先端計測分析技術・機器開発小委員会(第21回) 議事録

1.日時

平成20年1月30日(水曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室
(東京都千代田区霞が関3‐2‐2)

3.議題

  1. 先端計測分析技術・機器開発プロジェクト 平成20年度予算案について
  2. 先端計測分析技術・機器開発事業 今後の事業戦略について
  3. 先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度開発領域について
  4. 先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度公募・採択等の実施について
  5. 先端計測分析技術・機器開発事業 平成19年度中間評価の結果について
  6. その他

4.出席者

委員

 長我部委員、小館委員、近藤委員、志水委員、二瓶委員、田中委員、原委員、広瀬委員、松尾委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官、田口研究環境・産業連携課長、柿田新技術革新室長、井出研究環境・産業連携課長補佐、都筑新技術革新室科学技術・学術行政調査員

オブザーバー

 本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
 澤田独立行政法人科学技術振興機構開発総括
 相馬独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進部長

5.議事録

(1)先端計測分析技術・機器開発プロジェクト 平成20年度予算案について

(事務局から説明)

【委員等】
 欧米とは違ういい開発という観点で見たときに、日本の文化と関係してうまくできないだろうか。複雑なものを分析や計測する場合、要素一つ一つ、最後のエレメントまで分解し、それを理解して、極限まで全部やらなくてはいけないということが多分欧米のやり方だと思う。逆に東洋、日本のやり方は、全体を一応見回し、共通するものを見たりする、しかしそれは科学でないとなるのかもしれないが、複雑系を全体的に取り込める装置ができるのでは。

【主査】
 6月に議論した時に、複雑なものを細かく分解せず、全体としてとらえるアプローチを重視したほうがいいのではという意見が出た。
 ただ一方では、先端計測そのものが、アナリティカルなアプローチであるため、基本的には一つ一つ分けて明確にし、それを組み立てていくというアプローチである。
 考え方としては非常に複雑な高次の複合系の現象解明というのは、アナリティカルなアプローチのみならず、もう少し観点の違うアプローチも含んだ、新たな領域として考え得るのではないか。

【委員等】
 具体的な例として、体の中を調べるのに、体の大きな要素はたんぱく質、糖質、脂質、DNAなどあるが、欧米の得意とするところは、シンプルに自動化して測ることに対して、かなりのお金と人を投入する。そのためDNAやたんぱく質などはアメリカに越された。一方、糖鎖のある分野では、日本は世界の半分ぐらい占めているらしい。こつこつ積み上げる際、ある程度構造の似たものを確認し、全体の外観を推測しながら、わからない部分を後から当てはめればいいというふうに進めているため、糖鎖の研究において、日本が世界の最先端に行けたではないか。もしくは日本の文化に影響されて、ここまでできたのではないかと、あくまで仮説だが、そういう一例もある。

【主査】
 先端計測分析技術・機器開発事業とは、観点を変えたアプローチ、それをもっとはっきりさせ、戦略目標に打ち出す必要がある。
 計測や分析によって現象解明をするという目的は一緒だが、機器開発事業でシステムに組み上げていくというアプローチではなく、別の計測原理の探索や、もっと相手に密着した現象解明のための全く観点の違うアプローチをこの戦略目標の中で実行する。

【委員等】
 複雑なものに取り組むのは難しいと最初から去っていく人にもう少し違う観点で見てもらうための説明文がつくといい。それに対応するようにこちら側の意図を判断できる人も準備する必要はあると思う。木を見て森を見ずではなく、森を見ましょうということがキーワードだと思う。

【事務局】
 複雑系、複合系といっても、今までのアプローチはまずその中の要素を計測することから始まり、この提案もそんな感じであった部分が非常に色濃く出ていた。そのアプローチは既に先端計測機器開発事業のプログラムでやっているものもあるから、全く別なアプローチ、すなわち、複雑系をまさにそのままトータルでとらえて何かその様相を記述するような、新しい考え、見方、切り口からよく考えていただきたい。
 この複雑系のとらえ方の根本に遡り、要素還元的なアプローチとは別の見方が出てくれば、戦略目標とすることがあり得るため、今の議論で非常に心強く思ったところで、引き続き検討していただきたい。

(2)先端計測分析技術・機器開発事業 今後の事業戦略について

(事務局から説明)

【委員等】
 企業においては製品化した後、例えば機器開発プログラムぐらいに戻ってやり直すということがよくある。試行錯誤でたくさんの失敗をして、結果としてこの製品になった、または途中でだめになったものはたくさんある。

【委員等】
 このプログラムに限ったことではないが、長期間の事業をやる場合、ポテンシャルを持った若い研究者の育成は非常に大事。そういうものの評価をどこかでやる必要があるのでは。評価には、若い人のパブリケーション、または見える格好で。

【委員等】
 Ph.Dがどれだけ排出したかとかと外国の場合は必ずある。何か新しい評価が少し加わったほうがいい。人材育成効果として、確かに何人ポスドクがこの仕事をしたとか、何人学位を取ったとか。

【事務局】
 21世紀COEではそのような観点で事業を行っている。先端計測分析技術・機器開発事業においては、底流にはそのような人材育成もあると思うが、直接的な目的としては開発である。それぞれの事業の主旨に基づいた評価をした方がいい。

【委員等】
 理科離れが進んでおり、特に高校生などは、日本の科学技術をこういう先端計測分析の技術が担っていることがあまり見えてないと思う。
 人材育成の視点もあるが、社会にこれらの成果や、日本の企業はこういう点で非常にすぐれていて、こんな開発をやっているというPRが必要では。自分のモチベーションを高めたり、将来の希望や夢の実現につながる部分があると思う。大学の現場ではポスドクの問題で、将来が見えないという印象が非常に強いので、マスターからドクターに進む進学率が非常に悪くなってきている。

【事務局】
 それはおそらくこの事業に限った問題ではないと思うが、現状では、パンフレットや、ホームページなどの通常の範囲に留まっているが、例えば、いい成果が出たときに、未来館のどこかに展示してもらうとか考えられる。または、先端分析機器を1つのあるまとまりをつくっていくようなことを、この事業全体のアウトリーチということで考えていかなくてはいけない。

【委員等】
 21年Pittconに展示することは非常にいいことだと思うが、日本でも、ここの成果をどんどん技術発表してほしい。

【委員等】
 日本ももっと情報を外に。特にPittconはいい宣伝の場である。

【委員等】
 展示会というのは多分興味のある人しか行かないという面も多少ある。もうちょっとパブリックに見えるようにする、興味のない人にも強制的に一般的なものとしてある程度メディアにこういう夢のある話を露出することも必要。

【委員等】
 大学に最近入ってくる学生が、例えば物理を学んで、その先何になるのかよく見えていない。つまり、高等学校の教育の現場で、具体的なことや、日本が非常に誇っている科学技術について話を聞く機会がほとんどないようである。この事業では非常にすばらしい成果がいっぱい挙がっているため、教材用のビデオのようなものをつくり、高等学校の教育の現場に、物理や化学などの授業の副教本みたいな形で配付してもらうといい。今、とにかく動画に関してはすごく関心が高いであろうし、具体的に視角に訴えないと、教科書で見てもほとんどわからない。
 そうしたことが今の理科離れ、エンジニアリング離れにつながっているのではないか。

【委員等】
 ハンス・ベーテが「君たちは物理学を学びたいのですか、数学は要りません、僕の話だけをちゃんと聞いてくれたら、物理学はわかった気になります」と言って数式を使わずに語っている動画が、コーネル大学のホームページにある。学会や大学がもっと、コーネル大学クラスの先生方くらいに、きれいな実験をやって見せて夢を語るということが必要。

(3)先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度開発領域について

(事務局から説明)

【事務局】
 平成17年度に単一細胞内というテーマがあるが、本当に単一細胞でないといけないという研究はおそらくない。iPSなどの細胞1個でいろいろな機能をシームレスに見るというのがもしあるとしたら、本当におもしろいと思うが、そろそろ本当に単一細胞で見ないと意味がないような計測がここで出てくることを期待したい。

【委員等】
 案6は別の進め方がいいのでは。これは経産省も人間生活技術というロードマップを書いており、企業でも非常に重要なところだと思っているが、それのための計測の機器を開発するというよりも、既にある既存の計測技術をいろいろ駆使して感性を評価できるデータを蓄えていく時期かと思う。

【主査】
 かなり先進的な新しい原理によるというよりは、とにかく目的を達成できるようなシステムを提案してもらうということでもいいのでは。

【委員等】
 白といっても日本人の感覚と外国人の感覚が年齢によっても違ってくる。そういう文化にまでつながるような非常に奥の深いものであるが、それを計測の手段でどうやってアプローチできるのか。

【委員等】
 20年度の候補を並べたら、難しいテーマがずらりと並んで、応募が減るのではと心配するが。もうちょっと易しい、入りやすいタイトルにしたほうがいいのではという感じはする。

【委員等】
 楽観的ではあるが、結構出てくると思う。過去も非常に難しいタイトルはあるが、広義に解釈すればこれも当てはまるのではといろいろ出してこられる。

【主査】
 本事業当初の2年か3年はとにかくハードルを高くして課題は設定したほうがいいと。それで、かっちりしたプランを組んだ方が来ればいいという発想があった。入りやすくするといろんなものが出てくる可能性はある。

【委員等】
 直近の年度の領域とは少し違うものという観点でむしろ投票した。先ほどの拡大解釈でうまく吸い上げられるようなテーマを取り上げられればと思う。

【主査】
 今回選ばれなかったものは、来年の領域候補として考えればよい。したがって、事前投票での上位4件を採択するということにしたい。

(4)先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度公募・採択等の実施について

(事務局から説明)

【委員等】
 プロトタイププログラムには、プロトタイプが開発してから概ね3年以内とあるが、それ以上前のものは駄目なのか。

【主査】
 あまり古くて、10年も15年も昔のものが復活して出てきても困る。

【委員等】
 内容さえよければ、もしそれが5年前のもので本当にいいものであれば、評価委員の先生方の判断でいいのでは。ただ、これは先端機器ということで、目安として必要では。

【主査】
 他省庁の支援事業でできたものでもいいため、そのあたりからは結構出てくるという感じもする。年度途中でも、既存課題からの採択を可能にするというのは、予算的にはどう考えるのか。最初、全部とってしまうとその余地がなくなってしまう。

【事務局】
 そこは年度当初から、JST事務局、開発総括は予め当該年度の課題の目安をつけて、外部公募課題よりも優先的に採択できる予算枠をある程度見通しておくと。

【主査】
 相当練ったプランであるから、新しい事業としてかなり反響を呼ぶのではないかと期待している。JST、開発総括の方にはPRも含めよろしくお願いしたい。

(5)先端計測分析技術・機器開発事業 平成19年中間評価の結果について

【事務局】
 今回、17年度と18年度に採択された課題のうち、13課題が対象となり、チームリーダーのプレゼンテーションや質疑応答を行い、その結果4課題がS評価で、9課題がA評価となった。

(6)その他

【事務局】
 この先端計測機器事業というのはいろいろな意味で文部科学省、特に研究振興局の非常に象徴的な側面、いろいろな要素を圧縮したものである。やはり、1つは産学連携、それから、それぞれの大学の先生が日ごろの研究現場で自ら工夫をして編み出している計測手段をもっと応用しようということもあり、それがものづくりにもなっている。そして、単に研究だけじゃない、製品という形で姿を見せるという出口も見えている。産学連携は、大学に知財本部ができたりして、アウトプットはできてもアウトカムに結びつきにくいというところがある。いろいろな抽象的な方法論を論じていてもなかなかブレークスールは生まれないが、逆にこのような先端計測機器、ツールという具体的な物としてつくるということが、ある意味では新しい産学連携、新しいスモールサイエンスの一番のモデルケースだと思っている。これまでの研究成果を具体的に製品開発に結びつけていく、そういう段階に達しているこの時期こそ、基礎研究の成果を具体的なイノベーションにつながっていくという筋道が見つかると思っている。

【事務局】
 この事業は当初からかなり野心的な目的を持っていたが、今から振り返ってみるとかなり部分的な制度になっていた気もする。それが、この場で議論をしていただいて、ほんとうに必要なニーズにどんどん対応できるように制度をまさに変えてきていただいた、そういう柔軟性みたいなものが発揮されてきたと思っており、絶えず進化している制度だという印象を受ける。
 かなり出口までつながるシームレスな制度になってきたということで、非常に日々進化していい姿になってきたことに対して非常に感謝申し上げたい。具体的な成果が出るというのが最も大事であるが、それができるだけ出やすい環境を絶えず考えていただくという意味でも、これからこの委員会にぜひ大きな役割を果たしていただきたいと思う。

【主査】
 今日は新年冒頭にふさわしい新年度の新しいプランをご議論いただき、応募要領、実際の事業がスタートということで、感謝します。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)