○ |
資料1でルール整備の考え方の二つ目に、諸外国では利益相反ルールの作成は階層構造になっているとあるが、アメリカについては、NIHやNSFの規定はあくまでも彼らがお金を出すということに関する規定であって、何か連邦政府として上部のガイドラインがあり、それをベースに個々の大学がルールを作っているということではないと思われる。AAUなどのガイドラインはあくまでも各大学でルールを作るに当たっての参考とすべきものであるので、「階層構造」という言葉は、アメリカに関して使用しては誤解を与えるのではないか。
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△ |
その辺は、もう少し確認した上で整理したい。 |
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○ |
大学の教員の職務専念義務の職務というのは教育と研究だけなのか。それともプラスアルファがあるのか。もしあれば、職務専念義務の中でベンチャーのような仕事もできるのではないか。その辺の職務専念義務が何かというのは誰がいつ決めたのかということを教えていただきたい。
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○ |
おそらく、まず、大学としてあるルールを決めなければいけないと思われる。そのときに、研究・教育、さらにもう一つのミッションをやるというようなことが決まるかどうかは一つの大きな論点になると思う。残念ながら、今、それを議論する基準がないので、まずは、国家公務員としての国立大学の教員の、国家公務員法との関係において一体どこまで認められるのかということを一回整理しておく必要があると思われる。その上で、国家公務員法の職務専念義務に関しては、今、大学発ベンチャー1,000社が一つの政策課題になっているので、おそらくある例外を作って国立大学教員間の役員兼業を認めたという構造になっていたと思う。そうであれば、新しい大学のミッションを認めた上で従来あった基準を少し広げているという論理構成がとられていると考えられるので、今後おそらくそういうロジックを使った上で、一体大学として教員にどれだけの職務の範囲を求めるのか、また、それをどういうふうに雇用契約等で決めていくのかということをまず決めていくべきである。その上で、研究、教育に専念して、サード・ミッションをやらないという大学があってもいいと思う。その場合、先生がサード・ミッションをやろうとすると、そこに大きなコンフリクトが起こってくるので、むしろ、そういう大学をやめて、それを積極的にやることを標榜した大学に移っていくというような動きが出てくるのではないか。逆に、サード・ミッションなどはやらないで、ピュア・サイエンティフィック(学術的)なことをやりたいという先生がいれば、逆の動きがあってもいいのではないか。
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○ |
参考資料2のスライド4で指摘されているが、誰がこの企業へ特許の独占権を設定するのかということと、エクイティーをTLOが持っていったときにキャピタルゲインは誰のものかということについて、どういう解釈をしているのか。
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□ |
当TLO自身は財団法人のためエクイティーが持てない。そのため、インキュベーション会社を作り、株所有をさせている。そして、キャピタルゲインがあれば、株主に還元せず大学に還元するというルールをとりあえず作っている。どっちが独占権を決めるか決めないかについては、大学側が発明委員会で個人所有になった特許をTLOにライセンスする際に、発明者である先生方グループとこれをベンチャーにしたいがどう思うかというディスカッションを行う。ベンチャー用にするときには、ベンチャー用にすることを予定した譲渡契約を結ぶ。むしろ、大学の意思というよりも、TLOと先生方のディスカッションの結果で決めている。ディスカッションの中で、そんなものでベンチャーになるもは無理だから、売ったほうがいいという結論が出る場合もある。現状では、大学組織が関与しているのは発明委員会で個人所有になるかならないということを決める点だけである。
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○ |
そうであれば、独占権になるかどうかもディスカッションで決まるということか。
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□ |
そこで決まる。ベンチャーにするということはもうイコール独占権である。
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○ |
大学でいろいろ行った応用研究成果を基にしてベンチャーを育成することとは別に、既存企業のほうに技術移転するということがある。現状の日本の大学ではほとんどの応用研究成果をベンチャーで育成するよりも、既存企業に技術移転するほうが大半のように思われる。今日の課題とは少し違うが、その場合の利益相反についての見解を伺いたい。
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○ |
それは、今までの大学にあった、ある種の不透明なルールということがあった上での話をしているのか。つまり、日本の大学は民間企業、既存企業とほとんど没交渉であるというふうに言われているが、実は、いろいろな形で交渉をしている。その上で、例えば共同研究、受託研究、ないしは奨学寄附金等を受けるところを選んでいるのかどうかということが今の質問の趣旨か。
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○ |
そうである。 |
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○ |
そうであれば、我々はそこはきちんと切り分けて、TLOのほうで一応コントロールしている。ただし、きれいに切り分けられるかというと難しいところがある。共同研究の相手先であれば、それだけ活用の度合いが高いということがあるので、最初から完全に無視するというわけにはいかないということがある。我々としては、どういうルールでこの相手先が決まってきたかということは一生懸命チェックしようとしている。ただし、幸か不幸か、残念ながらそういう案件はあまりTLOにはこなくて、別ルートで流れている場合のほうが多いと思われる。これをどこまで変えていけるかということは、おそらくこれからのTLOの力量にもかかわってくると思われるし、大学全体でそういうことに対してどういう方針を決め、それをどういうふうに教員等に普及させていくかということが重要だと思われる。
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□ |
既存企業に関しては、当大学は産学連携の伝統的な大学であり、すべての特許は企業から出されており、その代わりに奨学寄附金の形で、各研究所の先生方に還元されていた。その辺のアンダーテーブル的なところをやめようということからTLOが生まれており、その意味ではかなりガラス張りになってきている。当大学では、300件ぐらい企業から年間出ていた特許が、現在かなり減って、200件ぐらい発明委員会にきて、TLOから100件ぐらいは出願しているという形に、この3年間でシフトしたと思われる。それで、対企業との交渉も変わったし、企業のほうも、当初TLOを毛嫌いしていたが、大分なれてきており、徐々に変わってきてはいる。
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◎ |
今の話では、発明委員会に出てくるのが200件で、うちTLOに100件ということは残りの100件は個人有になっているということか。 |
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□ |
特許になりにくいものとか、国有になってしまうものもあるし、共同特許扱いになっているものがある。完全な個人有ではなく、TLOとの共同特許になるものもある。大体3分の1がよく見えなくて、3分の2は見えるけど、そのうちの3分の1ぐらいを目途に特許化しており、特許にしない案件については先生方に残る場合もある。
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◎ |
残っても個人が特許にしたいと言えば、それは自由ではないか。
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□ |
それは自由であるが、あまり聞いたことはない。
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◎ |
いずれにしても、TLOが抱えているものが大部分であり、個人有になった特許がどこかで出されているということは特にはないということか。
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□ |
先ほどの3分の1は企業から出ているか、個人から出ているかはわからない。 |
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◎ |
先ほどの委員の質問というのは、そういう状況で利益相反があるかということだったのではないか。
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○ |
そうである。 |
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◎ |
そういう状況で、一応発明委員会を通過し、TLOが持っていれば、問題ないが、何かまだわけのわからないところで利益相反があるのではないかということである。
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○ |
それは発明された先生方等についてということか。 |
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◎ |
全般についてである。例えば企業に渡すということに関して、個人と関係企業との関係等において利益相反等があり得るか。
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○ |
それがあるのかないのかについては、我々はあえて問わないことにしている。そこを一々問うて、過去の、つまり、こういうシステムのなかった時代のことをあげつらってもしようがないと思っている。むしろ、これからTLOがきちっと動き出した時点以降、あえてそういうことがあるとすれば悲しいことであるが、あとはTLOがきちっと対応していくことができれば、当然皆さんがそれを評価して動いてきてくれるだろうと思う。当大学は伝統的に発明委員会に基本的にかけるということで動いてきているので、我々のほうが学内での評価を得ることができれば、おそらくこちらのルールで動く部分が随分増えてくるだろうと思われる。それから、かつては企業側もTLOについてこんなものができるのかということを言っていたが、我々のほうも大分苦労したり、経験を積んできて、ビジネスライクな対応ができるというふうに評価をしていただくような状態になっているので、まだ時間は少しかかるが、かなりTLOというものが評価されるようになってくると思う。 |
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□ |
TLOが特許を大企業にライセンシングして、ライセンス料が入ると、先生個人に3割ぐらいペイバックがある。大型技術になると、4社ぐらいと目的別の共同研究を行った上で、共有特許も含めてライセンスがまとめてなされていくケースが出てくる。これがもし製品化された場合、結構なまとまったロイヤリティー収入が先生の懐に入ることになる。このような自分の所有する特許を基にした共同研究をどのくらい熱心にやっていいのかということは、ベンチャー企業の経営をどこまで熱心にやっていいかということと全く同じである。やればやるほど自分の懐は豊かになるという構図が生まれることになる。そこのところをどうコントロールするかについては、大学によってまちまちであり、それを奨励する企業、大学があってもいいし、禁止する大学があってもいい。MITでは禁止しているが、逆に先生方が外部でのコンサルタント業ばかりをするようになったという弊害が出た。これは何が良いかは一概に言えないが、要は、大きなターゲットの中にある新産業が起きるか起きないかという軸に沿って大学が判断する問題である。結局、一生懸命やって技術開発すれば、必ず儲かるような仕組みになってしまう。それを是というか、非というかということが利益相反の問題だと思われる。
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○ |
参考資料2のスライド6に、「利益相反議論は慎重に検討すべき事項」、「ベンチャー企業指向の研究者の意欲をそぐ議論は留意すべき」と書いてあるが、その真意は利益相反の議論をどんどん進めて、むしろ、前向きにいくべきだということだと思われる。ただ、この資料の字面だけが読まれると、何でみんなでアクセルを踏んでいるときにブレーキを踏むんだと誤解されてしまうかもしれない。プレゼンテーションを拝聴していると、利益相反のガイドラインがない状況で属人的に一人で利益相反を判断、処理し、運営してきていると思う。利益相反の問題に造詣が深い個人の力量に何かすべてかかってきているのが現状のような気がする。ブレーキではない、アクセルの補助みたいなシステムを早く作るべきである。例えていうと、産学連携が馬に乗ることだとすれば、利益相反というのは手綱をつけることであり、手綱がないまま裸馬に乗ることは危険である。やはり手綱付きの馬に乗るべきであり、その手綱を早く作らなければならない。
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□ |
例えば大学国有特許の随意契約の問題にしても、ルールができてもなかなか組織が動かない。兼業承認もそうである。兼業の例でいうと、英文のレポートを出せ、いや、これは読めないから日本語にしてくれ、その論文とあなたのベンチャーとどういう関係があるのか、といったことについて大学の事務、文科省を通じて、人事院と何往復もやりとりして半年もかかってしまい、そのうちに先生方はみんな嫌になってしまう。兼業の承認にしても、急にベンチャーと言っても、大学の研究協力部の職員も、文科省の方も、人事院の方もみんな素人である。その上、ベンチャー設立に加えて専門的な技術内容の話につながっているので、二重の素人が案件を判断してくことになる。そのような組織的枠組みを前提にした上で利益相反ルールを作ったらどうなるのか。利益相反について全く知らない素人の事務の間で議論された日にはもうやるなと言っていることと同じである。そういうことを参考資料2のスライド6で述べている。要するに、世の中はかけ声とルールの明文化では動かない。事務に携わる人たちがどういう先生がどういうことをしているのかを理解しない限りは機能しない。そういうことまで配慮した上でルールということも言葉にしてほしい。
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○ |
たしか人事院から国立大学のほうに兼業の承認権限が移管されるのではないか。
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△ |
TLOと研究成果活用型の役員兼業について、人事院が承認権限を今年の10月から各省におろすことになっている。文科省のほうに委任されたら、再度、大学長に委任しようと考えている。手続でいうと、今実態として、学内で2、3カ月ぐらいかかっており、本省のほうで1週間、人事院で1カ月くらいかかっている。これが10月以降は基本的に大学に委任することになり、大学のほうには以前から学内の審査を1カ月以内にするようお願いしているので、これからは1カ月内という形まで一歩前進すると思われる。それと関連して言えば、先ほど委員の方から職務との関係について指摘があった。現在は、大学の教官は国家公務員であり、国民全体の奉仕者であるために職務として兼業できるものは極めて限定されている。これが法人化になれば、国家公務員法体系から離れて就業規則の定めになるので、各大学法人の判断で兼業がどこまでできるかについて今よりもずっと範囲を拡大することが可能になると思われる。その際に兼業の報酬についての話が当然出てくるが、これは相手方企業と大学法人との間の契約で一回組織に報酬を納める形にして、相当額をいくら払うかという大学組織内の問題になるのではないかと思われる。今現在の国公法の下での極めて限定された職務とその兼業を前提として議論されるのか、あるいは、16年4月を目途に進んでいる法人化後も視野に入れて議論されるのか、によって整理する必要がある。
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○ |
よく建築の設計事務所などで、一人事務所で有限会社を作り、それが何社か集まって協業組合を設立していることがある。今の事務局の説明から、その協業組合と同じケースが法人化後の大学にあてはまるのではないかと思われる。大学の中に一人ずつの教授の有限会社の事務所があるという考え方で整理することができないだろうか。要するに、事務所のレベルによって対応がみんな違うように、産学官連携に対する先生方の対応も、ベンチャーに出資する人もいれば、全くしない人もいるというように違うといった、一つの協業組合の形に整理できないか。
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□ |
あまりイメージがわかないが、大学においては教育がかなり大きいウエートを占めている。研究室にはドクターもいれば、マスターもおり、4年生のときから研究室所属でいるので、研究室内でビジネスに直結している部分はほんの一部である。そういう面ではなかなか有限会社の集合体というふうなイメージはとりにくいのではないか。先ほどの法人化の検討の中で議論しておいてほしいのは、大学法人が株を所有することができるのかできないのかということである。それによって法人の在り方は随分変わり、利益相反の在り方も変わってくる。大学とTLOとの関係で、両者が別法人であることによってものすごい違いが出てくる。同一法人がライセンスし、株を持つということと、別法人に一応なっているものが株を持ち、ライセンスするということとの間には大きな違いがあるということを念頭に置いて議論してほしい。
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○ |
我々の大学は私学であるので、法人化と何も関係がなく、先生方独自に自分の良心に基づいて学外活動を行っている。大学としては、先生方がちゃんとやっている限りは何の口出しもしないが、既に起こり得るかもしれないケースとして、その先生のベンチャーの取引相手からのクレームや交渉過程における法的な問題が出てくることが考えられる。そうなると、先ほど指摘があったように素人ばかりの対応では極めて危ないので、大学としては先生に弁護士を紹介するなどしてバックアップをしなければならないのではないか。これは利益相反とは関係するかわからないが、逆に大学がそこまで支援するのかということもあるかと思われる。現段階ではそのベンチャーの先生が自分で弁護士を探しに行けばいいのであるが、ほとんど経験がない場合には、法的な点での支援が必要になってくる。したがって、我々の大学としては、そのようなことが起こったときに、直ちに何らかのサポートができる体制をとることが現在の基本となっている。
私が関係しているTLOでは、既に二百数十件の特許申請をしているが、そのうち実施許諾ができているのは2、30%であり、あとの特許は消却したいという問題が起こっており、特許の取扱いについて検討を始めている。維持費が大変であり、キャッシュフローが行き詰まってしまう可能性もある。そうなった場合、具体的に先生方との間でどんな話し合いをしていくのかということがこれからの問題であり、喫緊の課題であることを述べておきたい。
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○ |
先ほどの指摘に事務員の話があった。これも先ほどから法人化すればすべてが変わるような議論があるが、それほど簡単にいかないので、今からきちんと対応しておく必要がある。特に大学は教員だけが勝手に動いても動くわけではなく、事務の人たちがちゃんと動かないと動けない。今までは研究・教育をきちんとやる、入学試験等を間違いなくやるということについて事務の方たちは大変努力してきたと思われるので、そうした人たちにそれと全く異なる業務に対応してくださいと言っても、これはなかなか難しいだろうと思われる。逆に言えば、専門的な業務を行う組織を作って、そこに来ていただき、その中を経験していただくことによって、なるほどこういう世界があるのかということを理解していただくということも必要であると思われる。大学としてそうした組織的な対応ができる訓練の場まで作っていくぐらいの意識がないと、おそらく動かないのではないか。実際に我々の大学でもある大型案件があり、そこでこういうことを先に知らせて株を買うとインサイダーになりますよという話を事務の方にすると、ああ、そうなのですか、我々は1週間ぐらい前から知っていたけど、誰にもばらしてもいけないのですねというような話が出てくるわけである。そういうことを通じて初めて今までと違う世界にある守秘義務の問題とかも理解できるようになる。大学が本当に取り組むのであれば、ビジネスライクに動くこと、守秘義務の問題、インサイダーの怖さなどが日常的に経験できる場を作っておくぐらいのことをやらなければ、おそらく法人化である日突然変わったからといって世の中が変わるはずはないと思う。
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△ |
文部科学省では来年度の概算要求に向けて知的財産本部という組織を全国の数十カ所の大学に整備することの支援のための予算措置を考えている。例えば、利益相反、あるいはエクイティーの扱いとか、法的な問題も含めて専門的にアドバイスができるような人間を外部から連れてきて、学内の事務職員あるいは教員の方への啓蒙普及、それから、知的財産ポリシーの確立、日頃のアドバイスという体制をぜひ作っていただきたいと考えている。これは法人化後をもちろんにらんでいるが、法人化前の段階で産学連携にかなり力を入れている大学については、そういう整備を国公私立を通じてやっていきたいというふうに考えている。
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○ |
実際に現場で利益相反をマネジメントするという場合、おそらく、例えば文科省のこの委員会で書かれたものを読んだだけでは皆さんは理解できないと思われる。例えば、ある一文で取締役になるときには注意を促すと書いても、ああ、そういうものかというふうに単純に思われるだけでは困る。その文の背景にいろいろなことがあることを一つ一つ皆さんに理解してもらわなければならない。確かに外部からのアドバイザーというのは必要であるが、別に外部からずっと張りついているわけにはいかないわけであり、現場では常にいろいろなことが起こっているので、当然自分で考えなければいけないことが多々出てくる。要するに、現場の人間に考えるということをやらせないと、なかなか実際にはうまく機能しないのではないかと思う。
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○ |
事務局への質問であるが、どういった方がその知的財産本部に派遣されるのか。本当にこの利益相反について深い造詣がある人を数十カ所の大学に派遣することができるのか。外部に何か人材がいるだろうというイメージであれば非常にこれは難しい問題ではないか。 |
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△ |
知的財産に関する専門家ということであれば、企業の知財部を経験されたような方に入ってきてもらうということがありえる。それから、利益相反の問題ということについては、確かにきちんと理解している方は少ないだろうから、アドバイザーとして入ってもらうということになるのではないかと思われる。いずれにせよ、鶏が先か卵が先かの話であり、大学にまずそういう体制を作って、できるだけ民間の知識や有識者の知識を取り入れて意識を変えてもらうということをこの事業のねらいとして考えている。アドバイザーと申し上げたのは、非常勤として来ていただく方もいれば、完全に中に張りついて、知的財産についてのポリシー作りに専念してもらうような常勤的非常勤として数年間契約で来てもらう方も想定している。 |
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○ |
公共事業を民間の効率性を使って推進していくというPFIというものを今、政府のほうで進めているが、その一つの先進例として、イギリスの地方公共団体で行われているPFI事業がある。各地方公共団体は、事業としての効率性を考える企業センスや公益性とのバランスをとるための契約内容などについては素人であり個別個別にどうすればいいかがわからない。各地方公共団体にプロを派遣すると、とんでもない数の専門家が必要になるため、その解決策として各地方公共団体が出資して「フォーピース」という団体を作った。その団体に各地方の例をテンプレートとして集めた事例集みたいなデータベースを設け、各地方の人たちがそれを見られるようにして、そこの専門家が個別に今月はこの地方公共団体のこの事例を指導するということをしている。各数十か所に送るような人材をそろえたり、一か所の時間割当の都合をつけたりするといった苦労はあると思われるが、そうした形で一か所にある程度事例を集めて、そこに集めた専門家を各地の事例に応じて派遣するというモデルが、先ほどの外部人材の派遣の話について参考になるのではないか。
産学連携を進める上で、細かいチェックリストを作るというようなルールを作ることよりも、そのプロセスやシステムのガイドラインを示すほうがいいのではないか。例えば、企業買収のM&Aの契約の際にどういう手続をとるかというと、まず、基本方針を決めて、レター・オブ・インテントという基本合意をまず結ぶ。これは細かいことは何にも決めず、ただ、どういう情報開示を原則としてやるのかとか、どういうところの権利関係、リターンは原則どういうルールでやるのか、何か困ったときが起きたときにはどういうふうにして協議をするのかといった、方法について基本合意をまず決めて、それから、何か個別の問題が起きてきたときにはコントラクトという、ものすごく分厚い契約書を結ぶことにしている。そうした段階的な形で大学の産学連携を考えてみると、大学の基本方針があって、それを基にして先生と大学又は別の主体が基本合意のようなものを結び、その基本合意が、お墨つきというか認証となり、それで何かがあったときにはこうするようにという手順を決めるようなやり方があり得るのではないか。 |
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○ |
国立大学とそこの先生との間の雇用関係が明確でないと思われる。国が雇っているのか、その大学が雇っているのか明確でない。これから法人になった場合、法人の理事長と大学の教授との間の雇用関係が成立するということになると、問題の大半は、個人の雇用契約の中で解決できるのではないか。国家公務員の場合、そうした雇用関係がないので、国際共同研究で知財権を分配するときに混乱が起きている。特殊法人での経験では、その特殊法人の研究者については雇用に際して雇用契約を結び、契約の中で知財権の取扱いについての大まかなルールを明確に決めていた。そういう概念を契約ではっきり示せば、利益相反問題は、一人の教授対大学との関係においては解決するのではないか。あとの問題はそれを社会的にどう認知させるかというシステムの問題に移るのではないかと思う。 |
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○ |
プレゼンテーションの中にあったように、責務相反が法人化後の大学のミッションが何かというところにかかわってくると思われる。今の指摘に関連して、大学のミッションが社会との関係でいうと、一体どのレベルで決められるのかということが非常に重要だと思われる。法律でミッションを定めると事実上変えることが難しく、例えばもしミッションが教育・研究だけだということであれば、結局今と同じように、大学の職務の外としての兼業という形で対応せざるを得なくなると思われる。あるいは現在の研究機関法人のように社会サービスを含むような形で職務が書かれれば、その中でどのように対応するかということについては中期計画レベルでその大学の中で定めて対応していけばいいということになると思われる。そのあたりは、まだ法人化の議論が進んでいる段階で明確ではないとは思われるが、責務相反に関しては一応ここを気をつけておくべきだと思う。 |
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○ |
先ほどの委員の発言について、大変恐縮であるが、私は違った考え方をしている。雇用契約を結ぶと権利義務の関係になる。つまり、当事者双方にどういう権利があり、どういう義務があるということになり、簡単に言えば、これはやってはいけない、あるいはこれをやりなさいという世界になる。もちろん、例えば大学に黙ってエクイティーをもらってはいけない、黙って何百万円以上もらってはいけないということは契約で書ける部分もある。ただ、それですべてが解決するということはまずなく、むしろ、解決しないところに利益相反のシステムや利益相反委員会といったものが機能すると思われる。例えば具体的には、利益相反のルールの中によくあるが、配偶者や子供がどういった利益を民間企業から得ているのか開示しなさいということがあるとする。その内容は、普通は雇用契約には書けない。書いたとしても、開示してどうするかというところまでは、これはまた書けない世界である。そういう権利義務の世界、あるいはルールの世界と、利益相反を解決するシステムの問題とは次元が違うのではないか。 |
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○ |
お言葉を返すようだが、なぜ利益相反に関連して、家族のことまで開示をしなければならないということになるのか。むしろ、今の場合は、利益相反よりもプライバシーをどこまで開示するかということとの関連のほうが大きくなってくるのではないか。私は、職務分担として明確に雇用契約の中ではっきりしていれば、かなりの問題は解決できるのではないかという意味で述べたのであり、すべて解決できるというふうには思ってはいない。なぜならば、雇用契約は外にプライバシーの関係上開示すべき問題ではなく、例えば私個人とA社との間の雇用関係は何らかの形で開示する必然性はないことになるからである。ただ、それが公の場合に必要になるとき、どこまでそれを開示することができるかという議論になるので、社会的なシステムとしてどうやってその関係を認めればいいのかということだと思う。 |
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○ |
前々回のプレゼンテーションで、利益相反というのは、アカデミアのボスと産業界のボスが二つあり、そことの間のコンフリクトの問題で常時起こる話であるという説明があったと思うが、まさしく利益相反はそこだと思う。そうであれば、雇用契約ですべてを表現することは無理である。例えば、技術移転が行われた会社と先生との間に共同研究が行われた場合どうなるか、それで、その企業側の開発に研究室の学生を送り込んだらどうなるか、あるいはそこで守秘義務契約が交わされたらどうなるかといった、いろんな問題があり、それがアメリカではいろいろなトラブルを生んでいる。学生が守秘義務契約を交わしたがために、そこの会社のケースメソッドが授業に出た場合、100%答えることができるが、守秘義務があるから答えないと学生が言ったのがアカマイ事件である。そうした事例を雇用契約で全部定義して書くというのは、もう絶対不可能であるので、常時起こることとしてポリシー(方針)を決めておき、常にジャッジメント(判断)しなければいけないものだと思う。おそらく雇用契約の中で明文化して、解決できる問題もあるとは思われるが、そこでは解決できない想定外の問題がどんどん出てくるであろうというのが私の意見である。
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○ |
参考資料1のベンチャーの図の中に描いていたが、設立のときに3Fということで、Founder、Family、Friendsという概念がある。例えばダブルインカムの奥さんが主人のベンチャー設立のためにお金を出すということが当然あり得るのがベンチャーの世界である。先ほど委員から指摘があったプライバシーの問題では済まないのが、先ほどから言っているベンチャーの特異性である。Founderとしての先生だけの話であれば、先ほど言われた権利義務でがちがちにすることはかなり可能であると思われるが、逆に言えば、こうしたベンチャーの世界へ入っていきにくくなってしまう。この特殊性がどうも日本の方たちにはよく理解していただいてないのではないか。3Fと書かれてしまったときに、例えば、そのときにお子さんが入ったらどうするのか、小学生だったら駄目なのか、お金をアルバイトで稼ぎましたということもあり得るのかという世界が広がってくる。そういうところまで雇用契約ではおそらく規律はできないと思われる。
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○ |
プライバシーの問題に関連して、雇用契約でもそうであるが、多分利益相反のルールができても、研究者に対して、プライバシーを開示しなさい、これは義務です、開示しなかったら首にしますよということは絶対あり得ない話である。利益相反というのはそうしたことではなく、プライバシーだということはわかっているが、あなたがXという企業から幾らお金をもらったかということを開示してくれれば、それについて大学の中で議論して、それが問題がないことについてみんなで検証してあげますよということだと思われる。つまり、開示したくなければしなくてもいいが、そのかわりに、そのことについてマスコミに問題点を捕まれてスクープされて社会から袋だたきになるという場合に大学としては関知しないということになる。大学はあなたにはチャンスを与えた、プライバシーであるが、それを開示すればみんなで考えて適正な道を探すということはできた、ところが、あなたはそれを自分で拒否した、だから、もう責任は自分で負いなさいという世界だと思う。絶対そのプライバシーを開示しなさいという義務ではなく、開示すればこういうメリットがあるという話にしておくべきだと思われる。そういう意味で、プライバシーの問題は解決できると考える。
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□ |
大学からベンチャーを作るとき、3Fという作り方になるのは、研究者とファウンダーが一緒であり、かつ、研究者が経営者になるという場合である。あまり3F的に大学発ベンチャーができていくと、参考資料2のスライド3にある曖昧模糊型ができてしまうのではないかという気がして心配である。私としては、ベンチャーキャピタルの頭出し、コンサルタントといった今から利害関係を持つであろう人間の集団だけに絞らせていただき、1年以内に大型のファンディングをベンチャーキャピタルから受けて、事業の本格的稼働開始をするというふうなやり方をイメージしている。大学の先生はやめないで自分の弟子などが企業をやめて起業家となり、大学の先生をやめないまま起こすという大学発ベンチャーがかなりの部分を占めると思われる。そのため、兼業という問題が出てくると思う。その場合の作り方として、プライベートなカンパニーではなく、最初からパブリックなカンパニーに近いものを作っていくという考え方をきちんと確立していく必要がある。
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○ |
プライバシーの問題に戻るが、ベンチャーに限らず、プライバシーの問題、家族の利益という問題はどうしても絡んでくると思われる。それをどうマネージしていくか、あるいはマネージしないのかというのは大学の方針としてあると思われる。それから、情報公開法と個人情報保護法との関係でどうするかというスタンスも大学のほうで決めておかなければいけない。それについてここで議論できるかどうかわからないが、留意点として書いておいたほうがいいのではないか。
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○ |
ただいまのプライベートの問題・公的な問題の大本には、私自身の考え方としては、大学あるいは大学人というものがその基底部分を国民の税金で支えられているということが暗黙の了解としてあると思われる。その暗黙の部分に関してのすべてをルール化するということは難しいというのが、先ほどからの委員の意見だったと思う。、私はそれに賛成である。大学あるいは大学人というのは、その暗黙のうちに国民と契約しているというところがある。それが職務として教育・研究という一つの身分だけであれば良かったが、ビジネスというもう一つの身分を大学の教員が持つことになり、たまたまそのもう一つの身分から何かプライベートな利益が生まれてきた場合、それを暗黙の契約者である国民にどういうふうに説明するかということが必要となるために、その基本的な考え方としてガイドラインが必要になるということになると思われる。
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○ |
大学としての研究・教育にプラスして社会貢献というサードミッションについてであるが、例えば大学で社会貢献というときに、大学を動かすには大学の規定があると思うが、大学規則に社会貢献という項目をどう盛られて、それに附属する教員の倫理をどう盛られているか、その先行事例があれば教えていただきたい。また、プレゼンの中で社会貢献の具体例として産学連携でベンチャーを起業するときの理想型は大学が株を保有することであるが、実際には難しいので、インキュベーション会社を作って、そこで得たエクイティーを50%大学に還流するという方式を採用したということであった。今後、日本で大学発ベンチャーを進めていくと、そういう方向になるのかということについて考えをお聞きしたい。
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○ |
今の先行事例についての質問であるが、残念ながら、当大学でも全学を網羅するようなルールができているかと言われればまだできていない。我々としては、むしろ、共同研究センターを一つの大きな先行研究の場所として位置づけている。ここに属する開発研究担当の10人の先生方は、自発的に手を挙げて開発研究を専門にやりたいということで集まっており、社会貢献の担い手として、教育の義務を免除している。それはどういう意味かというと、ドクターの教育をもしやらなければいけないという状態になれば、ドクターの発表について守秘義務を課すということになり問題になるので、それを避けるためにしたということである。ポスドクなど既に教育を終えた人たちに外側からのニーズをどう解くかという研究・教育をしてもらっている。それから、リエゾン部門としてかなり大きな部門をとり、ここでいろいろなことに対応し、実験をしていくことにしている。さらに、事務の人たちにもかなり入ってきていただき、その人たちに守秘義務や対ビジネスの関係をどうするのかということについて実験をしてもらうことも検討しており、ここで得られた成果をどういうふうに今後全学的に生かしていくのかというようなことを今考えている。ここの先生方は常に厳しい外部からの評価を受けており、この研究は産業化という面から見るとあまり大きな意味を持たないかもしれないという先生にはお戻りいただくという実験を今行っている。そういう意味で、この実験からどういう成果が得られ、それを全学的にどこまで広げられるかということが次のステップだろうと考えている。 |
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□ |
実は、インキュベーション会社を設立したのは苦肉の策でしかなく、これが大勢になるとはとても思えない。法人化後の大学が株所有できるようになるかどうかもわからず、法人化するのが2年後では間に合わないため、とりあえず先行的にやらざるを得なかったというのが実状である。当初、大学があり、株所有ができない財団法人のTLOがあり、インキュベーション会社があって、ベンチャー企業があるという図式を考えており、直列にエクスクルーシブライセンス(独占的実施権)があり、その最後のインキュベーション会社がベンチャーの株を持って、ライセンスをし、今度はベンチャーが上場したときにそのキャピタルゲインを逆に還元していくというふうにしようと思っていたが、税法とTLO法の両方の問題でだめになった。結局、最後の結論の真ん中を飛ばして、インキュベーション会社が儲かったら大学に寄附するというところだけを直列にしたということになった。
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私がお伺いしたかったのは、公益法人ではどうせ株を持てないから、法人化後の大学もそれに近いものになるという予測をあらかじめ立てられて、それで、株式会社を作らざるを得ないという先読みをされたのかということである。
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そうなるかもしれないが、ベンチャーがもうすぐにできようとしていたので、間に合わなかったということがある。
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法人化後の株式保有の話についてであるが、いろいろ側面があり、一つは、いわゆる子会社に出資するような形での出資については、例えばTLO、外に置いたTLOにその出資ができるようにしたらどうかとか、あるいはインキュベーターみたいなものについてどうかということについての検討を昨年12月のこの会議の親委員会で議論していただいた。それから、直接大学が個別のベンチャーに対して株を保有するかどうかということについては、おそらく意見が二つに分かれている。直接公立の大学が大学発ベンチャーに対して出資するということについては、アメリカのある大学での失敗例とかもあるようでして、難しいのではないかという議論が昨年の委員会の議論でもあった。ただ、いわゆる大学内TLOを置いて、ロイヤリティー収入のかわりにエクイティーの形で受け取るということぐらいは一応何らかの形で道を開いてはどうかと考えており、それがどこまでできるかということについては、全体の株式をどこまで持てるかということと関係があるので、現在検討中である。
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利益相反ということではないが、今、株式の話がずっと出ているが、アメリカの大学も、大学が株式を持ったときにだれがそれを換金するのか、いつ換金するのかというのは大問題になっている。去年換金しておけば10倍だったということで責任問題にまでなっている大学もあるという実態がある。これは利益相反ではないが、必ずこうした問題は出るということで、アメリカのそうした悪い例も見習っておいたほうがよいのではないか。
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州立大学もそうか。 |
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そうである。州立大学でもそれは大問題になっている。要するに株式のプロがいないためである。 |
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州立大学は株を持てるということか。 |
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○ |
それは州法で持てるケースもあれば持てないケースもある。 |