術分野に関する動向について

【説明者】
 CRDSの役割として、国としてどのような研究開発戦略を立てるべきかという提案を行うということがあり、戦略立案のための基礎資料作成等を行っている。現在、電子情報通信、物質・材料、ナノテクノロジー、環境技術、ライフサイエンス、臨床医学、政策・システム、海外動向、G-Tecという形で9つのユニットがある。計測技術は、環境技術ユニットの中で見ていくことになっている。
 これまで、CRDSにおける計測技術への取り組みとし、基盤的なツールとして、計測技術を見通す俯瞰図を作成している。また、これまで二度、専門家の方の意見をいただいてまとめた国際比較というものを発行している。計測分野における研究開発戦略として、「ものづくりイノベーションのためのハイスループット先端計測」、「社会インフラの劣化診断・寿命管理技術」、「Dynamic ObservationとModelingの協奏による界面現象の実環境動的先端計測」を提案している。
 戦略提案までのプロセスとし、まず俯瞰活動の前に常設研究会というのを設け、研究者と研究戦略立案者との接点、情報交換の場を、主に計測分析の研究者との会合を行っている。そして、俯瞰活動として俯瞰ワークショップを開催し、この後に、俯瞰活動をもとに報告書を発行すると同時に俯瞰マップを完成させる。
 この俯瞰ワークショップで議論された中で必要性が大きく指摘されたものを戦略スコープとして導き出し、今年度にシングルセル計測チームとして戦略プロポーザルを深く堀り下げている。
 それとともに、国際比較では、専門家の方に執筆依頼をして、他国と比べどの分野でどう強いのかというのを比較した。そして、先ほどの戦略スコープとして、2007年度に実環境4D計測チームを設けニーズ調査を行い、またワークショップを開催して研究者の方と語り合い、それを報告書として戦略プロポーザルを発行した。
 昨年度から改訂した計測技術分野の俯瞰図について、計測手法を俯瞰するような形として、これをサポートする技術、この計測技術を装置化するときに必要となる条件等を書き出し、さらに社会のニーズとして書き上げた4つの分野を俯瞰するようなマップとして作成した。この俯瞰図を基にして、分離精製法、分光分析法、構造解析法、センサと検出、イメージング、試薬とプローブ、複合分析という6分野で国際比較調査を行った。各国フェーズ毎に分けており、研究水準というのは大学・公的研究機関における研究の力、技術開発水準というのは企業における研究開発の力、産業技術力というのは企業における販売状況、製造を通した技術力ということになっている。日本は、分離分析を研究する大学の研究室がアメリカと比べて少ないということで、米国のレベルが高いということが導き出されている。特に、分離分析は医薬品分野の前処理として非常に重要な、市場も大きいものであるが、米国主導になっているという状況である。また、マイクロチップを用いる分離分析、こちらは最近出てきているが、今後の発展が期待されるということ。そして、粒子分析に関しては重要な分野ではあるが、まだ研究の域を出ていないということが指摘されている。
 分光分析法分野の国際比較においては、ニーズが明確な分野、例えば、半導体や材料分野は日本が強いということが示されている。ただ、この技術に関してはビジネスリスクが低い。いわゆる参入しやすいということがあり、アジア諸国が今これに取り組んでいるという現状がある。また、これは開発すべき内容だが、波長可変で小さく安く消費電力の少ないレーザー素子が光源として強く望まれているということがピックアップされてきている。
 構造解析法分野において、質量分析法による糖鎖解析などは日本が優位であるが、全般的には欧米、特にヨーロッパが強いということが示されている。またNMR構造解析法の研究水準は日米欧が拮抗しているが、近年、ドイツをはじめとする研究コアが形成され、よりすぐれた成果が出始めているということが報告されている。
 センサと検出分野において、全世界的なバイオブームの中で、特にDNAの計測に関する研究開発が多い。高速の超ハイスループットを目指したセンシング技術から超高感度1分子DNA光検出の装置化まで進んできている。また、センサの多くは第二世代に入ってきており、安価かつ高性能を目的とした新たなセンサの開発競争が始まっている。欧州の主要各国のセンサ技術開発は日本とほぼ同程度であるが、実用化に向かう技術開発姿勢は強いものがあるということが報告されている。
 イメージング分野において、特に電子顕微鏡などは日本が強いというような分野であるが、全体的に見ると欧州が優位にある。アメリカは、戦略としてナノテクノロジーに強化が図られており、進歩を先導しているという状況がある。日本は、ラマン分光、電子顕微鏡、蛍光・発光バイオイメージングなどの分野で優位性を維持しているという状況である。
 試薬とプローブ分野において、ボストン大学の下村教授が発見した緑色蛍光タンパク質(GFP)に代表されるように、もしもすぐれた発見が為されれば、そのインパクトが非常に大きい分野である。先端医療の観点からも期待が大きい分野である。基礎研究に関しては、日本は欧米に肩を並べているが、産業分野については優位性があるとは言いがたい状況である。また、日本が強いという分野に関して、国内企業でライセンス料を設定する企業が台頭してきており、我が国においても、その産業応用が急激に進む土壌があるのではないかと言われている。
 複合分析法分野は、各国が国家プロジェクトとして国力を挙げて取り組んでいる研究課題の解決に必要不可欠な計測技術である。ゲノム解析、プロテオーム解析、創薬スクリーニング、iPS細胞の安全性評価など、非常にホットな分野であると言える。DNAシークエンシング法では、アメリカが大型予算を投入して、優位になっているという状況である。また、創薬におけるハイスループットスクリーニングでは日本のレベル低下が著しいということが指摘されている。
 以上7分野をまとめ、国際比較の傾向として、本当に大きな視点でしか書いていないが、ノーベル賞の受賞からも明確なように、日本の計測技術分野は基礎研究が非常に強い。基礎研究から機器開発への流れは、需要がある程度期待できる製品以外の機器開発は遅れがちであると指摘されている。また、製品化段階では、投資リスクの大きな新規装置の開発に積極的に取り組むベンチャー企業の存在により欧米が圧倒的に優位。日本は、装置の使い勝手を支配するユーザーインターフェースだけでなく、データベース等のデータ処理ソフトも欧米に劣るケースが多いということが指摘されている。
 俯瞰活動と国際比較の内容から、今年1年のCRDSでの活動の基となるような大きな流れとして、公害対策、原子力技術、バイオブーム、半導体エレクトロニクスの後に、現在、出されている大きな流れ、バイオ・医療であると、ポストゲノムの時代で、1分子研究とか1細胞レベルの解析、また新たな医療としてテーラーメイド医療、予防医療というところで、スクリーニング検査技術、光CTやマイクロ・ナノセンサー、高精細画像伝送というものが挙げられ、流れとして考えている。
 また、エレクトロニクス・材料として、次世代エレクトロニクス(Beyond CMOS)があり、これに適した計測技術が必要となると思われる。食の安全ということでは、残留農薬、そしてアレルギー物質。安全・安心な社会においては、防犯、防災、テロなどの危機管理で、テラヘルツスペクトルなどを応用したようなものがある。そして、高度交通システムも1つ、図るべきものがあるのではないかと考えている。最後に環境技術として、環境汚染物質、このような規制に対応したような検査、そしてその場の環境モニタリングや地球規模の環境モニタリングということが挙げられている。 

【委員等】
 国際比較のところで、研究というのは、ある計測装置を用いた研究かどうかということか。また、技術は、ある液体クロマトグラフィーであれば、国内のメーカーの技術ということか。 

【説明者】
 その通り。技術は国内メーカーの研究開発の技術。 

【委員等】
 産業というのは、液体クロマトグラフィーであれば、日本のメーカーの、日本でのビジネスがどうかということか。 

【説明者】
 その通り。 

【委員等】
 今年は分野別にクリアに分類されていて、よく調査されていると思うが、結果から見ると、昨年とそれほど変わらないと思われる。
 ナノテクはかなりいい線をいっているという結論だったのだが、今回もそうであるか。分光技術やナノテク関係の表面技術は、欧米と比較してかなり善戦している。文献などを読むと、中国、韓国はそれほどレベルは高くない。しかし、中国では、欧米から先端の研究技術などを持ってきて、若くて優れた教授がリーダーシップを取って進めている。日本も油断していられないと思う。 

【説明者】
 ナノテクに関しては、予算・研究施設等の面でアメリカが極めて進んでいるところがある。日本は、今のところ順調であるが、今後は危ないのではないかという指摘もある。
 それから、ナノテクのマテリアルに関する安全性の問題、ナノテクを使った情報のセキュリティの問題、小さなカーボンファイバー1個の中にいろいろな秘密情報が入り込んでいるような化学的な問題、デバイスとしての問題等、サイエンスの問題ももう少し見ていこうということもある。 

【委員等】
 韓国、中国の動向をもう少し精査していただくとおもしろい結果が出るのではないかと思う。 

【委員等】
 「科学技術・研究開発の国際比較」37ページの光電子回折のところで、「第3世代の中型リングが諸外国でたくさんできている状況に対して、日本では計画が認められず、中国などにも水をあけられつつある」という記載があるが、どのようなことを意味しているのか。また、この中型リングというのはどのようなものか。 

【委員等】
 半導体等を対象に、軟X線の領域を目標にした小型の放射光施設というのは要望が強く計画はあるが、まだ実現していない。 

【説明者】
 このような国全体としての戦略にかかわるような内容は、正しいかどうかも含めて確認し、しかるべきところに提案するなど考えていきたいと思っている 

【委員等】
 国際比較のマトリクスにおいて、どのような手法で調査したのか。この研究水準、技術開発水準、産業技術力という分け方はどのような考え方を持って分けているのか。 

【説明者】
 有識者の方々にすべて点数づけしていただいているが、有識者によって認識が多少ずれはあるかもしれない。研究水準は大学での研究レベル、技術開発水準は大学や企業の技術開発レベルの水準、産業技術力は産業に直結するようなレベルということで、有識者によってやや認識が違うことはあるかと思う。
 調査方法について、それぞれの中項目に対して1名の有識者の方にお願いし、実際の調査に関しては、その関連する分野・先生に相談をして現在の状況を考察する、文献情報等を収集し調査を行う等、有識者の方々のやり方に委ねている。
 指標の部分については、客観性についていつも議論となるところで、答えとしては、「少なくとも、日本において、その部分の識者というものの情報でやっている」ということになってしまう。 

【委員等】
 日本の公的資金を導入していろいろな分析機器なども買われていると思うが、実は海外製品を買っているのがかなり多いというような話も聞いている。公的資金が導入された結果、どんな分析機器が導入されているのか等は分からないか。アメリカ、ヨーロッパ、日本のどういう分析機器が導入されているのかがわかるのでは。

【委員等】
 研究、技術、産業と3つに分けて書いてあるが、何らかの相関を持って水準を決めているのか。それとも全く独立したものと考えているのか。 

【説明者】
 相関関係はない。研究水準が非常に高くても開発段階、さらに製品化段階でつまずくという指摘はたくさんある。独立した結果として、現状がどうかということだと思う。 

【委員等】
 資料3の9ページから16ページにおいて、△となっている部分は、重点的に何らかのことをしなければいけないということを意味しているのか。△でも、基礎力がきちんとあれば、これは時間がたてば解決する問題としてとらえておく必要があるのか。△部分は、遅れているからきちんと取り組まなければいけないという印象を持つが。 

【説明者】
 独立していると思っている。研究者は自分の論文等、世界の動きを見て、研究は今この辺にあると認識する。企業においてはビジネスが成り立つかどうか等の問題を考えていくと思う。そういう意味において、相関性はなく、産業というのは、まさに売れていてシェアを持っているかどうか、それだけの判断だと思う。部分、部分で優れたものがありもう少し細かく分けないと本当のことは出てこないと思うが、一般的な形でこういう指標が出ているという形だと思う。企業の研究所の中の技術レベルという意味において、どの程度かというのを探るのはすごく難しい。 

【委員等】
 計測機器の国産化比率という指標は、産業や技術と相関がとれていると思う。例えば、NMRや質量分析は、研究は○であるが、産業は△であり、完全に外国比率が高い。液体クロマトグラフィーは国産化比率が高いから、両方とも○になっている。装置開発技術は国産化比率と相関はあるのではないかと思う。 

【説明者】
 利益のためにある部分だけの分析機器をつくるとすれば、どのような機器が考えられるのか。したがって、今から我々が研究するものが、対象になるのかどうかも考えていかなければいけないと思う。イメージング能力のところで頑張っていくかどうかというようなところと、どの部分で海外企業と競争していくのか、どの部分が日本がすぐれていくのかという形で見なければいけない。そういう意味において、大きなオープンイノベーションのような形でつくり上げられるのだろうと思う。この辺りを今から、国粋主義に走らずに全体としてどうするか考えていくのだろう。

【委員等】
 昨年5月ごろ開催された次世代の計測技術についての講演によると、これからの時代にどういう計測機器が必要かということを、世界中のメーカー四十何社が参画し、それに企業で計測に携わって活躍している現場の技術者、大学、NIST(米国国立標準技術研究所)も加わり、3年間に渡り活発なミーティングを開きながら組み上げていっているUSMS(米国計量システム)というものがある。
 その中で、人間の五感をどう計量、計測するか、どんな学問体系が必要で、どういう新しい技術が必要で、どういうユーザーのニーズとマッチングさせるかということがある。学問の分野であれば、オプテックスはまだ完成されていない。その対象よりもはるかに小さな、光よりもはるかに小さな対象に対したときの散乱の議論はまだ完全にできていない。目で見えるスペクトル範囲だけではなく、目に見えないスペクトルの範囲まで広げてやると、それがお互いに干渉しながら違った情報を出す。だから、見るという五感をフォローアップしようとすれば、そういうスペクトロスコピーの技術も要れば、またそういう理論も必要となる。計測機器の開発には、企業の意見を汲み上げる必要があると思う。

【説明者】
 ダイナミックスとか生体とか解剖学ではない、リチウムがどういうふうに動くかとか、固体電解質の中で各イオンはどう動くのかとか、電極のところにリチウムのクラスターはどうなっているのかとか、そういう企業からの要望があると思う。こういうところから何かが欲しい、そのためにはイノベーションをやってほしいというのが今の要望だと思う。そういう意味において、企業がもうけるというよりは、今こんなことをやってくれれば人間の五感の計量など新しくできるという意見を、いろいろなところからお聞きしたい。そうすると、CRDSは、こういうイノベーションをやるべきではないかと提案する。このような企業ニーズに応える研究者をプロトタイプに持っていくようなプロポーザルをつくるのが、CRDSの役目ではないかと思っている。 

【主査】
 トレンドの把握がどれくらい確かなのか、信頼できるのか、そのあたりをもう少し説得力を付加することは考えられないか。幾つかの軸が今、議論されているが、例えば、技術レベル、あるいは産業レベル、分析機器メーカーの産業という力量で比べれば、これは統計的にもっとしっかりした数字が出る。判断の根拠を、この項目はこういう数値、統計で判定している、あるいは、この項目はこういう根拠があるのだということをもう少し説明していただく必要があると思う。トレンドを把握するための方法がないと変化がつかめない。実は変化が大事である。
 もう1つは、これから何が必要かというところが大事で、今ある道具でどれがよく使われているという現状があって、次に何が必要なのかというのは全然違う方法論じゃないと見極めがつかない。昔から「Science on Science」あるいは「Science of Science」というのは大事だと言われながら、日本はなかなかそういうことをきちっとやる人はいないということが、日本の学術の1つの欠点だと思う。ものすごく地道な努力をしてデータを積み重ねて、このデータをつくるためだけで数十人という、本当に没頭してこのために努力をしているような研究者、あるいは技術動向の調査を専門とする方、そういう人たちが必要であるが、現状は居ない。
 代わりになるような指標を使ってトレンドを見計らうというのはしょうがないことだと思うが、我々がこの委員会で検討すべきは、これから何をやるのかということを見極めるのが一番大事だということである。このようなディスカッションは本来、時間をかけてしっかりやらなければいけないと思っている 

【説明者】
 サポートしていただけることはすごくうれしい。先ほどのような指標をつくって、この仕事をやるというのは巨大な仕事になるので、そう簡単にはできないが、今のところ有識者の直感力に頼ってやらざるを得ないというところ。ここはもう少し掘り下げてよというならば、そういう仕事ができるかどうか。本日4人来ている、これが全部のうちの計測グループで、これだけでやっていくので、そういう意味で、言われるとおりの部分が必要であればやっていくという感じだと思う。

(4)今後の予定

【事務局】
 8月から9月の間に第5期第2回小委員会を開催し、その際に開発領域についての有識者等からのご提案を伺い、状況に応じて概算要求の報告を行い、新規採択結果についても報告する予定。
 その後、第5期第3回小委員会を10月から11月ごろに行い、事業の運営方法の整理、また開発領域の検討の議論の継続を行うとともに、平成20年度の事後評価結果について報告を行う。1月の第5期第4回小委員会においては、平成22年度の予算案について報告するとともに、平成22年度の開発領域の小委員会としての決定、平成22年度の公募・採択等についての方針、そして平成21年度中間評価結果についての報告等を考えている。 

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