先端計測分析技術・機器開発小委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成16年10月13日(水曜日) 16時~18時

2.場所

古河ビル 6階 F2会議室

3.出席者

委員

 二瓶、井戸、北澤、小原、近藤、志水、下平、田中、中村(志)、松尾各委員

文部科学省

 小田研究振興局審議官、根本研究環境・産業連携課長、米倉基礎基盤研究課長、小島基礎基盤研究課大型放射光施設利用推進室長、室谷研究環境・産業連携課研究成果展開企画官、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官

オブザーバー

 佐藤独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進室長

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端計測分析技術・機器開発事業の応募・採択状況について

(資料3に基づき、科学技術振興機構先端計測技術推進室から平成16年度の応募・採択状況について説明)

委員等
 選考過程について、全応募を分科会に割り振って分科会で審議されたということであるが、物理系、化学系、生物系といっても多分全部に関わるというのが非常に多いと思う。どこの分科会にいくかということで、随分評価が違ってくるようにも思うが、良い提案がきちっと採択できるように何か特に御苦心されたことがあったら御紹介いただきたい。

委員等
 どのような選考の方法、分け方がいいかということは大分議論し、計測、原理的な方から分けるというもの、それから用途の方から見るということもあるのではないかと検討した。
 本年度の開発領域は5領域あり、1、2が大体バイオ関係、3、4がナノ関係、5が環境関係とういことで、1、2の領域の提案を大体第3分科会、3、4の領域のものを第1と第2に分け、第5番目の環境の領域を第4分科会の方で主として担当するように分けることとした。また、領域非特定型の提案、要素技術については、その内容から分科会長の意見を伺いながら担当する分科会を決めた。主に原理的な分類から分科会を決めたが、使う側からの意見も聞いた方がいいということで、他の分科会の委員に参考評価をお願いしたものもある。

主査
 最終的な採択課題については分科会ごとに出てくるので、領域ごとのもくろみと審査の結果とが何となく1対1ではないという印象を持つ原因になっている可能性もある。
 本年度は第1回目の募集と審査を実施し、私どもの想像をはるかに超える500件以上の申請があったということは、大変重要なことである。
 一方、前回のこの小委員会で次年度の採択領域に関する議論をお願いし、そのときに、本年度落ちた人たちが、再チャレンジする可能性をどう考えるかという指摘があった。今回の審査結果をこの小委員会で評価するという気持ちは全くなく、ポイントは来年度どういう手順で募集をかけ、どういう観点で審査をしていただくか、そういうことに関してこの委員会から意見があれば、それは来年度のこのプロジェクトの実施に際して非常に価値のあるコメントになると思うので、そのあたりについて十分に委員の先生方から御意見を承りたい。

委員等
 率直な感想として、戦略目標が見えないと思う。プロジェクトというものは戦略目標がある程度明確でないといけないといつも思っている。例えばテラヘルツテクノロジー、これは日本が過去20年ぐらい世界のトップレベルの技術を培ってきた。提案の中にテラヘルツ関係が6、7件入っているが、1件も採択されていない。私はテラヘルツテクノロジーというのは恐らく1つの戦略目標に値すると思うが、それが全て落ちているということは、非常に印象に残っている。
 もう1点、アメリカでTEAMという無収差電子顕微鏡の開発プロジェクトが5つの国立研究所に予算配分され、一斉にスタートしている。肝心の日本の中で、そういう無収差電子顕微鏡というものへの体制が全然ないということは、非常に危機的な状況にあると思う。これを背景にした提案はこの中に3件入っているけれども、これも採択されていない。提案では国産の収差補正システムをつくるということを非常に明確に書いてあるが、それは落ちている。世界各国は既にそういうものを視野に入れて戦略を組んで動いているのに、本家の日本は全くそれがないというのは非常に残念だという点もはっきり申し上げておきたい。
 質量分析という中でマルチターンという画期的な質量分析法は日本で大阪大学の松尾・石原グループが数年前に開発した。これは日本が世界にさきがけて開発し、特許も持っており、日本のプロジェクトとしてあがってもいい。
 この3つの分野では、世界で国家プロジェクトが動いている、あるいはEUプロジェクトで動いている。非常に大事な技術の開発が今回応募されているが、落ちているというのが非常に残念である。ボトムアップで公募であるので、いわゆるプロジェクトの採択の形をとっていない。来年度にあたっては、プロジェクトとして何か戦略目標が見えるような枠組みをぜひこの委員会で検討し、それから文科省とJSTとで十分に討議して、そういう方向をぜひ打ち出していただきたい。このボトムアップ、公募型で来年ももう一遍やったとしたら同じような形の採択になると思う。もちろんいい仕事がいっぱいあがると思うが、戦略目標は見えないということにならないかと危惧している。
 もう1つ私が大変期待したのは、要素技術である。要素技術については、試薬が非常に大事であるとか、光源、検出器、そういうものが1桁上がれば装置は一変する、あるいは、国産ソフトの開発が重要であると議論してきた。ところが、採択の中で、それにピタッと合っているようなものが見えない。要素技術は二、三千万円もあったらいい。ポスドクがいて、大学院の学生がいて、そして優秀なスタッフでもって試薬をずっとやっていくというのは時間がかかるけれども、お金はそんなにかからない。そういうものに多くのチャンスを与えるのは、要素技術ではないかと考え、前の検討会でも発言をしたと思う。要素技術というのはそういう非常にすぐれた技術、10年、20年、30年培った技術をもう1つレベルアップするようなそういうものへの配慮もなければいけないと思う。

委員等
 環境の分野はある意味で非常に広く、どういうものにターゲットを絞るかというのは難しいかもしれない。今年の採択、あるいはそもそも公募のところで出されているものを見ると、極微量のものを多成分同時計測する、どちらかというと非常にローカルな、有害物質というものに特化していると思う。
 環境問題、特に日本がプロジェクトとしている環境問題については、地球環境問題、例えばグローバルな大気汚染とかあるいは気候変動に関する因子といった観点の機器開発も必要とされており、その視点が少し抜け落ちている。もう少しサイエンスオリエンテッドな機器開発があってもいいのではないかと思う。幾つかの点についてはそれが直接産業にはね返らなくてもそれが最終的に人類の環境問題としての貢献につながるような機器開発、それを使ったサイエンスがすばらしいという観点だけで押していく、そういった研究も当然あってしかるべきだと思う。中規模の研究費、年間二、三千万円程度のものをもう少し幅広く採択するというポリシーもあっていいのではないかと思う。最終ゴールがある程度幾つかあるので、もう少し間口を広げて人類の福祉に貢献するようなそういうスタンスで機器開発を進めるというのも1つのポリシーかと思う。

主査
 領域設定のところで極微少量環境物質の多元素多成分同時分析と、かなり装置の範囲を限定するような設定の仕方になっている。指摘のとおり、その枠から少し違うあるいは違う対象、測定対象をねらった応募課題が出てきていないという点は、絞りすぎという指摘につながるかと思う。

委員等
 先ほど指摘のあった、テラヘルツについては採択されなくとも別途に手当される可能性があるのかどうか。

主査
 主として議論しているこのプログラムはプロジェクトの一部であり、文科省直轄のものとJSTの事業が含まれている。この委員会の第1回に関連している事業について年度当初の説明を受けたが、その後の経過の報告をお願いしたいと思う。
 戦略的に特化した領域に予算づけすることができるのかどうか、そのあたりに関して、文部科学省の立場から何か補足していただけるとありがたい。

事務局の発言
 全体の予算の中ではこのJSTのプロジェクト以外に主なものでは、ライフ、ナノ分野で従来からあるいは動きだしている機器開発等がある。御指摘のとおり、全体、ほかの分野も見ていただいて、来年度の課題選択の募集あるいは決定のあり方について御議論いただくということで、今後さらに来年度に向けて委員会を開いていただければと思っている。

委員等
 この事業はどちらかというとボトムアップというか公募型であって、課題設定型のところに来年度は戦略的な意味のある課題を設定して公募するという考えの話であったと思う。ぜひ来年はそういった点を強調して、我々で何らかの意味づけができればいいと思う。
 今年の報告について、それぞれの課題で企業はどの程度参加があるかということを知りたい。

委員等
 機器開発事業についは、チーム編成として大学の先生、または、研究機関の方、それと企業の方が入るのが条件であるので、それぞれ機器開発については企業が1社あるいは数社入っている。

主査
 パラレルに別途走っているプロジェクトに関する報告を文部科学省からいただき、それを加味して来年度に向けて考えるというようにさせていただけるとありがたい。
 この仕組みの中で何かさらに公募の仕方とか、あらかじめ申請者に対してもっとインフォメーションを与えて、それに基づく審査というものができるかもしれないと私は思っている。これはもう少しよく検討の上まとめたいと考えている。

委員等
 この課題で想定しているのは、5年ぐらいで機器ができるということが1つのポイントである。けれども、分野、応募の中には、今すぐ予算を得て諸外国と競争しなければいけないものもあるだろうし、ものによっては20年、30年後に必要なもののために、今、この開発をしなければいけないというようなものもあるかと思う。
 例えば量子コンピューティングというよなものは、あと二、三十年はできないと言われているけれども、今、世界中の研究者がそれに向かって研究している。このように、例えば30年先のための重要な部分というようなものをどうやって呼び込むかということも考えて良いのではないか。

主査
 システム開発は、5年というタイムスパンで一応考えて、とにかくものができるということを想定している。
 一方、20年後に完成すべき何らかの新しいシステムないし技術、その実現に向けて、日本がリードできる何かがもしあれば、それを支援するというのは当然あってよい。実は、要素技術というところにいろいろな思いがこもっており、その範囲に、今、委員が御指摘のような長期的な視点に立った開発というものも入ると思っている。ただし、そのような観点が申請者に伝わっているかどうかという点が問題である。

委員等
 そういうものをなるべく呼び込め、応募者にも公募要領から読み取れるとよいと思う。

委員等
 選考については、非常に苦労されたのだろうと思う。バイオの方はどちらかといえば、これまで機器開発というマインドで取り組んだことは余りないのではないかと思っており、ある人々にとってはまさにやっとこういう事業ができたかというところがある。2カ月ほどの非常に短期間ではあったけれども、会社との連携を進める動きも出てきて、1つのきっかけになったのではないかと思っている。ぜひこれらがうまく進んで本当に新しいものができるように応援していくのが我々の役目かと思っている。
 今年の採択課題を見ていると、科研費とはいわないけれども、科研費的な感じでとりあえずこれまで培った人脈とかで出してきているというか、急ごしらえという感じが少しある。これを定着させて来年度もう1回募集をするとしたら、もう少し戦略性ということが伝わるような形でやらないと、やはり何かスケールが小さいという感じもする。ただ、今年は時間的なこと等でやむを得なかったと思うので、次のチャンスになるべくうまくいくことを願っている。
 もう1点、他のプログラムとの関係という意見があったけれども、ライフサイエンス系では例えば分子イメージングというふうなキーワードが出ている。一方、無侵襲で人体の計測というのがこちらの事業で来年ある。こちらは機器開発であるので違うという面があるけれども、その辺は文部科学省の中でぜひ調整していただきたいと思う。

委員等
 競争的研究資金の中には国家プロジェクトの一部と見られるものは入れないという方針で現在やっている。その理由は、国家プロジェクトというのは数十億円とか、大きいものでは1,000億円オーダーのものもあるわけで、そういう中の一部をここに入れられるととても困る。つまり、33億円ぐらいすぐなくなってしまうという問題があるために、国家プロジェクトの一部と見られるものは外すという方針でやっている。
 戦略性ということが話題になっており、この競争的研究資金に関する限りにおいては、募集するときに公募要領というものがあり、この公募要領に文章としてあらわれなかったら、その戦略性はもはやこの競争的研究資金では失われていると思わざるを得ない。
 この公募要領というのは、去年の検討会で重ねた検討に基づいてJSTが作ったものであり、その検討会であらわに議論されていて文章化されていれば、それはこの公募要領に載っているはずである。したがって、委員が期待する戦略性がないという事であれば、それは去年のこの検討会において戦略として採用されていなかったと言わざるを得ない面がある。
 その意味から、最終的には競争的研究資金というのは公募要領に文章になったものが戦略であると考えている。私の覚えている限り、この事業の戦略としては、各々のプロジェクトそのものが世界最先端でなければならないということであった。ほかの国が一生懸命やっているからそれを何とかこちらも競争で一生懸命やろうというようなものは、実は捨て去られてしまっているわけである。
 もう1つの戦略は、機器としてメーカーがそれを市販できる可能性があるということが入っている。この機器開発プログラムには、実は関連している大学よりはメーカーの数の方が多いという結果になっている。
 もう1つは、トータル33億円という予算に対して、大体何件をとるかというのがここで決まっていたということである。それにより、全部で29件しか採用できなかった。これはもうこのリストを見ていただければ一目瞭然であるけれども、応募の中でほんの少ししか採用できなかった。審査員の方々も、皆そう思っておられる。しかしそれは、1つの戦略としてこの委員会が採用したと言わざるを得ない面がある。
 このプロジェクトは、システム開発の段階になるときに4分の1か5分の1に中間評価で絞るということが話し合われてきたが、実際に中間評価で4分の1か5分の1に絞るかどうかというのは、かなり疑問符がついている。あまり現実的でないと思っているところである。
 昨年の検討会と別の戦略性ということが全面に出たということで、戦略性がないという意見があるが、この要因として、この委員会と審査委員会との間を人事的に全く切ってしまったということがある。通常そのようになっていないケースの方が多いが、この事業では何の関係もない審査委員会が審査をするということになっている。つまり、いろいろなことをプランして苦労してこのプロジェクトを実現までもってきた人たちが審査委員会に入っているかいないかという問題であるが、これは恐らくこの委員会の決断だったというふうに私は理解している。あるいは、文部科学省でそういう方針を立てたわけであるから、当然この委員会の思い入れというのは文章にして伝えなければ伝わらないということである。
 何を捨て去って何を取り上げたかというのは最終的には公募要領に書かれているわけであるので、これからの検討事項としてお考えいただいたらいいのではないかと思う。

主査
 事実として昨年から今年にかけてどういうふうに事柄が進んだかというと、昨年の検討会というのは、ここにいらっしゃる方の3分の1ぐらいの方が属していたが、2月の上旬の委員会が最後の検討会であった。ということで、その議論を受けて公募要領を作ったのは、実は検討会のメンバーではない。そのあたりに委員から御指摘の幾つかの課題が生じた1つのきっかけがあるのではないのかという感じがする。
 今年の公募あるいは審査、その結果を評価するつもりは全くないと申し上げたのは、まさにその点である。ただ、改めるべきこと、あるいはさらに世の中の期待に応えて進めるべきこと、それは十分に議論しなければいけないので、そういう意味でいろいろな問題点について御意見を承るということである。来年度の公募要領をどういうふうに書くのかということも次の話題になるが、きょうはそこまでの時間が十分に取ってないので、もう少しいろいろなお立場から御意見を承るのが適当ではないかと思う。

委員等
 この戦略性という問題は非常に大きな問題でもあり、微妙な問題でもある。昨年から実はJSTも独立行政法人化したわけである。独立行政法人というのはどういうものかというと、文部科学省においてはプランを練る。そして、それを実施する実施主体は独立行政法人に任せるということになっている。研究費としてJSTに実施が依頼されることになるけれども、そのときに、JSTに対してどういうことが文部科学省から指定されて、研究費が渡されるかというと、そのボーダーラインというのはそう明確ではない。ただし、昔に比べると、実施の色の濃い部分の工夫は独立行政法人の方でやり、文部科学省ではその戦略的目標に関する部分を考えて予算を確保するという形になっている。
 去年は10月にJSTも独立行政法人になり、ちょうどそういうタイミングで、まだ独立行政法人というものが一体どういう権限を持つのかとか、あるいは文部科学省から見たときに独法は一体どこまでを指定するのかとか、その辺がやや不明確な中でこの事業についても作業が行われた面がある。
 去年の場合には報告書と、それから議事録がJSTに提示された方針になっていたわけであるが、それが余りに微に入り細に入りすべてが書かれていると何が戦略なのかよくわからなくなってしまう。その意味から、最終的に残った重要な戦略は何だったのかということはそう明らかではなかった面もあるのではないかと思っている。
 やはり委員の人選を余りにクリアに分けてしまうこのやり方がいいのかどうかということは、大いに考えられた方がいいのではないかということを私は感じている。通常分けすぎてしまうと、プランをつくった人の意志がどうしても伝わらない。文書で伝えようとすると非常にくどくなってしまう。それで、公募要領を見た人はよくわからないということになってしまうということがある。競争的研究資金でこの事業は進めていくので、そこのところをこの委員会でぜひよくお考えいただければ、JSTもやりやすく、動きやすいのではないかなというふうに思っている。

主査
 これから次回あるいは次々回、あと2回ぐらいかけてただいまの議論がもう少し形を整えていき、実際に来年度実施されるということになろうかと思う。

委員等
 私もこれは何かおもしろそうだなというのはあったことはたしかである。そういうものが今後本当に花開くというか、世の中の役に立つようなものに5年先、10年先になるものかどうかというのは本当にわからない。多分間違いなく言えることは、目利きというのは非常に難しいものだということである。
 私の専門の質量分析関係について例を挙げて考えると、これだけ感度が上がった、これだけ分解能が上がったといっても、本当にこれでしか測定できないという方法、そういうものはだんだんなくなってきている。それぞれの技術がどんどん改良されていき、いわばドングリの背比べみたいなものになる。一体なぜそうなったかというと、やはりみんなそれぞれの技術で努力しているということである。そうして、これの方が原理的にもっといい性能が出るはずだけれども、実際にはほかのものにとってかわられる。それが例えば欧米のものにとってかわられてしまったというのはよくある。それが多分海外のものにデファクトスタンダードをとられてしまったということの原因にあると思う。
 今年、例えば発表された新しい技術、これいいよというふうに言われる技術が、数年か10数年前に日本のあの大学のあの先生が開発していたことのちょっと発展形でしかないのではないかというふうなことがよくある。なぜそれがうまく日本が中心に、日本の中でアイデアを育てることができなかったかというのは、やはり目利きの人が余りいなかった。そして、そのような新しいアイデアを生かしていくシステムというか、お金もなかったかもしれない。そして多分一番大事なことだと思うが、自信がなかったのではないかと思う。私自身も開発した技術がまさか世界の主流になるとは思っていなかった。まずやっている人間に自信がないというのが一番まずいことかと思う。それがやはり世界の標準となり得ないという原因になるのではないかと思っている。
 文部科学省が予算をつけて、JSTが課題を選んだという中で、それが果たして最適な解なのかは、わからない。しかし、せっかく選ばれたプロジェクトの人たちに頑張れよというか、とにかく自信がないと成功するものも成功しないということがあるから、そういう人たちに何とか、頑張ってほしいと思っている。もちろん可能性はさまざまあると思うので、もちろんだめになる可能性もあるけれども、頑張れば、自信を持ってやれば相当なものはできるというところがあるということをみんな気づいてやってほしいという思いがある。
 したがって、選ばれたプロジェクトに対するバックアップというか、そういうものが必要かと思う。

主査
 確かに今年からこういう非常に大きな枠組みの予算が、実際に実現したということは非常に大事なことで、国の予算が実現したので、これからは御指摘のように、多くのすばらしいアイデアを実際に世の中に出す、そういう研究者、技術者、その人たちを支援しなければいけない。それはこの委員会の一番の大きな役目だと思う。

委員等
 スピン関係の計測は、今、例えばハードディスクなどもどんどん微細化し、簡単に見ることができなくなってきており、要求が非常に高いところである。
 機器開発プログラムは民間も入ってチームを編成して行うということであるけれども、ぜひ民間の関わり方、技術がどうしたら汎用的になるのか、もちろんトップのクラスの技術も必要であるけれども、実際使える技術も必要である。そこの関わり方をぜひ議論いただきたいと感じている。

委員等
 今年の採択について、私自身は今年度の条件の中ではやむを得なかったと理解できるし、それからJSTが大変御苦労されたのもよくわかる。ただ、来年度に向けて今年の枠組みでもう一度やっていくとしたら、先ほど御指摘したようなものは、恐らくは来年も採択に挙がらないだろうという危機感を非常に持っているという意味で、自分の知っている分野の件数だけを挙げたわけである。
 今のように全部競争的でボトムアップでという形をとる限りは、今年の状況から大きく変わることは難しいだろう。その中で、例えば戦略目標が欲しいと申し上げたのは、各領域に1つぐらいはその領域でこれはというそういう目標をトップダウン的な形ででも推薦するようなそういう可能性がこのプロジェクトの中で考えられるのかどうかということである。
 これは文部科学省の立場もあると思うけれども。本来これはもう競争的なものだから、全部ボトムアップでいくという方針であれば、それはまさにどんなに苦労してもこれ以上戦略の立てようがないということになるのではないか。少しそういうことを改善する余地があるのかどうか、私はそれが一番大事なことのように思って先ほど発言した。

事務局の発言
 基本的には公募型というスタイルをとっているので、来年度にできることといえば、公募の際に恐らくそれぞれの領域の中でもう少しどこが重点だというメッセージをもう少し出していくのか、あるいは審査員の方々に、こちらから特にこういうものが重要だということを、口頭では難しいだろうから、議事録みたいな形でまとめて出すというところが多分実際的な限界だと思う。それから、公募型をとるかプロジェクト型をとるかということがあり、実際にある特定分野がはっきりしているのであれば、やはりそれはこの制度とは違う形でプロジェクトとして立ち上げていくというのが理想的な形ではないかと思う。
 今回の公募では、今現在日本が欧米に負けているが、その次、先を見込んで欧米よりも先端的なものを開発していくというのが主体になっていたと思う。そのような中で重点的なものを公募の際に強いメッセージで出すとか、あるいは審査員の方に入っていただくという形で、例えば審査員の方の中で公募の中で挙がってきたものについて特にこれは重要だということで、1つぐらいは例えば特に見ていただくということが、今の段階では現実的に取り得るところではないかと思う。

委員等
 私が指摘した3つの分野は全部日本がトップである。トップであるにもかかわらず、そういうものに日が当たらないというのは先端機器開発の立場の中でものづくりに携わっている人間としては憂慮に耐えないという意味で発言した。各国は日本がすぐれているから逆にそういう戦略を立てて打って出たのだと理解いただきたい。もしこういうところで反映できなかったとしたら、本当の意味で先端機器開発という事業を打って出た、そういうもののポンイトがどこにあるのか。それならば科研費で十分じゃないかということにならないかと考える。
 その重要性は外国が国家プロジェクトを立ち上げてやっているのだから、それだけの重要性があるのだという意味で、私は傍証のつもりで挙げた。決して後追いして遅れた分野をカバーするという意図ではないということだけはぜひ御理解いただきたいと思う。

事務局の発言
 応募の際、このプロジェクトは多分日本の立ちおくれているところをリカバーするようなものと受け取られたかのような感じもあるので、もし、日本が今現在先端にあり、さらに先をリードするということが重要であるとするならば、そういったところをもう少しメッセージで出していくというようなことをこのプロジェクトの中でもやっていくべきではないかと思う。
 実際にそれが次のより大きな国家プロジェクトになっていくということであれば、この予算の中では逆にやりきれなくなってしまうというところもあるかと思う。そういうときにやはりこのプロジェクト、例えば3年、5年で終わるものではなくて、そこからさらにスピンアウトさせて新しいプロジェクトにつなげていくということを考える必要があると思う。

(2)戦略創造研究推進事業のおける平成16年度新規採択結果について

(資料4に基づき、戦略研究推進事業の進捗状況について事務局から報告)

主査
 思ったよりたくさんの課題が選ばれているという印象を持つが、1件当たりの平均的な予算額というものを教えていただきたい。

事務局の発言
 チーム型研究は1件当たり1年間に大体9,000万円から1億円ぐらいで、それを5年間行う。個人型は平均1,000万円ぐらいで期間は3年間である。

主査
 相当堂々たる予算で、合計10件採択されているので、これは非常に大きな貢献である。
 この件だけではなく文部科学省全体として、採択率の点についてお聞きしたい。競争的資金、研究費の運用というのは非常に文部科学省全体としても強調されているし、総合科学技術会議の議論でもそこをふやすという、国の予算としての方針があると思う。ここの委員会で扱っている事業はいずれも採択率が5%程度であるが、これはほかのものと比較してどういう水準にあるのか。

委員等
 文部科学省の科研費は大体3分の1目標で4分の1に近い3分の1という雰囲気で採択率になっているかと思う。それに比べると、今回のこのプロジェクトは、当初の予想に比べて非常に応募件数が多かったので、実際には一番少ない領域で2.8%というのがあり、本当は10%以上にはぜひしたいと思っている。
 個人型研究は、当初は採択数10人内外としていたけれども、それだと50倍になってしまうので、こうなると応募する人たちのやる気を非常にくじくようなことになるということで、特に、ほかの予算を回すような形でこれを増やしたという経緯がある。

主査
 競争的環境というのは非常に大事であることはよくわかるが、やはりある程度そういうことを考慮すべきで、やる気をくじくようではよくない。みんながどんどんいいアイデアを考えてどんどん応募していただいて、そこから競争的に選ぶと、これが1つの基本形であると考える。
 それにしても、もう少し戦略性が持たせられないかという指摘もある。始まったばかりのプロジェクトであるから難しい舵取りはいろいろあるけれども、それをクリアして、さらに、今後も持続的に発展する方向でこの制度を運用していかないといけないということであるので、関係各位の一層の御努力をお願いしたいと思っている。

委員等
 クレストというものに関しての期待はすごく大きいけれども、最近、いろいろな方針もあって、領域が非常に狭くなってきた。ここに書いてある「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」、これは非常に広くて、こういう非常に間口を広くしたものをぜひクレストでつくってほしいというのは、もう何年来皆さん言っていた。こういうふうにすると、非常に多くの研究が、結果的に入ってくる。このテーマを見て、近年まれに見る幅の広い領域だと思った。

主査
 本日は本当に御多忙の折に大勢の委員に御出席いただき、ありがとうございました。おかげさまで大変いいディスカッションができたというふうに考えております。次回、次々回も同様にお願い申し上げます。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)