大学知的財産本部審査・評価小委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成18年7月24日(月曜日) 15時~17時

2.場所

キャンパス・イノベーションセンター(東京地区)国際会議室

3.出席者

委員

 石田(副主査)、飯田、勝田、澤井、田村、馬場、平井、本田、松重、三木、森下、渡部

文部科学省

 佐野 研究環境・産業連携課長、井上 技術移転推進室長、笹川 技術移転推進室長補佐 他

4.議事録

国際的な産学官連携の現状と課題についての審議

  • 資料2、3、4-1、4-2、4-3、4-4に基づき、事務局から説明があり、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。
    (◎…副主査 ○…委員 △…事務局)

委員
 全体的に見て非常に重要な、今やはり必要な内容が書かれているのではないかというふうには思っています。
 問題として、実効性として、どういう形でこれをやっていくかという話だと思うのですが、国際コーディネーターの設置等に関して、これはモデル事業として知財本部のような形で進めていくというふうに考えてよろしいのか。それとも、また別の資格委員のようなものを考えているのか。そのあたりをひとつお聞きしたいと思います。
 もう一点は、産学官連携ポリシーに関して、最近、ポリシーを文科省が出してもつくってないケースが多いというのが、たしかどこかで指摘があったと思うのですけれども、実際につくってもらうようになるには、例えばこういうポリシーがないと文科省の事業に応募ができないとか、何かもう少しリンクさせないと、だんだん大学の感受性が下がってきているような気がちょっとしますので、そのあたりの工夫も必要ではないかというふうに思いますけれども、このあたりの状況はどういうふうに考えられているのか教えていただければと思います。

事務局
 これを踏まえて、どういう政策を講じていくかというのは、今後私どもの方で十分に先生方のご意見、または産学官連携推進委員会での委員の方々のご意見を踏まえて検討させていただきたいと思っております。

委員
 前回の報告書、会議の状況も含めまして、国際連携について非常に慎重であるべき、ないしは状況も踏まえてというところのご意見があったと思います。
 私自身、基本的には今国内でいろいろな産学連携が進んでおりますけれども、日本としては、やはりこの国際的なものをやらないと、国内での産学連携も進まないという視点でいます。いろいろ不慣れなところがあると思いますけれども、これをむしろ契機として国内の連携も含めて厳しくマネジメントすべきという点で、このような施策をすることについては非常に私としては賛成しております。
 ここの中で考えてあるのは、マネジメントという形でいわゆる知財とか法務的なものもあるのですけれども、これ以外に活用の側面があると思います。したがって、かなり知財の方に力を入れたものになっておりますけれども、もう少し広い意味でのマネジメントの様相が必要ではないかということを考えます。
 といいますのは、もう一つ、いわゆる財務的な要素があって、知財だけではなかなか動かないのです。ライセンス収入があった場合、特に海外とかのマテリアルも含めての対応などを財務と一緒に協調してやらないとなかなか進まない。これは学内の問題かもしれませんけれども、そういう財務的なものもありますし、いろいろな交渉のこともあります。
 それから、国際連携を行なう場合、学内には国際交流委員会とか、そういうものがあって、いろいろな交流が既になされていると、そういう機関との連携も必要ですし、ここにも書いてありますように、JICA(ジャイカ)とかJBIC(ジェイビック)というか、国際交流等に資金を出すところは国としても非常にあるわけです。そういうふうな連携もやると非常に効果的であるというのもあります。
 それから、実際的にどういう人材を配置するかの課題もあり、果たして少ない予算で非常に貴重な人材を一人二人雇用して、その人がよければいいのですけれども、そうでない場合もある。したがって、JSTであるとかTLOも含めて、それから日本の商社であるとかいろいろなところがあると思いますので、人材については多様性があるという形を前提として考えた方がいいのではないかなと思います。
 それからもう一点、ポリシーをつくりましょうという話なのですけれども、実は我々知財ポリシーを大学の中で既に運用していますが、現在それの改訂を考えております。といいますのは、ポリシーの位置づけというのは大学によって違うと思うのですけれども、余り詳しいところまで書きますと、これを改訂するときに事務的、手続き的に非常に大変です。ポリシーであるとか規程であるとか取扱内規とか、いろいろな手段がありますので、ポリシーについては、非常に理念的なところで押さえて、その詳細な取り決めについては、規程ないしは取扱内規という形でやった方が、柔軟に、また迅速に対応できると思います。だから、これは構成例ですけれども、各大学でつくるときには、そういったところの観点も重要かなと思います。

委員
 今日、いただいた資料、基本的にはしっかりまとまっていると思うのですけれども、1つだけ気になっている点があります。
 例えば、海外での国際共同研究にしろいろいろなものに、実は研究者のソサエティがございまして、その中で組むということは十分にあり得るのですね。そういう意味で既存の人脈というのは当然あるわけですけれども、もう一つ、その契約の過程で必ず知財の問題がリンクしてくると。その時の問題としてこれを取り扱っているのか。それから、さらに海外にも知的財産を積極的に出していくというふうに取り扱うのか。これによって物すごく立場が変わるというふうに思っています。
 もしも前者であれば、内部でそういうサポーティング人材というのをしっかり持っておれば、これは一定程度までの成果は出ると思います。ただ、後者の方まで含めて考えるのだとすると、大学自前主義で果たしてやっていけるのかという問題が次に出てきます。当然TLOのようなエージェントを使うというのはありますけれども、それ以上に今おっしゃられたように、民との連携をどういうふうに組み込むのかということです。特に商社であったり金融界であったり。こういった方と例えば複数大学で組むというのもありましょうし、それから分野ごとに組むというのもあると思うのです。
 そういった民活というのですか、古い言葉なのですけれども、それを利用するような形のオープンリソース系的な考え方を取り込むというのは、今後のひとつの方向ではないかと思います。

委員
 今回の資料2の中で、研究マネジメント体制の強化ということが明確に出ている点に関しましては、私、非常に賛成しております。というのは、そもそも基本特許というのは、何が基本特許となるのかというのは非常に難しい問題でして、やはり基本特許というからには、当然その上に応用があって、積み重なっていくものが後になってみれば基本だったということがわかることが多いのですが、その時点で本当にこれが基本になるのかならないのか、新規の開示とかを受けている立場上、非常に難しい定義だなと感じております。
 基本特許にするかしないかというのは、やはり研究者がその技術をさらに応用化していくかどうか。その技術がさらに他の研究者によって改良されたりして、さらに用途を開発されたりというような、その上に積み上がっていくかどうかというところによるのだと思うのです。そういう意味で、やはり研究者に次の応用をしていかないと基本にはならないという認識をしていただくためには、マネジメントというのは多分必要になってくるのではないかというふうに思います。
 基本特許にするかしないかというところでマネジメントをする人材をちゃんと配置するなりして、強化していくというのが必要なことだと思います。
 あとは、周りがいかにマネジメントしようかというふうに考えても、やはり研究者自身がそういう意識を持っていただかないとなかなかそこがうまく融合していかないのだと思うのです。その時に、ポリシーというものが学内向けに対しての広報、先生方に伝えていくという意味でうまく活用できればいいのではないかなと思います。
 知財の人間だけでいろいろ考えてこうしていこうと決めていっても、大学の研究者との間がうまくつながっていない感じもありますので、そこをうまくポリシーみたいな形で学内にきちんと広報していくというのは必要なことだと思いますので、ポリシーの策定、学内への広報というのはしっかりしていくべきだと思います。

委員
 今日の資料を拝見して、資料2のところの必要性・意義の2(2)のところで、「長時間を経た後に実用化され」とあるわけですね。来年生まれてくるものをどうやって時間軸の中で見るかという話が1つ。それから、企業の場合だとクローズでほかに回しているので、物を売ったりしてお金を回していますが、これはやはり国の政策でやる以上、税金が入ってオープン作業で金を回しますから、いつまでお金を続けるのですかということもきちんと明確に持ってないといけないということです。
 それから、こうやって見ると、「国際」という言葉を使うとすごく耳障りに聞こえるのですけれども、本当の意味でいい面だけではなくて、海外ですと契約内容が厳しいものとなっているため、リスクヘッジに留意する必要があり、まさにある組織としてのガバナンスに伴うオーバーヘッド経費みたいなのをどう考えるのかということをきちんと考えてやらないと。
 国内でやっているときは、まあまあそこそこいろいろな意味での関係があって回っている話も、一回海外に出たときに、このリソースを使ってやっている、そこでトラブルが起こったとき、企業だったらすぐ億の無駄な金が飛んでいるわけですよね。そういうことに関して、最悪のケースまである程度想定して、どういうふうな手当を講じながらこれをやっていくかということを考えていかないと。
 それで、さっきそういう意味でお話があったような、人材育成というのは聞こえはいいですけれども、そんなに件数の無いもので、各大学ができるわけないですから、それをどういうふうに集中して、その辺に対してはこういうお金の使い方をしていいとか、そのときには、さっきおっしゃったように、大学としての財務的な話もありますけれども、変な形でお金を出すということは、無駄なハザードを起こしますから、そういうことに対しても大学自身がきちんとコミットメントしていくというような、そういうことをもう少しきちんと議論しておかないと、産学官連携、たまたま外国に出ていきますよというのは、外国固有の問題をどういうふうにトータルとして見ていきますかという議論をもう一度掘り下げた方が、いろいろな意味で良い気がします。
 そういう意味で、今の話は割と、実際すごく経験はされているので、かなり厳し目に言ったかと思いますが、そこに対する手当をどうしていくかということは、後でやっぱり施策を打たないと、私などはちょっと無責任な話になっているのではないかなと、直感的には思うのです。

副主査
 今の3人のご指摘のようなものが、要旨の3の(1)のところ、すなわち、国際的な産学官連携ポリシーの策定の中で、大学ごとにどれだけ問題点などを整理できるかということに期待するという考え方があると思うのです。その点を整理しておく価値があるかなと。
 あわせて、この国際的な産学官連携ポリシーが、既に各大学で策定している知財ポリシーの中の大きな部分であっても中に入れるのか、独立してつくるのか。恐らくこれは枠が相当違うので独立になるのだろうと思うのですが、どうでしょうか。

委員
 そういう意味では、私、この3の(1)の中に「なお、ポリシーの策定に当たっては」というところを、もう少し明確に「リスクマネジメント上、ここまでやはり踏み込んでおくべきだ」ぐらい言わないと、何かやってパンと問題が吹き出したときに、大学が考えなさいというのは非常に楽なのですけれども……。
 企業は通常の営みの中でそういうのを学習しているわけです。大学はそういうのを学習してなくて、今まで産学官連携をやっている中ですら、本当にいろいろ抱えられている問題がもっとシビアな状況で契約社会で、大学の先生が契約などという概念がなくて、多分いろいろなことをやり出したときに、その先生は当然大学の先生ですからオープンでいろいろなところとつき合うわけですね。そのときに契約違反として訴えられた場合に、その費用も含めどうするのか。それで今度は大学がコミットメントしていれば、大学自体に手が入るわけですよね。
 だから、そういうこともちゃんとやらなければいけないのですよということを、やはりきちんと明確に意識してやらせないと。だから、ここのなお書きのところを具体的にどうやって書きほぐすかというのがあると思いますね。

委員
 先ほどのお話にもあるようなこの問題も、先ほどまとめていただいた中の今後の取り組みの施策の一番最後に、小さく(5)その他の関連事項で、共通支援的なことをつくることを研究しましょうと言っているのですけれども、この辺をもう少し、共通に使われるものをどうしたらいいかというものを、共通の課題とか、こういうものをもっときちんと挙げるということと、それから先ほどから出ている、外部の既存のものにあるものを大学同士がどうやって活用できるかということなど、もう少し国際には国際の連携の仕方というものを掘り下げていくことが必要なのかなと思うのです。

委員
 今日の問題から若干外れるかもわからないのですが、前提として、企業も含めて国際性というのは日本は非常に不得手ではないかと思うのです。
 例えば1例を挙げると、私、ある省庁で行っている新しい分野への研究投資に対する評価の委員をやっているのですが、例えば生体検査のデバイスの開発というようなテーマで日本の一流企業多数がさまざまな提案をしているのですが、なかなか魅力的なのですけれども、5年先の市場はどうなるかという質問に対して、それに対する回答というのは、世界をマーケットとして見るということはほとんどどの企業もしてないのですね。ほとんどオール国内市場しか見てない。
 それが証拠に、特許の出願も国内が重視なのです。どうしたってコンペテーターは国内のことしか考えてない。そういうことが1つあります。
 それから、例えば、今iPodが世界を席巻していますが、ソニーはウォークマンを発明した後、何でiPodができなかったのだろうかという疑問に対して、ソニーのある技術者が言っているのは、デバイスの開発力ではないと。著作権のクリアーとか保護の面でもたついているうちにiPodにやられたと。一言で言うとそういうことらしいですね。そういう弱点が出てきたというのは、やはり国際的な戦略展開の仕方というのは、どこかに非力な面があるということを感じたわけです。
 ここからが私の本題の1つの感想で、ここに挙げられていることは、全部コンパクトに過不足なく与えられているので、これ以上のことは私にはなかなか思いつかないのですが、1つは、強調したいことは、成功例を一つ二つ三つというふうに重点的に意識して実現するということが重要ではないかと思うのです。その場合、成功例を見せてくれるということによっていろいろな大学が参考にするし、刺激を与える。
 それで、重要なことは、旧帝大のような大学以外の大学で、第1号、第2号という成功例をつくってもらうと、ほかの大学もやらなければということになってくるのだと思うのです。それがいい面に連なっていくと。
 ですから、個々の論点とか意見ではなくて、私はとにかく成功したケースを1、2、3というふうにつくっていくのが一番早道ではないかというふうに思います。

委員
 先ほどの話で、ちょっともとに戻すと、前回のご発言で、余り難しく考えることはちょっとやめておいた方がいいのではないかと。これは、本当を言えば私もよくわかっておりまして、私、企業にいたときに、アメリカでベンチャーと交渉するとか、必ず向こうは弁護士がついてきてしまいますので、非常にドキドキしながら、おどかされながらやるわけです。一方で、米国の投資ファンドが、大学の知財を請け負いますよということで、聞きますともう四、五件の契約を日本の大学とやったという話です。そういうような意味で、後延ばしにもうできないという状況が恐らくあって、逆に言うと早く体制をある程度確立させて、先ほどご指摘になったようなリスクというものを明確に認識をして、その上でポリシーを持っていくというのがやはり大事なことではないかなと。
 これも、本当にそこのところがまだ後回しにしようと思えば、共同研究はやめておこうという、例えば特許はありますけれども海外特許はやめておこうというのもあるわけです。逆に言うとそれをつくるときに明確な認識を持ってやろうということは、今の時点で逆に言うとすごく重要なことではないかと思います。
 あと、先ほど、では個々の大学でどこまでできるかという話がありましたけれども、商社という話をどこかで出されていましたが、やはりそういう勉強を各大学、あるいは制度支援というか促して、どんどん進めていく必要があると思います。
 商社は、例えば、海外の研究所とかは技術移転を長くやっているところもあるわけです。それは、技術移転というのは余りもうからないのに、なぜ商社がそういうことをやっているかというのは、よくよく知る必要があると思うし、その中でどういうことが起きてきたかというのは非常に役に立つと思うのですけれども、結果的にかなりリーガルなイシューというのは多いというふうに聞いています。
 というようなことを含めて、ではどういう構造で対応したらいいかという議論は、各大学でやる部分と、同時にやっていく必要があるのだろうというふうに思います。
 それから、最後に、今、国際的な視野というのが日本の企業を含めてという話がありましたけれども、それは逆に言うと、これもまた見方なのです。今ここで議論している、日本の大学が海外の産学連携に対してどういう姿勢で臨むのだろうとかというのは恐らくすごく注目されていると思うのです。特に、アジアとかそういうところから、今現在すごく注目されていると思うのです。それは逆に、今企業がオープンイノベーションという我々の戦略の中で、海外に開発拠点を置いたりとか、特にアジアに開発拠点を置いたりとかしていますけれども、そういうところで産学連携をやったりとか、いろいろな形で出てくる知財が、果たして本当にうまく活用できるかどうかというところが議論になっていますよね。イギリスなどはそういう議論を多分していて、中国にミッションを送ると、大学にも協力するというようなことをちらっと聞いておりますけれども、日本がどうするかというのは、最終的にはそういうことに多分影響するのではないかと思うのです。
 日本が、逆に言うと海外との接触を閉じる方向に例えば行ったとしますと、必ずそうなります。それが技術移転市場というか、知財の流通市場としてある程度透明性が高くて、自由な市場をつくっていた方が、恐らく日本社会にとっていいはずなのだけれども、そういうのに対してここの議論というのは、すごく逆に日本だけしか意識がない。海外という視点では随分有名なのではないかと。そこを考えて、意識しながら議論しつつ、ポリシーを決めていく必要があるのだというような気がいたします。

委員
 まずは、長期的なといいますか、割と長い目で見た話でいうと、日本のトップを走っている国際系企業も、かつてはやはり訴訟で痛い目にあって、米国企業に異常に多額のお金を払ったりしたりしながら、だんだん法務能力を身につけていったという歴史はあると思うのです。ですから、こういうことを言うと非常に言い方が悪いのですが、やはりある程度痛い目をしながら成長していくというのが、長い目で見るとフチなのではないかという気がします。ですから、それを恐れずに進んでいくということが大事かなと思います。
 焦らずにゆっくり、着実に進めながら、時々ちょっと痛い目をみて勉強して、授業料を払いながらやっていくというのが長い目で見たところかなという気はします。
 私の思っていることを、多分書いてないと思うのですけれども、述べると、大学のシステムの中の一つの問題として、これも非常に言いにくいのですが、直裁に言うと、やはり大学の教員の方々によるマネジメントではなくて、独立した専門性のある、しかし授業を持たない集団をつくり上げておくのがやはり大事だと思うのです。
 既存の事務局の方々は非常に頑張っていらっしゃるし、非常にすばらしいのですけれども、非常に気の毒なのはやはり常に先生方から下に見られるというのがあると思うのです。何かあると上から物を言われて、何やっているのだみたいな感じなところが非常にあると思うのです。それは気の毒だと思います。配置転換も多いですから、専門を磨く時間も少ないですし。
 だから、理想的に言うと、やはり企業と同じように時間をかけて人材を育て、その人材と先生との関係が、指示命令系統というよりはお互いに尊敬し合う関係で、きちんとそういう問題に対処していくと。希望的にはその中に若い弁護士も、例えばロースクールを出てまだ若いバリバリの弁護士が入っていって、そういう中で本当に専門の集団をつくっていくということが必要ではないかという気がします。
 やはり、授業を持っていない人材の影響力が少ないということですね。教授会がすべて制度を仕切っているところは、そういうのは将来的に見ればなくなっていくのが自然ではないかと。これは、別に先生方の教育とか研究を別にすべき項目とかないがしろにする気は全くないのですが、先生は研究に力を注いでもらいたいと思うのです。いい研究をして、いい論文を書いて、アカデミアでどんどん頑張る。大学の国際的側面とかあるいはリーガルな側面とか、あるいはプロドク志向もありますし、そういうのはやはり専門の部隊の人間がきちんと処理をしていくと。そういういい協力関係をつくっておけば大丈夫ではないかという気がします。

委員
 話したいことはほとんど話されてしまいました。私も大学にかかわっていて強く感じていることは、今のご意見と全く同じです。なぜかというと、1つは教育という部分も大学知財本部の方に押しつけられてきたりします。知財教育を誰が行なうかという問題が1つあるわけです。大学の先生方は自分たちの専門分野のことを教えています。それに対して産学連携のスタッフとして大学に入ってこられた“教授”等の方は、科学技術の中の専門分野を持たない知的財産分野ということで、軽く見られていて、発言力が弱いあるいは実際にないケースが多いです。ですから、何か活動しようと思ってもどこかで滞ってしまうのが現実に見えています。
 次に、大学が外国企業と産学連携・研究協力を行う必要性はあると思います。私は成功例というのは非常に大切なのですけれども、失敗例の方を積み重ねていただく方がいいのではないかと思うのです。失敗例をどこかに集中していただいて、それを他の大学が肥やしにして、さらに、よりいいものにしていただくことが必要です。しかしながら、全部失敗例ばかりですと、逆に国際活動を避ける心理になりかねませんので、成功例も目立つように大きく開示していただきたい。失敗例は、文科省かどこかで一箇所に完全に集めていただき、展開していくということが必要だと思います。
 この失敗例、成功例の開示があると地方大学も国際的な産学連携が非常にやりやすくなってくるのではないかと思います。現況ですと、どうしても東京、大阪が有利です。それ以外の地方大学ですとどうしても、例えば東京大学は別格だからという判断だけで参考にできないと思われてしまいます。それから私立大学の場合でも慶應義塾大学・早稲田大学はやはり別格だからというような見方で見られてしまいます。それ故、他の大学がなかなか参考にしないことがあります。しかしながら、いろいろな大学の失敗、特に大きい大学でも失敗しているのだよということがわかれば、失敗に恐れることが心理的に少なくなりなく、地方大学も勇気ができ、全国的な展開ができるのではないかなと思います。

委員
 私もこの問題は非常に難しい問題ではないかなと認識しております。1つは、今は大学の中でどんなことが起こっているかといいますと、国内特許については事業化を前提としたような形で、量よりも質というふうな動きを私どもの方もしておりますし、その場合にできるだけ将来技術的な、国際標準というようなものになるような種を持ったものについては、積極的に出願等をしていこうというような方向を、一応方向づけとして持ってはおるわけです。
 ただ、先ほどのご指摘にあったように、ではどういうふうにそれを目利きの人たちに見てもらって決着をつけるかというのがなかなか難しい。つまり、評議員と先生方との交渉、それをやる事務方のスタッフあるいはコーディネーターの方は、どうしてもポジションとして下に見られてしまう。
 したがいまして、ここにもございますように、ポリシーをつくりそれを取り扱う国際的なコーディネーターというような者の人材面での充実、あるいはその方のポジションをやはりきちんとした地位ということで我々もそれをうまく定義するといったようなことが、まず必要になってくるのではないかというふうに思います。
 それから、そういう国際標準になりそうなシーズというようなものが常に転がっているかというと、多分そうではなくて非常に不安だなという気がいたします。ですので、それに対する、先ほどもおっしゃっていましたけれども、リスクをどうするかというようなこと。
 それから、もう一つは、先ほどの最後にありましたように、共通的な仕組みです。これをできるだけ早くつくっていただいて、そういう組織の中に協議会のようなものができ上がるのだと思いますけれども、きちんとした調査研究をされて進めるのであれば、そういうところを参考にしたいというふうに私の方では考えているところでございます。

委員
 もう基本的に皆さんのご意見が出たところで集約されているのだと思うのですが、国際的な連携という点では、今回の特許のライセンス移転だけではなくて、大学発ベンチャーの将来、場合によっては外国の企業に買われるというケースも増えてくると思うのです。そういう意味では、やはり基本的な腹積もりとして、そういうところまでいずれにしろこの特許のライセンス会社などは行ってしまうと思うので、それをどうするかというのを決めておけば、大体方向性が見えるのだろうと。
 イギリスが、そういう意味ではいい例だと思うのですけれども、イギリスはやはり非常に多いのです。イギリス発のベンチャーで、今アメリカの企業とかスイスのいわゆるビッグカンパニーに買われるケースが非常に続発していて、それはやはり非常にうまくいっているので買われているということになるのですけれども、それをイギリスの政府はどうとらえているかというと、ブレア政権は、それはいいことだと、成功例だと呼んでいるのですね。イギリス領事館と話していると、ぜひイギリスの会社を買ってほしいと。そこまで割り切りがあって、産学連携なりあるいは大学発ベンチャーというのを考えているのですね。
 基本的に日本も場合によっては必然的にそういうケースが出てくるだろうと。今後も特許が移転され、海外に出ても実用化されて、結果的にライセンス料が日本に入れば、それは成功だというのがやはり趣旨だと思うのです。国内だけを意識しても、いずれにしろ多分意味がない。日本経済と一緒に沈む話なので、やはりグローバルな話というのは出て来ざるを得ないだろうというので、出口としてそういうケースもあり得るというのを想定した上で、では施策としてどうやるのか。
 現時点で、どこまで踏み込むかという議論はもちろんあるのですけれども、ただ最終の行く先を見据えた上で議論をしておかないと、そういうケースが出たらそれは失敗なのだと。あるいは日本として損をしたのだという話になると、やはりおかしいと思うのです。ですから、その辺の共通認識を持った上でどういう仕組みをつくって、今の時点でどこまでやるのか。そこをやはり考えていかないといけないのではないかなという気がしています。
 いずれにしろ、避けては通れないというか、5年、10年たてば絶対そういうケースは起こりますので、そのときに受ける想定がなかったのだというのではまずいのではないかという気がしています。

委員
 まさにそうなのです。産学官連携そのものを最初からポジショニングはどうかということと、国際に展開しますというときの結果の見方をどうするかというのが、いまいちよくわからないのです。
 今、おっしゃったように、本当にそうなのだったら、はっきりそういうことを明確に残しておかないとわけのわからない結果になるだろうし、さっきの商社が絡みますと、商社というのもそのゲインを得なければしようがないのだから、そこがあるからこそ、彼らは来るのであって、ボランティアをやっているわけではないのだから。多分、商社が買わせますと言ったとたんにそういうふうなある種のアウトプットになりますと。それはだから国のお金としてやりますよと。それはこういう形で日本としてはゲインになればここに税金を入れますというところまである程度見通しておかないと、先ほどおっしゃったようなことは、必ず義務も起こると思います。だから、そこまで含めていいとなったら、そのときにはどういう形になって、ゲインが出るかというところを見越して我々こういうふうにいきますという議論はやっておいた方がいいような感じがします。

副主査
 今まで出ている議論は、恐らく国全体として、または大学あるいは企業・大学における大きな仕組み、または政策的な整備、外為法の問題も含めてですけれども。そして、恐らく、大学か企業かは別にして、戦略的・国家的レベルでの整備、そして最後には、そもそもそういうレベル、人材または組織能力、そういうような3つを整備していきながらということになろうと思いますけれども、事務局から説明がありましたように、このペーパーではそのように政策レベル、戦略レベルあるいは組織の定義的な問題などにつきまして、整理をしながらある種の方向を提言、考え方をまとめていくというところの説明だと思いますけれども、ほかの委員の皆さんいかがですか。

委員
 国際的な産学連携のところで、今いろいろな項目が、ある意味ステップを意識されない状態で書かれているというふうに私は思っているのです。1つは、やはり政策的にまだ立ち上がり時期のところで必要な部分は何かとか、それから当然長期的将来になりますから、投資、それからリターン、それからコスト、こういったことは当然民間的感覚でいうとシナリオがあって、そのシナリオに対するリスク、それとゲインを考えなければいけないわけですね。
 そういった時代が来ること、それを見越しながら、今何をするか。そういう時間軸を入れて書かないと、それぞれこういった形でオープンにやった場合には、大学がかえって形而上学的な議論ばかりしてしまう。その辺をちょっと危惧していますので、配慮していただければと思います。

委員
 先ほどの議論で、1つ、リスクヘッジの話があったと思います。これは国際的な連携だけでなく、実は国内連携といいますか、国内での時点でもまさにリスクヘッジの問題はある。
 大学は、ライセンスをするといいばかりではなくて、もし問題があった場合に大学は訴えられる可能性があります。そういった面で言いますと、国内だけでなく国際的にもリスク問題を懸念すると、本当にやる気がでない、やることができないような状況になります。しかし、すでにこれまで契約等についてはいろいろな形、歴史があるので、まさに学びながら、国際展開に当たってはそういう事例を踏まえて、またその危険性をちゃんと認識した上で少しずつでもやりましょうという姿勢が必要かなと思います。
 今、国の方でイノベーションに対する予算がかなり出ております。産学連携、それを支援するような予算がある。その中にそういったような国際的な視点をいろいろなところに盛り込めれば、もう少し実質的なものになるのではないかと思います。
 例えば、今、戦略イノベーションというか、大きな企業との連携プログラムが開始されているのですけれども、そういうふうな知財や国際的な視点のものがちゃんと考慮されているかどうかというのも、どこかで検証していただくのも必要に思います。それから間接経費の使用対象について、今まで知財のものをどんどん入れていただきました。こういったところをもう少し膨らませて、知財や国際的視点のマネジメントについて、間接経費か直接経費かどちらでも良いのでしょうが、ちゃんと考慮し対応するだけでも随分変わるのではないかと思います。
 それから、もう一つ、技術移転に対する考え方ですけれども、やはり利益というよりも一種の大きな意味での社会貢献という形の位置づけも必要ではないかと。これは、海外についても産業競争力で日本の製品を売り込むというだけではなくて、環境であるとかそういったところに技術移転を通して国際貢献できるわけです。そのときに、やはり技術とともに知財というのが重要な視点であって、今までの科学技術予算を単に知財に対するライセンス収入で回収するという話ではなくて、そういうふうな社会貢献の中にちゃんとした科学技術振興のインセンティブがあって、こうした国際貢献を通した知財の活用という視点も必要ではないかと思います。

委員
 先ほどの話で、私、外から大学を見ていると、基本的な組織的なガバナンスができていなくて、しかもそれは財務的に全然ペイされていない、一言で言うと。だから、結局こういう施策を持ったときに、それは人件費か何かに消えているわけですよね。ところが実際に、特許を取ったときに10年なりもう少しロングスパンで金がかかりますということに対して、どう手当てするのですかというようなのがもうひとつよくわからない。
 それから、もう一個は、こういうふうな形の話のある施策を国として持とうとしたときに、これはある意味では器的な議論の話になって、当然知的財産ですから、もとの技術のネタは何か。そちらの方でやっている施策とこういう施策を完全にオーバーラップさせて、例えばCOEをやっているテーマについてもある程度リソース集中で、ここら辺のテーマについてはこういうものとセットアップで海外に出してみたらどうかとか、もう少しほかのものとも連携をとらないと。企業でも企業価値のあるリソース投入して、これはこの先行くから、それについて知財としてもいろいろなバックアップをしていくわけで、これはこれで1つの形なのでしょうけれども。もう少し大学がアカデミアだとすると、ここのところでかなりリソース投入があるものとこういうものとのリンケージみたいなものは、どういうところでやるのかよくわからないですけれども、そういうのはもう少し意図的にやらないと。国際にグローバルに実施報告しようとしたときに、単純に出てくるものでやるのか、もう少し国のお金を意図的につぎ込んだもので何かデザインを描くのか、そういう議論をどこかでやっておかないと、何となくこれだけだと寂しいなと。

事務局
 今までこういう議論を全くしていなかったので、考え方を整理するということと、大学でこういう取り組みがされていないので戦略的にやっていこうということを整理していただくということで、具体的にどういう施策をとっていくかというのは、これを踏まえて私どもの方で検討させていただくということになっております。
 ただ、いずれにしても、その前提といたしましてこういうことが具体的に必要があるのかどうか、意義があるのかどうか、その際に大学がどういうことに気をつけて取り組んでいく必要があるのかというようなスタンスとかポリシー、または留意すべき事項ということをきちんと整理した上で、政策をとっていかなければいけないということを考えておりまして、こういうご議論をいただいているところでございます。
 その際には、やはり国としては、また大学間で共通に課題になる部分については、当然国として整理をした上で、大学に提供していく必要もあると思っておるところでございます。

副主査
 資料2の2ページですけれども、(2)の最後の4つ目の○(丸)のところに書いてありますように、恐らく国際的な産学官の連携の中で、成果の帰属、利用、あるいはそれを取り巻く戦略的ないろいろな対応というのは非常に複雑系になってくると。そのようなことを想定しながら、整理しながらということと、国の政策、そして大学の方針、そしてそれらを実行するために国によって制度が違う。例えば共有特許については単独ライセンス許諾権があるなし、これ1つとっても、あるいは外国で発明が行われた場合、特許出願は最初にその国にしなければいけない制度設計になっている物すごい複雑系のものがあるので、審議の中でもいろいろその辺の整理との全体が見えない中での議論だと思うのですけれども、これは行政の方としては、2ページ(2)の4つ目の○(丸)に書いてありますように、そのようなことにつきましては整備をし、リスクマネジメントを打ちながらという前提があると思うのです。非常に大きな前提になると思うのですけれども。

委員
 産学官連携の関係の政策の流れというのは、最初は障害物とかいろいろ問題になる部分もあって、それをどうやって少なくして、産学連携活動をしたい先生方にどうやって自由にそれをやってもらうようにするかという、むしろ最初は障害物を取り除いていくような方向の政策だったのですね。
 今やろうとしている新しい政策は、むしろアフアーマ・クラクションという、むしろ取り除く方向ではなくてこういうのをどんどんやってみたらどうですかと、背中を押すような感じですよね。
 やりたい方は、もちろんやりますけれども、そうやってある程度もっと何かをさせるという方向性だと思うのです。
 だから、かつての産学官連携の政策と少し戦法が変わりつつあるのかなという気がします。だから、次はファマティブなことをやるのであれば、当然その裏づけが要るわけです。それをバックアップするお金や人材や組織や、そういうリソースがないとそこはできないですね、取り組みはね。だから、そういう意味でいうと、リソースの方をどうするのかというのが非常に重要になってくるのではないかなと思います。
 そのポリシーを拝見すると、やはり各大学にある程度までやらなければいけないのではないかというイメージを与えておいて、戦略を立ててやらなければいけないのだと。みんながそう思う。ではリソースはどうするのかというと、そういうことをおっしゃられているのですね。だから、もしかすると、本当の本筋はやはりナショナルプロジェクトとかCOEとかにきちんとしたマネージャー、ディレクターを充てて、そこから生まれる本当に国際競争力のあるシーズを、国としてどうやって活用していくかという方が本当は本筋かもしれないし、そういうのがあって、では大学は何ができるのか、各大学が。それと同じような形で自分の力を発揮していくような感じになるような気がします。

委員
 別の観点からですが、そもそもこういうものをなぜ検討するかというところもあると思うのですけれども、これはやはり例えば大学が法人化されて、1つの組織として成り立つためには、特に大学は知的なところとすれば、知の扱いをどうすべきか、それから社会との接点をどうするか、海外というのをどうするか、法務的なことも含め、組織的な対応は今までの大学、実は欠けていたと思います。
 それかといって、今度法人化されて、そのための予算も計上し、使うかというとそう簡単ではない。この知的財産本部整備事業も5年間の施策ですが、終了後どうなるかわかりませんけれども、ある面では法人としては独自でも最低限必要な組織対応をやっておかないと私はいけないと思います。第2期の中期計画については、各法人というか大学が、知財に関する予算をどうするかという検討をしておかなければいけないと思っています。
 例えば、一千億の予算執行をしていて、知財関係でどれくらい使っているかというと、1パーセントも使ってないわけです。0.1あるかどうか。極端に言って今までのゼロの状態ですから、今回の知的財産本部整備事業およびその予算は今後の大学の使命達成に対する経費を考える上でまさにきっかけになったのではないかと私は思います。
 あとは各大学が研究戦略そのものをどう策定するか、地域展開、国際展開をどう考えるか。その中で知財をどうするかというところの視点の中で、今後の知財や産学連携の国際化の進め方を検討しないと……。
 今、多くの大学が外部資金獲得の必要性を考え、いろいろな取り組みをやっている。こういう競争的資金プロジェクトを文科省がやるのならぜひ我が大学も応募しないといけないという、そういう雰囲気が先ほどのお話にもあるかと思うのです。
 私たち知財というか、知の取り扱いについて基本的なところは固定化するのでなく、まわりの状況も含め常にリフレッシュしながら、法人に於ける知財のあるべき姿を基盤に据えないと、予算のプラスアルファの面というところだけでとらえると、あまりにも暫定的なものになってしまうかなと懸念されます。

委員
 すごく形而上的な話をまたしてしまいますが、産学官連携政策というのは基本的に規制緩和だという見方だと思うのですけれども、それは今でもそのとおりで、基本的に私は日本の知的財産戦略というのは、知識の民営化だと思っているのです。民営化の民の中に法人化された大学というのは含まれていると。そこにいろいろな障害があって、それを取り除くために後押しをしてもらっているという、そういう構造だと思います。
 で、その先に、国内の話で閉じていればそこで大体理解が全部できるのですけれども、これは国際になるとやはりちょっと違うのは、その障害というのが国内だけではなくて海外にもある障害に対して働きかけをするのかどうか。すると見るのかどうか、ということだと思うのです。
 もし知識の流通市場あるいは知識を相互交換する、それが市場原理で流通させるような市場というものがインフラとして非常に重要であるならば、それは海外との関係においてもあってしかるべきだろうと。それは、国家間でも皆さんが使えるものであれば、それは皆さんにとって有効なものであろうと思うという考え方に立てば、基本的に同じで、そこに対して障害を取り除くという構造だと思うのです。
 ただし、これは日本の大学の話なので、働きかける側なのですね。そういう意味では、多分同じように見ることもできる。だけれども、確かに大分見方が変わるので、そこをどういうふうにするか。非常に哲学的で申しわけないんですけれども、簡単に言えばそういうことだと思います。

委員
 今のお話に絡むのですけれども、逆に今までの産学官連携の施策というのは、必要に迫られてやったので、余り統一性がなかったのですね。TLOと知財本部にしても、後から一生懸命齟齬を直しに行っているのですね、今。これは本来的に産学連携とか知財というものの本質から言えば、本当は逆をしなければいけなかったのだけれども、独法化の方が忙しくて間に合わなかった。また、国際的な産学官連携も同じことをやるというのはまずいと思うでしょう。
 だから、逆に、これはホートラクションだと思うのですけれども、やはり先行事例を二つ三つ出していって、ちゃんとしたものを先にやることの方が政策的には僕は意義があるのではないかと。そういう意味では、海外がもともと先行していて、前に鎖国をするかしないかという議論の中で、基本的に鎖国をするという話はもともとない世界だと思うので、そうすると、今まだ目が覚めていないうちに、やはりちゃんとしたルールをつくって、ちゃんとしたやり方を見せた上でいかないと、後で五年十年たったときにまた矛盾がいろいろ出てきて、結局いろいろな制度が疲弊してくるということになりかねないという危惧を持っています。
 逆に、やるのだったら今だと思うのです。今だったら、逆にいうと皆さんどちらかというとそういう認識を持っていないので、ある意味白紙のキャンバスの上にある程度理想論の話も書ける可能性があるから。それがいいか悪いかはわかりませんけれども、ただ、政策的に言えばやはり前もって転ばぬ先の杖をちゃんとやっておいた方が、もともと全部の大学が対象になるようなコースではないと思いますので、いいのではないかなという意味で、今やる意味が逆にあるのではないかと思います。

委員
 ポリシーを各大学でつくることが望ましいとして、最後にポリシーが添付されている。これは、ポリシーというのをやめて、こういうことをしたい大学はこういうことを気をつけたらいいですよとか、こうしたらいいのではないかという、そういう指針というかガイドラインでしょうか。ポリシーはやめて、「こういうポリシーでこれを皆さんはつくった方がいいですよ」というスタンスではなくて、もうちょっと違うスタンスに持っていった方がいいのではないですか。いかがでしょうか。

委員
 ガイドラインをもしつくるのだとすれば、やはり政府でつくって、それを踏まえ、各大学がポリシーをつくるという順番になってしまいます。今、そういう手続ちょっと難しいような気がするのですよね。

委員
 ガイドラインもちょっと語弊がありますね。そういうことをしたい大学が活用できるように1つの資料として、調査事業をやるといいのではないですか。どこかの大学で一回モデルになるようなポリシーをつくってもらってから、こういうのをつくるという方向に行くという意味ですか。

委員
 要するに、どこか一部分に、あらかじめ大学自体のポリシーをつくって。これ外国語訳ですね。ポリシーになる文書をつくる外国語訳として、学内外に明らかにするのが望ましい。要するに、全国の大学にこれをやらせるわけですね、基本的には。

事務局
 いや、あくまでやりたい大学であって、特に産学官連携をやる必要がないという大学についてはやる必要はないと思います。

委員
 理想はそうなのだけれども、みんな評価を受けると思うと一生懸命頑張ってつくりますよね。

委員
 でも、最近は逆にポリシーができないというのが問題になっているのですけれどもね。文科省が言ってもつくってこないというところが多すぎるという話も逆にあって。別にみんながつくらなくてもいいのです。つくるところがつくって頑張る気があればもうつくる。

委員
 それは、結局つくらなくて何か問題があったら吹っ飛びますよ。吹っ飛んだらその大学が責任をとりなさいと。それだったらもうわかりやすくていいです。企業だっていろいろコンプライアンスをやらなかったら、問題が起こったらそれで首が飛ぶわけですからね。

事務局
 私どもが今考えているのは、こういう国際的な産学官連携というのをやるに当たっては、当然ながら長期的なコストも含めたリスクを考えられる大学ということを視野に入れて検討しているところでございますので、別にそれ以外のところがつくらなくていいというわけではないのですが、当然つくる大学も結構なのですけれども、やはり必要な大学がみずから必要と感じたときにつくっていただくということが大事だと考えているところでございます。

副主査
 非常に基本的な問題でもありますけれども、そろそろ時間が近づいておりますので、議論につきましてはこの辺にさせていただければと申し上げます。
 本日、いろいろ貴重なご意見またはご指摘をいただきましたので、8月2日水曜日に開催予定になっております産学官連携推進委員会におきまして審議状況報告、これは(案)の形で報告をすることになります。
 そこで詳細につきましては、主査及び副主査にご一任を頂戴して、審議状況(案)として報告をさせていただければと思っております。いかがなものでしょうか。

事務局
 どうもありがとうございました。
 多様に展開されつつある産学官連携に対してどのように対応支援していくかということ、質の重視ということ、地域振興ということで科学技術駆導型の地域発展を目指すということ、その3つを今私どものところで主要な政策の基本としてやろうと思っているところです。日本全体としてグローバルスタンダードの産学官連携推進体制を構築するというかなりの決意で取り組んできたところでございます。
 今日の意見を踏まえまして、また、事務局の方で文章を練り直させていただいて、協議させていただきつつ前に進んでいきたいと思いますので、引き続きご協力、ご指導のほどをお願いしたいと思います。どうも本当にありがとうございました。

副主査
 本日は、大変貴重な議論を積極的に展開していただきましてありがとうございます。本日の会議を閉会とさせていただきます。

5.今後の日程

 次回については、今後日程調整を行う旨事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)