先端計測分析技術・機器開発小委員会(第12回) 議事録

1.日時

平成18年7月27日(金曜日) 13時30分~15時50分

2.場所

文部科学省 10階 研究振興局会議室

3.出席者

委員

 二瓶委員、北澤委員、小原委員、志水委員、田中委員、中村委員、西野委員、原委員、松尾委員、森川委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官、佐野研究環境・産業連携課長、堀内研究環境・産業連携課研究成果展開企画官、上田研究環境・産業連携課課長補佐

オブザーバー

 本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
 相馬独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進室長
(説明者)
 新井東京大学大学院工学系研究科教授
 鯉沼独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センターシニアフェロー

4.議事録

(1)平成18年度先端計測分析技術・機器開発事業の実施状況について

(資料2、3に基づき、事業運営にあたっての改善事項及び平成18年度応募・選考について説明。)

【主査】
 JST-SENTANシンポジウムは、本プログラムの成果を広く一般にアピールするものである。次回、シンポジウムの内容を具体的にリストにしていただき、当日配付したパンフレットを委員にお配りいただきたい。

【事務局の発言】
 次回用意したい。また、このシンポジウムとは別にさらに広く産学官の方々にこの事業をアピールするということで、9月5日に経団連ホールでシンポジウムを別途企画している。これについては後ほどお配りする。

(2)平成19年度先端計測分析技術・機器開発事業の実施方針について

(資料4、5に基づき、分野別推進戦略の概要及び「先端計測分析技術・機器開発事業」による産学連携イノベーションの強化について説明。)

【事務局の発言】
 現在、JSTで取り組んでいる中に超LSIの故障解析がある。従来のように1つ1つ電流を流してどこが悪いか見るのではなく、レーザーを照射すると故障箇所から電磁波が出てくるので、それを検出することによって非検体を配線することなく迅速に故障解析ができるという技術である。しかし、そのようなものづくりに関するものは今のところ非常に少ない。少ない理由の1つは応募が少ない。少ない応募の中から採択するのも難しいので、民間の方にもこの事業について、具体的にものづくりのテーマが走っていることも踏まえてPR活動をするなど、応募の数を増やしていただく必要がある。

【主査】
 採択されたテーマの指導をされているお立場で、ただいまのような発言をいただいた。ご指摘のとおりである。
 現在のプログラムは、どちらかといえば基礎研究にウエイトを置いたものと広く認識されているように思う。その中でも、ものづくりに直結したような課題が提案されて採択されているという事実は、たいへん大事なことである。
 一方、19年度には、従来の基礎研究重視の研究開発に資する先端計測分析機器のみならず、ものづくりに重点を置く先端計測分析機器をつけ加える、そういう枠組みのご説明をいただいた。ご意見があればお伺いしたい。

【事務局の発言】
 我々はいろいろなところを訪問して進捗状況を把握しているが、当初はむしろ大学の先生の方に問題があり、機器開発と自分の基礎研究との区別が明確でなく、もらってきたお金はもう自分の研究に使ってもいいという意識がなきにしもあらずで、その意識改革が大変だった。それで我々が行って、「この開発費は機器開発であって、先生の研究はその機器ができた後にやってもらいたい。」という説明をした。1~2年経つと理解が進み、現在は順調に進んでいる。民間企業のものづくり重点のための機器に関しては、企業の意識が明確できちんとやっていただいており、特に問題はない。

【委員等】
 事務局の説明で非常に大事な点があった。先端計測機器開発の中で日本は現場志向の観点が抜けていた。例えば、現場で午前3時ごろにトラブルが発生し招集がかけられて集まるが、肝心の電子顕微鏡がない。専門家は、どれが故障か分かればラインを走らせるか止めるか決断できる。しかし電子顕微鏡は現場にはなく、はるかかなたの振動のない閑静な土地に行かなければ最先端の装置はない。
 ところが、アメリカの企業が今度出した電子顕微鏡は完全に現場志向型である。昨年の国際会議では、飛行機でハワイに運び、3日間で立ち上げ最高の性能が出ている。展示が終わったらメキシコの国立研究所に運んですぐに設置する。また、ヨーロッパの企業でも新しいスタートを切っている。これも現場のニーズにそのまま応えるように設計をしている。
 そういう意味では、日本のメーカーの意識改革が非常に大事である。先端計測機器の開発で、特定環境で最高性能を出すことは1つの正しい方向性である。しかし、本当に産業を支えるのはまさしく現場である。つまり、オンファクトリータイプの先端計測機器を開発するというメーカーの意識改革が非常に大事である。
 最もよい例としてX線マイクロアナライザーがある。この装置が出たときに新日鐵はすぐに製造工場に持っていった。そこでスラグの計量分析を行って、そこにカルシウムがどのくらい入っているかによって鉄鉱石の品質管理が見えると言った。それで一斉に製鉄所現場に入って、空前のベストセラーになった。X線マイクロアナライザーは今でもベストセラーである。
 つまり今度は、現場でこれを使えばどんなすばらしい情報が出て、ラインにどのようにフィードバックできるかという、ユーザーの意識改革も重要である。新日鐵がすばらしかったのはスラグを分析したことである。これにより鉱石の品質管理ができることが分かった。これは日本のすばらしい仕事である。
 SIMSも同様で、SIMSが登場したときに、アメリカはアポロ計画の月の石の分析に集中していた。ところが、日本が出したSIMSは半導体志向型で、アメリカの10分の1の金額であるが、10年間は非常によく使われた。メーカーが非常にうまく半導体のニーズを把握していた。
 メーカーもユーザーも、もちろん大学も意識改革をして、現場志向型、オンファクトリータイプの先端計測機器にもウエイトを置いていただけるのは非常にいい視点である。神社仏閣みたいなところにしか電子顕微鏡を入れないで許せるかと思っていたが、これでメーカーの意識も少し変わるのではと思う。

【委員等】
 半導体はビジネスの形が変わった。分析機器は比較的オープンになってきて、このような事業で開発したものが社会的に波及しやすくなっている。もう一つは、産業の形が随分変わり、抱え込みの部分もあるが、それはどちらかというと使い方のノウハウで、装置そのものはオープンになりやすいのでこのような資金を使っていければと思う。

(資料6に基づき、公募対象となった開発領域について説明。)

(3)平成19年度開発領域設定に関するプレゼンテーションについて

東京大学大学院 工学系研究科 精密機械工学専攻 教授 新井 民夫氏

 ものづくり分野からみた計測機器開発への要求と題し、特に計測系と設計系の融合について話をしたい。
 実はコンピュータの中の情報とモノは一致していない。例えば現場で作られている自動車の台数が本当に正しくなったのは95年過ぎであり、それを信じるようになったのは2000年くらいになってからである。モノの情報に関しては、まさに計測機器が良くならない限り一致しない。
 ものづくり技術分野の分野別推進戦略策定の際、ITを駆使したものづくりとして、CADを作りたいという意見が多かった。ITを駆使して日本型のものづくりシステム技術を作るということである。今やCADのほとんどがフランス製などの外国製である。80年代半ばまでは電子関係のCADも機械関係のCADも日本は強かったが、90年代半ばから弱くなった。
 そのようなときに日本型のCAD、特に三次元CADを作れるかというと、実は多くの人が否定的である。いまや3次元CADを開発する人材も十分ではない。むしろ、CADを使う技術が必要で、その技術というのは計測分析機器とのカップリングである。計測分析技術や機器の開発によって精密化を進めていきたい。
 精密加工技術の大半は計測技術で成り立つ。どこまで測れるかで精度が出る。ただ、それを使えるような形でCADにデータを戻しているかというと、実はそうではない。
 分野別推進戦略でも、CADと計測をカップリングすべきという提案がなされている。
 つまり、三次元CADで機能のシミュレーションを行い、またCADに戻して詳細設計し、実際に金型が削られる。しかし、CADで考えたとおりの形ができているわけではない。まず、切削するときに金型の形状が変わる。それから、材料を転写するときに、伸びたり縮んだりする。そして、鋳物であれば中に「す」ができる。
 これが本当に正しくできているかについて余り調べられていないが、最近はX線やMRI、特にX線CTでいろいろなものを調べている。CADと実際のモノとの間をつなげてぐるりと回し、かつターンアラウンドタイムを短くすることが競争力であるというのが製造技術にかかわっている者たちの意識である。ですから、計測結果を書き込めるCAD、そしてCADからの要求で計測するということが重要である。
 計測は、例えばマイクロメーターオーダーあるいはナノメーターオーダーで測れるが、それを100万点測るとなると時間がかかり、どうやって測るかが問題になる。そういったものを自動的にできるかというと、必ずしも楽ではない。
 こういった情物一致は、実はいろいろなところでできていない。現物検証は、工程内で現物形状を計測して形状寸法を検証する。インプロセスの計測では通常代表的なパラメーターのうち1つか2つだけを測定して推定するというのが通例であり、形状全体を測定することはなかなかできない。現物設計では、実際の形状を変形してデジタル化して、そしてまた実際の形状を作る。
 まず現物をX線で測定してそれを三次元のCADに乗せるためにメッシュを作って、画像からCADデータを作る。そういったものから点群を作って、点群から面を一つ一つどれがどこの面であるかということを認識させながら面を貼ることが必要になる。全部自由曲面で連続させてよいわけではなく、デザイナーの意図した面に区切っていかなければいけないという問題がある。
 工場内全部の測定を行う場合、例えばロボットが間を通ろうと思うと、精度としてはミリオーダーが必要であるが、工場全体は数百メートルになることから、数百メートルの中でミリオーダー、しかも見えないところも測定しようと思うと大変である。
 最終的には、CADやプロダクトモデルにデータを乗せたい。そのための測定技術がばらばらにあるが、そこをうまく繋げるソフトウエアがない。また、測定系もいろいろなものが欲しい。特に広範囲にわたって測定できて高精度のものが欲しい。
 次にお話しするのはフェムト秒コム距離計についてである。製造現場では、数メートルから100メートル程度の比較的長距離を、サブミリ程度の光計測としてはかなり低い精度で、完全に低価格で測定することが今求められている。そのため、フェムト秒コム距離計を導入したらどうかという提案である。
 原理としては、フェムト秒のレーザーを出すと、20ナノが空中を飛んでいるスケールになる。だから、そのスケールのどこを測っているのかが分かれば、それをフーリエ変換してからくし状のものができて、干渉から距離を測ろうというやり方だそうである。
 これで広範囲、低価格、安定なものができればいいと思うし、理論的には私も理解できる。特に、二次元、三次元の位置計測をしたい。三次元の位置計測装置というのは決して楽ではない。この提案ではフェムト秒レーザーをLANでつなげて、時間的なタイミングを測ってキャッツアイで反射させることによってそこまでの三次元的な絶対位置測定をする。これらたくさんの測定計があると総合キャリブレーションができる。これはロボットの世界でやっているが、そういったことでできるという提案である。
 私のお願いは、測定した後CADにつなげてCADの方から必要な量を測定するというシステムを作っていただきたい。それはCADと計測装置の相互利用であり、広域、高精度、高速度といったものを求めたい。常に今の世界はデジタルモデルから移動しているので、そういった方向でお考えいただきたい。

【委員等】
 こういうものがあれば非常に理想的である。機械設計し、例えばMCを使って作っても実際には誤差があり、本当にできているか確認する作業も常にしなければならない。大量生産のときにはサンプリングして行うことになると思うが、果たしてそれがうまく測れるかどうか、あるいは溶接などの装置が届くかどうかというものを全部折り込んで、どのコストが安いかということを全部やってくれたら本当に理想的で、そういうものに計測系と設計系を結合してやってもらえればすごくうれしい。しかし将来的なことを考えると、せっかく日本にあるものづくりをコンピュータの中に入れてしまって、本当に日本の競争力が保てるのかどうかが非常に気になる。例えばノウハウを全部パッケージ化して、海外にどんどん売って、ソフトメーカーだけが儲かってしまうようなことがあるのではないか。将来的にどのようになるのかお聞きしたい。

【委員等】
 ノウハウのうち分かっているのはまだほんの数パーセント程度であるので、もう少しノウハウをちゃんと暗黙値から明示値に変えていってもいいと思っている。特に、今のように若い人たちが必ずしも暗黙値を引き継ぐことができない状態のときには、明示化させるような努力が必要だと思う。
 勘とこつのうち、勘というのはほとんど計測であり、こつというのはものの動かし方である。両者のうち勘の方がどんどん鈍っている現状では、使われ方を考えた計測が重要だと思う。
 別の問題として、知恵を売る体制をもっと考えていかなければいけない。産業用ロボットは使用中に必ずサーバーにアクセスして、使用時間に従って課金をする。計測器も売り切りだけではなく、計測した価値に従って課金をすることが将来できれば、より一層産業界は頑張れるのではないか。

【委員等】
 果たして日本で情報技術が育つかどうかが、大学の人間として一つ心配な点である。余り記憶が定かではないが、日本の情報関連の教官が2,700人くらいだったと思うが、その中でソフト開発ができるのは150を切る。情報産業から見たときに大学に投資していては間に合わない。産業界にとにかく資金を投入して、産業界の活力を新しいソフト開発に向けるべきという提案があり、ものすごくショッキングであった。武漢大学では学生も含めて1大学で約5,000人の情報関連者がおり、そこへ日本の産業界がソフトの開発を全部委託している。清華大学でも、情報関係の大学院の修士論文も、学生の奨学金も全部日本の企業が投入している。
 果たしてそういう状況の日本で、先生が描かれるような構図の中で肝心なソフトは一体どこが作るのか。

【委員等】
 私自身、日本でのCAD独自開発には相当否定的である。70年代にはジオマップ(GEOMAP)などいくつかの典型的なCADを日本の北大、東大、京大などが頑張って開発した。それが今は完全になくなってしまった。プロダクトモデルという形で、世界の標準化を引っ張ってはいるものの、商品として機械系CADは本当に弱くなってしまった。かつ、今や学生がいない。それから、学生を生産する教育システム、教授が少なくなっているようである。
 それで現在、CADに現実のものを書き込む方法のところで頑張ろうということが1つの議論となっている。

【主査】
 形状については、ものの性質、物性が大いに関係する。計測や分析と現実の形の情報とがきちんとリンクして、つながりを持った関係式がないと、情報系からの出力でものが制御できることにはならない。これは相当難しいのではないか。
 例えば、高分子プラスチックはまさに粘弾性の世界で、作るときの速度で出来が全然違う。CADの方のアプローチなのか別のアプローチなのか分からないが、そのあたりの研究の現状はどうか。

【委員等】
 研究者数は日本では少ないが、例えばプラスチックのインジェクションモールドが必要な企業では相当行われている。鋳物やプラスチックはオーストラリアが主流である。基本的には流れ解析であるが、その解析結果と現実のものは、もちろんずれがある。そこから先は勘とこつの世界であり、今まで日本は金型屋のレベルが極めて高いと言われていたが、最近はイタリアや中国が非常に追い上げている。かつ、彼らは大量生産の強みがある。いろいろなことをやりそこから選べばいい仕事が見つかる。

【委員等】
 数年前、ある町工場の職人と金型の産学連携開発を行ったが、うまく行かなかった。このような失敗事例を学ばないといけないような気がする。

【主査】
 ものづくりにおける日本の強みをさらに強くという発想で一体何を狙えばいいのか。次世代型の他からは容易にまねされないような飛び抜けたものづくり技術、それに貢献するような計測分析技術は何かが今議論したいテーマである。それがここだというところを幾つか想定しないといけない。

【委員等】
 ものづくり技術は相当広範な技術に支えられており、結局は売れなければだめだというところがあるため、技術的にすばらしいからといって物事が進むわけではない。しかしやはり最先端のもので引っ張らざるを得ない。そうすると、考え方としては1つの峰が作られるのではなくて、八ヶ岳のように、ある種の高原があって基盤があって、そのところにさまざまな峰があるという形を狙わざるを得ないと考えている。
 一つは情報家電系統で、ロボットやその他の情報機器につながるというもの。それ以外にはライフ、ナノなどの4分野があるが、それぞれ最先端のものが出てきたとしても、製造業の商品に結びつくところは非常に小さい。例えば、ロボット分野は4,000億から6,000億しかない。このように、先端技術は必ずしも市場規模が大きくない。やはり、製造業の場合は自動車に依存することが多い。ですから、ロボットの技術を伸ばすには、自動車産業の技術として一回育ててもらって使うというような考え方にならざるを得ないだろう。そういう点でここを突破口にしてブレークスルーの技術をバンと出せということはなかなか言えずに、むしろ何か技術を準備したらその波及効果の方まで、理学系の研究者の方もちょっと考えていただきたい。

【委員等】
 先ほどは随分否定的なことを申し上げたが、逆に期待できることもあり、日本はものづくりでうまくいっているが、暗黙知がどんどん失われていき、チームワークも少なくなってくるなど将来的に非常に不安な面があり、そういうところに対して何かやらなくてはならない。そういうときに、技術やノウハウを全部ソフトの中に織り込めないと完璧なユニバーサルなものはできないことを逆に利用して、例えばソフト自身をオープンなものにして、それを導入したそれぞれの企業で技術やノウハウをソフトにプラスアルファできるようにすれば、日本は生きる余地がたくさんあると思う。

(4)ものづくり・社会ニーズにリンクした先端計測領域の提案

独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターシニアフェロー 鯉沼 秀臣氏

 これまで走っている先端計測事業は、基礎的な研究を行う研究者の独創的な研究開発支援という色彩が強かったと考えている。その一方で、ものづくりにリンクした新しい先端計測領域が必要になってきている。
 JSTの研究開発戦略センターでは、まず俯瞰マップを作成して全体像を把握し、次に大事な領域が見えてきたら、関連する重要な人物、研究者、あるいはユーザーを呼んで、ワークショップを開催する。今回、ものづくりおよび社会ニーズにリンクした計測技術の導入という視点からワークショップを開催した。それに基づいて抽出した重要研究開発テーマを紹介する。
 俯瞰マップは何を測るかを横軸にして、縦軸を入出力、特に入力を重点的にとって考え、具体的な計測機器を対応する欄に書き込んだ。現在走っている課題は、点が分散し、広くカバーしていることが分かる。そのため、将来的に発展性の大きいと思われる部分をピックアップした。その1つがテラヘルツという領域、2つ目が高輝度の量子ビームの利用技術という領域である。また別の視点で、ハイスループット技術という領域。4番目に、標準化技術という視点で考えた。これをベースにワークショップを開催した。
 まず、テラヘルツであるが、テラヘルツは強力な発生源がなく電磁波計測の空白領域といわれ、高出力の発振器、高感度な検出器が出てくるといろいろと応用できる。すでに各国で研究開発が始まっているが、全体としてはまだプリミティブで、高性能化により、半導体から医薬品、安全・安心に関する部分、また、物理、化学、バイオにまたがるなど非常に広い応用範囲があるとの展望を得た。
 量子ビームについては、産業応用のビームラインを整備中であり、特にものづくりという観点から考えてみた。1例として、中性子を利用した物質、材料、デバイスが挙げられる。デバイスの階層構造の解析が中性子で測れる、あるいは、積層構造の解析が一度にできるメリットがある。
 3番目と4番目はものづくりイノベーションのためのハイスループット計測ということでまとめた。人件費が20分の1の国と勝負をするためにはハイスループット技術開発が必要である。場合によっては1,000倍、10,000倍の効率で合成と評価をともに早くしないといけない。合成装置はある程度のめどがついているが、計測の方はやるべきところが多く、開発の先手を取ってデファクトスタンダード化する形に持っていきたい。医薬や化学の分野とは異なり、固体材料は日本がかなりリードしているが、アメリカやヨーロッパが追いかけてきている。基本的な要素技術として、MEMSやナノテクを使って超小型化を図る。もう1つが計算機とロボティクスを駆使した合成・評価を一貫するハイスループットシステムを作る。これによって半導体や触媒、高分子ポリマー、バイオ系に活用され、新しい発見につながるというメリットも生まれる。また、ハイスループット技術そのものが先端ものづくりファンドリーなどの新産業になり得る。
 超小型化の例として、親指サイズの電子顕微鏡がある。非常に簡便に、測るべきところに持っていって測ることができるようになる。また、海外にポータブルなX線を持っていって遺跡調査ができる。超小型化にフォーカスしただけでもいろいろと応用できる。
 結論として、広い応用領域をカバーし、発展が期待される計測分析技術の系統的な技術開発が必要である。1つは、プロダクトイノベーションにつながる技術開発。もう1つは、ものづくり研究の多様化、高速化に対処するプロセス・イノベーションのための国際戦略的技術の開発が必要である。

【委員等】
 量子ビームは比較的大型の予算を持ったプロジェクトがある。これはそれを使うことを考えればよいか。それとも、量子ビームの予算をそれぞれ小型の予算でもう少し増やすということか。

【委員等】
 検出の部分は必要だと思っている。一般ユーザーからのファンドリー機能を作ろうとすると、必ずしも用途に見合った検出器がない。そういうところをセーブするというのが1つ。また、日本の大型研究施設はほとんどが政府資金で建設され、ユーザーもほとんど金を払わないで使用しているが、外国は政府のサポートが半分、残りの半分はユーザー負担でやっている。おそらく日本はユーザーフレンドリーな形になっていない。そういうことが1つの根底にあるはずであり、そこを考えるべき。

【委員等】
 JSTの事業はスモールサイエンス用のお金だと位置づけている。大きな加速器の一部分の研究は、全体で100億といった単位の予算があるので、そちらでお考えいただきたいと考えている。本来その中でビームラインも開発し、ユーザーのための設備も開発が行われていると思う。しかし、ユーザー用にはなっていないということで小型予算を用立てると、国の大型プロジェクトがユーザーを考えずにビームを発生するだけというプロジェクトになっていってしまう。そこのところが若干心配である。
 つまり、100億円でできなかった。実は103億円かかるというときに、こちらから3億円出しても100億円でできなかったところに吸い込まれてしまう。その3億円が重要ならなぜ100億円の中で見直して、重要なところをきちんとやらないのかという問題である。

【委員等】
 100億円で足らない部分を何とかしようと、いろいろなところからかき集めているというのが現状だと思う。大型施設は本来、特定の研究者のための装置ではなくて、いろいろな企業でも使えるような形にもっていければいいと思っている。

【委員等】
 いろいろな技術をサイエンスした結果どこかのビームが有効だということではなく、最初からビーム用にしか使ってはいけないといったら、明らかにビームを助けるお金ということになるのではないか。

【委員等】
 ビームはメインであるが、計測事業ではビームを発生するところは想定していない。ビームを使って計測をする部分でユーザーの立場として協力できる部分について、このような事業でサポートするといいのではないか。

【主査】
 今の議論は3年前にこのプログラムが始まったときのポリシーの一つである。広く有効に予算を使いたいということで、巨大プロジェクトの一部に使うのは優先順位が低いというポリシーでこれまできた。今の議論をもう一度別の見方で考えてみることは必ずしも反対ではないが、ハイスループットの議論になるとビームテクノロジーは本当に欲しくなる。そこをどう位置づけるのかという意味で、もう少しきちんと議論すべきだろうと思う。

【委員等】
 テラヘルツを取り上げていただいたことは非常にうれしいが、余りにも遅きに失したような気がする。たしか5年前にEUのプロジェクトは終わっている。その後すぐにテラヘルツの企業が2社できて、スペクトロメーターも売り出したという状況にあって、それから遅れること5年にして今からテラヘルツというのは大変悲しい。もう一つは、第1回目の審査のときにテラヘルツは5つ出たが書類選考で全部落ちた。
 この分野は大阪大学や東北大学で世界のトップレベルの研究を行っている。学術レベルではそれなりの成果が上がったにもかかわらず、残念ながらこのプロジェクトですら1件もエントリーできなかった。それから3年経ち、日本でももうメーカーが2つもできている。その段階になってからテラヘルツが大事と言われてもみな悲しかろうと思う。

【委員等】
 これからでも開発すべきことがあるのではないかということである。

【委員等】
 やるのであれば具体的な例を聞かせてほしい。しかし、スペクトロメーターも含め海外で特許は取られている。学術レベルでいえば日本はまだまだかもしれないが、産業レベルでは5年という格差は大きい。今からスタートして産業界で活用しようとしても特許が押さえられているから、恐らく動けないと思う。応用特許で押さえられたらどうしようもない。先生がどうして5年前にいてくれなかったのかと思う。

【委員等】
 東北大学のテラヘルツは、4年前にもっと大きなプロジェクトでスタートしている。ただ、その大きな他のプロジェクトがあるときにこのプロジェクトの中で合格させるべきかどうかが審査委員会でも問題になったと思う。

【委員等】
 どう見てもこの技術は日本にとって本当に大事だと思ったので、5つともヒアリングにも上がらず書類選考で落ちたのは、非常にがっかりした。

【委員等】
 でも、すでに約5年日本でテラヘルツをやっている。文科省のプロジェクトの中にたくさんあり、経産省の中にも入っている。第1次5カ年がほぼ終わるとすると、この提案は、第2期5か年テラヘルツのプロジェクトになっていく。

【委員等】
 7年ほど前に国際シンポジウムを開くなど世界のトップレベルの研究が出ていた。何とかこの状態のときに何かサポートがあれば伸びるのではないかと思っていた。

【委員等】
 日本では、超伝導を使った日本オリジナルなテラへルツプラズマ発振のセオリーを考え出している人がいて、うまくいけば今より100倍以上強力な発振源になるのではという夢がある。そういうことも含めてもう一度見直しをして、巻き返しを図るのもいいのではないか。

【委員等】
 日本でもスペクトロメーターを売っており、日本の研究が全然やらなかったわけではない。

【委員等】
 そうではなく、昭和60年代に委員会を作って営々とやってきたが、EUで研究が終わって会社もできてから、ようやく資金が出てきても遅いということである。本当に優秀な研究者がよくやっており、この提案はうれしい。でも、遅れた。

【事務局の発言】
 3年前の審査の際に私もいたが、申請の一つはすでに走っていてインターネットに出ているものとほとんど一緒だった。

【委員等】
 5つの中に1つか2つはヒアリングに残ってほしいというのがあったはずである。

【主査】
 マテリアルインフォマティクスがどういう狙いかいまひとつ分からないが、バイオインフォマティクスのその後の位置づけは大事な部分である。このプログラムの中でどう位置づけるべきか。

【委員等】
 いろいろな拠点ができているが、人が全く足りない。また、ここが弱いから、現場で使いやすい形になかなかならない。そのため結局外国のものを使ってしまう。また、英語の壁がありそこでまた負けてしまう。両面で、何とかしなければいけないというのが共通認識である。

【委員等】
 バイオインフォマティクスで日本が苦戦をしている最大の理由は、システム開発に関与していなかったというところにあると思う。最初のシステムとソフトウエア開発から関与しないとなかなか難しい。
 データベースはもう過去のデータであり、それをもっとリアルタイムにいろいろな計測器から出るデータをたとえばXMLのロジックを使って共通にやりとりできるようなシステムを国際連携のもとに作るなど、そういう提案をしたい。LANやウェブを使った共通言語に従ったデータの収集と、必要なときにデータマイニングするところまで含めた戦略的システムづくりを考えるべきである。

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研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)