先端計測分析技術・機器開発小委員会(第14回) 議事録

1.日時

平成19年2月5日(月曜日) 16時~18時

2.場所

三菱ビル9階 964、965号室

3.出席者

委員

 石田委員、上野委員、長我部委員、北澤委員、小舘委員、小原委員、近藤委員、志水委員、杉浦委員、田中委員、二瓶委員、橋本委員、原委員、松尾委員、森川委員、山科委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、佐野研究環境・産業連携課長、上田研究環境・産業連携課課長補佐、宇野研究環境・産業連携課科学技術・学術行政調査員

オブザーバー

 本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括、相馬独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進室長

4.議事録

(資料1に基づき平成19年度予算案、資料2に基づき実施状況を説明)

【委員等】
 各社での情報の共有化に限らず、このような膨大な資料を作っていただくこと自身、非常に情報の共有化になる。ただ、個々の企業での情報の共有化、いろいろケース・バイ・ケースあると思う。私は一切個々の開発に加わっていないし、だからこそ逆に聞けない情報もあり、個々の企業だけでなく、それと一緒にやられている大学の先生との信頼関係というか、その中で閉じている情報もあり、だからこそ加わっていただけるという場合もある。できる限り共有できることは共有した方がいいと思うが、そういう事情もある。

【事務局の発言】
 いろいろ開発するに当たり、試作品を作るメーカー、会社が日本にはほとんどない。大手の会社は大体100億円、300億円出さないと試作品を作らない。結局どこへ行くかというと、台湾、カナダなどの外国である。日本では東大がやっているが、我々のプロジェクトの要求を十分満たすには至らない。大手企業に試作品を作ってもらうために1つのロットで大体数百億円要るため、この事業ではとてもできない。そういうケースが非常に多い。

【委員等】
 幾つかのメーカーが集まって、知恵を出し合ってそういうものを作るという、ユーロプロジェクトみたいなものは戦略目標がある。残念ながら、日本の場合にはそれだけのロングレンジできちっとそういうものを立ち上げていくだけの時間がなく規模も小さく、一番いけないのは戦略目標がはっきりしていないということだろうと思う。1件5億、5年間というのが数個走るのもいいと思うが、せめて10年で10億ぐらいかけて、そして何社かが集まり、それぞれが知恵を出し合ってものを作って、その技術を共有できるような形で生み出していくなどしないと、解決が期待できない。

【主査】
 東大の話がでたが、現状は、何が問題なのか。

【事務局の発言】
 作ってくれない。例えば「こういうデバイスを作りたい」と言っても、それは研究の過程で回路もでき、シミュレーションもできるが、具体的にシリコンから超LSIを作るまでの作業は、1つの大学の研究室ではできない。そういうことをやってくれるところがあっても、非常に規模が小さくて全部賄えない。

【主査】
 外国に頼んで作ってもらうというのは、今までにどのぐらいの件数があるのか。

【事務局の発言】
 たしか3件ぐらいだったと思うが、もっとあるかもしれない。

【主査】
 外国で作るというのは、かなり問題があるのではないか。

【事務局の発言】
 当然ある。ノウハウが全部行ってしまう。

【委員等】
 文科省ではナノテク総合支援プロジェクトに3つか4つ作ることになっている。ですから、そこに頼めばやってくれるはずになっている。しかし、日本はこのような事業は非常に遅れてしまったのが現状ではないかと思う。

【主査】
 それは具体的にどんな機関か。

【委員等】
 理研と、物材機構、早稲田大学などである。アメリカや韓国は200億円、300億円という予算でやっているのに対し、日本の場合は数億円でやらなければいけない、そういう状況であるため、実際にはできない。それから、人がいない。そういう問題だと思う。

(資料3に基づき平成19年度開発領域を説明)

 以下の5領域を提示し議論

  1. 主に研究現場で使われる機器に関する開発領域(一般領域)
    • 人体内の臓器、病態、脳の高次機能などの無・低侵襲リアルタイム3次元観察、及び人体中の物質の無・低侵襲定量分析
    • 複数の既存の先端計測分析技術・機器の融合による新しい計測分析
  2. 研究現場のみならず、応用現場(ものづくり現場)での将来の活用が想定される機器に関する開発領域(応用領域)
    • リアルタイム観察又はリアルタイム制御可能な計測分析システム
    • 機能発現・作動状態下におけるマクロからミクロレベルのダイナミック計測
    • ものづくり現場環境適応型計測分析システム

【委員等】
 最初の一般領域は、人体内の領域が適当だと思う。複数の機器の融合は、具体的なターゲットを示して、少しハードルを上げて挑戦していただいた方がいいだろうという意味で、人体内の領域を支持する。
 ものづくりは、皆さんのご意見で結構である。

【委員等】
 一般領域は、明確な目標にしている方がいいのではないかと思う。ただ、気になったのは、似たようなテーマが今までなかったかどうかである。

【事務局の発言】
 平成16年度の実験小動物の生体内の代謝の個体レベルでの無・低侵襲的解析、可視化ということでやっている。平成16年度は小動物で、今回は人体なので、その手法はかなり異なるだろうと思っている。

【委員等】
 専門の先生から見て、特に重要だというコメントがあればそれでいい。
 応用の方で、特にものづくり現場環境、これはものを作る現場の環境を測るということか。

【主査】
 ものづくり現場環境下で動作する、幾つかの機能を満たす、計測分析機器を開発しようというもので、環境を測るのではなくて、基本的にはいろいろなものが作られる、そのプロセスで、このリアルタイムなどというのは、まさに増設であり、ダイナミック計測も、これは機能発現も含んでおり、どんどんできるものを作っているプロセスそのものではないわけであるが、ものを作る、ものの開発に貢献できるようなダイナミック計測、そういう意味である。

【委員等】
 それだと、前の2つのプロジェクトと比べると、3番目はやや間接的な気がする。

【主査】
 その通りである。これは現場環境でも使えるという切り口なので、ちょっと観点が違う。

【委員等】
 それなら、私はこのリアルタイムと機能発現の領域を支持する。

【委員等】
 人体内の領域の方が、非常に重要性、緊急性が高いのではないか。既にいろいろなご研究もあるかと思うが、やはり実用化に向けて今後も必要なところではないかと思い、人体内の領域を支持したい。
 応用領域では、ものづくり現場の領域のイメージが少しはっきりしないため、リアルタイムと機能発現の領域の方が必要度は高いと思う。

【主査】
 8月の委員会で議論をして、この5つを選んだ。それを今回、もう一度先生方にごらんいただき、特に8月の議論に参加していらっしゃらない委員のご意見を承り、その表現を大分追加修正した。そういうレベルで、今回、再度ご意見をいただいているということである。
 今のご意見を素直に受け、ここから選ぶとすると、「人体内の臓器、病態、脳の高次機能などの無・低侵襲リアルタイム3次元観察、及び人体中の物質の無・低侵襲定量分析」の領域が選ばれることになる。

【委員等】
 この表現で、タイトルは「及び」であり、下の説明では「同時に」と書いてあるが、これは両方やらないといけないのか。つまり、前者はイメージングでこれはこれで機器開発だからいいが、後者は多分、血液、尿、体液をとってやるので、かなり違う。どちらかに重みがあってやるというのでよければ、それは構わないと思う。

【主査】
 ご指摘のように「これは一体どんな装置を作るか」といったときに、本当に「同時に」でいいのかという問題である。

【委員等】
 「同時に」というのは「可能性」ということだと思う。1つは、効果の例の3番目に書いてあるのは、これは必ずしも同時の可能性を含まない例である。「例えば糖尿病のような」というところに、いわゆるリアルタイム3次元イメージには応用できないという気がして、ここはかなり「または」に近いレベルの意味にしておかないと、ちょっと例示と合わない感じがする。実際には、そういうものが可能だという感じはしている。

【委員等】
 イメージングだけであれば、分子イメージング技術の開発も走っている。それから後者だけだと、例えば前立腺の検査みたいなものを思い浮かべる。そうすると、既設の技術のどこに機器開発とか分析技術の新しい開発理念が入っているかが見えない。

【委員等】
 ヒアリングや勉強会を通じて、特に脳の機能解析として、補強した解像度でやってほしいというところがあった。ああいうところが来ると、前だけでもかなりおもしろい。

【委員等】
 このままだと、既にあるMRIとかCTとか、それよりももっと解像力が高いとか、あるいは細胞レベルで何かができるとか、そのぐらいグレードが高いものでなければ余りおもしろくはない。何かもう少し形容詞や効果の例を挙げた方がいいのではないかと思う。

【主査】
 一つのキーワードは「高解像度」ということか。

【委員等】
 今あるものよりもさらに飛躍的な精度を持ったものという、そういう気持ちが欲しいと思う。

【委員等】
 細胞レベルという言葉は説得力がある。例えば、我々は困ったらすぐ「ナノレベルの」とか「原子レベル」とか書く。

【委員等】
 ただこれは人体が対象であり、それを細胞レベルまで落とす意味がどこまであるか。技術的には、確かに細胞レベルはおもしろい。医療機器としては、細胞1個つまんできて治療できるかという世界であり、多分、人間の体を対象にやれるところが入れば確かにおもしろいとは思うが、先ほど言った精度を上げるというのは、ただ細胞レベルではなくて違うことだと思う。
 それから、これを読んだときに、定量解析か、何かのイメージングと一緒にできる、それを作るというのが非常に重要なことだと思った。単に画像を見ているだけでは説明になるだけで、それを実際に無侵襲、低侵襲の定量解析ができるのかが最大のネックだという感じはする。

【委員等】
 脳のCTの写真に、定量的にきれいにマッピングするというイメージでいいか。

【委員等】
 「物質の」と書いてあるが、そこに何が起こっているのか、何があるのかを取ってこられる、それこそ無侵襲でやれるような機器ができてきたら、これはもう本当に画期的な技術だと思う。無侵襲では無理だと思うが、非常に低侵襲でやれるなら、かなり思い切ったことをすれば、やれそうだというイメージは持っている。だから、思い切って「及び」とつけて、やれという方がきちんとした厳しいものが出てくると思う。
 ただ、そうすると例示のところはもうちょっと考えた方がいい。無侵襲の定量解析なら、これはいいと思う。

【委員等】
 全体の話は分からないが、例えばPETやNRIや、あるいは最近、光で見る場合、脳のどこが働いているかということをテレビでもよくやっているが、全体に何かぼやっと働いているのか、それとも極端な話、1つの神経がものすごく働いているのか分からない。そういう場所の分解能や時間的な分解能が高まれば脳の働きをより深く分かるようになる。そういうことを考えると、リアルタイムというのは余りにもぼやっとした言葉であり、単に分解能が高ければいいかというと、何かが新たに分かることが伴わないと余り意味がないので、そういうことを一つのきっかけに、何か言葉を変えられたらよい。

【主査】
 リアルタイムというのは確かに幅がある。例えば、ある絵を見せるなどの何か原因を与えて、それで脳がどう働くか、脳の興奮を時系列で見るということは、時間分解の意味を持っている。それはクリアできているが、解像度の問題に触れていないというわけで、ちょうどリアルタイムの次に「高解像度3次元観察」などの「高解像度」を補えば、今までのものを超えたという意味が出せるのではないか。

【委員等】
 逆にそれで応募のいい種を排除してしまうことがなければよいと思う。

【主査】
 確かにリアルタイムで高解像度だと、かなりハードルが上がる。

【委員等】
 真にリアルタイム、あるいは真に高解像度ということ、真というのは、今までよりもよりリアルタイム、今までよりも高解像度という、そんな感じの何かいい言葉を入れたい。

【委員等】
 でも、リアルタイムと高解像度がうまく並列に入ると、少しグレードアップを目指すことになる。

【委員等】
 これはどちらにしても、これまでにはなかったようなものを作っていただくというのがもともとの趣旨ということにしたい。

【事務局の発言】
 基本的に、医療的に意味があるものということで、「かつ」というか「同時に」というふうなことでやっていただきたいと考えている。
 今までのこういったことに対するご批判の多くは、基礎研究的なものがなかなか医療現場に結びついていかないというようなことがあり、全体として私どもも現場指向という傾向の方に、これに限らず他の予算も含めて、心がけている。

【委員等】
 リアルタイム3次元観察、及び無・低侵襲定量分析というと分子イメージングと分子プロファイリングの2本立てになっていると思う。例えば、医療現場ではMRIのスループットが非常に遅いことが障害になっている。こうした問題を解決する尖った性能があれば、イメージングでもプロファイリングでも、単独で現場で使われる可能性があるのではないでしょうか。
 また、こういった装置を使って、最終的にはプロファイリングのデータとイメージングのデータをあわせて診断や新薬の開発に使うわけで、そのレベルでこの2つがうまく統合されれば所期の目的は完成するのではないかと思う。研究の芽の段階では、2つを同時に満足するというように限定するよりは、それぞれに尖ったアイデアが出ればそれが最後に現場で融合するという形もあると思う。
 それから、やはり「同時に」は排除しないで、アイデアとして、例えばMRIにしてもスペクトロスコピー、MRSとMRIを合わせればこのイメージングとプロファイリングができるため、それはまたそれで奨励するということで、個人的にアンド・オアは、やはり残した方がいいと感じている。

【委員等】
 例えば今申し上げたようなことなどたくさん例があると思うが、そういうものを列記していただければ誤解が少なくなると思う。

【主査】
 それでは、一般領域の1課題は私と事務局とでまとめた上で、決めさせていただきたい。
 次に、応用領域であるが、先ほどのご意見を承っていると、課題を2つ選ぶとすれば、「リアルタイム・ハイスループット観察又はリアルタイム制御可能な計測分析システム」、「機能発現・作動状態下におけるマクロからミクロレベルのダイナミック計測」の2つを残すということでよいか。この表現と効果の例等をお読みいただきまして、何かご意見がいただきたい。

【委員等】
 応用領域の3つのテーマのうち最初の2つのテーマは、ものづくり現場ということが明確に出ている。この2つは、「ものづくり現場環境適応型計測分析システム」の領域になると、実際の現場のいろいろなプロセスの測定や、ケミカルエンジニアリング的な測定がある程度入ってくる。この2つのテーマでは、例えばリアルタイム観察というのが機能発現・作動状態下における計測とも言えるし、リアルタイム制御可能な計測システムというのがミクロレベルのダイナミック計測ということも言えるので、区別が付き難く、応募される方が分かりにくい印象を持った。
 そのため、この2つを1つにして、「ものづくり現場環境適応型計測分析システム」の領域を2つ目にするということもあるのではないかと思う。

【委員等】
 まず、この応用領域をどのように考えるかによると思う。応用領域というのは「ものづくり現場で将来の活用が想定される」という定義になっており、我々製造現場を抱えている研究部隊では、幾つかの可能性がある。1番目は、ものを作っている製造現場そのもので計測を行って、ものが決まって流れているところを制御する。2番目は、新商品の開発時に、従来の分析法ではやはり足りないところがあり、実際にもっとうまく動作する素材あるいは材料を作り込んでいるのは、製造現場ではなくて、やはり研究開発での実験現場である。ですから、実験現場で作るときの作り方であるとか、それが使われるときの環境をモニターして、そのパフォーマンスが分かれば、新しい商品開発ができる。以上、大きく言うと2つあると思っている。
 もう一つは、製造現場で、例えば、溶鋼の各種計測をする場合、いきなり炉で測定しようとしても、それは無理である。では、どうするかというと、ラボで製造現場のミニチュア版の実験装置を作って、小さなるつぼで溶かし、どういう反応が起きているかを計測できれば、製造現場そのものには持っていけないが、ものすごく製造現場に役立つという視点もある。
 ですから、この「応用現場で」というのをどう定義するかによって、いろいろケース分けが出てくるというのが正直なところである。
 先ほどの1番目と2番目であるが、1番目はどちらかというと現場に持っていって、現場の方で測る。例えば、製造現場で、疵がどういうふうに出ているのか、疵が出そうだと思ったら、それをうまく製造プロセスの条件の方にフィードバックして、安定的にいい品質のものを作るというものかと思う。
 2番目の例は、どちらかというと製造現場ではなくて、プロセスなり、新商品を作る場合に役に立つ計測を実験室でやる計測であり、ものづくりに役立つという志向が強いものであるという気がする。
 3番目はちょっと視点が違って、これは1番目とも関係するが、現場で測るためには、やはりある程度モバイル型がいいと思うし、突発トラブルが起きたときに、どうして起きたのかを定点観察ではなくて、トラブルが起きた所に持っていって測定するということもあり得るわけで、製造現場では非常に役に立つ。
 この3つを3つに分けるのがいいのか、また違うカテゴリーにして、明確にした上で応募するという手も確かにあるかもしれない。

【主査】
 ご意見は、むしろ1番目と3番目を1つにまとめて、その上で1番目と2番目を選択する。ですから、3番目を1番目に繰り込むという発想ということである。

【委員等】
 そういう意味だと、1番目の方に「ものづくり」という部分をある程度、明記された方がよいのではないか。

【主査】
 例えば、「ものづくり現場における」を1番目の冒頭につけ加える。

【委員等】
 ものづくりをどうとらえるかという点に対して、この先端計測分析技術・機器開発というのは、やはり最先端の出てきた成果等が、ものづくり現場にも最先端であるからこそ役立つというような、もっとすごいことに利用できるような、そういう観点で私はとらえていたので、2番目のテーマに関して、実験室レベルですごいことができる、だから次につながっていくというようなカテゴリーもあっていいのではないかと思う。
 あと、リアルタイム性やモバイル性に関して、もっと現場に近いサイドでどういう貢献ができるか。ただ、あくまでも日本発の、最先端の技術開発に基づいたものであってほしい。

【主査】
 ご指摘のとおりである。

【委員等】
 3番目のところで「ものづくり」と書いてしまうと、「実験室とも言えないか」となりますが、私の頭はそうではなく、製造現場に直結する先端計測システムでないといけないととらえている。
 理由は、5年ほど前にある海外企業が、半導体の最先端の分析技術を発注するときに、「ラインに入れられるもの」と条件をつけた。それで請負側は必死になって、そのラインに入れるために、ものすごい技術を開発し、ある海外企業には入ったけれども、それが日本には一台も入っていない。なぜかといったら、日本の半導体産業がそういう注文をつけなかった。つけるだけの見識がなかった。つまり、そこで必死になって開発した技術は、その海外企業以外に出ないということ。私はそのとき、なぜ日本の製造メーカーは海外企業よりももっと前に現場直結型、オンラインではなくてオンファクトリーだと思うが、そういう注文をしてこなかったことも、半導体産業における製造部門の衰退の一因ではないかと、計測の方から思っている。
 そうすると、確かにこの表現は「ものづくり」だけ。ものづくり現場と言われると、一つぐらいは役に立つ産業界があってもいいような気がする。ですから、2つをうまく1つにして、そのかわりに「製造現場直結型」とかいうものを堂々と打ち出して。そのかわり、後ろはやはり先端計測であり、普通のモバイルではではなく、本当に最先端の分析のものをそこに直結できるようなシステムをどうやって構築したらいいのかということを問う姿勢もこの委員会にあってもいいのではないか。

【委員等】
 今、半導体製造で物すごく注目されているのは、APC─アドバンス・プロセス・コントロールと言われている。300ミリのウェハで1枚ダメになったら大変。ロットごとNGになったらもっと大変、何百万円もすぐ損失してしまう。リアルタイムで起こっている状態を計測するだけではだめで、その計測したものをどうやって製造プロセスに制御していくかということが大事。実はAPC・AECコンファレンスというのもアメリカでも長年やっているし、ヨーロッパでももう何回もやっているが、ようやく今年初めて日本で11月に始めるということで、そちらの方もちょっと遅れている。本当に今、プロセスを科学的に計測して制御して作るということが重要で、リアルタイム計測して制御することが、まさにものづくりの現場に必要で、そこまでやるようなものができたらと思う。

【委員等】
 そうすると、頭に「製造現場直結型リアルタイム」を付ければ明確になる。

【委員等】
 その通りだと思う。ただ「分析」ではなくて「分析・計測システム」ぐらいに。分析だけでも結構重要ではあるが、まず分析ができなければいけない。計測はどこか違う役割があるかもしれないが、「分析や計測制御システム」というふうになればいい。ものづくり現場はものすごくハードな環境である場合を想像する。

【委員等】
 例えば溶鉱炉の横だとか。

【委員等】
 そういう意味では、どちらかといったら1番目と3番目を一緒にしてもいいと思う。

【主査】
 1番目と3番目を一緒にした方がなじみがいいと思う。

【委員等】
 いずれにしても、おそらくいきなり現場というわけにはいかなくて、実験室レベルで相当詰めていくという研究になると思う。

【主査】
 それは大学の助けを必要とするのか。

【委員等】
 そもそも計測がきっちりできるということで、大学も一緒になって、むしろ研究所や大学もそういうコンファレンスでも学問レベルで半導体の製造をどうするかを、今やろうとしている。

【委員等】
 本当に大学を巻き込んでいいプロジェクトかどうか。民間企業のユーザーとメーカーとを結びつけるのであれば、経産省でやればいいわけで、文科省でやるプロジェクトではなくなってしまう。ですから、大学を巻き込んで意味がある形での応募で、その上で非常に儲かるというものであればと思う。

【委員等】
 どうも大学は頼りないのではないかという感じなのか。

【委員等】
 大学が食いついてこないことになりはしないかということである。

【委員等】
 試作とか開発のお手伝いをしている中小企業の現場からのお話をしたい。エキシマレーザや最先端のファイバーレーザを使って、研究開発をやる、試作の研究を一緒にやっている会社がある。今現在2,700社のお客さんがいる。
 最近では、加工する装置が試作レベルあるいは研究レベルにある装置は、これぐらいの精度でできるといった、光の性能、それから加工のシステムもできているが、実際に、ナノレベルの加工にしてもしっかりと現場で使えるような計測装置はない。
 この「ものづくり」と言っているのは、生産レベルももちろんあるが、大企業あるいは大学と一緒になって最先端の研究開発のお手伝いを行っている。そのときに、中小企業もそういう設備を持って、評価だけではなく、ちゃんとしたデータをつけて渡さないといけない。
 ですから、非常にニーズとしてはあって、それを今、大企業だけではなくて中小企業も最先端の計測分析機器を開発しているので、良い提案が出てくる可能性はあると思う。航空宇宙、F1などでは、本当に極限のものを持ってできる可能性もあるので、期待される効果の例について、2番目、3番目の例はものづくりとちょっとまた違った分野になって、例えば半導体デバイスだとか、あるいは最先端の部品加工、試作、研究というところを例の中に一つ二つ入れていただいた方が、具体的な効果の例が分かりやすいのではないかと思う。

【委員等】
 初歩的なことであるが、例えば圧力だと、いろいろなガスがミックスしているが、その分圧の基準が全然はっきりしていない。非常に基本的な問題で、そういうトレーサビリティをどうするかといったことも含めて、基本のところからきっちりやらないとだめだと思う。

【主査】
 それでは、確かに1番目、2番目をとって3番目を落とすとご提案申し上げたが、確かに3番目の課題は大変ニーズがあるということであれば、1番目と3番目を合体させて、それで2番目も採択するという方向でまとめさせていただければと思う。
 そこで、ポイントと期待される効果の例の組みかえが起こり、若干作業が起こるが、ご意見をなるべく組み入れる形で案としてまとめたいと思う。
 まず、1の方で、先ほどの議論を受け、領域の表現は「人体内の臓器、病態、脳の高次機能などの無・低侵襲リアルタイム高解像度3次元観察、及び人体中の物質の無・低侵襲定量分析」こういう表現で確定させていただきたい。
 「同時に」と言うとかなり厳格になるため、「同時に」の代わりに例えば「さらに」として、両方できるニュアンスとしてこちらが主たる目標の装置とする。一方、「この程度はできます」と少しウエイトをつけたような提案もいただくようにする。
 2.で、「リアルタイム・ハイスループット」と「ハイスループット」を補った表現になっており、「ものづくり現場における」をつけ、「ものづくり現場におけるリアルタイム・ハイスループット観察又はリアルタイム制御可能な計測分析システム」というタイトルでいかがか。
 それからもう一つ、「機能発現・作動状態下におけるマクロからミクロレベルのダイナミック計測」であるが、これについては、このままでよいか。

(異議なし)

 では、これで領域設定の議論は終わらせていただき、ポイントになる文章は少し工夫しまして、事務局と私にお任せいただくということにさせていただきたい。

(資料4に基づき平成19年度公募・採択の実施について、資料5-1,資料5-2に基づき事後評価の実施方針について説明)

【委員等】
 資料4の要素技術プログラムに関してであるが、従来、私たち環境計測あるいは環境計測技術を、実際の環境研究にどう生かせるかということを考えてきたし、現場でもいろいろやってきたが、幾つか重要な点がある。例えば気候変動や、あるいは自動車排ガスのモニタリングなど長期測定が重要なものもある。既存の技術でも、非常に簡単な装置だったら長期間働かせることは簡単であるが、それなりに微妙な測定器を安定・高精度に持っていくという技術は、非常に努力が要る。それが実際に、今の環境研究に要求されている事項の重要な部分だと思っている。
 例えば、ディーゼルのモニタリングのためナノ粒子を長期間安定して測ることのできる装置はない。気候問題にとって微粒子というのは地球の熱収支を研究する上で非常に大事である。この微粒子の効果が地球シミュレーターにおける地球環境予測の非常に大きな不確実性につながっている。気候変動のシミュレーションをやっている方と話しても、大気微粒子の気候への影響が長期的にどう変動するかを調べるために、長期安定したデータをとることが今後、非常に重要になってくると考えている。
 そういった意味で、大学の研究者と企業の研究者が一緒になって長期的に安定に働く技術を確立させることが重要と思う。それが最終的に研究などに有用であるかという点で考えたときに、非常に役に立つものが生まれると思う。
 事後評価についても、ものづくりに関しては利用面が非常に重要視されている。同様に、環境研究でもどういう情報が今後重要になってくるかということを少し考えた方がいいのではないかと思う。研究者をエンドユーザーとして捕らえ、要素技術の公募項目にその点をぜひ考慮していただければと思う。

【主査】
 公募の要素技術の例示に、今、ご指摘のような表現を入れるということか。

【委員等】
 1つはそうである。それから、要素技術の対象のところで「かつ、計測分析機器の分解能、精度、感度、処理速度……」と書いてあるのですが、その中に長期的な安定性という表現を入れたい。

【事務局の発言】
 耐久性という表現でいいか。

【委員等】
 そういう言葉でもいいかもしれない。

【主査】
 そうですね、ロバストネスというのは頑健性で、丈夫ということであるので、耐久性でもいいかもしれない。

【委員等】
 しかし、それは先端機器に共通して求められていない。環境だけだという気がする。どういう先端機器だって、長期に安定してくれなかったらそれこそトレーサビリティはなくなる。

【委員等】
 時間スケールの問題である。例えば、1週間しっかり働けばいいということもあるかもしれないが。

【委員等】
 1週間でつぶれてしまうような先端機器はメーカーが開発してくれない。

【委員等】
 たしかにそうである。

【委員等】
 本当の装置は経時変化が起こることはあり得るわけで、これをどうやって起こらないようにするかというのが一つの課題である。

【委員等】
 例えば明石大橋は100年の設計で、そのためにどういうふうにしているかといえば、湿度が40パーセントを超えないように数10メートル置きにセンサーをおいて、1点でも40パーセントを超えれば乾燥ガスを入れて対処するということをやっていると聞いている。そこに耐久性や長期間劣化防止を盛り込むというのは果たして妥当かと思う。

【委員等】
 実験室の装置は、連続して1年間継続して動かすことを前提にはしていないと思う。環境の計測というのはまさにそういうことで、非常に長期間連続して測ることが求められる時代になってきている。

【委員等】
 電子顕微鏡は20年たったら一番性能が出る。20年物は非常に大事で、超高圧電子顕微鏡は35年ものがある。ですから、機器によっていろいろ違うのは認めるが、これをうたうと、機器を開発されている方に対し、何となく申し訳ないことを言っているような気がする。

【委員等】
 計測機器は、私ども製作現場では絶対必要であるが、ものすごく高価だし、なかなか手に入れるのが難しく、計測がなかなかビジネスにならない。加工して幾らということになる。最近では、計測のデータもつけてビジネスになるという時代になってきた。やはり加工というのは、加工だけして納めるという時代ではない。

【委員等】
 ここは委員長にお任せしたい。

【主査】
 やはり長期安定性とか耐久性を格段に向上させるための原理とか仕組みとかいうものはあっていい。例えば、3年間誤差の少ない機械時計をどうやって作ったかというと、温度保証をし、温度が変わっても時計が狂わないように、そういう仕組みを入れて、やっと世界一周の航海ができるようになった。そのため、長期安定性を1.の途中に入れるということも要素技術の対象としたい。

【委員等】
 現場では本当に問題であるので、入れた方がよい。

【主査】
 私から1点だけご議論をお願いしたいのは、機器開発プログラムと要素技術プログラムの予算の比率である。3対1というのは、従来やってきた割合であり、この結果は、大体予算規模からすると、採択件数がほぼ近いことになる。
 それで、実はもう少し採択件数を増やしたい。この3対1の比率を例えば2対1に変えると、相対的に要素技術開発の採択件数が増えるため、今、ご指摘のようないろいろなことを考えた応募にも対応できるのではないか。
 「およそ以下を目安に」と書いてあり、少し要素技術の採択件数を増やしたいということをお伝えするメッセージとして、例えば2対1に変えるのはいかがか。

【委員等】
 フレキシブルに考えてもいいのではないか。

【事務局の発言】
 昨年は2対1である。今回は課題数がおおよそ同じになるように、3対1ということでどうかということである。

【主査】
 では、今回は2対1でいって、少し要素技術の採択数が増えてもいいようにしておきたい。もちろん、目安ということである。

【委員等】
 機器開発と要素技術のバランスの話がありましたが、機器開発の中で領域特定型と非特定型に関しては、特に明示はしないのか。

【事務局の発言】
 「領域特定型に重点を置いた選考をすべき」ということで、昨年も今年も小委員会の意見としていただいている。

【事務局の発言】
 応募件数としても領域非特定型の方が多い。それで、領域特定型のみにすると、必ずしもいいテーマが上がっているということにはなっていない。だから、現実に公募すると、これぞまさにここで議論しているものと一致しているといえるものは、なかなかない。
 ですから、必ずしも採択する課題数が、ここの委員会の要望どおりにはなっていないと思う。

【主査】
 確かに評価があるから難しい。公募要領ではウエイトをつけると宣言している。しかし、結果はかなり応募のバランスがあって、これは最初から抱えている問題であるが、現実に評価をしていただく際には、やはりレベルが高いものをとるということで、原則通りにいかない部分もある。
 ハードルを高くして優れた研究を募集するという考え方がこの委員会の共通認識であるが、現実に、そこまでしっかり応えていただける応募は必ずしも数が多くない。ですから、考え方としてはこういう考え方でいくが、現実は提案されたものから優れたものを採択する。なかなか悩ましい。
 今、平成19年度の議論をしているが、平成20年度の議論の際には、1度そのあたりも含めて十分に議論を重ねて、基本方針を若干変えるということはあっていいのではないかと思う。このメンバーで今年の夏頃には平成20年度の議論をすることになる。ですから、平成20年度の議論のときに、もう一度そのあたりをご議論いただければと思う。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)