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科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会

2002年10月15日 議事録
科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会知的財産ワーキング・グループ(第8回)議事録

科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会知的財産ワーキング・グループ
(第8回)議事録

1. 日   時: 平成14年10月15日(火)14:00〜16:00

2. 場   所: 虎ノ門パストラル   マグノリア

3. 出席者:    
    委   員: 伊藤(主査)、牛久、澤井、清水(勇)、清水(啓)、隅藏、長井、新原、牧野、吉田
    事務局: 坂田審議官、加藤研究環境・産業連携課長、小山技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐、杉江研究環境・産業連携課専門官   ほか

4. 議   題    
        ワーキング・グループ報告書骨子案について
           ・資料1に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。
            その内容は以下のとおり。
 
    (◎・・・主査   ○・・・委員   □・・・オブザーバー   △・・・事務局)

   ◎    本日新しく記述されたところを中心にまず議論をしていきたい。「はじめに」の部分が今回全く新しいということで、最初にまず「はじめに」の部分の議論をしてから、「3.大学のポリシーに基づく研究成果の組織的管理・育成・活用推進のあり方」を議論させていただき、残りの時間で1.、2.に戻りたいと思うがよろしいか。

   全体に非常にバランスがとれていい内容になっていると思うが、問題はまさに3.のところに書かれている知を財産にしていくためのポリシーであり、結局そのポリシーを実行していくためには資源が要るわけである。書かれていることは極めて大事であるが、きちんと予算がつくのか。知識を財産にするという仕組みはまだまだインファントインダストリー(幼稚産業)であり、公的なところがサポートしてやらないとなかなか動かない。永久にインファントインダストリーでいるわけにはいかないわけであり、その中間的なところにTLOが位置づけられるのかもしれないが、そうしたことを見据えたところもあったほうがいいのではないか。欧米の技術系の大学は特に知的財産権で資金を回収して、研究費に回していくということをしているが、将来そうした仕組みへ日本の大学を持っていけるかどうかという見通しみたいなのがもう少しあったほうがいいのではないか。将来的には、国公私関係なく、研究の成果がぐるぐる回って、いずれ知的財産権が研究を支えるようになるというメカニズムにするといったところまで書いたほうがいいと思う。

   「はじめに」のところだけに限って言えば、あくまでもこれは大学側の整備体制の整備ということで書かれているが、これを利用する企業側にも問題はあると思う。企業の外国大学に対する対処の仕方と国内大学に対する対処の仕方には大分温度差があるように思われるので、それについても一言記述しておいたほうがいい。オールジャパンで新しいパラダイム・シフトをするということでなければ、実際にいろいろな障害が出てくるので、企業側の理解も深めてほしいということをこの時点で書いたほうがよろしいのではないか。

   「3.3.研究成果の組織的管理・育成・活用推進に向けた体制の整備」の中にある、23ページ上段の、大学の教職員という人たちが研究成果を特許化に対する意識を向上させるように働きかけるという部分があり、あと27ページ上段のところで「教職員や学生に対するこの面での意識の啓発活動への支援も必要である」としている。「も必要である」という形はつけ足し的に書いてあるように思われる。企業で知財担当をしているときに活動を一番よくやっていくためには、結局、発明者とそれを扱う知財部の人との人間関係が大事であり、それがあるからこそ発明者は知財部の人によく相談することができ、相談された人は相談された技術内容を理解するとともに、特許を出すべきかどうかという価値判断ができる。今回の場合は大学教職員は発明ということと関連がない研究をしており、それを今度届け出をして、特許化できるものを特許化できるように相談しなさいという、ある意味での意識改革を必要としている。そのためには発明者、ここでいえば大学の教職員に対する意識改革をするための働きかけが非常に問題となる。いろいろ組織を作って、人もできて、やる担当者も育てて、ポリシーも作り、形としては環境は十分できているとしても、それを実際に活動していくためには何が大事かといえば、やる当人同士の人間関係の醸成である。出発点として、そこの意識改革をさせるというところに力点が必要なのではないか。そのことについての報告書が「も」とか「その他」で、1、2行程度しか触れているだけでは、少し足りないと思われる。その部分についてはぜひ入れていただきたい。それがないといくら文科省でこうした立派な報告書を出しても、実際に活動するときの根源はそこからスタートするので、そこのところの働きかけが文科省としても非常に大事だと考えているということを強調していただければ、そこの活動が非常にスムーズに動くんじゃないかと思って、あえてこの紙をもう1回配ってもらったのはそういう意味です。趣旨はそれだけのことでして、その部分についてこの中に入れるか、項を設けていうのかわかりませんが、強調していただきたいということだけです。

   若干は書いてあるんですけれども、ポリシーの中で、会社でいいますと営業部門の記述が少ないわけです。結局、大学で研究した人は知を論文の形にしてみんなやめちゃうわけです。それを財産にするのは事実上は企業になるわけですが、それを営業しないといけないわけです。活用推進というのが後で少し出てきますけれども、営業ポリシーがほとんど書かれてないというのは問題かと思います。普通の会社ですと営業担当者にどういうインセンティブ(誘因)を与えるとかいうのは非常に重要で、歩合制とかですね。だから、営業担当者にもリターンが来るようにするとか、そんなふうな仕組みをみんな持っているわけで、その辺もうちょっとつけ加えたほうがいいかなという気もするんです。

   今のご発言とちょっと関係してくるのかもしれませんけれども、非常にわかりやすく言葉になって非常にいいんじゃないかと思うんですが、知的財産本部というのは3.の1を見ますと具体的にハードとして考えられている。そこでやることは研究成果の組織的な管理・育成・活用となっているわけです。多分皆さんのご疑問も、育成というとインキュベーション(孵化、転じて起業支援)、ビジネス、サポート、そういうものも含むのか。言葉は育成・活用なんですが、育成・活用の中身を少しかみ砕いて、それが知的財産保護の機能だということにしてもらうと今ご指摘があったような問題にも対応できるのじゃないかという気がします。みんな心配していますのは、知的財産本部というのが挙がっていて、これはどこまでカバーすることなのか。文面を読んでいきますと育成という言葉がさんざん出てきます。インキュベーション、スタートアップ支援とか、そういうところを含んでいくのか。それとも、従来大学には研究協力課というのもありますね。その辺との関係と知的財産本部の中身と具体的な機能、どんな機能を持たせるのか、それは既存のものとどう絡んでいくのか。それと兼ね合わせて育成・活用という言葉を説明していただくと非常にわかりやすくなるような感じがしております。

   ほとんど同じような意見になるかもしれませんけれども、実際に大学のTLO事業をやってみると、ある意味で企業の方々の誤解がかなりあるように感じられるんです。TLOをやっても会社の経験からいって成功するはずないよという比較的冷めた目のほとんどの批判は先ほどの委員がおっしゃった、要するにこれがビジネスとして成り立つような話、少なくとも特許のファイリングとライセンシングだけ切り取ってみると、キャッシュフローからいってもビジネスとして成り立つようなものではなくて、もう少しある意味では大学が第三の使命として新産業創生に貢献するとしたらなくてはならない、どちらかというとサービスモデルに近い形でないと成り立たない。そうすると、研究者との信頼関係を構築するためには、それに必要な人数もそろえなきゃならない。そういうことをやるとある程度のビジネスマインドがないといけないとすれば、リエゾン活動というのをパッケージにしたり、あるいはもしTLOの財政的なポテンシャルを画期的に向上させようとしたら、スタートアップまで手がけなければほとんどそのポテンシャルを上げる要因は出てこない。こういう自然の流れがある。ですから、その辺の連結を書かない限り、ここだけ切り取った話になってしまうと非常に薄っぺらなものになってしまうんじゃないかという危惧が1つあります。それと逆に、これは実感として感じているんですが、TLO業務がだんだん進んでいきますと、ある意味で外国特許の出願とか、そういう場面が出てきます。あるいはスタートアップに関与しなきゃならない。これは性善説だけでいけばすべていいんですが、外国での係争に巻き込まれた場合に、今私たちがTLOを頑張ってもせいぜいキャッシュフローは数億だというと、こんなものは一遍で飛んじゃう話がある。あるいは企業のそれぞれの特許戦略というのは自分のところの実施機関ですから、いろいろな手は打てますけれども、不実施機関であると打つ手はほとんど限られちゃう。こういうこともありまして、特にスタートアップなんかをやりますと、必ずしも善意の人だけじゃなくて、悪意で大学のブランドを使う方も出てきます。実際にそういうことに対応する危機管理もきっちりできていないといけないという、そういう場面にそろそろ出くわしてきていますので、ある意味で負の部分にも大学は毅然と対応できるようにしなきゃいけないということです。危機管理なんでしょうけれども、こういう新しいものを持ち込んだ際、必ず出てくる場面なので、一言どこかに書いておいてほしい。その場合に一番大事なのは、大学がやれるのは人間関係、人と人との信頼関係をとにかく大事にするということを少し強調していただけると。「目利き」人材とか、そういうのはいいのですけれども、そういうのが忽然とあらわれるということはまずなくて、できるのは汗をかくことだけだという実感があるものですから。そういうところを、特に危機管理の項は1項入れておいていただいたほうがいいんじゃないかと思うんです。

   知的財産といったとき、知的のほうは大学は得意ですけれども、財産というのは「売れてなんぼ」の世界なわけですね。そういう立場を書いておいていただいたほうがいいと思うんです。というのは、研究したらそれは必ず売れるものという前提で書かれているようなところが多いような気がするわけで、また先ほどの委員がおっしゃったように、裁判なんかになると今度TLO自身が破綻することもあるわけです。そうすると、今、銀行で議論されているけれども、公的資金導入をいかにするかとか、あるいは保険とか、貿易関係ですと新貿易保険とか、信用保険とか、そういうのがみんなついているわけですよね。だからこの段階で必要かどうかわかりませんけれども、いずれ大学に対しても、全面的に政府が関与している間は要らなかったけれども、これから法人になっていって、しかもTLOのような民間とのすき間にできるようなものになってくると、そういう保証システムとか、そういうのをここでやるのが適当かどうかはご判断していただければいいと思うんですが。そう思います。

   すみません。先ほどあまりよくまとまってなかったんですが、先ほどの委員の前半のご議論と全く同じなのですが、どうもこの仕事をやってみますと、従来研究成果があって、特許化をして、それから技術移転をしてという、言ってみればシーケンシャル(連続的)なプロセスと。要するに研究からビジネスまで、どうも時系列的な動きじゃないかという理解が一部にあると思うんです。ただ、実際やっていくと実はそうじゃなくて、その過程で特許の戦略等、どこと組むか、どうやって公的資金を入れるか、共同研究をどうするか、実はこういういろんなものが複合的に絡んでいって、それで初めて実業界に達するということだと思うんです。どうも前提をシーケンシャルでとらえているのが今世の中の常だと思うんですが、そうなりますと今文科省が打ち上げられた知的財産本部も、知的財産本部があって、あとインキュベーションというシステムが別にある。そういう理解を実はいろんなところで聞いております。ただ実際、こういう仕事に携わってきた立場からするとそうではなくて、たまたま知的財産本部という言葉を使っていますが、まさにここに書いてあるように、研究から実際のビジネス、企業も含むわけですが、そこまで一気通貫に扱うファンクションを持っているのが知的財産本部ではないか。ただ、ネーミング上、TLOとかいろいろありますので、知的財産本部という言葉を使われたのかもしれませんが、正直言って、企業の知的財産本部と我々がここで期待している大学の知的財産本部とは全然ファンクションが違うと思っています。大学の知的財産本部というのは企業よりもずっと広い、要するにビジネスまでつながる、複合するものをいかに戦略的に組み合わせて進むか。そういう役割になっている。そういう期待を持っております。多分この文章も、先ほど申し上げましたように、育成・活用ということをすごく強調されていますので、そこまで含んでいると思います。ただ、世の中では知的財産本部といいますと、企業の特許部をイメージされてしまいまして、特許部と全然違ってもっと広い、研究のインキュベーションもビジネスのインキュベーションもいろんな複合する要素をかみ合わせて戦略的に進めるところというニュアンスで、定義づけなり説明を入れていただけると非常にいい報告になっていくんじゃないかと思います。

   今の委員のご意見に大賛成なんですが、その前に、メールで先に送っていただいたんですけれども、今回かなり詳しく読ませていただきました。全体的に非常にうまくまとまりつつあるかなと私は感じています。それで、今おっしゃったことに関して、または先ほどの委員がおっしゃったことにもある程度関係していると思うんですが、例えば知的財産本部というその中身なんですけれども、例えば先ほどいただいた資料の23ページの第2フレーズですか、第3になるんですか、「学内外におけるこれらの要請に的確に対応するためには」ということで、いろんな活動をするということが書いてあるわけですけれども、今、大学で知的財産本部というのを設けてやる中身というのは、これを全部やることが必要であって、そういうふうに多分計画されているんじゃないかと私自身は理解しているんですが、いかがなのでしょうか。それと、それに関連しまして資料の6ページをごらんいただきたいんですけれども、6ページの下から3つ目のフレーズの「制度面でも、最近5年間だけで」と、いろんなことが試みられてきたということで、それの2行目に「承認TLOによる国有施設の無償使用」というのがありますが、これはどういう形で進められてきているのか私はよく理解してないのですけれども、私の経験を1つ紹介させていただきます。数年前、韓国が経済破綻しました。その後、韓国で1年以内に数千社というベンチャーが立ち上がった。これは大学から立ち上がりました。それの一番大きな動機づけというのは、大学の施設を大学の人たちが企業の、自分のベンチャーのために自由に使えるというのが許されるようになったというのが、一番大きなきっかけだったと私自身は聞いております。そういう面で今回後ろのほうでも、そういうことが可能なのかどうかよくわからないんですけれども、そういうのがもし可能になるとしますと、我々が大学にいながらベンチャーをつくっていくためには非常に役立つんじゃないかと思うのですが、その辺はまだ認められてない中身なのでしょうか。いかがなんでしょう。

   それと関連しまして、多くのところに書かれていて共通することですけれども、それを大学の判断にゆだねるというのはあちこちに書かれていて、いろんなのができるというふうになっているのですけれども、できるだけではなかなかやってくれないのです、大学というのは。だから、こういうふうにやるような方向で判断を。そういうふうな形で今おっしゃった点もぜひ書いてほしいなということです。

   今私が申し上げたのは、法人化だったら大学自体できるわけですから、できるということなんですね。

   そうなんです。ただ、大学の判断にゆだねると書かれておるのが多いんです。そうじゃなくて、やるように判断してくれというふうに。

   そうしましたら、むしろ積極的にそういうことをやってというような記述を入れていただけるといいのじゃないかなという気がします。

   まず、今の委員のご質問の2つなんですけれども、6ページのところのお話で、承認TLOが国有施設を無償で使えるようになっております。だから、私どものところでは我々の建物の中でTLOが手続をして、そこに住めるということです。国有財産を株式会社が使える形になっています。それから、先ほどのもう1つはその段落の最後のところにありますけれども、大学の研究成果に基づくベンチャー企業による国有施設の使用の許可というのができるように今年からなったと思いますけれども、事務据君にご説明をお願いします。

   2点ご質問いただいたんですが、1点目のTLOの国立大学施設の無償使用ですけれども、今、主査におっしゃっていただいたんですが、平成12年に産業技術力強化法というのが改正されまして、国立大学に無償で入ることができるという措置はとっております。もう1点なんですが、大学の研究成果に基づくベンチャー企業の国有施設の使用、これは今年の6月から可能になっております。我々のほうも周知を図っておりまして、最近1件出てきたという事例がありますので、またこれから増えていくのかなと思っています。

   実は我々の周りで、今ベンチャーを立ち上げようかということを企画し始めておるんですけれども、この件を知らなかったものですから。これが非常に大きな問題になっていまして、こういうことが許可されているという話であれば非常に大きな助けになると思います。

   先ほどの問題ですけれども、TLOと先ほどの知財本部というのはまだ漠としておるのです。それからこれまでの各大学が大学側としてやってきている産学連携の活動、あるいは契約、要するに事務部としての契約課とか、特許の発明委員会を初めとする特許の問題というのと、それからTLOの問題です。きょうここにはTLO関係の先生方がお2人おいでですけれども、たまたまそのお2人は1大学のTLOという形のTLOにいらっしゃいます。多分、現在の日本にありますTLOは個別大学のTLOのほうが特異といいますか、少ないのです。ほとんどが複数大学にまたがっているTLOという形で、その場合の知財の一体管理というのは、先ほどの「売れてなんぼ」という話になると、最後の出口のところもかなり簡単にカウントができるといいますか、外で見て数字にあらわれてしまう部分になりますので、そういう形から知財本部の活躍を見たときに、どうしてもそこが見やすい数値なのかなと思われがちになるんじゃないかと思うんです。けれども、そこのところと現在の日本特有のTLOのあり方というのがどういうふうにほんとうにリンクしていくかというのが、現実にシステム設計をするとかなり難しい面が今あるように思っています、実際に。ですから、ここにも他大学のTLOについてということが幾つか書かれていますけれども、具体的に知財本部全体の中での動かし方というのが、先ほどいろんな設計を大学に任せているというお話がありましたけれども、それぞれの大学が試行錯誤をこれからしながら、その形を見出していくプロセスがどうしてもある時間必要なんじゃないか。それから、会社の知財の管理の仕方と大学の管理の仕方はかなり違うといいますか、例えば日本ですとすぐ工学部と理学部というのが非常に分かれて、どうしてもこういう話になって、私どもの大学でも理学部の先生方の寄与はあまり大きくないんですけれども、本来なら理学部的なもっと基礎的なところでの知財の確保というのが日本にとってはほんとうに必要で、そのほうがはるかに長い権利期間を持ちますけれども、逆に言えばそれがわかるまでに時間がかかるといいますか、そういうものをどうやって知財本部が落さずに拾い出していくかというのが難しいなと思うのです。その辺の基礎的な面の、これまでのご実績からいってあしたもうかる話はだれにもわかると思うんですけれども、何年か先に大きく花開いたような成果はどうやって大学で確保していったらいかというコメントは知財本部に重要じゃないかと思うのですが。いかがでしょうか、委員の方。

   私にその答えがわかっているのであれば、それを飯の種にして仕事をやったんじゃないかと思います。今いろんな議論を聞いていて、この委員会に最初から出席したときから非常に本質的な問題だし、難しいなと思ったのは、組織と個人というものをどういうふうに整理していくかということです。基本的にはこれは組織でやりますという前提でいろんなことを書かれていますと。そのときに組織というものの中に、先ほどの委員がおっしゃったように知的財産、企業の中では知的財産管理をいろいろやっている部署として知財部というのがあります。一方、ビジネスをやる部隊としていわゆるビジネスユニット課という事業部があるわけです。そこのある意思をいろいろ反映しながら、技術開発の成果をどういうふうにつなげていくかということを、常にそこは技術開発陣とビジネスを使っていくところと知財部というのが三位一体になって物事を考えているのが普通の姿だと思うのです。そういうアナロジー(類推)で、今の大学の知財本部を考えたときに、先ほどの委員がおっしゃったように、知財本部というのは仮に企業で知的財産部のようなものを持っていて、R&D(Research&Development=研究開発)はファンクションの大きさはいろいろあるにしても、大学のいろいろ研究をやっている先生がおられる。そうすると、事業の部分をどうやってだれが見るんですかということは、多分これは全然答えがない中で書かれているような感じがするんです。多分、産学連携を今いろんな意味で言われているのは、そこの事業的なある種の可能性について産のほうがかなり早い時点から学のほうに入り込んでいって、その産のほうのある種のニーズなり、あるいはこういうものがあったらいいよというところを、信頼感があってやれるかやれないか。だから大学だけで閉じて、知的財産本部をつくったから、すぐにできるかなというのは私自身は非常に疑問に感じます。もう1つは先ほどの委員のおっしゃった、息の長いようなものをどういうふうに見るかというのは、これは企業も非常に悩んでいて、今回のノーベル賞は私は非常におもしろいなと思っています。特に島津製作所の田中さんのものは本人が発明、いろんな意味でいい芽は見つけたけれども、それはそれほどガチガチ特許になってなくて、ドイツの方が何かで見てそれをリファイン(洗練)して、いろいろ広まっていったという面があります。いい芽があって、そこで閉じてほんとうにそこでいけるかどうかというのもありますから、どういうふうにそれをつなげていくかというのですか、そこが産学連携のときも1社独占で、産のほうがそれだけの資金力があればやるんでしょうけれども、そこら辺の展開の仕方というのはもっともっと工夫する余地があるなと。多分、今この産学連携がいろいろ議論されている一番の根っこにあるのは、昔ほど企業に体力がなくなってきたので、少し先を見た研究のテーマなりネタがそこから出てほしいというものすごい期待感があるんだろうと思うんです。だから、知的財産本部をつくったときに単純な事務手続論を幾らやっても、ほんとうに今期待しているある種の知がきちんと産業に結びつくところまで行かなくて、それは多分こういうある種の組織設計をやったら、そこにはまった人がしようがない、一生懸命するしかないのかなと。企業の中でも知財部の人間が自分なりの価値観なりあるアンテナで見ていて、例えばこの研究者だったら絶対○だとか、こういう発想のところは非常におもしろいというふうに食らいついて、かなりそこは丹念にフォローしていかないと。ややもすれば企業としてはこの研究費は削るよとか、シュリンク(縮小)しそうなときも少しバックアップしていくとか。だから単純に絵をかいて、そのまま素直にいくような世界じゃないなと。だからこれから産学をやっていくときの、特に学で生まれたものをどうやって引き出せるかというあたりで、知財本部の中にどういう人材が入っていって、どういう営みをやってくれるのか。そうすると多分1つは、知財本部に配属されるリエゾン的な人間にどれだけ権限を与えるか。それを知財本の中で組織的に、資金的にもどれだけバックアップするか。それからもう1つ、これがいいかどうかわかりませんけれども、知財本部でそういうある種の目利きをやって、リエゾン活動をやる人間にもある種のインセンティブがきくような仕掛けが必要なのかも知れません。自分はこれだと思って、このネタはおもしろいから、この先生と一緒になってどこかの企業を見つけてきて外に出口をつくりたい。そのときにあなたもそれに対するストック・オプション(自社株購入権)を与えますとか、そういうインセンティブが働いたほうが若い人はもっともっといろんな意味での活躍をしてくれるかも知れないなという、これは個人的な感想です。

   今の委員のお話はもっともだと思うんですが、私はこの仕事は実はまだ4年足らずで、今大学のものをどうやって出していくかというと、これはテクノロジー駆使なんです。こっちからしゃにむにポテンシャルのパートナーを探していって、ぶつかっていかないと動かない。東工大の場合は違うかもしれませんけれども、我々の場合、一生懸命これだったらというところを探して当たるというのが実態じゃないか。ほとんどそうじゃないかと思うんです。そういうところから見ると、いろんな経緯があって、知的財産本部というネーミングをされたと思うのですが、このネーミングがちょっと人に誤解を与えるというか、この世界にいる人に対して企業に知財部があるじゃないか、それと同じものをつくるんだと。そのアナロジーでとらえられてしまっている。大学で今一番必要なのは、言ってみればいかに外のパートナーを見つけ出し、見つけない場合については、いた場合についてもインキシュベーションを少ししていかないと、少し研究の価値を高めていかないとなかなかパートナーは見つからないというのが実態だと思うんです。だから、これを進めている立場から言いますと、知的財産・インキュベーション本部みたいな名前ですと、全部カバーできるというか、誤解が起きないのかなという感じがしています。何でこんなことを何回も繰り返して言うかと申し上げますと、どうも大学陣の中には知的財産本部というのは企業の知財部だと。それから、インキュベーションとか、そういうものは別な組織で進めるんだぞという理解がないわけじゃないのです。それからなおかつ、またTLOというのがあって、この3つのファンクションを各大学で自由にやっていけばいいと。これはおっしゃるとおりだと思うんですが、このポリシーをつくろうとしている方々は、頭にリニア(直接的)なシーケンシャルなプロセスが染みついておりまして、なかなか説明してもこれがわかっていただけないという面があります。これからまさに各大学が自分のポリシーをつくり、制度設計をしていくときに、あまりにもあらかじめ決まったイメージの概念を植え付けているのかなと。せっかくのいいチャンスなので、もっと自由に設計できるように。名前は今までの経緯があって出てきたんだからこれでいいと思いますが、ファンクションとしてぜひとも幅広くインキュベーション、ベンチャー支援、いろんなコラボレーション(共同製作)とか、そういうものをすべて加味するんだということを入れておいていただきたいという気がしております。

   皆様のお話を伺っていて、それぞれそのとおりだなと思って伺っておるんですけれども、基本的に知的財産本部のファンクションというのはそれぞれの大学で、今委員の方々がおっしゃいましたようにいろいろな形がありますし、既存の組織との連携の仕方というのもいろいろあると思います。けれども、知財本部で全体としてどういうファンクションが重要かということを考えますと、手続論だけでは進まないというのは確かにそうなんですけれども、とはいえ手続論のところも非常にボトルネックになっている場合があるというのは、先ほどからご指摘のあるとおりでございます。そういう意味でここにありますようにTLOとは別に、またこのような利益相反問題などについての総合的な意思決定などを行うという位置づけを、ここに書いてあるような感じで知財本部に持たせるというのは、どの大学でも必要なことなんじゃないかと思うわけです。その際に、従来の研究協力部のようなところがあまり十分に行えなかった迅速な意思決定ということを、今後法人化していって知財本部が行うようになると、新しい問題が次々と起こると思います。そういったときに迅速に過去の慣例にとらわれずに意思決定をしていくことができれば、新しい組織をつくった意味があるのでないかなと思います。そういうふうに柔軟に意思決定をしていき、既存の組織との連携を図っていくということを強調して書けば、ここに書いてあるような趣旨でいいと思います。

   知的財産ポリシーの構成例を拝見して、こういうポリシーを構成した場合に、権利の帰属あるいは創作者への報奨等に、いかに規定を整備していても必ず紛争は起こり得る事態が生ずると思うのです。それに対してだれが責任を持って解決するか。あるいはそういうある意味で中立的な機関を設けておく必要はないのか。それについて言及しておく必要はないのか。紛争が起こったときに責任者がはっきりしないというのでは対処のしようがないと思います。そういう点を少しつけ加えていただければありがたいと思っております。

   何かご提案はございますか、どういうふうにしたらいいのではないかという。私もそれは入れたいとは思っているのですけれども、どういうふうにしたらいいのかというのが、なかなか思いつかないのです。

   議論していただきたいところですけれども、ある程度の委員会みたいなものが必要かもしれません、学内あるいは機関内において。その報奨を幾らにするという規定に該当するかということを判断する場合と、その判断に対してなおかつ不服な場合に、それをまた同じ機関が判断するのか、それとも別の機関が判断するのか。

   今のお話は、紛争というのはまず学内での紛争でございますね。

   ええ、学内での紛争ですね。もちろん第三者との関係の紛争処理ということになりますと、それはこの管理の責任者ということになるだろうと思いますけれども、学内は学内で本来おさめていただけるほうがいいのではないか。すぐに外部の機関あるいは裁判ということになるよりも、納得し得る紛争解決機関みたいなものがあれば一層いいんじゃないかなと思います。

   今のに関連しまして利益相反ワーキング・グループのほうで、利益相反ポリシー、隔離、それからいろんな問題が生じたときに、どういうふうに解決したらいいのかということを検討する委員会を設けたらどうかという検討もなさっているようなんです。ですから、そういう意味で広く学内の諸問題を検討する委員会みたいなものを、利益相反のところと重ね合わせて少し考えるということも1つの方法かなと思っています。

   今の問題に関しましては、委員会は委員会であって、その委員会を取り仕切る最終的な責任者を副学長の担当にして、その人に権限を持たせるとよろしいというアイデアをここにも書かれていると思うのですけれども、実際にアメリカでもそのような方式で進めているところが多いですし、だれかが最終的な決定権を持つということで、担当の副学長という方式というのがよろしいのでないかと思っております。

   2点あるんですが、1つは先ほどの大学内における知的財産本部という名称なんですけれども、これはもう決まった話ならばしようがないんですけれども、実質的には法人化されたとして、最高意識決定機関がもし理事会、学長であれば、産学連携を推進するある部門があって、そこの長の下に特許をファイリングする担当とリエゾンを担当する部門と技術移転を担当する部門、これが一貫して管理されてないと多分うまくいかないんじゃないかと私たちは考えます。それと、私たちのまだ3年か4年の経験ですけれども、リエゾンを推進するときに一番大事なことはコーディネーターが学内の研究資源をよく知るということ。要するに大学で何の研究が行われているかをほんとうに知っている人っていないのです、実は。大学の教官で、私はコーディネーターの1人なんですが、自信を持って言えるのは19人の中で一番役に立たないであろうと言うことです。というのは、自分がやっていること以外はすべてくだらないと思っていましたから、そういう意味で学内の研究資源をすべて理解しようとする意欲に欠けていたと反省しているんですけれども、私たちの十数名のコーディネーターの方は企業である意味で事業部に所属した方が多かったものですから、そういうのになれていて、大学の先生の信頼を勝ち取るためにはその内容をよく理解して、企業の方から聞かれたときに、この先生ならこっちというふうに迅速に判別できるということが一番のファンクションで、ある意味で目利きでも何でもないのです。要するにそれが売れるかどうかなんていうのは大学がやる話じゃなくて、これは研究をしている企業側のやる話であって、大学のシーズだけで製品がぽろっと出てくるなんていうケースはほとんどないと考えれば非常にわかりやすい話ですから。普通マーケティングとか皆さん言うのですけれども、それは非常にヒットした1、2の例です。大体大学でやっている研究を技術移転しようとすると、もう1回企業サイドのリファインした研究といいますか、R&Dがないといかないというのが私たちの例なんです。そう考えると目利きという実態があると考えるよりは、もう少し泥臭い大学の中の研究資源をしっかりと把握して、それを企業のニーズと合わせるとか、そういう努力が必要なんじゃないか。それで、先ほど言いましたように、知的財産、ペーパートランスファー(契約上の移転)というのはほんの一部なものですから、産学連携推進というセットで進めたほうが無理がないんじゃないかという提案です。それともう1つは、これは私が教官だったからなのかもしれませんけれども、24ページの(3)のいわゆる社会貢献の業績の評価の方法なのですが、これも書かれている話なんですけれども、特許を単純に評価するというのは非常に難しい。先ほどの委員がおっしゃられたように、特許を管理する立場から言っても費用対効果というのは考えざるを得ない。例えばライセンシングできない特許が99%もあるような知財管理というのは少しナンセンスだと思うんです。数値目標として20%ぐらいはヒットするというふうに考えないと、欧米なんかでもやっていけない。これでも経済的にはやっていけないわけです。そうすると、20%ヒットさせようとすると、ある意味でかなり取捨選択をしないと先生方、特に研究費に特許料が付加されていたりすると、当然の権利として特許を出すという話になる。それがライセンシングできるという保障はほとんどないわけです。ですから、ある種の企業行為の1つなので、そのまま学術研究と同様な評価の対象になるというのは非常に難しいのではないか。ですから、この辺の評価の仕方というのは、今後も学術研究の評価とは別途にある基準を設けて考える必要があって、それは一番難しい。特に時系列からいうと10年後に出てくるかもしれない話のものをどうやって評価するかというのは難しい話だというので、24ページの不可欠であると。間違いではないんですけれども、方法論的には非常に難しいんじゃないか。

   知財本部などの話から別の話に移らせていただきたいと思うんですけれども、結局、個人帰属と国帰属、法人帰属という問題で、後ろのほうのページに85%は現在も個人帰属であるということが書いてあります。これはよく出てくる数字であるんですけれども、結局のところ85%の個人帰属で現在あるものというのは、大学が法人化したからといって急に個人帰属でなくなるわけではないわけでありまして、それが個人帰属と認定された場合にそれが事後的に大学に承継されるということになると思うのですけれども、この前のほうの2章などでそのときに相当な対価を払うとか、そういったことが書かれているわけです。これは結局そういう理解でよろしいのですか。その問題というのはここの委員会の何回目かで議論になったと思うんですけれども、結局85%のものは個人帰属で、それは法人化後も個人帰属として取り扱われて、事後的に大学に承継されるという理解でよろしいわけでしょうか。

   はいと申しますか、先生のご指摘にちゃんと答えられているのかわかりませんけれども、あくまで職務発明の議論が前提としてあって、その中で原始的に個人帰属のものを機関がどれだけ承継するかというところを学内規則とかでしっかり決めるとしたときに、今割合が15対85になっていたのがかなり逆転して、原則は機関が承継するものだというところぐらいまで大分動いていく。ただ、それは機関によってポリシーも違うでしょうし、具体の承継をさせる範囲の広い狭いとか、微妙にその対価の範囲とかも変わってくるだろう。ただ考え方としては、職務発明の範囲で機関が承継するものが多いということが原則になるというご議論ではないかと思います。

   それは職務発明ではないからということですよね。

   ちょっと補足させていただきます。今の時点で発明者個人が持っているものについて、法人化後に規則が変わったということで、それがそのまま法人帰属になるということまでは考えてはおりません。それをやってしまいますと労働法とか、そういった問題にも出てきますので、大学がそういう規則を定めまして、それ以後の発明か、まだ帰属が決まってない発明についてはそれ以降の定めた規則に基づいて法人か個人か定めてもらって、それで規則を定めた以降は法人帰属が原則になると思うのですけれども、それ以前のものについては、個人帰属に今なっているものについては個人帰属という考え方でございます。

   ですから、法人化後は、先ほど言ったような85・15が逆転するような考えで、基本的には法人帰属であるというふうに考えているんですよね。

   そうですね。新たに生じたものについての帰属の考え方の変更ということで。

   規則が定まった以降についての取り扱いということで、ただ個別的に、現在個人帰属になっているものについても大学等の教官の方と話し合って、大学が承継したほうがいいというものがあれば個人ベースで話し合っていただいて、大学が承継するということはあり得るかもしれないんですけれども。

   現在、個人帰属になっているものというのは、そうすると職務発明ではあるけれども、承継されていないということでしょうか。

   職務発明の考え方が、勤務規則が変わる時点で変えるということになりますので、その以前のものについては従前の例によるといいますか、知的財産権は保護するという考え方です。

   勤務規則自体が変わるので、前と後と変えるということですね。

   今のお話は、法人化後においては機関帰属にするということをこれは明確に打ち出しているわけですよね。その理由は何かというと、今まで職務発明に対する考え方をもう1回レビュー(評価)したい。今の時代で職務発明という、大学の問題はもろもろありますけれども、大学の職務、業務の両方から見て、職務発明という考え方でいいのではないかということだと思うんです、この先は。職務発明の理解の仕方を変えていくというのも1つだと思うんですが、これは所轄が違うから使いたくないのかもしれませんけれども、一番大もとにあるのは国の費用を使ってやったものはだれに帰属するか。ここから起こっているんじゃないかと思うのです、すべての問題が。例えば日本版バイドールみたいなのができて、その機関に帰属させますよと。それが底流の大前提であって、それに合わせた形で各大学がほかのものもあわせていこうと。それで職務発明の読み方、理解の仕方を変えていくといったほうがスムーズなのかなという気がちょっとしています。アメリカのところは明快にバイドールが影響していると書いてあるんですが、国内のものは時代が変わったから職務発明に対する理解を変えてもいんじゃないかとなっているんですが、読んでくると大学に無理やりマテリアル(成果有体物)以下全部帰属させていくわけですが、それの大もとは国の税金がもととなった研究。これについては、それを生かすことをオブリゲーション(義務)をかけた上で機関に帰属させるんですと。それが1つあって、そういうベースに乗って、各大学がその帰属を解釈するに当たっては職務発明の理解の仕方を変えたほうがいいんじゃないかというほうがスムーズみたいな気もするんですが、これは縦割りのいろんな問題があるんじゃないかと思うのであまりこだわりません。ただ、読んでいてそのほうがスムーズかなと。税金を払ったものについては機関だというのがベースに1つ流れていて、その延長で説明したほうが個別の云々にこだわらなくていいのかなという気がちょっとします。それからこれに関連して、データベースについては国に帰属するというのは、この部分が残っていますよね。14ページの上から2つ目のパラグラフなんですが、データベースの取り扱いについては、5行目で国に帰属するとの方針が打ち出されていると。これはこの法人化の後においても同じ解釈でいこうということなんでしょうか。

   これは国からデータベース等の作成を直接の目的として、特別に措置された経費でやったデータベースですね。ですから、データベース全部ではなくて、データベースをつくることを目的とした研究の成果によって出たものと理解しているんですけれども。

   日本版バイドールの理屈とここの理屈がうまく整合とれるのかなと若干懸念があります。

   昭和62年のデータベースの取り扱いの考え方、国立は発明と同じような考え方で示されているんですけれども、著作権法上の職務著作と整合性の面で疑問がある旨、別の委員も前回おっしゃっておられて、その上で本来職務著作は原始的に法人のものという前提で、一方、職務著作のないものは契約によって承継すべきでないかというご意見もございまして、その方向です。

   私が申し上げているのは、国に帰属するって書いてある部分です。国に帰属するなら、クリエーターに原始的に帰属するのは当然だと思うのです。この場合、国に帰属すると書いてあるものを、今の公的資金を使ったものは開発した機関に帰属させる。これが1つの流れですよね。そうすると、国に帰属させるというものは開発した機関に読みかえても、移してもいいんじゃないか。そのほうがうまく整合がとれるんじゃないか。

   もう1つは著作権法上の職務著作との整合性の問題もあります。大学でどこまでを承継するという書き方のポジションをつくるかという、その際の手続でいえば、いわゆる職務発明みたいなものができない部分は大学として契約で移転するという形のポジションをつくるかどうかという、その辺のところなのかなと。

   特に議論するつもりはないのですが、国からデータベースをつくれと言って投げられて学校が受けたものは職務著作じゃないかと思うのですが、別段こだわりません。

   多分そういうのが多いんだろうと思うのですけれども。

   ただ、この部分だけ全体の流れから外れているので、ちょっと違和感を覚えたということです。

   ただ、発明のほうも実は国立大学を考えてみますと、今国から特別に措置された経費で、科研費も含めて目的がはっきりしたものは国帰属であると。前回の学術審議会からの流れがあるので、逆に言うと国立大学の場合に大きな問題になっていくのは、公費という、いわゆる国から特別に措置されていないけれども、大学が出した研究資金の部分のところです。

   そこまで踏み込まれるなら、公費を使ってやったものについては、原始的に移転することを積極的にやるということを含めて、機関に帰属させるというのをベースに置いたほうが非常に読みやすくなってくるのではないかという気がするんです。

   今はどうなっているのですか。私はそういうふうになっていると理解していたんですけど。

   まず、先ほどの委員がご言及されたのは特許と著作権と有体成果物(マテリアル)ということですけれども、まず有体成果物はもうちょっと別のところで考えなくちゃいけなくて、特許や著作権については法律上原始的に帰属ということがきちっと書いてあります。有体成果物というのはちょっと違いまして、報告書では原始的には研究者に帰属すると書いてありましたけれども、それまでの事情を勘案すると、例えば企業の場合ですと、企業で出てきた研究成果というのは、多分従業者の方はできたものは企業のものだという意識のもとで、従業者自身が物をつくっていたという背景があります。けれども、それまでの大学ですとその辺があいまいで、だれがどういうふうにやっていたかというのがわからなかったということで、そういうのをきちっとしようということで前の報告書をつくって、最終的に機関帰属にしようと決めよう。これについては民法の加工の法理を用いて研究者に帰属というふうに判断したのですけれども、明確な法律上の規定があるわけではありません。一方、特許権や著作権については、特許法の29条や著作権法のところで、原始的には著作権者に帰属するだろうということで考えております。特許権についてはまず53年の通知がございまして、それの職務著作の範囲みたいなのを考え直そうではないかということで、この委員会の場でもご議論いただいたと思うのですけれども、そういったことでやっていこうと。著作権につきましては、このワーキングでもご議論いただいたと思うのですけれども、事前に機関に帰属するものと決めてしまって、公序良俗違反にならないのかというお話もあったかと思います。そういったものを踏まえまして個人的には事前承継、要するに最初の取り決めのところで、大学内で出てきた著作権については大学に帰属するといってやるのもいいのかなというふうに考えているのです。ただ事前にまとめて著作権を大学に帰属するというのを書いていいのかどうか、それが民法上の公序良俗違反とか、そういったものにならないかというので、ちょっと躊躇したところがございまして、これぐらいの書きぶりになってしまいました。

   職務発明論で議論してきたことはよく承知しています。ただ、ここまで文科省が非常に大きな勢いでやっているのであれば、思い切って公費で動いたものについては機関帰属だという新しい文科省大方針を置いてしまうと良いかな、と。もし置ければ。そうすると、非常に筋は明快で、ごちゃごちゃする点はなくなるし、それに基づいて各大学がポリシーを立てると非常にやりやすいような気がちょっとしています。もう一旦終わった議論だということは承知していますが。

   解説だけなのですが、10ページの第3パラグラフなんですが、「以上の前提に立って」から始まる文がございます。「以上の前提に立って」から始めて5行目の「具体的には」というところで、これがもしかしたらわかりにくいのかもしれませんけれども、「公的に支給された何らかの研究経費」、これはいわゆるプロジェクトのほか、運営交付金、今でいうと公費に相当するようなものを含めて、例えば大学が先生に配ったようなお金も含めて、公的に支給された何らかの研究経費であると。あるいはまた大学の施設を利用して行ったという書き方にして、いわゆるプロジェクト的なというものよりもっと幅を広げております。

   だから、これを前に出したらどうでしょうか。今まさしく引用されたところを前面に出せば、一気通貫、非常にきれいな流れになるのではないかと思います。

   今の委員がおっしゃったことは非常によくわかるし、きょう機会があればこの部分をちょっと言いたいなと思っていたんです。9ページから10ページにかけて結構ぎこちないんですね、書き方が。52年の方針があって、それがどうして変わっているのというところが非常にわかりにくいし、これで大学は自分で範囲を決めてやりなさいと言ってもやりにくいんじゃないかなという気がしているので、もう少し言うのだったらきちんと言ったほうがいいと思うし、それから大学の研究者が自分のテーマを決めるそのこと自体も職務なんだというような考え方だって別に構わないと思うのです。最近の中村さんの判例でも、職務命令、業務命令に違反して私はやったのだということに対して、それは35条の職務発明ではないという理由にはならない。というのは、勤務時間に発明をしたでしょう、それから会社の設備を使っているでしょうという判断もありますし、それから企業の社長とか研究所の所長とか、そういう上のほうの人というのは、基本的には研究テーマの設定も含めて、その人の職務なんだという考え方の判例というのはたくさんあります。言ってみたら大学の先生が自分のテーマを決めて、自分の勤務時間に学校の施設を使ってやるものは、すべて職務発明ですよということをきちんと書いてもいいのかなという気がしています。

   ここが一番難しいところかもしれませんけれども、先日アメリカでうちの副センター長とともに訪問してきたところがありました。テキサスの州立大学ですけれども、そこは完全に、今の委員がおっしゃったように、州のお金、連邦のお金でできている大学の中にいて、大学の研究費はいかなるところから来ようと、それは大学で使っているものであればすべてそこから生まれる知財は大学のものであって、個人のものでは一切ないと。それで、ここで言う、あんまりうまくいかないから個人に返すというのもなかなか自由にならないような、要するに知財本部が特許化しないものは個人も自由に扱えないという形になっている。多分、会社はすべてそうだと思うのですけれども、それぐらい厳しくやっている。それから、もちろんそういうキャンパスの中にはベンチャーの会社等があるんですけれども、大学の教官はそのベンチャーに関する研究以外の産学連携に関する話はキャンパスの中では一切できない、してはいけない。責務相反といいますか、責任の所在がはっきりしていて、その話に関してはキャンパスの外へ行って取材は受けましょうとか、相談しましょうというぐらいにはっきり分けているということです。法人化後にそこまではっきりはなかなか分けられないと思いますし、だんだんそういう形に日本もなっていくのかなと思いながら見てきたところで、機関所有をはっきりしなくちゃいけないのかな、というのを私も感覚としては受けて帰ってきたところです。ほかにいかがでしょう。

   幾つかあるんですが、今の委員がおっしゃった、あと先ほどの委員がおっしゃった件なんですけれども、これを見ますと、大学の第三の使命と大学教員の職務ということで、9ページあたりから書かれていたような気がするんですけれども、ここの書き出しが昭和52年の学術審議会の答申以降の動きから書いてあります。そうすると、今みたいにすっきりした形に持っていくのはなかなか難しいなという気がします。そうすると、その辺から書き直さないけないかなという気がします。でも10ページに入って、先ほど「体的には」というあたりの説明がありましたけれども、ここを読んで私はほぼすべて大学でやられたものは機関帰属になるんだなというふうに読ませていただきました。そんな感じですね。そういう面でここの説明はなかなか納得されにくいところがあるような気もするのですけれども、最初、結論としてはもう出ているのかなという書き方になっていると理解しています。それからもう1つ、先ほどの委員が知的財産本部の話をされましたけれども、幾つかデータの中で。それで委員がおっしゃった中身は、大学が行っていこうとしている産学連携のあらゆる側面を含めた意味での一体管理が必要なんだとおっしゃいましたけれども、私も全く同じ意見です。これを全体的に読みますと、そういう意見に全体的にはなっているかなというふうに読ませていただいているんですけれども、その中で私たちの大学もこの辺をどう取り扱うか、今組織上検討し始めておるのですけれども、一番そこが問題になっています。先生が最後のほうでおっしゃったことなんですけれども、そういう本部を大学でつくって、これは副学長がトップから出てきているわけですけれども、そうするとそれが具体的に各部局にどうおりてくるかというところですね。というのは、そういう組織をつくっても、先ほど先生がおっしゃいましたように、そこに何かのコーディネーターがいるとしましても、大学の全体の研究の中身を把握するのはとてもできないわけで、そうすると本部にありながらまた各部局で、工学部とか研究所それぞれございますけれども、そこにまたそれに類似したものをつくらざるを得ないんじゃないかなと我々は考えて、今モデルケースをつくろうとしているのです。そういう面でここでは一元管理が非常に大事だということと、それから知的財産本部をつくるだけじゃなく、それを大学全体にどうして普及させていくか、それを普及させるための下部組織をどうしてつくるかというところが一番大事なのかなと考えています。

   一元管理にインセンティブを教官にどうやって与えるかというのがあれば、何とかセルフオーガナイズ(自己組織化)していくシステムができるかなと考えて、何ができるかなというのを我々は少し議論しているんですけれども、そのときの1つは、一元管理で産学連携業績がこれから多分出てくると思うんですけれども、産学連携業績は今の○○本部が一元的に全部出す、勝手に教官は出さないようにすれば、裏で特許を出したり何かしているものは全部業績にはならんぞという形を1つは縛れるかなと。それから、そういうことで毎回、教官が面倒くさい書類をつくるのも本部が全部担当しますということで、一切教官はそれに触れなくていいということができないかなということも考えたりしているんですけれども、もっといい方法があればまた考えていきたいと思っているところです。

   先ほどの知財といいますか、職務発明の規定があまり極端な方向に行き過ぎましたので、少しブレーキをかけたいのですけれども。大学というのは、私自身は大学は終わりまして管理する側に回っているんですけれども、抜けた管理がいいのじゃないかと私自身は思うのです。というのは、企業が大学に求めていることというのはいろいろ多様性はあるでしょうけれども、企業のように効率的に攻めたのではなかなか行き着かない。偶発的な話。もっともノーベル賞の田中さんみたいなのが出てきちゃったので問題なんですけれども、いずれにしても25万人かの大学の研究者を新産業創生に使いたいという趣旨からいって、とにかくがんじがらめにすべてを管理しろという形になると、管理するほうも大変ですし、それに反発を覚える方々、文学部の先生は絶対に容認しないと思いますので、やたら摩擦を起こすよりは、これにかかわる人をとにかく使えるようにということで、水も漏らさぬ管理という必要は特にTLOをやっていてもあまり感じないんです。土台、こういうもので役に立つのは1割だと考えれば、何も99%やるよりは、もっと費用対効果を考えて効果的なマネージメントを求めたほうがいい。そういう意味では研究・教育とは別途にして、どちらかというと上からいいのをつまむ。それを効率的にやるというほうがよろしいのじゃないかということで、ちょっとブレーキをかけさせていただきたいと。

   今の委員の意見とある面で密接に関係しているような気もするのですが、ちょっと前に返ってしまうんですけれども、10ページの(2)の1の下から2行目、「このため、各大学においては教員等に対し可能な限り」と書いて、この「可能な限り」というのは私はかなり引っかかっているんです。先ほどの委員が今おっしゃった意味では「可能な限り」でよろしいんですが、「可能な限り」をとってしまったほうがいいかなというふうに実は感じていたんです。

   先ほどの委員のお話を伺っていまして、実際、今技術移転とかベンチャーの支援とか、数少ないものをやられているわけですが、これがうまく進むのは何かというと、研究者がどのくらい協力するかなんです。幾らいいものが出てきても研究者が例えばプレゼンをやらないとか、後のアフターケアをやらないとか、デベロップを一緒にやらないといったら、これは絶対動かないです。今、私どもでは発掘という作業は全然やっていませんで、今この分野で求められているのは、研究者の話をよく聞いてやる人ですよね。最初から目利きの人なんかは絶対に居るはずがないので、よく聞いてやって、何がその人のほんとうのコントリビューション(貢献)なのか理解して、それをほかの人にある程度説明して、うまくいった場合、発明者とあわせて説明して進める。その後は、言ってみれば間にコーディネーターのような人が入るわけですが、研究者のものすごいエネルギーがないとライセンスもベンチャーもほとんど不可能な状況です。だから、オブリゲーションをかけて、ルールですから、先ほどオブザーバーの方がおっしゃったようなところをひもといて、基本的には学校はこういうことをするんだぞ。ただし、学校に帰属させる。これはこれで私はいいんじゃないかと思うんです。ただ、そうしないと何で研究成果を学校へ届けなきゃいけないのか。大学として研究成果を全部集めておく必要がありまして、そういう機能はあっていい。けれどその中で、どれを動かしていくかというのは、1つ大きな自由度があっていいんじゃないか。だから、職務発明規定で縛るのか。これはシステムを造ってしまった後ではなかなかできないですね。帰属は今のままでいいということになってしまうと思うのです。

   実はそういう意味ではないのです。いわゆる水も漏らさぬ、要するに公費で、文学部の先生が『徒然草』の批評を書いたものまでも届けの対象になるというのとあまり新産業創生と結びつかない。ですから、この場合はあくまでも目的があって、その目的に対してチャレンジしているという意味で。

   それは私どものところの法文系の人も集まってやっていますので、そこからはっきり言われていまして。文系の著作権というのは今回のこの著作権には入れないということをはっきりしたほうがいいと思います。というのは、文系の方は届けが出てから何かするというものでは全然なくて、それ自体が学術活動であるから。それから、それ自体が産業に使うものでないので、そういう意味では全く違うということで著作権は入れない。それからもう1つ、「水も漏らさぬ」なんていうのはできっこないんです。大学ではそんなことは、文科省のからやれと言っても多分出来ないと思います。もう1つは、今かなりの個人特許は、それ自体が既にテクノロジートランスファー(技術移転)をされているものが多いわけです。個人特許は管理というか、TLOも通らずにスルー(通過)している場合があるわけです。それを管理することによって、TLOはそれ自体からフィー(手数料)が入ってくる。それから、大学もそれ自体からのリーズナブル(相応)なリターンがあるというのは、大学自体公共なものを使っている上で重要ではないかということです。ですから、先ほどちょっと言った調査のところでも、3分の2はいわゆるコーディネーターが一切コーディネートしなくていいトランスファーで終わっていて、3分の1だけが新たに開拓するということ。ところが、現在のTLOは、ほとんど新たに開拓する種がかなり多いのではないかと思いますので、それを含めるとこの規則の中で、これまで先生と企業というような、かなり個人と企業というようなおつき合いを組織と企業、組織体としてきちんとした契約の世界でやっていくということが、今回の組織がえではないかと思いますので、それによってTLOもある程度のしっかりした基盤ができてくるのではないかと理解して、私はこれを読んでおります。

   1つ確認させてほしいんですけれども、25ページの(5)に書いてある1(イ)の関係なのですけれども、今ある知的財産本部を組織所有にしてやりますという場合の例えば出願費用とか、そういう必要経費は大学の先生個人ではなくて、そこの大学の知的財産本部なら知的財産本部という組織につけられるという理解でよろしいんですよね。新たなものがそこで計上されるという理解で。

   金は個人が出すが、権利は機関に帰属という意味ではないです。

   いろんな研究費の中に一部そういう出願費が盛り込まれるのではないかという話もちらっと聞いたものですから、そうじゃないですねという確認なので。それはよろしいんですね。

   それは私もお願いしようと思っていたのですが、26ページの第2段落なんですけれども、今の3委員のお話にある、要するに基礎的な運営経費からの措置の場合と、それから競争的資金等の資金による研究に関しては、ここでは見込まれる成果に応じた知財の保護・管理経費を間接経費に見積もるとあるのですけれども、成果をあらかじめ見込むということは結構難しいことが1つと、それから実際に経費が発生するのは研究費が終わってからの場合が多いわけです。それから、先ほどのいろんなケースがあったときに、大学の知財の管理部局がいろんなゴーサインを出すには、どんなに早くたってある期間が絶対に必要なわけです、オフィシャルにゴーサインを出すには。ところが、先ほどの学術研究のための発表を大学ではかなり重要視している場合が多いので、それとのコンフリクト(葛藤)が常にあるわけで、そうしますと場合によっては現在の奨学寄付金のように継続的に教官が持っている研究費でこれをあてがえられないかというのができればより自由度が上がります。その場合は維持費も継続して、もちろんそれは全部個人のものではなくて、大学の所有といいますか、機関有の特許という条件でですけれども。これはすべてそうだと思いますけれども、ここに書かれているのは。機関有のものに関して経費の枠を競争的間接経費だけみたいな形にしないで、もちろん総長特別経費だって入ると思いますし、いろんな経費が入るのですけれども、個人の裁量で動かすものを一部用意できれば良いと思います。動いている方というのはトップ10%以下なんです、大きく動いている方は。その方たちの動きを阻害しなくて、かつ機関有に持っていくためには、そこのところをご検討をいただけないかなということです。

   会社のあるセクション、例えば事業部が事業部のお金を持つ。あるいは知財部がお金を持つ。その中でいろんな手当てをしていくわけですけれども、今のお話はどういう……。

   大学にはそういうお金はないんです。というのは、研究所の教官だといっても研究所がその特許をどうするというのは、これからそういう形になるかどうかわからないですけれども、今は事業部制で特許の管理はしてないですから、一切そういうお金の動き方はなくて、常にJSTとか国とか、あるいは民間のものという形になっているわけです。それで今、完全に個人のお金は出せますけれども、一切研究費とか、公的なお金は出せないんです。最近少し変わって経費は出せるようになったものがありますけれども、少なくともまだ出願料その他は組織有になっていませんから、今現在は公的なお金では出せないという形です。

   質問なんですけれども、今の趣旨は、例えば大きなプロジェクトを持った方がいて、それはTLOや大学に知財部ができたときに、それらの判断を待たずにご自分の判断で特許をとる権限を与えるということでしょうか。

   そんなふうに聞こえたから、それは二重構造になってしまうような感じがするんです、普通の我々の組織論からいきますと。知財本部が、ある種の組織が窓口になって、そこにも権限を与えますと。その権限を実行する上でのある種の資金的な裏づけがあります。だから、いろんなことができるわけですよね。それを飛び越えて、全く二元論でこっちのほうも動かしていいよ、こちらの判断ですよといった途端に、そこの二頭立ての動かし方をどうやってやるのかなというポジションメーク(位置付け)がよくわからないんです。

   知財部は、要するにとるかとらないかという場合のとらないという理由はお金の問題もあるわけですね。

   それはあります。

   常に海外特許の問題とか、いろいろあるわけですね。ですから、そこのところの問題をクリアするためには、いろんな調査等が必ずあるわけです。

   ええ、あります。だから、そういうのも全部、本来ならば知財部がいろいろ考えて予算をとって、その中で処理していくわけです。組織だから。

   だから、例えばそれは十分知財部が潤沢な予算と潤沢なインカム(収入)がでてきて回り始めれば、それはなくなるかもしれませんけれども、少なくとも現在動いているものを99%組織有にしたいと思ったときの組織を設計しようとしますと、すべて16年4月から知財部が全部ゴーサインを出せるか。ところが、特許は日々動いていますので、そこのところが難しい。

   先生がおっしゃるのは、トランジット(過渡的)な領域で経過的にそういうのをやっている。最終的にはどこかで一本化していけばいいというか、それとも二本立てである種の管理をやるところと別の予算枠のポケットを持っていて、それである種の自分なりの判断で動かせるようにという意味ですか。多分、大学によって設計が違うのかもわかりませんけど。

   違うと思うのですけれども、例えば今の知財本部が、TLOが外にあるとしますと、A、B、CのTLOを使い分けられる大学も出てくるわけです。そうすると、この知財本部がAというTLOに出す、BというTLOに出すという判断のその1つとして、Fという個人の研究費からそれを使う。管理は知財本部がするということになるだけだと思っています。

   そうすると、逆に維持費なんかも入ってくるわけですか、そこに。

   そうです。知財本部には迷惑をかけなくてやりますよという。

   それでは研究者にとっては何のメリットもないのではないでしょうか。研究者にとっては面倒くさいだけであって。

   ですから、あんまり問題ないんじゃないかなと思っているんです。

   大学に知財が帰属する部分になるとすると、ものすごく不利益ですよね、現行と比べると。自分でお金を持って、なおかつ大学を通すと。大学を通せば当然公費ははねられるわけですから。

   私も研究者だから、それは自由にハンドリング(取り回し)できるというところですよね。だけど、私たちはなるべくそれとは妥協しないようにしたんです。というのは、それを推し進めていくと、なかなか一元管理という思想には入れない。一種の妥協ですよね。だから、私たちの立場から言うと、それはやむを得ず許しているのであって、実際あるべき姿とは大分違うというふうに個人的には思っています。

   機関帰属になったときに、大学として知的財産に関する経費をどれだけ確保できるかという問題に尽きると思うんです。そういったときに、これはまだ法人化後の姿というのははっきり見えてなくて、財務省といろいろ今やり取りをしているところなんですが、財務省の感覚とすれば、特許を使った収入というのは全部大学に自由に使わせるという前提であれば、出願経費等も全部大学で面倒を見なさいというのが彼らの考え方なんです。このままいきますと、出願経費等を全部確保できるかというと、できなくなってくる。そういった場合に、今主査がおっしゃったような現実の対応手段として、ある程度は知財本部で持っている大学全体の経費として賄う部分があり、もう1つは、大学帰属なんだけれども、先生が出したいというところは奨学寄付金であるとか、そこら辺で出さざるを得ないというところは、現実として出る可能性はあるかなと思っています。

   それはこの報告に入れられるのですか。

   それはまだ入れられないです。まだ方向が見えてないものですから。

   完全な個人的なコメントで、報告の文章から離れて申し訳有りませんが、実際今、私どもの地元のTLOでも、先生方がTLOをお願いしたけれども、半分断れたというある大学があって、ものすごく先生方が怒っておられるケースがあります。ただ、大学がある程度経費を持つときに、多分、大学の知財本部で判断したけれども、出さないという判断のものも出てくるかもしれない。その上で先生がなおかつ自分の奨学金、奨学寄付金というのは先生方にとっては自分の研究費のようなものなので、奨学寄付金から出してもいいから、特許を出して大学で管理してというのが仮にあるとすれば、それも入れておいてほしいというのが主査の意識かなと思います。ですから、確かに報告の中では知財本部でというか、大学のほうで断ったら本人に返すというふうにも書いてありますけれども、本人に返さないで大学持ちにしておいてほしいけれども、奨学寄付金という一種の公的だけれども、半分自分の研究費のようなお金から出してくださいというのもあるのかなというのが、多分主査のお考えかなと。つまりその場合の違いは、知財本部の特許出願費用というのは一種大学が組織として確保しているものですけれども、奨学寄付金から出せというのは、いわば自分の研究費からエクストラ(特別に)に出してもいいから、出願を出してほしいという先生方のご希望の部分を考えてほしいという主査のご意見なのかなと思ってお伺いしていました。

   だけど、それは外から見たら、奨学寄付金といえども大学に属するお金ですよね。個人のお金で出すのなら、要するに大学は管理できないということでギブアップして、個人で出してくださいといったものなので、それを大学のお金でやるというのはなかなか理屈がつかないのではないですか。奨学寄附金は個人のお金だというお墨付きでもあれば別ですけど。

   奨学寄附金は公的なお金であるから、機関有の特許に使うというだけでありまして、個人のものだったら個人のお金で、個人になりますけれども、それを今はなるべくなくそうという方向で考えるときの問題ですので、これはぜひ継続して議論したいと思います。きょう時間もまいっておりますので、この程度にしたいと思います。


5. 今後の日程
       次回は10月下旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

(文責:研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)

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