○ |
ある研究者がある新技術をスピンオフ会社に持っていくと、その会社の価値が高まることになる。その場合、基本の技術を持っていくけれども、周辺の応用技術も同様に持っていってよいのか、あるいは、そのスピンオフ会社が株式を公開した後に、この先生から継続的にその研究の成果を受け取ることができるのかなどといろいろ不安がある。つまり、ある先生は研究テーマを連綿と追いかけており、常に新しいもの、前のものより優れたものを出していくが、その都度、入札のような関係で独立した技術移転を行うのであれば、果たしてこの会社と先生の間に安定した関係を築くことは難しいかと思われる。投資家は、そんな不安定な会社に投資ができるのだろうか。そもそもそうした会社を株式公開させていいのだろうかという疑問がある。これが、例えば暗黙のルールと言ったら変であるが、大学とこの会社の関係が極めて密接な関係であるということが暗に認められており、周りの人も非難をしないという関係であれば、非常に安定した関係になる。しかし、そうでない場合、この新興のスピンオフ会社をつぶしたい大手企業から、その技術移転について公平にするために全部入札にかけろといったことを言われたとき、非常に困ったことになる。この辺について、いかがお考えか。 |
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○ |
技術移転が入札では絶対成り立たないというのは、欧米の事例を見ても明らかだと思う。問題は、アカウンタビリティ(説明責任)である。大学の先生がスピンオフ、ベンチャーを作って、そこの企業にライセンスするということはよくある話であるし、コア技術だけではなく応用の特許もその会社にライセンスをしていくということはよくあることである。現在は誰からも、これは利益相反ではないかとか、いろいろなことを言われることはないが、社内ではアカウンタビリティのある意思決定プロセスを作っており、ただ一人のライセンスが、それを意思決定するのではなく、これは本当にアカウンタビリティがあるのかということでジャッジをしている。基本特許とその周辺特許は、その会社にいかなければ、スタートアップ自体が成り立たず、成り立たなければコア技術も死ぬことになるという技術のコマーシャライズの観点から、どのような技術がこの会社に移転されることによってコマーシャライズできるかということについてのアカウンタビリティを決定している。そのような体制を、今後、大学が持たれるかどうかということが、非常に重要ではないか。逆に言うと、そこさえしっかりしていれば、毎回毎回、入札のようなことはしなくても、その分野に詳しい人が見ればわかるという判断になるのではないか。実際、アメリカでも、2000年のAUTMのライセンシングの実績が公表されているが、大学の技術は実は半分以上、ノンエクスクルーシブ・ライセンス(通常実施権)であるが、スタートアップ企業に関していえば、90%はエクスクルーシブ・ライセンス(独占的実施権)である。このようにスタートアップに関しては、独占権を設定しなかったら意味がないということについて配慮されていることが感じ取れる。最初の質問に関しても、公募入札が一番アカウンタビリティがあるかもしれないが、そうした部分できちんとアカウンタビリティのあるライセンスのプロセスがあれば、問題はなくなるだろうと思われる。エクイティのマネジメントに関しては、法人化後にTLOが学内に入る場合と、学外にある場合とで違ってくると思う。まず、学内にあった場合には、独立行政法人がエクイティそのものを所有することができるだろうかという問題がある。仮に、これが法改正等によって、法人化された大学がエクイティを持っても構わないとなった場合、これを換金するルールも検討しておく必要がある。アメリカでもスタンフォードなど多くの大学がエクイティを持っているが、換金はできない。換金ができないのは、テクニカルにできないということではなくて、いつ、だれがジャッジをするのかということが決められないためである。先ほどのアルバータ大学の例では、大学発ベンチャーのうち8社がIP(イニシャル・パブリック、「株式公開」。以下「IP」という。)をしているが、大学がIPをした株式を売ってしまうと、大学とその会社の縁が切れると見られることに配慮して、結局、IPをしても換金していなかった。ところが、そのうちに経済がどんどん悪くなって、株価が10分の1になってしまい、その責任を問われているという話があるので、そこに関しては議論していかないといずれは問題になるであろうと思われる。 |
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○ |
アメリカの例では、スタートアップの場合はエクスクルーシブであるとのことであるが、アカウンタビリティを説明するにしても、暗黙の約束事みたいなことをやはり感じる。つまり、その大学がある地域に貢献する企業だから、あるいは、今までの実績がある企業だからといったことで決定する、透明性があるとは言い難いところがある。そのような大学の役割をいろいろな地域において認められているということと、大企業のほうもベンチャーの意義がわかっており、ベンチャーと役割分担をすることが、自分たちにとっても役に立つという認識があることが、その背景にあると思われる。ただ、今の日本の状況では、そのような暗黙の約束事を正当化してくれるような環境がなく、ある産業分野においては、大企業がベンチャーをライバル視して取り囲んで封じ込めてしまおうとすることがあるので、この辺が非常に重要であると思う。 |
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○ |
テクニカルなことで言うと、二つのポイントをクリアすればいいと思う。一つは、TLOがその技術のデュー・デリジェンス(価値評価)をきちんとやっているかどうかということである。このデュー・デリがきちんとできていれば、それに関するアカウンタビリティに対して説明ができる。もう一点は、これもテクニカルな話であるが、要するにライセンス契約の契約内容がどうなっているかということである。ライセンス契約の中で、例えばマイルストーン(目途)を設定しており、5年以内にここまで開発できなければ、独占権を外すといった契約は、別にスピンオフに限らず、大学のTLOとして当然のことながらやるべき話である。この契約形態の内容とデュー・デリジェンスで、アカウンタビリティはとれると思われる。何かあった場合、例えばその契約書を公開して、その契約内容を説明できれば問題は解決するのではないか。ただ、それが、例えば単純な譲渡の形で、その会社に売ってしまっているという話になると、アカウンタビリティに欠けるものになると思われる。 |
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○ |
今のやりとりを聞いていて、若干、利益相反から議題が外れてきているのではないかと思われる。これはしようがないことであるが、要するに、今の話はポリシーで決めることである。ポリシーとは何かといえば、パテントをどのような形でとるか、何の目的でとるか、技術移転をどのようにするか、どこにライセンスするか、といったことであり、スタートアップ企業に独占実施権を与えることもポリシーで決めていく。あるいは、エクイティをとるのであれば、エクイティをどのような形で運用していくかということをポリシーで決めていけばよい。そうした利益相反で決められることと、他のこと(パテント・ポリシー)で決めなければいけないことと、もっと大きい話であるリサーチ・ポリシーで決めなければいけないということがある。利益相反をやっていくと、いろいろなところで、いろいろな問題が見えてくる。これは非常に難しいが、この案件は利益相反とは別のポリシーでやるということをはっきり議論の中でしていかないと、何もかも利益相反ポリシーに入れてしまうことになるので、そこは注意したほうがよろしいのではないか。 |
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○ |
参考資料1の利益相反例の であるが、このような形のライセンスをしてロイヤリティが入ってくるということは現実に起こっている。それがきちんと契約に基づいてなされている場合、我々はそれを利益相反であるとは今のところ考えていない。逆に、ベンチャーを進める立場からいうと、こうしたケースでやりなさいということが多く、その先生にもインセンティブが出てくる、非常にやりやすい体制である。それで、いろいろな問題が起こってきたときに一番大事なことは、アルバータ大学の例にもあるが、結局マネジメントがきちんとできるような組織と、きちんとしたコーディネートができる知識を持った人材がいて、なおかつ利益相反の判断について権威のある部署を作っておくということではないかと思う。我々は結局それを目指さざるを得ない。大学としてどうすべきかということを考えると、アメリカの事例といった複数のルールの事例などを集積したものを持っておいて、それをマネジメントの部署がしっかりと把握しておき、ケース・バイ・ケースで対処していくしかないと思われる。最初に、チェックリストを示すとみな萎縮してしまう。重要なことは、利益相反の議論をあまり大学でやりすぎると、だからやめておこうという結論に陥りやすいということである。全部のルールがきちんと完備するまでは、何が起きるかわからないので産学連携をやめておこうという、産学連携をやらないことの積極的理由になってしまう可能性がある。それでは困るので、何か起こったときは相談にいき、かなり厳しい点も含めて指導してもらえるような組織を整備しておくことで、情報開示も含めて、みんなが納得できるような形にしたい。非常に困るのは、そうした利益相反の問題があるがために、家族が社長、社員となり、先生自身が役員でも社員でもないにもかかわらず、実際はその先生が全部やっているというケースである。研究室で出た特許をみんなそこへ持っていくが、私は何も関係ありませんということで開示も一切ないということになる。そのようなことをしなくても、きちんと開示をして、オープンにしてやればいいというようにしないと、この利益相反の問題が非常にマイナス面にとられてしまい問題になる。 |
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◎ |
この委員会で何を取りまとめるかということは非常に重要である。今の指摘のとおり、利益相反をあまり最初から言ってしまうと、確かにそういう懸念はないではなく、産学連携なんかやるべきではないという話になりかねないことは事実である。しかし、全く何も言わないわけにもいかない。なぜならば、スピンオフをやってしまえば、コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)は起きて当たり前であるという共通理解まで達していなければならないからである。とにかく何かやると、そうしたことは起こり得るのであり、常に巻き込まれる可能性があることを共通認識として持つということが第一歩であり、そこまで達していないと問題が起きることになる。 |
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○ |
今の委員の指摘について私の考えを申せば、アメリカやヨーロッパの大学の利益相反の判断の仕方というかマネジメントの仕方というのは、それこそ見た人は、何もできなくなるような気持ちになるのではなかろうかと思われる。先ほど他の委員が指摘したように、やはり大学としてのパテント・ポリシーや産学連携のポリシーをどう作るかということが重要だと思われる。例えば、参考資料1の利益相反例 の2番目に関して、ライセンスを教授が得るのは利益相反ではないと先ほどの委員は判断されているが、我々のTLOでは利益相反であるかどうかは別にして、このようなケースではロイヤリティは教授に入らないようにマネジメントしている。今後法人化されたときにどうするのかということを考えたときに、今から厳しめにしておいたほうが運用しやすいだろうということも含めて、このような取扱いをしている。大学の中でのポリシーというのは、知財本部ができた暁には検討されるだろうと思うが、今は、そうしたものがまだないので、TLO独自のルールで行っている。 |
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○ |
利益相反例の のところのQ先生にロイヤリティの一部を返さない、個人的には返さないということを述べられていると思われるが、私は別にロイヤリティを返しても構わないと思っている。例えば、Q先生とライセンシーが何らかの形で関係かあるのではないかと指摘されたときに、それとは別にQ先生にはこれだけの利益が返ってきており、少なくともこうした理由でQ先生のこの技術はこの面でしか実用化できないということをTLOが理解していれば、それで説明がつくと思う。 |
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○ |
説明がよくなかったかもしれないが、アップフロント・ロイヤリティは返さないと言ったほうがいいかもしれない。その特許について@会社が商品化して利益を上げたら、その一部を返すというランニング・ロイヤリティは正当な企業が頑張った行為である。例えば極端な話で10億円でやりとりされて一時金が返ってくるというアップフロント・ロイヤリティは論理的にはあり得るかもしれないが、そういうケースは実際にはベンチャー企業では今まで起こっていないので、アップフロントは返さないと判断している。 |
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○ |
この例は、このまま我々の大学で見せると反発が起きると思われる。なぜならば、この図は「想定される利益相反例」と書かれているが、この構図そのものは利益相反ではないからである。我々も学内の委員会で利益相反を検討するときに、利益相反の例として、大学が得るべき利益が圧縮されて個人に入ったということや、あるいは企業の税金を圧縮するために多くのお金を共同研究で入れて税金逃れをしたということなどを挙げている。逆にそうした事例の構図においても、社会に大きな経済効果をもたらす、技術開発を促進させる、大学にとっても大きなリターンがあるなど、すごく良い例が出てくることもあり得る。こうした構図において、この場合は非常に推奨すべきことであるが、この場合は避けなければいけないといった、もうワンランク下の具体的事例があったほうがいいのではないか。 |
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○ |
「想定される利益相反例」といった表現ではなくて、「よく議論される観点」と直したらよいかと思われる。最初に「基本スタンス」というところで書いているが、やはり各大学でポリシーを作って、利益相反に関する運用ルールを作るということがメインだと思う。私が勝手に、例えば大学の利益相反ポリシーを作ったとしても、もともとの大学の産学連携ポリシーや技術移転ポリシーと全くアンマッチなものになっては意味がないわけである。ここは大学として議論されるべき性質のものだと理解しているので、あくまでも観点を挙げたということで理解していただきたい。 |
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○ |
このような資料がリファインされて、検討資料の一つに付け加えられるかと思われる。その際にやはり、この委員会自体のアカウンタビリティとして、どのような場合は好ましくない例であるかを示す必要がある。大学個々にもよるが、一般論として社会の利益を非常に損なった場合あるいは企業の利益を斡旋した場合というのは明らかに誰が見ても良くないと思われるし、逆に誰が見ても問題がない例も出てくると思われる。ベンチャー企業が、それなりの雇用創出をして、その地域に貢献すれば、これは誰が見ても良いことであり、その先生に、それなりのリターンがあっても認められることになる。そうした個々の構図の中の一つとして、この資料はあってもいいのではないか。各大学の責任であることは間違いないが、せっかく当会議で皆さんが集まっているのであるから、もうワンランク詳細にした事例について検討してもいいのではないか。 |
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◎ |
今の指摘は多分その通りだと思われる。要するに報告書の中で示す例として、より適切な例というものをそろそろ作る必要があるのではないか。 |
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○ |
参考資料1に出ている例は適切な例だと思われる。利益相反は、こうしたケースがいろいろと出てくると思う。ただ、書き方として先生方が気になるような内容になるかもしれないが、これが現実であり、そこは避けて通れないのではないか。やはり大学側なり、この委員会が何故問題なのかを説明していくことが大事であると思う。先生方は話せばわかっていただける方々なので、説明を省略して何となく反対が起こりそうだからどうこうということは、あまり最初から考えるべきではないのではないか。 |
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○ |
前回、ベンチャーについて議論をしたので、付け加えておきたい。参考資料1の の例である、スタートアップ企業であるが、これに対しては形式的に見ると不平等であるような支援をしている。例えば、その企業がインキュベーターに入って、その地域の大きな工場スペースを借りた場合、その地域の平均より安い額で応援するといった措置を既に行っている。スタートアップ企業の弱い点を応援をするということで形式的には不平等であるが、実質的には大企業ないし当該分野における支配的な企業と平等にすることを図っている。ベンチャーに対してどの時点において、こうしたTLOから優先的に見えるようなことを行うのか、または、どの時点からイコール・フィッティングをするのかということについて、もう少しきめ細かい議論をしておいたほうがいい。大学としても、どこまでベンチャー企業を応援するのか、またはどこで手放すのかということを明確にしておく必要がある。先ほど、株式をIPした後にどう売るかという事例があったが、これは別のところでジャッジして、縁が切れたと見られようが見られまいが関係なしに売却するという明確な意思をどこかで示しておかなければ、大学はずるずると引っ張られてしまうことになるのではないか。もしベンチャーの議論をするのであれば、もう少しそこについてきめ細かい議論をしておく必要がある。そうしなければ、おそらく反発や誤解があったりするだろうと思われる。 |
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○ |
例として挙げる場合、これは下手すると笑い話みたいなことにもなりかねないが、私の大学で、このルールを作らなければいけないということで検討を始めて、現在途中で投げ出したような形になっている。検討を始めたところ、法学部などの先生も加わって、いろいろな問題が出てきた。法学部の教授の中には弁護士資格を持っている人もいるが、そうした人は弁護士として何か今までしてきたはずであり、それはやはり利益相反の範囲に入ってくるのか、文学部の先生は自分で本を書いて儲けているが、これはどうなるのかといった議論が錯綜して、全然検討が進まなくなってしまい、お手上げになって頓挫しているような状況である。この会議の議論の中で、そこまで例として含めるのか含めないかということになると、私は含めないほうがいいようにも思えるが、含めておかなければ各大学へ持っていったときに必ず起こる問題だと思われる。 |
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◎ |
建築分野といった技術系の分野でも、そうした事例があり、なかなか難しいことがあると思う。ベンチャーの議論をするときには少し立ち入って細かく議論をしなければいけないということに関してはどのように考えられているか。 |
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○ |
結論から言えば、これを利益相反例と呼ぶのはよくないが、 にあるようなケースは極めて抽象的な話である。先生の意向がどこまで技術移転に反映されているのかといった具体的な話は書きようがないものである。同じような構図であっても、この場合はOKであるが、この場合は良くないというケースがやはり出てくる。今回は、本当に書くと極めて抽象的なものしかないので、あえて具体的例を挙げてみたということである。ただし、先ほど指摘があったベンチャー、スタートアップに関しては不安をお持ちの方は非常に多いと思われる。最終的には大学が決めるべきものであり、各大学独自のポリシーをどう作るかということであるが、ここに関して、幾つかの観点で議論をすることは前向きなものだと理解している。 |
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○ |
私は、問題点をはっきりさせるべきだという意見である。現実問題として、スタートアップ企業にも関係しており、TLOの取締役であり、発明者が本人という場合、三者のリターンが、どこから見ても不当のないようにしておく必要がある。こうした構図で、どこかが不当な利益を圧縮するようなことは絶対してはいけない。しかし、実際には、TLOに収入が入って、企業もその技術で製品開発しており、それを推進していかなければならない。私がメリーランドに以前行ったとき、向こうでは産学連携の共同研究について、相手企業、ベンチャー、中堅、大企業に分けて州が支援しており、その相手に応じて、相手がベンチャーであれば9対1で州が持ち、中堅だと1対1ぐらいであり、大企業であれば企業のほうが多く負担するというように州の負担する比率が全然異なっていた。これは不公平ではないかと聞いたら、これは全然不公平ではないという回答を得た。州立大学においては、州の雇用創出にとって、どれだけ大学が分担するかということが非常に重要なファクターであり、ベンチャーを支援することは雇用創出するにつながるということであった。このようにアメリカの大学では明確な目的意識がある。これは利益相反ポリシーというよりは産学連携ポリシーであると思われる。そのときに考えなければいけないことはTLOが絡んだ場合である。TLOからライセンシングをしている相手に対しては一定期間、追加の周辺特許のライセンシングが必要なときに、それをTLOができるだけ早めに判断するようなことが必要なのかということを我々は議論している。 |
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○ |
最初に、私が議論していたときに混同しているという指摘があったが、それは今のお話の中にあった産学連携ポリシーと利益相反ポリシーの混同があるという指摘だったのか。 |
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○ |
はい。 |
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○ |
そうであれば、日本は事情が随分異なり、大学は州立ではなく全国区であるということや、そもそもベンチャーは大企業の下請的なところがほとんどである。R&D型ベンチャーは今後大学から出てくるが、産学連携ポリシーができるのかという疑問がある。どうもその辺を利益相反のほうに混同して考えがちであるが、現実には、そこに含まざるを得ないのかなという気がする。 |
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◎ |
利益相反ポリシーと産学連携ポリシーの線引きについてであるが、その辺りはどうか。 |
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○ |
産学のコミュニティの中で利益相反ということに関して基本的な了解を得るということが一番大事であると思われる。ただ、なかなか利益相反というのはわかりにくいというところがあるため、それを理解してもらうためには具体的な事例を出さなければいけない。そうであれば、この事例がいいとか悪いとか、その間の基本的なこと、具体的なこと、詰め方のコンフリクトがどうしても必要になると思われる。ただ、それはしようがないことであるので、最終的な方向としては禁止の方向ということではなく、やはり何か前向きの落としどころが必要である。事例を書くにしても、社会に貢献するということが求められているといった何かそういうテクニックが最終的な報告には必要でないか。 |
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◎ |
今の話は、利益相反ポリシーと産学連携ポリシーも、そこで後ろ向きなポリシーを言われてしまわれれば、大学としてはしようがないということであると思われる。産学連携ポリシーがポジティブであれば、利益相反ポリシーは、どちらかといえば、その大学が代わってアカウンタビリティを保証して、それを推進するといった趣旨のことを本報告書に書くということであると思う。 |
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○ |
今までの議論において、利益相反のポリシーを作るということの中では、各大学法人等の中できちんとマネジメントできるシステムを作るということが出ていると思われる。今の就業規則にしろ何にしろ、とにかく作り方が、こうしたことができます、できませんといったことを書いていくことであり、このようなシステムを作ったらいいですよということを提案することは、なかなか難しいのではないか。あるいは、現状で考えた場合に、各大学法人の中で、そうした発想のルールを作るということ自体が難しいのではないか。もしそのシステムを作るということであれば、そうしたシステムをこう作ればいいということを報告に書き込んでいただきたい。参考資料4では非特定独立行政法人、それから特殊法人の機関の規則が挙がっているわけであるが、幅広く、民間企業、あるいは私学において、どのようなシステムを作っているかについて参照できれば、今後の展開のためにも参考になるのではないか。 |
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◎ |
最終的には、やはりそうしたシステムについても個々の独法化した大学に任されることを考えているのか。 |
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△ |
兼業等については制度的にはあくまでも各大学法人の判断になる。ただ、似たような役割を負っている部分もあるので、共通的なところについてはガイドラインのようなものを示そうということが最終報告に盛りこまれている。共通するようなところは国大協のほうでガイドラインとして示してくれると思われる。 |
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○ |
例えば、TLO兼業を現在は無報酬でやっているが、報酬を得てやった場合、TLOは営利活動をやっているので損害賠償の対象になったときに、その営利活動に関与したという問題が出てくる。そうであれば、産学連携をやる場合に、例えば104条兼業といったものが絶対必要になってくると思われる。アメリカの大学の技術移転でも、ただ特許を企業に渡しただけでは技術移転は成功しない。特許の周辺にあるノウハウやナレッジを持つ研究者のコンサルティングがなければ技術移転もうまくいかないという話があった。要するに、産学連携をどんどんやるということは、大学自体が営利活動をやるということである。営利活動に関与すると損害賠償の対象になった場合、大変であるということがガイドラインに盛り込まれれば、産学連携はやめておこうという逆の風潮になるのではないかという危惧があるので、ガイドラインを作る際には、そうした表現に留意してほしい。 |
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△ |
本日の説明は、国大協での検討の方向を説明したわけではなく、現行制度を担当している部署としての立場から見た場合、こうした点にも気をつけなければいけないといった観点から説明させていただいた。営利企業との活動、損害賠償請求というのは、極端な事例として、常に念頭に置いておく必要があるという趣旨で説明した。 |
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○ |
我々のところでも、国家公務員倫理法及び倫理規程との関係について議論を始めている。TLOより一番悩ましく思っているのは、リエゾン活動である。倫理行動規準第1条第1項、まさに第1項、一番入り口のところにおいて、職務上知り得た情報について、国民の一部に対してのみ有利な取り扱いをするといった不当な差別を行ってはならないと書いてあるが、リエゾン活動というのは、まさに職務上知り得た情報を基に、ある先生の活動を、ある企業に持っていって、これはこのようにしたほうがいいのではないかということを提案することである。これはまさに倫理行動規準違反をやっているのではないかということについて現在議論をしている。また、公私の別を明らかにするために、職務や地位を自ら及び自らの属する組織のために、私的な利益のために用いてはならないということは非常にわかる。しかし、先生が自らの研究成果を使ってベンチャーを興して一生懸命努力をする例がある。ベンチャー企業というものは、ある一定の時期は、かなりそこにコミットせざるを得ないという特殊性を持っていると思う。そうであれば、この例は2条に当てはまってしまうのか。そもそも倫理規程は、国民に対してあまねく広く公平に取り扱わなければいけないという趣旨から来ているのか、それともさらに、未公開株を持ってはいけない、食事をしてはいけない、ゴルフをしてはいけないという、ある種の賄賂性を規定しているのか、どちらなのかよくわからない。もしそうであれば、改めて産学連携をやる上で、どうのようなルールを決めるかということになり、現行の倫理規程なり倫理法がそのまま適用されるということは非常に難しい問題を起こすのではないかという議論をしている。先ほどの説明では、この部分については、そのまま規程が適用されてしまうということなのか。それとも、また新しいものを作る可能性があると考えているのか。それによって、リエゾン活動について整理ができにくいということが起こり得るのではないか。 |
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△ |
法人化後においてどうなるかというよりも、現行の倫理法がどうなっているかということについて説明したい。まず、冒頭出た倫理行動規準であるが、これはいわば、こうあるべきだという理念を示したものである。ところが、実際、ではどこまでいいかというところが不透明であったので、はっきり利害関係者を限定して、わかりやすく、こういう人が利害関係者であり、その人との間で禁止されるのはこれであり、これはいいというふうに定めている。これは国家公務員個々人が利害関係者との間でやると、それが不適切な関係になることを防止するためのものである。例えば、大学が産学連携活動として積極的に関わっていくとき、個人に直接報酬が入らず、組織に入るのであれば、これは倫理法の外の話だと思われる。そこはまさに、ここで議論されている利益相反や、報酬がどこに帰属するかによって、また枝分かれしていくと思う。それから、この倫理法自体がどこまで決めているかといえば、やはり他の法律もそうであるが、基本的なところを定めているだけである。よって、すべてをこの倫理法で捕捉しているわけではない。仮に法人化後に倫理に関するものを作るとしても、骨格的なところ、共通的なところを定めることになる。そこで定められないところについてどうするかというときに、ここの会議での利益相反等に関する考え方をどうするかというところが生きてくるのではないか。 |
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○ |
一番初めのほうで、事務局から説明があったように、不測の事態があったときに大学法人が訴えられる可能性があるということがあった。外国、例えばスウェーデンの例などを見れば、各大学法人とは別に、その大学法人に附属する形で、たしか国が出資をしていると思われるが、株式会社を作ることがある。例えばスタートアップ企業のエクイティを受けることができるという場合、いわゆる営利にかかわるようなところで大学は関係するが、一応別法人の株式会社形態のものを別に置くということで回避している。そうすることによって、いわゆる教育・研究というところにまで影響が及ばないようにしていると思われる。そうした工夫を、例えば日本の場合においてもとれるかどうかということが重要ではないか。 |
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○ |
大学の場合、民間企業でいうと事業の場所が単位になるということになるのか。場長が了解した勤務体系をとるということはあるが、大学の場合、誰がこれを決めることになるのか。学長なのか、学部長なのか。ルールを作って、それで全部適用しようとしているのか、それとも、各大学の中でその辺が柔軟にできるようになるのか。その辺のイメージがよくわからないので教えていただきたい。 |
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△ |
今現在、国家公務員の場合は枠組みが法律で決まっており、その範囲内である程度弾力的なことができるようになっており、その枠内で各大学の長が定めるといった仕掛けになっている。独法化後であれば、各大学が主体になり、これは就業規則で決めるべき事項であるので、使用者が構成員の方の意見を聞きながら決めるという形になる。よって、今よりもいろいろなアイデアを用いて、多様な職種を用いることができると思われる。例えば、専門業務型であれば、情報処理システム、分析、設計等については既存の労基法でも裁量労働制が可能であり、今後の新しい大学法人の中でも、これらの分野においてもう少し多様な人材を取り入れたいという場合に利活用できるのではないか。 |
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○ |
そうであれば、裁量労働制は難しいということではなく、そうした観点もあるという理解でよいか。 |
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△ |
大学の独法化の議論の中で、教員の勤務時間を裁量労働制に移行してはどうかという議論が当初からあった。それで、最終答申が出たわけであるが、やはり労基法ベースでいくと、先ほど申し上げたとおり、すべての事項について教員の裁量に委ねられない。そこがネックになって、当初イメージしていた、大学の先生であればすべて1週40時間勤務したとみなす、幅広い意味でのみなしには、まだまだハードルが幾つかある。 |
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○ |
おそらく、これから実際に研究・教育をやるミッションを実現する部分と、産学連携をどのように切り分けていくかということは非常に重要な話である。TLOがどの組織形態をとるかによって、大学のかかわり方、またその大学の責任の取り方も違ってくる。もし何か、外にある株式会社形態であれば、そこである種の自己完結をするということが法律上の建前だと思われるので、その辺をどう考えるかということはきちんとしておかなければならない。アメリカには、メイン・キャンパスとリサーチ・キャンパスというものがある。メイン・キャンパスでは、きちんと学生はそこで研究教育、基本的な教育を受けている。一方、リサーチ・キャンパスでは企業が入ってきたり、またはベンチャーの支援のための施設があり、きちんと切り分けられている。残念ながら、日本はその切り分けをする前に、産学連携が始まったために組織的にもなかなかうまくいっていないところがある。また、法人化されていないために多様な組織を持ちにくいということがあったかとも思われる。今後、それが可能になるわけであるので、今の働き方の問題、または倫理法のかかわり方などを改めて整理をすべきであると思う。ただ、現場のほうから見ると、国大協の議論で本当にそこまで間に合うのか、国大協だけで大丈夫なのかということについて非常に心配している。たまに倫理法との関係でどう考えているかというような問い合わせがあり、それに対して意見を申し上げているが、全体でどうまとめているのかがなかなか見えない。これで本当に大丈夫なのかという心配がある。この辺はむしろ、どのような形でやるのか、それから、特にここで集中的に議論している利益相反の問題等について国大協の特別委員会でどこまで議論をされているのかということについて懸念がある。大学全体でどうするかという問題、それから、その大学の独自性の中で産学連携機能をどのように実現していくかということについて、国大協の議論でどのようにこれからやっていくのか、また、ここでの議論をどうそこに反映していくのかということが非常に重要な問題であると思われる。是非この辺を当委員会からどのように国大協に問題提起をするかを含めて、最終的なレポートで検討いただきたい。 |
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○ |
大学の切り分けの問題であるが、実際、現場で研究・教育に携わる立場から見ると、研究・教育というのは何から何までが研究・教育であり、何から何までが企業との共同研究であり、あるいはベンチャライズであるかということについては非常にファジーであり、明確に切り分けられないのが実態ではないかと思う。それを無理矢理に切り分けてしまうと、実行段階に無理があり、本当にそんなことができるのだろうかという気がする。事務局が説明した、独法化されたときには40時間の中に入り込んでもいいということで、みなしでやってしまうということであるが、切り分けについては非常に微妙であり、あまり裁量労働制を進めると、現場は非常に困るということも理解していただきたい。ただ、ある程度切り分けないといけないということも必要であるので、その辺はうまいソリューションを是非見つけていただきたい。 |
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○ |
少なくとも、今の意見に関しては、例えばエクイティはどこが受け取ったかとか、ライセンス主体はどこから行われたかとか、そうした部分については組織上、切り分けることは可能だと思われる。そうしたこともあるので、私はTLOというのは最初の段階では外にあったほうが、いろいろアカウンタビリティがとりやすいのではないかと思っている。それともう一点ある。例えば、公務員倫理規程をベースにしたような就業規則を独法化された大学に適用された場合、利益相反の問題とどう絡んでくるのか。例えば、私が使った利益相反例 があるが、今の国家公務員倫理規程であれば、先生自身がベンチャー企業を作ったとしても、役員兼業をしてもオーケーであり、出資をしても構わない。これは利害関係者にはならないということであるので、例えば、 は利益相反にはならないし、 も利益相反にはならない、 も問題がなくて、 に関しては、Q教授が共同研究を決済できる学部長でなければ問題がなく、 も問題がなくて、 と に関しては利害関係者になるが、この場合だけにおいて問題ないということになる。今の国家公務員倫理規程がベースになったような規則でいくと、実はアメリカでは利益相反と言われているような問題が問題ないケースとして扱われる一方、リエゾン活動において例えば職務上知り得た情報の取り扱いについてどうしようかという話になった場合、問題になる可能性がある。各大学が独法化されたときに、例えば社会との連携をどう模索するかによると思われるが、その目的に応じたいろいろな体系を大学独自で設計できないと、あるベースとなる規定を持ち込んでしまった瞬間に機能しなくなるという危機感を感じている。ガイドラインを作っていただくことはよいが、このガイドラインのために、かえって自由度がなくなるということを懸念している。 |
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○ |
服務とも関係してくるかもしれないが、アメリカの場合にはプリンシパル・インベスティゲーター(以下「PI」という。)という言葉が利益相反との関係でよく出てくる。それは、公的なお金であるグラントをもらうことに対する責任の中に利益相反が入っていることによるものと思われる。PIが、何か非常に特殊な位置づけになっているが、これはどのようなことなのか。 |
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○ |
私は、要するに公的資金を導入した瞬間から、社会に対するアカウンタビリティを得るという意味でのオブリゲーション(義務)が発生するという理解しかしていない。詳しい方がいれば、教えてほしい。 |
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私も詳しくはわからないが、PI、要するに研究代表者が研究の方向性や予算の使い方について影響があるということと、複数の研究員が関わる研究プロジェクトにおいては一人の者から情報を求めたほうが実際のマネジメントで煩雑を避けることになるということがあるためだと思われる。また、必ずしも公的なお金を使うときだけPIが出てくるわけではなく、産業界とのスポンサード・リサーチでもPIというものが出てくるので、あまり公と私との区別はないのではないか。 |
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資料で挙げた利益相反 の例で、 までは問題ないということであったが、実は のところで、エクイティを3分の1以上持っていて、5年間で2,000万円以上の共同研究契約を結ぶ場合は密接な関係であるので報告をしなければならないという規程がある。その密接な関係とは利害関係者と関係があるということかと事務の方に聞くと、そうではないという回答があり、よくわからない。そうした根拠がよくわからない規定があり、筋が通らない部分が幾つかある。それは、先ほどの倫理法とは関係ないが、何故報告しないといけないのかと、当事者が不安に思ってしまうことになる。産学連携の観点から、これはミッションなのかを含めて、本当に必要な報告なのか検討する必要がある。 |
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○ |
TLOで役員兼業をする場合に、守秘義務を結び、いろいろなことを知ることがあるが、この場合、兼業先で知り得たことは公務員の倫理規程が適用されるのか。 |
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△ |
倫理法で言っている秘密というのは、あくまでも国家公務員として行う職務にかかる秘密ということである。相手先企業の関係、兼業先企業の関係で知り得たことは、国公法あるいは倫理法令にいう秘密とは違うと思われる。 |
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○ |
こうした問題を議論するとき、最後まで詰めていくと、どこまでがリーガルで、どこまでがイリーガルかというところにいきついてしまう気がする。先ほどからの委員の指摘もそこが明確でないので、現場の人間としては、非常に不安を持ちながらやらざるを得ない。それで、事務局に相談すると、彼らは自分が安全になるように、非常に安全係数をかけたディシジョンをするので、我々にとって非常に動きにくいディシジョンメーキングになってしまう。その辺の不明確なところを晴らしていただきたい。結局、国民と大学の立場から見ると、利益相反というのは基本的にないと思われる。なぜかといえば、要は産業を起こして、それがみんなの生活の便利さに発展していくわけであり、その点では利益相反はないはずである。ところが、それを一段下げていって、会社と大学の先生、大学の中、大学と大学の先生同士というところに、だんだん落としていくと、細かい相反が出てくるということになるので、大局的な見地を必ずキープして決めていただきたい。そうでなければ、せっかく産業界と大学が連携をしなければならないという議論が押しつぶされてしまうことになるのではないかという気がするので、その辺に配慮してほしい。 |
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△ |
倫理法一つの法律で、すべてを規制するようなものではない。例えば、講演等の場合、報酬を得ていないかチェックするために、事前許可となっているが、104条関係の兼業の手続などチェックを受けているものについては、そもそも倫理法から外されている。倫理法令があって、それから、104条関係があり、103条関係があるというふうに法令上はなっているが、実際、利活用される方から見てどうなのかという意味で再編、整理する必要があろうかと思われる。 |
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◎ |
現行では、いろいろな法律や通知などでいろいろなことが決まっていたり、場合によれば、こうした委員会から出てきた報告書に則って、いろいろな判断が行われている。要するに、どこからどこまでが法律で、どこからどこまでが法律でないかという判断は非常に難しいところがあり、結局、それを判断する組織が今の大学にはない。教官が加わった組織というものが大学側にないということが、かなり大きい影響を与えていると思われる。どちらかといえば、事務に負っているが、事務も異動で人がどんどん移り変わるので、2年前の判断と2年後の判断で人が変わったために違っていたりするということもある。むしろ、大学側が教官を入れてマネージするようにしていかないと、非常に難しいのではないか。 |