先端計測分析技術・機器開発小委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成18年1月13日(金曜日) 14時~16時

2.場所

古河総合ビル 6階 F2会議室

3.出席者

委員

 二瓶、北澤、小原、近藤、志水、田中、中村、原、松尾、森川各委員

文部科学省

 藤田大臣官房審議官、佐野研究環境・産業連携課長、青木研究環境・産業連携課専門官

オブザーバー

 佐藤独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進室長

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

委員等
 産業界では、新しい製品を作るときに関連特許を書かせるのは必須条件の一つになっている。会社には通常、特許の担当部署が整備されているが、大学では関連特許を調べることのできるシステムが整っているかが気になる。整ってないようだと大学にとって相当アンフェアだという気がする。

委員等
 私の大学は私立大学であるが、発明委員会に顧問弁理士がおりそこを通してチェックはできている。数年前は国立大学でもそこまでできなかった。現在はきちんとした対応ができるのではないかと思う。

主査
 私の大学も全く同じような状況である。当事者が発想をまとめる段階で、関連する特許をどのぐらい勉強しているかというと、正直申し上げて、大学のレベルは相当遅れていると思う。

委員等
 大学側にとってこれが足かせになって公募しにくいということにはしたくない。「要素開発は学だけの方がうまくいく場合もあり得る。」と前回申し上げたこともあり、実際にシステムとして動かしていくには、そういった点も細かく見ていかなければならない。

委員等
 今の点は非常に重要である。例えば、研究所でロゴマークを登録するときには事前にきちんと調べるが、それには費用が発生するため、その費用を持つかどうかが大学としてできるかどうかだと思う。今は知的財産本部が整備されてきたのでルートはあるが、徹底的にやると事前にお金がかかる。ものになればいいが、その辺りをどうするかは大学によって違う。

委員等
 特許の検索サイトなど紹介できれば、最低限のことはこちらから準備したことになるのではないか。

主査
 後ほど案をご覧いただくが、関連特許について記述を求めるということを今回の公募要領として考えている。問題はどの程度しっかりとした内容を書くことができるかであるが、前回の議論であったように、開発事業は特許権利化の問題が非常に大事であるから、もう一段検討を進めるよう促すことができる。

委員等
 先端計測以外のプロジェクトで、すでに成功例もあり、失敗例もあると思うので、参考にしていただきたい。

委員等
 特許に関する大学の考え方は急速に変わりつつあり、数年前に比べれば全く違ってきている。大学発の特許は昨年5,000件を超した。
 今の意見は、恐らく先行事例調査ができる状況かどうかであるが、大学に知財本部のあるところは、先行事例を紹介できる状況になっている。JSTでも相談があれば先行事例調査ができる人を紹介している。ずいぶん変わりつつあると思っている。
 この先端計測は比較的特許マインドのある人たちのグループがやっていると思う。だから、こういう言葉を出してもそんなに違和感がないと思う。

事務局の発言
 各国立大学法人も知的財産本部が整備されてきており、大学で知的財産本部に問い合わせれば一定のことは分かる。それで不十分な場合、JSTに相談されればある程度の情報は得られる。少なくともこれを書くことによって、研究者の方々にマインドを持っていただくことが重要である。

(1)平成18年度公募・採択の実施について

主査
 事務局から説明いただく前に、新規公募の予算規模が最も気になる。17年度は40億円で、18年度は42億円の内示をいただいているというのが現状である。そこで、増額分の2億円を新規公募分と考えるのか、あるいは、昨年のレベルを想定していいのか、そのあたりが新規公募を考える際の出発点になるため、そのあたりの手がかりを一言お話しいただきたい。

委員等
 増額分の2億円に、中間評価で絞り込んだ分などをプラスすることはできる。何倍になるかはまだ約束できない。

主査
 前回、17年度は7億円の原資で議論をした。今回は原資が2億円であるが、前年度まではいかないが、前年度に近いレベルで、全体の枠組みをお考えいただければと思う。
 このプログラムは3年目に入る。3年目に向け、前向きでかつ特に若い人に希望が持てるような枠組みで公募したい。そういう方向で全体のご議論をお進めいただきたい。

(資料2~5に基づき、平成18年度公募・採択の実施について説明。)

主査
 領域をいくつ選ぶかをまず決める必要がある。先ほど、平成18年度の予算規模の大筋の話があったが、できれば18年度も領域を2件選び、さらに非特定の受け皿も準備するという考え方で議論をお進めいただけたらと考えている。

委員等
 17年度の採択結果は、領域特定型に比べ領域非特定型が非常に多かった。この委員会で議論した開発領域の採択が非常に少ないのは残念である。
 もちろん領域非特定型からいいものが出てくることも期待しており、これを残す必要はあるが、例えば半分ずつのバランスにすれば、開発領域が2つ選べるのではないか。

委員等
 これはどちらへ出すかで当然確率は変わってくる。どういう形で応募者が申請したのか。それに対し何か行ったのか。

事務局の発言
 審査については領域ごとではなく、全体で審査を実施した。

主査
 いいものはどこから出ようと採択するという発想である。しかしそうすると、特定する意義が薄れるのではという懸念がある。初年度は5領域で領域特定型にかなり広がりがあったが、予算が減っていくと当初とは少し異なり、分布が違ってくるというのが現状である。
 やはりプログラムの目指すところをなるべく具体的にしておきたいという意図からすると、1つに絞るのはもったいない気がする。

委員等
 どの領域を設定するかというのは、この委員会のメッセージという意味で非常に重要である。総合科学技術会議の評価に対し、委員会としてもメッセージを出していくことが大事である。例えば先ほどの特許の議論に関連し、「この事業では一番先頭を走るような機器を作ることが重要あるため特許もこのように要求している。」というように、この事業として何を打ち出していけばよいかという観点で話を進めていくのがよいと思う。

委員等
 領域非特定型が要素技術と同じように逃げ場所になっている。もともとは小さな領域ではカバーできないようなスケールの大きな機器開発を目指すために非特定を作ったはずなのに、領域特定型に当てはまらない機器開発はみんな非特定や要素技術に逃げる。そういう逃げ道を作らないようきちんとした制度設計をするべきである。
 領域非特定型の採択課題を拝見しても、領域特定型と比べ、領域横断型のスケールの大きな機器開発になっているかというとそうではない。特定領域から外れたからここに来たという感じである。それは要素技術でも全く同じである。やはりできるだけこのプロジェクトの目指すべきところを明確にして、応募者がそこに絞り込んでもらえるようなことを希望したい。領域非特定型は、初心があいまいになっている気がする。

委員等
 特定が少なくて非特定が多い理由が分からない。重要だと設定しているにもかかわらず、そこからいいものが出てこないのはなぜなのか。

主査
 現在の審査システムは領域ごとに審査せず、領域の枠を取り払ってそれぞれの分野ごとに絶対的な評価をしてそこから選ぶ。今までも領域特定型から少なくとも1課題は採択されているが、結果的に領域非特定型が多く採択されることになった。
 逆に領域特定型を重視すべきということになれば、最初からウエートを置いて選定するということも考えられる。ただ、発足時の総合科学技術会議において、どんな分野からいいものが出てくるか分からないので、フレキシブルにいい課題を採択すべきという意見がかなり強くあった。非特定をセットしたのはその影響を受けている。一つはターゲットを向けて皆さんに考えてほしい。一方、もっと自由な発想でいいアイデアをどしどし出してほしいと、そういう発想でこの枠組みはスタートしたという経緯がある。

委員等
 総合科学技術会議の検討会で、領域がこれだけきちんと上がっているのにどうして非特定領域を入れるのか、という質問に対し、1つの領域におさまり切らない領域横断型の機器開発も当然考えられるという事務局の説明があり、もう少しスケールアウトした大きな機器開発を目指すものもあっていいと理解した。しかし、実際に採択された結果は、個々はいい課題であるが、本来めざした領域非特定にふさわしい形になっているかは疑問である。特定と全然違うところで、おもしろそうだからやってみようという課題が採択されているとしたら、特定領域を一生懸命議論した意味がないので、それはずっと気になっている。
 もう一つは要素技術で、要素技術もあれだけ議論したのに、結局、機器開発が要素技術に下りてきて、機器開発で予算の小さいものが要素技術で採択される形になっているのではないか。この2つはずっと心配している。
 領域非特定型についてもしっかり議論して、方針が変わっても構わないので、領域非特定というのはこういうものだというガイダンスが必要だと思う。1つは、領域にこだわらない全く新しい機器開発に光を当てるという方向がある。そうであれば、アプライする人に分かるようにこの委員会で議論をしておかないといけない。

主査
 領域非特定を受け皿として準備するのならば、公募段階で何らかのガイドが必要だというご指摘である。具体的には、領域を特定するとともに、非特定もセットはするが、特に非特定の申請者に対して注文をつける文章を公募要領で書き加えるということになるのではないかと思う。

委員等
 開発領域の候補は、過去に募集したもの以外の領域になると思うが、例えば3次元可視化だと、3次元可視化に関するいいテーマはすでに採択されている可能性が高い。そのため、3次元可視化のみ公募するという形にはしない方がよいと思う。
 どこのだれがどんなテーマを持っているかがある程度シミュレーションできるのであれば、特定する意味があると思うが、今までの非特定や要素技術で、3次元可視化のいいテーマはそこに出てしまっている可能性がある。今年は確かにこれがタイムリーだということであれば、やっていけばよいと思うが。

委員等
 私は、1番のナノ領域3次元可視化を重点的に書いたが、今までの採択結果を拝見しても、ナノ領域の3次元可視化は1件も通っていないと思う。ナノレベルの物質構造では、いろいろな機器が入ってくる。

委員等
 物質構造は可視化にかかるという理解でよいか。ナノレベルの物質構造というだけのテーマもあるということか。

委員等
 物質構造と状態の3次元可視化という、そういう理解である。

委員等
 確かに物質構造も3次元可視化でなければいけない。

委員等
 そういう意味で、今まで採択されていない大事な領域だという認識である。

委員等
 そうすると、3次元可視化を選定しても、いいテーマが出てくると予想されるということか。

委員等
 アメリカのチームが既に3年も実施しているのに、それが日本で1件も上がっていないということで大変な危機感を持っている。まだ採択されていないが、依然として大事であると私が認識しているテーマが2、3件ある。

委員等
 領域特定型が少なくて非特定が多いということについてであるが、この委員会ではニーズを聞いて重要だというものを領域特定型のテーマとして選んでいる。しかし、選ばれたもののハードルが非常に高い場合、応募が少なくなる。現在は、他のもっと見栄えのいいものが選ばれるということになっているのではないか。領域特定型を戦略的に選びたいのであれば、選定するときに重みづけをするなどが必要なのではないか。

主査
 最初の年にどういう表現で領域を公募するか議論した際、「あまり平易で陳腐な領域を指定するのは趣旨にそぐわない。ある程度高いハードルを提示してこそ研究者のマインドを引っ張っていく。」と議論し、かなり難しいテーマを並べた。確かに今のご指摘のようにハードルが高いからたくさんの応募は出てこない。これまでの審査のように全部一緒にして分野ごとの絶対評価で選ぶと、ご指摘のようなことがあったかもしれない。

委員等
 総合科学技術会議の見解に、「計測分析技術・機器等がより大きな波及効果を生み出すよう」と書いてあるが、これを応募要領の中に入れてはどうか。これを入れることで、応募者は応募しても無駄かどうか考えられるし、総合科学技術会議の意図を反映しているということを示すことにもなる。これは我々にとっても厳しい言葉であり、全体に共通して言えることだと思う。
 特定領域に該当せず領域非特定に流れるときに、選ぶ人の手間も考えると、計測分析技術・機器等がより大きな波及効果を生み出すためのものであるかどうかをまず自分自身に問いかけてみる。そのためには、この言葉を応募要領の中に明確に入れるのが一つの案ではないかと思う。

主査
 今ご指摘の点で、他のことにも広く利用できるという観点で評価をすれば、おのずとすぐれた課題が採択されるのではないか。

委員等
 一つの重要な評価の項目として挙げておけば、採択されなくても、この点に関してはだめだったと自分自身納得できる部分もあると思う。確かに、最初からどれだけ波及効果があるのか判断するのが難しいことは確かである。しかし、たとえこの選に漏れたとしても、他の応募の際に、こういうことが実は重要な点の一つであることをリマインドしていただくためにもいいと思う。

主査
 今のご指摘のようにこの文言はどこかに入れた方がよい。少なくとも目立つように書き込みたいと思う。
 さて、2つの領域を選定するということで、資料3によると、1が「ナノレベルの物質構造・状態3次元可視化」、3が「ハードによる計測限界を突破するための情報機器・ソフトウエアとハードウエアの融合計測分析システム」、この切り口が大きく違う2つの課題を推された委員が多い。あと有力なのは4で、「機能発現・作動状態下における材料・物質のダイナミック・その場計測」であり、第2のテーマとして3先生がお選びになっている。この3つが有力候補になるのではないか。

委員等
 単純に最もと思われたものの点数を2点か3点にして、2番目を1点として仮に計算してみたが、結局1と3が選ばれる。単純に計算するとそうなる。

委員等
 3のテーマは、いろいろな分析機器、ソフトウエアをもっと充実させようというものなのか。それとも、情報機器と結び合わせることで何か新しい計測を可能にしようということなのか。確かに日本はソフトウエアと結びつけるところは弱いが、企業のソフトウエア開発のテーマを取り上げるのであれば、余りおもしろみがないと思う。

主査
 今おっしゃった2番目が重点である。要するに、今までにできなかったことができるということを目指すものである。例えば、FTIRの場合、高速フーリエ変換のソフトとハードが使えるようになり、けた違いに性能が上がった。

委員等
 そういう要請に応えるだけの実力が大学にあるのかということもある。下手をすると、企業におんぶにだっこになりかねない。

委員等
 FTIRみたいなものがこの事業で開発されればすごいことである。「この機器にソフトウエアをちゃんと入れました。」というだけのものが出てくると困る。

委員等
 光は波長より短い分解能は出ないと言われているが、今使われている光学機械の測長器は、光の波長の10分の1ぐらいまでの精度で長を測れている。それはコンピューターシステムによるものである。しかしこれは全部企業が開発していて、大学から出たものではないが、産学連携で打って出たときにはその可能性を信じたい。

委員等
 もう1つの具体例として、純粋に数学的な研究がなされていたアダマール変換というパターン認識に関する手法があり、これまでそれほど幅広く使われていなかったのが、質量分析と結びついた途端に、全く新しいブレークスルーが生まれたということがある。この開発が始まったのはアメリカの大学だったと思うし、実際、企業ではそのような純粋数学的なアプローチはほとんどできない。そういうことを考えると、ブレークスルーを生み出す余地は十分あると思う。

主査
 なるほど。アイデアは大学から出るかどうかが確かにある。

委員等
 簡単にその2つを結びつけることができないが、だれかがそこでぱっと思いつくと、とんでもない発展がそこから生まれる。それを一つの起点にできればと思う。

委員等
 DNAの二重らせんを世界で最初に電子顕微鏡で見たのはノーベル賞を受賞したアーロン・クルークで、その解析に使われたのがベッセルフーリエ変換である。当時の電子顕微鏡は生物観測には余りにも問題が多かったが、ここにきてバイオ電顕がアメリカのNIHで主導的に進められている中で、もう一度このような仕事を見直そうという動きがある。

主査
 画像処理では、非常に高度な数値処理が最前線を引っ張っているという印象がある。日本の企業にとって、そのあたりの装置化の部分がまだ手に届いていないとことがある。アメリカのベンチャー企業は、アメリカの軍事研究の成果をもとにやっているという可能性もある。日本はどこかで発想を転換しないといつまでも後塵を拝する。どこかでチャレンジしてほしいという気持ちはある。

委員等
 公募でそういうニュアンスが分かるようにしていただきたい。

委員等
 3番の文章がどこで切るのかが分からない。最後の「融合計測分析システム」が目的だということが分かるような文章にしていただきたい。

主査
 もう少し分かりやすくしたい。

委員等
 ライフ系は1で尽くせることから1番の領域がいいと思ったのだが、最後の「及び細胞内物質・生態高分子」はつけ足しではない。これに関係する領域を16年度に一度募集しており、ナノを強調した3次元可視化をそのときに期待したが、期待したものが落ちた可能性もある。リアルタイムイメージングは非常に重要なので、もう一度募集しても価値はあると思う。

主査
 では、1と3を選ぶということでいかがでしょうか。それから、3についてはちょっと表現を修正し、説明文をつけて、もう一度書面でご意見をいただくということにさせていただきたい。

委員等
 実は私は1と4を選んだが、3よりも4の方が領域の幅が広がると思ったからである。3は1に包含されるのではという誤解をしていたが、今回の議論を踏まえると1と3を選ぶのがいいと思う。3の表現は、誤解のないようにもう少し具体的なイメージが分かるようにしていただきたい。

委員等
 ハードは大学がやってソフトはメーカーが作るというのは、最悪のパターンである。ソフトのアイデアを大学が出し、それをどのようにハードと融合させようかというものでないと、ここにかけている期待が壊れるような気がする。

主査
 趣旨をもう少し鮮明にし、説明を読めば分かるようにしたい。今回は課題をより分かりやすくするため、具体的に説明文をつけることを考えており、そのようにさせていただきたい。
 要素技術プログラムについてであるが、まずご議論をお願いしたいのは、(3)の例にある1から11の表現でいいかどうかである。もう一点は(4)で「1課題あたりの予算の目安を年間2千万円程度、総額5千万円程度とし」という部分。この2点を中心にご議論いただきたい。

委員等
 要素技術として重要なコンポーネントを前面に押し出すことは賛成であるが、重要な環境計測機器については、新たな測定原理、独創的な測定原理に基づいたものが非常に有効である場合が大きい。だから、12番目の小項目として、原理そのものが新しいなどは入れられないか。それは組み合わせと紙一重であり、かなり独創性を重要視することで峻別しなければならないと思うが、いかがか。

主査
 要素技術の中に原理が新しいという意味か。それとも本質的に原理的な新しさなのか。

委員等
 今までにない測定原理を提案してもらう。その原理に基づいて、これまで計れなかったものを測定したり、時間分解能や測定精度を上げることのできる新たな方法を確立するということである。必ずしも個々の要素の精度を追求するのではない。

主査
 新しい測定原理を実現するための要素技術ということか。

委員等
 そうではなく、測定原理そのものが新しいということである。この測定原理の実現に新たな要素技術が含まれても良いし、そうでなくても良いと考える。

委員等
 例えば超伝導材料にテラヘルツ光を入れるとそこで超伝導電流が切れるというのが日本で見つかったが、非常に鮮烈であった。それはまさに原理がディテクションにつながった。そういうのが出てくれば、超伝導を利用したマイクロカロリーメトリーみたいな軟X線分光デバイスにもつながっていく。

主査
 そこは確かにシステムと紙一重である。

委員等
 評価するときに、それがどの程度独創性があるかをきちんと見なければいけない。

主査
 アイデアによる応募で、要素技術プログラム程度の金額を想定しているということは、装置の基本設計をし、かつ、ある程度の実証実験をするというケースということか。

委員等
 その通りである。

主査
 完全なシステムを作るのではなく、その手前の概念設計に基づいて、それを実証するための何かを作ってデータをとる。これはシミュレーション計算もあり得るのでは。シミュレーション計算の結果をきちんと出す。

委員等
 その原理に基づくパフォーマンスがどの程度本当に使えるものなのかという実証もできる。

主査
 それは確かに新しい。そういう課題で研究費をとるのは大変である。

委員等
 可能性はできるだけ広げておきたい。

主査
 今のご指摘は非常に新しい。今までそういう発想の研究公募はほとんどないのではないか。
 ここにある1.から11.は、最初ちょっと細かすぎるという印象を持ったが、かといって具体的な方がよい。この11の項目を5つか6つにまとめることはできるかもしれない。

委員等
 でもこう書けば、要素技術がどんなものかがよく分かる。煩雑なようであるが、ここまで書いていただければこれでよいのではないか。

主査
 金額の面もこれでよいか。気になるのは、JSTの一般の研究費の体系から見るとちょっと小さいという印象がある。ただ、大学の人間から言うと、これでもかなり大きな予算であり、科学研究費でいえばかつて一番大きかったAというカテゴリーの予算に相当する。こつこつと大学で手づくりの道具を作りながらデータをとる、というセンスからいくと、これで十分できるという感覚があって、こういう数字が出てきていると思うが、もし実施上問題がなければこのままでお願いしたい。

委員等
 研究者が小さいと言わない限り困ることはない。その金額が適していれば、それで問題ない。

委員等
 例えばソフトの開発だったら、コンピューターと開発するための人件費を含めれば1,000万円でも多いという場合もあるかもしれない。なるべく若い人に多く件数をとるためには、逆に2,000万円でないと応募できないと思われない方がいい。

主査
 「以下」という言葉を入れてはどうか。

委員等
 ソフトで2,000万出せるかと言われるとちゅうちょされたりする。

委員等
 スーパーコンピューターでないといけないことになってくる。

委員等
 無理に膨らませて、質の悪いプロポーザルになってもいけない。

委員等
 それは確かに心配である。

主査
 ではJSTでもう一回ご検討いただくということにさせていただきたい。

委員等
 要素技術で11項目を挙げており要素としてはいいと思うが、検出部のところにある「センサ」は非常に広いものなので、同列に並べるのはちょっと引っかかる。
 もう一つ、前処理のところの切片作成もここに入れるべきかよく分からない。

主査
 これはまさに試料作成技術であり、試料調整の一部である。

委員等
 検出器のところは、カメラ、電極の後に「その他のセンサ類」などにした方がいい。それから今回、要素の採択数を多くすることを想定されているのか。

主査
 それはこれから議論したい。
18年度分の予算配分の割合をどうするかということで、資料4にあらかじめご意見をいただいている。前年度並みと仮定した場合、昨年は18件中8件が機器開発で、10件が要素技術開発であり、数では半々ぐらいであるが、金額で言うと2対1か3対1ぐらいとなる。もっと要素技術にウエートを置いた方がよいということなら、1対1という考え方も出てくる。その場合、昨年並みに機器開発が8件選ばれたとしたら、要素技術は20件を超える課題が採択される。ですから、従来から見れば十分に強調される。

委員等
 本当にいい内容の課題が出てくる場合があり、いいものを選んでもらえるようにフレキシビリティーも大事である。要素技術はかなり詳しく書いてあり、誤解を招くようなことも少ないと思う。
 先ほどのご指摘で2,000万以下とか5,000万以下など「以下」という言葉は入るのか。でないと、年間1,000万以下で総額5,000万となってくると、ちょっとそれは合わない。また、要素技術で5年もかけるのはちょっと心配である。3年ぐらいと考えてもよいのではないか。ただ、本当にいいものであれば、たとえ5,500万になっても仕方がないと言うだけの度量はほしい。

委員等
 余り予算枠が小さいと、応募件数がすごく多くなってしまう可能性もある。審査する立場からすれば、逆に予算を多くしておいた方が選びやすいという点もあるかもしれない。

委員等
 審査委員会でこんなに必要ないということで、最大で7割カットぐらい減らされた課題もある。そこは審査員の人たちが話し合って金額を決めるケースがある。その意味で言うと、どういう比率にするかは、要素技術と機器開発とは同じ日に審査を行う予定であり、フレキシビリティーは幾らでもつけられる。
 それから、今までの反省もあり、機器開発をもう少し広い目で見たいということと、この委員会の思いも審査委員会に反映してほしいと思い、この小委員会からも審査に加わっていただきたいと思っている。そうすれば、ここでの話し合いが審査委員会に伝わり、フレキシビリティーについても今の感覚が伝わると思う。

委員等
 要素技術での成果が、最終的に実際のシステムとしてどうなのかが重要だと思うが、前半で要素をやって、それを次のシステムへというようなこともあり得るのか。

委員等
 このプロジェクトには組み込んでいないが、そういうシーズが出たときには、JSTに「独創モデル化」という実際にモデルを作ってみるというプロジェクトもあるし、シーズとしていいものが出たときにはいろいろな国の事業があり、できると思う。

委員等
 要素というのは今までにない革新的なことをやるので、意外と時間もかかる可能性がある。信頼性まで試験しようと思うと、それだけでも時間がものすごくかかる。このように、必ずしも短期間で終わらないというのもあり得るのではないか。

委員等
 中間評価などでもう2年ほど延長すれば製品化につながるということを発表いただければ、またそういう可能性が出る。できるだけいいものが出てくれる方が望ましい。

委員等
 この委員会でそう言っていただければ、我々も中間評価委員会でそういうことも考え、積極的に受けるかどうかを決めたいと思う。

委員等
 先ほど議論の途中であった領域特定と非特定のウエート付けについては、まだ方向性が定まっていない気がする。この委員会が時間をかけて領域特定に専念してきたこともあり、この領域の中でやってほしいという思いは審査にぜひ反映していただきたい。
 それから、先ほどの議論で、「領域特定型は非常にハードルが高いがゆえに、応募件数も少なくまだ完成度が低く、また、それ以外のところで従来やっているものについては審査の際の見栄えが良い」ということだが、どちらを本当に優先すべきかについて、もう少し議論をすべきではないかと思う。私としては領域特定を重視していただくよう要望したい。

委員等
 領域特定型から上がってくる課題と遜色のないユニークな課題があれば、それはぜひ採択した方がいいという気もする。

委員等
 領域特定型の課題の中には、日本が弱い部分が含まれる可能性がある。それは同一の基準で比べられれば見劣りがしてしまう。そこを育てたいのであれば、少しウエートをつけるという考え方も成り立つのではないか。

委員等
 実際に応募する側からすると、領域特定で2領域あり、さらに領域非特定があると、みんな領域非特定を選んでしまう。領域特定の2領域しかなければ、政策誘導的に、それを一生懸命考えてアイデアを出してくる人は増えると思う。どちらを選択するかである。

主査
 この件はずっと議論がある。先ほど、非特定において重要な視点を意識させるべきというご指摘があった。それは非特定を選ぶ上での一つの評価基準になると思うが、確かに政策的に、18年度は領域特定の課題については少しウエートを置いて判定をすると言ってよいのではないか。

委員等
 公募要領に出すということですね。そこだと思います。そうしないと政策誘導はできない。

委員等
 1と3が領域に選ばれたときに、要素技術でも1と3に関係するような課題の評価を高くするなど、関連づけはいろいろできると思うし、そのように誘導していく方法もある。完全に要素技術は何でもいいという見方と、多少長期的に領域に関連するものにウエートを置くという見方がある。これは選ぶ基準になると思う。

委員等
 3番はソフトウエアとハードウエアを組み合わせるというものであり、要素技術というわけにいかないのでは。1番はあり得ると思う。

委員等
 可視化だとソフトウエアが絶対入ってくる。

委員等
 現在、入っていない研究はないと言っていい。

主査
 私の印象では、要素技術を今回の枠組みで募集すれば、応募そのものがずいぶん変わってくる。それから、目新しく今までにない種類の課題が採択されるという気がする。今回は要素技術にウエートを置くというメッセージがかなりはっきり出てくると思うので、公募要領の段階で、特に領域特定にリンクしたものを重視するという表現はとらなくてよいのではないか。今後、そのウエートづけはあり得ると思う。
 それでは、領域特定を重視するということの表現がなかなか難しいが、やはり何らかのウエートを置くというニュアンスを公募要領に書いた方がよいと思う。

委員等
 応募者が過去の採択を見たら、非特定は通りやすいと思ってしまう。そこははっきりさせておかないと特定領域の課題も非特定に流れることになりかねない。

事務局の発言
 領域を決めてもいいテーマがその領域に上がってこなかった場合はどうすべきかについて当初議論し、ゼロの領域があってもやむを得ないということになったので、あえてウエートづけをしないで審査を実施してきた。幸いそういう配慮をしなくても、それぞれの領域に今までは該当する課題があった。今度ウエートづけをすると公募要領に書いて、その領域がゼロ採択になった場合に説明しづらい点がある。

委員等
 いいのがなければそこからとる必要はない。

事務局の発言
 ウエートは、実際どのように反映していくのかが難しい。

主査
 まさに奮ってご応募くださいという感じのウエートである。公募要領のレベルの表現は、エンカレッジするという意味である。

委員等
 やはり公募要領で特定領域を2つ選んだということをやや強調して書いて、これが今年の重点項目だと分かるようにして、その上でやはりいい課題から選ぶという、審査員としてはそういうスタンスでいくということでどうか。

主査
 わかりました。そういう方向で考えるということにさせていただきたい。
 最後に、座長見解として、このプログラムの運営に関する基本方針をお話し申し上げたい。
 まず第1に、
総合科学技術会議の評価が急激に低下したことに鑑み、プログラム全体の運営を大胆に改善する。
 これは、きちんとした総合科学技術会議の判断があったということを重視して、18年度においてはそれに対応する努力を最大限すると、そういう意味である。
 第2は、
予算の効率的運用のための改善を行う。
 これは、第3期の科学技術基本計画が発表された折のマスコミ等の反応にもあるようにむだを省く。重複を避け、あるいは過度の集中を避け、大事な国費をきちんと使うということが非常に強く求められており、予算の効率的運用のための改善を行う必要がある。
 第3は、
本プログラムの成果の広報を組織的に行う。
 これも第3期科学技術基本計画の目玉の一つであるが、社会、国民に対して貢献する、そういう科学技術という点が強調されている。国費で行われた研究の成果は、常に広く社会に積極的に広報しなければいけない。そういう趣旨である。18年度は3年目であり、当然初年度採択のプログラムは3年目に入るので、種々のすばらしい成果が出てくる可能性がある。そういうものをどんどん世の中に広報したいという意味である。
 第4は、
本プログラムの意義、すなわち先端計測分析技術・機器開発そのものの意義を広く社会に伝達する努力をする。
 これはどのようにやるかは、先生方にもご協力をいただきたいが、やはり総合科学技術会議の初年度の評価にあるとおり、計測分析技術並びに装置の開発は、科学技術全体を支える基盤、それを強化し向上させるものだと、そういう意味を世の中にさらに訴えかけたいというふうに思っている。
 以上の4項目を実現するために、今後も先生方に議論を詰めてそれを実行に移すということをお願いしたい。このような努力を通じて、平成19年度に向けてさらにこのプログラムを発展させていきたいと念じており、ぜひ委員の先生方のご協力をお願いしたい。

委員等
 今の4点について、JSTでもどう対応するかを少し考え始めている。
 第1の評価が下がったことに関しては、先端計測機器に対する審査が実は簡単ではなかったと感じている面がある。当初、先端計測機器という専門分野はないに等しい、つまり非常に広い範囲だということで、かなり多くの審査員を作ったのであるが、ある種の分野ではフィールドに合致する専門家がいなかった。審査員はご自分のフィールドそのものだとかなり厳しく審査するのに対し、ちょっと外れると甘目に審査するという傾向があることが分かり、甘目に審査されたものが通った可能性もある。それで、テーマが出てきてから書面審査員を増やすといったことをやり始めているが、さらにもっと審査を見直していこうと考えている。総合科学技術会議においても、いいテーマが選ばれなかった面があるのではという議論になったこともあり、そこをまず改善したい。
 それから効率化に関しては、既に中間評価も行われて中止となったテーマも出てきている。S評価は増やしB評価は減らすというメリハリをつけることを今まであまりしてこなかったが、し始めた。またそういう予算をさらに新たなテーマが選べるような形で使っていきたい。
 そのような対応を考えておりますので、よろしくお願いします。

主査
 それでは、今日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)