先端計測分析技術・機器開発小委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成16年6月29日(火曜日) 10時~12時

2.場所

経済産業省別館 10階 1014号会議室

3.出席者

委員

 二瓶、井戸、北澤、小原、近藤、志水、下平、田中、中村(道)、松尾各委員

文部科学省

 丸山研究振興局審議官、田中研究環境・産業連携課長、米倉基礎基盤研究課長、内丸計画官付評価推進室長、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官

オブザーバー

(有識者)
 宮下東京大学大学院医学系研究科教授
 植竹株式会社日立製作所主管技師
 中沢東北大学電気通信研究所教授

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端研究分野における計測分析技術・機器に対する研究者ニーズについて

 「脳高次機能への先端計測技術によるアプローチ -課題と展望-」
 東京大学医学系研究科 教授 宮下保司氏

委員等
 脳の研究の中でも高次機能を中心にお話させていただく。
 我々が脳の研究に使える技術を空間分解能と時間分解能で分類すると様々な技術があるが、空間分解能10のマイナス3乗~10のマイナス5乗メートル、時間分解能10の0乗~10のマイナス3乗秒という範囲で非侵襲的な計測方法は現在存在しない。
 我々の研究は「ヒトの心についての心理学的研究」、「ヒトを被験者とした非侵襲計測」、「サルを被験者とした比較脳機能計測」、「サル・ラット・マウスを被験者とした電気生理学的・解剖学的・分子生物学的研究」という異なったレベルのシステムへのアプローチからできているとお考えいただきたい。我々の考えでは心の研究もキーのエリアは多分「ヒトを被験者とした非侵襲計測」、「サルを被験者とした比較脳機能計測」という二つのレベルをどうするかということだろうと思われる。
 「ヒトを被験者とした非侵襲計測」というレベルの研究では、fMRIというのは非常に強力なものであるが、空間解像度が大体2ミリメートルより上がらない。幾つかの理由によるが、これをどうしたらいいかが課題である。一番簡単な方法は、磁場の強度を強くすることであるが、そのような強力な磁場の中に人間を放り込んでいいのかという倫理性の問題が出てくる。時間解像度は1秒ぐらいしかない。これは神経細胞の活動として血流の流れをMRIのコントラストに転換する現在の方法を使っている限り、多分1秒以上よりもよくならない。従って、このカップリングを転換する全く新しい方法を見つけなければいけないが、どうやっていいか全くわからない。
 脳の幾つかの領域がどういうふうに共同しているかという、その共同作業の様子を知りたい。それが領域間の機能的・解剖学的結合関係、もしくは領域間の信号の流れということである。現在の我々の方法は信号相関法、これが唯一の方法である。これは時間的な解像度の制約を非常に受ける。脳の現象は1ミリ秒オーダーの現象であるが、それに対して1秒オーダーの信号で相関をとっても粗い相関しかとれず、これが非常に難しい。
 最後に、もっと難しい問題は脳が働いているということと、それが我々の実際の行動に反映しているということとの関係やいかにということである。我々人間という存在は二元論的な存在なのか、一元論的な存在なのか。つまり心身が二元論なのか一元論なのかということに関係する議論である。一元論者というのは脳の活動が心の働きへの因果性を求める。二元論者はそこを認めないということなので、因果性の問題は非常に重要である。これについてヒューマンの非侵襲的方法としては、現在のところ打つ手がない。侵襲的方法として、ある種の電気刺激とか破壊とかを行えば何とかなるかもしれないが、人間の場合には倫理性の問題があって手が出ない。
 「サルを被験者とした比較脳機能計測」というレベルの研究では、人間の研究にパラレルにサルを被験者とした研究をすることによってある種の知性の進化を探求することができ、これと同時に、人の心を心理的なレベルからマスウ、ラットの本当に生物学のレベルまでつなぐ重要なリーフを提供することができ、その方法としてサルを使ったイメージングというものがある。
 脳の領域間の機能的結合というものに関しては、多分サルを用いれば侵襲的方法が使えるので何とかなるかもしれない。ただし、時空間解像度とのギャップはまだ埋められていないし、さらに重要なことは操作側の時間解像度という問題がある。例えば10の4乗の神経細胞の活動をインディペンデントに操作する方法があるかということである。数個の神経細胞の活動を操作するものは可能かもしれないが、10の4乗の神経細胞を同時に我々が思うように操作して因果性を調べるということになると、どうやったらいいか見当もつかない。

委員等
 計測法がないとされる領域の新しい計測法として、可視光より少し波長の長いものや電波の波長の短い方などへの進展度合いはいかがか。

委員等
 計測とバイオロジーの両方から攻めなくてはいけない。計測側からいくと、例えば赤外映像を使ったらどうかというのはすぐ思いつく。その場合、赤外で測れるマーカーは何かというと、現在はヘモグロビンである。ヘモグロビンというのは、バイオロジカルに言うと血管のダイナミックスに支配されているので、そもそも遅い。それから、血管が支配している領域というのが生理的にある一定の大きさがあり、およそ400ミクロンぐらいあるので、それより小さいものはこのマーカーを使っている限りは見えない。従って、計測技術と、その方法でセンスされるターゲットのインデックスの両方を同時に開発しなければいけない。

委員等
 マイクロバブルというもので非常に超音波の可視化がよくなったという例があるが、そのような利用はいかがか。

委員等
 脳研究分野の計測技術の歴史を見ると、一番初めに脳の形が見えるような計測から始まり、それが進んで、誰かが何かを思いついて、突然機能を測る計測技術に転換できることになる。超音波は現在は形を主に見ている段階であり、何らかの格好でファンクションを反映できるような格好に転換できれば非常にいいかもしれない。

 「フィジカルセキュリティ分野における計測・探知技術の状況」
 株式会社日立製作所 電力グループ セキュリティ事業推進本部 主管技師 植竹直人氏

委員等
 フィジカルセキュリティというと資産家が犯罪被害に遭うのを防ぐとか、特定の非常に重要な施設を持っている会社とか団体が、そこの施設を守る、または法律に沿って、それを安全に運転するためにやっているという側面が強かった。ところが、9.11のインパクトが非常に大きかったということで、中心はどちらかというと国家、国際社会の問題でボーダーセキュリティの強化とか、重要施設、それも国を代表するような施設の保護という問題に変わってきて、国家の役割が非常に大きくなってきている。同時にボーダーの問題であるため、国際協調、つまりどこの国も同じレベルにしなければいけないというような問題が生じてきている。
 日本はセキュリティに関してはかなり特殊な状況であるので、欧米の技術をそのまま受け入れてしまうと経済的な問題などいろいろな問題が生じてしまうと思う。早いうちに日本社会の特徴に合った技術を育成していかないといけないのではないかと思っている。
 今、一番怖いのは爆薬の持ち込みなので、そういうものだけを検出できないかというのが1つの問題になっている。入国管理用生体認証については、生体認証はいろいろあるが、過去の蓄積、例えばFBIの犯罪者のデータベースと結びつける必要があるため米国では指紋、顔が採用されている。
 セキュリティ分野で要求される技術として、プローブに対しては、まず隠されているものを探さないといけないという意味でできるだけ高い透過性が要求される。それから、できたら遠くから見たい。問題になっているもの、脅威になっているものを選択的に見つけたいということがある。さらに、一般の公衆のところで使うため、法規制に合致しているということと人体に無害であるということが非常に重要である。
 システム全体への要求としては、非常にたくさんの処理をしないといけないため、高スループットということが経済活動に非常に大きな影響を与える。また、誤報が低くないと困る。それから、実際のフィールド条件で使われるタフさということが必要になる。そして、経済性としてコストを社会的に許容される限度内に納めないといけないという問題がある。
 今後の課題としては、まず荷物検査用は誤報率の低減が非常に大きな課題になっており、より高速化、低価格化したいということがある。これに対応するようなプロープがあれば非常に良い。それから、いろいろな技術の複合化というのが1つの方法として出ている。先ほど紹介したように手荷物までは何とかなっているかもしれないけれど、トラックになったら非常に技術が限られてしまうということで、大きなものに対応できる技術がないかということがある。また、トレース型の探知機のほうは人手がかかるというので当然、自動化という問題が出てきて、サンプリングをいかに自動化するかという問題と関係している。爆薬だけが脅威なのかというと、生物剤、化学剤も脅威なわけで、そういったものへの対応を求められている。
 対人探知技術としては人体への影響の問題をクリアしないといけないということと、体に巻くような爆弾検知性能向上とともに、プライバシーの問題に配慮しないといけないという問題がある。
 生体認証では出入国管理用というのは大容量データの高速処理ということになっていて、できるだけ無痛でいくということだと思う。生体キーは指静脈にしてもまだ蓄積が十分でない側面もあり、今後データを蓄積していく必要があると考えている。

事務局
 このようなセキュリティの技術はかなり守秘義務が伴うのではないか。

委員等
 日本でははっきりしたものはない。アメリカの場合はセキュリティクリアランスというのが非常にはっきり決まっていて、我々は一定の契約を結ばないといけない。アメリカ人だと資格を持つ必要があり、その人以外には情報が与えられない。従って、我々はアメリカのセキュリティクリアランス情報は今ほとんど入手できていないような状況である。

 「情報・通信における計測分析技術・機器に対する研究ニーズ」
 東北大学 電気通信研究所 教授 中沢正隆氏

委員等
 人々の生活の中でデータトラフィックは年率倍の大きさで伸びている。現在、伝送速度は10Gbpsであるが、40Gbpsはすでに開発されており、その次を狙うということで160Gbpsという高速のシステムが考えられている。無線通信では120ギガヘルツというキャリア周波数による10Gbps伝送などの大容量通信システムの研究が進展していく。
 このような状況において、電子デバイス、あるいは光デバイスの高速性ということが非常に大事なるが、今世の中に100ギガヘルツ以上の信号の波形やスペクトルを正確に測る装置は存在しない。従って、非常に高速のシステムをつくろうとしても、それをちゃんと測る測定器がないということが大きな問題である。
 テラヘルツ領域は今いろいろな技術に使えるということで、医療とか環境とかバイオ、セキュリティへの応用ということもあるが、このようなテラヘルツの電磁波としての特性を正確に評価するような装置も今はない。従って、このような領域を正確に評価できる装置の開発、高周波の領域のデバイスあるいは光技術を確立することが重要であり、100ギガヘルツから1ティガヘルツくらいの計測技術の確立を目指すことが大事であるということをここで述べたい。
 21世紀は光をマイクロ波のように使いこなすということが非常に重要となる。そのためには高精度のスペクトラムアナイザーが必要であり、周波数を安定化したレーザ、ヘテロダイン法という非常に精度の高い技術が必要である。
 先ほどテラヘルツ領域の分光技術という話題があったが、周波数をきれいに掃引しながらテラヘルツを測っていくという技術も今はないので重要だと思う。また、時間の点で光は高速であるので、そういうものを測るために自己相関計、ストリークカメラ、光サンプリングスコープといったものが必要である。さらに、空間ということを考えると、干渉計測でナノバイオの方向に精度を上げて測るということがあるかと思う。
 なぜ高精度のスペクトラムアナライザーが大事かということだが、横軸に周波数の安定度をとり、縦軸に光技術の展開と新計測器を示すと、今WDMのシステムというものが光を使った通信分野では主流である。その場合にスペクトラムアナライザーとか波長計は現在も実際にあるが、その精度は大体10のマイナス8乗ぐらいが限界である。将来を見ると、DWDMというものもあるし、さらには位相を使おうという話もある。さらに、マイクロ波応用、あるいは周波数標準、光の物差しという領域もある。こういった領域が光の新たな領域として考えられるわけであるが、精度を見ると10のマイナス9乗よりもいい精度のところでないと、このような技術は実現することはできない。そういうものを実現するための評価用装置として高精度のスペクトラムアナライザーが必要になるということであり、我々としては従来にないような精度でかつ、ヘテロダイン法で高分解能のスペクトラムアナライザーをつくれたらと思っている。また、電子デバイスのサンプリングスコープにしても、非常に高速の電子デバイスを使って百何十ギガのパルスを直接測るということも考えられると思う。
 最後に、21世紀の情報通信分野の研究開発を加速し、さらに日本が国際的なイニシアティブをとるためには、高周波の電子デバイス・光技術を用いて、100ギガヘルツから1ティガヘルツぐらいの計測・評価分析技術の確立が急務である。そのために信号発生、波形測定、スペクトル測定、パワー測定が必要になるが、いずれも今できておらず、今後、こういうものを確立していく必要性が高いと思う。

委員等
 テラヘルツ領域については日本がイニシアティブをとっていると認識しているがいかがか。

委員等
 先ほどの話題にあったようにアメリカでいろいろな安全に関する問題があり、テラヘルツがすごく脚光を浴びるようになった。しかし、測れる、あるいは、ものが検知できるとは言っても、出てくるテラヘルツの周波数の精度はどのぐらいだとか、線幅はどのぐらいだとか、ちゃんとした測定の精度、あるいはテラヘルツの測定装置をどのぐらいの評価ができるか、そういうものはまだまだないと思う。

委員等
 テラヘルツを生体に使うということの可能性とか展開はどうか。

委員等
 サイエンスの方向として、多分ものの形のようなものを測るところから始まっているのではないかと思う。私たちは最終的には働きが知りたいわけで、それにはかなりのジャンプが必要であり、テラヘルツオーダーのシグナルソースを使ってものの形がどんなふうに外から見えてくるかが課題と思う。

委員等
 テラヘルツを使ったイメージングというような話に関しては、人体に無害な光であるということで非常に研究が進められていると認識している。

委員等
 テラヘルツは水に非常に吸収されやすいという特徴があり、1ミリメートルぐらいの水で、今の技術は測定できなくなるので、人体の中を見るには向かない。逆に言うと表面とか歯を見ることは可能で、これは大きなプロジェクトとして、ヨーロッパでは今始まっているそうである。

(2)先端計測分析技術・機器開発に関する内外の研究・開発動向について

(資料4,5、参考資料1,2,3に基づき、事務局より先端計測分析技術・機器開発に関する内外の研究・開発動向、科学技術振興機構が行っている先端計測分析技術機器開発事業の16年度選定状況について説明)

主査
 本日の中心議題として、お話をいただいた3先生の御指摘の分野、それからそれ以外の分野も念頭におき、委員の先生方から御意見等をいただきたい。
 我々が今議論している事柄の目標は何かというと、平成17年度の概算要求に向けて、来年度どういう重点領域を掲げて予算要求をするか。昨年度、9領域を重点領域として挙げて、そのうちの予算規模等の制約で5領域に絞って実行に移したという経緯がある。従って、17年度に向けて残りの4領域並びに、その後重要性が増した新たな領域、そういうところを関係の御専門の先生方の御意見を受け賜りながらまとめるということがミッションである。そのような観点からご発言をいただきたい。

委員等
 9領域というものは具体的には何か。

事務局
 9領域というのは、この小委員会の前の検討会で特定いただいた9つの領域である。具体的には、生体内・細胞内の生体高分子の高分解能動態解析、実験小動物の生体内の代謝の固体レベルでの無・低侵襲的解析、ナノレベルの物質構造三次元可視化、ナノレベルの物性・機能の複合計測、極微少量環境物質の直接・多元素・多成分同時計測、9領域のうちのこの5領域については平成16年度に予算化でき、現在課題選定中である。
 残る4領域とは、ライフサイエンスの分野で、単一細胞内の生体高分子・遺伝子・金属元素等全物質の定量的網羅的分析、人体内の臓器、病態などの無・低侵襲、リアルタイム三次元観察及び人体中の物質の無・低侵襲定量分析。ナノの分野で、ナノレベルの領域における微量元素の化学結合、分布状態、定量分析(ナノキャラクタリゼーション)。環境の分野では、生体及び環境試料の超微量物質の化学形態別分析が残っている。
 平成17年度に残り4領域をどうするのか。あるいは、昨年から今年にかけて御説明をいただいた例えば情報の分野についての計測分析をどうするのかということについて、平成17年度の問題として御論議いただきたいと思っている。

委員等
 今回、5領域で募集をしたが、9領域ということはすでに前の検討会で公表されている。それを見て、例えば領域非特定型ということで押さえている方もおられるかもしれない。今どういう応募があったかということがまずあって、その上で議論した方がよいのではないか。

主査
 次回委員会を7月の末あたりに予定しているが、そのころに応募内容の分布のようなデータをこの委員会に出すことは可能か。

委員等
 幅が非常に広く、応用から見るか、手法から見るか、いろいろな見方ができ、分類はかなり難しい。
 審査はどちらかというと、手法別に分けて、それで例えばスペクトルスコピーをバイオに応用すると、それをバイオ側から見る人が一緒に入っているというような形で審査委員会が構成されている。

主査
 確かに初年度の応募に対して、どのような提案があったかということは、この委員会から見ても来年度の議論をする上で必要な情報だと思うが、公募の研究申請というのはアイデアを含めて出てくるので非公開となっている。採択されたものだけが公開されるのであって、それ以外の情報は非公開であるので、細かく議論するための情報をいただくわけにはいかないだろうと思うが、方法の分類あるいは主としてねらったターゲットの分類、そのぐらいの統計数字をJSTでまとめいただき、ここにフィードバックしていただけると、将来、議論のプラスになるのではないかと感じる。

事務局
 昨年の検討会で御議論いただいた9つの領域、これは緊急に実施する必要があるということを示していただいたわけであるが、確かに抜けている領域があるということは委員の方々も十分御認識をしていただきながらも、平成16年度に着手ということで集中的に御議論をいただいた。
 科学技術分野全体を見ると、まだまだやらなければいけない領域があるのではないかと思う。抜けているものは、領域非特定型の中では入るけれども、国としての意思をきちんと明確にする必要があるのではないかと考えている。総合科学技術会議からも平成16年度1回公募したら、もうそれで終わりということは絶対にないようにとの強い要請も受けており、昨年定めた領域以外の領域として取り上げられるものがあるのかどうかを検討していただきたいと思っている。
 最終的に、どの領域を平成17年度着手していくのかということは9月以降、12月までの間に、この委員会で決めていただくということになるので、その段階であればJSTの実施課題ということも決まった段階であり、それを参考として領域を決めていただくことになろうかと思っている。

委員等
 どのぐらいの大きさのプロジェクトにしていくのか文科省に伺いたい。腹づもりとして100億円のプロジェクトなのか、500億円なのか、1,000億円か。

事務局
 計測分析技術全体として昨年の目標は100億円だったが、現在85億円であり、その中で新規のものが約50億円という感じである。今年は全体85億円という規模があり、それを倍にすると200億円というようになるが、正直申し上げて現在の段階では、どうなるかわからない。次回の委員会ぐらいでは省全体としてシーリングということが出ると思うので、また御報告を申し上げたいと思う。

委員等
 この先端計測の分野で日本の存在感を出そうとすると、当然、諸外国の予算等のベンチマークをやって、どの分野では勝つ、どの分野は大きな望みは持てないというような、ある程度の目論見をつけ、どのぐらい国として投資を出すか、そこから解きほぐしてもらわないといけないのではないかという気がする。

委員等
 計測技術というものが普通一般常識としては測るだけではないか、あるいは、測るところに何の独創性があるのかということを言われることに対する反論を申し上げたいのは、さまざまな分野、異分野の方が集まって、ほかの分野では一般的なことだったかもしれないけれども、それを別分野に生かすことによってすごい発展ができたといったことがある。計測技術開発とは、そういうことができる分野であるということを1つ強調しておきたい。それがあるからこそ独創的なことができるし、それがやりがいとなり、あるいはほかへの波及効果も出てくるので、計測開発、その分析機器をつくるということが非常に有意義であり、波及効果があると思っている。

委員等
 ある程度の目標というのがきちっとしていて、その中でこの役割を議論していけるといいということを私も思う。また、この分野は非常に大事だから、もっと予算を投入していくべきという意見もそのとおりだと思う。

委員等
 実用的な結果が出やすいものとして、例えば民間の企業が提案している機器開発を軸にして、それをより加速あるいは効果的に推進できるようなものが大学あるいは独立行政法人の中にあれば、そういうのをある程度統合するような形で1つプログラムを組んで実施してみてはどうか。
 民間企業が提案するということは、かなり実現性が見えているものと思う。その開発結果の応用できる範囲が内容的に非常に役に立つのであれば、大学あるいは独立行政法人が協力して加速させて、予算を有効に使うという方法があるのではないかと思う。

委員等
 リモートセンシングに関係するような研究領域が検討されていないのではないか。リモートセンシングというのはいろいろなものがあって、アプリケーションとしては地表面におけるリモートセンシング、あるいはスペースからのリモートセンシングということがあると思う。
 こうした技術開発を行っていくとき、大きなプロジェクトでいろいろなものを刺激してリードしていくのは非常に大事な部分があると思う。長期的に日本の研究機関がこういう研究開発に携わっていく場合、特に大学は大事だと思うが、そのときに大学のシステムとしての基盤整備というのにもう少し目を向けるのも1つの大事な部分かと思う。従来の大学には技官がいて、工作室があったが、その部分が弱くなり、技術的なサポートとか、エンジニアリング的な面が非常に弱くなってきている。同じシステムを復活する必要はないと思うが、この辺りにも少し目を向けていくのも必要ではないかと思う。

委員等
 民間、要するにつくる側がチームを組んでやっていけるような、そういう体制ができるようなものに光を当てていくということが必要ではないかと思う。

委員等
 基盤整備の御指摘は、学術審議会のところでも委員の方から大学がこういう機器開発に対する評価をもっときちんとやらなければいけないとか、技官がいなくなってどうするのか、ワークショップがなくなった現状はどうするのだというような非常に活発な発言があったように私も記憶しており、この委員会発足当時からすでに総合科学技術会議からの強い御指摘があった。しかし、それはこの委員会として対応できるかどうかを超えた、もっとスケールの大きな問題であろうと私は委員として考えている。

主査
 公募要領の中に企業との産学連携については、ぜひ組み合わせで応募してほしいということを非常に強調した。その中で企業の規模について比較的小規模な企業もぜひチームに入れて検討してほしいということを書いた。このことについて、どの程度申請が出てきて、採択されたものの中にどの程度あるかということが見えてくれば、この委員会で何らかの形で次の応募の際に、もう少し社会的な影響のある形でアピールすることも可能ではないかと思う。ぜひ初年度の採択の結果が出た折に、そういう点も含めて検討をさらに深めていただければと思う。

委員等
 情報の分野で重要なこととして情報のセキュリティということがあると思う。情報セキュリティとか、暗号とかの話になると若干ソフト的な面にはなるかと思うが、付随するソフトというのは莫大な知的資産でもあるので、そちらのほうも御検討をいただければと思う。

委員等
 情報セキュリティは総務省のプロジェクトと、JSTの中ではミッション型の研究として現在すでに始まっており、そこと共通の技術として計測関係のセキュリティもできるのであれば、そちらでやっているのではないかと思われる。
 リモセンに関しては、日本では宇宙開発の関係から、リモセンの技術はそちら側でプールされている状況になっており、このプロジェクトで取り上げるのが適当かどうかというのは考えたほうがいいのではないかと私は感じている。この先端計測技術を産業政策として考えるのか。それとも文科省の基礎研究の範ちゅうで考えるのかというところで意見が分かれるかと思う。
 今現在、先端計測のプロジェクトは完全なる経済産業省型の産業技術ではないという形でJSTとしては扱っており、産業技術ということになるとこの分野は数百億円ぐらいの予算でやっていかないと産業技術の誘導にはならないと感じている面がある。基礎研究ということで、実質JSTのかかわる部分は4、50億円ぐらいの大きさであるが、そこでやっていって、今回のこのプロジェクトでは企業がチームの中に加わっていることを条件に近い形で募集のときに要求している。従って、実現性が高くて、企業がそれにかかわって、企業の判断も入っているという、そこの部分はこれからの書類選考でも重視することになっているし、面接ではそこを重点的に聞くことになると思う。
 しかしながら、非常にチャレンジングでインパクトが大きいかどうかということは絶対に評価基準から外さないということを審査委員の方々にお願いして、このプロジェクトの選考を行うということになっている。その意味で、小規模な企業からもとるとか、あるいは大企業を1社ずつ配置するとか、そういった形での産業政策的な形では現在JSTでは考えていない面のあるということを申し上げておきたいと思う。

主査
 本日の自由討議は以上にさせていただきたい。本日はご多忙の折にご出席いただき、ありがとうございました。特にプレゼンテーションをお願いしました3先生には、心から御礼を申し上げます。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)