大学知的財産本部審査・評価小委員会(第15回) 議事録

1.日時

平成19年7月25日(水曜日) 10時~12時

2.場所

キャンパスイノベーションセンター 1階 国際会議室

3.議題

  1. 今後の大学等における産学官連携・知的財産活動の推進施策について
  2. その他

4.出席者

委員

 石田(主査)、飯田、生駒、石川、澤井、田村、馬場、松重、三木、森下

文部科学省

 佐野研究環境・産業連携課長、小谷技術移転推進室長、吉田技術移転推進室室長補佐、井出研究環境・産業連携課課長補佐 他

5.議事録

(1)今後の大学等における産学官連携・知的財産活動の推進施策について

(2)その他

 事務局より資料2、資料3、資料4、に基づき説明があり、委員による自由討議が行われた。その内容は以下のとおり。

午前10時 開会

【委員】
 では、口火を切るという意味で、全般的な話で2つほど意見を述べさせていただきたいのですが、全般的にここに書いてあることに対する反対意見はまるでありませんが、ちょっと足らないのではないかという意見です。1つは知財に対する特許収入が増えたという表現になっていますが、増えるということは必然なわけで、最終的には財務バランスをとるという方向性が出ているのですが、今現在、投資68億円に対して数億しか収入がない、これはかなり大きな財務バランスとしては悪いことになっていて、現状だけで議論すると、これでは縮小傾向にせざるを得ないという結論が出てしまうので、そうではなくて、将来に向けてこのバランスを上げていく方策が必要なんだと、だから、投資を減らすという方向ではなくて、ある程度、わきまえた投資をし続けながら、このパーセンテージを上げて、つまりトップ収入を上げていって全体のバランスをとるんだという論を多くする、一部にちょっと書いてあるんですけれども、そのときに最終的にどこまで持っていく、つまり現状で議論できないので将来で議論することになるので、資料の中にはMITの例が、MIT1大学だけで日本の大学全体の特許よりも多いわけで、こういったものも外国の例を引きながら、そこへ持っていくという目標設定が必要なんじゃないかという気がします。
 目標設定のやり方ですが、他国の大学の現状を目標にしてもいいし、よくやる研究費に対するパーセンテージ目標にしてもいいし、GDP比だと2段階、 GDPに対する研究比率は日本は低過ぎるんですが、そのGDPに対するあれでもいいんですが、何らかの目標設定を未来に対してしておく必要がある。数値目標が嫌ならば数値目標をぼかした形でもいいんですが、それが必要なのではないかというのが1つ。
 もう1点、別の観点ですが、人材の育成というときに、ここで記述されている人材の育成は知財人材、つまり人を扱う側の人材ですが、もっと広く研究者の人材育成の中に知財マインドをどうやって埋め込んでいくかという意味での人材育成、つまり研究者の特許マインドがまだ低いと思うんですね。特許マインドや特許のスキルを研究者側にどうやって植えつけていくかという視点が欲しいかなというふうに思っています。
 それで、それをもう少し2つに分けますと、1つには研究者そのもの、かつ研究者が特許なんか忘れて研究しているんですが、出た成果を特許なんか無関係に発表してしまう研究者がまだまだ多いので、これをどうにかする。それで、何という言葉を使っていいかわからないですが、データマイニングになるな、パテントマイニングのような大学の中でやられている研究の中で、特許性の高いものは外していくといったような人材というか、研究者のマインドの意識変革、これを促す姿勢が必要だ。
 もう一つ、今度は意識という意味では、企業の側に意識変革をもう少し強く求めてもいいのではないかという気がします。企業の側の大学の知財、ある大学の研究に対するマインドは大分よくなってきたんですね。まだまだ企業の研究と大学の研究の役割分担というものをうまく活用できるような方向の議論が少ないような気がしますので、もう少し企業の側にも我が国全体の産業構造あるいは研究開発の構造の中の役割分担を意識しながら、共同研究を進めてもらうというような要望を出してもいいのではないかと思います。
 以上です。

【主査】
 ありがとうございます。非常に重要な指摘だと思います。
 ほかの委員、ございますでしょうか。
 どうぞ、お願いします。

【委員】
 この要綱というか案ですけれども、現状としてはよくまとめられているという印象を持っています。今、先生も言われましたけれども、ちょっと私の方も別の観点から、一、二点、こういう視点での配慮が必要かなという点を述べたいと思います。
 1つは知財の在り方の多様性という視点です。最近は知財でも特許の在り方そのものが非常に変わってきていて、一種のオープン知財戦略とかの、新しい視点が主流になる場合があることも将来的には取り入れないといけない。つまり、知財というのは発明者の権利を明確にし、その権益を保障するというのが必ずしも知財の社会貢献やその普及に最善の方法とは限らないという場合もありうるということをどこかで言及して頂ければ。
 それから、もう一つは海外、国際という視点がこれから重要だという話があると思いますが、これについても余り過度に強調しますと、いわゆる知財という形のナショナリズムというか、経済戦争的な色彩もでてくると危惧されます。もちろん、各国が知財戦略を立てて、それぞれイノベーションの創出という形で努力することは必要だと思いますが、例えば環境であるとか、エネルギー問題であるとかそういう地球規模、共通の課題に対してやはり先に述べましたオープン性を取り入れた新たな知財戦略といいますか、それぞれの国が権利を主張するのではなくて、もう少しグローバルな視点で知財の海外戦略を考えるときには日本が今後率先して、提起していくべきではないかなと思います。
 具体的には、例えば、中国での環境問題とか、エネルギー・水問題があるわけですけれども、すでにこの分野で日本の国、企業が持っている特許を中国の方で使ってもらう。個別の特許では適用出来ない技術を包括的に統合して提供するというようなグローバルな視点、新たな視点というのもどこかに盛り込んでいただければと思うのですが。

【主査】
 ありがとうございます。非常に重要な指摘だと思います。グローバルな目線というのは随所に出てはいたとは思うんですけれども、もうちょっと指摘点を。

【委員】
 私の話は多少、総合的、今後検討すべき事項だったと思いますので、むしろこれからグローバルな国際的な知財の在り方を考える際の参考事項、検討課題としていただいてもいいと思います。

【主査】
 ありがとうございました。
 知財という場合に特許だけではないということについては、今回もソフトウエアについて触れていただき、MTAについても触れていただいていますので、かなり内容的にはよく整理できていると思うんですけれども、ノウハウ又は特許の周辺にあるいわゆるソフトウエアであるとか、そういうことについて、どれだけ国際的対応力の中にファクターとして示していくかということ、今の先生の話でそういうことも含まれていますか。環境問題は今言っていただいた。

【委員】
 ソフトウエアの分野でもいわゆる著作権の問題がありますよね。いろいろ世界でも問題になっているところが現実にはあるわけですから、日本の国や、大学のソフトウエアの在り方についても私は先ほど少し総論的に話したかもしれませんけれども、それを世界が対象の場合には、どうあるべきか新たな視点はないのかという検討も必要では無いかと考えています。例えばIBMとかは、オープン戦略を行っていることが知られており、またリナックスの場合でもわかるように、新しい技術開発というのは特許を所有するというのが必ずしも技術の一般化といいますか、商用化に最適な方法であるというわけではないという現実もありますので、大学から出た技術をいかにまた最大限に社会に還元できるかという視点が重要であり、単に特許だけ、占有権を確保するかが最重要ではない、そうした視点を強調させて頂きました。

【主査】
 わかりました。ありがとうございました。
 ほかの委員。どうぞ、お願いします。

【委員】
 今の論議にも関連するんですが、ソフトウエア等の活用の課題と活用の促進というのは大変よく盛り込んでよかったと思います。ただ、表現が例えば13ページの真ん中辺の4の活用の促進というところの最後が何か遠慮がちに書いてありますね。「体制の整備について検討を行うことが必要である」と。これはやっぱり積極的に取り組むべきじゃないですか。それとコンテンツビジネスはこれからは特許技術と、それから著作権、商標、意匠、そういうものの組み合わせで進むわけで、ここのコンテンツビジネスという、あるいはライセンスビジネスと言ってもいいと思うんですけれど、そういうものがかなり大きく産業界に出てくると思いますので、ぜひ、ここのところはもうちょっと積極的に書いた方がいいと思います。
 それから、もう1点、10ページの「国際産学連携・情報発信機能の強化」ですが、もちろん、これでこの文言と強化ということについては結構ですが、ここには知的財産に関する情報交換を行うということで、知的財産のことしか書いていないのですが、海外の企業が日本の大学の研究者に抱いている関心は、現在、出願されて公開されている特許案件じゃないというふうに聞いています。研究者の頭の中にどういうものがあるのかという研究内容、それから近未来に発展するであろう研究者の能力、そういうものに非常に注目を持っていると。これはアメリカで特許事務所をやっている日本人の向こうのパテントアトーニーで日本のアトーニーでもありますけれども、ヤグチタロウさんという人が言っていますが、アメリカを初めとする海外の企業が日本の大学研究者が何をやっているかということについては、それなりに関心を持っている。しかし、現行、大学から出てきている特許の案件についてはほとんど関心を持っていない。そういうような言い方をしています。
 ですから、ここの情報発信機能の強化、もちろん、研究内容は全部しゃべってしまうというわけにはいかない点があると思うんですけれども、何か産学連携の中に知的財産にとらわれないものが必要なんだということをヤグチ特許弁護士も言っていますので、そういうことを盛り込んだものがやっぱり必要かなというふうに感じました。
 以上です。

【主査】
 そうですね、大変重要な指摘だと思います。
 5ページのところに特許出願件数の増加ということで強調されていますけれども、委員からの指摘、研究内容等の情報発信ということもありましょうけれども、核特許ということで国際競争力という観点からいえば、特許の数というのはやはりまだまだ重要だという認識は前提だと思いますが、そういう認識でよいですか。

【委員】
 はい。特許の数は入っています。

【主査】
 ありがとうございます。
 ほかの委員、どうですか。どうぞお願いします。

【委員】
 ライフサイエンスの部分ですけれども、3つ指摘してあるんですが、御承知のように、これは臨床研究そのものの基盤整備、臨床研究そのものを強化するというのがベースのもとに、特にアカデミアはほとんど行われていない現状でこういうことを言う前に、文科省もライフサイエンス課が橋渡し研究拠点をつくりましたし、それから内閣府がお金、計画を出していますし、それから我々のJSTのセンターで先を行くICRという概念を出して、臨床研究基本法と臨床研究コンプレクスをつくれと。そのコンプレクスの中に産学官連携センターをつくれというのを出していますから、もうちょっと基盤整備から始まった方がいいんじゃないかということが1点。
 それから、もう1点、ちょっと違った点ですけれども、今度は地域のプライムを私は非常に重要視していまして、地域の大学における地場産業ですか、あるいは地域の経済活性化のための大学の財務の活用という点で、これをもうちょっと大きめに持って、例えば知的クラスターが今までどうだったのかと、あるいは本当に役に立ったのかと、それから、もう一つ経産省があって産業クラスター、我々のセンターでも地域イノベーションという点で大学の役割を少しきちっと定義しましょうと思っているんですが、もうちょっと書き込んで、その背後にあるのは、今、文科省の高等教育その他やっています、大学のCOEを使ってトップランクをつくろうということで、実は地域における大学の多くのものがボーダーラインの下に来ちゃって、研究ができない状態になっているわけですよ。
 ですから、本当の地域の活性化には地方大学の研究を活性化するような別個の施策をしないと、そこの部分が死んでいってしまうと。そこも少し今後重要なものとして、地域を目的としたCOEのようなものをつくるようなことも考えていかないと、多分、今、生き死にの状態、教育専門の大学になっていただくのは非常に結構なので、私はそれを奨励しているんですけれども、地域の活性化から見ると逆にマイナスですから、そういう視点もちょっと入れた方がいいのではないかという、その2点を御指摘させていただきたい。

【主査】
 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ、お願いします。

【委員】
 今、ライフサイエンスの話が出ましたので、ちょっと引き続きということで、7ページのところの課題で、ここには一般的なことを書いているんですけれども、最近、官民交流で文部科学大臣が入られての3大臣と製薬企業とのトップ交流とかもあったというふうに聞いておりますので、そういった内容も少し盛り込んで書かれたらどうかなというふうに思います。特に産学交流の中で日本からの大学での産業育成というのがかなり大きく取り上げられてきていますし、それからライフサイエンス産業という中でもバイオベンチャーの育成とかの考えも出ておりましたので、ぜひ、もう少し、このあたりも膨らませていただければと思います。
 ちょっと、それに絡む話題なんですけれども、利益相反のマネジメントに関して、厚生労働省の厚生科学課の方でも何か厚生科研費に絡んで利益相反の話をしているらしいんですけれども、極端に文科省の内容とどうも違う内容が議論されているようで、先方ではものすごく厳しい話が広く出ているらしいんですね。政府として全然一体性がないんじゃないかというふうに思いますので、全体的な流れとしては先ほどのライフサイエンスサミットなり、あるいはイノベーション 25なりの議論がありますので、やはり大学というところを中心にして、利益相反のマネジメントは各省庁でもう少し連携をとってもらった方がいいのではないかと思います。どうも、今、伝え聞いている話によりますと、一切、禁止に近いような極端な議論がどうも向こうではされているというふうに聞いていますので、ちょっと、そのあたりもぜひやっぱり政府としての取組ということで、特に大学についての利益相反のマネジメントは文科省のお話だと思いますので、このあたりもしっかり御検討いただければと思います。
 それから、6ページのところですけれども、生産額、企業売上高が伸びているという話、これは非常に大きなポイントだと思うんですが、もしデータがあれば雇用の数もたしかあったように思いますので、雇用がどれぐらい増えているかというお話も、このあたりに書き込んでいただくのもいいのではないかなというふうに思います。
 それから、ちょっと、これはどこでだかわかりませんが、国際連携が重要だという話題の中で、大型連携というのがその前のときにちょっと議論があったと思うんですが、今回、京大の方でアステラスさんとの大型連携をされるというのが出ていましたけれども、かなり大型連携の事例というのは各大学で今上がってきていますので、日本国内企業とのそういう大型連携が進んできた中で、国際連携がまだ十分ではないという形の書き込みの方がいいのではないかと思います。産学連携の成果で、従来の小型ではなくて、かなり産業界と大学が一体になった形も出ていますので、そのあたりもどこかに事例を書き込んだ方がいいのではないかというふうに思います。
 それから、あともう一つ、先ほどの意見の追加ですけれども、ちょっと話が飛んでしまうかもしれませんが、最後のところの国の支援の在り方ですか、ここも何か重要であるというようには書いていますけれども、どうするかというのは余り出ていませんので、ぜひ国としてそれに対して支援をする政策を考えるというあたり、もっと積極的に書かれたらどうかと思うんですが、最後が「重要である」で終わっていまして、何をするのかがちょっと見えてこないように思いますので、ここも先ほどの御意見と同じように、もっと積極的な取組を書かれたらどうかというふうに思います。

【主査】
 ありがとうございます。わかりました。
 ほかにございますでしょうか。いかがでございますか。

【委員】
 まとめ全体はこういう形の議論が進んだというふうに思っております。全体を整理したのを見てみまして気になるのが大学法人の「自立」、いわゆる“自分で立つ”という点です。これは、経済的自立のことが含まれた言葉で書かれております。ところが実際に知財・産学連携活動で「自立」という点では、ほど遠い状況にあると思います。
 そういう中で、例えば民間との連携であったり、これもビジネス的な連携であったりします。地方では自治体、地財法との関係とかでも、そういった幾つかの課題があると思います。この表現では、大学法人自身が自立の観点でいろんなことを意思決定しなさいと、その例示の細かいのがいっぱい出てきたというようなふうに、大学法人の中枢部は見てしまうだろう思います。そういう意味でいいますと、多分すごく大事な点として財務的な分析とか、それから中長期の財務分析的な、そういう研究のようなことを国が中心にやり、大学の参考になるようなことをしていただくといいのでしょう。こうしたことは国の施策として非常に大事なことではなかろうかというふうに思っております。その辺だけが全体を見て少し不足かなという点で気づいたことです。

【主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【委員】
 今のお話と一緒で、僕もちょっとぱっと見た感じ、例えば9ページのところですが、「知的財産本部の経済的自立が肝要であり」と書いてあるんですけれども、データ集か何かを見ると4割がこの支援事業でやっていて、企業から見ても知財部が財務的に独立して活動をやるなんていうことはあり得ないので、やっぱり、そこのところをちょっと勘違いしてしまうような表現は、もうやめた方がいいと思うんですね。
 やっぱり、先生がおっしゃったように大学が法人化した時点で、大学自体全体がどういう財務構造の中でマネジメントをやるか、そのためのガバナンスをどうやってやるかということの一つのセクションとしての知財があるので、そういう意味では産学連携も含めて目標設定も、先ほど先生がおっしゃった、要は絶対の本当の技術を世の中に出していくためにいろんなことをやっているはずなので、単にライセンス収入だけで財務的なものを見ちゃうとややミスリードするとか、そこら辺も大きなセッティングはちゃんともう一回やり直して、先ほどおっしゃった雇用の拡大みたいなものも一つの評価指標ですよと、中長期のところの見方を何かもう少し入れておいた方が全体としてはいいんじゃないのかなという感じがします。
 それから、もう1点は、よく僕はわからないんですけれども、「産学官」と書いて連携の話をしているんですけれども、要するに「学」の主体の話だけで、ここの言っている「官」というのはどういうセクターを指していて、そこと学と官の連携とか企業との3つあるわけですね。そこの連携の話が余りないので、一体、そういうところをどういう方向に持っていって、ある種の研究開発のリスクマネーをどこが持って、知恵はどこが出すんですかというあたりは、知財に取りかかるもっと前の状況のところのある種の創造行為のところを何か関連づけて書かれた方が、企業でやっていると研究開発があって知財がありますから、そこの前段部分とのリンケージがもう少し僕はあった方が国としてはいいんじゃないかなと感じました。
 以上です。

【主査】
 ありがとうございます。
 先ほどの発言に関して、事務局より、何かコメントはございますか。

【事務局】
 確かに私も前職は高等教育局におりましたので、国立大学法人運営費交付金が今1パーセントずつ削減されている中で、非常に厳しいということで、そもそも知財本部のみならず大学全体の財政基盤を強化するというのが省としては重要な課題で、今回の骨太の方針の中でも基盤的経費は確実に措置するということを盛り込むために、本当に省としては一生懸命政府内で努力して、書き込んだというような経緯もございますので、少し私も書きながら思っていたのは、自己財源という書き方をここの中では、そういった基盤的な経費となる運営費交付金ですとか、あるいは科研費などの競争的資金とかあるいは受託研究収入と、そういったものを自己財源という書き方でしているのですが、確かに大学の関係者の皆さんからいうと、自己財源というとやっぱり授業料収入とか病院収入であったりとか、そういったものをイメージされるかもしれませんので、運営費交付金をどんどん削られていって、確かに知財本部は御指摘のようにまだ、私どもは今、43 件整備事業を行っておりますが、4割はその整備事業の資金でやっているという現状がありますから、それも削られていって、どうやってそんなことができるんだという誤解は与えないようにした文章をちょっと工夫させていただきたいと思います。

【主査】
 ありがとうございます。
 どうぞ、お願いします。

【委員】
 そのあたりも含めて、やはり知財とか産学連携が単にライセンス収入や外部資金の確保などが目的というとそうではなくて、いろんな波及効果、ここでちょっと経済効果ってあるんですが、広い意味での大学の貢献につながるというところをもう少し強調しても良いのでは。
 それから、官の話があるんですけれども、地方でいいますと「官」とは言わないんですね、「公」という言葉を使っている、「産学公連携」と。特に規模が大きな大学、小さな大学関係なく、やはり地域との連携が非常に重要になってきており、例えば京都の例もそうなんですけれども、大学と地方自治体そして中小、ベンチャーを含む企業群との連携が大きな活性化を生み出しつつあります。特に国際的なプロジェクトを行うには大学が一つの重要な核になり地元もそうした役割を期待している。
 知的クラスターの話もありましたけれども、知的クラスターはプロジェクト研究ですので、知財をどうするかということも課題事項としてあります。自治体というか財団法人が知財の管理運営をやるんですけれども、やはり長期的な視点で考えて大学もそうした知財をある程度系統性を持って対応しないといけない。それは、狭い意味での自前財源ではなかなかできない話なので、やはり知財経費は常に見直しは必要ですけれども、長期的な知財戦略に対応できる予算をどこかで確保するというのはやはり大学の一つの大きな重要な使命だと思います。だから、もう少し広い意味での大学の知財の役割をどこかに盛り込ませていただければと思います。
 それから、一番最後の18ページの18行、「イノベーションの創出に向けて、産学官連携・知的財産活動はますます進展して行く」という文章ですが、これは文章がぽんと入っていて、何か自動的に進展していくような感じなんですけれども、このところは重要な事項であって、これをさらに進めるためには国としての中長期的な視点が重要であるという形に結んでいただいた方がいいのではないかなと思います。

【主査】
 そうですね、ありがとうございます。
 区切りはほとんどなく、全般にわたって発言をちょうだいしております。このまま進めたいと思います。
 何かございますか。

【委員】
 ちょっと細かいことになりますが、内容的には国の支援の在り方と、それから学・学間特許です。多様な産学官連携体制の構築ということですが、最近、現場にいて心配になってきましたのが基本的な発明をした先生あるいはある大学を定年退職間近に発明した先生がその大学から他大学へ移っていったときに、学校間の連携をうまくやらないと、結局、その技術というのは特許関係が複雑となり使用できなく死んでしまうことになります。各々の大学が個別に権利を持ち主張すると、企業が使えないということにもなるものです。コンソーシアムというような形ですか、国公私立大学間のコンソーシアム、17ページ、10行ぐらいですが、ここらの文章のどこかに、発明者たる大学を人材が大学間で移籍したときにでも、産業界がその発明を問題なくきちっと利用できるような知財管理のシステム構築ということを、入れていただけると有り難い感じがします。よろしくお願いします。

【主査】
 進行が前後してしまいますけれども、副主査から指摘の「産学公」、「産学官」というのは知財の推進計画等で「産学官」というワーディングがほぼ定着していると思うんですけれども、それについてこだわりますか、「産学公」。

【委員】
 いいえ、こだわりません。

【主査】
 わかりました。では、それで結構です。

【委員】
 こだわりませんけれども、「官」と言った場合はどうしても中央という意識があって、やっぱり、今、地域イノベーションの重要性がかなり言われているんですね。そのとき、そのところの記述はやっぱり自治体も重要であるというところをもう少し強調していただければと思います。

【主査】
 これは、事務局より、何かコメントはありますか。

【事務局】
 御指摘のように平成15年4月に委員会で出していただきました「新時代の産学官連携の構築に向けて」の中では、官として「(公)」というふうにきちんと定義しておりまして、国立試験研究機関、公設試験研究機関、研究開発型独立行政法人等の公的資金で運営される政府系資金研究機関を指すということをきちっと書いておりますので、ちょっと、そのあたりを明確にさせていただきたいと思います。

【主査】
 そうですね、ありがとうございます。
 すみません、どうぞ。

【委員】
 すみません、細かいことですが、ここで中心的に書いている人材育成ということが一般的に重要になると思うんですけれども、学内だけでは人材は不足しており、それより外部とのいろんな交流によって、人材を促進するということがよく書かれています。そこで、是非さらなる大学内の交流という、人材の流動という視点も入れていただきたいと思います。確かに、若干13ページに人文社会系を含んでの知的財産の活動を強化するということ、14ページの事業化の支援の機能を強化すると明記してあります。ただ、実際の現場の方にお話を聞いていると、やはり文系と理系の交流が必ずしも促進が十分になされていないようなので、外部からの人材に頼るのではなく、情報工学や経営学の人たちとの交流によって経営陣が生まれるようなプログラムも幾つか取り組んでいる学校もありますので、むしろ学校内での人材の交流の促進的な機能というものを、どこかに盛り込んでいただけたらと思いました。よろしくお願いします。

【主査】
 そうですね、ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。

【事務局】
 一通り先生方のお話がありましたが、先生方にお聞きしたいことがありまして、大学と地域と企業と特許取得というその4点に関してです。私もおかげさまで、色々な大学あるいは企業に行かせてもらって、常日ごろ感じたことは、大学や高専にやはり独創的、先進的なシーズがあることというのは産学連携の大前提であるということです。その大前提については、やはりこういうところでも今までも相当言われていることではありますが、大学全体の活性化ということ、産学連携のためにも大学全体を活性化しなければいけない。そのためには大学等に独創的なシーズがあることが大前提であるという、そういうことについてはどうかということと。
 2点目は10年くらい前から地域共同研究センターが大学で立ち上がり、VBLも立ち上がり、知財本部も立ち上がり、大学においては結構それを統合化したりとか、一体的な運用体制というものをやり始めている大学もあります。そういうことをやり始めている大学は一部の先進的な大学だと思っていますが、多くの大学においては、まだまだ例えばVBLも地共センターと協力し合っているかというとそうではなくて、独自に動いているというような点も多々見受けられるような感じがいたしました。
 何を申し上げたいかというと、産学官連携を担うようなところについてはやはり組織の効率的運用というのをどう図っていくかというのも、大学自身にとって非常に重要ですし、産学連携の実を上げるためにも非常に重要であるというような感じがしていまして、例えば14ページあたりではそういう大学全体の一体的な運用ということが、外から見ても非常に重要ではないのかなというようにも感じました。
 それともう一つは地域の方ですけれども、これもよく色々な地域、都道府県によって、ここでは単に地域との連携が重要だと言っておりますが、地方公共団体におけるいわゆる役所、県とか市における意識の差というのはすごく大きくて、本当に一生懸命やってくれているところと、まだ、この産学連携、大学の知識や知恵を社会に還元することについての意味合いについて、重要施策として取り上げていただいているところと、そうでないところがあるんです。それは大学にしても我々にしても企業にしても、やはり積極的に地域の公共団体において重要な政策への位置づけにしていただくということも、ちょっと前後するかも知れませんが、非常に重要なことなのかなというふうに感じます。
 それと、やはり企業ですけれども、これも大学の先生とよく議論させてもらうと、企業の人はどうやって産学連携をしに来るかというと、何か儲かることはありませんかといって大学に来るというようなこともよく言われていました。やはり大学側から見た、あるいは産学連携全体から見た企業側に対する、大学の方からも企業に期待することはございますので、つまり、明確なニーズだとか、商品化プランとかマーケティングとか、企業においての産学連携における姿勢というか考え方をやはり明確にし合うと、大学ともまたうまくいくか、もちろん、大学がやらなければいけないことはそれ以上、まだ沢山あるかとは思いますが、企業においても少し考えていただく点というのは増えてきたのかなとも思います。
 それと、特許の件ですけれども、先ほども量はもちろんまだまだ足りないと思っています。量のみならず、今、やはり特許も質の重視へというところが出てきているかと思います。まさに、フクイ先生は特許の数と論文数の数が比例して伸びていって、つまり、どういうことかというと、産学連携による基本特許の取得の質の強化とはどういうことかというところが、まだ産業界と大学との間でギャップがあるのかな、つまり大学の方は基本特許を取るということは基礎研究そのものの深化や発展につながるということにもなりますし、海外の権利取得ということも基本特許の質の強化につながりますし、特許の権利範囲を拡充するということも基本特許の拡充にもつながりますし、その辺のところは少しもやっとしていますが、産学連携による基本特許取得の質の強化、量のみならず質の重視へという辺のことも、今後5年くらい、そういう議論が相当出てくるのかなということで、ここにどうにか言及を少しさせていただけたらなというふうに思っています。
 以上です。

【主査】
 ありがとうございました。
 ただ今幾つかの問いかけ的な御発言であったというふうに理解しますが、私の独断で産学官の組織の効率的な運営と基本特許、質の強化の2件について、前の点、すなわち組織の効率的な運営を中心に何か御発言はございますか。

【委員】
 では、両方とも。
 まず、組織の効率的な運営というのは、大学全体の運営管理から見ますと質の問題であって、それがなかなかできないのはやっぱり歴史が3つですか、先ほど事務局から幾つか挙げられていたのは3つか4つ、ばらばらに運営されてきたということなので、これに関する呪縛を解いてやらなければいけないわけですね。その呪縛をだれがどう解くかという問題であって、VBLはもう各大学が勝手に運用していいですよというのをどこかで言わないとだめなんだと思うんですけれども、各先生方はこれはこういう方針で立てられた組織だからということを呪縛の中でおっしゃるので、それがブレーキになっているところもあるので、その呪縛をどうやって解くかだというふうに私は思います。
 財務的にはやっぱりばらばらに運用していたらもたないので、楽観的に言えば、5年、10年たてば必ず一緒になる、あるいは効率的な運用になるのはいいんですが、それは促進してもっと前倒しでやってもらわないといけないと思いますので、何かうまいお声がけをしていただければいいのではないかなという。
 それから、基本特許の件は、質の重視と基本特許というのは実はイコールではなくて、質の重視の方が広い概念だったと思います。基本特許は質の重視の中の一部、かなり大きな部分ではあるけれども、それ以外にも基本特許でないものでも、マーケット技術があるものをしっかり判断して出していくというのも、質の重視の中の一部だと思うんですね。やはり各大学の運用を見ていますと、この資料を見てもわかるんですが、出願件数とそれから実施件数とのバランスは各大学で非常にばらばら。私は実は出願件数が低くて実施件数が多いので、ちょっと自慢しているところがあるんですけれども、これをどのあたりに持っていくかというのがそろそろ皆さん考えてくださいよというのは促してもいいかなと。各大学はちょっと軌道修正を始めたと思うんですね。その軌道修正はいいことなので、もっときちんとやってくださいということだと思う。
 それから、もう1点、ちょっと事務局の何か企業に対する大学の要望といいますか、それは私も冒頭でちょっと意見も申し上げましたけれども、大変重要で色々な観点があるんですが、1つには企業の海外研究開発投資よりは国内投資へ促してほしいと。それが実は何に関係するかというと、学生の国内企業の研究者への就職を誘導すると思うんですね。今、研究者は世の中で浮世離れというんですか、余り浮世離れしているとまずいので、研究者離れというか、研究者の職業というものに対する学生のあこがれがちょっと減っているわけですね。優秀な学生はみんな外資系に流れちゃっていて、国内企業へ流れない。
 やはり外資系の就職後の研究の仕事のイメージというのはよくできていて、その辺が悪い。それをもう少し企業が共同研究なんかを通して、国内向け研究開発活動を大学へ浸透させていただければと思いますし、やはり国内投資を増やしていただければ、必然的にそこのインタラクション、交流が出てくるわけですので、それをうまくやり過ぎると国内の企業の研究体制が悪いという方にも働きかねないので、ちょっと微妙なところはあるんですが、多分、共同研究の総額に関してはもっと倍や数倍上に持っていかないといけないんだと思うんですね。海外の大学の共同研究の総額から比べても低いわけでして、それをきちんと促し、それが研究者あるいは学生にもつながって、学生に生き生きとした研究者のよいイメージを持ってもらえる方まで促せればいいかなというふうに思っています。

【主査】
 ありがとうございます。重要な発言をいただきました。
 何か発言はございますか。特に企業の認識みたいな。

【委員】
 今、私は某社で産学連携推進担当で、ずっと日本の大学、アメリカの大学、全部サーベイさせていただいて、実際に先生にもコンタクトさせていただいたりして、どういう話をしていいかよくわからないんですけれども、やっぱり企業としては儲かりますかと行かなくて、何か技術をディベロップするためにこちらに移転というか、種がありますかということで行くわけですよね。あるんですよ、先生のところにも。それで持っていっても、それでは、幾らもらったら、うちは学生をそれに張りつけて、そっち向きの研究をしてくれますよということを日本の先生は言わない、言えない。
 アメリカのアリゾナ大学は数億円をあげてものすごい密度のものをやっていますけれども、それだったらポスドクを何人つけて、幾らでこういうことをやって、いつまでにこれを出しますよと。ポスドクが1人だったらこういう、2人だったらこうですと、これでやりますか。ものすごく具体的ですからね、それをやりますと。提案してきて、こういうのをやりますか。これはつまらないからやりません。3つぐらい選択して、何億円かあげますと。これがすぐできるわけです。
 日本の大学の先生はベースにできないですね、そんなのね。先生のところの非常に、そこのものが欲しいんですよ。だけれども、自分はこの興味で研究をやっているから、これがおもしろかったらお金を出してくださいでしょう。だから、根本的に日本の大学の構造が違うから、本当に先生の言うように何倍にしたければ、日本の大学もそういう体質に変えなくてはいけないんですよ。
 ポスドクは300万、500万、出してくださいよと。もっと高いの。700万。だから、僕らは見ますと、アメリカは300万でこっちが700万だったら、アメリカの方がずっといいかなとか、ここで要するにマーケットが成立するわけですよ。そういう体制に日本の大学も本当にできますか。やりますか。やらないでしょう。やるのであれば、そこで成立するけれども。

【委員】
 にわかにはやらないんですけれども、東大は統計データを出せるんですけれども、ポスドク活用型共同研究というのを推進しているんです。これは企業に出してください。出していただければ、それに対してポスドクを活用して、これだけの成果を出しますというのを推進している。ただし、これはにわかにはできない。まだ、大学の先生方のマインドが変わっていないので徐々に変える。ただ、推進策は東大としてやっているんですが、大学の先生からは受け入れられています。だから、急にじゃなくて徐々に。

【委員】
 もう一つ、例えばここにも書いていないんだけれども、文科省がやったイノベーション創出のための融合研究。融合創出拠点。あれは多分ものすごくフェーズを変えるインパクトであり、あれをよく注視してください。ここに何も書いていないけれども、あれは実は産学連携の非常に大きな目標になって、京大の先生のマインドがものすごく変わりましたね。ただし、我々からものすごくプレッシャーをかけています。普通では考えられないくらい先生にかけているんですよ。そうしますと、やっぱり先生のマインドがすごく変わっちゃって、さっき言ったような格好で本当に一緒にやりましょうと。
 東大の例の何十社の、これは1社しかやらない。1社と京大とやったわけですよ。アステラスもやっていますけれども、アステラスは間にやっぱり先生の取り合いがあったりもして、ばっといく感じで、これはまた別の問題。だけれども、1社と京大の複数の先生、大勢の先生とやるというモデルと、それから東大は逆に7社。要するに、その辺はよくウオッチされているんです。実質的に、本当に産学連携が日本で進められる。あれはいいモデル、ケーススタディーですから、ぜひ、そこのところをウオッチしてください。

【主査】
 わかりました。ありがとうございます。

【委員】
 多分、基本特許って何が基本特許ですかという話が必ず出てきますからね。それで、私の経験で言うとやっぱり技術の本当の発想の芽が出てから使われるまでに、11年プラマイ2年ぐらいが僕の経験値なので、本当に、そういう意味での根っこのところにあるサイエンティフィックな意味を持ったようなものは大学から出てきて、それをうまく企業に受け渡してやりたいというのは、産学連携のある意味、大学に期待値を持っている企業サイドの本質じゃないかな。
 もう一つは今のお話にも絡むんですけれども、ある特許事務所の方に聞いたら、いい先生がいれば丸ごと何億でも出して、金も出して買いに行きますよと、極端なぐらいなことを言う方がいて、それでちょっと今のお話を聞いて僕は難しいなと思ったのは、例えば東大とか京大みたいに、ものすごく今までの100何年の蓄積があるところは、今言ったような議論が成立するんだけれども、多分、文科省さんの一般的な産学連携だと言ったときに、果たして今の先生方の議論がどれだけ普遍性を持つのかなというのがちょっと、そこら辺が国としてやるときに、どういうタイミングでするのかということをやっておかないと、一般論で産学連携を今みたいな議論でやったら、多分、申しわけないけれども、地方でそれだけのポテンシャルがないところは、とてもそこについていけないのではないのかなって。だから、そこら辺を一本道でいくのか、少しある区分けをして、先ほどから話が出ている地域クラスターみたいな少し地方公共団体を巻き込んだ、少し観点の違う何か産学連携を模索しないと、単純構造では僕はいかないのではないかなと。
 基本特許のところはやっぱり先ほどの話に戻すと、私なんかの希望は本当にいい論文と特許がセットアップになったような評価をしていただきたい。くだらない論文はどうでもいいんですけれども、本当に「ネイチャー」とか「サイエンス」に使われるようなものが、一体、どういう特許につながっているか、そういうものが幾つかセットで、ある大学がどれだけ持っているかということを見てもらった方が、その大学の先生が研究をやりますということと、それをどういうふうにテクノロジーにつなげていきますかという観点でやっていただければ、もう少し幅広い議論が出てきて、サイエンスとパテントのリンケージみたいなデータをどうやって見ていこうかというところに満たされるんじゃないかなというのが企業サイドから見ての感想です。
 以上です。

【主査】
 ありがとうございました。

【委員】
 ちょっといいですか、今の基本特許と。

【主査】
 どうぞ。

【委員】
 これも企業の立場からいきますと、基本特許と売れる特許という話で大学に何を期待するかというのは、企業ですら自分のやっているビジネスの領域での特許しか取ろうとしないのが正しい特許制度。もうあきらめちゃったときには極めてはっきりです。NECさんもそうですね、やらないとなったら売っちゃったわけですよ、すごく立派な特許を、将来いいのが。ですから、本質的に自分のやっているビジネスの特許というのは、クロスライセンスだとか使えるんですけれども、それ以外の特許は基本的に持たないという方針が基本経営としても正しいやり方。経費ばかりかかっていますから。
 ですから、ビジネスをやっていない大学が売れる特許をマーケットにしなさいというのは僕はちょっと反対で、そういう意味じゃなくて、やっぱり大学は基本特許ですよ。論文とセットになって、論文を書く前に、その内容を取ってくださいというのが外から大学にお願いするのか。山っ気のある先生は売れる特許がやれるんですよ。山っ気のある先生は大いにやってもらっていいし、特許マインドを持ってもいいんだけれども、大学の先生はその分野のフロントの部分で研究してください。そうすると、おのずと特許を取るネタがいっぱい。それはまさに知財本部の人がかぎ分けて、先生、待ってくださいよ、ちょっと出してあげるからって、先生に特許マインドなんか持たせたら、ろくな研究ができなくなるから、私は経産省のこの委員会で大学の先生は特許をまず調べてから研究テーマを決めるべきだという、そういう企業の人がいたわけですよ。だから、僕はそれは違うでしょう。だから、そこのところをよく考えて、山っ気のある先生はいいですよ、すごくやっておられて売れる特許出ないから。本質はやっぱり基本特許ですよ、基本特許。

【主査】
 ありがとうございます。
 大変本質的な議論ができたとは思いますけれども、ほかの委員の皆さんで事務局からの指摘部分につきましては、およそ整理ができたかとは思うんですが。

【事務局】
 ありがとうございます。

【主査】
 確かに冒頭に出ました高い特許マインドといいますか、そういう整理ができて、よいシーズがあって、具体的、現実的に考え方と認識、理解を具体化しないと、結局、人材、人材と言っても、抽象論になりかねないんでしょうね。しからば、そのように具体的にモデルか、あるいはマニュアルかで人材を育成するために理念をどういうふうにしてつくり込み、伝えていくかというのは難しいかもしれませんね。

【委員】
 もう一つ、すみません。いろいろしゃべって。
 論文を書かないで特許を出させる教育というのがあるんですよ。これは例のヤマザキシンペイさんという皆さんご存じ、有名な方は、彼は最初からそういう教育を受けているんです。加藤与五郎という、ご存じですか、TDKをつくられた東工大の先生。その先生は軽井沢に別荘をお持ちで、そういう人を集めて、論文なんか書くなと、特許を出せ、先に。こういう教育はできるんですよ、人材育成。これは確かに特許をたくさん取れます。ヤマザキさんはギネスブックに載っていますが、個人で最もたくさん特許を持っている人。しかもうんと儲かっているんです。ほとんどの会社は苦労しています。担当はヤマザキシンペイの名前を言っただけで、もう怒り心頭の感じですよ。そういう人材を育成するつもりはあるの。
 要するに、特許ってそういうものなんですよ。だから、彼がやるのは学会を聞きに行って、それでいいのがあったら奥さんに電話して、奥さんが特許をその日に出してしまうと。大学の先生は名誉を追ってください。実益は、私は両方は無理ですよということをはっきり言うわけですよ。私はすごく仲がいいんですけれども、それは特殊な例ですが、加藤与五郎はそういう教育をしたわけですよ。

【主査】
 でも、それが唯一絶対ではない。

【委員】
 いや、そういう教育はいいんですよ、そういう人は。例えば京大の副学長はそういう知財本部の部長だから、そういう教育を学生にやりますか。

【主査】
 そうですね。ありがとうございます。
 どうぞ。

【委員】
 事務局の質問の中で、1つ地域の話も少し入っていたので、先ほどの議論と実はリンクすると僕は思っていまして、意見を述べます。例えば地方公共団体が前向きになれるかどうかというのは、地域の産業界の状況を反映します。地域の産業界の状況をどう反映してくるかという、その力学を抜きにはできない。では、地域の産業界はどういうふうに動いている、動くようなマインドを変えていくかということは、やはり、それぞれの具体的な産学連携の案件の深さ、深化度によって影響していると思うんです。
 例えば先ほどもお話がありましたように、どんぶり勘定で共同研究の経費を決めるということは、うちの大学でも少し試行的な取組を始めています。経費を積算するなどです。まだ。具体的には数パーセント、そういったことを試行を始めたという段階ですけれども、そういう中でやはり変化が出てくるのだと思います。地域の企業の中でもそうしたこともあいまって産学連携が深化し、これが行政に反映するということを期待しています。だから、どちらが先で、行政が変わるというわけでもないんですけれども、産学連携の深化に伴って地域の産学連携や行政が一緒に変わりながら動くこともあるわけで、やはり実質は最後が決めるというふうに思います。
 そういう意味では、先ほどから議論されているペーパーと特許のことも重要です。これがセットで動く。もちろん、それがセットであれば必要十分条件で基本特許になるかというと、そうではないんですけれども。大学として知財本部として、研究成果をどういうふうにハンドリングしていきながら、そして、その結果をどういう形で次のトランスレーショナルな研究であったり、いろんな研究で契約ベースできちっとつなげられるかということ。これがやはり大学が基本的にやることなんだろうと思うんです。そこを押さえておけば、だんだん地域の方も変わっていくんだろうというふうに思っています。ですから、ローカルな問題というのはグローバルな問題と本質的に私は全く同じだと思っております。

【主査】
 いろいろ重要かつ興味ある指摘をいただきまして、ありがとうございます。
 時間配分の関係で、私はこれからちょっと整理に入っていきたいと思います。区切りをしながら、皆様に補足的な御発言をちょうだいできればと思っております。
 最初に、「はじめに」から6ページの上2行目までのところの区切りで、何か今までの御発言のほかに、これだけはというものはございますでしょうか。「はじめに」及び3ページの大きな1のところの考え方及び5ページのところの大きな2の1ポツ、この辺までのところで、5ページのところですと委員からありましたが、特許の出願件数もありますけれども、商標もデザイン意匠もノウハウもソフトウエアも、そういう総合的な対応に基づくライセンスまたは活用という視点が重要だという指摘があったと思います。
 そうしますと、区切りで6ページの上の2行までのところでは、以上のような議論、補足でよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 そうしますと、6ページの上3行目からでございますけれども、2ポツの「産学官連携・知的財産活動の課題」、これにつきましてもいろいろ議論がありましたが、学内におけるローテーションといいますか、育成ローテーションといいますか、そのほかに何かございますでしょうか。
 学内で育成された人材は約2割に過ぎない、そして専任人材の割合も平均36パーセント、そして事務系職員が2、3年でローテーションしてしまうという現状がここに示されておりますけれども、そういう中で知財人材を育成していくということにつきまして、非常に有益な指摘がございますが、国際特許侵害訴訟等の法務に精通した人材、これにつきましては、前回、そこまで要求があるんだろうかという指摘もあったと思いますけれども、実際にそういうことが起こることを想定しますと、そういう対応力がなければ専門人材を利用といいますか、依頼するに当たっても不十分になると思いますので、このような指摘になろうかとは思います。
 何かございますでしょうか。2ポツのところですけれども、9ページの上4行まであたりで。副主査、何かございますか。よいでしょうか。

【委員】
 はい。

【主査】
 それでは、9ページの上から5行目の3ポツ、「産学官連携・知的財産活動の新たな展開の方向」につきましては何か、今までの議論に加えてございますでしょうか。

【委員】
 ちょっとよろしいでしょうか。

【主査】
 どうぞ。

【委員】
 ここのフレーズの11行のところで、「知的財産本部の経済的自立」という言葉が出てくるわけですね。

【主査】
 議論にもございましたけれども。

【委員】
 これがかなり誤解を与える可能性があると思っておりまして、知的財産本部の経済基盤の確立・強化が肝要とか、これを大学がどう考えるかという、そういう意味なんだろうと思うんですね。このままだと知的財産本部自身で経済的に非常に狭い特許のサイクルで、経済的に成り立たせてくれと言っているように思えるので、そこの表現がちょっとあったなと思うんです。

【委員】
 ちょっといいですか。少し違った観点でまた言うと物議をかもしますけれども、多分、知財本部だけで自立は、企業なんかあり得ないですよね。だから、大学のやるのは法人にエクイティー投資を可能にさせるんですよ。エクイティーから流れた収入とここを合わせて自立するぐらいに考えないと、これはもうできっこないですから、法人にエクイティー投資を許したらどうですか、そろそろ自己責任で。

【委員】
 信託をうまく利用するという方法があって、それに対する基本的な方針を出してもいいかもしれないと思うんですね。

【委員】
 よろしいですか。

【主査】
 どうぞ。

【委員】
 エクイティー投資も調査されていると思いますね。これは大学の経営方針だと思いますけれども、やはり、そういうことも可能とする仕組みの検討は必要に思います。ところで、ベンチャーの議論もまだ十分でも私はないと思うんですけれども、ベンチャーに関して言えば、日本の科学技術の振興の面でもベンチャーがもう少し頑張らないと。既に大学発ベンチャーは1,000社、1,500社という数字があるんですけれども、これがノミナルに終わったらちょっと困るんではないかと。
 その面からすると、先ほどの基本特許でもないんですけれども、やっぱり大学の方では企業でやらない研究が多く、それらの成果が基本特許になり得る場合が考えられます。それをもとにした大学の社会貢献というのはあり得ると思いますから、どこに国の支援を重点的にするかということにも大いに関係してくると思います。ただ、基本特許という場合、何を基本特許というかの、定義は難しいですし、また一発だけでもだめなんですね。そういう視点も含めれば、国としては目先の自立だけでなく、中長期的な視点からの支援が必要であり、それによって大学も真に社会貢献ができるのではと思われます。
 もう1つ、基本特許に関してある先生の特許があって、100件ぐらいの関連特許を出願しています。これらをすべて維持したいと。ただ、言うのは簡単なんですけれども、年間1億か2億円かかるわけで、とても大学の知財経営としてやってはいかれない。すぐに企業が買ってくれれば宜しいのですが、基本特許というのはそんなに数年の話じゃなくて、実用化・商品化には5年、10年かかるとすると企業は容易に支援はしない。これをどうするかという実際の問題として我々の課題でもあります。そういうような事例にどう対処するか。あまりむげに基本特許だから、すべて支援しなさいというわけにはいかないと思うんですけれども、やはり何かしらの形で国が中長期の視点を持って、そういったものをできるだけ厳選しながら育てていくということも必要ではないかと思います。
 恐らく大学における先生の特許というのは、非常に実用化に近い話もありますけれども、企業が基本特許的なものを一番大学に期待しているところかなと。特にいわゆる技術系のベンチャーの場合、やはり特許というか、そういう知財がないと存続していかないわけですから、そうした支援をどうするかというのはある点、重要かなと思います。

【主査】
 ありがとうございます。
 この部分につきましては、独立採算的な意味での経済的自立というよりも、企業でもコストセンターよりもプロフィットセンター意識をというような認識をここは前提にしているかなと思うんですけれども、いずれにしても大学の知的財産本部の機能、役割というものとの関連で、経済的自立の内容も変わってくるのかなとは思うんですけれども、いずれにしても委員の皆さんからの指摘で、考慮すべき点は考慮した上でというふうになろうかと思います。

【委員】
 ちょっとよろしいですか。

【主査】
 どうぞ。

【委員】
 今の御議論でいきますと、ここの知的財産本部の経済的自立ではなくて、大学の知財活動の中長期的な財政政策の確立です。そういう記述にすると。そういう記述であれば、非常に大きくエクイティーの問題であったり、そういったことも含まれてきますので、そういう書き方の方がまだいいかなと思います。

【主査】
 そうですね。ありがとうございます。
 そうしますと、3ポツにつきましてはほかにございませんでしょうか。

【委員】
 結構です。

【主査】
 それでは、16ページの4ポツでございます、「国の支援の在り方」でございますけれども、いかがでございましょうか。ここにつきましてもかなり重要な議論があったかと思います。いかがでございましょうか。
 何かございますか。よいですか。

【委員】
 特にない。よく考えられていると思います。

【主査】
 そうしますと、「おわりに」まで含めまして、大変重要かつ修正・考慮すべき点も含めていただけたと思います。
 事務局から何か整理・確認を要する点はございますか、今までのところで。よろしいですか。
 大変ありがとうございます。
 本日、最初は区切りをなしにいろいろ議論いただきまして、最後に私から無理無理、整理・確認をさせていただきまして、大変重要な整理ができたかと思います。ありがとうございました。

【委員】
 ちょっといいですか、最後に。

【主査】
 どうぞ。

【委員】
 根本的な話を最後に。「産学官連携・知的財産活動」という言葉、どうもこれがアプリオリにあるのは変ですよね。実はこれは利益相反じゃないけれども、相反する面がすごくあって、知的財産戦略は大学側から見れば言っているんですけれども、企業から見ると大学が知的財産戦略を持ってくれるのが一番いいんですよ。そうすると産学連携がやりやすい。外国の例を言いますと、バイドールみたいなしっかりしているところよりも、全部知的財産を個人に、先生にあげちゃった国があるんですよ。そことはすごくやりやすいですよ、先生の判断ができるから。
 ですから、単にこれを中ポツでつなぐのは若干危険があって、産学官連携の役割が技術移転からずっと違う方向に今動いているという認識なんですよ、私は。これは東大の先端研の橋本さんなんかも言っていまして、やはり、イノベーション、場をつくるという、非常に異なったニュートラルですから、大学は。非常に異なったビジネスの人とか研究者とか、あるいは異なったビジネスで異業種の人たちが大学に来ていろいろ議論ができて、そこから先生の新しい研究テーマも生まれてという、そういう役割の方が多くなると思って、前から私はそういって、これは王道だと言っているんですけれども、要するに大学の先生の研究テーマを見つけるための産学連携、あるいは教育を含めて教育のカリキュラムに対する産学連携の場の提供の方が大きくなるので、多分、ここの中ポツで安易につなげるのは少し考えていただきたいなと。

【主査】
 ありがとうございました。
 そろそろ時間も近づいておりますし、本日の議論はここまでにさせていただきたく思います。

6.今後の日程

 今後の日程について、8月1日(水曜日)午後3時~午後5時に第33回産学連携推進委員会を開催する旨事務局より連絡があった。

午前11時59分閉会

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)