大学知的財産本部審査・評価小委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成18年7月6日(木曜日) 13時~15時

2.場所

キャンパス・イノベーションセンター(東京地区)国際会議室

3.出席者

委員

 石田(副主査)、飯田、生駒、田村、馬場、本田、三木、森下、渡部

文部科学省

 佐野 研究環境・産業連携課長、井上 技術移転推進室長、笹川 技術移転推進室長補佐 他

オブザーバー

説明者
 藤田 東京大学産学連携本部長、久保 奈良先端科学技術大学院大学産官学連携推進本部統括マネージャー

4.議事録

(1)国際的な産学官連携に関する大学関係者からの意見聴取

(2)国際的な産学官連携の現状と課題についての審議

  • 藤田東京大学産学連携本部長、久保奈良先端科学技術大学院大学産官学連携推進本部統括マネージャーより説明後、資料5-1、5-2、5-3、5-4、6に基づき、事務局から説明があり、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。
    (◎…副主査 ○…委員 △…事務局 □…説明者)

委員
 今日の課題は産学官連携の国際展開ですか?今お話いただいたのは、どちらかというとそれのフレームワークづくりというのですかね、いろんな法律とかそういう問題、それから制度の問題をお話になったと思うのですけれども、私の言いたい一番の根本は産学連携の国際展開は当分やらない方がいいと言うことです。何が言いたいかというと、大学の先生は「契約」という概念が全然ないものですから、こういう先生方が外国企業と共同研究をやったときには逆にものすごくネガティブな評価を受けて、二、三年後には今より悪いふうになるでしょうと、危惧します。その前に国内で契約という概念をしっかり固めていただかなければいけない。
 実は私なぜこういうことを言うかといいますと、私はキャノンのCTA、チーフテクノロジーアドバイザーというのをやっていまして、今キャノンは産学連携を一生懸命、企業側から推進しようと思っていまして、私は今その旗をふっていまして、日本の大学をずっとサーベイしています。興味のある研究をやっている大学の先生、それから海外もヨーロッパ、アメリカの大学をサーベイしています。ついこの間も欧米に行ってきまして大学を見てきましたけれども、マインドが全然違いますね。ですから、日本の大学の先生がまずマインドを変えて「共同研究というのは契約である」という概念を先に国内でトレーニングを積んでから海外へ出て行っていただかないと、ネガティブな結果になる可能性が高いですね、申しわけないんですけれども。
 何が言いたいかといいますと、アメリカの大学は企業に対して共同研究したいときにはその企業が何を求めているかというのをまず考えて、それに対してうちはどういうソリューションを出すかという、そういうプレゼンをするわけですよ。ものすごくはっきりしていますね、スイスの大学の先生がキャノンに来ましてプレゼンをしたときの第1ページは御手洗さんの顔が出てきて、御手洗語録が日本語で書いてあるんですよ、それでここの部分をこうやっている、うちはこれをやってあげますよと、こういうプレゼンをするのです。日本の某大学の某先生がキャノンに来て産学連携を申し込んできたのですが、そのときの書類がどうもおかしい、理解できない。よく見たら文科省に出した書類と同じものを持ってくるんですよ。それで私はこの大学とはやらない方がいいということを、それだけで言ったわけですね。ですから、そこを変えなければ非常に難しい。
 今度、イノベーションのための融合分野の研究拠点つくりの募集をしましたよね、あれを産と学が組んで申し込んでこいというのも、実は私すごく心配しているんですね、企業は名前だけだして、最低限のお金を出して、ときどき人が来るというふうになりはしないかと。あそこに本当にちゃんと契約の概念を入れて文科省に対してのコミットメントをし、それを守る。産の方に対してもコミットメントを守ってもらうという習慣が出来ればよい。あれで大学の先生はトレーニングをしっかり積んでですね、それから海外へ出ていった方がよろしいんじゃないでしょうかというのが一点ですね。国際についてはまずそこのところは非常に重要です。
 それからもう1つ、これもちょっと話が広くなりますけれども、キャノンで大学との委託研究の契約をまとめようとするときに、やはりIP(特許)にこだわるがために成立しないというケースが現実に何度かあります。例の日本版バイドール法で、どういう解釈なんですかね、法人がIPを持つからそれを守らなくてはいけないという解釈なのか、なぜかわからないのですけれども、最初から不実施補償を請求してくる。IPというのはできる前から細かいことを決めて進むものではなくて、最初は紳士協定でいって、できたらどうしようという、そのくらいでなければIPの帰属権でも企業は当然お金を出すから自分のものと思いますし、大学は自分だと思っていますから、これ成立しないんですよ。昔のように官が優先で、民より上であるという考えでは産学連携は進まない。
 ですから、そこを大学の先生もよく現実を見てね。で、一般に言いますね、IPを取りライセンシングして大学がお金を儲けて、運営費交付金の減った分を補填しようという考え方は多分間違っている。大学はお金を儲けるところではない、これはデレック・ボクが「商業化する大学」という本で言っています。ハーバード大学みたいに超一流でもお金儲けは実際そんなにできない。何でやるかというと寄付ですよ、善意でもらう、やっぱりそのスタイルでなければ大学というのは成立しない。大学が余りお金儲けをIPでやるというスタイルではなくて、産学連携の意味を大学の研究のレベルをアップすると、アップデート化に使うことが大切で、第一の目標です。
 それともう1つ、非常に重要なのは、第三期基本計画で科学技術イノベーションを推進していますから、大学の産学連携はイノベーションをつくる「場」を提供するという格好、すなわち研究者とビジネスマン、経営者とが出会う場とか、異なった業種の企業が出会って大学の研究者と対話をする場とか、あるいはさらにエンジェルスとかベンチャーキャピタリストも呼んで「場」の提供をする。これで大学自身の研究もレベルアップする。その中から幾つかの種が実って、世の中に出ていくという、こういうふうに産学連携の本当の意味をもう一回問い直す必要があるのではないかという感じがしております。
 以上です。

副主査
 どうもありがとうございます。明解かつ強烈なご発言をちょうだいしまして、本格的な審議の中でもまたこれを踏まえていろいろ議論をさせていただきたいと思います。

説明者
 先ほどのコメントの後半の部分についてちょっと申し上げたいことがあるのですが、企業といろいろIPに関してそれの補償をいただくということを現実に、我々としては大事なことだと思っておるのは、これは決して東京大学法人が金儲けをするためではなくて、要は研究者にインセンティブを与えるための原資がこれしかないということを、ぜひご理解いただきたいと思います。ですから、いろいろな先生がおられるのですが、現実にやはりそういう側面もあるということをご理解いただきたい。我々はそのために企業からいろんな補償をいただく必要があるというふうに考えております。決して法人の金儲けのためにやっているとは全然思っておりません。

委員
 要するに結果として儲けるのはいいんですけれどもね、東京大学の場合には産学連携とかあるいはいろいろ寄付金集まるのは、東京大学だけのことを考えてやらないでほしいんですよ。

副主査
 ご指摘いただいた点はおそらく非常に重要でかつ、これ両極を超える理念が出ない限り日本はうまくいかないと、私が申してはいけないのですけれども、それだけ重要な発言をちょうだいしたと思いますので、本論といいますかこれからの議論の中でもそれをいろいろ対象にさせていただければと思っております。
 ありがとうございました。

委員
 ちょっと気になったことというか、我々の研究者側と知財本部というのは結構この点に関して認識の上でずれがあるのかなという、実は発表を聞いていて思っていたのですけれども。非常に知財本部側はやっぱり自分たちが持っている知的財産なりをどうやって売っていくかという、やっぱりライセンスアウトのお話が非常に多くて、むしろ我々からいうと研究費につながる部分ということで、海外の大学とはベンチャーとの大型共同研究で研究費がほしいという思惑の方がむしろ強いのですけれども、余りそういうお話はなかったのかなという印象を非常に持っています。
 先ほど事務局からご説明がありましたように、国内の大学よりも国外の方が2倍、実際上は日本の企業ですらあると、先ほどのキャノンさんのお話ではないですけれども、それはやっぱり自分たちが売りたい技術を持っていっているのか、それとも企業側のニーズを大学が引き受けるためのスタンスでいっているのかという点が、多分大きな違いなのではないかなというふうに思っています。
 たしかに現状、日本の知的財産を海外で売っていくというのは、これはなかなか日本国内ですら実用化につながらないという批判がある中で、本当に海外の企業が高い金額で契約をするような状況になっているかどうかというのは、非常にまだプリミティブというか、ちょっと先の長い話かなと。そういう意味で現状はやはり国内の特許、そしてそれを国際特許につなげていって、まず足固めをする時期というのがむしろライセンスアウトの感じではそういう時期なのかなと、むしろ海外の企業との共同、委託研究を日本の大学に引きずり込んで、そうした意味での実用化も含めた勉強を我々大学自身していって、実際上、日本のイノベーションの力にしていくという方が、まず優先課題なのではないかなという気が現場としてはしているわけです。
 もちろん、実際に出てきた特許が本当にいいものであれば当然高く早く売れる方がいいのですけれども、実際上、日本の企業との共同研究は同じ日本の企業でも海外には億単位にしているのに、我々のところは数百万とか数千万までという現状から比べると、まずそこを是正したいというのが本音なので、そうした意味ではちょっと論点を整理してですね、やっぱりちょっと違ったお話というのが混じっているような気がしますので、国際的な連携、企業との連携の話とそれから知的財産のライセンスアウトというところをしっかり分けて議論をしていかないと、話としてわかりにくくなるのかなという気がいたしました。
 そういう意味では現場の感じとしては、やはり海外企業からの受託・共同研究を入れるためにはどうしたらいいのか、あるいは日本の企業が海外へ出しているのと同じ金額を我々がもらうためにはどうしたらいいのか、そうした観点で実際にイノベーションの役に立つ大学に変化するための方策というのも、ぜひ議論の対象として重要かなという気がしています。ちょっとコメントというか認識として少し我々の思いと違いますので、その点をまずご意見として言ったようなわけです。

説明者
 私のプレゼンがライセンスの方にウエイトがあったように聞こえてしまったのであれば、それは訂正しておく必要があろうかと思います。その際の問題点も幾つか挙げたのは事実なのですが、一番聞いていただきたかったのは最後の東京大学の提案でございまして、基本的に共同研究を海外から呼び込んでくるためにどういうことが東京大学としては必要だと思っているかということが大事でございます。特に東京大学の場合は、産学連携本部が全部を統括しておりますけれども、具体的なライセンスに関しては東京大学TLOがやっておるわけでございまして、東京大学TLOの業務を私がどんどんしゃべったというつもりはないわけでございまして、産学連携本部としては、軸足はやはり先ほど言われたように、むしろ共同研究をどういうふうに増やしていくかということに重点があるということは明言しておきたいと思います。

説明者
 私も先ほどの意見と一緒でして、ライセンス収入というのは実をいうと、ご存じのようにアメリカでも大体全収入の1~2パーセントぐらいでホームラン特許があっても5パーセント、今スタンフォードが7とか言っていますけれども、通常は大体1~2パーセントぐらいでして、私どもでも仮に1億円のライセンス収入があると人数で割ると50万で世界で1番になるのです。それでも1億円いったところで私どもの全収入は100億円ですし、外部からの研究費は30億円あるわけですよね、だからどんなに稼いだところで、全体の収入あるいは研究費から比べるとはるかに少ないのです。それでもなおかつ、なぜそのライセンス収入にこだわっているかというと、1つはそういうライセンスができる技術を持っているということで社会に役に立つ力が、実力があるということを示したいということが一点。
 それから今非常に話題になっているイノベーションそのものの定義なんですけれども、じゃあ、イノベーションを起していきましょうといったときにイノベーションというのを社会を変革させるような製品なり物をつくっていきましょうということであるならば、実際的にその研究成果だけではなくてそれが社会に反映されて初めてイノベーションといえるはずなので、そうなると必ず製品化にいかないとだめなんですね、そうなると製品化に動くということはライセンスのお金が動くということなので、だから我々はライセンス収入にこだわっていると、こだわっているというとちょっと語弊がありますけれども、もちろん共同研究も視野に入れているのですけれども、ライセンス収入のことも意識しているのはその辺にあるということなんです。

委員
 一連のお話をうかがいながら少し気になったことがありまして、数年前に多くの大学からこういう声が出ていました。日本の多くの企業が海外の大学に対して共同研究をどんどんしていく、それが国内になぜうまく流れないんだと。こういう議論があったのです。しかも海外の大学には非常に大きな契約金額であるが、国内に対してはそうはいかない。その原因のところが実は掘り下げられてなかったのだと思うんですね。この契約問題、先ほど言われたのとまったく私、意見同じなんですけれども、R&Dマネジメントがきちっとできていますか? 研究室で組織的にできていますか? いろんなことが求められているけど、そのあたりが不十分だったためにお金がそれなりのものしかこなかった。海外と一緒にやることのメリットは、やはりそういう厳しい現場を経験することによって大学が国内でもやっていけるようになると、ここにしかないと僕は思うんですね。
 現場の先生方は多分こういうふうに思っていらっしゃると思うのです。今日も先ほど海外との共同研究を増やすことが一つの大きな目的ですというご発言がありましたけれども、これは現場の研究者側はそんな意識ではないと思うんですね。研究費、金を呼び込みたいと、ここにあるわけで、ドルであろうと円であろうとウオンであろうと関係ないんです。自分たちの成果を出してそれが社会のどこかで使われたい。これらが現場の意識だと思うんですね。そうすると海外の共同研究件数を増やすことを目的にしていては僕はおかしいと思うのです。海外共同研究を仮にやったときに大学は何が変わるのか? 何を変えたらいいのか? それが大学にとって日本の社会で生きる大学にとってどういう価値観がプラスされていくのか? どういう付加価値が高まるのか? こういう視点からやらないと、また何といいますか、目的と手段のすり替えみたいなことになりかねないなという感じがしております。
 そういう意味で、今までの共同研究に関してもいろんな観点でもう一度考える必要があるのだと思うのですけれども、何が変わった? この産学連携によって大学は何が変わった? そしてそれから得たものは何だったか? 海外とやるときには何がまた得られるであろうか? そして何が生まれたか? 両方の視点で整理しないと海外共同研究だけとか、それから海外のライセンスに特許出願のことだけが取り立ててまた妙な数値目標になることをちょっと危惧しますね。

委員
 今言われたように数値のみになってしまうという非常に危険性があると思うので、ぜひその辺は注意していきたいと思うのですが、現場の方からの話として我々も最近ちょっとある大学と協定を結ぼうと言われているのですけれども、一番困るのはひな形がなかなかなくて、どうも大学の中はどこにもないのではないかとちょっと心配が最近出てきて、非常にどこへいったい話を持っていっていいのか非常にわかりづらくなってきている。
 多分、知財本部の方でされるのだと思うのですけれども、知財本部の方も相談に行ってもなかなかやっぱり現状を、正直海外というのはやっぱり手が回りにくいというのが今先ほどのお話にもありましたけれども、英語の問題等がありまして非常にやっぱりやりづらいというのが現実だと思います。で、MTAもやっぱりそうですし、全般的に皆さん腰が引けているというか、あまり話として持ってきてほしくないというのが正直本音だというふうにやっぱり感じまして、なかなかワンストップサービスまでいっていないという状況だと思うのです。国内はかなり努力のせいもあって皆さんフットワークよくどこの大学でも対応されているのだと思うのですけれども、そういった意味で海外に対して何らかの形でやはり支援をして、先ほどお話ありましたけれども、ちょっと連携事業をふやして大学の中をやっぱり慣らしていかないと、なかなかお題目として非常に大事なことなんですけれども、現状引き受け手の方はどちらかというと、まず国内での金額を上げるとかやりやすいところから入りやすい傾向があるのではないかという気がします。
 特に先ほどのポリシーの問題もありますけれども、実際にそうしたひな形がいいのかどうかわかりませんけれども、何かどこか支援をするような組織が明確にならないと、これ各大学にそのままふってもなかなか実際のところは難しいのかなと、それだけの方を雇える大学というのもそう多くないでしょうし、どこかやはり全体をサポートできるようなところをつくっていかないと、そうそう各大学の事例の多くない中での多分支援になりますから、国内の今までのやり方とは少し形を変えた支援を考えていく方がいいのかというような気がしています。
 我々教員側もやっぱり海外との交流があっても、なかなかその文書で取り交わすというところまではいっていないケースが多くて、向こうから送ってくるのに対応するだけなので、こちらから主体的に動くとなると急に壁が高くなるんですね。そういう意味で日本からやはり主体的に動くケースが今後ふえてくると思うので、ぜひその辺のサポート体制というのをどうやってやるのか、各大学に任せるのか、それともJSTがいいのかどうかわかりませんけれども、どこかそういうところもやはり使っていくのか、あるいは主要なところに関してはやはり自前で頑張るような形の支援で新しいグラウンド内の枠組みをつくっていくのか、その辺の議論が必要なのかなという気がしますね。

説明者
 ご指摘についてコメントさせていただきたいと思うのですが、海外からの共同研究を増やすことが目的です。国内企業からの共同研究はどうでもいいなんてことは毛頭思っていないわけですが、ただ、申し上げたいのは、たしかに個々の研究者の限りにおいてはどこから入ってこようと同じだということは事実なのですけれども、今まで国内企業が海外の大学へは日本の大学の倍以上出しているとか、そういうご批判を受けているわけでございまして、我々はいろんな角度からの評価に耐えたいと思っておるわけです。決して独善的な評価だけで、ともかくお金さえ入ればいいんでしょうというわけにはいかない立場にあると思っておりますので、やはりそういう角度から評価されてもちゃんと立派にやっておりますというふうに言えるような、今まではたしかにそうではなかったので、そういう状況にいち早くもっていきたいということです。一番欠けておるのがやっぱり海外からの共同研究というのは国内から比べても、やはり余りにも少な過ぎるという状況を改善したいというふうに思っているわけでございます。

副主査
 ありがとうございました。今皆さんいろいろ発言、提案していただいている問題は要は知的財産推進計画2006でも既に宣言していますように国際的な産学官連携を推進するということについては、もう国の方針であり、その観点から大学がこれから積極的に推進していくということについては方向だと思うんですね。しからばなぜ、どのように、どのような効果を整理して目的、構成、効果を理念性的にどういうスタンスでしていくかというところが重要なもう段階かなと、そういうふうに思ったりしておりますので、そんなようなことも考慮して。

委員
 特別に国際的な産学連携の、先ほどの資料6でいうと論点1のところで「意義」の位置づけをもう一度各大学はよく考える必要があるということを、さっき私は言いたかっただけであって、ともすれば変なことになると・・・。
 それからもう1つは、先ほど言われていたように国の方針としてはやっていくことになっていますので、各大学がそれぞれ微妙に違う位置づけをすると思うんですね、国際的な産学連携については。大学ごとである程度のマージンを認めつつやることがポイントだと思いますけれども、特に論点3、この体制強化、連携体制強化を国際的な産学連携を推進する体制を強化するために何が国としてサポートするかということですね。ここの部分がやはりすごく今日の委員会では大事な点なのだろうと思うのです。
 そういう観点で考えますと、単独の大学法人でやれることは限界があるというのは今日のお話の中でも非常に明解だと思います。そうしたときに具体的に例えばJSTの機能をどうするかとか、例えば分野別の強いセクションをきちんとそこにつくるのか、当面はライフサイエンスのところで国際的な環境をやる部分を強くするとか、先ほどの東京大学さんのデータを見ますとそういうデータ、ライフサイエンス分野が非常に多いと、まず出願に関しては。それから次はIT関係のところですね。国際的なビジネスでグローバル競争をやっている分野、この部分を中心にまずどうするのかというようなことが今日のデータから見ると、まず問われているように思うんですね。
 それを各大学が一つずつやっていくなどというのは、これまた非現実的でしょう。どこかにコンソーシアム的なものをつくりながらその上に管理できるエージェントといいますか、そういうものが必要となっているのかなと。しかも件数は全体としてはまだまだ多くはないということになると、うまくエージェントとの間での契約をやればとか、いろいろ議論があろうと思いますけれども、そういった今度は仕組みの方ですね。ほかにもいろいろあろうと思うのですけれども、米国の場合は州によって州法で全部違っていて、弁護士だっていろいろ必要ですし、そういったところまで考えるとカリフォルニアで通じたことがニューヨーク州では通じないということもあるわけです。
 そういったことまでも含めて考えるとやっぱりコンソーシアム的な支援が必要だろうというふうに思います。

委員
 ちょうど今、説明されたのですけれども、先ほど「要は国際産学連携をやることでいったい大学は何を獲得するのか」ということをよく見極めてという話、このテーマの議論はやはり、きっちと最初にしておいた方が多分よいのだろうと思います。
 先ほど、「知財は大学が儲けるためにやっているんじゃないか」みたいな話がありましたけれども、そこは多分今は儲けるためにやっていると思っている人はいなくて、ナショナルイノベーションシステムの中に大学を位置づけるために、知財というツールを使っているのだというふうなコンセンサスがあるのだと思っています。それは国費を使っているから、国益が関係しますよね、問題はそのナショナルイノベーションシステムに資する大学のあり方、あるいは国益に資する大学のあり方というのは何なのかというところに、この国際産学連携という活動がどういう関係を持っているかということを整理した上で、その施策を考えるということだと思うのです。
 先ほど気がつきましたけれども、資料では産学官連携活動というふうに一括りでしてしまっているのですが、幾つかのステージがあると思います。先ほどの国益とかナショナルイノベーションシステムの解釈は、ある幅を今持っていると思うのですけれども、ここで発明されたものはすべて内国消費するんだというのが一番extremeなポリシーですね。仮にそういう立場に立ったときに、何をすべきかというのは、これはもう確実に海外で権利を獲得することで、日本だけで出していたら海外はもうやり放題である、しかもかつ論文というのはまだscientificな知識でしかないですけれども、特許にすることによってその利用方法から何から、さまざま技術的なヒントを相当与えているわけだから、それを国内だけに出すというのは、そういう立場でいえば最悪だと思うのです。だから海外での権利獲得、それからエンフォースメントをちゃんと求めること、またそれができる人材を獲得する、これがおそらくextremeな立場に立ったらそういうこと。
 ただし、それが本当に国益かというところにやっぱり議論がいろいろあって、先ほど「これによってアカデミアがどういう獲得をするのか」という視点は当然あるわけですね。国際産学官連携をまったくやらなければ、これはアカデミアな活性をおそらく失っていくでしょう。じゃあどういう連携をやるのかというときにもっと細かいことをいえば連携の仕方、共同研究なのかライセンスなのか、さきほど余り高度なことをやるのは早いよということを言っていらっしゃったと思うのですけれども、その話はそこの段階になって出てくる話だと思います。その前段の話とは多分関係ない。
 では、その中で知財のライセンスではどういうふうに考えたらいいのか、これはもうライセンスの場合は例えばタームシート上どういう分野なのか、どういう技術定義なのか、独占なのか非独占なのかによってこれは多分また全然見方が違う。さらに国際的なライセンスということになると、例えばもうその分野によっては──とか、あとその国でしか使えないようなものであれば、技術協力的な視点もあるだろうし、それから日本からの投資機会がふえるのかあるいは海外からの投資機会があるのか、あるいは先ほど言われた地域の活性化に結びつけるようなそういう戦略もあり得る、さらにいえば海外のベンチャーに移転をしておいて、それが始動が終わったところで日本の企業が買うというようなこともきっとあるかもしれない。
 イノベータアメリカというアメリカのイノベーションレポートを見ていますと、結局米国の権利を確実に守れということプラス外国の資源をいかに上手に使うかという発想ですね、そういうような発想になってくるとおそらく、国際ライセンスのさまざまな戦略も出てくるかと。しかしそこまできますと、これはやはり一律にこうしろ、あるいは件数をどうしろという世界ではやっぱりないだろうと、そういう意味では、いろいろ指摘があるのはそのとおりで、やっぱりそれなりの戦略性というものを、大学が自分の持っている資源を産学官連携によって何を獲得するのかということを考えた上で戦略を出していくということが一つだろうと。それらの中の共通項を支援対象にしていくという、多分そういう整理になるのではないかというふうに思います。前段に申し上げた部分は共通項ですね、海外の権利獲得のための人材、それからそのシステム、場合によっては支援対象にしてエンフォースメントをどうするかというようなこと。
 それから後半申し上げたことについては、これはちょっとポリシーというかその戦略をどうやって大学が立てられるようにするか、そこの支援ではないかという気がいたします。

説明者
 私は現場に毎日おりますので現場の方からの意見としますと、一ついえるのは海外でやっておられる先生方というのは非常にやっぱり活性化している、大学の活性化ということに関しては間違いなくその先生方は非常にアクティブです。それで海外でしかやらないかというとそんなことはないですね、日本でもやられるし、私どもは大学が小さいので全体が見渡せるのですけれども、やっぱりそういう方は上から数えた方が早いぐらいすごい力を持っていらっしゃる。私どもは大学の理念で国際社会で指導的な役割を果たす研究者の育成を挙げていますが、これは多分どこの大学もミッションとして持っておられると思うのです。そのためにはやっぱりそういう先生方が必要です。
 私が中で話したのは、まず一義的には研究者をサポートできる体制をとりたいというふうに思っているので、決して別にそれは海外とやれやれといっているわけでもないし、少なくともその方々がやりたいのだったら、我々はそれを支援する体制をとりたいと、それがないがためにせっかく本人がやりたいと思っているのに契約ができないとか交渉ができないということになってしまうと、全体として活性化に役立たないということになってしまいます。ちょっとおっしゃっておられましたけれども、大学というのは研究者がやっぱり一番にきますから、我々はその人たちの一番動きやすいように、してあげたいと思っています。それでやっぱり大学によって教員の考え方が違う、そこのところから大学のポリシーが決まっていくのかなという気はしています。

委員
 先ほどこのライセンス契約にこだわるとかこだわらないとかいう話がございましたけれども、私は大いにこだわるべきだと思います。イノベーションの達成の最終目標というのは社会的要請に応えるということですね、安心・安全とか健康とか社会的価値を増大するということと、もう1つは経済的価値の増大というのが達成にあるわけですから、イノベーションの最終的なゴールを考えれば、ライセンス契約をして大学発でリターンを得るというのは成果であり、評価がされたということですからそれは十分意味があることだと、だからこだわるべきだというのが私の考えです。
 その場合に、国内でのトレーニングを十分積んでから海外に行った方がいいですよという大変比喩的な言い方をされて、そういうものなんだろうというふうに思いましたけれども、そうはいっても日常的に発生してくるこの海外との契約問題を先送りするわけにもいかないので、これは走りながら飯を食うようなことをやっていかなければならないと思うんですね。そして人材育成とか確保とかそういう問題も多数あると思うのですが、ここはライセンス契約を結ぶ前のノウハウ、そういうものを等しく全国の大学、研究機関が共有するために例えば奈良先端大とか東大とか先行しているところが経験上得られたノウハウ、そういうものを共有するような場を国が先導してつくって、そして国全体をインフラの一つとして確立していく、基盤をつくっていくということが必要だと思うんですね。
 先ほどのコメントの中で東大は大学の頂点にあって、東大がやることはそれ以外の大学にも分け与えていくというような意味のことがありましたけれども、やっぱり東大に限らず、奈良先端大だってすぐれた成果を出して海外とのライセンス契約の引き合いがあるということは、競争力を持っているという意味なんですから、それはもう誇っていいことなんですね。ですからそういうノウハウ、実際、こういうことをやっぱり一つの大学だけでなくて、多くの大学の人たちにそれを教え、あるいは研究材料として提供すると、そういうことを何か場をつくって、国がやらないとなかなかそれは難しいと思うんですね。そういうことをぜひやってほしいなということを思いました。

委員
 一部同じ意見なのですが、国際的な産学連携活動と一概に言っているわけですが、今国立大学にしても私立の大学にしても国際的に耐える発明ができる大学とそうでない大学は明らかに分かれていますので、それを全体をひっくるめて全部同じ評価をするのは、これ間違いじゃないかなと思います。やはり先導していく大学、今日ちょうど2つの大学からおみえになっていますけれども、これらの大学から発信していただいて、まだこれから成長してくる大学の方にいろんな情報を与えて頂きたいという感じがするのです。
 端的なことを言いますと、地方の大学へ行きますと、地方を活性化するということで、まず地方の産業の育成ということに今力を入れています。そこで急に国際的なという話をされてもしょせん無理なところがあるのかなと思います。しかしながらその様な地方の大学の中でもキラッと光るのが出てくると思いますので、そういうものをうまく育ててあげるシステムづくりが必要だと思います。そういう点から考えると、超有名な大学は別にして、地方大学の中で非常にすぐれた発明が出てきたときには、それはその大学単独の特許として外国でも権利を確立して、共同研究とかということではなくてライセンスに結びつけていくような方向性を何か国の方で出していただけると、よりやりがいがあると思います。
 なぜ、こういうことを言うかというと、例えば中小企業が、自己で開発した発明・特許を日本の大企業とタイアップしてさらに何かしようとしても現実にはなかなかできません。残念ながら外国の企業は話に乗ってくるのですが、日本の企業は話にも乗ってこないというケースというのが結構あります。これと同じことが、日本の大学発明に関して日本企業と外国企業との関係で起きてくる可能性があります。そこで逆に、日本の大学発明が、外国企業にどんどん採用されていく例をつくって頂き、日本企業に日本の大学発明にもっと関心をもっていっていただければと思います。

副主査
 ありがとうございます。東京大学からの発表の中に現状の問題点、今幾つかご指摘ですけれども、ほとんど出ていましたですね。ですからこのようなことを現実的に整理対応していくということは非常によいことだというふうに思っております。

委員
 今日は一緒に働いている知財本部の方々が一緒にいる中なので非常に発言しにくいのですけれども、私たちは、まさに本当にライセンスにこだわっているというか本当に技術移転することにこだわって日々活動しております。やはり先ほどもありましたように、これはこだわるべきであるというふうに私たちは思っているのでこの仕事をしているわけなんですけれども、もともと大学の先生方というのは、やはりアカデミックに興味があるからということもあるとは思うのですが、やはり世の中の役に立つために基礎研究をされたり応用研究をされたりということがありますので、やはり外に出て行かなければその研究の価値がなくなってしまうと思いますので、そこを外向けにどう発信していくかという意味ではそのライセンスというのは非常にこだわるべきところだと思っています。
 実際、私本当に現場にいまして、やはりライセンスに成功するかもしくは興味を持つという企業が出てくると、やはり先生方の目って変わるんですね。ですので、非常に大学の活性化というか研究者個々人のその活性化という意味では、共同研究もすごくお金が入ってくるということでは重要だとは思うのですが、その技術が評価されるという視点においてはすごくライセンスというのは重要だと思っております。
 実際、私たちもこんな事例がありまして、この研究はもうこれで終えようと思ったというような研究自体も私たちがヒアリングに行って、これおもしろいですね、ぜひ外にマーケティングさせてくださいということで、そういう案件を発掘したケースがありまして、結局その先生はやめようと思った研究がさらにまた継続されて拡がっているというケースもございますので、この活動は止めてはいけないというふうにそういうケースからも考えております。
 あと、共同研究に関してはたしかに国内の大学と海外の大学の研究者の意識の違いというのはあるのですけれども、やはりそこをうまく仲介しているファンクションを担っているような知財のマネージメント人材というのも、やっぱり海外と日本では違うのではないかなというふうに思っています。
 プロジェクトマネージメントという視点では、今まだきちんと大学の中で大型の共同研究をして何をするのか、どういうスケジューリングをするのかというところに関しては、今まで研究者任せだったので、今後は本当にきちんとマネージメントするような人材を配置して、きちんとアウトプットを出すことを目的としたちゃんとマネージメントをしていかなければならないとは思います。ただ、それを各大学で配置できるのか、小さな大学はまたそういう人材を置くこと自体も難しい場合には別のファンクションというか、別の組織がサポートするというようなことも考えなくてはいけないのでないかと思っているのです。

委員
 基本的にはもう皆さんがおっしゃっていることの繰返しになってしまうかと思うのですが、私も現場で起業家含めて大学等で技術移転の点でやはり国際的なものを視野に入れないでこれから起こそうという人は余りどうもいらっしゃらない。だから東大や奈良先端大の先生がおっしゃられたように、やっぱりもう当たり前に思っている。ただ、それがどうやったらいいかわからないというのが本音で、従来から出ているようにやはりロールモデルというのは絶対に必要だと思うんですね。そこのロールモデルをある一つのコンソーシアムが常に出していく、で、国際というのは非常に変わりやすいのでそれをいろんなケースを出してあげようという仕組みは一方で必要で、これはまさに国が支援していく大切な要素だと思うんですね。
 先ほど出ました地域活性化で国際的なところまでなかなかいかないという地域も当然ありますけれども、地域活性化のところにもう既に国際化がなければ地域活性化はできないという現状も一方ではあります。ですから、この国際化の中の共通部分のものといわゆる個別の多様化というものをきめ細やかに出していかなければいけない時代なので、そういう意味での支援はまさに国、行政の方から音頭をとっていただく重要なものだと思います。大体産学連携自体がもう異業種といいますかいろんな価値の総合なので、それに国際が入るということはそんなに違和感がないということで、ただ細やかな実務的なところ、ですから必ず出てくる人材のところ、人材でも研究者の人材をどう国際的にするかといった、もう1つは事務系人材をどうするかというようなところで、東大の場合もそれから特に奈良先端大では人材を企業で海外の経験の非常に長い、なおかつ国際的経験の長い方が大学というところに入り込んでいったときの、そこに集成していった部分というものを全体の共有部分として出していただくのも一つのマニュアルづくりに役立つのではないかなというふうにすごく思ったものですから、東大の例もそうなんですけれども、そういう例とあとは地味だけれどもこつこつと国際化を進めていくような事例というものが見えてくると、ほかの大学も、「あっ、自分たちもそんなに遠いものではない」と思って、そういうものが必要なんだなという気がしました。

副主査
 どうもありがとうございました。大変重要な議論が展開できたと思います。まだまだこの問題は尽きることはないとは思いますけれども、そろそろ時間でございますので、今日は東京大学と奈良先端科学技術大学院大学に非常に貴重な話をちょうだいし、それを踏まえた議論もできたわけであります。本当にありがとうございます。

事務局  どうも本当に今日はありがとうございます。貴重なご意見をたまわりまして今後こういったご意見を踏まえてやっていきたいと思っていますが、実は平成13年の11月に産学連携サミットを経団連で開催したときも、もうこういう国際産学連携の話は出ていたわけです。本日、様々な問題について正面から議論していただきまして、本当にありがとうございました。少しでも今日出ていたご意見、例えば国としての戦略のスタンスやポリシーを一つ一つ議論していって、大学の今後の多様性というものに対してどうやって支援していくのか、どうあるべきかという議論を詰めていきたいと思っています。
 その意味におきましても、小委員会としてはこの内容についての御審議は初めてだったのですが、もうほとんどかなりの意見は出尽くしたかなとも思っておりますし、今日のご意見を踏まえましてさらに次回に向けて事務局としても資料を整理させていただいて、皆さんにご意見をたまわればと思っています。今日は本当にありがとうございました。

5.今後の日程

 次回については、7月24日(月曜日)午後3時~5時に開催する旨事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)