科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会
2002/07/24 議事録科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会知的財産ワーキング・グループ(第4回)議事録 |
科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会知的財産ワーキング・グループ
(第4回)議事録
1. | 日 時: | 平成14年7月24日(水)14:00〜16:00 |
2. | 場 所: | 虎ノ門パストラル アイリスガーデン |
3. | 出席者: | |
委 員: | 伊藤(主査)、牛久、清水(勇)、清水(啓)、須藤、鶴尾、長井、中山、新原、本田、牧野、吉田 | |
事務局: | 加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐、杉江研究環境・産業連携課専門官、 ほか | |
意見発表者: | 桝田 太三郎 氏(理化学研究所研究調整部長) 羽鳥 賢一 氏(独立行政法人産業技術総合研究所産学官連携部門知的財産部長) |
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4. | 議 題 | |
公的研究機関における知的財産の取扱いについて | ||
・ 資料1、2、3、4に基づき事務局から説明。 | ||
・ 桝田氏から「理化学研究所の知的財産の取扱い」について意見発表。 | ||
・ 羽鳥氏から「産総研における知的財産の取扱い」について意見発表。 | ||
・ その後、事務局の説明、桝田氏及び羽鳥氏の意見発表の内容について質疑が行われた。 | ||
その内容は以下のとおり。 | ||
(◎・・・主査 ○・・・委員 □・・・意見発表者 △・・・事務局) |
○ | 特許等と有体物とを分けて考えているが、実際、技術移転をうまく進めていく場合、例えば特許を移転するときに、その基となる物も一緒にくださいとか、装置であれば、その装置を動かすためのソフトを見せてくださいといったことが要求される。今は特許と有体物、無体物がワンパッケージで扱われるようになっているという感じがする。機械的な発明についてはソフトがあればライセンスの価値が非常に高まるので、ライセンス契約の中でそのソフトもセットにするケースや、またバイオ関係であれば、契約書の中に細胞片についても触れたりするケースがおそらく多くなってきているのではないか。実際そうであれば、有体物・無体物の取扱いを縦割で取り扱うことがよいのか、それとも複合した形で取り扱ったほうがいいのか。 また、お二方のところは両方とも特許等を組織が持つかわりに管理するといったことを行われていると思われる。無体物、有体物、ソフト等の場合、組織はどこまで管理できるのか。例えばワンパッケージの案件を技術移転部署みたいなところが全部抱え込んでしまうと、ソフトのクレーム処理やソフトのバージョンアップ、細胞片を機能させるためのノウハウといった幅広い問い合わせが来ることは大いに予想される。どうも話を聞いていると、管理は発生した部署で行わせ、機関は窓口業務だけしているという感じがする。そこで何か問題は生じていないのか。 試料等の提供を受けたときに、機関が契約書にサインするという話であるが、我々の経験からすれば違うのではないか。向こうが出してくる場合、こちらの研究者の名前とこちらの受け入れ機関の両方がサインをして、その研究者が受け取り、組織として管理監督するということになるのではないか。契約書のひな形が資料としてあったが、単に組織名だけで受け入れていいのか。マテリアルという特殊性からいえば、使う研究者も含めてきちんと縛っておく必要があるのではないか。要するにマテリアルの場合は、組織対組織の契約プラス使う人同士がきちんと誓約したものが必要ではないか。 |
□ | 1点目の有体物とライセンス活動との間に一体性みたいなものがあるのではないかという質問については、我々にも確かにそういう事例がある。秘密保持契約をまず最初に結び、実際の現物を相手方に出して、これならばということになれば、次にライセンス契約に移るといった形で行っている場合が多いと思う。2点目の有体物の管理については、事務組織で管理するのは難しいため、当然現場サイドでの管理ということになると思われる。ただ、そのときに、やはり事務もある程度は、どこに何があるのかといったことをきちんと把握しておく必要がある。当方の場合、各研究組織の現場組織として研究推進部があり、そこができるだけ管理に関与するというような形でやっている。最後のMTA(Material
Transfer Agreement:研究試料提供契約書)については、一応研究者のサインと事務方のサインというような形で両方サインすることになっている。 |
□ | まず一つ目の複合的な契約についてであるが、まさに御指摘のとおり、そもそも特許1件だけで契約するということはまれである。複数の特許が一つの契約の中に入り込んでおり、それをもって一つの実施がなされていくということである。あわせてノウハウ、それからデータ等も別の項目としてだが同じ契約書に定義されることが多い。先ほど当方における届出義務について説明した際、発明したときに特許出願するような場合、個人から組織に承継するという意味で届出があると述べたが、プログラムやノウハウについてもそれぞれ届出が必要である。それらの届出を知的財産部で受けつけ、それぞれに管理番号を全部振ることになる。その管理番号が契約書に書かれることになる。一つの契約書の中に、複数の特許の管理番号やノウハウやプログラムの管理番号を抱き合わせで契約することが多い。二つ目の管理者は誰なのかということについては、プログラムやマテリアルの届出が研究者からあった場合、番号を定義してつけるとともに、組織ではこれを受理したということで、その受理文書のコピーを研究者に返すことにしている。受理文書には、誠意を持って管理することといった文言を入れており、それに基づき管理してもらっている。研究者が管理し、責任はユニット長がとるという形になっている。それから三つ目の受け入れのサインについては、説明不足であったが、基本は当方としても、知的財産部長のサインと使う研究者のサインとの二つが必要である。先日サインをした契約書もサインは二者がした。これはアメリカの大学から提供されたペーパーであるが、自動的に二者がサインをせざるを得ない形になっている。それが国内的にも同じように運用できればいいかと思う。 |
○ | 一方の説明では、将来の問題として費用対効果の話をされ、特許の出願をどこまでするかということがあり、他方の説明では大いに特許を出してもらい、評価にまで踏み込むというものであった。大学がこれを始めれば、きっと財政破綻するのは目に見えている。特許についての評価を論文とほぼイコールに踏み込んだということの根拠は何か。 |
□ | 最大限の知的財産権化と最大限の技術移転をポリシーに定めたので、論文が出される以上、特許も同じように出すべきということにしている。きちんとした評価があれば、自ら出願するようになる。他から指摘されて出願するのではなく、自発的な動きのために論文と同じように評価したということが言えるのではないか。やはりインセンティブは非常に大事であり、このインセンティブの定義は、私の解釈では、研究者自らが出願し、技術移転に積極的になるということだと思っている。最近、当方では「5倍インセンティブ」を実行した。これは何かというと、特許の実施料の5倍の研究費を各年度に配分される研究費とは別に研究ユニットに配分するというものである。一番多いユニットでは、1億5,000万円を別個に追加的な研究費として配分した。その後、いろいろな研究ユニットが、特許出願や技術移転に積極的に取り組むようになった。そういう意味ではインセンティブが非常に大事ではないかと思う。しかし、特許出願費用も悩みの種であり、おそらく今後は特許の質をどんどん検討していく必要があると思う。 |
◎ | 民間であれば、研究成果の発表をする前に、多分、特許部その他がすべてチェックして、必要なものを特許化するといった手続が入ると思われる。研究、論文の成果と特許、知財の成果を同等に評価するような場合、その研究者が的確に研究成果と知財との評価ができればよいが、大学の研究者に期待するのは難しいと思われる。以前紹介されたドイツの事例では、発表の2か月前に大学に発明を届出させてコントロールすることがあった。日本の大学でもしそれをしたら、専門家がいないことになるが、知財として届け出るものだけを知財として扱うのか。ほかに自由に研究発表してしまったもののほうがより高い知財の価値を持っているというケースが多いのではないか。そういうことは議論されているのか。 |
□ | 一応所属長がまず特許になるようなものがあるかどうかというのを判断して、特許になるものはまず特許を申請するという形にしている。また、別に、パテントリエゾンスタッフというものがおり、それらができるだけ研究現場を回って、いろいろな研究過程の情報を得ながら、これは特許になりそうだから早めに特許を出すことを考えたほうがいいといった助言を行っている。ただ、それでもチェックから漏れるものがあり、先に発表してしまったというものが例としてはあるのではないか。先ほどの委員からの質問についてであるが、当方の場合も明確に特許と論文を対等に評価するということはない。現にいろいろな研究者の評価にあたっても、論文を中心に評価をしていると思われる。ただ、いろいろな評価にあたって資料を作る際、従来は論文一覧というのが中心になっていたが、何年ぐらい前からか、特許等を申請した、あるいは取得したといったことも資料として追加するようになっており、評価の一部対象になっているところがあると思う。一方で、事務局においては、今後公費をもらって行う研究については、できるだけ社会に還元していくようにという啓蒙活動をしており、特許に対する意識は十分高まっていると思われる。今後はほっといてもどんどん特許が出てくると思われるので、限られた予算の範囲内でどうしていくかということがまさに緊急の課題になっている。従来は、例えばもう既に出していたもので維持管理の段階で、これはあまり使われそうにないというようなものについてはできるだけ廃棄したり、あるいは外国出願については経費がかかるので、知的財産権検討委員会の下の部会で、外国特許にすべき案件かどうかを審議してもらい、そこでオーケーが出たものだけを外国特許に出すというようなことをしてきた。ただ、それだけではだんだん間に合わなくなり、研究者から申請があるものを全部出していくと予算がパンクしてしまうため、これからは国内特許の申請段階からも何らかの基準を設けることを検討していかなければならない。 |
○ | 研究成果を有効に技術移転できるかどうかを見定めるということはそうたやすいことではない。特許の質や価値というものは、その時点で決まるものではなく、10年後に決まる可能性もあるきわめて奥深い話であり、それをアクセルとブレーキでうまくバランスをとらないといけない。特に大学の場合は教育というものがあり、もともとディスクローズ(公開)しなければならない情報を占有してしまうことになるので、その辺のバランスが必要である。今、先行されているところから、後続者にここはあまりブレーキをかけないようにといった助言がいただければ、非常にありがたい。 |
□ | 先ほどの主査からの質問は特許出願の評価についてだったと思う。 当方では、全部で60の研究ユニットから成っており、各ユニットにユニット長がおり、そのユニット長が技術的な中身について判断する。研究者が論文を提出する際に、ユニット長決裁になっており、その様式の中できちんと特許が載っていれば、それでよしとし、特許が記載されていない場合には何故出さなかったのかというチェックをユニット長がするというやり方をしている。他方で、ソフトウェア関係の研究部門では、研究者が特許をとれないものだと思いこんでいたのか、実は特許出願していなかったということがあった。世の中にはビジネス特許などがあるということを認識してもらうような場面もあった。このように特許の可能性について徹底して確認しているかというと、必ずしも本人はチェックしているつもりでも、チェックできていないということがありえる。そこはまたさらに周知徹底していくことにしている。それから先ほどの委員から質問があった費用対効果については、かかった費用ほどの効果はまだ出ていない。当研究所には研究者が2,500人おり、うち地質などの特許に関連しないような分野から仮に出願がないとすれば、2,000人ぐらいは関与するかもしれないので、特許出願を2,000件くらいは目指してもいいのではないかと当方では今のところ考えている。昨年、1,000件ちょっと出願しているので、多分今年は千二、三百件ぐらいいくのではないかと思う。ただ、2,000件に達するまでに質についての評価を導入していきたいと考えている。とりあえずは、出願の件数を伸ばしていきたい。 |
○ | 三つほどお伺いしたい。先ほど足切りをされるという話があったが、特許の価値がないと判断されたものは機関としては出願しないとすれば、それについて研究者個人が特許をとってもよいのか。それがまず1点である。つまり、大学の事務局で特許を管理する部署を作っても、特許を店ざらしにするだけで全く役に立たなくなるのではないかと思われるからである。一定期間、評価できない場合には個人の権利に属するとかしないと、店ざらしで埋もれてしまうという最悪のケースになるのではないかと思われるので、その辺はどういうふうに管理しているのか。それから、2番目は、アルゴリズムや計算方式といった、最近特許として認められるようになったものについてであるが、こうしたソフトウェアは、オープンソースで研究する場合がある。そうすると、どこかの研究機関がオープンソースでいろいろなプログラムを開発して、それを特許にとって機関が運用するということになると、その研究に参加している他の研究機関の研究者からクレームが出るのは当然だと思われる。このように研究者というのは、ある意味で幅広い研究交流をしているので、その辺の管理についてはどう考えればよいか。3番目は、おそらく法人化後の大学においては、もっと積極的に企業と共同研究が増えるかと思われる。そちらは既に独法化されて共同研究が増えており、企業と契約して、資金を企業に依存して研究を行った場合、あらかじめ特許等の取扱いについて契約の中で取り決めておかなければまずいと思われるが、その辺はどう考えているのか。 |
◎ | 今の質問は三つあった。まず一つ目は、特許として受け取れない場合にその特許をどうするのかという質問である。あるいは何年間か店ざらしになった特許についてはどのようにするか考えているのかという質問だったと思う。 |
□ | 当方の場合は、職務発明規程で申請してもらい、それを職務発明として採用しない場合は、個人がそれを自由にしていいということになっている。2番目の質問については私は専門外なのでわからない。3番目の質問の企業との共同研究については、いろいろな契約の書きぶりがある。単に特許については、実施にあたっても協議するという形でとどめている契約もあれば、特許がとれた場合の実施料について上限何パーセントまでと数字まで定めた契約を結んでいる例もある。そこはまさにケース・バイ・ケースである。我々としては、できるだけ共同研究の段階からその実施まで見越した上で有利な契約を結びたいと考えているし、企業は企業で何とかフリーにしておきたいと考えているので、いろいろと問題がある。 |
○ | 企業との契約を結ぶ場合、管理部門が事前審査を行うのか。 |
□ | 契約については我々が業務としてやっている。研究者から共同研究の中身を詳しく聞いて、これならまさに本当に特許になると思われるものについては、できるだけ我々に有利になるよう、実施料のことまで踏み込んだ契約にしようと考えている。ものになるかどうかはっきりわからないものについては、単に協議するという記述でとどめていたりしている。 |
□ | 特許として受け取れない場合という質問だったと思うが、当方ではユニット長からの出願指示に基づき出願する。出願しないものは先行特許がある場合である。筑波には非常勤職員で弁理士が14名おり、週平均2.5日勤めていただいているが、バイオ、情報、機械、すべての分野をカバーしてもらっている。研究者はこれを出願したいと思ったらまず知財部に連絡をよこし、知財部の面接スペースで弁理士と研究者とがやりとりをし、出願内容をブラッシュアップする。ユニット長が出願可否の最終決定を行うルールになっている。 |
○ | ベンチャーを自ら実施する場合、50%という話が先程あったが、これは研究所の職員であることを一時的にやめて、それでベンチャーを自ら興すということなのか、それとも研究所の職員のままベンチャーを興すということなのか。 |
□ | 通常は兼業である。例えば、17時まで研究所の職員として働き、17時以降は、研究所の中に支援制度で一定のスペースを捻出してもらい、そこでベンチャーに従事してもらうといった兼業があげられる。一番推奨されているのは、人事院としては休業と言われているが、まだ前例がない。 |
○ | 二つほど質問がある。一方の研究機関は特許を管理するところと技術移転するところを内部で持っており、それに対して他方の研究機関は特許を管理する部署と技術移転する部署を別にしている。それぞれ、別にしなかった理由、一緒にしなかった理由を教えていただきたい。それからもう一つ、先ほどの説明を聞いて、ざっと計算しても特許だけで20億円ぐらいかかっていると思われる。なおかつライセンスアウトソースを外でやり、ついでに知財のマネージとトランスファーにかかるコスト全体としてどのくらいを想定されているのか。それぞれアバウトで結構なので教えていただきたい。 |
□ | なぜ外部にしないかということについては、伝統的に内部に知財関係の部署を抱えていて、ずっとライセンス活動をしてきたという歴史的背景があるためである。今後、どうするかについては、ライセンスのところは外部に作ったらどうかという意見がある一方、やはり一緒に内部でやっているほうがいいのではないかという意見もあって、検討中である。 |
○ | どういう理由で外部に出したほうがいいという意見があるのか。 |
□ | よりそのほうが効率的ではないかという意見である。我々事務組織というのが必ずしも専門家ではなく、2年ぐらいで異動がある現在の体制を考えると、ライセンス活動で企業と交渉するには専門家がいたほうがいいだろうという意味では外部に抱えてちゃんとやったほうがいいのではないかという意見は当然ある。それについては、我々は、先ほど説明したコーディネーターとして専門家を任期制で外部から内部に取り入れて対応しているのが現状である。コストについては、例えば平成3年などは収支がとんとんであった。ただ、そのコストもどこまでカウントするかということがあり、我々事務職員の人件費までカウントすると、当然赤字になると思われる。弁理士費用など特許にかかるコストと実施料収入との間では平成3年ぐらいまでは大体とんとんであった。 |
○ | 人件費は入れないのか。 |
□ | 職員の人件費は入れていない。ただアルバイトや派遣職員の費用は計上している。 |
○ | 人件費などは除いて、トータルにコストはどのくらいかかっているのかだけで結構である。 |
□ | 今現在のコストは数億である。収入が昨年は7,000万円あり、今年はもう少し伸びて1億円いくのではと思われ、おそらくコストの3分の1程度の収入がある。ずっと以前は大体とんとんぐらいであったが、そのときはもっと特許出願の申込みが少なくて1億前後のコストであった。 |
□ | 一つ目のなぜTLOを内部で一緒にしなかったのかということについては、理由が二つある。一つは、マーケティングにおいてはやはり経験者が必要であり、あとは公務員でないほうが商売しやすいといった経営上の理由である。専属のTLOの職員の半数が、企業の経験者であり、技術移転や知財部での契約、交渉をしたことのある人たちが採用されている。そうした人材を内部に一気に採用するのは難しい。採用の自由度から外に置く必要がある。それから二つ目の理由として、中期目標がある。これは4年あるので成果が芳しくなければ、その組織の存続を考える必要がある。外部組織であれば、そうした組織の改廃が容易である。その2点の理由で外に置いた。それから費用については、TLOや非常勤弁理士、外国出願費用、国内の出願費用を含めて、数億円である。そして収入については、昨年度が1億4,400万円であり、まだ少ないが、これをどんどん大きくしていきたい。独法化前の過去の実績では、昭和50年に約5億円の収入があった。昭和の時代は、少ないときでも3億円ぐらい、平均では3.5億円ぐらい毎年、実施料収入があった。今は落ち込んでいるが、TLOがなくてもそこまで収入があったので、当面の目標としたい。MITのTLO所長が、先日、研究費の3%〜5%が還ってくれば良いほうだということを述べられていた。特許料収入で研究を全部賄うということは全然考えていない。ただ、インセンティブは非常に大事であり、インセンティブがあればいいものが出てくるという意味では3%、5%というのは正しいのではないかと思う。 |
○ | 先ほど説明があった、実施料収入の5倍のインセンティブを研究費として出すということについては知財部で管理しているのか。 |
□ | 予算は実務的には財務会計部門というところが扱っている。それをコントロールしているのは、企画本部というところである。 |
○ | マテリアル・トランスファーのMTAの契約書がアカデミックの場合と対企業との場合とで、それぞれ違う部署で作られているようであるが、その理由は何か。 |
□ | アカデミックな場合では、まさに研究者同士の緊急なモノのやりとりを本部機能である我々が一々行っていたら非常に機動性に欠けるだろうという理由と、ほとんどそれには権利関係は生じないだろうからという理由とで、そうした場合のモノのやりとりは現場に近いサイドの事務が一応管理しながら行うようにしている。ただ、民間の場合はいろいろな権利関係が生じる可能性があるので、そこは我々のところでチェックをしながらきちんとした契約を結んで行うことにしている。 |
○ | アカデミックな場合でも研究者個人としてMTAを作ることはまずないということか。 |
□ | 様式は基本的には研究所の事務できちんと準備している。サインは研究者がするか、あるいは一部事務が添え書きする場合もある。 |
○ | 大学の先生方は結構個人ベースでマテリアル・トランスファーをアカデミックユース(学術研究用)で行っており、すごく煩雑で面倒くさいという話があったので、今後法人化後は、アカデミック用のそうした部署が必要になってくるのかなと思い、質問した次第である。 |
◎ | 最近、我々のところにアメリカから研究試料の申し込みがあるが、相手の窓口は弁護士の方がされている。クライアントから弁護士を通して我々に来るため、我々のほうでは知り合いのアメリカの弁護士にお願いして、第一回目の交渉をしてもらった。それだけでも10回ぐらい往復してやっとノンディスクロージャー・アグリーメント(秘密保持契約)を結ぶところまでいった。国内の話もあるが、今後は各大学が海外とのこういう問題のやりとりをするときに、例えば文科省が北米やヨーロッパの何カ所かに顧問弁護士のような方を、何種類かの分野について相談ができるよう配置するなどの必要があるのではないか。そうでなければ、とても同じレベルでテクノロジー・ライセンシングやトランスファーについてのやりとりをすることはできないのではないかと思われる。 |
△ | 文部科学省としても、いわゆる契約に基づく産学官連携や技術移転を進めてはいるが、今の指摘にあったとおり、アメリカなどと比べて契約文化もなく、弁護士や弁理士の数も全然比較にならない。そうした中で契約に基づく産学官連携を進めていくとすると、どうしても過渡期的に何か国として対応する必要がある。しかし、国があまりにもやり過ぎると、冒頭で委員から指摘があったように、結局ビューロクラティック(官僚的)なものになってしまい、店ざらしになる可能性がある。そこの兼ね合いがすごく難しいため、我々としてはできるだけTLOや民間でのいろいろな成功事例をうまく大学と連携させ、大学ができるだけ学習をしていけるような環境を作ることによって何とか接点を見出していきたいと思う。その中でいろいろな評価の仕方や処分の仕方について、皆様方のお知恵をいただいてシステムを作っていきたいと考えている。 |
5. | 今後の日程 |
次回は8月上旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。 |
(文責:研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)
(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)