科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会
2002年9月18日 議事録科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会知的財産ワーキング・グループ(第7回)議事録 |
科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会知的財産ワーキング・グループ
(第7回)議事録
1. | 日 時: | 平成14年9月18日(水)17:00〜19:00 |
2. | 場 所: | 文部科学省別館 大会議室 |
3. | 出席者: | |
委 員: | 伊藤(主査)、牛久、澤井、清水(勇)、清水(啓)、須藤、隅藏、長井、中山、新原、牧野 | |
事務局: | 山元科学技術・学術政策局長、坂田審議官、加藤研究環境・産業連携課長、小山技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐、杉江研究環境・産業連携課専門官 ほか |
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4. | 議 題 | |
ワーキング・グループ報告書案について | ||
・資料1に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。 | ||
その内容は以下のとおり。 | ||
(◎・・・主査 ○・・・委員 □・・・オブザーバー △・・・事務局) |
◎ | 前回検討した箇所については、議論を既に事務局のほうで反映していただいているので、前回の最後に触れた「学生等が寄与した発明の取扱に関する考え方」から検討していただきたい。10ページに「学生等の単独発明については要議論」というコメントがあるが、ここで、学生等の単独発明について触れる必要があるかどうかという議論から始めてはどうか。 |
○ | 学生単独発明は学生のものであるというポリシーをとれば、特に何も必要ないのではないか。逆に、それを一元管理することになった場合、雇用関係にない学生のものをとるということになる。報告書(案)に書かれている「在学契約」とは、入学の際に大学と結ぶ契約のことか。 |
△ | そのとおりである。 |
○ | 入学した以上、発明したら大学で取り上げるという契約を結ぶことが妥当かどうかということについては、学生の判断に任せたほうがいいのではないか。ここまで大学が管理する必要があるのかと思われる。これは触れなければ、そのまま学生のものであるので、それでいいのではないか。 |
○ | 学生単独発明の事例はほとんど経験してないが、共同研究の事例は多くある。年間10件ぐらい出すこともあるが、ほとんどの場合、学生が何らかの形で発明者に入っている。現状では、当然、我々と学生の間で何らかの割合で権利を分け持っていくという形になる。基本的な考え方としては、学生単独発明については、ここまで踏み込む必要はないのではないかと思う。学生が、教官を経由することなく、または、大学にある大がかりな装置等を使うことなく発明したものに関しては、必ずしも大学帰属にする必要はないのではないか。ただ、契約を結んでいない場合でも、ある特定の装置がないとできないようなものについては考える必要がある。それ以外の場合はよろしいかと思う。 |
◎ | 研究グループとしては、内部の発明は教授なり、助教授なりの教官が本来管理しなくてはいけないと思う。そうした管理をしっかりしていただくということだけ記述すればよく、また特に一緒に研究している中で価値のある発明であれば、教官側が当然それを一緒に発明として持っていくということにすればいいのではないか。学生が単独で発明するということについては特に書かないということでこの箇所はまとめたいと思う。それでは、次に「3.特許権以外の知的財産に関する権利の取扱」について検討願いたい。まず、「データベース及びプログラムに係る著作権及び回路配置利用権」について別紙に説明があるので、そこのところを説明していただきたい。 |
□ | データベース、プログラムの著作権について、まず、報告書の本文のほうでは著作権法上の職務著作の考え方、職務著作となる要件までは説明しており、別紙1において現状以降の説明をしている。まず別紙1の「現在の国立大学における取扱」であるが、昭和62年の通知に基づき、特許と同じような条件、すなわち、データベース等の作成を直接の目的として特別に措置された経費(国立学校特別会計におけるデータベースの作成経費、プログラムの研究開発経費、及び共同研究、受託研究の形で特別に措置された研究経費等)に限り国に帰属することとし、それ以外のものは教官に帰属するということが現在の取扱いになっている。一方、本文11ページに要約しているが、職務著作となる要件は、法人その他の使用者(大学、国)の発意に基づき、業務に従事する者が職務上作成するということである。データベースの場合には、法人等の著作名義の下に公表されることである。また、作成時に別段の定めがない場合は、原始的に法人帰属ということが著作権法で規定されている。これとの関係で考えると、特別な経費の措置ということは法人の発意性であり、いくつかの要件を基本的に満たしているということになるので、恐らく、職務著作のごく一部分を、ここで規定している形になると思われる。実際には、62年の通知に基づいて、大学によってデータベース等の取扱いに関する規程を設けているところもあるかと思われる。別段の定めとしては、この範囲は原則法人帰属であるが、それ以外のところは個人帰属であるという扱いになると思われる。なお、国立大学で学内規程が未整備の場合、著作権法の要件に従って、ごく限られたものが国帰属になるが、実際に学術研究の特性と職務著作ということで考えてみると、やはりデータベース等の作成を含めて、研究のテーマの設定、進め方等は基本的に教員に委ねられていることと法人の発意の関係をどう考えるのか。それから、大学の研究において、データベース等を作成することが一般的に職務上の著作物作成に当たるということが言えるのか。また、データベースの場合、法人の著作名義の公表の要件もある。先ほどの62年通知に基づき、特別の定めの有無に照らして、具体に、どのようなデータベースが職務著作として原始的に法人帰属と言えるのかどうかという論点が一つある。例えば、特別の経費の中には、先ほどの国立学校特会の経費の他に、競争的資金でそうしたことがはっきりしている場合、あるいは、学長サイド経費などで学内で、データベースなりプログラム開発なりを明示的に応募して大学の意思としてそれをやるように資金を置いた場合などが考えられ、その場合どうするのかということもある。他にも、例えば、情報科学専攻の教官がデータベースやプログラムを作った場合、これは職務と言えるのかどうかといったことも職務著作との関係ではあり得る。一方、この職務著作の規定だけにこだわると、かなり限定的になり、たまたま公費を使って研究をして特許が出て、それに伴って、データベースやプログラムが作成された場合、例えば特許のほうは機関が承継する場合もあるかもしれず、特許は機関帰属、プログラムは個人帰属ということが生じ得るかもしれないという問題もある。最近は特許だけではなくて、関連する技術等も併せて移転する場合も多いといった取扱いとの関係も、議論の点としてはあるかと思う。また、大学の研究を考えてみると、プログラム等は研究室の中でどんどんバージョンをアップして学内で使っている例もあり、それらを一々全部追いかけて把握・管理することは現実的かどうか疑問である。また、あるいは、プログラムを書くに当たって、教官の指導の下に学生に書かせるという場合の取扱いも論点になると思われる。それらのことについていろいろ考えた結果、一つの取扱いの案としては、例えば、データベースやプログラムを公表する。ここでいう公表とは、作ったことについて紙だけでなくて、例えばオンラインで公表する場合、あるいはソフトウエアとして公表する場合も含める。公表する場合、学外に移転する必要が生じた場合、あるいは、特許権、発明の届出などとセットにして届け出ることになっている場合などについては届出を求める。その上で、職務著作なのか、あるいは、職務著作でないが大学として取り扱うべきかどうかを審議する。そこで、職務著作でなければ、個別に契約によって大学から著作権を承継するということも考えられるのではないか。これは一案であるが書かせていただいた。その他、著作権料等の還元の問題もあり、原始的に法人帰属となる職務著作の場合、大学が契約で引き継いだ場合の還元のそれぞれの在り方も論点かと思われる。あと、実際、情報科学関係の学科では開発の際に、プログラムをオープン・ソースとして公開した上で、パブリックドメイン(公開の場)で開発するという方法もあるので、そことの関連にも留意が必要ということを書かせていただいた。以上、データベース等の著作別に関する論点を紹介させていただいた。 |
○ | データベースの場合、地図のデータベースなど科学技術から離れた部分のデータベースというのもあり得るので、幾つかの具体例を教えていただければ、非常に考えやすい。 |
○ | 特許化が非常に難しかったが産業としては非常にインパクトがあった例として、いわゆる素過程の原子に電子を衝突させて、それがどのぐらい衝突断面積があるかという基本的なデータベースがあった。これはどう考えても、そのまま産業に使えるものではないが、実際には企業の方がそのデータベースを見つけて、そのデータベースを使えば、いわゆるプラズマディスプレーでどのガスを入れたらいいかということが導きだせるということで、学生とともに、30万円でそのデータベースを持っていかれてしまったという、TLOとしては、非常な失策があった。非常にデリケートな問題である。もう一つの例としては、かなり大型の計算のいろいろな有限要素がいっぱいあるプログラムの基本を作った先生が、それを一般公開したということがある。いろいろな各国の主要な研究所にそのプログラムを使わせて、それを回転させると、その先生のコンピュータの中に、いわゆる物質のデータが全部入ってくることになる。それぞれの材料の基本データが、そこへ集まるもので、いわゆる工業的価値がものすごく上がってくる。そうしたデータが集まった時点で、われわれは、その先生に、これは知的財産として管理すべきだということを提言した。つまり、データベースは最初の時点では全く価値がなく、このように蓄積されたことによって価値を生むというものが、大学にはかなりある。その辺を一元的に管理と言っても、非常にデリケートで難しい。初めから管理しろと言われても、そうするとサイエンスとして成り立たなくなるし、だからといって管理しなければ知的財産としての大きなチャンスを逃すことになる。 |
○ | 今、自然科学の例が出たが、我々が扱った中では社会科学の例があった。人口統計や選挙などのもろもろのデータベースを一部国の資金をいただいて作っていて、その帰属について学内で大きな問題になった。そのデータベースはそれにかかわった研究者の方にとっては自分の研究の一番の基盤になるので、もしそれを学校の帰属にした場合、例えば、学校をやめて、他の学校へ行ったときも、そのデータベースを使って研究を発展させることができるのかという問題がある。我々の大学の場合、著作権規定があり、データベース等は学校に帰属すると書いてあり、非常にもめたケースがある。ただ、実際、開発した人については、それを持って出られるようにするなど対処療法ということで調整を図っている。データベースというと、自然科学の問題は比較的解決しやすいような気がするが、社会科学に関するデータベースは理科系のものとは違って、蓄積することによって、将来に対する研究の基盤になる。データベースの取扱、その後の利用について、このような非常にナーバスな経験をしたことがある。 |
○ | 最初のほうで議論した大学の多様性と今の話はわりと関わりがあると思われる。あるデータを集めていくことによって、ある種の使い勝手が出てくる。いわゆる一般論でいう知的財産としてどこに帰属させてやるかとなると、その過程で情報提供する人たちの協力が得られなければ、それは作れないので、でき上がったものが協力者の皆さんが使えないという、ある種のサイエンスとエンジニアの境界領域みたいな話がある。法律論みたいな形で、このようにくくって書くと、きれいに書けるが、実際問題として、大学の社会的な貢献を知的財産だけの切り口でやっていくのがいいのかという本質的な問題をはらんでいるような気がする。 |
○ | 社会関係のアンケート調査をして、それを経時的に、どんどん蓄積しているようなものも、この定義によっては、データベースになるのではないかと思われるが、そうしたものが、研究者が大学を移るときに使えないということになると、その方の研究基盤自体が非常に揺らいでしまうことにもなりかねない。このルールとしては、何かそれを移転するようなときに、大学に報告することしか一つの形としてあり得ないのではないか。実際、ここにも書かれているように、科学技術上のデータベースはどんどん更新されていく。それはその当該研究者以外はできないものであり、先ほどおっしゃったような社会関係のデータベースの場合は、これを移転することを考えなければ、特に何も統一的に管理する必要もないと思われる。産業上、どこかに移転するときに、大学に届けるというシステムがよいのではないか。 |
○ | データベースという言い方、その範囲がちょっとわからない点もあるが、アメリカではリサーチデータの取扱がずっと問題になっている。そうしたデータが蓄積された段階で、一つのデータベースとして利用可能になるという流れだと思うが、そのリサーチデータの権利の帰属については長らく法律学者の先生も交えて議論があり、当然、大学に帰属するという意見である。ただし、各大学の公表しているウエブを見てわかるが、こうしたものを明確に大学に帰属すると規定している大学は非常に少ない。つまり、いろいろ議論はあるが、帰属については、あえてはっきりさせていない。こうしたリサーチ・データは、日本では著作物的に扱うかもしれないが、非常に取扱がデリケートであり、例えば、生データと日本で言うものがあるが、そうしたものも議論の対象に含まれている。生データというのは、ある解析装置で解析した結果そのもの等いろいろあると思うが、これの権利の帰属を決めるよりも、これをいかに管理するかということが議論されている。つまり、一定のルールで大学からデータが外部に漏れることがないように、その管理体制をはっきりさせるということである。権利の帰属よりも、管理の仕方を重視している。多くの大学は、先生個人にそれを任せている。何かあるときに、大学がそれを一元的に管理するかどうかということを次の段階として見ると、そんな感じになっている。リサーチ・データ、データベースの取扱については、一元的に決めるのは非常に難しいのではないか。 |
○ | ちょっと混乱があるのかもしれないが、リサーチ・データ、リサーチ・ツールに関しては、この報告書で意図されたデータベース、プログラムと違うものではないかと思う。ここで意図されているデータベース、プログラムとは、発明に付随しない、いわゆるコピーライト(著作権)の世界のものではないか。アメリカの大学を見ると、やはりパテント・ポリシーと並んで、コピーライト・ポリシーというものを、ほとんどの大学で作っている。帰属は原則大学であるが、その活用の仕方についてはパテントと比べると随分幅を持たせているという感じがする。実は、今、我々の大学では大変な問題を抱えている。e-Learningということでネットワークを通じて授業を流しているが、この授業は誰のものかという大変な問題がある、ネットワークに流して、ポンと行ってしまえば、大学に授業料を払わなくても、みんな受けられることになり、大学に入らなくても授業が受けられることになる。そうすると、この授業は先生のものなのか、大学のものなのかということになる。正直言って、今、我々の大学の中では大きな問題になっている。その管理を大学でしたとしても、その流れた先で、またコピーされた場合、それを大学管理として大学がそこまで責任持てるのかという議論もある。だから、パテントと、ここでいうコピーライトの話は、帰属は原則的に大学としても、その後の活用に絡む運用の仕方については、随分フレキシビリティー(融通性)を持たさなければ、うまく動かないのではないか。 |
○ | 今の授業は誰のものかという問題は、現に、アメリカで、ハーバードロースクール等の教授がトラブルとして訴訟になっており、世界的にも決着がつかない難しい問題である。多分、当委員会では踏み込んでも結論が出ないので、検討はしないほうがよろしいかと思われる。それから、単なるデータについては、あくまでも権利、財産としての権利、著作権をどうするかという問題だろうと思われる。その場合、ポリシーとしては一元管理がいいのかもしれないが、特許法第35条のような条文がないときに、勝手にポリシーだけで決めていいのかという問題がある。著作権法第15条を変えてくれれば別であるが、それが変わらないとすれば、やはり著作権法第15条を前提として考えざるを得ない。著作権法第15条で規定しているものは、法人、大学のものであり、教官のものではない。問題は、著作権法第15条で規定されないものを特許法第35条と同じように、何か規則を作って、その規則で一元管理が法的に可能なのかということになると思われる。おそらく、私はできないだろうと思うし、できないとすれば、個々の教官と、個々の教官の財産を譲渡してもらう契約を結ぶことになる。そうなれば、無償とはいかないので、対価をどうするかという面倒な問題が起きてくる。その意味で、昭和62年の文部省通知は著作権法第15条と要件は違うので、本当にこれを実施した場合、訴訟になったら勝てるかということは疑問である。あくまでも著作権法第15条を前提に議論しないと、現実的な解決にはならないと思う。 |
◎ | 著作権の問題は、これで大体よろしいかと思われるので、まとめいただくようお願いしたい。続いて、回路配置利用権についてはいかがか。 |
○ | これも、今の委員の話と若干似たような話であり、法律上こうなっているという範囲ぐらいで止めておいたほうがいいのではないか。例えば、今の回路配置の登録の実態を見ても、かなり企業でも数少ない状態である。特に、この★の2番目の、「該当しない場合には、学内規程により届出を義務づけた上で」云々という話になると、今の発明ですらえらく混乱しているのに、さらに混乱するような感じがするのでサラッと書き流して、実際に回路配置利用権そのものの問題が、もっと量的にクローズアップされたときに、改めて考えるぐらいでいいのではないか。 |
○ | 大学で回路配置を作るということははたしてあるのか。まして、学生が作るということは実際あるのか。 |
◎ | 今、LSIを国立大学の中で共同で試作できるシステムができているので十分可能性はあると思われる。ただ、新しい回路や構成については、発明のほうに入れて特許を取っておられる方が随分多く、配置利用権はあまり活用されていないので、これも軽く触れるぐらいでよろしいのではないか。それでは、次の「有体物その他の取扱」についてはいかがか。 |
○ | 単なる用語の問題であるが、12ページの下の●で「無体財産」という言葉を使っているが、これは「知的財産」に統一したほうがよろしいのではないか。 |
○ | ここで直接議論することではないが、細胞、DNA、ソフトウエア等も有体物の一種かと思われる。これを渡したときにいろいろ知的財産の取扱を決めると書いてあるが、それを渡したものを基に次のものを発展させた場合、どこまで権利を及ばすかというリーチ・スルーの問題が一番もめると思われる。この報告書に載せる、載せないかは別にして、どこまでリーチ・スルーするのか。研究者間においては何か言っておいていただいたほうが、自由に動きやすくなるのではないか。例えば、渡したものから新しい発明が出てきた場合、その発明に対して渡した人の権利が及ぶかということである。それを強く主張してくるところもあれば、アカデミックユースであれば一切結構であるというところもある。外資の会社が全部それを一律100万円で買い取るという話が出てきたことがあった。我々大学というのは出す立場であり、なおかつ受け取る立場である。もらう立場のときにはリーチ・スルーにすごい制約がかかっており、出す場合は大盤振る舞いするという不釣合いがある。ほんとうにアカデミックユースとして渡す場合、そこで生まれた知的財産云々ということを報告書に書かれているが、ここに盛り込むのは難しいと思われる。これに対するスタンスをこの報告書でなくても結構であるので、どこかで一度議論していただけると非常にありがたい。 |
○ | 確かに、今おっしゃった問題は重要な問題だと思うが、ここの部分の問題としてはマテリアルの帰属ということだったので、特にリーチ・スルーと関連しては読んでいなかった。私の知っている例の一つとして、アメリカのウイスコンシン大学がES細胞をマテリアルトランスファーするときの契約のひな形の中で、確かにリーチ・スルー的な条項が多少入っていたりするところもあり、大学だからといってリーチ・スルー的な契約条項を入れないというものでもないとは思われる。その辺は、確かに指摘されたように、もらうときだけは欧米のベンチャーなどからの条件でリーチ・スルーがたくさん付いていて、渡すときは寛大な条件にするのかどうかということがある。しかし、その辺は各大学のポリシー、あるいは研究者のポリシーにかかってくると思うので、指摘することは大事であるが、こうしろと言うことは難しいのではないか。 |
○ | 大学のよさ、学問のよさというのは自由に研究者がグローバルに渡し合う世界が一番発展するということである。半導体なども初めから全部プロテクション(保護)していたら、今ほど発展することはなかった。今のアメリカのペースは行き過ぎており、ヨーロッパその他の人たちが必ずしも賛成しているわけではない。日本は、かなり遅れてきたので、アメリカのペースに過敏に反応しているような気がする。ある程度、日本のフィロソフィー(哲学)というのも持っていたほうがいいのではないか。常にアメリカという話であれば、どこかで破綻が来る。今の進め方だと、大学訪問するのにも何かサインしなければならない話になり、とても不自由な形になるのではないかという危惧がある。 |
○ | 私も、今の意見に、どちらかといえば賛成である。企業は利潤追求なので、いろいろな意味でプロテクションをかけているが、大学の多様性が容認されているというところでは、ある種ルーズなところが必要であり、今のリーチ・スルーということで進めてしまうと、非常に動きづらくなるのではないか。例えば、特許の世界でも、MPEGというまとめたパテントプールみたいなものがあり、結果的には技術が出やすくなっている。そのパテントプールをつくった前提というのは、特許という独占的なものを複数の人が持ち合うことによって、ある意味動けなくなることを解決するために、それをプールして、みんなで使えるようにしようということであった。プロテクションの意識が前面に出すぎると、実際の技術の成果が世の中に出ていかないということが特許の世界でもある。リーチ・スルーが、あまりギラギラ出ないような形の、ある種日本型の運営を考えることは特に大学発の場は大事であると思われる。 |
△ | このリーチ・スルーの問題であるが、ここで紹介されている「研究成果の取扱いに関する検討会」報告書においても、リーチ・スルーの検討が多少なされており、基本的に、ケース・バイ・ケースで考えていただくしかないだろうということになっている。例としては、論文や口頭発表のような広く公表したものについてはリーチ・スルーを求めるのは適当ではないだろう、また、適当な条件でそれなりのお金をもらって何か譲渡した場合、リーチ・スルーの結果が出てきたとしても、更にお金を求めることはあまり適当ではないだろう、公的研究会、研究者がまだ公開されていない段階で無償でデータを渡した場合についてはリーチ・スルーを求めてもいいのではないかということを挙げており、一つの考え方みたいなものを示している。 |
◎ | ここでは知財のガイドラインを示すという目的が大きいかと思うので、あまり細かいところまで踏み込まないというご意見でまとめていただくということでいかがか。それでは、続いて、13ページの「(2)その他の技術情報、ノウ・ハウ等の取扱と成果の発表」について、別紙の資料があるので説明をお願いしたい。 |
□ | 論点としては、大学内における、情報の秘匿と教育、学術研究の推進のための情報の流通のバランスをどう考えるのか、あるいは、秘密とすべき情報、そうでない情報の指定についての考え方、あるいは、秘密とすべき情報の範囲、指定、あるいは秘密の取扱の解除の判断基準、時期、あるいは学会等での発表の時期の確保との関係も含めて、慎重に検討が必要であるが、それらをどう考えていくかということである。以前、理研や産総研のプレゼンテーションでもあったかと思うが、あのような研究所のほうでは、学会等での発表前に、組織あるいは研究室といった組織内のユニット単位で、例えば発明が含まれるか、契約との関係で問題がないかといったようなチェックをする仕組みを持っているところもある。大学ではそこをどうするのか。また、教職員に対する守秘義務、あるいは学生等の雇用関係になく、国家公務員法の守秘義務あるいは法人の就業規則上の守秘義務が将来課されるかどうか必ずしも明確でないグループが、例えば共同研究や研究室単位のプロジェクトに参加した際の守秘義務との関係、あるいは、企業からの研究者もしくは施設の利用者に対する守秘義務の関係といった点などを幾つか論点として提示しているので、この辺について議論していただきたい。 |
○ | 基本的な姿勢として、大学というのは教育研究が主体であるので公開することはナレッジマネジメントの原則である。ある限定された場、限定された条件で、守秘義務その他がかけられるべきであり、大学というところに守秘義務をかけてしまえば大学でなくなってしまう。基本姿勢は絶対に守るべきだということが、我々がTLOを作った理由である。先ほどの話と同じで、全部管理してしまうことになると、このTLOが大学の悪役になってしまうので、そう受け止められないような書き方でお願いしたい。 |
○ | 企業は利益を出すため、自分のところで生産した情報も利益に結びつけるために管理をしている。大学の場合は、そういう意味での何を目的として情報管理するのかということがあると思われる。大学が、いろいろな意味での情報を、サイエンスに役立てている意味も含めて、出していくということとの関係で守秘義務を考えたほうがいいのではないか。例えば、企業の中でも、自分の会社の中で発生していく守秘を要するような情報と、他の会社といろんなやりとりをしていく中で入ってくる守秘がある情報の2種類があり、これらは質が違うわけである。例えば、会社の中の守秘情報が、何らかの管理が悪くて、外に出てしまった場合、それは会社自体の管理が悪いので、それで損するだけの話である。ところが、相手がいて、その相手からいろいろな形で得て、契約上守秘が絡んでいる情報を誤って出した場合は、完全に相手に対するいろいろな契約上の問題が出てくることになる。大学と組んで研究する場合、企業の立場で言えば、企業がもろもろ持っている情報を非常に大事にしてほしいという意味での条件付きの情報になる。大学としては、情報をすべて一般的な守秘とせず、少し場合分けをして、もともと大学発生のものは大学の使命として緩いガイドでもいいといったようにしていかないと、企業もそこら辺がわからないために安心できない。 |
○ | 我々、現場で研究している立場からすれば、二つに大きく分かれる。我々が、企業と共同研究する場合、それを短期間に有効に進めようとすると、企業がどのレベルでやるか、本当に何を必要としているかということを聞かざるを得ない場合がある。それは企業秘密、企業が秘密にすべきことを我々に話すということになる。今のところは、我々個人的なレベルで約束して、単に判子を押すというだけである。それが、どれほど企業にとって有効なのかどうかわからないが、研究室グループの単位では、それはなるべく守るようにせざるを得ないということになっている。法人化になったとき、そのレベルをどうするかは大事なポイントかなという気がする。それから、我々があるターゲットを設けて、あるプロジェクトに参加する研究でも秘密を保持する場合がある。例えば、3年間でここまで達成するという非常に大事なポイントが出て、先端を走るような場合であれば、新しい考え方が出て新しいプロセスが出てくる。パテントも出して、学会発表に持っていくときに、学会発表を差し止める場合も時々ある。それは、グループの中でディスカッションして、これはしばらく待とうとか、これはどこまで発表しようとか決めるわけである。我々グループのある小さい単位ではそれが可能であるが、そうしたことがすべて大学レベルで管理できるかという話になると、非常に難しいのではないか。逆に、それをあまり縛りつけられると、自由な発想でいろいろなディスカッションをするという大学のよさが非常に絞られてしまうことになるのではないか。だからといって必要ないというわけではない。 |
○ | 大学の中で、これを秘密情報とすると言って、誰がそれを特定して、誰が管理するのかということになると、ほぼできないのではないか。企業の方と会った場合、これを秘密情報にする、どう管理するかということは、よく話題になる。企業も本当に大学をパートナーとして見てくれるとすれば、それなりに情報を入れてくると思われる。そうした場合、やはり管理責任において、情報を特定することはせざるを得ないと思われる。ただし、それは、あくまでも、ある限られた範囲の中でやるべきであり一般論的に大きく扱うべきではないのではないか。実際、大上段に振りかぶっても、何もできないと思われる。 |
◎ | 大体皆さんは同じ意見だと思われるので、ここの一番上の「技術情報、ノウ・ハウ等の開示には原則として機関の承認が必要」というやり方はないようにお願いしたい。それでは、14ページの「![]() |
○ | こうしたポリシーを世の中にわかるような形で公表するようなスタイルをとっていただくと、多分、この大学はこうしたポリシーで臨むんだなということが見えるので、そうしたところであれば我々企業もシェイクハンドしてみようという気になる。そうした意味で、ある種のポリシーの公表みたいなことも何かここにつけ加えていただきたい。 |
○ | 3番の下の●のところで法人化後の体制の中で発明委員会ということが書いてあるが、その発明委員会が法人化後にどのようなファンクションを持っていくのかということについて、私自身はあまりアイデアがないというか見えない部分があるので、他の皆様がどのような意見をお持ちか伺いたい。 |
○ | 実際、大学で、この発明委員会がどのように行われているか、わからないが、いろいろな学校で、教員の方がなされた発明が組織的にどのように処理されるかというところが決まればいいのではないか。例えば、企業では別に発明委員会を設けて、そこで一々発明を審議せずに、あるルールを決めておいて、これはこの手順を踏めば出していいというようにしている。それは、例えば、どこかの部長さんが発明を管理している部局にある提案書を出せば、それで済む。大学で、この発明委員会がどのような役割になっていて、それは、法人化したときに組織論として、どのように権限をどこに渡して、最終決定をやるのかということが決まれば、普通の企業に勤めている者から言えば、それほど問題にならないような気がする。今、大学でもなかなかそこのところを決定するところがないので、発明委員会などを設けて、これを出すのがいいかどうかという評価をしてもらい、最終的には学長等が責任者として何か出していくという形をとるのではないかと思っている。それは、法人化後の大学の組織設計に伴って、権限をどのように持たせるかというところで解決されていくのではないか。 |
○ | 発明委員会の委員をやっているが、そうたいした仕事をやってはいない。これは、各部局の発明委員会があり、教官が出してきたものを国有にするかどうかを決めるということであるが、教授が出したものを拒否するわけにはいかないので大体通ってしまう。しかも、審査するといっても、時間がかかり、教授が忙しい中で片手間で行うので、詳しく審査できないし、分野によってわからない場合もある。ただ、この文脈はおそらく発明委員会がどうこうということではなくて、発明に関連するところを何とか一生懸命やりましょうということではないか。 |
△ | これは、最終的には、大学で判断していただくべきことだと思うが、例えば、来年度、文科省では、大学に知的財産本部を作っていただくことを考えている。これは、もちろん、やる気のある大学に作っていただくということが前提であるが、もし、それができれば、基本的には、ここの章に関係した仕事をしていただくことになると思う。そうなれば、これまで我が省で、産学連携あるいは知財で頑張っていただきたいという観点から協力してきた、この14ページの一番下のほうに書いてある共同研究センターにしろ、もちろん発明委員会にしろ、ベンチャー・ビジネス・ラボといったものとの関連が当然出てくる。大学全体として、この新しい知財本部も含めて考えたときに、一体どうした形にすれば、一番ワーカブルで、一番効果的で、効率的に、こうした仕事ができるのか、ある意味、白地できちんと考えていただくことが大事だと思う。そういうことを考えれば、発明委員会が現在のままの形で存続するということを考える必要はないのではないか。 |
□ | この辺は作文のお手伝いをさせていただいた関係で申し上げるが、まさに先ほどの委員の意見や事務局が説明したとおりであり、実は、ここに書いた共同研究センターにしても、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーにしても、現在の組織の名前であり、いわば、現在の関連組織で、しかも、国立大の場合にはこのようなものが考えられるということである。おそらく法人化後は、そうしたものを知的財産本部を含めて、どのようにするかということである。どちらかといえば、15ページ後段の、一体となって産業界に対応する体制を構築というところがポイントであり、これがどのような名前なのか、一つの組織なのか、分散しているのかということについては各大学の知恵次第というつもりである。指摘されたような誤解があるとすれば、少し言及の仕方に工夫の必要があるかもしれない。 |
○ | マネジメントで一体となって産業界に対応する体制を構築するということと、その前の14ページの3つ目の●にある「機能とこれに関する権限を一元化し、連携に際しての大学側の判断と責任の所在を明確にした」ということをきちんと組織体としてやる形になってくれるということが一番望ましい。それをどのようにやるかは法人化後の大学の運営形態がよくわからない。例えば持株会社制度があって、事業会社がいろいろ分散していたときに、各事業会社ごとに知的財産部を持たせるのか、その大本で何か横串を通すような管理会社を作るのかという、企業の中においてもそれぞれの組織の歴史を踏まえて悩むところがある。大学が一本化して何かやるのか、外のTLOにそうした意味でのファンクションと権限も全部与えてやるのかということは、それぞれのこれからの大学の組織設計によっていろいろと出てくると思われる。ただ、一つだけお願いしておきたいのは、そうした意味でのコントロールがきちんとできるような形にやっていただきたいということに尽きる。 |
◎ | 我々の大学でも発明のプロセスをどうするかという議論を今やっているところである。発明委員会は全くこれまでの役目とは違う働きにならざるを得ないわけであり、全特許を全部一つのTLOにといえば、それを今受けられるTLOは一つもないと思われる。ある発明に対して、これはTLOに、これはどこにという幾つかの出口を振り分ける仕事をするような機関がどこかに必要であるが、それが発明委員会という名前になるのかどうかはわからない。いずれにしろ発明委員会はこれまでの発明委員会のメンバーとは全く違った、もっと実務者の委員会になるのではないかと考えている。そうした意味で、新しい発明委員会をここでは想定して各大学それぞれに考えてもらうということではないか。 |
○ | ここの部分が一番デリケートであり、大事なところだと思っているので、記述に是非工夫を加えてほしい。要は、今までの大学の教育と研究の管理と、いわゆる産学連携、産業の思惑を我々が取り入れて、しかも、費用対効果まで考えて管理をしなければならない部分、いわゆる商売の部分がこの部分には入っている。そこの管理をそれぞれの大学の置かれた状況を考えないで、親方日の丸で大学はこうあるべきととられるような文章になると、勉強していない人たちはまず組織を作るというところから入ってしまう。もう既に、我々のところで、それが起きている。ある意味で、リーダーが変われば、そのたびに違った考えでアプローチすることになる。例えば、欧米の例で見ても、リエゾンやTLOを管理している人が2年ごとに変わるなんていうことはまずあり得ない。こうした組織形態が全然違うところがあるので、その組織形態の選択はこれがワーク(機能)するようにしっかりと考えるべきだというところを、表現として入れてほしい。特に、国立大学の場合、今まで、選択肢として内部に作りたくても作れなかった状況があるわけであり、少なくともその過渡期において、ディジタルに、ゼロから1に行くようなことは物理的にも難しいはずである。大学の管理体系がまず先にあり、それに合った、今までの教育研究の管理とは別途の管理体系でなければ、今までの学習効果、蓄積された効果はないわけである。唯一、TLOが、その学習効果を持っているので、そこを考慮してほしいということをTLOの立場としてはこだわる。そうしなければ、パッと組織だけ作って、今までの話と違うことになると、連続性がなくなることになり、今までのことがむしろマイナスになってしまうということがあり得る。この部分は熟慮していただきたい。 |
○ | 8月末か9月初めにかけて、文部科学省のほうから各大学に知的財産本部の整備事業についての通知が行っているようである。私も幾つかの地方大学の関係者から話を聞いてみたが、あれはどうも東京の大きな大学をイメージしたものにしか読めないという意見があった。全国にそのような大型の大学があるわけではなく、地方の小規模の大学などいろいろな大学があるので、ここの部分も、日本の中にはバラエティーに富む大学がたくさんあり、地方であれば地方の特色も十分生かしてやってくださいというニュアンスをきちんと書いておいたほうがいいのではないか。 |
○ | 私は、この知的財産本部なるものがうまくワークするかどうかについてはかなり心配である。これは、前回申し上げたが、大学の発明委員会で国有にした特許が内外百数十件ありながら年収は微々たるものという現状がある。これが、企業みたいに儲けなければつぶれるということであれば、みんな一生懸命やるが、ほうっておけばそうなってしまう。したがって、知的財産本部をどう整備するかということを本当に考えないと難しいのではないか。企業であれば利益を追求するので、これはポリシーがあってうまくいくが、大学の先生であれば、自分の好きなことを勝手にやっており、1個発明したら、次、フォローアップするかどうかはわからず、一つの流れがあるわけでもない。会社は、例えば、プラズマをやろうといったらプラズマをやる、液晶をやるなら液晶をやるという流れがあるので、それでパテント・ポリシーを決めるわけであるが、大学では先生がてんでんばらばらな発明をしており、フォローアップもしていないし、敵もウオッチしていない。そうした状況をまとめることは、おそらく企業の特許部以上に大変なことである。したがって、具体的にどうしていいかわからないが、これは相当熱を入れてやらなければいけない。これは、はっきり言って、学者の仕事ではなく、実務家の仕事である。15ページの上に、「外部の有識者等も活用し」と書いてあるが、この有識者等にむしろ企業の専門家や、弁護士、弁理士といった人を入れてもらわなければいけない。私はそれに徹するところから始まるのではないかと思う。従来の大学の組織とは性質が違うということを認識してやらなければ九分九厘失敗すると思う。 |
△ | 知的財産本部がきちんとワークするかどうかについては、役所が予算をつけたからそうするという具合では無理だと思われる。やはり、大学自身がそうしたことをする気があるかどうかである。結局は、こうした大学の中での研究の活動の結果出てきた、新しい知的資産を社会に移転していくということが大学の社会的存在としての重要な機能の一つとして全学的な経営ポリシーに入ってこなければならないと思われる。まずその姿勢がなければ絶対にワークしない。その基本があって、仮に知財本部ができたときに、そこで働く方が非常にプラクティカル(実務的)な方々でないとうまくいかないのではないかと思う。我々は環境整備が基本的な役割であり、できるだけそのための材料を提供すべき立場にあるので、知財本部という予算要求をさせていただいたが、それは大学としての強い意思が前提でなければ機能しないと思っているし、できれば、そうした具合になっていただきたい。できるだけ我々も大学にその気になっていただけるように努力したい。また、先ほど、この構想は大きな大学向きではないかという指摘があったが、確かにそうした嫌いがないかもしれないが、大学によって知財ポリシーは多様なものになるのが当然であるので、実際にこれは予算がついて応募を受け付けるときには、私どもの考え方自身をそうした意味では柔軟性を持たせなければいけないと思う。ある一つの基準だけで大学から出していただいた構想を判断することは現実的ではない。やはり、大学の置かれている立場や、その大学が知財について何を目指そうとしているのか、これは地域の実情とも密接にリンクがあると思われるが、そうしたことをよく考えて判断していかなければいけないと思う次第である。 |
○ | 今の事務局の話を聞いて非常に意を強くしたが、知的財産本部に対するいろいろな思いをうまく使えば、非常にいいのではないかと思う。ただ、外部の人材を入れてできるのかというところは、まだ私自身わずか数年の経験しかないが、なかなか難しいと思う。本当に大学が研究管理や知的財産管理に乗り出すとすれば、自前のこうした人材を養成していくことが不可欠になると思う。では、こうした人材はどのような人材かというと、大学というのはおもしろいところで教員と職員しかいない。そのそちらにも入れないので、第三の処遇が必要になるのではと思われる。今、TLOや技術移転に携わっている方々のようにこれだけ広くやっている方は外にはいない。こうした方々に大学へ来ていただいて、大学の事情をわかっていただいた上で、外の知識をそのまま使うということではなく、外の知識の一部は利用しつつ大学の事情に合わせていろいろとしていただいている。その間に、大学として、その人から、いろいろなノウ・ハウを受け継ぐようなシステムをとっていかなければ、この文科省の支援が終わったとたんに、看板と形で後は何もなくなってしまうおそれが出てくる。我々大学のほうから見れば、非常にいいチャンスであり、自分たちの脚本を作って、それに合わせて知財本部を動かしていきたい。ただ、そうなれば、いろいろなバラエティーのある、教員でも職員でもない、そうした新しい位置づけも必要になってくるのではないか。 |
○ | 事務局が言われたように、大学が強い知財ポリシーを持たなければいけないということは、まさにそのとおりである。私も是非持ってほしいと思うが、大学というのは、企業と違ってなかなか難しい。国が資金をつけますよと言えば、確かに手を挙げて、各学部から人員を出して10人ぐらいの委員会を作って、立派な知財ポリシーを作ることは間違いないと思う。しかし、今言ったように、それがほんとうに浸透するかというと、企業とは違って、そっぽを向く先生が多いと思われる。その中で、どうやって知財本部をワーカブルにするかということになると思われる。殿様商売ではいけないので、教官の中に入っていくような人材が必要である。そのためには、これは、先ほど委員が言われたように、専従の職員が必要になる。もちろん、外部の弁護士や弁理士にも頼むわけであるが、専従の職員がある程度いないと難しい。その専従者が、どのぐらいやってくれるかということ次第だと思われる。 |
○ | 大学のマネジメントというのは、形式的なものはバッとできるわけであるが、これが失敗すると次に再構築するのはものすごく難しくなる。というのは、企業の方がこれを非常にしっかり見ており、その継続性に対して、今だんだん近づいてくれているところであるからである。この一元管理や、副学長、学長を中心にしてということについては、言葉の上では組織は作りやすい。ただ、大学のポリシーというのは、例えば、欧米の大学でこうしたものを作るとき、アカデミックなマネジメントと、こうした知財等のマネジメントとでは、それぞれ全くスペシャリストが違っている。ただ、学長がしっかりと責任を持って、全部管理してつないでいるだけである。これをそのまま日本の大学でうのみにすると、本当の一元組織を作ってしまうが、それ以上は動かない。文化が違うものが1個入るわけであり、ある意味相当の学習期間が要るはずなので、その辺を表現に盛り込んでいただかなければ、これをそのまま素直に教授会では受け止めてしまう。先ほどの委員がおっしゃったように、組織作りで委員会を作って定期的にやればいいというものではない。この仕事はプロの仕事であり、研究者が片手間にやってできる仕事ではないということは明確であるので、是非その辺を盛り込むような形にしていただきたい。外から、弁理士の方、弁護士の方、あるいは企業経験者の方をポッと連れてくれば、大学の事情がわかるということはあり得ない。大学の先生方と信頼関係を作るためには、我々でも3年間コーディネーターが先生方の中を歩きまわった。このくらいの仕事だということで、この文章を工夫していただければ非常にいい。 |
○ | 大学におけるポリシーということで、知的財産ポリシーが出ているが、国の研究機関でも、法人化した昨年以降、パテント・ポリシーなどのポリシーという言葉がいろいろと出ている。これらをいろいろと見てみると、これでいいのかなというものが幾つかある。今まで、日本では特許制度が産業界を中心として維持されてきたと思うが、大学は、言ってみれば、そこに参入するのが遅れた。米国の大学における、大学はなぜ特許に関わるかを考えると、要するに、アカデミズムがなぜパテントを扱うか、あるいは関わるかというところで重要なポイントは、アカデミズム発明、つまり、基礎的学問的研究成果を場合によっては独占的に保護して、事業者がいれば技術移転するということである。それがある一方で、アカデミズムが通常の産業界における特許と違うところは、必要に応じていつでも公開するということである。大学の多くの契約、研究者あるいは学生が大学に行って最初にアグリーメント(同意書)にサインするときの一つの条項として、その大学の設備を利用してなされた発明については大学に譲渡するということがある。つまり、大学に独占させるということである。もう一方では、そのアグリーメントに反するようなことがあった場合には直ちにパブリックドメイン(公開)にすることができるというバランスがある。多くのアカデミズムにおけるパテント・ポリシーというのは、この独占と公開のバランスを保ち、それを守っているのが大学であり、大学こそそれを守る機関であるといったことを総合して、パテント・ポリシーと規定している。個別的な特許を取るとか、権利化するとか、あるいは、産学連携のコラボレーションにしても、それを踏まえた上で、手続として、そうしたものを規定しているということがある。大きな概念、あるいは、原理、原則として、大学こそそうした独占と公開を守るセクターであるということを抜きにすると、今まで産業界がやっている特許に大学も参入するにすぎないのではないかと言われかねないと思う。そうした誤解を受ける可能性もあるので、特に、ここのところでは、そうした原理、原則を重視した形で、ポリシーを作成すべしということがあってもいいと思う。 |
○ | 今まで、いろいろな企業との共同研究や、パテントでアンフェアな経験をして個人やグループとして非常に歯がゆい思いをすることがたくさんあった。そのとき、やはり公的機関が必要だと私は思っており、共同研究等いろんなレベルの産学連携があるが、それを一元管理してくれるところがあれば非常にいいなということは前から感じていた。そうしたことが、もしできるようになれば、ある面では非常にうまく動くのではないかと思うし、知的財産だけをやってもこれはだめだと思う。産学連携の全体を一元管理していくことが非常に大事であり、それしか方法はないのではないかと考える。それと、大学の先生方がなかなか言うことを聞かないという話であるが、それを打ち消すつもりではないが、今回は法人化して状況は変わって、今の大学の意識改革は大分進んでくるのではないかと思う。今、各大学の中で、または、いろいろな部局で、法人化した後6年間の目標の具体的な計画を作りつつある。その時に、こうした産学連携の財産をどう管理するかということが非常に大きなファクターになり、それを義務としてやって、しかも、それをやったとき、どう具体的に評価するかということが今非常に大きな我々のディスカッションになっている。その為に、例えば、大学本部に産学連携センターみたいなものを創り、それに対応する組織を各部局にも作り上げようとしているところが多い。この組織に、法人化後に期待されている学長のリーダーシップと各部局長のリーダーシップがうまくかみ合えば、私は、一元管理体制の構築がうまくいく可能性が高いのではないかと思う。 |
○ | 私も今の意見に賛成であるが、企業でも、組織はいろいろ書けるが、最後は、そこにはまる人材がどうしたらはまってくれるかということである。それが、ワーカブルになるか、ならないかということの最大のキーポイントになる。研究の現場に行ってどれだけの信頼関係を勝ち取れるかということは、知的財産本部とかいう形で、ある組織ができたときに、本当にそこで骨を埋めてくれるかどうかということが非常に大きなポイントになると思う。そうすると、先ほど来、出ているように、ある種の信頼関係を得るまで、3年なり、5年ぐらい汗をかかないとだめである。企業とは違って、先生方はいろんな感性、個性をお持ちであるので、そういうことをわかってやるか、やらないかということが非常にポイントになると思う。そのときに、ここの中でも評価の話が出てきて、多分、知的財産本部を作ると、では、どれだけ実績を出しているのかだという話が出ると思われる。大学自体の持っているものが、かなりバラエティーに富んでいるということと、発明においてある種の社会的な意味合いが出てくるのにかなりロングタームであるということで、もう少し長い目で見いくというニュアンスの話もあるので、そういうことをやっていたときに専従でやるような人が悩むところは、大学で何で特許を取るのかというところに、最後は行き着くと思われる。そのとき、先ほどの委員が言われた、大学でとる、ある種の原理、原則みたいなものが悩みながら出てくるのではないか。その指針みたいなものが、もう少し書けるといいのではないか。多分、専従で人を育てようと思ったときに、迷ったらここに戻るというものがあると、一元的に管理する組織がうまくいくポイントになるのではないかと思う。 |
5. | 今後の日程 |
次回は10月中旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。 |
(文責:研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)
(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)