先端計測分析技術・機器開発小委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成16年5月28日(金曜日) 14時~16時

2.場所

古河ビル 6階 F1会議室

3.出席者

委員

 二瓶、井戸、北澤、小原、近藤、志水、下平、松尾各委員

文部科学省

 石川研究振興局長、丸山研究振興局審議官、田中研究環境・産業連携課長、小島基礎基盤研究課大型放射光施設利用室長、呉ライフサイエンス課調整官、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、佐々木基礎基盤課課長補佐、杉江研究環境・産業連携課専門官、原基礎基盤研究課材料開発推進室専門官

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端計測分析技術・機器開発小委員会の運営規則について

 (資料1、資料2に基づき事務局より説明)
 資料2、先端計測分析技術・機器開発小委員会運営規則(案)のとおり了承

(2)先端計測分析技術・機器開発プロジェクトの進捗について

(資料3-1~3-10に基づき事務局より説明)

委員等
 先端計測分析技術・機器開発プロジェクトの特徴の1で、「要素技術開発から実用化まで一括して開発を支援」とあるが、具体的に、いいものが出てきた時、実用化には思った以上の経費などが発生するようなこともあると思う。そのような場合の柔軟な対応ということはどのような支援があるのか。

事務局の発言
 金額面での支援としては、必ずしも製品化まで全てを国の予算で賄うということは適切ではないのかもしれない。知的財産権あるいは特許権というものがスムーズに製品化を実施する機関に移転されるようなことは進めなければいけないと考えている。これからの課題であるが、調達という問題がある。この調達の問題が製品化を進めるに当たっての大きなバリアになっているということも聞くので、その点については今後この検討会でも御議論いただきたいと思う。
 これまでいい技術があっても製品に至らないで終わってしまっているという例が余りにも多い。そこを何とかして直して、全部というまでにはいかないかもしれないが、幾つかでも必ず製品のところまでつなげていく、そういう支援をいろいろな段階で、いろいろな形態で進めていきたいと思っている。

委員等
 個々のプログラムは3年とか5年というスパンという説明であったが、長期的にこのプロジェクトで技術開発力を伸ばしていくというその年限をどのぐらい考えているのか。非常に短期的にやってしまうと、結局は根づかずに、いわゆるシステムとして動かないということになると思うが、そのあたりの見通し、計画はどうなっているのか。

事務局の発言
 性能実証に近いほどかなり年限を限ったプログラム運営になるだろうと思っている。
 ただし、今年から新しく進めた先端計測分析技術・機器開発事業については必ずしも期限を限っていない。対象とする技術、その内容に応じて適切な期間を設定してもらえばいいということになっている。ただし、マイルストーンということはきちんと設定することが必要だと思っており、例えば3年というところでの達成の目標をきちんと示すことが大事だろうと思っている。
 また、それより1つ前の比較的基礎の段階のものも支援をしていかなければならないだろうと考えており、戦略的創造研究推進事業の個人型、チーム型というプログラムを活用して、それについては5年ぐらいで基礎的な段階での研究を進めていくことにしている。

主査
 装置開発は、ハードウエアができて、それから利用技術ができて、それから市場に普及してという段階を踏むのが通例で、その段階を踏んで3年あるいは2年ずつかけていくと7~8年すぐたってしまい、市場の技術的優位性を確保するのは難しいという情勢がある。従って、今回のこのプロジェクトの基本的な発想は、なるべく早く、要するに装置開発をしながら利用技術も開発していくという発想で、5年をめどに一通りのところまでつくり上げてしまうというのが基本的な構想である。一応5年でプロトタイプを作り、そのあとの性能実証、つまり複数のプロトタイプ機器を使ってユーザーがその装置を使いこなす実験をするというイメージであるので、全体として7年という期間は今までの国費による装置開発のペースとしてはかなり速いスケジュールを目指していると考える。
 現実的に10年で日の目を見るものはそんなに多くはないという御指摘は、実際ごもっともであるが、これは個々の装置の性格にもよる。最近はファーストペーパーが出てノーベル賞をもらうまでに10年かからないケースもあるし、ノーベル賞をもらったとたん、装置があっという間に世界中に行き渡るというケースもある。この先端機器開発のプロジェクトについては、なるべく早く実用的なレベルのハードウエアを作り上げるということを狙いとして、制度設計ができ上がった。

委員等
 1つのプロジェクトなり、1つの機器開発を長期にわたって行うのはいいと思っていない。ただ、ある程度国とか公共のレベルで機器開発を続けるという姿勢を長期的に持っているかどうかということを伺いたい。

事務局の発言
 このプロジェクトを立ち上げるときに、総合科学技術会議で随分と実施段階についても御議論いただいた。最初立ち上げたものだけが5年間ぐらい行って、そこで終わってしまうということは絶対してはいけないというようなことを繰り返し指摘いただいた。文部科学省としても、17年度以降についても引き続き充実をしていきたいと思っている。

委員等
 目的としては、現在日本でほとんど輸入されている機器の次世代的なものを作るのが目的なのか、あるいは先端的な研究をしている手助けになるような機器を作るのが目的なのか。独創的な新しい機器あるいは技術を開発しようと思ったら、やはり先端的な研究をしている人たちとチームになって開発する必要があるのではないか。

事務局の発言
 このプロジェクトは、まさに独創的な研究、最先端の研究というのは新しい発想による機器からしか生まれないのではないかという思いから始まり、本当に独創的な研究を支える独創的な機器を日本の研究者、技術者、これが力を一緒にして開発をしていくということが趣旨である。したがって、今ある機器の改良型ではなく、新しい研究領域が広がっていくような、しかもその研究領域が具体的に研究者の方々に強いニーズがある、そういう研究領域を新しい機器が引っ張るということを実現していきたいと思っている。
 各チームの中には、最先端分野の研究者に入っていただき、開発側と研究側が一緒に開発することが望ましいと考えている。また、機器の開発の場も、なるべく研究に近いところで開発をしていくということが大事だということを検討会で強く御指摘いただき、このようなチーム構成を提案に盛り込んでいただくことを、事務局として説明してきた。

委員等
 研究も競争をしており、その辺りをうまく運営していくかは、それなりの難しさがあるのではないかと思う。是非独創的な機器の開発ということを実現していただきたい。

委員等
 昨年の検討会からかかわっており、これだけの大きさのものが立ち上がって、非常に画期的なことだと思う。
 この委員会は、いろいろ複雑にあるプログラムを全て見て、大所高所から意見を申し述べるということである。いくつかのプログラムを聞いていて、かなり重複があるような感じもあり、その辺りのコーディネーションはこれから難しくなってくると思う。個々のプロジェクトにはそれぞれの委員会なり審議機関があると思うので、そことバッティングするということもあるのかもしれないが、そこを恐れずに、やはり全体を見渡して考えていくべきであろう。

委員等
 このプロジェクトの大事なところは目利き人がどれだけの役割を果たすかというところにかかってくる。もう1つはレスポンスビリティーということで、どういう選考をして、どういう評価をして、そしてその結果に対してどういう責任をとるのかという、そのあたりの体制、枠組みについてもう少し聞かせていただきたいと思う。

事務局の発言
 重複ということは決してあってはいけないと思っており、この課題はこのプログラムより、こちらの方がいいというようなことは御指摘をいただき、できる限り反映していきたい。
 先端計測分析技術・機器開発事業の選考は、これから約2カ月間に厳しく審査していくことになるが、具体的にはJSTの方で外部有識者の審査員の選定を進めているところである。

委員等
 500件以上という非常に多くの応募があり、その中身は非常に幅の広い範囲からのものがある。今現在、選考委員を30人程度お願いし、まず書面審査から選考していくことになっている。幅広い計測の応募があり、この辺りについて御意見があれば伺いたい。

事務局の発言
 先端計測機器開発というのは本当は産業界が将来をにらんで投資をしていただければ、国が研究費を投じてなくてもうまくいく分野かもしれない。しかし、現実は今の日本の産業界は多分マーケットが大きくないものにはなかなか手を出さない。そういう中で国がここに研究費を投ずるという意味は、いわば国だからリスクをとれるということでこの問題をやっているのだと思う。マクロに考えれば100の中から5個でも10個でも世界をリードできるのものが選ばれれば、このプロジェクト全体としては成功といえるのではないかと考えている。

委員等
 多くのプログラムを聞いたが、研究者は意外と、このような情報を知らない。そのようなことがあるので、広報、宣伝ということがこのような基盤という分野では必要だと思う。

主査
 実はそういう部分がこの委員会の役割の1つではないだろうか。恐らく、このようにまとまった形で情報交換する場というのは今までなかったと思う。

(3)先端計測分析技術・機器開発プロジェクトの進め方について

主査
 初めに検討項目について事務局から説明いただきたい。

事務局の発言
 先端計測分析技術・機器開発プロジェクト全体として、どう進めていくかということについて御意見をいただきたい。具体的に言うと、それぞれのプロジェクトあるいはプロジェクト間の連携などについて、どういう点に配慮をしてこれから進めていくべきであるのかどうか、そして機器開発あるいは技術開発といった、従前の研究とは少し違った観点からの取り組みということに関してどういうことが必要になるのかどうか、そして全体としてどうしていくということが一番効果的な検討体制あるいは推進体制であるのか、このようなことについてご意見をいただきたいと思う。
 昨年の段階では9つの領域ということについて特定化させていただいたが、今後どのような領域に対して、これはぜひ新しい機器を開発していく必要があるということについての御議論をいただきたいと思う。
 開発をした機器についてプロトタイプまで、このプログラムでは支援することになっているが、実用化していくということの観点からどんなことが本当に必要なのか、ここについても御議論いただきたいと思う。
 計測分析技術・機器を作り出した後で、やはり世界に対してその情報を発信していく、それによって標準化、共通化ということになるのかと思う。その標準化ということに向けての戦略ということをどうしていったらいいのかということについても御議論いただきたいと思っている。

委員等
 機器開発にとって必要な事項として提案したいのは、オリジナルな、自分たちで開発して培ってきたそういうノウハウを持っている、そのような基幹になる技術の上に立って先端機器開発を行うことが必要と考える。非常に良い例として、「ナノ計測・加工技術の実用化開発」事業の「ナノスケール電子状態分析装置の開発」という課題があげられる。東北大学の高分解能X線分光器と京都大学のナノティップ電子銃はともに、独自に開発された技術で、非常に評価が高い仕事である。このように、先端機器開発の必要条件の1つとして独自技術に基づくものとして、このような良い例をモデルにしてぜひ選んでいただけたら良いと思う。
 また、選考に当たっては、その分野の本当の専門家を呼んで、その専門委員の意見をしっかり聞いていくことが必要と思う。

委員等
 日本は分析機器については戦後この方、いわゆるフロントランナーになったことがなく、常に海外のものの真似をしてやってきたという背景があって、なかなか積極的に取り組むという姿勢が見られないように感じる。
 国内だけでは台数が出て商売になるというものはあり得ないと考えると、世界にどうやって発信するかというところを考えないと機器メーカーが本当に限られた数社に絞られてしまうという気がする。

主査
 計測機器開発において日本が戦後世界をリードしたことがない、改良型の装置化ばかりやってきたという御指摘は必ずしも当たっていない。ただし、こういう機会をとらえてメーカー自身が自分の体質を強化するという気持ちがないとこれは始まらないだろうと思う。こういう機会を使って社内の人材が伸び、かつ技術陣が活性化する、それをきちっと評価できるようにトップマネージメントは取り組むべきであると考える。
 御指摘のとおり日本の国内だけ考えていてはだめである。ここで作ったものを日本の国内だけをターゲットとする発想ではなく、世界の市場に通用するものを作る、そこが絶対的に重要なポイントであると思う。

委員等
 メーカーの中には積極的に新しい技術に取り組もうとしているものもいる。今は昔と違って学内で機器の設計、加工するというようなことは非常に難しくなってしまったため、私達は産学連携研究会というのを立ち上げ、大学の先生方、研究者のニーズに対して応え、その中から1つでも2つでも世界に通用するものを作っていこうとしている。まさにこの小委員会の動きに合った動きをしており、私としては、それをエンカレッジできるようなシステムができないかというのが1つの願いである。

委員等
 この先端計測機器のプロジェクトが、大型のものでは初めての例になると思うが、まず知財は民間企業が中心になって研究をした場合には、それは政府の知財とせず、民間企業がみずから特許を取れるような制度ができてきた。これは政府の資金で開発しても民間企業が特許を取るということで、これは画期的な変化になっている。さらに、民間企業が研究をコーディネートしたときには、一般管理費という形で管理費をつけるというようことができるようになったということと、さらには人を雇うといったようなこともできるようになった。

事務局の発言
 この先端計測では、世界のオンリーワン、ナンバーワンという機器の開発を狙っており、余り何台も売れるということ自体がある意味の自己矛盾を起こすので、台数が限られても非常に利益率が高くて、それがないと研究が進まないというようなものをつくるのだというように、少しビジネスモデルの考え方をぜひ業界の方にも変えていただければと思う。恐らく幾ら死の谷を越えるところを産学連携とか、支援をしたり、政府調達の制度を考えても、産業界のビジネスモデルというか、これに取り組む考え方を変えていただかないと結果的には失敗するのではないかというように危惧している。

委員等
 分野の選定として、既存の研究室やいろいろなところに入っている外国製品に取ってかわるような国内の製品、国産の製品を育てるというような技術というものもぜひ育てる方向にしていただきたい。まず日本中の研究機関の機器を全部国産に塗りかえてしまえば、かなりの台数になる。このプロジェクトの方向性を見ていると、ライフサイエンスやナノの分野の絢爛豪華な機器が多いけれども、そういった部分もうまく拾い上げてもらうといいと思う。

委員等
 これからJSTで審査が始まるが、例えば電子顕微鏡とかあるいはX線解析装置とか、NMRとかESRとか、あるいは電子分光の幾つかの機器、そういう非常に典型的で、しかもなおかつかなり大型の機器というのがあって、そういうところの先端技術部分というのは世界が競い合っており、そういう部分にこのプロジェクトはかなりの力を入れるべきか、あるいは入れるとしたらどうしたらいいのか。それからそのほかの思いがけない提案がどうもたくさんあり、その辺をどのように考えるかということに対してコメントをいただきたい。

委員等
 最先端の大型装置であっても、その中の基幹技術は必ずそこのメンバーが長年培ってきた技術の発展でないといけないと思っている。国産の技術を何とかしてレベルアップして、そして世界の先端に行くのだという、そういうエンジニアリング魂みたいなものをぜひ支援するようなものであってほしい。その理由は、恐らく大学ではそういう動きがあれば必ず学生が投入されて、学生が企業の人と一緒に夢を追うので人材育成に必ずつながると思う。

委員等
 先ほどから出ているお話は、恐らく大手でないと対応できない大型の最先端の機器にどうしても行く感がある。しかし小型のものでも先端のものはあり得ると思う。そういうところへ中小企業のメーカーも引っ張っていけるようなシステム、これが欲しいと思う。分析機器というのは圧倒的に中小メーカーが多く、それをうまく動かす方法を考えていただきたい。

主査
 やはりポイントは、ある要素技術が極めてすぐれている、それが自前のもので、かつ知的所有権が確保されている、もしそうであれば、ごく普通の装置であっても、もちろん性能が格段に上がることが前提であるけれども、そうであれば当然先端機器開発の対象になるだろうと思う。
 もう1つは、やはりコストである。コストが下がるというのは、これは単にいろいろな工夫で下がるというよりは、むしろ画期的な要素技術を組み込んだらコストが下がったというようなケースであれば、当然これも先端機器開発のプロジェクトとして採択可能ではないかと思う。
 いずれにしても、一言で言えば、世界の性能的にはトップレベルが望ましい。それから先ほど御指摘があったようにユーザーにとって非常に使い勝手がよくて、同じ性能をよりローコストで使いこなせるということも1つの目指すべき方向ではないかと思う。そのあたりのバランスが実は大変難しいのだろうと思う。

委員等
 大変難しいと思うが、落とすのではなくて、このチームとこのチームとを一緒にすれば非常に成功率が高くなるのじゃないかという見方で、一緒にやるというような仲立ちをするようなことは考えられないか。
 もう1つは、企業ではよくやるのが、1つ選んでやらせるとリスクが高く、失敗すればそれでなくなってしまう。したがってコンセプトデベロプメントまでは2チームぐらいで競争させる。それで片方ふるい落とすというか、よりいい方に合わせて一定期間の間に製品化するというようなことはよくやる。1つのジャンルで少し違ったアプローチも同時に考えられるのではないかと思う。プロジェクトは第1(応用開発)、第2(システム化開発)、第3(検証)段階と進められることになっているが、第1段階では間口を広げ、第2段階に進む所で絞ってゆくというような考え方もあると思う。

事務局の発言
 第1段階でいろいろなものがあり得るというような場合には、従前であればその段階で1個に絞ろうというのが国としてのプロジェクトの正攻法だった。しかし、この場合には第1段階に、いろいろなものがあり、そのどれを一番かというのはその段階で決めにくいということが多いというように思っている。従って、特に第1段階については複数の提案を選び、その中で競って、そこでいいものを次の段階にピックアップしていく。その段階では組みかえということも、実施の事業体の中での秘密保持とかいうようないろいろ難しさもあるが、少なくともできるようなスキームというのを実現していきたいと思っている。
 あるいは提案の段階で、この提案とこの提案と一緒にしたらもっといい提案になるというようなことも多分あり得るのではないだろうかと思っていて、総合科学技術会議からもなるべく柔軟な審査方法あるいは実施方法、こういうことを取り入れてほしいと言われているので、比較的難しい面もあろうかと思うが、JSTと一緒に検討していきたいと思っている。

主査
 6月ないしは7月に第2回、第3回とこの委員会を開きたいと考えており、本日の自由討議は以上にさせていただきたい。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)