○ |
参考資料2のP9にある疑問について教えていただきたい。今の段階では学生とは原則として雇用関係は結ばないので難しいが、雇用関係がなくとも、卒論以上は守秘義務を負うようにしたいと思っている。その妥当性について、どのような関係性で根拠づけられるか。 |
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○ |
学生といっても学部生から大学院生までいろいろとある。実は私自身も今学生をしており、大学院の研究所で研究しているが、そこには修士の学生もいれば、ドクターの学生もいれば、ポスドクもいれば、リサーチフェローで入ってきた方など、いろいろな方がいる。いずれにしても、そこにいるすべての人が間違いなく最先端の、しかも特許になる可能性があるトレードシークレット、あるいは研究成果にタッチしていることは間違いない。本来的には全員が守秘義務を負うことがベストだと思われる。本当はそこの研究室を主催している指導教授がそれぞれの構成員と契約を交わして秘密を守らせたほうがよい。成果の配分については、場合によっては生徒と共有になることもあるだろうし、修士ぐらいであれば機関有にしたほうがいいと思われるので、そうした契約をすることが望ましい。発明が組織有になる段階での設定は非常に難しいので、研究に入る段階から既にもうそうした守秘義務を負ったほうがいいと思う。 |
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○ |
先生にはそうしたほうがいいですよということは言っているが、組織全体として学生にそのようなことをお願いするのは、今の段階ではほとんどの特許は教官有になっているので難しい。むしろ全体の特許が組織有になった段階で、学生に対してそうした責任があるので検討をしようという形にせざるを得ない。 |
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○ |
独法化後は組織有にすることを前提にすれば、卒業研究以上についてはと書いてあるが、そう限らなくとも研究室ベースで、とにかくどんどん守秘義務は提携するようにしていいと思われる。ただ、学部レベルについては話は別であり、そこは切り離したほうがいいし、大学全体の規則の中で守秘義務を定めるということは難しい気がする。学部の卒論で、間違いなく発明になるような案件を扱っているケースがあれば、その教官が個別に契約を交わすよう配慮すべきである。 |
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◎ |
今の話にあるように、卒論は自分自身の研究はもちろんそうであるが、自分自身が参加している研究室でドクターが話していた内容を外部にもらすということもあり得る。卒論も毎日研究室でやるので、発表会などでドクターがきちんとした発表をして、これは間もなく特許になりそうだという話をしているうちに、それを知った学生が卒論でその内容を外へ出してしまうということもあり得る。卒論で得た知識だけではなく、伝聞による知識も含めて何とかしなければならないのは事実である。 |
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○ |
そうした情報に接する学生については、基本的には守秘義務を交わすべきだと思う。守秘義務というのは最初の段階では、別にだれかが不利益をこうむるわけでもないので、メリットしかないと思われる。守秘義務を交わしたからといって、学生が何かデメリットをこうむることはとりあえずないので、なるべくそうした契約を徹底するほうがいいとは思う。 |
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○ |
学生全体にそうした網をかぶせてしまうことは、結局、学生間ないし研究室間の交流を非常に阻害すると思う。それは長い目で見ると非常に大学にとってデメリットであり、そうした環境を大学の中では決して作っていけないと私は思っている。もしも守秘義務を負わせるとすれば、それはあくまでベンチャーなど特定の所において学生との雇用契約が結ばれた中でなされるべきものだと思う。それを学生全体に網をかけて、先生が自分の研究室で話したことは一切外に出してはいけないと一たび言ったときが大学の命を捨てることと同等である。決してそうしたことはすべきではないというわけではないが、やるとすれば条件付きで行うべきである。ただ、守秘義務一つとっても、それを破ったときにどのようなペナルティーがあるのかということに関しては、非常に不明確である。あくまで紳士協定的な意味での守秘義務である。例えば民間企業であれば、企業を辞めなければならないといったペナルティーが当然ある。学生をベンチャーで雇ったときに、うっかりしゃべってしまった場合、その学生に対して守秘義務を破ったから学生の身分を剥奪するといったことができるのか。そんなことはできるわけがないので、守秘義務を実行させる根拠になる法律なり背景は何かということをやはり議論しておく必要がある。守秘義務があると言うのは簡単であり、それを学生は多分プレッシャーとしてできるだけ守ろうとすると思われるが、エデュケーション(教育)という大学の本来の使命と守秘義務についてはかなり慎重に考えなければ、非常に多くの問題が出てくるのではないか。 |
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○ |
大学全体は、やはりオープンであるべきであり、それで卒論の学生をどうするかということについては我々の中でも非常に迷っており、まだ結論を出してない段階である。ただし、ペナルティーがあるかどうかという問題ではなく、そのことは研究室内では公知の事実になっていて、その先生が特許を出す前からもうオープンにしてしまったという事例である。それはもし守秘義務を結んであれば、知り得た側が幾らそれを公知であると主張しても、それは公知の事実ではないということは言えるわけである。その辺りを法律の専門家の方にいろいろ相談して決めなければならないと思っている段階である。どこまでを中立で公明で、どこからを今度はプレイヤーに対しての利益を守って守秘義務を課すべきかという線引きが非常に難しい。 |
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○ |
趣旨は非常によくわかるが、私は守秘義務に違和感がないと言ったのは、具体的にこういうことである。つまり、例えば私が今研究生をしており、その中に2種類の情報がある。一つはどんどん流通して、それが新たな知を生み出していくような、共有材としての知がある。これはインターネットあるいは討論を介してどんどん流通していくが、全然止める必要はなく、これに守秘義務を課す必要もないと思う。ただ、守秘義務契約はないとしても、例えば私が今研究している遺伝子の配列などについては、契約がなくても絶対しゃべることはない。しゃべるとしても論文発表の後である。このように、もう既に守秘義務をしていることになる。論文を書くまでは基本的にそれはトレードシークレットであり、そうしたことについて軽々しくしゃべってはいけないと思う。これから大学が産学連携で企業と付き合っていく中では、企業サイドにとっては、しゃべるはずはないという慣行の部分を書面化しておくことが非常に安心感につながる。つまり、大学にトレードシークレットをしゃべっても、大学はきちんとそれを文書なり契約で守ろうとしているというスタンスにより、安心してトレードシークレットをお互いに交換して新たな研究ができることになると思う。そうしたトレードシークレットの話と、大学・研究機関として一般に流通している知識、情報の話は区別していいのではないか。 |
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○ |
まさにそれが、どこに線引きをするかということである。どれが共通の知識であり、どれが固有のものかというアサイン(割当)ができないところが難しいと思う。それが簡単にできれば、問題点はほとんどない。 |
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○ |
秘密保持契約というのは、大体A4一枚ペラか二枚ぐらいである。そこにすべての情報を書くことはまずあり得ない。そこはもともと明確な線が引けないものだという認識である。 |
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○ |
産学連携における学生にかかわる利益相反というのは、教官、教員が産学連携にかかわることで、本来の学生の権利が侵されるのではないかということから、学生の権利を最優先にして守らなければならないということではないか。その守らなければならない学生の権利というのは、学生の教育に対する責任、それから、知識のオープンかつタイムリーな伝達と普及に対する責任である。守秘義務を課するということは、大学本来の守るべきことであるインテグリティーが既にそこで損なわれることになる。守秘義務云々というのは少しディテールに入りすぎて観点がずれた議論のような気がする。あまり守秘義務のところに入り込むと、ややこしいことになると思われる。 |
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○ |
先日、私は利益相反のポリシーと産学連携のポリシーと混同しているようなイメージが自分の中にあったが、よくよく後で考えてみたら、どうもアメリカほどステークホルダーというものが日本の場合ははっきりしていないのではないかということに行き着いた。つまり、どのようなステークホルダーがいて、こことここの間にこのような利益相反が起こる可能性があるというところがあまりきれいに線引きできないので、自分自身で混同しているのではないかということに先日思い至った。アシスタント契約の契約関係において生じ得る利益相反の問題というのは、おそらく一般企業の取締役会の委任契約の中で生じているような利益相反の問題と同じようなものだろうと思われる。アシスタント契約をしていない学生が知り得る守秘義務の話が先ほどあったが、その中で先生が教えてあげたことによって、先生個人有若しくは組織有になるような部分をもしかしたら侵害しかねないところがあるということであった。先ほどそれについて守秘義務を非常に広くとらえてかぶせるという話があったが、学生自身がもともと持っているアイデアもその中に含まれてしまうのではないかという懸念がある。それも利益相反と言ってしまってよいのかわからないので、ステークホルダーとの関係を明確にしてから考えたほうがいいのではないか。 |
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○ |
どのような形にしろ、学生、つまり学ぶべき人に対して発表の制限を課するということは、大学として自らの研究・教育のある部分を自分で縛ってしまうことであり、本来の機能ではないと思われる。それを始めるとおそらくサード・ミッションのほうもおかしくなってしまうので、ここは何らかの形で切り分ける必要があり、我々としては、ある種の物理的な切り分けがもし可能であれば、本来の研究教育をやっている部分においては、ドクターコースの学生であろうと学部学生であろうと自分の研究を自由に発表する権利を持っているということにすることができる。ただし、いわゆる産学連携をやる部署をどのようにうまく切り分けるかが非常に難しい問題である。産学連携に専ら従事する先生方には教育義務を免除しようということを我々の共同研究センターで試みている。いわゆるドクターを取る前の学生がいて、研究発表をしてドクターを取るときに、特許の問題があるから少し発表を延ばしてくださいなどと言うことはしてはいけないという観点から、教育義務を免除された立場で開発研究をやることに専念してもらうようにしている。そこでアシスタントとして人が必要であれば、ポスドクの人たちを専門的に使って、ディシプリン(訓練)を修めた人たちが次のニーズ指向の新しいタイプの研究にかかわっていくという形でうまく切り分けたいと考えている。それから特許の問題についても、本来の研究・教育の部分については余計な制限をかけると逆にバイアスがかかり過ぎてしまい、むしろ産学連携のほうに逆に悪影響を及ぼすのではないかと考えている。恐らくこれが大学のこれからのチャレンジになると思われるが、いわゆる研究・教育をする部分と、そこをから出てきた本格的な開発研究をやる部分を明確に切り分けなければならない。開発研究をやる部分についてはかなり厳しい守秘義務を課しても、社会のルールとして必要であるということで問題ないのではないか。これを中途半端にすると、両方ともあいまいになってしまうのではないかという気がする。 |
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○ |
学生に守秘義務を課すかどうかという論点は、基本的には大学の中での成果物の管理のポリシーをどうするかという問題にかかわる部分である。これについては、文部科学省のもう一つのほうの知的財産ワーキング・グループで本来は議論すべきところだと思う。むしろ利益相反の考え方から言うと、もう既に指摘があったが、ポイントは、教官が自分の公の教官というポジションで学生を利用することによって、何らかの私的な利益を得ている場合があるのではないかということである。言葉をストレートに言うと、学生を手足のようにこき使って私腹を肥やすとか私利を得るということがあるのではないかということが問題であり、それはあってはならないことだと思う。産学連携を進めていく中でそうした行為があってはならない。もし、一見そう見えるが実際はそうではないというケースがあれば、その情報を開示し、その開示情報を利益相反委員会のほうで検討して、先生のやっていることは問題ないということをきちんと判断することが大事かと思う。もし万が一、先生が学生を使ってそれを労働力としてスピンアウト・カンパニーで実は利益を得ているというようなケース、つまり、自分がスピンアウト・カンパニーの代表取締役であり株主であるところで学生を無償で労働させてそこのスピンアウト・カンパニーが利益を得ているというようなケースがもし万が一あれば、それについては利益相反委員会として先生に対し、学生へ適正な給料を支払うよう、あるいは学生をそこで働かさないように指導するといった、きちんとした対応をすべきである。そうした議論をすることが利益相反の本来の筋だと思う。先ほど委員から指摘があった、これの分離については、多分、学部によって可能なところがあるかもしれないが、遺伝生物学ではきっと不可能だと思われる。この分野は勉強することイコール研究であり、やっている研究は最先端で必ず特許に結びつくようなことをやっているため、研究教育との分離は不可能だと思われる。 |
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○ |
守秘義務に関する議論がアカデミアの発表の自由を束縛してはいけないという部分は、原則としてあると思う。今、私はここのテーブルの議論が守秘義務と特許という話になっていることに対して違和感を感じている。公知になる前に特許出願をするかというのは、これは、例えば今後の知財本部の在り方やTLOの対応で解決できる問題もあり、利益相反から外れると思われる。ただ、先発明主義のアメリカと比べたときに、先願主義の日本においてはそこをどう運用するかという問題があり、そこは利益相反とは別の、大学の体制をどう整えるかという議論であるが、利益相反という観点で考えたとき、守秘義務の問題は他にもあると思う。アメリカで起こった利益相反のケースで、学生がアルバイトとして企業で働いて守秘義務契約を企業に課せられており、その守秘義務が課せられているケースがたまたま、大学のケースメソッドとして授業で出たという事例があった。その学生はよくアルバイトをしているので詳しく、本当は論文のテーマで発表しなければいけなかったが、守秘義務で発表できないという問題が起きた。この問題は学内の研究室における守秘義務の問題ではないが、研究の自由を束縛するものの例である。これはアカマイという会社でアルバイトした話であり、アカマイ事件と呼ばれるが、こうした事例を想定しておくとよいのではないか。あるいは、今後も共同研究を行って、共同研究契約の中で守秘義務が課せられたときに、それに関連した論文のテーマが出てきた場合、論文を書けるのか書けないのかといった話はやはりあるわけであり、学生における利益相反と守秘義務という観点で言えば、特許のこともわかるが、それよりもむしろ学生の権利のほうが大きな利益相反の問題ではないかということが私の意見である。要するに守秘義務といっても、特許と絡めると利益相反とは別の問題になり、先ほどの論文というテーマと絡めても別な問題になるので整理したほうがよいのではないか。 |
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○ |
その意味では参考資料2の5ページ目のこの図が、むしろこのワーキングのトピックのたたき台として検討していただいたほうがいいのではないかと思う。研究教育と開発研究を「分ける」という問題であるが、私の専攻分野であるソフトウェアの分野では、分けた場合にメリットはあまりなく、デメリットが大きくなる。参考資料2の3ページ目に書いたように、今の非常に変化の激しい分野は、産のほうが新しいニーズを持っており、それに学生が接する勉学上のメリットというのは非常に大きいと思われる。我々自身も、複数の会社のアドバイザリーボードに入ったときに、ある会社のアドバイザリーボードで知った話は当然他の会社には出さないが、中立の研究者として知っており、オープンになっているものについては公平に提供するという役割を果たしている。先ほどの例のように、どこかで守秘義務を結んだものが授業に出たとしても、そんな授業に出るようなものについて守秘義務を結ばせるほうがおかしいのではないかと思うが、その場合、学生としてはそうした産学連携をやりながら、守秘義務である部分は押さえて、かつ、一般的に抽出してそれほど先進性はないものについて授業の答案で答えられるぐらいの能力はあってもいいのではないか。 |
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○ |
先ほど誰がステークホルダーかを考えることが重要という話があったが、それは大学のミッションとして学生にきちんと教育をするということに関係すると思われる。私自身は、学生にかかわる利益相反の話題というのはかなり違った局面で二つの問題があると思っている。今までの話の多くは一つの局面に関する話だったと思う。それは何かというと、教員のかかわるところの利益相反と同じように、リサーチ・アシスタントとかでかかわっている、職員ではないけれどもそこにかかわっている者としての利益相反であり、もう一つは学生にかかわるところで、学生がステークホルダーで教育を受ける存在としての観点での利益相反である。例えば学生が、教員が産学連携等で何らかの関与している会社にあって、そこの会社に雇用されているとする。そのとき、本当は大学の中で学生として教育されるわけである。しかし、学生が企業に入ったときに、大学の中だけで教育を受けている場合と比べてもし受ける教育に差があった場合に、それはそもそも大学で受けるべき教育を十分に受けていないということになり、その教員による教育を受けている学生は、大学で受けるべき教育を受けてないという不利益を被っているという状況がある。この点についてもきちんと考えていったほうがいいのではないか。 |
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○ |
大学は本来、学術知、あるいは科学知、あるいはその一つとしての工学知を自由に流通させるべきである。そのためのメイン・キャンパスがあり、それとは別に、社会貢献のための実用仕様の研究を行うリサーチ・キャンパスを物理的に分離して設けることができれば、それが一番好ましい。しかし、日本の大学ではなかなかそうした物理的な状況にはない。さらには、最近の学術分野では基礎と実用が表裏一体になっており、なかなか分離できないところもある。また、日本の大学の中では、制度として奨励給付金があり、共同研究があり、受託研究があるなどいろいろな資金的な制度があって、それのどこからどこまでが実用仕様研究なのかということが分別しにくくなっている。そこに学生が巻き込まれてしまったときに、守秘義務や学生から見た利益相反が問題になるので、その辺を日本の大学の実情に照らして整理しなければいけないのではないかと思う。そうした観点から本日の両先生のプレゼンテーションには大変感銘を受けたが、質問したいことがいくつかある。学生の利益相反というところで説明いただいたときに、企業と大学、あるいは企業と大学に所属する教授との間の契約は明確であり、さらに、教授と学生との間の契約もあるということを話されたが、このようなベンチャー指向の共同研究の場合、企業と大学教授との間の契約は今どこの大学でもあると思われるが、さらにそこに含まれている学生と主催者である教授との間の契約というのは具体的にどのようになっているのか差し障りがなければ教えていただきたい。また、参考資料2の5ページの表というのは大変よく整理されていていると思うが、そこの関連企業という定義に全部絞らなくとも、もっと一般的な企業との間に拡張してもいいのではないか。そうした観点からすると、本来は企業との間の関連で懸念される問題というのは、まず学生側から見て、その共同研究プロジェクトチームに参加するかどうかということが第一にあり、その次は、その関連企業のアルバイトとして働くかどうかということがあり、その次には、さらに長期間にわたってインターンシップに行くかどうか、さらには就職するかどうかということがある。もしくは、一つの特例のケースとして、ベンチャーが起業するか、そこへ就職するかどうかということのほうが流れとしてややわかりやすいかもしれない。そのように整理していたとしても、先生のところで卒業要件とか単位のために無償労働を強いていないかという疑問が出てくる。別に産学連携を目指した研究だけではなくても、その他の研究において、日本の培ってきた制度や歴史では、学生に負担を強いるということがある。もともと何の対価も払わないで学生に研究の基礎を任せて、それは教育の一環だということでずっと日本の教育は成り立ってきた。それを、例えば産学連携ということにウエートを置いてそこを強調し過ぎると、一般的な研究のところに相当影響が出てしまうのではないか。 |
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□ |
特に守秘義務の件は、共同研究あるいはベンチャーでやっている仕事に限っての話であり、そうした共同研究や実用化研究の場合には、学生にあるテーマをやるかどうかについて納得いくまで話を聞いている。あとは学生と私との契約ではなく、紳士協定である。ただ、共同研究をやっているので、共同研究全体としての守秘義務のサインを個人として学生と同等の立場でする。 |
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○ |
これまで、大学の研究では研究者に対して人件費は払わないのが原則である。科研費の例えば研究員に名前を入れるときには、そこに人件費を払うということはなかった。しかし、共同研究など企業からそれなりのお金が入ってくるものに対しては、例えばソフトウェアの分野であれば、学生のプログラムが部分的に利用される場合に、それに対して対価を払わないということは逆に問題だろうと思う。だから、修士研究以上で、そうした企業との産学連携研究である場合、対価はこれぐらいであるというようなことを明示して、学生に選択の自由を与えるということが基本だと思う。これも本当に白か黒かという問題ではなく、日本のやり方というのは、そうした研究に対して人件費を支払わないのが慣例であったが、お金が入っているものに対して、しかも成果物が何らかの形で出ていくものに対しては、応分の対価を払うようにルール化すべきではないかというのがこのアイデアである。 |
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○ |
参考資料1の「3.学生の利益相反」に書かれている内容というのは、主に大学を舞台にしてのことなのか。先生自身で作られているベンチャーの話というのは、最後の「6.産学連携ベンチャーの特典」というところだけなのか。あと、実際に先生が作られているベンチャー企業と大学での研究とのかかわりについてであるが、マスコミ等の発表で、先生のところの学生がベンチャーにも参加をしているということは記事か何かで出ているのか。また、その際、例えば学生が実際にそのベンチャーに参加するに当たって、共同研究については意向を聞いているということであるが、実際にベンチャーを作ってそこで活動するに当たって学生を入れる際に学生の意向を聞いているのか。 |
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□ |
その場合も意向は聞いている。 |
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○ |
実際にそのベンチャー企業と先生の研究室との間で研究契約を交わして共同研究をしているようなことはあるのか。 |
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□ |
ある。 |
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○ |
その場合、学生は両方にかかわってくる可能性があるのではないか。 |
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□ |
ベンチャーの研究で我々と共同研究をやる場合にはそのテーマに絞られるので、大学と何も関係ないと思っていただきたい。 |
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○ |
そうすると、実際に学生がベンチャーで働く場合は、国立大学の先生でいうところの勤務時間の割り振りみたいな感じであるのか。学生の場合、昼間働くケースはあるのか。 |
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□ |
そうしたことはめったにない。 |
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○ |
これからの研究というものは、これは経営者との共同研究であり、これに参加するのであれば守秘義務を結んでもらい、結果として、ここで研究した成果はそのままドクター論文の中身をなさないかもしれないし、またはそこから出てきた特許等々について期限が決まっているので、民間との契約でそこは明確にしないといけない。そうすると、学会発表はできなくなるかもしれない。そうしたデメリットをきちんと全部学生に最低限開示した上で選んで入ってきてもらい、しかも共同研究をやることになるので、その部分についてはきちんとした報酬を払うということを教官が意識して行うことになるだろうと思われる。できれば最終的に、アメリカのメイン・キャンパスのようにリサーチばかりしている人たちときれいに分かれてくるということが、恐らくベストの世界だと思われる。日本はなかなかそうはいかない。ただ問題は、今、先生方を見ているとそうしたことはほとんど意識されないまま、共同研究をやっている中で学生を巻き込んでいるという例がかなり多く見受けられるということである。それはやはりやめるべきではないか。最低限そこのところを明確にし、将来的に切り分けていくことをやっていかなければ、恐らく学生が学んで、その成果を自由に発表して、自分の研究成果をもとに学位を取っていくという教育の本旨若しくは大学の基本的な機能を失うことになりはしないか。むしろその点をルール化していくということが、学生に対する利益相反をカバーすることの大きなポイントになるのではないか。 |
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○ |
我々がこうしたことについてお手本にしているのがアメリカである。アメリカの場合、やはりポスドクがかなり多い。例えば私がいた日本の大学の場合、教官が200で、学生が1,000で、ポスドクが20ぐらいであった。アメリカの例としてカルテック(カリフォルニア工科大学)を挙げると、教員が250で、学生が1,200で、ポスドクが500ぐらいである。20と500というものすごい差がある。その中で、教育してもらうことを目的のポスドクがあれば、先生の行う産学連携にコミットしているポスドクもいる。そうなると、日本の場合には現実問題、産学連携をしようと思うと、学生がものすごく大きなレイバーであると考えるようになる。それが1点である。それから、前に調査したグラスゴー大学というところでは、いろいろ産学連携を事細かにやっているが、学生に関する問題については、ペンディングと一文書いて終わっていた。それからAAUの最後の資料の中に「報告の勧告と概要」というところがあり、A4二枚程であるが、その中に学生のことが二つあり、例えば学生等の研究への参加については特別に精密な調査が要求されるということ、それから、学生が取り組んでいる研究プロジェクトが教育・研究上妥当なものかどうかをチェックする質問を開示のためのフォーマットの必要項目とするということが簡単に書かれていた。あまりディテールには入ってないということが、アメリカ、イギリスの利益相反のガイドラインの状況である。 |
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○ |
利益相反というのは、要するに利益が相反するわけであるから、二つの利益があることになる。一つがインテグリティという問題であり、もう一つがフィナンシャル・インタレスト(経済的な利益)ということである。要するに教員あるいは研究者に経済的な利益が発生する場面はどこにあるのかというと、通常は外部の企業に関係している場合である。スピンアウト・カンパニーやベンチャーの場合が普通だと思われる。共同研究の場合は、基本的には研究者にお金は落ちず、大学にお金が入ることになる。利益相反として一番可能性が高い部分、つまり研究者が企業を経営している場合に、研究者の方が得られる経済的な利益と学生のコミットメントの間にどのような関係があるのかというところを常に気をつけて、開示の対象にしていけば、だんだん問題ははっきりしてくるのではないか。開示の内容としては、学生は企業で働いているのか、ベンチャーで働いているのか、何時間ぐらい働いているのか、昼はどうか、夜はどうか、給料はいくらか、ちなみに共同研究もあるのか、その共同研究に学生自身も関わっているのか、ということが挙げられる。聞いていく中で、そこに利益相反としての問題があり、管理すべき状態に至っているのかどうかがわかってくる。管理すべき状態に至っているとわかったら、管理をし始める。管理する必要がなく、きちんとされているのであれば、先生はお続けくださいということになると思われる。共同研究の中で学生を切り離すかどうかという論点については、学生は学ぶことが本分であり、どんな形で企業に関与していくのかということは非常に重要だと思うが、こと利益相反の話だけに関しては、あまりそれは直接は関係ないのではないかと思う。 |
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□ |
共同研究を会社と行うが、本来の学生としての研究において自分たちのこれからのキャリアに資するという内容でない限り我々は受けないことを第一条件にしている。それで、研究を始めたときには、共同研究に学生たちが何人必要かということを前もって精密に計り、共同研究の中で謝金や給料を支払うということを前提として向こうと契約して、その分は学生に払っている。その間に守秘義務契約がある。ただし、先ほど申したように、その研究を実際やってみると特許が入る等いろいろなレベルがある。学生AとBがおれば、AとBで貢献度に応じて時間給を変えることもある。そのようにして公平さを守りながらやっている。それから、先ほど産学連携でいろいろな形があるという話があったが、私の研究室には大学で一緒に研究したいという方が11人ほどメーカーから学生として来ており、そうした形もあるかと思う。 |
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◎ |
先ほどの指摘で、共同研究の話も利益相反から切り離すと言いつつも、やはり現実にはいろいろ難しい問題が起こりうるのも事実のような気がする。最初から切り離せれば問題はないが、途中でそうした事態が起きるということが結構あり、その場合に労働力が限られていると一体どうするのか、そうなると共同研究もできないといろいろな話があり、現実にはなかなかきれいにはすまない。最初からキャンパスを物理的に切り離すということも非常に大きな設備投資を伴うような研究であれば比較的切り離しやすいが、ソフトウェアの研究などになると、なかなか切り離しにくいということも事実である。確かにいろいろと本日は議論していただいているが、こうであるということはなかなか言いにくいのが事実である。こうしたことは注意すべきだ、こうしたことはきちんと考えるようにといった感じの指摘に最終的にはならざるを得ないのではないかと思われる。 |
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○ |
特許庁が特許法第30条適用の団体として大学も入れるようになってから、今現在、数多くの大学が第30条適用の団体になっている。しかし、大学主催のシンポジウムみたいなものは第30条適用であるが、修士論文などは第30条適用とはみなさないというようになっており、大学主催の修士論文発表大会だったらどうなるのかといったすごくあいまいな部分が残っている。本来そこの発表の自由は確保されるべきであるし、実際には、例えば本当にクローズドな中での修士論文の研究室レベルの発表であれば、別にこれは公知というみなしではなく、特許出願はできるわけである。ただ、そこに企業の人が来ていたりするとダメ、オープンにやろうとするとダメというような話であれば、そうした部分に関しては第30条適用を拡大してほしいという個人的な思いがある。それともう一点、独法化された後の特許の取扱いに関しては、今、機関帰属という議論が前提で進んでいるが、学生は雇用されているわけではないので、学生に機関帰属はできないという話になる。そうした場合の取扱いというのは、利益相反とは違うがどうするのかということを大学で作る必要があると思う。要するに、教授と学生が一緒に発明行為をして、例えば教授3割、学生7割みたいなときに、学生とは何らかの契約がやはり必要だろうというふうに私は考えている。 |
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◎ |
修士論文発表会の話については、そろそろ考えなければいけない話ではないかと思うが、こうしたものを完全にクローズドであると宣言すれば、それで法律的に何とかなるのか。 |
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○ |
新規性がなくなるのは不特定多数の者に開示した場合であるので、特定・少数の場合は、クローズドということになる可能性がある。ただ念のために、事前に守秘義務を課すことが一番よい。特定であればなんとかセーフかと思われる。第30条の話はいろいろとあり、もともとアメリカにはグレース・ピリオドという制度があり、どんな形であっても公開後1年以内に特許出願すればOKである。グレースというのは猶予期間という意味である。ヨーロッパにはこうしたものは逆にない。日本がその中間的な処理をしているということが現状であり、希望的観測としては将来的には日本の制度がハーモナイゼーションされて、何らかの形でグレース・ピリオドが日本に導入されるのではないかと思う。例えば6カ月間の一律グレース・ピリオドということで、どんな形であっても発表後6カ月以内に出願すればOKであるというような形に将来はなっていくのではないかと期待している。第30条であれば1個1個確認していくので、いつも穴が空いているところを縫ってはまたこっちを縫ってという感じになる。指摘された話は全くそのとおり問題だと思われる。 |
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○ |
不特定多数と言われたが、今は修士論文でもドクター論文でもインターネットで大学のホームページに載せてしまうことがある。これは不特定多数ではないか。 |
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○ |
インターネットに載せたら第30条が適用される。申請しなくても、インターネットは載せたときから6カ月以内は取れることになっている。刊行物などは発表されても6カ月間は、日本においては第30条適用がされている。インターネットは2年前ぐらいに、ホームページ等に載せてから6カ月以内であれば第30条適用の対象になるとなっている。ただ問題なのは、修士論文発表会でOBとかが不特定に誰でも来られることになってしまうと特許が取れなくなるというアンバランスな部分があることである。 |
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○ |
参考資料2の5ページの図であるが、開示・審査ということが企業への参加の就職の部分で、共同研究、インターン、アルバイトというところに引いてあるのは、まさにこの辺りが個人が利益を得るというところであるからである。ここもかなり揺れており、そこから共同研究が来て、非常に安いお金で、しかも学生が使われるような場合もあり得るという話があり、なかなか悩ましい問題である。学生の問題というのが欧米であまり明確化されてないということは、逆に言えば、こうしたルールで処しにくいということではないか。私が思うに、学生には異議申し立ての窓口というのがあって、きちんとケースバイケースでそうした問題を処理しているのではないかという気がする。 |
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○ |
身分の待遇については、大学の先生がベンチャー企業と直接関係があるところに絞ってしまえば、それは非常に数も少ないわけであるから明確である。しかし、そのように絞り込んでいいのか。今、国を挙げて産学連携をやっていると、大学の教授が作ったベンチャーとの関連だけではなく、それをもっと超えていろいろと問題があるのではないか。それだけに限るのであれば、非常に問題は簡単なのではないか。 |
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○ |
守秘義務の件であるが、ベンチャーでも何でもいいが、仮に守秘義務を学生に負わしたときに、学生自身というのは、要は大学で教育を受け研究する、ある意味で権利を持っているわけであり、その学生が守秘義務契約を結んだとして、あるときに彼が破ってしまったとする。そうしたときに、当然、企業に損益を与えたことになるので裁判になったとき、結局、その学生は罰せられるのか。要はベンチャーに学生を入れるといえども、教育としての内容を明らかに含んでいるがゆえに、実は大学を離れてベンチャーに専属しているわけではなく、学生自身というのはベンチャーを仮にやったとしても、教育の一部を絶えず受けていることになるのではないか。そうした大学にいるという上位の概念の下に守秘義務を交わしたときにその学生の法律的なペナルティーの根拠というのはあり得るのか。 |
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□ |
結論をいえば、あり得ないと思う。具体的に言えば、ベンチャーの話に限定すれば、例えばデジタルカメラ屋さんからこんなチップを作ってくれと言われたとする。そうすると、学生たちには具体的に何のためにやるかということは黙って、ただ指示のとおりのことについて一般論としていろいろな人に聞いてもいいのではないかという指導をしている。チップをもらったこと自体がもう研究であるので、デジカメのためにしていることについては黙っておくようにといった感じの守秘義務である。そうした意味では、紳士協定である。 |
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○ |
学生に対してではなく、その組織が守秘義務契約を従業員あるいは共同研究でやっている人と交わしているということが重要なことだと思う。学生が守ったかどうかではないと思う。つまり、いろいろな人たちが守秘義務契約を結んでいるということが大事だと思われる。結ばないで、例えば特許をどこかに売るということは考えられない。 |
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○ |
もちろんそれは十分理解した上で、法律的に勝てるどうかということである。 |
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○ |
もともとの契約は企業とベンチャー企業が契約しており、会社の中で学生と会社との間で守秘義務契約がある。もし秘密が漏れたら、デジカメの会社はまずベンチャー企業を訴えることになる。べンチャー企業が損害賠償責任を負うことになる。もしベンチャー企業がその気になれば、学生を訴えることはできる。ケースバイケースであるが、ベンチャー企業がもしかしたら学生を訴えることもあるかもしれない。 |