先端計測分析技術・機器開発小委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成16年7月26日(月曜日) 16時~19時

2.場所

文部科学省 10階 第3会議室

3.出席者

委員

 二瓶、井戸、小原、志水、下平、田中、中村(志)、松尾各委員

文部科学省

 丸山研究振興局審議官、田中研究環境・産業連携課長、米倉基礎基盤研究課長、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官

オブザーバー

(有識者)
 渡辺山梨大学クリーンエネルギー研究センターセンター長

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端研究分野における計測分析技術・機器に対する研究者ニーズについて

 「燃料電池研究開発分野の動向と計測的課題」
 山梨大学クリーンエネルギー研究センター センター長 渡辺政廣氏

委員等
 燃料電池は化学、物理、機械、電気、電子、ナノテク等が総合的に関与する分野である。これらの分野で計測機器が適切に使われることにより、実用化が加速される。
 現在、電解質はパーフルオロスルホン酸系の膜が使われているが、高価でかつ、高温では使えない事から、広範な普及という観点からは十分でない。この改良もしくは炭化水素系の新しい高温作動膜で、しかも低コストの膜の開発が必須とされている。
 白金を中心にした触媒が使われているが、触媒の使用量の1/10化が求められている。また、セパレータはカーボーンセパレータが主に用いられているが、コストダウンの観点から樹脂とカーボンの複合材の開発が、又合わせてコンパクト化を実現するためメタル製の開発が求められている。
 燃料は将来一番多くは、炭化水素を改質して水素にして使うことになる。全体の改質速度、酸素の導入速度、熱の回収等を全てコントロールして1つのプラントとすることになる。改質器で都市ガスや天然ガスを水素にした場合には、この中にCOが含まれており、白金触媒は100ppmのCOを含む燃料を供給すると、約30分で失活する。これに対して、いくつかの卑金属成分を加えることにより、100ppmのCOがあっても劣化しないことが分かった。
 この解析には、XPS、UPSを電気化学処理装置と組み合わせて測定しており、まず、電気化学的な挙動を調べて、超高真空中で合金や白金の電子構造を調べるというように、超高真空と電気化学処理室の中を行ったり来たりという実験をした。しかし、実際の反応場とは様子が違っており、超高真空でなくその場で電子状態が解析できる装置が欲しいと思っている。播磨とか筑波のシンクロトロンのみで測定が可能であるがマシンタイムがなかなかとれない。市販のラボ用EXAFSは強度が弱く、測定に長時間かかり、ほとんどその場測定には使えないので、ラボ測定が可能なEXAFS、XANESの開発を期待している。短時間で測定ができることと電気化学セルなど試料を自由にセットでき、稼働状態下の触媒状態、触媒作用機構の解明が可能となるものを是非開発して欲しい。
 合金触媒にする場合、実際には1個1個の合金組成が違い、それが触媒の活性、耐久性の違いに大きく影響するので1個1個の触媒がどんな組成で、どんな結晶構造を持っているかを調べたいということが強い願いである。
 触媒の中心から外側までの合金成分がどうなっているかを調べたことがあるが、電子顕微鏡のメーカーに行って、一番腕利きの技術者に丸1日かけて写真を撮ってもらった。このようなことから、ナノ粒子についての測定機器として、サブナノレベルの元素分析法を期待している。ナノ材料の元素のマッピングはTEM、SEM等で、その分解能は1ナノメートル程度であるが、信号強度を高くすると蒸発してしまうので、電子線による分解を抑えた迅速測定が可能なシステム、あるいは汎用SEM並みの使いやすさ、0.1ナノメートルレベルの分解能の測定機器ができることを希望する。
 高分子の燃料電池の場合、水の管理とクロスオーバー抑制という課題がある。我々は、ナノレベルの触媒を中に入れる試みをしている。こうしたものを燃料電池の材料に限らず、生体試料などの表面のマッピングがSEMのような真空下ではなく、大気中でありのままの状態で、前処理なしに評価できないものかと常々考えている。
 現在のX線顕微鏡の分解能は100マイクロメートル程度であり、しかもX線強度が非常に弱いのでビームを絞ると測定に一晩かかる。画像のピントも合わす範囲が狭い。要求する性能は分解能が10マイクロメートル以下で、短時間で測定できるレーザー顕微鏡等と組み合わせて高解像イメージを得たい。
 膜中の水分布を測るという手法がほとんどない。我々は特に小さな電極で分布状況を観察したが、実際の燃料電池におけるセルのような状態のもので、膜の中の水の分布がどうなっているか、運転条件によりどのようになっているかを知りたい。
 例えばMRIを使って表面または断面方向の水の分布を見ようとしており、200マイクロメートル程度の厚い膜で幾つかセルが見える。しかしこれは原理的に分解能が100マイクロメートル程度しか得られない。この他に中性子散乱法も使われているが分解能はこの程度しかないので50マイクロメートルとか20マイクロメートルの膜の中の水の分布を調べられない。10マイクロメートル以下の分解能で測定したい。
 膜の外側にはサブミクロンレベルのガス、イオン、電子移動ネットワークが三次元的に絡み合った触媒層というものがあり、そこにある触媒が必ずイオン交換物質と接触していなければならない。そこでの材料の分布、あるいは酸素、水素、メタノールなどの反応ガスの分布、水の挙動を膜の中の状態と同様に知りたい。反応物や温度、水の分布ということが電池の寿命と関係があり、それをビジュアル化することが求められている。
 膜、触媒、電池の寿命及び電池特性に深くかかわる電池内部(膜内、触媒層内、集電層内)の反応ガス、水、温度の分布、ガス流路用リブ内外、また電極面内の反応ガス、水、温度分布をビジュアル化したい。それによって電池の劣化原因の究明、その劣化を抑える方法、高性能の電池の設計がはかられ燃料電池の実用化は飛躍的に促進する。この分野については大きなマーケットがあると確信している。

委員等
 分析技術に関する期待、要望に関して、私の知っている範囲で現状をコメントさせていただく。まず、光電子分光法をできるだけ普通の環境下で分析したいが、光源が非常に弱いということについて、未来開拓の事業で高輝度X線源の開発というものがある。現在市販されていないが、先生の要望に一番合うターゲットではないかと思う。
 次に0.1ナノメートルでマッピングをするという手法については、アメリカで昨年スタートしたTEAMプロジェクトの提案の中に0.1ナノメートルを切る分解能で元素分析をすると書いてあり、これは早晩実現できると思う。
 X線の元素マッピングについては、蛍光X線の元素マッピングで現在はX線顕微鏡が100ナノメートル程度である。クレストのナノファクトリープロジェクトの中で兵庫県立大学のプロジェクトがスタートしており、これは10ナノメートルが目標になっている。

主査
 超高真空ではなくて、リアルな雰囲気の下で電子分光したい、電子状態を知りたいという大変貴重な御指摘だと思う。
 今までそういう指摘は、生物の分野の先生方から多かったが、今日の話で材料分野でもこういうニーズがあるという御指摘である。分野にまたがる計測技術が大事なターゲットだということを世の中はもう少し認識すべきだと以前より感じてきた。
 アプリケーションはそれぞれの先生方が独立に研究されるため、どうしても分野が限定されがちになる。計測技術、イメージ技術という面から見ると、あるシーズから様々なニーズにもこたえられるという装置ができていいと感じる。

委員等
 開発した機器が思わぬ分野で使われているという例として、主にタンパク質を分析しようと思って私が開発した質量分析装置が、日本の産業分野で強いポリマーの分野で使えるということが後からわかり使われている。このような例はたくさんあると思う。
 もちろんニーズが大切だということで開発するが、それが意外な効果を及ぼして、シーズがあったから初めてこういうことができ、他の分野で使えるのではないかということはよくあることだと思う。メーカーは、それを初めからわかってやればいいが、なかなかそうはいかないのが難しいところである。

委員等
 本日の話は学問的にも非常に示唆に富む仕事がある。その中の1つは超微粒子についてである。普通の白金の表面に触媒効果があることはわかっているが、超微粒子まで行ったときにサイズ効果の現れ方のシステマティックな研究はないと思う。
 金の表面には触媒効果はないが、ナノサイズにするとこれは触媒反応する。金属表面の結晶配列が超微粒子になると原子配列が違ってくる。すると当然のことながら表面の電子状態が変わるから、触媒反応は変わってくるだろうと推定できるが、まだそこの電子状態を測れるほどの、単粒子の電子量を測る技術はない。先生のお話を伺うと白金というのは微粒子になっていっても触媒反応は変わらないという結果を示しており、大変興味深い。もう少し分解能が高ければ単粒子の表面の原子配列が見え、さらに詳しいことが明らかになるかと考えられる。

主査
 超微粒子の中でお互いの原子の構造がどういう触媒活性に効くか、小さな面積で、厚さも数層から10層というレベルの中で何が起こっているか、それを明確にする必要があり、これはものすごくチャレンジングなテーマだと思う。
 触媒、半導体の分野でどんどん微細化していくと界面で何が起こっているのかだんだん見えなくなり、それをどうにかして見たい。原子レベルでの組み合わせ、配置が見られないかというところに行き着く。原理的にはわかるという発想はあるが、装置化がうまくいっていない。これも触媒の分野にも適応できるし、幾つかの分野にかなりインパクトのある情報をもたらしてくれるのではないかという期待があるが、なかなかそういう装置の開発に手がついていないのが現状である。

委員等
 粒子サイズ効果というのが1ナノメートルの辺りまで下げていっても表れない。粒子サイズ効果と言われていたのは、実は粒子間距離効果であって、粒と粒がどれぐらい近いところにあるかということに依存する。非常に近くなると反応物に対するアクセスがオーバーラップしているのではないかということを、私は提案している。先生がおっしゃったような1個1個が5ナノメートル以下のナノ粒子になると、その電子構造が変わるからという定説的なものがあったが、それは違うのではないかという結果もある。
 触媒反応を解析する場合には、やはり原子レベルの解析ができれば、触媒の設計が飛躍的に発展するのではないかと考えられる。この技術は触媒だけではなくて他の分野にも広く使えると感じている。

(2)平成17年度先端計測分析技術・機器開発事業の開発領域について

(資料4,5、参考資料2,3に基づき、事務局より先端計測分析技術・機器開発事業の平成17年度開発領域についての考え方を説明)

主査
 本日は、来年度の領域設定について、どのような考え方に基づいて、どのような内容のものを列挙するかということをほぼまとめに近い形に議論で集約したいと考えている。
 昨年9領域で概算要求をしたという実績があり、5領域を扱うだけの規模の新規予算をいただいた。来年度に向けての概算要求をどういう規模で考えるか、基本は昨年の路線を踏まえて、どう前に進めるかということだと思う。
 昨年9領域要求して5領域分をいただいた。今年は残り4領域プラスアルファでどこまで持っていくかというときに、常識的にいえばマキシマム9領域であろう。本日の議論はできれば9領域未満で、特に重要なものをきちんと関係者にアピールできるような、そのような課題領域をラインナップとして作っていただきたいと考えている。

委員等
 昨年9領域選定して、5領域今年からスタートする。4領域は未着手ということだが、その未着手になった理由というのをお教えいただきたい。

事務局の発言
 昨年8月に、9領域を早急に着手する計測分析機器として特定していただいた。12月に実際の予算の規模から、全部に着手すると1課題ぐらいづつしか実施できない。この事業で最初から考えてきたスキームとして、それぞれの領域について複数の課題をとって競争的に2年とか3年とか走らせ、その段階で中間評価をするということを考えてきたわけであるので、それぞれの開発領域ごとに2~3課題ずつ提案をとることにした。この結果予算の規模の関係から5領域程度しかとれなかったということである。
 なぜ、5領域をとったということについては、12月の段階で先生方にお集まりいただきプライオリティをつけていただいた。全体が5ということで、どういうものを上から5個とっていくかを精力的に御議論いただき、ライフサイエンスから2つ、ナノから2つ、環境から1つの領域を取り上げた。
 残りの4領域については、取り上げないと決めたわけではなく、領域を決めないで提案していただく領域非特定型に提案していただき、そこで採択できるようにした。

主査
 決して重要度が低いから落としたのではなく、やむを得ず数を減らさなければならなかった。そのときに分野間バランスはある程度、念頭に置き、各分野の先生方にどれから着手するのが適切かという御指摘をいただいて絞ったということである。

委員等
 界面の科学に関する分析技術に関して私は20年前からこのこととかかわっていて、タンパク質を壊さずにイオン化するためにナノ粒子を、当時は金属超微粉末を用いて行った。それが、リバイバルのような形で注目されている。
 質量分析は非常に感度が高くなったといわれているが、現在は分子の数として数十万個~数千万個ないと測定できない。それが界面をうまく利用すればごくごく微量のところを測れるのではないかということで再度注目されている。そうした全くの異分野の融合から生まれるものとしては非常にいい例だと思う。
 ナノテクということについては、文部科学省以外でも注目されている。これに取り組む場合は、それなりの文部科学省ならではの他とは違う理由づけのできるものを考えなければならないと思う。
 診断の分野では、新生児代謝異常の診断ということが具体的に始まっている。例えば生まれてから1か月か2か月たった赤ちゃんの尿をとって濾紙にしみこませ、その代謝物を測ると代謝異常が起こっているのが例えば10万人に1人ぐらいしかいないけれど、それを測ることによって治療ができて、正常な子供と一緒に成長していけるというようなことが始まっており、そういったところに取り組んでいくことは非常に大事だと思う。

主査
 界面の分野でどういう観点から界面を狙うかということに関して、もう少し御説明を付け加えていただきたい。

委員等
 今はイオン化を行うときに有機化合物を用いて、有機化合物がレーザーの光を吸収して、イオンがたたき出される。そのときに有機化合物がいわばショックアブソーバのような形でやんわりと固相から気相に、実際には真空中にたたき出され、そのときに一緒になってタンパク質のような測りたいものが出てくる。界面で非常に薄く単分子膜のような状態でタンパク質などのような測りたいものをのせてイオン化できれば、高感度化が可能となると考えている。現在は、レーザーの光を吸収するものがたくさんある状態のところにタンパク質のような測りたいものを混ぜるため、非常に効率が悪く、1億個程度でやっと検出できる状態である。

主査
 おそらく効率を上げることと、ある種の選択性を上げることが上手に組み合わされると、結果として微小な相手の母体試料から的確に見たいイオンがつくれるということでよろしいか。

委員等
 おっしゃるとおりで、血液の中にたくさんの化合物が入っているが、その中で例えばがんに関係のあるものはごく微量である。がんの細胞から出てきたようなものを1分子だけで測れるようなことができたら、血液1滴から病気を測ることができるので、そのような選択性のある機器が開発できれば非常にありがたいと思う。

委員等
 今の話題に関して、具体的に例えば3桁感度がよくなればこんないいことが見えるとか、そうしたマイルストーンみたいなことを教えていただきたい。

委員等
 現在の状態ではわからない。バイオマーカーという、例えばがんなどが起こった結果、あるいは原因となるような物質が一体どれだけ例えば血液の中に流れ込んでいるかがまだわからない。バイオマーカー自身まだ探している段階であり、どれだけ微量なのかわからない状態である。

主査
 昨年挙げて残っている4分野は、かなり一生懸命考えて議論したものであって、これは簡単に後ろに下げるようなものではないのではないかと思う。次年度の領域選定の最初の候補群は、この4領域が相当するのではないかと考える。
 議論の進め方としては4領域を選んで、それにさらに何を付け加えるかという御議論をいただくと良いのではないかと考えるが、いかがか。

委員等
 基本的にその方向でよいと私も思う。私も去年領域を決める議論に参加しており、上手に書かれているのではないかと思う。ライフ系では結構ハードルが高く、ちゃんと読むと難しい課題になっている。昨年残した4つの領域についても、応募する方でうまく書いていただければ、実施の領域でも応募は可能であり、その中で最も良いものを探してもらえば良いではないかとの議論であった。とはいえ実施された領域と残った領域とは微妙に違っていて、動態を見るのと本当に定量をするのはやはり違うので、これはぜひ復活させていただきたいと思う。
 前回お願いしたが、今年の表現でどういう応募があったのかは一番知りたいところである。今年の領域をどういうふうに読んで、どういうシーズ、ニーズがあったのか見て判断したいところである。
 新しい要素あるいは新しいニーズというのがあれば、それは当然付け加えていくというスタンスだと思う。
 ライフサイエンスに関してはそういう理由で4つが2つになったので、主査がおっしゃった方向がライフサイエンスには適当だろうと思う。

委員等
 本来は公募が行われ、どのような課題が採択され、どのような課題が落ちたのか、その中には、昨年残した4領域に入るものもあるかもしれない。そのようなことを踏まえて新しいもの、どのような分野に目配りをしなければいけないかを検討するべきで、本来は今日の会議に、JSTから資料が出ると思ってきた。それがなく、レスポンスも理解度もないままで次に進むことになってはいけないと思う。
 もう1点は、採択されたものより採択されなかったもののほうに関心がある。その中にいい提案があればそれは次のときに提案としてもう一遍取り上げるだけの余地を考えてもいいのではないか。その一番大事なところはなしのままで新規開発をどうするかという議論は難しいと思う。

事務局の発言
 現時点で御議論いただいているのは8月末に出す概算要求、昨年で言うと9の領域にあたる御検討をしていただいているということである。もう一つ大きく御検討いただかなくてはいけないのは、昨年の12月にやっていただいたように、実際に何をとるのかということであるが、現在は概算要求のための領域ということである。
 JSTは8月中旬に最終審査をして実際に9月から着手する開発課題を決定する予定にしている。その段階ではそれぞれの領域でどういう課題が実施されるのか、あるいは領域を特段決めないでやるものにどういうものが採択されたのかということが御説明できる状況になる。他方、文部科学省から概算要求を出していくときの規模が確定できないと予算の説明もできないということで、17年度着手する事が必要な課題の検討を本日お願い申し上げているところである。

委員等
 23日には書類選考は一応済んでいると公表されており、どういうものがヒアリングに上がってきているのか、せめて主査はある程度把握していただいたうえで議論したい。どんな提案が書類選考をクリアして残ったか、この中で1人は把握していただかないと心配である。
 我々に公開してくれとはいわないが、事務局は把握していて欲しい。

事務局の発言
 把握している。

委員等
 領域について、欠陥を見るということの大事さが見えてこない。今や不純物は何かというところは過ぎつつあって、同じ純度でも表面の反応や薄膜の特性が違うことが明らかになり、そこでキーを握るのは点欠陥をどうとらえるかというところにある。
 不純物、微量元素というようにとられて、欠陥というのが欠けているのが残念であり、欠陥を含めた形にしていただくと、もう少し新しい流れに沿った公募になるのではないかと思う。

事務局の発言
 ナノレベルの物質構造三次元可視化とナノレベルの物性機能の複合計測。ここはかなり欠陥ということも意識したということだったと思う。ナノレベルの昨年御提案いただいた3つのうち、これがうまく着手できれば欠陥ということについての観察もかなりの部分できると記憶している。

委員等
 公募の中に欠陥まで理解して上がっているかどうかが関心事の一つである。物質構造の可視化という中でうまく欠陥まで含めた形でとらえて応募してくれればいいが、私は欠陥に対するところが落ちてしまわないか不安である。
 もし今回のアプライの中にそういうのが落ちているようだったらそこに対する配慮があってもいいと思う。

委員等
 こういう仕事はあまり限られた予算で範囲を広げていくと、1プロジェクト単体の資金は少なくなって、中途半端で終わりかねないので、ここでは17年度はあくまでも9項目にこだわって、この中から何を選ぶか、残った4項目から何を選ぶかというふうに限定してはどうかと思う。
 1年経過を見て、その上で選んだプロジェクトをさらに補強する意味でやらなければいけない項目が出てきたら、その時点でプラスアルファという形で追加していったらどうかと思う。
 可視化というのは非常に強い興味を持たれているわけであるが、得られたデータからイメージ化するというソフト的な研究がおそらくそれぞれのプロジェクトで行われると思う。それを何かまとめてレビューして横断的にまとめていくような部署、委員会、あるいはプロジェクトチームがあるといいと思う。

主査
 現今の国の予算の配分に関する議論は非常にシビアで、他の予算項目と競り合って勝てるかというのが非常に気になる。やはり財務当局の関心を呼ぶようなテーマが含まれていることはかなり大事ではないかと思う。今年5つの中からいいものが落ちたら来年また拾う。去年と同じ9項目の要求でいいけれども、今の時点で他に色々な提案をいただいているとおり、魅力的なテーマがあれば行政の世界も関心が動くので、それを念頭においた要求項目があってもいいのではないかという気持ちでまず4領域は出して、今の時点で非常にアトラクティブな研究領域があれば、付け加えてはどうかと感じている。

委員等
 項目としての魅力、あるいは研究を通じての成果をPRするとよい。例えば欠陥の問題を青色ダイオード等の効果を去年よりもさらに高次な形で強調していくということで効果的に予算獲得につながると思う。

委員等
 4項目は、昨年の検討会でかなり議論してまとめたものだから、基本的には立ち上げるべきと考える。この中で落ちているけれども講演等を受けて新しいものをこの委員会で少し検討するというのは大事かと思う。

主査
 4つの領域を若干モディファイして重要なキーワードをつけ加えたらどうか。それ以外に別の切り口でぜひとも付け加えたいというものがあれば2つ、3つ付け加える。それで実際に何を実行するかは予算、昨年の実績が決まった時点で再度御議論いただくということでいかがか。

事務局の発言
 決められるところから決めていただくのが良いと思う。ここに出ている4つについて昨年はこういう表現にしていただいたが、今回ここに示した4つは検討会の報告書に残っている文章そのものである。それをこのままの表現でいいのかどうかを見ていただければと思う。

主査
 上から順にご指摘いただきたい。

委員等
 4つは生かしてというお話であるが、4つという数で残すのか。一見バイオ関係が多いという印象もあり、2つを1つにまとめるということも考えられるのか。

主査
 昨年9項目を選んだ時点で今の御指摘も念頭にあり、昨年度9項目のうち4項目がライフサイエンスであるが、十分に独立して重要な課題設定だという説明もいただき、4つのテーマを選んだ。
 私は昨年の議論をベースにして、マイナーな変更は当然行うが、去年議論したほぼ基本的な部分は残すという意味で、マイナーな修正を行うということを考えている。
 しかし私の1つの提案であるので、二つを1つにしたらどうか。そのかわりこういうものを入れたらどうかという御提案はもちろん可能である。ただ、この4つは生かして、それに2つ3つ付け加えることで今年度の新しい要求項目を作ってはと考えている。

委員等
 ライフ分野の始めの2つは、単一細胞内ということだが、動態を見るのと定量するというのはずいぶん違って、合体すると焦点が絞れない。バイオの人にとって関心が一番高いのは、その場で見ること、できれば定量したいというのがその次にあるので、それをあえて分けたということだと思う。私はこれでよいと思う。
 次の領域に、「特に脳」というような記述を入れると締まる気がする。臓器、病態というともちろん脳も入っているが、どちらかというと病気的なものがあって、やはり脳の機能をきちんと見るというということをどこかに一言入れたい。
 一番上の課題は我々から見たら結構難しい。単一細胞を本当に対象とするのはかなり難しく、これはハードルを高くしたというところがあったと思う。

委員等
 採択課題には該当するようなものがあるかもしれないので、確認する必要があると思う。

委員等
 ありきたりの提案だったら、これをやる意味はないから、あえて高いハードルとして、読み方でそこに向けたいろいろな技術ということでもかまわないという意味を含んで、少しきつくしておいてもいいと思う。

委員等
 単一細胞内というのは非常に難しい。定量的ということがさらに難しく、これは本当にチャレンジャブルなものだと思う。
 イオン化のしやすさという問題もある。タンパク質は比較的イオン化しやすいが、脂質はイオン化しにくいので効率が何桁も違ったりする。そうしたときの内部標準の用い方はまだまだ未踏領域である。分けられない状態でそのまま測るというのは、すごく難しい。

事務局の発言
 昨年、確かにハードルは高いけれども、それをすることによって科学研究が飛躍的に進むために必要な機器というようなことでお書きいただいた。新たな機器開発を進めることによって新しい研究が広がっていくか見えるものにしていただきたいと思う。

委員等
 もし修正、付け加えるとすれば研究ニーズと期待する効果から逆に見て、どういうことまではやらないと効果が出ないかという見方で、文字の修正でわかりやすい内容にできるのではないかと思う。

事務局の発言
 領域を決めたときには思いもよらないところに広がるということも期待される。昨年はあまり何とかのためのというのを最初に書くとそれにとらわれてしまうということも考え、むしろ技術とか機器を比較的客観的にお書きいただいた。全然違う領域の先生方からもチャレンジしていただくために何のためと書かないほうがいいのではないかという議論があった。

委員等
 そうすると、応募内容を見て、どのように解釈されたかを確認したい。

委員等
 公募時に全然違う分野からの提案を期待しているというニュアンスは入っているのか。それを促進するような全体としての文言、例えば分野横断的等が入っているといいと思う。
 分野横断ということでは、あるものを開発した時に他の分野でも使えるということも分野横断であるし、違う分野の技術を持ってくることで思いもよらない新しいものを作るということも分野横断ではないかと思う。

主査
 3番目あたりを御検討いただきたい。この項目にもう1つソフトな質量計測というような要素を付け加えられないか。分子集合系のようなキーワードを付け加えてはいかがか。

委員等
 分子のほうがナノレベルよりも大きなものを想定するため、少し難しいのではないか。

委員等
 質量分析のソフトマスは非常に個人的に関心があり、この領域に付け加えられればと思うが、最初にナノレベルと規定すると入らなくなってしまうと思う。微小領域という言葉もあるが、あまりにも漠然とした言葉になってしまう。

委員等
 ナノレベル領域というと固体的なものをイメージするが、分子集合体というと、気相をイメージするところが個人的にはあり、どの領域を、あるいは境界領域を想定されるのか。

主査
 分子集合系はいろいろなレベルがあり、気相でももちろんあるが、液相でもありえる。生体系というのは大体が分子集合系で絡みあって機能しているから、そういうものも皆入ってくると考えている。ただ、生体系を考えるにはナノレベルというのは小さすぎるという御指摘はごもっともと思う。
 さきほど御意見のあった欠陥をここに入れられるといいと思っているが、どうか。

委員等
 微量元素と固定してしまうと完全に欠陥が抜けてしまう。点欠陥と入れると、非常に目標がはっきりするが、ハードルが高くてアプライしにくいかもしれない。1つの点欠陥だけでも、点欠陥がいくつか集まっても点欠陥だと解釈してアプライしてくれるとありがたい。

主査
 微量元素に続けて、点欠陥を入れる。ただし、文字通り受け止めるとものすごく難しい。欠陥を加えると「化学結合」を変えなければいけない。「化学状態」ではないか。

委員等
 これとこれが合わさったときにどういう働きをするかという一種の相互作用も重要と考える。特にソフトマスの話で言えば相互作用がキーになる。

事務局の発言
 今御議論いただいているのは開発領域として特定をしていくもので、大括りの国の意思を表現していただきたいと思っている。そこで領域として将来のライフサイエンスあるいはナノのところでの大括りの方向性、それを担っていく機器ということで表現をお考えいただきたい。ここで全部表現しないとできないというものではなくて、他で御提案いただく道がたくさんある。

主査
 「化学結合」を「化学状態」と変更する。
 相互作用のニュアンスを出したいが、状態というと含まれると言えば含まれるが、ダイナミックなセンスがあまり入っていない。

委員等
 全体を見回して相互作用という感じのものが抜けているような感じがする。

委員等
 御提案の内容も要素技術の中に十分組み込まれる可能性があると考えられる。まさに試薬の役割というものが、相互作用的なものの基本的な機能に入っているというように考える。

主査
 次年度も領域非特定型を入れてものを考えてよろしいか。

事務局の発言
 はい。
 機器の前段階と後ろの段階、前段階というのは試薬みたいなもの、後ろの段階としてデータの処理をするソフトの開発というものも必要があればこの中に含めてお考えいただきたい。

主査
 この4項目の議論はこの程度にさせていただいてよろしいか。
 領域を2、3加えるという点に関して、方向性の議論をお願いしたい。具体的にどういうプロセスで決めればいいかということを議論いただきたい。

事務局の発言
 今回、新規領域の案として3つの領域を示した。また、本日先生方から御提案いただいたものもある。
 ここにあるテラヘルツについては、大変重要な課題として前回提案をいただいた。文部科学省全体として、光科学技術を切り分けて推進していくという方向も検討している。そちらは、機関を指定して、課題をきちんと決めて開発するという別のスキームで検討しているところである。

委員等
 脳の高次機能はさきほど領域に入れた。テラヘルツは大事であり、文部科学省が本当にバックアップしなければいけないのではないかと思っていたので、そちら側で検討するということであれば、こちらでは考えなくてよいか。

事務局の発言
 テラヘルツは調整させていただきたい。

主査
 物質電子状態のその場解析についてはどうか。

事務局の発言
 今日の御講演前に事務局で考えたものであり、その表現については議論いただきたいと思う。

委員等
 JSTの資料で4つほどエネルギーのところに項目があるが、これを1つにまとめて書く。そうすれば、今の物質電子状態のその場解析と関連があると思っていた。

事務局の発言
 JSTの資料を出しているが、これと先生方の御検討と必ずしもリンクしていただく必要はなく、表現も含めて先生方に自由に御議論いただきたいと思う。

委員等
 例えば物理・化学反応材料における原子・分子状態のその場解析ではどうか。

主査
 今の表現で先生の話の趣旨にもよく合うと思う。今日ここではちょっと時間不足で結論を出せないが、この提案を1つの候補として再度委員の先生方から御意見をいただいて、それをまとめた形で、1つか2つ付け加える可能性を残すということでいかがか。大体全体像が出たのでもう1回お考えいただき、それで表現も含めて事務局に御意見をお寄せいただきたい。

委員等
 確かに御指摘のようにその場というか、環境下におけるという考えが抜けている。ナノテクだと真空に引くのが前提になっていて、ウエットのまま、あるいはもう少しガス反応の真空圧の高いところで見るということは非常に大事だと思う。

主査
 その場計測が1つの言い方であるが、もう1つは一言で言えば超高真空ではない雰囲気下で見たいものをきちんと見るというようなタイトル付けのものを1つ新設するということでいかがか。
 バイオロジカルな面は非侵襲的なという表現であるが、材料化学的なセンスにマッチしない。エンバイロンメンタルSEMというように、常圧まで圧力を上げておいて、それで電顕で見るというような努力は昔からなされているが、それを正面にとらえた課題というのは今回の議論では抜けていると思う。それができればバイオにも使える、材料反応系にも使えるというようなものがあると思う。
 新規提案のところに書いてある言葉の真意をとらえていただき、少し表現あるいは内容に関する御提案を先生方からいただき、それを事務局と私とでまとめて1つの表現にする。それを本委員会の現時点での結論にするということでいかがか。

(委員一同 了承)

主査
 中身を吟味したうえで今回は次年度要求事項としてはこの5つに絞るということで、去年からはそれなりに進化していると理解していただけるのではないかと思うが、事務局はいかがか。

事務局の発言
 今回、5つに着手するということに絞っていただき大変ありがたく思っている。
 8月中旬にJSTが平成16年度に公募した提案の課題が決まる。本当にこれは惜しいというものもずいぶん落ちているという状況があれば、それも少し付け加えさせていただくということもあると思う。その点も主査とご相談を申し上げたいと思っている。

主査
 本日はこれで予定の内容の御議論をいただけたと思う。
 今回の議論を踏まえ、事務局とよく協議したうえで先生方にもう一度御確認をお願いするというようにしたいと思う。
 現在、選考が進行している本年度の事業に関しての情報も可能な限り早いタイミングで委員の皆様方に事務局から連絡をお願いしたい。
 長時間にわたる御議論大変ありがとうございます。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)