先端計測分析技術・機器開発小委員会(第15回) 議事録

1.日時

平成19年3月23日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 10階 研究振興局会議室

3.出席者

委員

 石田委員、上野委員、長我部委員、小舘委員、小原委員、近藤委員、志水委員、杉浦委員、中村委員、二瓶委員、橋本委員、原委員、松尾委員、森川委員、山科委員

文部科学省

 佐野研究環境・産業連携課長、宇野研究環境・産業連携課科学技術・学術行政調査員

オブザーバー

 本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括、相馬独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進室長

4.議事録

平成19年度新規採択課題の公募、及び18年度中間評価の実施に関する報告

【主査】
 中間評価なので全部終わったわけではないが、もう最後の一押し、ブラッシュアップして仕上げるという段階にきているものが多いという印象を受ける。

資料4に基づき事後評価実施要領についての説明

【主査】
 18年度終了の事業について、19年度に事後評価を実施するということになっている。今年の事後評価の対象はいずれも要素技術。先端計測分析技術・機器開発事業は18年度で正味3年経過したということで、終了課題が4課題出てきたというタイミングになる。19年度になるとさらに終了課題が増えるので、そのプロトタイプができつつあるという状況になり、かつそのプロトタイプをどう活用するかということを、具体的に新たなプログラムとして検討する必要が生じる。

現在の開発課題の進捗状況についての説明と紹介

【事務局】
 平成16年度採択した課題の一つに、非常に先の細いチップの探針として、カーボンナノチューブを使って作るものがある。一見やさしそうだが色々問題があった。タングステンチップの先にカーボンナノチューブを上手に溶接し、白金イリジウムを表面にコーティングして、非常に細いチップを作るという技術の開発と、もう一つはそれを四本組み合わせて四探針で電気抵抗の測定などを行うという装置の開発。これは両方が大変うまくいって、針を製品化して販売している。またその針を使って四探針で計測する電気抵抗測定装置もすでに売り始めている。アメリカの研究所にも売れたが、まだ計測した研究結果は出ていない。が、販売実績はできたし、受注生産なのでどこかから注文が来れば必ず作れるという段階にはある。針に関しては、導通試験のための探針として、もう大量に使われていて、LSIのものづくり現場で既に使われているという。
 次に、低速・軽イオン励起特性X線の精密分析技術というものだが、これは軽イオン、水素などを加速してそれをターゲットに当てて特性X線を出して、そのX線から分析をするという装置である。これはむしろ低いエネルギーのX線で、絶縁体の中のカーボンやボロンの分析をする装置で、ほぼ完成していている。
 企業が非常に熱心にやってくれないと、こういう事業は成功しないということが最近よくわかってきた。
 この2つについては、企業が自分のところの製品として、将来、売りたいという目的もあって非常に熱心にやってくれる。
 その他、現在非常に成果が期待されているもののひとつとして半導体素子増幅による光検出器の開発がある。これは量産体制へいく直前までいっている。

【主査】
 平成16年から始まったものは短い開発期間のものも長い開発期間のものもある。それぞれプロトタイプが作られつつある段階のものと、その手前のものとがあり、これが本事業の現況である。19年度末、20年度末のあたりが、初年度スタートのプログラムの成果が出るタイミングということになる。
 指摘して頂いた事例では、従来の光電子増倍管においてダイオードの組み合わせにより電子を倍増していたものを、固体素子のアバランシェダイオードで増幅するという開発課題である。この場合、構造が非常にシンプルになるので、性能面の信頼性があがるということで、特性が大変よくなるというメリットもあり、大きなインパクトがあるだろうと期待されている。

【委員】
 また、顕微質量分析装置では、光学顕微鏡を用いて生体内で見つけた未知物質をその場で質量分析にかけるという画期的なアイデアである。タンパク質等をその場で分析できる装置で今開発中である。21年3月にプロトタイプができる予定。
 レドックス動態の磁気共鳴統合画像分析システムでは、ESRとMRIの画像を合致させて、活性酸素・フリーラジカルの動態を見ようというシステム。最後の生体計測用超高速フーリエ光デーダー顕微鏡は、近赤外を使って、光レーダー技術を応用して眼底の断層画像を高速に画像化するシステムだが、眼底カメラだけでなく内視鏡等の応用にも期待されている。もう既に何台か製品化されていると聞いている。

【主査】
 現物を見たので少し追加するが、レーザー質量分析顕微鏡の開発課題では、MALDI方式によりタンパク、糖、生体高分子のソフトなイオン化を実現するイオン化の方法と顕微システムとを組み合わせたものである。この装置により病理切片の異常部を二次元的に、場所ごとに質量スペクトルをとる。そうすると病変に関連した生体分子・物質が、非常に詳しく検出できる。装置的には大変きちんとできあがっていて、基礎データを色々な系に対してとっている段階と伺っている。原理的な面は確かに実現されていたものであるが、二次元イメージが取得できるという点で、応用上、極めて重要な進歩とみなされる装置である。

事業の進め方への意見

【主査】
 今年の6月から来年度にむけての議論をしたい。ここで何らかの結論を得ようというよりは、なるべく幅広く委員の先生方の意見を伺ったうえで、必要な事項があれば、調査などを行って来年度の施策に反映させたい。

【委員】
 先端計測分析機器開発では、かかわる会社ほとんどが社団法人日本分析機器工業会のメンバーに入っていると思うが、その中で、高額な計測や分析機器の開発は、大手の場合、年間に数台しか出ないとなると、なかなか開発までいかない。売れるものを中心にやるということがだんだん多くなっていると会員の企業から聞いていて、その中でも特に最先端で使われる高額の機器開発を中小企業が担うような場面が具体的に出てきている。このようなことを資金力の非常に乏しい中小企業が担うのはかなり負担になってきているのではないかと思う。国の大事な大型の研究開発予算に中小企業も積極的に入れるようなスキームも要るのではないか。

【主査】
 御指摘のとおり、私もそのような実感を持っている。背景としては大学の研究者に直接自分で作る能力が最近はほとんどない。結局自分でできないものだからお願いして作ってもらうことになる。やってもらう会社が少ないということで、部品レベルでお願いして、それを組み上げていくことが多い。しかし、高度な装置となるとそれだけでは済まないから、さらに少しレベルの高い技術を持っているところにお願いしたい。その一つ一つでは利益があがらない。インストゥルメンテーションを本業としている研究者集団と、製造技術を持っている中小企業とのコミュニケーションをどう確保して、どのようにインテグレートしてお互いに所期の目的を達するかという仕組みを作る必要がある。企業がグループを結成して大学が専らそのグループに発注し、そのグループの誰かが受けて作ってもらうという枠組みの契約(優先製造契約)を結んだ例があると聞いているが、大阪地区はどうか。

【委員】
 東大阪の中堅 中小企業との産学連携を、産連課の広域コーディネーターの方とご一緒して2年ほどやってきたが、一番痛感するのは国の無策ぶりである。アメリカの場合、国の予算をつけた開発に対して、GEなどは3割から1割は必ずベンチャービジネスの小さな企業が参画して組まないと予算が実施できないようになっている。1980年代に既にアメリカはそうやってベンチャーを育てるということを、国がきちんとやっている。東大阪の時、経済産業省が中小企業用支援の予算を持っていて、活用してほしいと私学に連絡が来る。しかし中小企業は書類を書くノウハウを持っていない。その上、部品一つ一つに全部書類を書かなければならない等、経済産業省の書類に対する要求度がとても高い。書類を書くだけでも大変なので一度通ったら二度と中小企業はやらないと言うし、パートナーの大学も書類作成だけでも大変な仕事量でお手上げである。
 ただ、このようなプロジェクトのいい点は、中堅 中小企業が対応しているものは、みんな自分の技術を使って何とか開発したいというものなので、うまく運用されると期待は大きいと思う。大企業が単一のものに対して開発チームを組めないという状況はかえって好都合で、むしろ大学が中堅 中小企業とパートナーを組んで技術開発をやれば、中堅 中小企業の技術のレベルも上がり又、人材育成にも繋がることになる。経済産業省から中小企業の技術の予算をこちら側に持ってきてくれれば絶対伸びると思う。もう少し、中堅 中小企業の姿が見えるような形で進めていくことができるといい。アメリカはあれだけベンチャーが伸びているが、基本技術はナショナルプロジェクトで開発した技術を民間におろして、その民間の企業を大きなプロジェクトの中に必ず参画させるということをやってきてここまで来たわけだから、日本ももう一度そういうところに戻ればいい。そして、中堅、中小企業へもっと光があたるような、目に見えるような施策が出てくるといい。

【委員】
 先端的な分析計測の機器のあまりもうからないのを、大企業にやるべきだという提言は難しいと思っている。日本としてはどうしても最先端の加工技術と分析計測は絶対必要なわけで、国内で研究開発をやる機能は大事だと思っている。国としてやらなければならないことを中小企業が担うことも出てきているので、その時に必要なのは、高度なプロジェクトをマネジメントする人材で、そこが弱い。会社は今、5億円ぐらいの分析装置なども開発できるが、そこのウェイトが強くなってきたので、そういう人材を育成し、また大手でおそらく余っているはずなので、ぜひバックアップしてもらいたい。

【主査】
 会社や団体の側から、どういう会社がどういう得意分野でどんなものを作る能力があるのかを、非常にわかりやすく研究者コミュニティーに発信するようなしくみが必要であると思う。もう少しお互いが、自分のニーズと提供する側の技術とがスムーズに技術情報をやりとりできるといいのではないか。

【委員】
 社団法人日本分析機器工業会では、先端の機器とメーカーのリストが出ているので、研究者はそれを見てアプローチすると思うし、展示会にも出てくるので、そういうところで研究者の方々は情報を収集すると思う。

【委員】
 特に研究者の側からの希望としてはインテグレートするノウハウを持っている会社の情報が欲しい。実験室レベルで研究するだけなら、それを買ってきて個々でインテグレートしてしまうが、それを製品化という時に、マネジメントするところまでを研究者がやるというのは大変だと思うので、そういう能力を持ったところの情報もぜひ集約してほしいと思っている。

【委員】
 ニーズとシーズをマッチングさせようと思ってはいるが、なかなか中小企業にはハードルが高すぎて成功例が発生しにくい。ナショナルプロジェクトの中に、ある一定比率で中小ベンチャーを入れるという発想は非常にいいと思う。ジャストフィットは難しいかもしれないが、そういうプロジェクトに参画することによって、視野が広がり、技術が深められ、次の時にはメインになれる。国としてそのような支援ができれば活性化に繋がるのではないか。

【主査】
 最初にそういう議論があり、色々工夫をしたつもりだったが、3年間やってきて、もう一度検討すべきだと思う。

【委員】
 個々の計測分析機器としてだと中小企業と組んでいい仕事ができると思うが、もう少し裾野を広くして、例えばインターフェースやソフトまで入れてないと、どんなに性能のいいものでも市場には向かない。ハードを作ってから外国のソフトをつけようとすると今度はハードの方を変えなければならない。日本のハードは非常にすばらしい。しかし、ハードをもっと生かすソフトの開発もあってインターフェース開発まで入って、というプロジェクトが一つぐらいないと、全体として見たときに、大きな意味での戦略として先端計測分析機器開発に値するのかという不安感がある。そして、ソフトの開発がよく見えないので、何らかの形でプロジェクトの中にソフト開発が組み込まれているようにすることで大学の人材を育てることをしないと日本のソフトは全滅するような気がする。また、機器開発の中にソフトを担当するチームを作り、機器開発を一緒にやるという視点も入っているといいと思う。

【主査】
 査定というのは去年あたりからJSTは厳しくなってきていると感じている。実際に採択が決まった後、もう一度予算の査定をすることはやっているか。

【事務局】
 やっている。

【主査】
 はじめの頃よりは事情はよくなっていると思うが、今後さらに適切な予算で執行することは大事なことで、もし不足すればまた別途、その時点で考えればいい。最初から多いのはあまりよくない。

【事務局】
 16年度にスタートした時は、この事業の性格を、我々も応募した先生や企業も十分理解していなかったと思う。2年度目くらいからちょっとずつ絞って、エッセンスを抜き出すように色々努力はしている。

【委員】
 実際に工学の方や企業の開発の人と話したり、ある企業の研究開発のところを見に行くと色々な機械があったが、話してくれる時にはもう既にそれは開発が完全に終わっていて捨てる寸前のようになってきている。ユーザーサイドで使える、これが欲しいという我々ユーザー側の開発情報が入っていない。入ったときには、もう廃棄する。だから情報を流してもいいという企業側の意向があるのではないか。いろんな機械を見ていると全部重厚長大で、これが我々のニーズにあっているかというと多分それしかないから使っているというだけで、それが医療費の高騰を招いているという実態がある。もっと医者や現場の検査に使えるものや、インターフェースやソフトのところをきちんとやったら、本当にいい機械ができると思う。うまくユーザーに説明さえすればもっと使う人が出てきて、こう使えないかという話になるのではないか。これは特許などに関わる問題かもしれないが、ユーザーサイドの可能性をサーベイしてもっと具体的に使える機械に落としてこんでいくことをしなければ、企業がもって行かないのではないか。先端機械は数人の人しか使えない機械ということになるので、採算性が合うか考える必要があるのではないか。

【委員】
 先端機器開発そのものは自分も非常に重要だと思っている。先端機器開発ということで、研究だから当然あるものは成功して、あるものは壁にぶち当たるということが出てくるが、壁にぶち当たっても何が壁なのかがはっきりわかれば、次にもう一回基本的な問題に立ち返ってブレイクスルーを狙おうといったことができて、より強固な技術基盤あるいはサイエンスとしての基盤もできると思う。

【主査】
 理論的あるいは計算科学的手法でブレイクスルーを見えるようにするという指摘もあったが、基本的現象をより明らかにするための実験技術も必要だと思う。機器開発には基礎から応用に幅広い領域があるという重要性を受け止めたい。

【委員】
 もう少し先のこととして気になった点で、3回前の委員会ですばらしい成果が出たものなのに、出口がみつからないために結局うち捨てられるような技術がたくさんあるのではないかという議論があったことが印象に残っている。そういうものをコーディネートする機関が必要ではないかということで、そこへの費用投下が先々重要になってくると思う。それからもう1点、大学や公的研究機関では年度締めで、いつまでに幾ら使い切らないといけないというのがあった。実際には2月から6月ぐらいまで何もできないということがよくあって、何か弾力的な予算運用というのを訴えたかった。

【委員】
 手元に配付した資料は、情報家電の川上から川下、素材から最終製品にいたるまでの日本のシェアである。最終製品ではテレビや携帯を含めると、大体4分の1ぐらいのシェアだが、部品で32パーセント、製造設備で49パーセント、原材料で66パーセントと高くなっている。川下に行くに従い、日本が最初はトップであっても、製造装置や技術が流出すれば、ハイテク分野では高い再現性が得られるので、韓国等の財閥が集中投資することによって、結果的に半導体も液晶も世界トップの地位を奪われてシェアが低下してしまう。原材料は装置産業のため技術移転が進まず、相対的に高いシェアを維持できている。分析機器にも同様の面があり、日本のユーザーは機器メーカーに装置開発させるが、開発費用回収のために、どんどん他社や外国に売れというスタンスが見受けられる。
 また、ナノスケールの計測装置の開発は進んでいるが、その装置を校正する原器がないという問題がある。更に今の原器では校正標準物質そのものにも限界がある。装置を開発するのと並行して、校正原器の開発も進めるべきだと思う。

【主査】
 配っている資料以外に委員の方から一言ずつ発言してほしい。

【委員】
 今、分析機器は、LC/MS/MSはアプライドバイオシステムズ社、ダイオキシン分析にはマイクロマス社の高分解能GC/MS、半導体のDepth Profileはカメカインスツルメンツ社のSIMSというようにブラックボックス化とデファクト化が進んでいる。
 現在の先端計測事業は領域ごとに募集しているが、特定の分析手法・機能を進化・発展させる取組みがあってもよい。

【委員】
 なぜMALDIがあんなに感度がいいか十分理解されていないのではないか。ベーシックスがないままで、実用で確立したからこれでいいというのではなく、基本的メカニズムが解明できればMALDIの向こうのスーパーMALDIに繋がるかもしれない。励起だってレーザーを使っているが、さらにすすめて赤外線レーザーを使った、スーパーMALDIを目指すとか、解析や計量のソフトもつくるなど、何かそういうものがあったらいいと思っている。

【委員】
 開発した計測機器を産業化していくためには、調達まで含めた形で取り組む必要がある。米国の場合、国家PJでの研究開発においては一定の割合で新製品を調達することを義務づけるような動きをしていると聞いている。また、調達を含めて、出来上がった装置を本当にユーザーが使えるか評価するような人たちに、インセンティブがあるようなプログラムを作っていく必要があるのではないか。計測装置は初号機がでる時点と、それがデファクトになって業界スタンダードになっていくまでの間に大きな壁があり、なかなか越えられない。
 次のような例があります。私たちの研究所でバイオ分野で低分子のセンサーを開発しました。その技術をある大学発のベンチャー企業に特許をライセンシングして、ノウハウも出して製品にした。その装置を研究者に納入して使ってもらおうとすると結果はでるのだが、論文にする際に既存の確立した装置でないとアクセプトしてもらえないと言われる。ユーザーである研究者は論文を出す事が最重要なので、保守的に既存の一番数が出ている装置でないと購入しようとしない。性能が良くてもデファクトになるまでに相当の苦労をする。例えば通信事業のような市場の大きいものは、リターンが大きいので企業も最初の投資を大きく打つが、計測機器はひとつひとつの市場が小さく、デファクトにするまでの谷を乗り越えるのが非常に難しい。ここを上手に越えないと輸入品でしか計測ができない状況が続く。
 別の例は、医療用の装置です。症例を集めれば薬事は通せる。しかしそういう装置を病院が実際に買うためには3年ぐらいで投資を回収する必要がある。そのためには、薬事を通したと時に比べ、はるかに多くの症例を必要とする。その症例を集めるためには病院に購入していただく必要があるが、病院は回収の目処がたたず購入に踏み切れず、またメーカー側でも製品として出しているので試験用として病院に設置させていただき症例を集める事も期間を限定されている。かくしてジレンマに陥り停滞状態が続く。そこも特に国公立の機関などで、新しい日本発の装置をきちんとテストするということをプログラム化して全体として進めなければ、日本としてそういう装置が育たないのではないか。

【主査】
 その件も3年ほど前にずいぶん出て、私もアメリカのシステムについてなぜ違うかということを調べなければならないと思った。何人かの人にお願いして、調査して内容を明らかにし、政策にフィードバックする努力をしなければならないが、それが十分にできていない。大変申し訳ないと思っている。こういう件もぜひ検討したい。ユーザーによる評価ということも前から議論が出ていて、プロトタイプセンターという形で議論が出たが、センターというと、大きい組織、あるいは機器を集中配備してというイメージで実行が難しい。それならもっとブレークダウンして、プロトタイプステーションとして、むしろ開発者の手元に機器システムを置いて、そこにユーザーがみんな集まっていく。それをある意味でネットワーク化してオープンにしないとユーザーは大勢集まらないので、その装置を評価し、かつブラッシュアップしていくという仕組みができそうな気がして、具体的な検討をしなければならないと思っている。

【委員】
 私はライフサイエンスの分野だが、ライフサイエンスの先端的な機器はほとんど外国製ということがあったので、これが始まる頃におそらく目の敵になっていたのではないか。当時ゲノムのシーケンスをするシーケンサーというのがあって島津も作っていたが、そのころ実は1,000ドルゲノムといって、ヒトのゲノムを決めるのには、多分何千億かかけて決まったわけだが、それを個人別に決めようという無謀なことが言われ始めた。これが始まる頃にはもう少し先かと思ったが、実はもう出始めている。要素技術そのものはPCRとか大分前からあるが、それをうまく組み合わせて、しかも新しい発想を入れてやってきている。そういうのを日本でもしやるとしたらどうしたらいいのか。市場が小さいということもあるが、戦略的に皆でターゲットを決めてやるということを一つくらいつくらなければならないなという気がする。

【委員】
 このプログラムは、機器開発プログラムと要素技術プログラムの二本立て校正されている。環境計測技術を開発し、企業化して、広く環境計測・研究に役立てるという道筋がある。この場合、ある技術的な方法開発し、それを環境計測に応用する(環境計測にも使える)という発想で提案され、開発されてきた機器があまり環境研究の役に立っていないという懸念を抱いている。研究の必要性から出発しないと、有用な機器開発につながらない「今、世界でこうしたものが必要とされているが、測定技術がないから、まずこの計測開発・機器が必要だ。」という、プロポーザルができるような仕組みが一つぐらいあってもいい。その場合、我々が考えていない重要な必要性が研究者から提案される可能性が高いと思う。要素技術に関して言えば、個々の要素技術の性能を格段に上げるということは、重要である。しかし要素技術プログラムは、個々の要素技術の開発が中心であり、必要性から出発した機器開発提案を受け入れられる仕組みがない。環境計測の技術開発プログラムでは「個々の要素技術」だけではなく、このような面を考慮する必要があるのではないかと考える。

【委員】
 私は材料・デバイス関係の研究開発に携わっている者で、どちらかというと先端計測機器を使うユーザー側の立場から話を聞いていた。装置・先端機器を選定する場合、最終的にユーザー側にとって使いやすいというのは研究開発のスループットをあげる上で極めて重要なポイントとなる。例えばプローブ顕微鏡は、某米国メーカーが断トツのシェアを占めているが、これはやはり使い勝手がいいからだ。ここで出てきた成果に基づいて装置を組み立て市場に出して、これをデファクトスタンダード化するところまで目指すとすれば、どこかの課程でユーザーフレンドリーといったことを考慮する仕組みをぜひ取り入れて欲しい。

【主査】
 今の指摘もプロトタイプステーションをきちんと運用すればできることだと思う。

【委員】
 光ディテクトは重要で、励起源とディテクトというのは常に二大重要要素と思っていて、どれだけ小さくなったり、発展があるというのを非常に楽しみにしているが、要素技術というかひとつの分析科学機器、計測機器に一番大事なところなので、そこの発展がないと画期的なものはなかなかできない。インテグレーションやソフトの難しさはあるが、要素技術の難しさもあって時間もかかる。だからこのプログラムで言っている要素技術をもっと位置づけて一つはやってほしい。例えば我々は気体や液体の流量計測を機器開発しているが、その基準はNISTのトレーサビリティのある基準系だが、やはりアメリカがそういう基準計を握っている。しかもそれが本当に良いのかというと、非常に限られたガスできていない。本当に半導体製造で使用されているようなガスにどれだけトレーサビリティのある流量基準計ができているのか。これは発展の余地があって、もう少し日本としても色々やっていかなければならない課題だ。圧力計測や流量計測の分野などでも重さや時間などの基本的物理量との関係でトレーサビリティが決まっていくが、分圧の基準器を含めてそういう要素はまだまだやる余地があるという感じがする。
 それと、本当に事業化するためには資金が続かなくては難しいところがあるので、資金的なところを是非やってほしい。それから雑誌でアメリカのパテントのことが出ていたが、ある日コンセプト的なところのパテントを取られて、にっちもさっちもいかないというようなことがこれからどんどん起こるだろう。アメリカのローヤーを雇わなければならない。日本ももう少し国家的に法律としてパテントのとり方を考えなければならない。

【委員】
 平成16年、17年とこの事業の審査をやらせてもらった。採択されて結果が出ているものは日の目を見るが、よく読んでいると、ボツになったものの中にも相互に補完しあったり、いくつかの申請課題を組み合わせて一つの課題を作っていけば、結構面白いものができるのではないかと思われる事例があった。JSTの方でコーディネートして次年度以降の申請に持っていくなど、審査の後始末の様な機能も必要だと思った。

【主査】
 先生方に持論をお話いただき、まとめ上げる作業がなかなか大変だが、話の中にいくつかすぐにでも具体的な企画案を作れそうな話もあった。御指摘のようにアメリカの動向をもう少しきちっと把握してこの席で紹介もしなければならない。委員の先生方にそういう計測分析技術・機器開発の重要性や国家戦略に関する動向をご存知であれば断片的で結構なので情報をぜひ寄せてほしい。
 NISTの国家戦略のペーパーの中で、ちょうど我々が主張しているように、計測分析技術というのは、科学技術立国、知的創造基盤の根幹であると書いてある。この進展なくして国の科学技術の進展なし、それから産業界の国際競争力強化もなしと主張している。こういうことをいくつかのレファレンスをもとに、再度この委員会から外に対して主張していかなければいけないと感じている。幸いにこの3年間、世の中の認識が随分変わって、やはり計測技術や分析技術は大事だという認識は広まってきたと思うが、ここでもう一回、そういう主張をまとめていく必要があるのではないか。
 御指摘があったが、立ち上げ時期の委員会活動と今の時点での委員会活動では、やはり力点の置き方を変えるべき点があるので、19年度にはぜひ新しい観点の検討をこの委員会にお願いしたいと考えている。事務局と相談の上、先生方に具体的なお願いをしたい。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)