先端計測分析技術・機器開発小委員会(第20回) 議事録

1.日時

平成19年12月17日(月曜日) 15時~17時

2.場所

JST 三番町ビル 特別会議室
(千代田区三番町5 三番町ビル7階)

3.議題

  1. 先端計測分析技術・機器開発事業 今後の事業戦略について
  2. 先端計測分析技術・機器開発事業 開発課題進捗状況について
  3. 先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度新規開発領域にかかる環境分野について
  4. その他

4.出席者

委員

 石田委員、上野委員、長我部委員、近藤委員、志水委員、杉浦委員、田中委員、二瓶委員、中村委員、橋本委員、原委員、広瀬委員、松尾委員、森川委員、山科委員

文部科学省

 藤木大臣官房審議官、田口研究環境・産業連携課長、柿田新技術革新室長、井出研究環境・産業連携課長補佐、都筑新技術革新室科学技術・学術行政調査員

オブザーバー

 本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
 相馬独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進部長

5.議事録

(1)先端計測分析技術・機器開発事業 今後の事業戦略について

(事務局から説明)

【委員等】
 プロトタイプ機の性能の実証とは、既に機器開発の段階で性能は実証されていると思うが、さらに何を実証するのか。

【委員等】
 新規プログラムの性能実証は、「世界トップレベルのユーザー等との共同研究を通じて」とあるとおり、より高度なユーザー、より高度な応用での実証を意味する。3年間かけてさらに幅広く検討した上で、その成果を出す。プロトタイプ機をつくり上げたチームは、独占的に使う権利をつかむことができ、どの分野でも本当の意味での国際競争が行われる。それに資する実験、共同研究をやるというのが本来の目的であり、単純な性能実証ではなく、相当重要なステップである。

【委員等】
 今回は、事業化という点が新しい切り口だと思うが、「実用に向けて」「実用可能な段階」という弱々しい表現になっている。

【委員等】
 最初は「実用化」もなくて、「高度化」という表現であったが、それでは分からないということで「実用化」のレベルまで記載することができた。

【委員等】
 そうであれば、「事業化可能な段階」という言葉はそんなにおかしくないのではないかと思う。

【委員等】
 経済産業省、中小企業庁の支援策はいろいろあるが、事業化というのは本当にハードルが高い。実際使える装置は作れるが、その後の支援はどうしても必要。
 ただし、文科省が「事業化」を強く打ち出すと研究開発というのが頓挫する感じがする。文科省としてはこの機器の開発、実用化がギリギリのところではないか。

【委員等】
 私が今まで経験して失敗して、こういうふうにしたい、日本の中でこういうふうに作り上げていきたいという言葉をきちんとまとめられており、内輪で褒めているような形になるが、これは本当にうれしい。

【委員等】
 企業においては、プロトタイプ機をα機と、実際にお客さんに使ってもらい、いろいろな評価を得るβ機と、位置づけをはっきりさせている。ユーザーによっては、使い方も環境も違い、さらに高度なことを言い、違ったユーザーの観点がいろいろ入ってくる。そのため、そこをクリアして実用化すれば、よりお客さんが広くなるということで、これは非常に重要なことと思う。

【委員等】
 参加企業の強力なコミットメントとあるが、ものを作っている人は性能が出ればそれでいいという場合が多く、事業化ということには興味を持たず、非常に問題である。

【主査】
 開発チームのリーダーは原則企業とするとあるが、リーダーの企業が本気になって、α機からβ機にして、β機をもとに商品化できるようなステップまで狙う。

【委員等】
 事業化ということを考えたときに、3つの質問に答えられなくてはいけない。1つがまず「売れますか」。2番目が「勝てますか」。3番目は「儲かりますか」。「儲かりますか」というところまで明確であれば、国の予算は要らない。これは企業がやる。「売れますか」ということは、お客様が評価をするので、お客様が対価を払って、その成果を買うかどうかだと思う。そのためには、お客様が使って、それを評価していただかないといけない。その辺りがこの事業の一番重要なところだと思う。
 その先がちょっと難しいところで、「勝てますか」と。他の企業も加わるのか、単独でいくのか。「勝てますか」ということは、独占的な技術、差別性があって勝てるということ。「売れますか」ということと、「勝てますか」ということの半分ぐらいまでの辺りを意識する活動が必要と思う。
 お客様に評価してもらっている間に、次の開発すべきテーマが見えてくるケースがある。1つのターゲットに向かってやるだけでなく、お客様と議論をする中で、そういうフィードバックから、次の開発テーマ、研究テーマになるものが見えてくるため、そういう視点で取り組むことが重要。

【委員等】
 企業内の人件費は対象経費として考えるのか。

【委員等】
 新規プログラムはマッチングファンドで、企業も半分持つ。企業の経費計上の中に企業側の人件費を含めることは当然いいと思う。

【委員等】
 事業化総括は、作ったプロトタイプの事業化アドバイスもやり、かなり前段階のシーズと企業とのマッチングも行うというのは、幅が広くて難しいと思う。

【事務局】
 事業化総括の役割は、このプロジェクト全体に対する役割であるため、今回の新規プログラムのためにだけではなくて、全体のためにいるということである。

【委員等】
 従来開発してきた方と、これから実用化・事業化を図っていく企業の責任をもう少しクリアにしたほうがいいかもしれない。企業の方針でやるとした場合に、開発者側の意見が必ずしも通らない可能性もある。それはつまり、性能を追求する側と、使い勝手を追求する側との調整、両者の意見を中立的に聞いて、それを判断するようなメカニズムがあったほうがいいと思う。

【主査】
 現在実施している課題では、既にチームがあるため、そのメンバーの意向が無視される形でステップアップするということは、考えにくい。企業がチームリーダーになるということは、つくり上げる技術的プロセスや事業化が全面に強く出てくるということを期待はしているが、もともとの開発チームの意向が何かカットされるということは考えていない。

【委員等】
 当然、国の金を使って、何億円か投入し、ここまで来たのだから、その性能についてはやはり改良すべき点は必死で改良してもらわないと。機器開発ということに携わる大学の人間のいい意味での意識改革というか、責任をきちんと持って対応するということもここで問われてもいいのではないかなと思う。

【主査】
 新規プログラムの名称として「プロトタイプ」という言葉を省くと、特に外部の方からすると中身がよく見えないのではないかというご指摘がある。

【委員等】
 外側から見たときにプロトタイプができており、それが実用化に行くというステージであることがわかるようにしたい。それから、トップレベルの方がこれは使えるという意味での実証という重みを外すわけにいかないと思う。

【委員等】
 実用化の中に事業化が含まれると考えて、目的も「実用」という言葉が採用されたため、名称としては「高度化」よりは「実用化」のほうが、今日の議論でさらに前に進むというイメージが出ると思う。したがって「プロトタイプ実証・実用化プログラム」がいいのではないか。
 また、開発された機器の商品を買ってもらうというのは、最先端であればニアリーイコール最難関であり、それが産み落とされたときにはまだ市場が小さい。市場で売れていくということばかりではなく、さらにもう一度回っていく。全体が実用化という大きな意味のプログラムになるのではないか。

【委員等】
 本事業が将来的にフィードバックしてくるというのは大変重要なことである。申請者の要件に、ユーザーを入れるとあるのは非常に重要な視点。これがないと昔と同じになり、買っていただく人のところへ届かないということになる。
 したがって、1号機は政府が調達するというのが一番わかりやすい。売り込みに行くと、実績があるのか聞かれてしまう、特に中小企業の場合は。そういう意味で、今回のプログラムは、その後の商売もスムーズにいく可能性が大きい。

(2)先端計測分析技術・機器開発事業 開発課題進捗状況について

(事務局から説明)

【主査】
 時間の都合上、この資料についてご興味のあるもの、詳しくお知りになりたい場合は後ほど、JSTへお聞きいただきたい。

(3)先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度新規開発領域にかかる環境分野について

 東京大学先端科学技術研究センター教授 近藤 豊 委員
 200ナノメートル程の微粒子物質が、数百キロメートル、あるいは数千キロメートルという大きなスケールのマクロな地球環境に影響を及ぼしていることが理解されつつある。そもそも大気の現象は、空間スケールと時間スケールが非常に密接に対応していることが、今までの研究からよくわかっている。
 例えば東京都の光化学スモッグ等の場合には、時間スケールとしては1日くらい、空間的には10キロメートルくらいの現象。また、中国から大気汚染物質が押し寄せてくる、黄砂が飛んでくるといった現象は大体1週間程度の時間スケールで起き、1,000キロメートル程の大陸規模のスケールである。地球温暖化や気候変動などは10年から100年の時間スケールで、空間としては1万キロ、つまり、地球全体ということになる。
 エアロゾルは、太陽の光を強く反射して、地球が冷却される。逆にブラックカーボンは、太陽の光を強く加熱するために、加熱効果として働く。地面に入るエネルギーが減るため、地球の温度の高度方向の勾配が変わって対流が起きにくくなって雨が降りにくくなり、水の供給に影響を与える粒子もある。
 また、そもそも水蒸気がこのエアロゾルに凝結して雲ができるが、そのときにエアロゾルの数が多ければ多いほど雲の粒の数が多くなる。そうすると、実は太陽の光を散乱する作用が増やされる。エアロゾルが増えれば増えるほど、雲が光を強く散乱する性能が増して、より冷えているのだろうという推定されるが、この現象の複雑さからして、この推定の不確定要素が大きいことがわかる。
 ブラックカーボンは、基本的には自動車、ディーゼル車、あるいは森林火災等の発生源で生じ、中国やインドが非常に多い。アジアにおけるエアロゾルの発生量やインパクトは、非常に不確定性が多いため、日本が位置するこのアジア域での研究は非常に大事だといえる。
 また、グローバルな気候モデルを使ってブラックカーボンの効果がアジアでの雨の降り方にどういう影響を与えるかというシミュレーションが、『Science』に掲載された。ブラックカーボンによって、中国の南部で雨が降りやすくなり、北部で降りにくくなる。よく中国では南の洪水、北の干ばつなどと言われるが、北京付近はこのモデルだと雨が降りにくくなると予測をしている。このように大陸規模での循環を変えていくということが最近の研究でだんだんはっきりしてきている。
 エアロゾルの混合状態、あるいは多発的特性を明らかにするということは、モデル予測を高める上でも非常に重要な課題であり、実際に国連環境計画のプロジェクトでは、エアロゾルの特性をはっきりさせようということが、今、喫緊の課題になっている。
 従来、オフラインの分析、特にフィルター上に集める方法だと、測定の時間分解能が悪い。微粒子を分析するまでに試料が変質してしまうことがあり、まずオンラインが重要である。オンラインでは、なるべく多くの種類のエアロゾルの組成を連続的に測ることが大事。
 例えば、具体的に、単一粒子レベル、あるいはその全体、エアロゾル全体での、化学特性、特に組成・混合状態を測ることが必要。またエアロゾル1個1個の光散乱・吸収特性を測るようなものが必要。
 また従来、使われている技術でも、質量分析計を直結して連続的に測るような装置、こういったものを使って詳細な化学組成が測れるかもしれない。こうした測定器から得られる情報の中で定量性が非常に重要である。例えばエアロゾルの組成では、1立方メートル当たりに何μg(マイクログラム)あるかという定量的なデータでないと気候の研究にはほとんど使えない。
 また気候変動の研究においては長期的なモニタリングも非常に重要。一例として、エアロゾルの全てサイズレンジで物事を判定したり、ブラックカーボンのようなものの濃度、化学組成を長期的に安定して測れるものが望まれている。装置の操作性は比較的容易であって、中型のものがいい。いろいろな重要な情報を得ようとするときには、非常に小さな装置は基本的には無理があり、やはり中型程度の装置が適当だと思う。
 こうした新たな計測技術を世界の標準的な測定器として広まれば、それ自身が日本の科学技術の国際的な貢献となる。また、そういうすばらしい装置は、当然、多くの研究者、あるいは研究機関などで使われるため、装置の市場が拡大してくる。これによって、日本発の先端計測技術がいろいろな意味での応用技術として組み込まれていくということが期待されると考えている。

【主査】
 ちょうどノーベル平和賞のタイミングであり、気候変動、特に温暖化に関する話題が今非常に大きな話題で、これに対する政府レベル、いわば国策として議論がされている。地球レベルの環境にこの本事業がどういうふうに貢献できるのかという視点について、この委員会では議論されていなかった。

【委員等】
 現在実施している課題の中で、改良を施すことによって、今のお話しのものが創出されてくると思う。ぜひ推進してもらいたい。

【委員等】
 ある方法だけに固執するというのは、得策ではなく、いろいろな方法を追求すべきではないかと思う。

【主査】
 気象影響において光学特性は非常に大事。物理化学的特性、表面物性なども必要。非常に多次元計測が必要だと理解した。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)