大学知的財産本部審査・評価小委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成18年11月17日(金曜日) 10時~12時

2.場所

国立情報学研究所(学術総合センター)12階会議室

3.出席者

委員

 石田(副主査)、飯田、勝田、澤井、馬場、松重、三木、森下、渡部

文部科学省

 佐野研究環境・産業連携課長、井上技術移転推進室長、吉田技術移転推進室室長補佐 他

オブザーバー

説明者
 戸田日本知的財産協会常務理事

4.議事録

(1)大学等(TLOを含む)の産学官連携・知財の組織的・戦略的な対応、人材育成等の各種課題に関する意見聴取

 戸田日本知的財産協会常務理事、三木委員及び渡部委員より、それぞれ資料3、4及び5に基づき説明があった。

(2)大学等(TLOを含む)の産学官連携・知財の組織的・戦略的な対応及び人材育成の強化に関する審議

 事務局より資料6、7-1、7-2、7-3及び8に基づき説明があり、委員による自由討議が行われた。その内容は以下のとおり。
 (◎…副主査 ○…委員 △…事務局 □…説明者)

委員
 きょうの議題であります知財本部とTLOの一本化、連携強化、非常に重要な課題だというふうに思いますし、今ご説明いただいたように、非常にいろいろなスタイルがあるので、正直なかなか難しい議論なんだろうというふうに思います。1つ決めなければいけないことは、今ある43の知財本部、これをそのまま評価するのか、それとも選択と集中をしていって、ある程度伸ばすところは伸ばすという方向にもっていくのかは、やはり明確にしないといけないのではないかという気がいたします。
 その中で、もし数を定めて、よりその大学に対しては、ある意味モデル事業的に評価をさせるという考え方をとるのであれば、知財本部とTLOの一体化といったようなスタイルと、あるいは外部型、広域連携型、それぞれ少し試させるような形で支援する必要があるのかなという気がいたします。
 そのときに問題になってくるのは、残りをどうするかという議論があると思うんですけれども、これはほかの知財事業が整備されていない大学もあわせて考えていく必要があると思います。例えば、広域型の知財本部というようなものをモデル事業的に、逆に選ばれなかった中から広範囲をカバーするためにはどういうシステムがいいかというような概念で、少しそちらも強化する必要があるんじゃないか。
 あるいは、43丸抱えでさらに強化するというのであれば、一体何に視点に置いていくか。このあたりの議論をしていかないと、最終的な目標のスタイルというのがぼやけてしまうのではないかという気がいたします。そういう意味で、選択と集中をすべきかどうかというのは、私は個人的にはすべきだという意見なんですけれども、そうではないという意見ももちろんあるかと思いますので、この辺の議論が一つ要るかなと思います。
 それから、もう一つは、知財本部とTLOを一本化すればそれでうまくいくかというと、先ほどご説明を聞いても、うまくいっているケースもあれば、いっていないケースもある。恐らく、単に一本化するということが重要なのではなくて、もっと外部とのワン・ストップ・サービス的な役割を果たせるような仕組みになるかどうか。これがもう一つのポイントのように思います。どこまでやるかという議論はあるんですけれども、前回もケンブリッジ大学のところの例を少しご紹介しましたけれども、ケンブリッジではERBIという組織がありまして、これはライセンス活動だけではなくて、共同研究企業の募集とか、あるいは外部の企業の導入も一本化したワン・ストップ・サービスの組織があって、その中の一つで特許のライセンス活動みたいなものがあるわけです。企業側から見ると、ラインセンスだけでお話にこられても、恐らく、余り魅力的ではない部分もあると思うので、もう少し共同研究とか、国際的な産学連携活動全体を行えるようなTLOあるいは知財本部との一体型という、少し外部に向かってウィングを広げるような形でやらないと、TLOも多分経済的に自立できないのではないか。
 今回の内容を、先ほどのご紹介を受けても、プロジェクト管理の費用がかなり収入で出てきています。これは恐らく、共同研究のコーディネートで入ってくるお金だと思うんですが、やはりこういうものでお金を稼がないとなかなか自立はできないような気がしますので、そのあたりのあるべき姿というのも少し議論が要るのかなという気がいたします。
 以上です。

副主査
 意見的なところも入ってはおりましたけれども、かなり重要な問題提起的なご発言と理解します。したがいまして、ただいまのご発言に関連するところで、もしほかの委員ございましたら、ありがたいんですが。

委員
 今、委員が言われたことは私も前から考えていたことと同じです。要するに整備事業から外れた大学の中で頑張っている大学も結構あると思います。その大学の中から今までと違った観点で参考となる大学を抽出して、それをある程度の見本というのか、そういうものにする方法はないのか。それを抽出するときに大学知財本部とTLOが最初から一本化されている組織なのか、あるいは大学知財本部がTLOを吸収している組織なのか、あるいは外部的TLOなのかということを見きわめて、大学知財本部とTLOが1つの組織のものと別々の組織のものの2つの例が必要と思いますので、ぜひそれを進めることをお願いしたいと思っています。
 それから、外部TLOと内部TLOとの差はあるのですけれども、どちらにしましても、先ほどご説明のありました技術移転した後のフォローの問題です。技術移転した後でも共同研究が継続できるかどうかというのが、やはり財源的に一番重要なポイントになると思います。企業側から聞いているところによりますと、結局技術移転はしたけれども、その後大学の先生がどこかに行ってしまって何も協力してくれないという不満が結構あります。そこら辺の整備がうまくできるシステムづくりが必要になってくると思っています。
 ワン・ストップ・サービス、これは非常に重要なことでして、今でも国際的産学連携ということになると、知財本部の管轄ではないという大学がありますので、そこは知財本部にまとめていけるような方向性をここで出していただければと思います。
 以上です。

委員
 私どもの私学につきましては、その特性上からもう既に知財本部とTLOが一本化しているという形をとってございます。やりやすい点は、大学内部の研究の推進あるいは戦略をそこで立てられるというポイントなのかなと思います。一方で、では、外部への技術移転のマーケッティングがうまくいっているかというと、多少不安な面もございます。そういうものに関しては外に置いて、そういう専門家を雇うような形の方がいいのではないかという意見も学内にはあります。ただ、大学内の、先ほど申し上げましたように共同研究あるいは受託研究の研究資金の循環の面におきましては、かなり成果を上げているのではないかなというふうに考えております。したがいまして、TLOの機能という面では、私学につきましては大学の研究強化というところにかなり役に立っているというふうに考えております。
 一方、そういう意味で、今、ご発言がございましたように、知的財産本部もTLOもないような大学、私学には大変多うございますけれども、そういうところをどうするかということが今テーマとして一つ出てきたように思いますが、これにつきましては、私どものところでは、かなり学学の連携といいますか、私学対私学といいますか、そういう形も一つあるのではないかなというふうに思います。既に知財本部あるいはTLOのある大学が周辺の大学の支援に当たるといったような形で連携を逆に深めていくというような形も一つあるかなというふうに考えております。
 以上でございます。

委員
 きょうは3人の方のプレゼン、非常にまとまって、我々自身もいろいろな悩みがあって、それが少しずつ整理できているかなと思います。その中で、知的財産活動がこの数年間で随分実行してみて変わってきたかなと思います。一番最初話されたように、大学における知財の意味合いが知財だけにとどまらず、大学全体の研究戦略の中に組み込まれてくる。組み込まれざるを得ないといいますか、財政的なものも含めて。といいますのは、基礎研究からいろいろな外部資金の導入であるとか、その中においての知財の役割は多様であり、知財だけが単独の課題、要素であるわけではない。一応各大学では知財本部整備事業の中で本部をつくって活動しているんですけれども、知財の要素だけではなかなか対応ができなくなってきている。むしろ、産学連携との兼ね合い、それから全体の研究戦略の中で、知財も重要性はだんだんと大きくなっているという感じがします。そういった面では、各大学がこういったような研究戦略をどうするかという視点、立場で、改めて知財、TLOを考えなければいけない。
 それから、もう一つ、TLOの役割は単に技術移転ではなくて、先ほども言われたと思うんですけれども、単に技術を外に出すというのであったら、我々としては外部のTLOを使えばいいんですけれども、それをもとにした共同研究なり、社会貢献につなげる事業に展開するには、外部ではなかなかだめで、内部的な支援が必要だと。それから、単に技術移転を数十万、数百万のライセンス収入ではなくて、これをもう少し日本の技術として育てるのだったら、これに対してさらに研究投資が必要だと。これを大学としてやるのか、また国にお願いするのか。そういうふうな議論にもなってきます。だから、やはり大きな意味での知財の取り扱いをちゃんとやるということと、大学ないしは国の科学技術政策の中でそれをどうするかという視点は、非常に顕在化してきているかなと思います。
 それから、海外への技術移転活動についてなんですけれども、現在あるTLOは、恐らく、海外への業務的なもの、ノウハウも含めて非常に弱いというのが現実だろうと思います。したがって、今海外へのそういった技術移転ないしは産学連携の取り組みを始めているんですけれども、かなりの強化をやらないととてもだめだと。現在我々のところで困っているのは、それをどうするかということで、今、海外の知財を扱う幾つかの外資系の会社があるわけで、また非常に魅力的な提案がなされているんですけれども、これも先ほど言われたようにパテント・トローリングであるとかの危惧も実はあります。単に海外にマーケッティングをやってくれて、それで大学の研究者に還元あればいいかというと、日本の科学技術予算を使って、それがパテント化されていくのは良いとして、それが海外の企業に渡り、結果として日本の企業に対してのアタックされる事などが起きれば、これはやはり将来的には禍根になるのではないかなと思います。そういった面では、海外への技術移転についてはいろいろな側面を含めた慎重な議論、配慮も必要かなと思っています。

副主査
 論点例1に関連するいろいろな発言をちょうだいしていると思います。TLO、知財本部の一本化、あるいは現在整備事業の対象になっていない四十一、二の大学以外のところに対してどうするか。そして、そもそもTLOと知財本部の機能、役割、これが変わってきているのではないか。そのようなご指摘と受けとめますが、関連して、ご発言ございますか。

委員
 TLOの役割の中で、先ほどおっしゃった、技術移転だけではなくて、技術創造に寄与しているのではないか。むしろそういうことがあるというご発言、大変私興味を持ちました。TLO活動が技術移転だけではなくて、技術創造という視点を持つということならば、これをもうちょっと深掘りして、明確にした上で、その機能を強化する。もうちょっと明確に持たせるようなTLOづくりというものがあってもいいと思うんです。そういうことを、では、だれがやるかというと、TLOに任せておいてもなかなかできないと思うんですけれども、国の施策として技術創造の機能を持たせるTLOづくりというところの視点で、今後助成施策をやってもいいのではないか。例えば、人材育成とか、モデルケースをつくって、そこに投与する。これは、非常におもしろいというか、大学の知財活動の中でも活性化する可能性があるのではないかというふうに思います。それが第1点です。
 第2点は、先ほどのプレゼンで大変中身をおもしろく聞いたんですが、最後のスライドで、TLOの連携の選択肢、これをタイプ1から7まで見せていただき、なるほど、こういうように非常に多様な形態が考えられるということを改めてわかったわけです。このように、TLOのあり方、形態というのがこれだけあるし、選択肢もあるということですから、今後の事業展開として、この論点2にあるように、例えばJSTとか、そういうようなところを通じて、モデルケースを模索する。そういうことも必要ではないか。そういう中から最適なものを選び出して、あるいはつくり出して、それを広げていく。こういうことを感じました。
 以上です。

事務局
 事実関係だけ申し上げますと、TLOについては、現在経済産業省から5年間につきましては立ち上げのための補助金が出ております。また、スーパーTLOとして幾つかの機関がTLO関係の人材育成事業をしております。ただ、この前聞いたところによりますと、今後のあり方については経済産業省でもいろいろと検討はされているという状況にございます。よく連携をとりながら、今後考えていきたいと思っております。

事務局
 今から皆さんのご意見をいただいてまとめていくわけですが、個人的に一つだけ、何を軸として私が政策を考えているかということだけ、ご参考までに紹介させていただけたらと思います。
 今回の論点1というところにも出てくるんですけれども、ついつい知財本部とか、TLOとか、連携強化とか統合といった、機関をどうするかということが文章に出てくるんですけれども、一番重要なのは、そこにある機能をどうするかということだと思っております。これまでの行政においてはといったら言い過ぎになりますが、ついつい機関の存続のための施策というのを発想しがちですが、これは今後やってはいけないと私自身は思っています。TLOの機能なり、知財本部の機能というものを、安易な既存機関の存続とかしがらみというものにとらわれることなく、機能の面から必要なところは伸ばし不要なものはなくすという観点から検討をしていくことが必要なのかなと思います。機関、組織というのは時がたつと淀みが出てきます。これが自動的に取り除かれるようなシステムというのがどうしても必要で、それをどうやって内在させていくかということが今後の大きな課題と思っております。いつも申し上げていますが、多様な産学連携の形態に対して、競争的に多様に支援していくというような試みをしたいと思っております。いずれにしましても、今後の皆さんのご議論をお伺いしながら、まとめていただいたものに基づいてやっていきたいと思います。

副主査
 続けてご発言をちょうだいしたいと思います。

委員
 多分きょうのお三方の話を聞いていて、それからもともと産学連携の企業サイドの感じは、先ほど説明があったように、上流工程のところでどういうふうに技術創造のある環境をつくり込んでいくかというのに尽きるような感じがするんです。それが組織としてTLOか、知財本部なのかという話はあるんですけれども、そこのところを、先ほどのデータを見ていても、ここ三、四年やってみて、ある意味では当たり前のところがようやくいろいろなデータとしても見えてきたのかなという感じはするんです。そうすると、先ほどお話にもありましたように、では、海外のいろいろな展開という話が言われていますけれども、上流工程で基本的なところであればあるほど、変に抑えられると、何でお国のお金を使ったのに、結局日本の企業はそれで活動できないような状況になるかという話も、リスクヘッジのところをどういうふうに考えておくのかというのが一つの課題であるのと、それから、アカデミアの位置づけと産学連携の中で、ではこれはいろいろな箱物というか、組織の議論をしているんですけれども、その成果をもう少しどうやってはかるんですかということをやっておいた方がいいような感じがするんです。アカデミアというのは、基本的にはある種のサイエンス的なものを、本当の意味でのいいものを出してこないと、その先の技術は出てきませんから、そこのところをもう一回どういうふうに、それぞれの分野によって違うのでしょうけれども、考えるんですかということをやった上で、今のファンクションをもう一回位置づけ直さないと、これにまたお金をつけても、お金が欲しい人が寄ってくるだけで、本当の根っこのところをきちんとやっておく議論を今やっておかないと、先ほどのパテント・トローリングみたいな話につながったりして、非常に危険な要素があると思います。ぜひそこら辺の議論もどこかでやっておいていただけたらと思います。

委員
 承認TLOの助成制度と、文科省の知財本部の整備事業、これは同じ大学の知財活動の中で2つの省がそれぞれ別々の助成施策をやっているんですが、これを何か話し合って、今はすみ分けでやっているわけですけれども、どっちみち表裏一体化している話ですから、これはどういうふうに、話し合いとか何か、文科省でスーパーをつけると、経産省もまたスーパーの名称でやってくる。どうも、その辺がもうちょっと有機的に運ぶことができないのかという気がするんですけれども、どうなんですか。

事務局
 両者はそもそも違う役割をもって整備されております。TLOは大学の外部にあるところが多くございまして、経済産業省としてはそういうところに対して、特に技術移転の人材育成や立ち上げのため、あるいはTLOの出願費用に充てるために補助金を措置していると聞いているところです。一方、私どもで行っている知財本部整備事業は、大学で創出された知財が原則機関帰属になるということを踏まえて、大学に帰属する知財の管理体制の構築を促すことを目的に整備されたものです。特許出願費用については見ていません。ただ、知財業務は技術移転や共同研究といった産学連携活動と一体的にマネジメントしていかなければいけないというお話を今いただいており、実際、各大学では産学連携本部といったような形で事業化も含めてそのような一体的な活動を行っているところが多くございますので、当然ながら経済産業省とはよく連携しながら進めていく必要があると思っております。また、未整備大学については、全部の大学に知財本部を整備するというのは現実的にはあり得ないでしょうし、財政的にもなかなか難しいと思います。各大学の財政的にも厳しいと思いますので、そこをどういうふうに補完していくかというのは、今後経済産業省とも連携しながら検討していきたいと思っております。

委員
 そういう話し合いはあるんですか。

事務局
 勉強会みたいなものはよくしているところでございます。

委員
 昔は話もしなかったということですが。

事務局
 最近はよく連携しながら進めています。過去にどういうことがあったのか、よく存じていないんですが、今はしっかり連携しながら、政府全体としても内閣官房の知財戦略本部や総合科学技術会議と一体となって進めておるところでございます。

委員
 今の話ですけれども、かなり前から一体化にはなっていますので、知財本部でも最初のときからその話は出ていますので、そこはご心配はないかと思います。
 ただ、大学の現場からというと、大学によってもいろいろ違うんですけれども、関西方面は、実は広域TLOなんです。大学一体型ではないんです。正直、知財本部の議論は我々熱心なんですけれども、TLOは、場合によっては選んでいる。案件ごとに選んでいる。本学は、府が出しているTLOに一応一本化されていますが、場合によってはよそを選ぶことも可能なんです。したがって、TLOに対する感覚は、実は関東と関西と大分違っていまして、知財本部は我々からすると身内なので、これはしっかりしてもらわなければ困る。TLOは外の親戚なので、どちらかというと、これはだめだったら、要するに切りかえるということもむしろ考える感覚なんです。そういう意味で、今回知財本部の事業なので、我々の感覚からいくと、いかに身内にしっかりしてもらうか。そこに外から入ってきたTLOが一体化するか、あるいは選ぶか。その辺は、どちらかというと知財本部側の感覚という雰囲気だと思うんです。問題なのは、一体型を進められるところは、むしろ私は一体化した方がいいという意見なんですけれども、広域型の場合一体化ができないという現実があります。それは各大学が共同で出資していますので、それを、多分特定の大学だけのものには基本的にできない。そのときに、では、TLOに対して、むしろそういう形であれば、知財本部を大学に持たせて、そこに対して委託をしていくという形式が、当然小さい大学はあり得ると思うんです。そういったいろいろな形態が存在している中で、恐らく、一体化をするのか。ただ、連携強化は絶対必要ですので、連携強化をどうさせるか。そこは先ほどもお話が出ましたけれども、モデル事業的にいろいろなことをやっていかないと、本当にいろいろな形態がかなりありますので、一体化すればいいという原則になかなかいかないというのが、多分実態だと思います。
 ただ、もう一個の問題は、一体化したら、多分知財本部がない大学はTLOがなくなってしまいますので、そうすると、そういう大学がこれから先どんどん財政が悪くなっていく中で知財本部を閉めるところも出てくると思いますから、では、そこはもうしなくてもいいのか。特許はそこからはもう出さないという前提でいくのかという議論にもつながりかねないことになりますので、そういう意味で、一体型になれるところと、むしろ広域でカバーするところを、TLOがその役割を担うところも出てくるだろう。そういった、多分すみ分けの議論というのも、そこに多分帰結するのかなというふうには思います。

委員
 その話は、例えば会社の組織なんかでいうと、知財もいろいろやりましょうという話だと、内部の意思決定の部分はどうしても何かないとできないわけです。全部アウトソースで任せた途端に、それは内部の意思決定ができなくなりますから、もしそういう外部のものを使わざるを得ないところは、そもそもそういうある種の知財のアクティビティがなくてもしようがないという、先ほどおっしゃった選択と集中のある部分で割り切らざるを得ないのではないか。みんな同じように大学が知財の活動をやるというのは、多分本質的に無理な部分を含んでいるというふうに考えた方がいいんじゃないかと思います。

委員
 そこは議論がいろいろ別れるところだと思うんです。ただ、外にTLOがあるケースというのは、基本的に知財本部がある程度TLOのところまで入り込んでしまう。TLOの機能というのは、むしろ商社的なところがあって、それを売り歩くというところが中心になってくるという形になります。恐らく、中に入ると、TLOというのはもっと特許の管理のところにいってしまうんだと思うんですけれども、かなりそこのバランスというのが、外部と中とで多分異なってきていて、支援する要素も外にTLOがあるケースの知財本部と、中にある場合というのは、業務の幅が変わってくるので、ですから、人材も含めて多分支援する要素も変わってくるんだと思います。

委員
 だから、そういう意味では、先ほどおっしゃった、大学の中で技術創造活動というところに多分いかざるを得ないし、いくのが多分本筋だろうと思うんです。だから、そのときにある程度大学の中でかなり自立的にまとまってやれるタイプと、そういうのがないからしようがない、あるファンクションも外に持っていって、何かのときにお願いしますということになるのがわかっている。もう一つあるとしたら、地域の支援のためのTLOみたいな、ファンクション、性格を別にしたものぐらいの、3パターンぐらいに分かれてくるんじゃないかという感じがします。

委員
 大学一体型のTLOの話を中心にさせていただいたものですから、少し地域型のTLOの話もしたいと思います。地域振興というのは、もちろん今各地域で物すごく大事で、例えば文部科学省の施策でも知的財産政策であったり、JSTのプラザサテライトという形で、地域での研究開発、それが最終的に産業、競争力につながるようなものになっていくことを当然視野に入れた活動が政策的にも行われている。ところが、実は地域型のTLOとJSTのプラザサテライトというのは、やはり縦割り的かなと。こういったところも、地域型TLOにとってみれば、単に知財を売り歩くというだけではなくて、そういったところにもっていく、そういったところも今後地域TLOの側では少し議論いただきたいと思います。
 実は、僕はこのモデルは非常に大事なものだと思っています。JSTと、これも経済産業省と文部科学省との両方の関係が非常に大事。それから、もう一つ大事な点は、組織論がいろいろ大学一体型の場合にはあるわけですけれども、ちょっと振り返ってみますと、企業の中でも、組織は5年、10年のうちに必ず変える。今、タイプを幾つも出したけれども、これが未来永劫ではない。これが大前提でして、ラインは必ずどこかで機能発揮ができなくなったりして、そのときの時代に合わなくなると、また繰り返す。だから、柔軟にそこを考えていく。ただ、最初のミッションは、企業でいえば株主利益の最大化かどうか知りませんけれども、そういうミッションがきちんとある。そこだけをはっきりさせて、形は柔軟に変えていくという発想をする方が私はいいというふうに思っています。そういう意味で、今回の時点で一本化ということばかりを余り表に出すことがいいことだとは思っていません。
 以上です。

副主査
 ただいま論点例2に近いご発言をちょうだいしたと思います。さらに、もし論点例2で、国際的な産学連携なども考慮したご発言をいただければ、組織論的なことを含めてご発言いただけませんか。

事務局
 論点例2については、先ほどもご指摘がございましたが、今40以上の知財本部とTLOがあり、また一方でそれ以外にも知財活動について積極的な大学が七、八十ぐらいはあると思われる状況の中で、国の支援を続けるとしたら、それは選択、集中をしていく方がいいのか、それともそうでない方がいいのか。さらには、今支援していないところや、選択、集中した場合に漏れてしまった大学に対して、どういうふうに手当をしていったらいいのかというようなことについて、もし方向性等をご教示いただければ大変ありがたいと思っているところでございます。その点も含めて、ご意見いただければと思います。

副主査
 私の理解を整理してみたいのですけれども、論点例2のところで、国際的な産学連携等を一層パワーアップするために支援をしているとすれば、現在の知財本部またはTLO機能、どちらを射程に、あるいはそれが一体化することがイメージとして好ましいのか。あるいは、第三の組織論的なものもあるのかなどについても、先ほどの、機関ではない、機能、役割だという観点も考慮すれば、そういう整理もしておかないと漠としてしまうかなというふうに思うわけですが。多少先走っているかもしれませんけれども、いかがなものでしょうか。

委員
 ミッションと機能ははっきりしていると思います。組織論ではないと思います。それは当たり前のことなんです。

委員
 論点2で国際的な活動、前回のときには非常に、まだ沈滞しているということ、現状がわかったんですが、要するに、ここで論点2の四角く囲ってあるところの言わんとする心は、国際的な活動に対しては支援を充実させる、してもいいのではないか。そういう意味ですか。それとも、知財活動全般について……。

事務局
 ここにも書いてございますが、国内の産学官連携・知財関連活動は引き続き進展させて、現在余り進んでいないといわれている国際的な産学官連携を充実させるという意味です。国際的なものだけをやるというわけではありません。そういう国際的なものをやるところというのは、当然国内も強いはずなんです。国内外を通じて全体の知財活動を戦略的、組織的に進めていく必要があるのではないかということです。そのためには、現状の状況を見てみますと、大学が自己財源で賄っている部分は少ないところが多くございますので、そこをどうしていくかということと、未整備の大学や選択と集中を行った場合に漏れてしまったところについてどうしたらいいかというようなことについて、ご意見をいただければと思います。

委員
 その心は、見てみると、軌道に乗っているところはまだほとんどないわけです。全体で4機関ぐらいしかない。そういう現状を見ると、やはり国としても今までの整備事業をもうちょっと延長していってもいいのではないか。こういう気持ちがにじみ出ているというふうに受け取っていいんですか。

事務局
 それはまだこれからご意見をいただきながら検討させていただくことなんですが、現状を見ますと、財源の状況を見ますと、国の委託による支援がなくなった場合に、各大学でこういう活動が維持できるかどうかというのは、はなはだ疑問なところがありますので、当然そういうことも含めて検討をしていきたいと思っているんですが、ただそういう場合に、どういう観点で進めていったらいいかということを含めて、ご議論をいただきたいということです。そういう意味では、先ほどご指摘があった点とか、各委員からご発表いただいたことなどを踏まえて当然検討していただくんですが、それ以外の先生方からもご意見をいただければ大変ありがたいと思っているところでございます。

委員
 論点2は、結局少しこの先整理をしないと発言は難しい。国際産学連携、前回やりました。それについての話と、例えば国内の場合、その大学が本当にその地域、先ほども出ていましたけれども、TLOも、私がご説明したとおり、ミッションが違うんです。違うミッションを持っているTLOと大学が連携するのか、同じミッションを持っているTLOと連携するときは、それは基本的には組織論だけが残るので、全然意味合いが違うわけです。ただし、大学も多様化を求められてきていて、地域のための貢献だといっている大学もあるわけです。それぞれによって状況が全く違ってくる。当然、そのときにそこの連携することがメリットがある、外部組織との連携が進みやい状況にするというのは、当然必要なことです。それはケースに分けると、今は頭に全部整理ができていないんですけれども、地域の議論と、それから国際の議論と、それからライフサイエンスとか、ちょっと特殊な分野の議論と、こういうのに分けて、連携構造をとるときに、何が制約になっていて、どこを進めたらいいかということを、多分整理をするというのがよいのだと思います。JST、民間などの外部組織を積極的に活用を、すべきなのはすべきなので、あとはどこにネックがあるのかというような話を整理するのではないかという気がします。
 それから、先ほど出ましたけれども、一律に全部確かにやる必要はない。数値的に特許出願数が全部一律に大学の資源数とぴったりなるという世界を目指す必要はないわけです。それでは何をあるべき姿として考えるか。それぞれの大学が何を目指しているかということを当然予想するのだけれども、これも同じことなんですけれども、それぞれの大学が何を目指しているかということに対して、そのビジョンを達成できない原因みたいなものを取り除いてできるようにしてあげるという、多分そういう整理の仕方をするんだろうと思います。
 今回の論点1についても、結局同じなんです。実現したいことができていないとき、障害があれば限定的な措置で効果がある場合はそこを手当てする必要がある。実際あちこちの分野とか、フィールドで。そこに対してはかなり支援の必要なものもあると思います。その支援の内容も、前回も気がついたことで、中央統制的なものがいいときと、それから部局レベルで対応資源を持っていた方がいい場合と、それから外部との連携でいい場合と多分あるような気がします。
 非常に抽象的な話しかできなくて、すみません。

委員
 先ほどの事務局の話もあるんですけれども、要は大学が、一つの法人として、知財をどう位置づけるかによると思うんです。だから、企業でも、例えば特許を重視しているところは特許費用を研究開発費全体の5パーセント、10パーセント、20パーセントと設定しているところもあるし、実務面である方針のもとで対応するところもあると思います。大学の方では運営費交付金が減額されてきていますので、改めて知財の費用を新規確保するというのはなかなか学内的には難しい。ただ、本当にそれでいいかというと、そうではないという話であれば、知財に対する予算は大学の教育研究の何パーセントぐらいをという話になるべきなんですけれども、現実にならないとすれば、これは国の方である程度の、選択・集中ではないですけれども、大学の希望に応じてといいますか、提案に応じてそれを運営費交付金の中に含ませるような仕組みを考えられたらどうか。大学によっては、海外を重視するところもあるし、むしろ国内の産学連携を重視するところもあるし、地域の産業という形であると思うんです。だから、大学によっては、TLOまでは望まないけれども、知財の専門家の派遣であるとか、個々のレベルでも対応できるようなものはあるんじゃないか。だから、先ほどの各大学における知財に関する機関をどうするか、機能をどうするか、これは大学に応じて違うと思いますので、それをいろいろな提案の中で国としてサポートするというのが、一番実効的ではないかなと思います。

委員
 もう一歩過激なことを言おうかなと思うんです。やはり選択と集中は要ると思うんです。そのときに問題なのは、非常にいいところは伸ばす。さらにお金をかけるというのは全然問題がないと思うんですが、落ちこぼれたところをどうするかということなんですけれども、各大学という概念を持たなくてもいいんじゃないかと思うんです。知財本部の合併とか、MAというのも当然あってもいいんじゃないか。要するに、近くの大学で、一つで持てなければ、2つ、3つ一緒になって知財本部を持つ。残念ながら、最初の知財本部事業はそういう提案を待っていたんですけれども、合併が流れたりして、うまくいかなかったところもありましたけれども、別に大学が一緒でなくても、先ほどの機能が一緒であればいいというのであれば、知財本部自体のそういう、場合によっては2つ3つ一緒にする。逆に、それが難しいのであれば、そこはTLOの広域型にしてしまって、代がわりというか、機能を肩がわりしてもらう。そういったような形の、かなりアグレッシブな支援策をしないと、変に生き延びさせるというのは、大学にとってマイナスだと私は思うんですけれども。正直、役に立たないものはない方がいいと思うときもあるので、そこをちゃんと仕分けるようなグラントというか、やり方もあってもいいんじゃないか。
 もちろん、どうしても持ちたいというのであれば、そこは大学としてカバーするというぐらいのミッションの中での気概は欲しいなという気がするんですけれども、余り知財本部と直接関係していない勝手なことを言っていますけれども、それぐらいやらないと、四十幾つというのは多いんじゃないですか。最初のところでの基盤づくりは役に立つと思いますけれども、これから伸ばすときに、では、本当に要るのか。知的クラスターも、今度はたしか20が10になりますけれども、落ちこぼれるところの当然配慮というのは、これは要ると思うんです。ある程度基盤としての知財活動というのは絶対各大学でも必要ですから、ただ、全部が全部同じ形式でいくというのは、もうある程度皆さんなれたので、少しそこはもう半分にしてもいいんじゃないかという、思い切ったこともいいかなという気もするんですけれども。

委員
 私も基本的には賛成です。というのは、大学に知財本部を設置しますときに、大学の中に知財本部をつくってどうするんですかというぐらいの感じはあったんですけれども、実際に走り出して4年ぐらいたっているんですか。そうすると、大学によって、そこにあるキーパーソンがいてやっているところと、そうでないところ、濃淡がかなり出てきていると思うんです。これをまたさらにやったときにどうなるかというシミュレーションをすると、例えば企業の中でも知財部が形だけあるところと、すごくアグレッシブにやっているところと、だめなところは消えていくんです。そういう意味でのある種の割り切りをどこかでして、あとは、セーフティネットではないですけれども、今おっしゃったように、それで全くなくなってしまうと行き場がないんだとすれば、それをある種のバーチャルか何かのもので受け皿みたいなものをつくっておいて、今まであったところがそこに吸収合併してもいいよぐらいの受け皿のようなものを一個用意しておいてやるというのも、いい考え方ではないかと思います。

副主査
 大変重要で、かつ収集つきますかというような議論になっておりますけれども、事務局、発言ございますか。

事務局
 ありがとうございます。おそらく先生方が一番全国の状況に詳しいと思いますので、先生方のご意見を踏まえて、いろいろ検討させていただきたいと思います。今のお考えを聞いていると、ある程度選択と集中をしながら、一方で残りのところに対しても、機能を担う受け皿を用意するという方向ではないかと受け止めております。その受け皿をどうするかというのは非常に悩ましいところで、各大学では金融機関を用いたり、またJSTの技術移転支援センターを活用したりしておりますが、私どもとしてどういう工夫の仕方があるのかというのは、お金の面も含めて検討させていただきたいと思っております。また、ミッションについては、現在は大学知的財産本部という名前でございますが、知的財産の管理というものだけではなくて、技術移転や共同研究といったものを含めた産学官連携全体、さらには大学の研究戦略を含めて考えていくべきではないかというようなご示唆もいただきましたので、そういうことをどういうふうにミッションとして掲げてインセンティブを大学に与えていくのかということは、工夫をさせていただきたいと思っています。

副主査
 過激というような発言もありましたけれども、各大学という観念、概念ではなくという、大学の中からの発言として非常に重要で、かつ意味を持つと思います。企業側からもほぼ同じようなトーンであるということは、非常に重要な意味を持つかなと。しかし、いろいろ支援をしていくときに、大学をターゲットではなくて、ある横断的な、広域的なものでもこれからは大丈夫なんですか。

事務局
 そういう広域の場合には何らかの受け皿みたいなものが多分必要ではないかと思いますので、それをどういうところに求めていくかというのは、今後検討をする必要があると思います。全国的な機関になるのか、場合によってはコアな大学になるのか、いろいろあるかとは思うんですが、なかなか難しいかもしれません。

副主査
 多少難しいかもしれませんが、機関概念が整理できれば。

事務局
 実はこの前の内閣官房の知財サイクル専門調査会の中でも、未整備大学の議論のときに言われていたのは、そもそも経団連では御手洗会長が大九州大学ということをおっしゃっている中で、知財本部について未整備の国立大学とか、私立大学もそうですけれども、細々と支援していくことが果たしていいのかどうかというような問題提起もされておりましたし、私どもとしても、現在の大学の財政面を考えたときに、小規模大学等で実際もう既に知財本部を外に出してしまっているところもありますので、それはいろいろ考えていくべきではないかと思っております。

委員
 埼玉大とどこかが合併するというのを出しているのがありましたね。

事務局
 結局、群馬大学と埼玉大学については、統合の話もあったということで、両方採択したんですが、現在は群馬大学と埼玉大学は連携しながらやるということで、両方に窓口がある形になっております。ただ、リソースはなるべく群馬大学と埼玉大学とで共同で使おうということで進めていますが、こちらの評価でも余りよくありませんでした。うまくいっているかどうかというのは、まだ状況を見ていかなければいけないのかなと思っております。

委員
 距離が近かったり、大学の性質が近かったらうまくいくような気もするんですけれども。

副主査
 ミッション論、機能論の行き先としては、機関という概念を大学というふうに固定して考えないということに行き着くのかもしれませんけれども、いずれにしても、きょう非常に本質的な議論が展開できたというふうに思いますが、ある方向性をまとめ的にしなくてもいいわけですね。

事務局
 きょうは、方向性としては、大学ごとに支援すべきところとそうではないところを分けて、そうではないところは何かしらの形で機能を支援していくというご意見を承ったということで、また長期的に検討させていただきたいと思います。

副主査
 その場合に、選択と集中が前提だというニュアンスがかなり濃厚でしたけれども、そういうことで何かご発言をちょうだいできますか。

説明者
 整備事業がターミネートするということで、駆け込みで成果を上げようと大学側からのいろいろな特許の売り込みがふえるのではないかという危惧を抱いている会社もございます。そこはソフトランディングを考えていただきたい。過激な組織変更があると、どうしても実務者は極端な方向に走るきらいがあるのかなと思っています。これは余り大きな声にはなっていないのですけれども、ぜひお考えいただきたい。成果を特許のライセンスだけではかっていくということが余り行き過ぎると、そういう危惧が現実のものになってしまう可能性もありますので、ぜひソフトランディングできるような運用をよろしくお願いします。

副主査
 大変重要な発言と受けとめるべきだと思います。いろいろ本日はありがとうございます。非常に貴重な、かつ基本的、重要な議論になったと思います。そろそろ時間でございますので、本日の小委員会をこれにて終了したいと思います。

5.今後の日程

 次回については、年明け以降に開催予定である旨事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)