大学知的財産本部審査・評価小委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成18年11月7日(火曜日) 10時~12時

2.場所

キャンパス・イノベーションセンター(東京地区)国際会議室

3.出席者

委員

 石田(副主査)、飯田、勝田、澤井、田村、馬場、平井、本田、松重、森下、渡部

文部科学省

 佐野研究環境・産業連携課長、井上技術移転推進室長
 吉田技術移転推進室室長補佐 他

オブザーバー

説明者
 寺西京都大学「医学領域」産学連携推進機構副機構長
 長井日本製薬工業協会知的財産部長

4.議事録

(1)国際的な産学官連携活動の強化に関する状況報告

 事務局より資料2-1、2-2、2-3に基づき、国際的な産学官連携活動の強化に関する状況報告があった。

(2)ライフサイエンス分野に関する大学・企業関係者からの意見聴取

 寺西京都大学「医学領域」産学連携推進機構副機構長、長井日本製薬工業協会知的財産部長よりそれぞれ資料3、4に基づき説明があった。

(3)ライフサイエンスなど先端科学技術分野の知的財産問題についての審議

 事務局より資料5-1、5-2、6、7、8に基づき説明があり、委員による自由討議が行われた。その内容は以下のとおり。
 (◎…副主査 ○…委員 △…事務局 □…説明者)

委員
 教えてほしいんですが、パワーポイントの15枚目にあるトランスレーショナル企業、これが持っているファンクションというのはどんなファンクションで、そこにどういう人材が入っているのかというあたりは何かわかりますか。絵だとすごくきれいに見えるんですが。

説明者
 トランスレーショナルは制ガン剤などで、あるガンに効くが、実際に患者に使うためには、人間に使うというための固有のデータを収集し、研究が必要で、そういうものに特化してやる企業です。具体的な成果が基礎で上がっているものについて、やることを産業界は望んでいます。
 これとちょっと違うケースかもしれませんが、例えば理研などではバトンゾーン、要するにリレーがバトンをタッチしていく。上流から基礎をやった理研から産業界へバトンタッチするときに、企業と理研との研究者が1つのところで企業化に向けての研究をする。そのときにバトンをタッチするような、バトンゾーンとして一緒にコラボレートして研究していくというようなイメージで、それが1つの組織であれば、そういうものです。1つの企業としてベンチャーとして成り立てばこういうような形になるのかなということの理解で、普通の分野に比べて実用化へのステップが例えば機械とか電気に比べて違う部分があるのではないかと思います。そこを何かしないと簡単にいかない。それには医薬品の研究開発が10年とか15年かかり、製品化に他の分野では数年で直ぐに出来るということも関係しているのではないかと思います。

委員
 極めて新しいというのは大学発ベンチャーですね。大学発ベンチャーでも企業のスピンアウトベンチャーでもいいんですが、ライフサイエンスの分野のベンチャーというのは間のイノベーションのギャップを埋める仕事がメインなので、トランスレーションに係わるような仕事がほとんどを占めている。そういう意味ではここの意味というのは、別に企業群があるというわけではなくて、大学発ベンチャーの仕事というのがバイオではトランスレーションをやっていくのが多いという理解のほうがわかりやすいのではないかと思います。実態はほとんど大学ベンチャーあるいはバイオベンチャー、スピンアウトを含めて、いかに大学の研究成果を製薬企業にお渡しするかの間のトランスレーションに携わっている。製薬企業と同じ土俵ではないんです。

委員
 逆にいうと製薬企業がトランスレーションナルなファンクションを持たないほうが効率的だということですか。

委員
 持てないというのが実態だと思います。上流と下流の時間と距離が長いので、それを企業内で全部やろうとすると、今の費用の10倍以上かかってくるということになると思います。時間とお金が。企業内でもそこの部分をスピンアウトして出してやらせるケースと、逆に大学から出てきてベンチャーでやっているケースと、それをうまく活用して技術をもらったり、あるいは企業ごと買ったりして自社のものにしていく。先ほどあったRNAiのサーマという会社もメルクに11億ドル、1,200億で先日合併されてしまいましたが、そういう形で技術が産学連携の中で製薬企業の中で評価されていくというケースですね。

委員
 それは製薬企業の中で持つと時間も金もかなりかかるのをあるトランスレーションナルなファンクションを切り出してやると、コスト的にも時間的にも非常に特化しているから、そこでペイする世界があるということをおっしゃっているんですか。

委員
 切り出さないと、サーマの研究費は年間200億、300億だと思います。人としても数百人かかっていると思いますので、それを自社で抱えると、結局、プロジェクトがダメになったら全部それは人件費にかかってきますね。ですから、先端的なところで製薬企業の場合に切り出して、外に置こう。大学も当然できないので外へ置こうというので、そこのトランスレーションのところがバイオベンチャーという一群の流れになっている。

委員
 かなりハイリスクだということですね。

委員
 1万分の1の世界です。

副主査
 ありがとうございます。ほかに。

委員
 全体に関してでよろしいですか。1つは先ほど説明いただいた中国とかインドをどうするかという問題が研究現場的には深刻です。特にMTAが多いのですが、我々のところに非常に中国から申し出が出ていて、出すと勝手に配るというだけではなくて、ひどいケースは勝手に医薬品としての開発が始まっているというケースもあって、極めて危険なんですね。MTAの感覚そのものが多分わかっていないというか、日本と違って大学の教授から来るのではなくて学生から来たりする。統制がとれていない状況で、今何をやっているかというと、多分、皆さんは無視しているんです。出さないということをやっているんですが、学問的には論文に出した以上は本当は出さなければいけない。学者のルール的には。そうすると今は黙殺していると非常にアンフェアな状態である。
 ですから、このあたりはMTAを逆にもらっているのに出さないという、日本として本当にいいのかという状況は若干あるんですが、実務的に出せるかという、どういうふうに議論していいか難しいんですが、そこのところは先ほどリサーチツールのことでも同じことを言ったんですが、議論をしておかないと下手をするとただ取りを日本はしているという感覚につながりかねないという危険性もあると思います。場合によっては外務省を通して、そういうことも言っていただく必要があるのかなという気がします。
 あとMTAですが、大学の事務を通してというのは10分の1もないのではないか。私も大学の事務を通してMTAを出したことがなくて、こんなことを言うとあれなんですが、多すぎるので実際上処理ができない。では、MTAをどうするのかというのが本部での管理ですが、そこでMTAまでいくと崩壊しますよ、体制的には。これは多分どこの大学も一緒だと思うのですが、取扱いのルールも基本的にはまだあるわけではありませんし、かなり自由裁量というのがある。もらう側と出す側の両方の要素を持っていますので、整理して通すなら通す、通さないのなら通さない。あるいは通すのであればどういう形で処理をするかという処理能力を考えると、多分特許の10倍以上おそらくあると思いますから、それだけのものを処理できるかというところも手当てを考えなければいけないのではないかと思います。これが2つ目の点です。
 3つ目は利益相反のマネジメントの話ですが、今まで我々はアメリカの体制を中心にして利益相反のマネジメントを考えてきたのですが、この間イギリスに行ってきたら、イギリスはまた全然違う解決方法なんです。インペリアル・カレッジとか、ユニバーシティ・カレッジ・オブ・ロンドンというロンドン大学の一部になるんですが、UCLなどはバイオベンチャーと大学の研究機関というのは同じ建物の中にあるんですね。完全に一体化していて、日本でもエーザイさんがその中にラボをつくられたんですね。そうすると、利益相反の問題というのは彼らに聞いたら彼らはもうわからない。その問題は解決しているので、10年前の議論を我々は覚えていないと言っていまして、完全に目標に向かっての実現に対して、この方向でいいんだという議論が終了している状態です。そういう意味では、アメリカのほうがまだプリミティブなところが結構あって、イギリス的なやり方というのはもう1つ考え方があるのではないかという気がします。
 フランスも似たような状況です。かなり実用化の中では政府の予算を使って、いかに世の中に出すかというところではある程度割り切りも必要だというのは非常に明確に出ているのではないか。そういう意味ではアメリカだけを見るのではなくて、我々はアメリカに比べると持っているお金は非常に少ないですから、効率よく回すという点ではヨーロッパの考え方も少し見て、どっちがいいかを少し議論しないと、ベンチャーの本場はアメリカというのでずっと、産学連携の話はアメリカ流にいきましたが、ヨーロッパ流のやり方というのも場合によっては取り入れていかないと、気づくと非常にアンバランスな整理になっている危険性もあるのかな、と思います。
 アメリカの考え方はうまくいったら買えばいいという、非常に最後の思いきりができますが、日本はそこがなかなか難しいので、自国の産業を育てるという点ではヨーロッパは非常に意識が強いというか、どうやってやればいいのかというところを考えていますから、その辺も少し調査したほうがいいのではないかという気がしています。

副主査
 ありがとうございました。今の発言に関して何かございますか。特にMTAにつきましては、もし可能でしたら先ほどの発表の中にもリエゾン活動の中に非常に重要なキーワードとして入っておりましたので、何か補足はございますでしょうか。

説明者
 MTAを全部マネジメントするのは不可能だと思いますから、何らかの工夫がいると思います。1つは、主に大学間のほうが数が多いのですが、欧米の大学は機関のオーソライゼーションを求めてくる大学はあります。これに対しては無視できないので、ミニマムそれはやる。それ以外の部分は先生の名前でやるというのもベストではないですが、ベターとして認めるというぐらいのポリシーをつくらないと、パンクします。それが1つ目です。ですから、段階ごとに分けていく。
 それから、当然ですが、有償のMTAというのは当然大学が管理しないとおかしくなります。これは別途やる。そういうクライテリアを分けてきちっとしたマネジメントポリシーをつくれば、先ほどの我々が言っている1割ぐらいの量ですむのではないか。そうすると何か対応は可能かなというふうに考えております。
 それから、アジアの国々への対応というのはちょっと知恵がないんです。それこそ何らかの国としてのガイドライン、当面のこういう方針でいくというのがあってもいいのかなという感じはしています。個別の対応は多分ほとんど不可能だと思いますので、先生方はやはりペーパーを出した以上出すべきだという趣旨、ご意見が多いと思いますので、これが別途考える必要があるのではないかと思います。

委員
 今お話があったガイドラインということですが、歴史的な経緯を申しますと、MTAが最初にわりときちんと議論されたのはご存じのようにハーバード事件とか、理研の事件があって、いわゆる産業スパイ事件ですね。それに関係して日本で議論が始まりました。この文科省で委員会を開いてMTAについては議論をして、報告書は上がっているんです。ですから、そこで1つのガイドラインはできているはずなんです。歴史的なことを言うと。
 そのときの整理としては、当時、理研は当事者的な立場にもありましたので、とにかく全数管理をする、機関管理をする。当時、関係者が管理すると言い切って、全体的には全数管理の方向に行っていると思います。ガイドラインとしては。
 それは当時の状況とかいろいろなことを考えると必要だったとは思うんです。ただ、本当にすべての大学、すべての公的研究機関で全数管理できるかというのは確かにいろいろ問題もあって、私は記憶が定かでないのですが、私もどこかに書きましたし、多分、報告書にもあるかもしれないですが、例えば一定の方法としてひな型をつくって、そのひな型を例えばサインの権限は研究者あるいは研究室のしかるべき部署の方にサインする権限は移譲する。ただし、MTAのコピーを常に報告するとか、何らかの形でマネジメントをするのだという、そういう対応もたしか議論されていたはずです。だから、そういう流れはずっとあるんですね。
 問題はあれからずいぶん時間がたっていますが、全国的にまだ意識が浸透していないというところに1つ問題があるし、さらに言うといかに意識を浸透させても、MTAの件数というのは1日1件を超えるぐらいがわりと多いんです。300から500件ぐらい、1機関当たりの件数は結構多いですので、1日2、3件パンパンとはんこを押せるような事務処理システムというのは日本ではまだ確立していないというような実際的な問題点があると思います。以上、コメントです。

副主査
 ありがとうございます。現在までのところ事務局から整理していただきました論点2につきましてはある程度出ていると思いますが、時間も考慮しまして論点1に関連しまして。

委員
 先程のご説明を伺っていてすごく共感する部分があります。私は大学のTLOとして活動しているのですが、大学の発明の承継の基準で重要な点は、赤字で強調されているようにライセンスを受けてもらえる相手が想定できるかどうかという点に尽きるかと思っております。
 発表資料の中でも出願件数として、ライフサイエンス分野は非常に多いのですが、私たちもこれまで活動してきて、当初はライフサイエンスは期待感を持って出願していたというような印象があるのですが、現状を考えてみると、今はかなり絞り込みがきつくなっていると思います。それはやはり実際に産業界様のほうにご紹介した感触とか、コメントとか、いろいろな話を聞いていますと、大学のシーズというものがなかなかすぐに産業界に受け入れられないということが経験則として蓄積されていることが理由です。なぜ受け入れられないのかというようなところも具体的に何となく見えてきたというのがありまして、そういう観点からご説明いただいたようにライセンスを受けてもらう相手が想定できるかどうか、ここが一番大きな要素になっていると考えております。
 大学のシーズをどう育てていくかということに関しては、大学研究室自体がそれぞれ機能というか、興味を持たれて研究している分野が細分化されておりますので、例えば化合物を合成する研究室、さらに生物活性を追いかける研究室、そこをもっとつないでいかないと、産業界が興味を持っていただけるような薬理効果を実証したようなデータは示していけないということを最近、感じているところです。
 ですので、研究室単位で学術活動をして学会発表ということで研究室単位でまとまってしまうということはあるのですが、ライフサイエンス分野をもう少しシーズを育成するためには、TRの拠点は重要ですが、その拠点が直ちにないのであれば何ができるかというと、それぞれ機能を持っている研究室が現状ありますので、研究室間をうまくつないであげるということが重要になってくると思っています。そういう意味で、外部との共同研究のみならず大学の学内でどういう研究室があるのかということを理解したうえで、学内連携等を図る視点も必要ではないかと考えております。
 学内連携のようなアカデミック間の連携をコーディネートする場合の問題として、研究費ということがあると思います。現状であれば、シーズ育成事業のように産学連携の場合の研究費申請枠はありますが、学内連携などの場合には研究者がそれぞれお持ちの研究費の範囲でやっていただけるのかどうかということになってしまいます。そこで、アカデミック間でのシーズ育成にも予算申請ができる予算枠があれば、研究室間、学学の連携であったり学内連携であったりというところでライフサイエンス分野の研究の厚みを増していくということもできるのではないかと考えております。
 もう1点ですが、これは全然別の視点ですが、新規性、進歩性、これは特許性の問題なのでということで先程ご説明があったのですが、日本の特許庁の審査基準は非常に厳しいという問題があります。ライフサイエンス分野に関しては。日本の基準でふるいにかけると大学のシーズはほとんど特許性がないということで案件として落とさざるを得ないことになります。具体的には、医薬品というような権利を取るためには動物実験のデータがないと権利が取れないということになっております。
 米国でしたら、データが出た時に追ってどんどん補充していきましょうというような権利のとり方ができるんですけれども、まず日本国の大学ということもあって、まず日本でとることを想定して、次に米国、ヨーロッパでの権利化という思考をそもそも変えなくてはいけないのかもしれない。つまり最初から米国から取りにいこうと考えなければ本当はいけないのかもしれません。こうした問題をどうするかというのは走りながら今私たちは考えている状態ですが、そういう議論もぜひライフサイエンスの分野というところの産学連携については検討課題としていただきたいと思っております。

副主査
 ありがとうございます。私の希望としてはまだ発言をいただいていない全委員の皆さんから発言をちょうだいしたいと思います。何かございますか。

委員
 先ほど中国、インドの話が出ていましたが、中国との連携模索ということについて私の感想を申し上げます。
 中国の進展は想像を絶するような速さで進展しておりまして、旧来の後発国型の中国の意識、やり方というのは日々改善されている点が多いと思います。そういう意味では固定観念にとらわれないで新しい中国の人たちと付き合っていくという視点が重要ではないかと私は思っています。
 最近、中国のトップ大学は英語文化になっていますし、それから研究成果で見るべきものをあげているような人たちはほとんど英語の世界、つまり欧米で教育を受けた、研究をしてきた人が大勢います。
 もう1つの現象は欧米のメジャーな企業が研究拠点を中国に置き始めているのが多数出てきています。中国の研究者あるいは研究機関のスタッフの意識とか企業の実態を調べたデータもございますが、欧米企業等とほとんど変わらないということで、日本は研究拠点の進出でも遅れていると感じております。
 それから、北京大学、精華大学、上海交通大学とか復旦大学とか、そういう沿岸部の有名大学との連携でも日本はかなり遅れたと思います。そういう意味では今後、内陸部の研究機関、大学というのも中国にとっては大きな連携の対象になるのではないかと思います。
 もう1つは、先ほどご提示のあったプレゼンテーションの内容は大変参考になったのですが、この中でRNAの干渉で基礎的な研究が産業に結びついていった、それも非常に早い、最初の論文発表からわずか8年後にはノーベル賞をもらっているというスピーディな進展の中で実用化されたわけですが、プレゼンの中で論文の被引用回数がアメリカ、ヨーロッパの大学に比べて日本のトップである東京大学が非常に少ない。これは特許取得や特許出願を意識しすぎているのではないか。出願数は多いのですが、登録数は極めて少ない。そういうご指摘があって、非常に興味を持ったのですが、こういう基礎的な成果がすぐに産業に結びつくときに大学の研究機関とか研究者というのはどのようにして特許をとっていくのかという1つの例として、大変面白い研究対象ではないかと思いました。上流部の基礎研究の成果を産業技術に活かしていくという視点が重要なのだなということは改めて感じたのですが、これは特許庁がたまたま、RNA干渉についての特許動向というものを去年やっています。それが今年になってノーベル賞をもらったということでさらに脚光を浴びてしまっているのですが、そういう意味では日本特許庁は非常にいいところに目をつけた分析をやったのだろうと思います。
 質問ですが、東大の4.4パーセントというのは「特許取得を意識しすぎ?」とクエスチョンマークがついていて、「ではないか」という意味だと思うのですが、どんなものなのでしょうか。

説明者
 現実に出願は結構出ているということですが、前のページに日本の大学の出願数がありますが、この主要な日本の大学が東大ですので、被引用回数はパーセントは4.4で、件数は結構出ている。論文も多いということですが、細かく出ているのかなという、これは個人的な印象だけですけれどもやっぱり……、それ以上はちょっと言いにくいですけれども、ある意味で応用のところについて東大が出願を始めた。基礎のところはあまり出ていない。そのときに応用のところで実際に役立つ応用で出ているのかというところだと必ずしもそうではないのかということです。基本的にはライフサイエンス分野では大学の独法化、それから各大学に知財本部ができて、知財、知財とやっていますが、まず出願したり、そういうシステムをつくったりするのは大事ですが、中身のあるものにこれから第2期として進んでほしい。そういう意味で私は特許庁のデータからたまたまノーベル賞だからわかりやすいと思って使わせていただいたのですが、産業界の技術として大学に期待しているのはこうだということをわかって、それを取り入れた具体的な施策を文科省のこういうところで出していただければありがたいな、こういうところでございます。

副主査
 ありがとうございます。ぜひこういう見解をというものをどうぞ。

委員
 ライフサイエンスに詳しいわけではないんですが、理論の全体の構造で一般的にどういうふうにすればわかりやすいということを考えていたのですが、まずライフサイエンスということに特化したときに産学連携をやることの、ライフサイエンス固有のベネフィットというのは整理をしておいたほうが良いと思いました。大学でライフサイエンスを産学連携でやることによって何を得られるのか。企業が何を得られるのかということは整理をしておいたほうがいいなと思いました。
 それに付随してライフサイエンス固有の問題に関してどういう特徴があって、それに対してどういう施策が必要かという整理ですが、私が今まで聞いていた限りではおそらく5点ぐらいかと思います。1つは技術の特徴としてリスクが極めて高いということで、上流の技術という表現も、リスクが非常に高いということを表していて、そのリスクは高いけれども、成果が得られたときに非常に大きな利益につながるということですので、それに対応した知財の評価のやり方があるべきだということです。これは産学連携に固有の問題でもないともいいますが、先ほどあまり取り扱ったことがない大学にとっては、非常に取り組みにくいみたいな話がありましたが、基本的にはマーケットメカニズムで解消するべきことだけれども、でもそもそも頻度が少なければ、何か手助けが要るかもしれないという話だと思います。
 2点目はMTAとかリサーチツールとか特殊な知財の取扱いが必要だという話だと思いますが、MTAに関しては数が非常に膨大であるということに対する処理のシステムを考えないといけないわけです。ご説明にあったように、基本的に大学機関でやっていくという方向はそうなんだけれども、この処理は、機関のガバナンスとして統一した方法でやらないといけないんだけれども、それをやる資源もすべて中央で持たないといけないという考え方ではおそらく処理できない。だから、ガバナンスは法人としてきちっとやるけれども、処理をする資源は分散していてもいいのではないか。そういうことを発想しないと多分、現在の知財本部整備事業的な考え方ですべて中央でMTAを処理するという考え方は多分無理ではないかという気もします。これは異論があるかもしれませんが、そういうような特徴があります。
 もう1つは、3番目に臨床ということとの接点があるので、利益相反の問題は非常にシリアスになるという特徴があるという話の中で、先程ヨーロッパの例が参考になるのではないかという話がありました。実は、ヨーロッパの産学連携というのは特色があって、ときどきパブリックファンディングとプライベートなお金が混ざるようなシステムが結構頻繁に使われているんです。これが日本に本当に持ち込めるものかどうかというのは結構難しいかもしれない。実はほかの分野で大分調べたことがあるんですが、その構造が利益相反にもあるのではないかと思います。それは勉強してみる必要があるのだと思いますけれども、結構、日本に持ち込みやすいものかどうかわからないかもしれません。でも、これは議論をしていく必要があるのではないかと思います。
 あと4番目は、国の投資、基礎研究開発の投資のポートフォリオと国内産業のリソーシスにずれがあるということです。だから、結局は海外に行かないとライセンシーが見つからない、大学発ベンチャーみたいなところに行かないといけないとか、そういうような話があります。
 先ほど企業側のという視点での話が出たわけですが、企業側というときに大学発ベンチャーも企業の1つであって、大企業や中小企業、ベンチャーへ移転されるポートフォリオがどうあるべきか、日本のライフサイエンスの成果はどこにいけばいいのかというのは、どういう議論の仕方をしたらいいのか、私はよくわからなくて。
 例えばアメリカの場合はバイドール法で中小企業優先というのがあったわけですが、今日本ではそれはない。それがない中で、今バイアスをかけないで市場のメカニズムの中でやっていこうとしているわけだけれども、そこに今トランスレーションナルリサーチだとかでは、あるいは大企業のほうになかなかこないから大企業にもっともっていきましょうとか、そういうことに国が介入してこういうことを言う必要はあまりないような気がします。ただそういう議論が出てくるところもそこはこのライフサイエンスの特徴の1つかもしれません。
 最後は、話を伺うと、アカデミアとの接点という中で特殊な問題が起きているのかなと思います。MTAで研究材料は基本的にはアカデミアのルールとしては、出さないといけない。たとえば化学分野でも本当は同じなんだけれども、あまりそういう規範が実際はそれほどでは行われていない。そう見るとやはりこれはライフサイエンス固有の問題かもしれない。ただこれについてポリティカルに議論したほうがいいのかどうかはちょっと気になります。むしろ中国も最近、お話にありましたが学術会議みたいなものができているということもあって、アカデミアの中で議論を一方でやっておく。その研究者の規範としてやっていくということの中で解決すべきものがあれば、そのほうが本当はいいのではないか。これを外交とか何とかに持って行ったときに得るものがあるけれども、もしかすると失うものがあるような気がするので、そこは結構深い議論が必要だな。一応この5点ぐらいが特徴かなと思います。以上です。

副主査
 大変ありがとうございます。時間もありますけれども、お手を挙げられましたのでどうぞ。

委員
 数を減らして2点だけ。1点は先ほどのノーベル賞の件もあったのですが、産学連携と知財のあり方として1の事例として福井謙一先生のケースを我々は調べている。福井謙一先生はノーベル賞をもらわれたんですが、特許も200件ぐらい出されている。これはあまり知られていない。それをずっと見ますと最初の基礎理論を出されて、その理論強化というのを産学連携の中でいろいろな企業との特許の中でまずされている。そういった面からするとノーベル賞というのは学術的なものもあるのですが、最近は特に社会的な貢献というかインパクトという点で選考委員会はちゃんと特許も調べているんですね。そういった事例を含めて我々は特許の重要性というところをもう少し学内外では説明しておく必要があるのではないかなと思っています。
 これは論点1にも関係するのですが、現在大学の中で知財、産学連携ポリシーを見直す作業をやっています。これは法人化後2年半ぐらいしていて、最初のとき、かなり急いでポリシーを策定していますので、不十分な所が顕在化してきています。実は大きく言って例えば著作権、ソフトウェアの分、それから普通のマテリアルとか電子材料関係、そして今回のライフサイエンス、医療分野と大きく分けて3つあるんです。それぞれ特色を生かしてといいますか、特徴をわきまえて対応をやらないと大学全体として知財の管理、運用ができないかなと思います。
 その中で今日のライフサイエンスの分野、私も門外漢ですが非常に広い分野、どこまでやるのか。大学は、普通の製薬会社、医療関係の機関などと比べてみても、予算、専門の人など資源も少ないわけですから、そのあたりを少し考えておかないと理想論だけでなくて現実論でやらないと、大学では非常に課題が多く、不満が多発すると思われます。
 ただ、強調しておきたいのは、大学の研究がイノベーションにどうつながるか、どう役立つのかという視点のもとに、また中長期的な視点でこうしたライフサイエンス・医療分野は対応を考えないといけないかなと思います。そういったところの考えというかコメントをさせていただきました。

事務局
 本日はどうもありがとうございました。第一線でご活躍されているお二方から今日こうしてご意見を賜ることができ、我々が今から政策を立案していくうえで貴重なご助言をいただいたと思っておりますので、今日いただいたご意見を決して無駄にすることなく政策に反映いたします。
 この委員会では、先般から内容の深い事項についてご審議いただいていたかと思います。特に、概算要求に当たりましては国際的な部分を強化するということで、皆様からまとめていただいたものを中心に財務省等にご説明させていただき、その結果がS評価ということになりましたので、この場を借りてまた御礼を申し上げたいと思っております。

副主査
 本日は大変重要な貴重な委員会であったと思います。ありがとうございました。これにて終了させていただきます。

5.今後の日程

 次回については、11月17日(金曜日)の午前中に開催する旨事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)