先端計測分析技術・機器開発小委員会(第18回) 議事録

1.日時

平成19年8月10日(金曜日) 14時~16時

2.場所

JST 社会技術研究開発センター 第一会議室(千代田区大手町1丁目1番2号 りそな・マルハビル18階)

3.議題

  1. JST先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度事業に関する有識者からの発表
  2. JST先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度新規開発領域について
  3. その他

4.出席者

委員

上野委員、長我部委員、近藤委員、志水委員、杉浦委員、田中委員、中村委員、二瓶委員、橋本委員、原委員、松尾委員、森川委員、山科委員

文部科学省

徳永研究振興局長、藤木大臣官房審議官、佐野研究環境・産業連携課長、井出研究環境・産業連携課課長補佐、都筑研究環境・産業連携課科学技術・学術行政調査員

オブザーバー

本河独立行政法人科学技術振興機構開発総括
澤田独立行政法人科学技術振興機構開発総括
相馬独立行政法人科学技術振興機構先端計測技術推進部長

(説明者)
村田北九州市立大学特任教授、横井東京大学教授、西村北海道大学教授

5.議事録

(1)JST先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度事業に関する有識者からの発表

「ものづくり分野における計測分析技術・機器に対するニーズ」
 東京大学 生産技術研究所 横井秀俊教授
 ご存じのように、第3期科学技術基本計画では、ものづくりが非常に大きく取り上げられて、日本型のものづくり技術をさらに進化させる、科学に立脚したものづくり可視化技術というのがキーワードとして取り上げられた。私は、射出成型の関係で産学連携を中心に、20年程に亘り、これまで延べ100社以上、研究員は会社から100人以上受け入れてプロジェクトをやってきた。
 我々の研究室では、ものづくり加工の現象を実験解析、計測、可視化を行っており、それを抽象化するプロセスで理論解析を行い、シミュレーション等の予測技術に用いている。
 ものづくりの製造現場において、高機能、高品位、高付加価値の製品を安定して実現するための技術並びに加工プロセスのより高精度なシミュレーション技術を確立するために、製造プロセスの未解明な現象を解析する。そして、そのための計測手法、未確立な製品評価・分析技術を可能とするような可視化・インプロセス計測・内部構造の計測機器開発を行うことを、ここでは提案させてもらう。
 射出成型のプロセスの中で樹脂がどのように溶けるか、どうやって流れて冷えて固まるのか、金型の中で何が起こっているか、これが実はよくわからないという、これがブラックボックスになっていた所以である。
 そこで、金型の中を可視化するために、最近はいろいろ高度なハイテクを組み合わせて、拡大倍率は現在金型の外から130倍、金型の中の時間解像度は1秒間に100万コマ撮れるようなところまできている。金型の中で樹脂が流れていく、その先端の様子をこのロボットに搭載されたカメラが自動的に追っかけながら、ターゲットといわれるフローフロントの様子を上、正面、側面から見ることができる自動追跡装置を開発した。
 これで観察したら、教科書で書かれている真ん中から樹脂がわき出るような、マウンテンフローといわれる現象と全く違う現象が実際には行われていることが示された。
 低密度ポリエチレンの流れをレーザーライトと追跡装置で撮影すると、材料が流れて、揺動現象を起こしながら、光沢面と曇り面が現れるフローマークができる様子が観察された。学術的にはメルトフラクチャーといわれている現象だが、実際に起こっていることを初めて示すことができた。
 ただし、自動車のバンパーの端にできるタイガーストライプフローマーク、世界中でここ20年にわたって議論が行われているが、まだ解決できない。実際に世界中でどこでも加工現場で行われているが、メカニズムがわからない。
 見るだけではなく、実は分布として測るという技術が非常に重要で、溶融樹脂というのは温度分布を持つ。板厚0.2ミリの成形というのはごく普通にあるが、板厚中心部が300度、金型壁面が、例えば60度、その0.1ミリの中にそれだけの、140度、240度の温度落差があるというのは当たり前に起こっていることで、この温度分布をどのように測るかというのは、シミュレーションはきれいにできるが、わからなかった。そこで、熱電対を点列でつくり、それによって初めて、金型の壁面近傍で剪断発熱が起こる温度分布をとらえることができた。また、ノズルに装填すると、均一といわれている射出成形での樹脂に温度履歴がはっきり見ることができ、このような技術を使っていろいろシミュレーションの検証技術として使われている。
 また、同様に、圧力センサーの分布も測ることができる。充填後の金型の中での圧力の変化を見ると、計測データをアニメーション化して表示させると、あたかもシミュレーションの結果のように表示される。
 最近は微細なパターンにどのように樹脂が流れるかということが重要視されている。例えば150ミクロンピッチの、ステップ状のパターンに樹脂が流れる様子を見ると、マイクロナノリオロジーというか、通常の成形とは全く違う現象が確認され、今、このような三次元の微細パターンの充填のシミュレーションを始めている方がたくさんいる。
 以上、ものづくり分野は非常に多いが、今後の一般的な期待される効果としては、このような未解明な成形現象が可視化解析され、それによってプロセスの不良現象を克服する。つまり、新しい技術開発につなげられるような結果も得られる。そしてまた、計測が困難である物量は困難であるがゆえにシミュレーションできなかったが、インプロセス計測することによってCAEのモデルとして確立が促進され、さらに高い精度のシミュレーションができる。そしてまた、計測が困難な内部構造の計測分析技術を確立することにより、製品とプロセスとをつなげることができ、非常に高精度なシミュレーション技術を確立することもできる。このように可視化・インプロセスの計測分野は非常に高いニーズがある。

【委員等】
 見える化というのは、総合科学技術会議でも強調しなければならないということで、多く取り上げられた、いわばキーワードであった。分析計測においても、見えないものをわかるようにするということ、専門家しかわからなかったものを専門家以外、異なる分野の人々に対しても理解できるようにすることが求められた。逆に、少し危惧も感じており、余りにもわかりやすく見える化したために誤解を生んでしまうことにならないか。見えたものしか見ないというようなことが今後出てくるかもしれない。見えないものを無視してしまわないように気をつけなければならないと考える。

【委員等】
 最近のいろいろなものづくりと称して行われているものがハイエンドのものであるため、インプロセスに初めて目を向けなければいけないものがある。世の中にあるもので測ることができるものと、できないものがある。ものづくりというのは非常に個別の技術であるために、一個つくったらどれでも使えるというものではなく、一個だけつくることも難しい。
 また、分布を非常に重要視しており、まず点より線、線より面、その面の動的な計測の究極が可視化、画像である。温度にしても圧力にしても線状の分布になるが、速度や離型、熱流束のような界面現象などをどのように取り出していくか。また工具と界面というのは、実はだれも一番手を出したくないが非常に重要で、そこの現象というのは見たくても見えない。アカデミックでない、エレガントでない部分であるが、そこを乗り越えないと物はできないというのが、加工技術の現象といわれているインプロセスで一番難しいところである。
 ものづくりの現場に近ければ近いほど、非常に安くて、簡易に、正確に測れるという技術開発が求められるが、ハイエンドでは、今まで測れないものをポイントで一個だけ測ればいいというものを開発することが求められる。高いコストをかけて測れるのは当たり前であるが、ものづくりの現場では、簡単にほぼ同等のものが測れる技術が重要である。
 また、超音波は日本より欧米、特にヨーロッパで盛んに行われているが、非破壊で測れるインプロセスの計測技術として、温度、速度、その他内部構造に非常に重要である。以上、ものづくりの現場で必要となる計測分析技術は、まだまだたくさんある。

【委員等】
 企業においては、開発者や基礎研究者などいろいろな人たちで議論する場合、ブラックボックスになっていると、本質が何なのかわからない。ところが、映像があると同じ土俵で議論ができ、いろいろな人を必要とする総合的なものづくりの中で非常に重要である。

「環境分野、ものづくり分野における計測分析技術・機器に対するニーズ」
 北九州市立大学 国際環境工学部 村田朋美特任教授
 地域でやっているモニタリングの一端を通して、どのような課題があるか述べさせていただく。
 地球環境全体としては、エアロゾルを初めとして、水の中も、土の中も、さまざまな汚染が広がっている。問題が起きたときには、それに集中して何か行われるが、ポテンシャルハザードに対してはなかなかお金も出にくく、仕事も評価されにくい、企業は儲からなければやらない、大学も評価されなければやらないという、はざまに陥りがちである。
 モニタリングという言葉は非常に幅があり、問題によっては一度測れば済むようなことや、定期的に測れば済むようなこと、常に見ていなければならないものなどがある。そういう意味では、酸性雨の問題から光化学スモッグまでいろいろあり、問題が起きてしまった光化学スモッグについては、かなり大量のお金を投資してモニタリングがされている。
 イギリス、ヨーロッパ全体でコンポスティングという生ごみ処理をしているが、そのコンポスティングサイドから大量の細菌とかびが発生しているという懸念が起きている。生ごみを燃やさないで、肉が入っているのと分けて埋めるため、あらゆる生物が集まるため、人々の懸念は、そこで発生した細菌等がどういうものかを常に見続けてほしいというものであった。しかし、出るものは不均一で変動し、空気の流れによって変わるため、全体像はつかまらない。
 一方、大気粒子の可視化については、私どもは見えるが、見ていない。見えない粒子の中に酸性ミストがあるが、実はミストの状態のときにサチュレーションがあるため、pH(ペーハー)はかなり低い。一方、雨になって、平均値がわかったときにはpH(ペーハー)は高くなるため、山の上が枯れるほどであるが、それは測ったことがなく、ほとんどの方が知らない。
 平均値で管理するという考え方が、分布の中の極値に対する視野を狭くしている。私どもが狙っているのは安くて、精度は余り高くないが、実際につかまえたものを見て、考えることができるもの。
 パーティクルカウンターは通常、0.11cm3/min(立方センチメートル毎分)のような低い吸引力である。しかし小型のパーティクルカウンターでは 3L/min(リットル毎分)程の吸引力があるため、まずマクロ感としてとらえることはできる。細かなものを使えば、アスベストなどをつかまえることはできる。例えば、2~3年前にプリンターから何が出ているか調べたところ、大量のトナー粒子が出ていることがわかったため、あらゆるデータや論文などをトップメーカーの部長に送って伝えたが、どうしようもないという言葉以上の対応はなかった。ただ、最近のプリンターではかなり改善されている。普通のフィルターを使うと、なかなか捕まらないが、北海道大学下村先生のハニカムフィルターを使うと、抵抗が低いので、普通の乾電池やバッテリーで回るファンで吸引することができる。
 従来のメンブレンに比べれば圧倒的に抵抗値が低い形で集められるので、小型にして、どこへでも持っていけるというものがやっと可能になった。実験室や倉庫などで測ってみると、通常アスベストの確認はなかなか難しいが、すぐに確認することができる。
 ごく最近、非常にすぐれた自動細菌検知システムがあるメーカーから発表されている。これはDNA検出を非常に短時間で行うということで画期的であるが、ここまで高級でなくても、もっと簡便なもので広く使うことも、社会としては大事ではないかと思う。
 随分前に、磁気テープを開発している会社から、海岸で磁気テープが腐食する調査を依頼されたが、海塩粒子がいろいろな高さで飛んでおり、それが海岸近くの家でテープを使っていないときに入り込むということがわかった。それによって耐塩性も考えなければいけないということが導かれた。実は海塩粒子が集まるとステンレスも錆びてしまう。特有な問題として、物が小さくなると反応性も高くなり、分布をどうやってとらえたらいいのかなかなかモデル化できていない。今、一番困っているのは、遠隔地送信の中で、何をとらえて、何を送るのかということである。
 ポテンシャルハザードとして、微粒子、あるいは微量物質、微量ガス全体にかかわるものについて、今、産総研でも進められているようなリスクアセスメントをはじめ、科学技術の陰の部分に対する対策をきちんと打つ、それがシステムになっているということが大事だと思う。開発機器そのものも、どの物質の、何のための測定なのかという位置づけがあって、結局それがある種の予測モデルになり、全体としてアセスメントになる、施策になるというようなものがなければいけない。

【委員等】
 普通サンプラーとか分析のデメリットは、捕捉後の分析に人手を要することであるため、世界レベルの研究者はリアルタイムで、なるべく連続して、なるべく人手をかけないで分析しようという方向にある。今の場合、サンプルするところまでは簡易であるが、その後が簡易ではないという気がするが。

【委員等】
 対象がわかっていれば簡易にモニタリングするということになるが、対象が不明な場合のサンプラーが課題であり、形状把握等いろいろなことをトライしているが、対象とする物質、現象、微粒子によって対応の仕方が違うため、完成に至っていない。

【委員等】
 電子顕微鏡は、形状観察において非常に強い威力を発揮する。さらに環境計測、対策、アセスメントに関連して、大気中の濃度、1立法センチメートル当たり何個あるか、何グラムあるかという場合には、画像から数字に直すことによる定量化は、非常に大きなファクターになる。

【委員等】
 例えばかびが発生するときに、通常、湿度などを単純に見て、結露するかどうかという議論をしてきたが、湿度のレーゲントみたいなものがキーファクターになっていると聞いたことがある。あるいは表面に何か微粒子などが付着していたときには、結露点よりもはるかに低いところでも既に結露してかびが生えてくる。今までモニターというのは温度と湿度を注目していたが、空間中のそのような分布をきちんと出して、それが時間とともにどのようにそのレーゲントが変わるのか、そういう新しい観点でのモニタリングが必要。
 というのは、私は非常に印象に残っていたものですから、例えば明石大橋の100年もつケーブルのお話が印象に残っているんですけれども、あれは一点の計測ではなくて、計測でもっていって初めてその解析が伴うのか。

【委員等】
 モニタリングは非常に変動していて、幅があるため、分布としてとらえるのは常に必要で、定常的に何か測れば皆見えてくるというようなものではない。あるパターン分析をし、極値をとらえ、どこで何が起きるかという、もう一方の研究とあわせて初めてできるので、モニタリングというのはその一部にすぎないと考える。

【主査】
 最後の点が大変大事だと思うが、多点同時モニタリングでそれをどう解析して、どういう議論ができるか、本当は逆に何を目的にして多点同時モニタリングをするかということが重要である。

「疾患早期診断のための糖鎖自動分析装置開発状況と今後のプロトタイプの開発・改良について」
 北海道大学大学院先端生命科学研究院 西村紳一郎教授
 私どもの研究が、平成16年度の先端計測分析技術・機器開発事業に採択され、今年が4年目である。そこで、これまでの主な研究成果の報告と、期待できるアウトカムについて報告させて頂く。
 まず、主に3つの大きな成果を発信できたと思っている。1つは、グライコブロッティンク法という新しいコンセプトに従った糖鎖の構造解析と、これを利用した医療、あるいは創薬で利用できるシステム、すなわち糖鎖をエンリッチするための自動化を行った。そこで必要となってくるいろいろなツール、技術を開発し、製品として販売できるものは会社で製造してもらうというコンセプトで発信してきた。
 また、そのプロトコル、原理を学会等で幾つかの論文として公表してきた。また、製品の一つであるブロットグライコABCをある会社に製造してもらい、今年の7月から販売を開始している。
 また、今回開発した自動糖鎖分析装置を使った疾患のグライコミクスデータベース構築に向けて、本年度より臨床の先生たちと共同研究を開始している。
 また、グライコブロッティング法を開発して、従来無理といわれていた糖鎖だけではなくて、糖ペプチドあるいは糖脂質をエンリッチして、スペシフィックな構造解析を可能とした。これに基づいてGFRGという遺伝子の逆向き解析を提唱して、これによって新しいバイオマーカーが見つかるということを提案したところ、お医者さんたちが非常に興味を持ってくれて、本年度からこのGFRG研究会オープンで広く開催するに至った。そこには製薬あるいは化学関連の企業、情報系の企業や、多くは大学病院のお医者さんたち、それから一般の大学、国研等の研究者が領域を越えてインターディシブリナリーな研究会がスタートいたした。この秋、東京で第1回のシンポジウムを行う予定である。
 今後の展開として、やはりこの方法論が確立されて、既に市販される状況になってきたので、我が国で大規模解析を様々な疾患について行い、グライコミクスのデータベースを拡大して標準化するということを早く進める必要がある。実用的なバイオマーカーを開発するには、製薬企業と産学連携研究を加速する必要がある。またGFRG原理が、本当に基礎的な生物学や基礎的な医学の研究分野で、使ってもらえるか早く実証する必要がある。
 完全遮蔽された中で、フルオートマチックの装置を設計し、企業に製作を依頼した。現在3号機の稼働の準備を進めている。また、ブロットグライコという解析で使うビーズだが、これが非常に重要なキーマテリアルである。このビーズは、糖鎖だけを選択的に捕捉することができる特殊なコーティングが施されたポリマーである。そのポリマーのビーズを使うと、糖鎖等を選択的に捕捉することができて、任意のラベル化剤、すなわちプローグで化学変換することができる。多検体を迅速に分析することができるため、質量分析計や電気泳動等に使うことができ、もうすぐリリースされる。
 現在、幾つかの医局から患者さんの血清、細胞試料等をいただき、今年度は713検体を分析する予定で、既に458件を終了している。
 新規バイオマーカーが系統的に、効果的に発見できることがわかってきたので、現在の年間8疾患、700検体レベルという解析能力を、来年度以降は20疾患、年間1万検体レベルの解析が可能な研究体制、組織を構築する必要があると考える。まだそれについては全く財源や計画はないが、健常人の信頼できる標準データを獲得する必要がある。
 ただし、今、健康な人を見つけるのが難しく、また年齢や性別、人種なども注意しなくてはいけない。実用的なバイオマーカーを開発するために、2~3年後にワールドワイドできちんと普及させて、デファクトスタンダードを目指す必要がある。そのために研究会を通して、ネットワークや知的財産などの確保、活用やセキュリティーなどについて検討する。
 本成果が、学問に本当に有効な方法かどうか検証する必要がある。そこで、アメリカのグループと水鳥のグライコミクスを完了させようとしているが、実はこれは生物の進化論におけるグライコーム、特に環境因子が非常によくわかるということが最近になってわかってきており、これを進めることで、哺乳類が一体どういう環境で、どういう糖鎖変動が起きるかということを見ることができる。
 水鳥は6,500万年から1億年前にある糖鎖を獲得したといわれているが、その後、その糖鎖がなくなっているグループがある。実は、人間以外はまだ持っているが、人間は27万年前か28万年前に失ったといわれている。ある系統樹の中で、非常によく似ている遺伝子で、糖鎖のあるなしがきれいに分かれるかと思ったら、実はそうではない。
 また、インフルエンザウィルスの自然宿主というのは、野性の水鳥です。ではどの水鳥にインフルエンザが感染する糖鎖があるのかというのを調べようと計画している。
 糖鎖の構造は、共生する微生物によって、維持されたり、変化したりしていることがわかってきた。当然ウィルスが感染すると、その主は途絶えてしまい、そのウィルスが感染できない糖鎖を持っているものだけが生き残る。当然のことであるが、なぜそれがわからなかったかというと、大規模糖鎖構造解析ができなかったからである。今や私たちは大規模構造解析を手にした唯一のグループであるので、それを使って解析しようと考えた。
 糖鎖に注目して、逆遺伝子解析をしていくと、遺伝子側からもっていったことでわからない生物的な現象が説明できるということがわかってきた。

【主査】
 開発された計測システムは、既にプロトタイプが出来上がり、大規模測定まで展開できる状態にあるのか。

【委員等】
 プロトタイプは2種類あり、そのうちの1種類は、販売しても問題ないレベルまで達していると思う。ただし、コストの問題、再現性の問題をもう少しクリアできれば、実際に医療の現場で使っていただけるものに達するため、今後、来年度までそのあたりを仕上げていきたい。

【主査】
 その後、プロトタイプができた段階で、当初から議論のあった多くのユーザーに使ってもらい、その知見を得て、さらにブラッシュアップするということを検討しているが、西村先生の場合はどのように考えられるか。

【委員等】
 GFRG研究会では、企業や医師が多いが、基礎的な生物学を研究している方もみえるので、その中でモニタリングを行うことは可能。ただし、得られる結果によっては製薬会社としては、オープンにはしたくない情報もある。鳥や豚、犬などについては基礎的な研究のため、全くフルオープンでできるが、対象がヒトのサンプル、特に疾患の個人データになると、スタートする時点で知財の問題が発生する。

【主査】
 計測分析機器の開発や、オンリーワンのデータを得るにあたり、人材育成という観点から何かお気づきの点があれば。

【委員等】
 大学院生やポスドクなどにとっては、オンリーワンの技術に携わることにより、出てくる結果がそのまま論文になる。将来的に間違いなく特殊な方法論のスキルアップとして、トレーニングのチャンスとなるスキームになるといい。

【主査】
 機器開発のブラッシュアップというのは、使い勝手をよくすることを含んでいる。素人でも使えるようシステム化して、新しいアカデミックな成果につなげていくか。やっとこの事業が4年目、5年目になって、新たな展開ができる時点まできたということは、大変ありがたい。

(2)JST先端計測分析技術・機器開発事業 平成20年度新規開発領域について

【委員等】
 中国、インドをはじめとして、アジアの大気汚染問題は年々深刻化しており、アジア諸国での正確な環境計測のニーズは高まっている。こうした人為起源の物質の気候影響を解明する上で、非常に大事な要素は、エアロゾルの微粒子や、物理間特性、大きさ、大きさごとの化学組成、光を散乱・吸収する特性である。またエアロゾルは非常に複雑で、いろいろな成分が混ざっているが、どのように混ざっているかを知る必要があるが、これまで測定が困難であり、かつ重要な問題である。
 日本における計測技術の開発は、環境計測や環境研究で日本がアジアにおける主導的な位置を占めるためにも非常に重要であると思う。レーザーを使って、光、エアロゾルによる散乱、吸収特性を測定したり、質量分析を組み合わせたりする技術も有望である。そのためには必要な技術要素としては、単一粒子を検出するものや、定量的な分析技術などが考えられる。

【委員等】
 現在、一個の細胞の挙動を検出するということを、バイオ系で行われているが、培養系において細胞の挙動はあくまでも固体の中で、いろいろな細胞との相互作用でどう活動するか。病気の発症や異常は、そのような環境の中で起きるため、いずれはそういうものを把握する技術が生まれてくる必要がある。従来蓄積されてきた細胞生物学と、人体病理学などが結びついていく局面ができるであろう。

【委員等】
 現在いろいろな微細測定技術で、一つ一つの分子のレベルまで挙動がわかるようになってきている。一個の細胞のどこのところに基本的な障害を与えて、何を治療するかという技術と一緒になると、かなり幅広い適用があるのではないか。

【委員等】
 一般的に製品、商品は、機能はもちろんあるが、傷や見た目の不均一性など、見た目が悪いと取り引きにおいて不利になる。そこで、現場では未だ人間が目視で判断するものが多い。人間が物を見て、どのように情報処理をして、それを人間がどう判断しているかということを、視覚の環境を計測して、視覚を総合的に制御するものができないか。

【主査】
 知覚や視覚と、脳の機能に関連するということで、大変新しいタイプの課題である。

【委員等】
 色を定量的にきちんと計測できたらすばらしいと思う。有名な話しでJALの鶴のマークの赤が、パリの人たちには下品な色に映ったそうである。ところが、逆に白に対しては、日本人の持つ色感覚というのは非常に深く、外国人が見る白と異なる。見るということの定量化は、大変大きな問題で、その手がかりを何かできれば。

【主査】
 一方で、日本の朱の系統の赤というのがフランス人にとっては衝撃的で、ああいう色を彼らは知らなかったと。それは使い方の問題かもしれないが、ものすごく新鮮に受けとめられて、リップスティックの色など、その後一つの流れをつくったと聞いたことがある。
 これまでの意見を土台として、次回までにまとめさせていただく。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)