○ |
TLOの形態の選択に当たっての結論で示されている、 「特定のモデルのみで固定するのではなく時間の経過とともに組織形態を変更していく場合も考慮」が一番現実的な方法だと思われる。少なくとも国立大学の今までのマネジメント体制を急転直下、1カ月や2カ月で全部ひっくり返すということはできるはずがない。この のプロセスについて、具体的に検討しているのか。
|
□ | この に関連して、現在外部TLOであるものを内部TLOに移行させるという前提で、二つの議論があった。一つはテクニカルな議論であり、TLOが大学に営業譲渡するのと大学がTLOに出資していったん子会社化しその後に営業譲渡をするという二つの方法のどちらがベターかという問題である。収支採算がなかなか厳しいTLOに対して大学が出資することが果たして可能なのかどうかという点である。それに関して特許の名義を書きかえる経費や時間等を考えると、TLOが大学にいきなり営業譲渡するのは難しいので大学が出資した後に営業譲渡すべきという意見もあった。もう一つの議論として、TLOの業務内容について、技術移転だけをやるということで内部に取り込んだほうがいいのか、あるいは、契約部局も含めたリエゾン型で入れたほうがいいのかという、内部移行の際の組織形態についての議論もあった。
|
○ |
最初に大学で生まれた成果の帰属については、やはり国として一つの方向を作っていく必要があると思われる。帰属の問題が一番大きな話であり、その後のTLOの形態云々については、いろいろな利害得失の整理をして、各大学、各独立行政法人で積極的に議論していくというスタンスが普通ではないか。これだけいろいろなメンバーがそろっているので、いろいろなメニュー、メリット、デメリットを整理した上で、帰属の問題に基づいて各機関が選択する際の参考資料にするという理解をしている。その辺の位置づけについて、事務局から意見をいただけないか。
|
△ |
まず基本は知的財産の帰属であり、これについては様々な会議において、おおよその方向性は出ている。具体的に大学において知的財産の帰属の問題をどう考えるかということについての確認と、それに従った法的な意味でのいろいろな整備が必要であると考える。実際に大学が組織的に管理する場合に、その実効性がないと困るので、どういう体制が必要か、あるいはその予算措置も含めて、問題点あるいは将来に向けての財政措置についての議論をしていただければと思う。あまり帰属の問題等のあるべき論をやっても、現実の姿を忘れてしまうので、ときどきフィードバックしながら全体をまとめていただきたい。
|
○ |
基本的に帰属の問題が一番重要であり、今の特許法第35条、特に第2項の問題と絡めて考えないといけない。国立大学が法人化したときに、今の雇用の形態と、法人化後の雇用の形態について考える必要がある。法人化したときに、もう一度雇用し直すのかどうかという問題がある。国立大学が法人化していく過程で、雇用の問題はどんなふうに今考えられているのか教えていただきたい。
|
△ |
今の基本的な方向については、非公務員型の国立大学法人であるので、各法人が就業規則を定め、それに従って雇用関係が生じてくるということで理解している。
|
○ |
多分これは文部科学省が国立大学に対し、ある程度規範を示して方向性を示す必要があるのではないか。これについて具体的に何か考えがあれば、研究者の職務を考える上で参考になるのではないか。
|
△ |
例えば、就業規則のモデル的なものを具体的にどこまで作るのかという問題など、まだはっきり決まっていないところがある。今年の夏か秋ごろを目途に、いろいろな形で検討が進んでいくというふうに聞いているので、この進捗に合わせて、より具体的なものができ次第、こちらの会議にも示しながらやっていきたい。
|
○ |
基本的な共通のルールとして押さえるべきところは押さえつつも、各大学の独自性や自由度が増していく方向で議論を進めていくという理解をしている。例えば設置形態をどうしていくかというような話に関しては、各形態にはこういうメリット、デメリットがあるというようなことをしっかりまとめておく必要があるが、最終的にどういう方向をとるかということについてはある程度各大学の自由に任せてもいいのではないか。もちろん共通のルールとして、押さえておくべきところは押さえていくというような方針で、TLOの形態についても議論をしてもよいのではないか。
|
○ |
先ほど指摘のあった雇用の問題は一つの大きなポイントと思われる。新しい法人ができた際、国立大学の先生は、いったん全部解雇されて、全く新しい雇用契約を結ぶことになるのか。もし、そうであれば、この帰属の問題についても、新しいルールを適用し得るのではないか。それを今の延長のまま読みかえるという形にすると、帰属に対しての扱い方もいろいろな制約を受けるのではないか。非常に悩ましい問題でどう動くかよくわからないのは承知しているが、雇用契約でいくのか、職務という扱いのアプローチを拡大していくのか等いろいろな形が取り得る。
|
△ |
現時点の状況を調べて、また次回に報告する。
|
○ |
教官からの特許出願の要望が強いカナダの例についてであるが、当然引き受けられないという事例が出てくると思われる。我々のほうでも、最近、ある研究についてTLOが引き受けられないという事例があった。引き受けられない場合、カナダではすべて個人に帰属するというような判断をしているのか。
|
□ | ブリティッシュ・コロンビア大学の場合は、3カ月以内に結論を出し、引き受けられないというものについては、個人に返している。ただ、バイオ系の場合、かなり特許費用もかさむので、なかなか個人で出願するというのは難しいため、大学に出願するよう直談判している教官が非常に多いという実態がある。
|
○ |
この会議の議論においては、法人化後の大学が組織有で一元管理をしていくという方向が出てきていると思われる。TLOを実際に運営している者からすれば、大学の中に特許部をつくるという話は机上の論理では可能であっても、現実には難しいと思われる。組織を作るという目的に焦点が行き過ぎると、問題を解決することはできない。TLOを立ち上げるだけでも3年4年とかかっているわけであり、タイムスパンというものが必ずある。将来像があるとしても、そのタイムドメインがどのくらいかといった議論をしておかないと混乱する可能性がある。
|
○ |
現場にいる研究者にとって特許というのは非常にわずらわしい。研究者に利益が返るというのはもちろん当然であるが、研究者の負担をいかに軽くするかという点が重要である。指摘があったように、過渡期の措置は絶対必要だと思う。当大学に何人博士がいるか知らないが、おそらく3,000人ぐらいはいると思われる。それを1つの会社に例えれば、3,000人のドクターを抱えた会社ということになり、その特許部というのは膨大なものになる。その組織を作れと言われても、すぐには作れないので、過渡期的なことを考えなければ現場が非常に苦労する。
|
○ |
機関に帰属するという方向については長い議論を経てできたものと思われる。ただ一番問題なのは、これについてどう合理性のある、納得ある説明を作るかということである。リサーチ・ツールも対象に入っているので、それをどういう理屈づけをしていくのか、こうした場で環境整備をしてもらうと私立大学としても非常にやりやすくなる。これは昭和52年答申に比べると全く新しい論理をとらざるを得ないと思われる。機関帰属の理論付けのあとに、それを担う、転がす機関をどういう形態にするべきかという順序になるのではないか。
|
○ |
私はTLOで実際に働いており、研究者の方々と接する機会があるが、研究者の方々は今、ほんとうに戸惑いを感じていると思われる。特許を取れといきなり言われても、どういうものを特許にすべきかという勉強がまだなされていない。現在、知の活用ということで、技術移転を進めるという方向で話は進んでいるが、どういうものが特許になるのか、どういうものを特許にすべきかという教育が大学内でまだ行われておらず、中抜けの状態で技術移転の話が進んでいるのではないか。これからどんどん特許を活用していくということを考えるのであれば、まず、大学内の研究者の方々に勉強する場を持ってもらうことが必要ではないか。そうした教育をTLOが担っていくのか、それとも文部科学省として何か部署を作るなどして、そうした教育をしていくのか。企業であれば、就職した研究者に対して特許の勉強会を開き、教育をしている。大学の研究者は、そうした機会を持たされずにいきなり特許を取れと言われることになる。その際に、大学で特許を取る意義というのが必要ではないか。実際、市場性も踏まえた上での特許を考えていかなくてはいけないので、先生方が特許を取れといっても、TLOはすべてを受けられない。そのギャップを埋めていくことについてもTLOがすべて担うのか。
|
○ |
今の問題は、知的財産戦略会議でも重視しており、指摘のあった件については対処する予定である。この場で大学の教官のマインドをどうこうしろといっても、多分できないのではないか。 何事も経過措置は大事であるが、各TLOや各大学によって事情が異なるので、とりあえずは大枠を決めなければいけない。大枠を決めた上で、経過期間、経過措置というものを詰めていくことになると思われる。
それから、法人化後の身分の問題であるが、公務員から今度法人の職員になるに当たって、身分を失うとか変更するといった問題はあまり重要ではないと思う。身分の問題は別途違うところでやってもらえばいいことである。ここで問題なのは、特許法第35条の解釈である。私の感じでは、おそらくこの程度の変更なら自由にできると思われる。そうであれば、法人化しようと決めればいいだけの話であり、身分の変更等を議論する必要はない。
|
△ |
TLOがすべてを抱え込んで、普及のことは全部やるというのは大変なことである。先日の知的財産戦略会議で文部科学大臣のほうから提言したのは、大学側もしっかりとそうした普及も含めた知財の取得・管理・活用を進める体制が必要であるので、例えば全国の数十カ所ぐらいの大学に知的財産本部といったものを置くようにするということである。その組織がTLOと連携をとれるようにするとか、あるいはこれからTLOを作るところは組織の中にTLOを組み込むとか、大学が多様な選択をすればいいというふうに我々は考えている。そうした大きな組織が置けない大学においては、例えば第三者的な機関が専門家を派遣するなどのシステムを整備していきたいといったことを内部で検討している。
|
○ |
いろいろな意味で学が保有している頭脳に大いに期待して、産学官連携がうまくいかないかということが根幹にまずあって、いろいろと議論されているかと思われる。企業であればプロフィット(利益)を上げるために、すべての物事が収斂されていくが、大学の場合には、どこにその意義を置くのかということがないと、研究者がモチベーション(動機づけ)を持てないのではないかと思われる。もう一つは、コスト意識の問題がある。企業であれば売上があって、その中で利益を上げて、R&Dを行っていき、あるものが当たれば発明者に還元という形になる。今回のこの資料全般を見ると、大学の研究の原資は税金などから来ているにもかかわらず、うまくいったときには発明者に対してインセンティブを与えるという形になっている。ここにはコストの意識はない。企業全体のマネジメントから見ると、企業ではコストを踏まえた上でよい結果が出てきたものに対してそれ相応の対価を払っていくという点に比べて、資料ではコストに対する意識をしていない点にギャップを感じるので、その辺は視点として入れてほしい。それから、先ほどの大学の多様性と絡むが、企業では、研究開発は職務だからきちんとやれということが一番の前提としてある。そうしたこと(職務)を大学の場合にどういうふうにセッティングしていくかということについても議論してほしい。また、先ほどの対価の話にも絡むが、全般的に企業であれば、組織対個人といったときには組織を優先している。多分大学の先生方というのはそうではなく、ある意味では組織よりも個人が今まで優先されてきているが、「個人よりも組織を優先する」点でパラダイムシフトを起こすことになることを認識してもらわないと、議論が迷走するのではないか。
基本的には成果をいろいろな形で産業にフィードバックをかけていくためには、個人では限界があるので、機関帰属が大原則だと思う。ただ、機関帰属のマネジメントをどうするかといったときに、TLOが外部組織なのか内部組織なのかというのは、画一的に決まる話ではなく、それぞれの歴史とか生い立ちによって決めていくことができると思われる。多分内部組織となれば、権利を持っている大学と一体なのでいろいろとやりやすい。外部組織の場合、権利は大学に帰属して別法人のTLOが扱うとなると、大学の先生の頭を使うことに対して外部TLOがどのような契約関係を作るのか、産学連携であれば企業と外部TLOとの間、外部TLOと大学との間でどのような契約関係を作っていくのかをクリアにしなければならない。今は混沌としているので、いろいろな動きが出てきて、気がついてみると、うまくいかないということが起きうるかもしれない。外部、内部のTLOそれぞれの場合に応じて、フォーメーションを具体的に積み上げたほうがいいのではないか。要は、機関帰属に併せて一元管理できる体制を柔軟に構築することが非常に大切である。
|
○ |
先ほど、特許法第35条の改正を視野に入れるような話があったので、事務局のほうに質問したい。いわゆるドイツのような法律改正、要するに特許法第35条と全く別の公的研究機関に属する研究者の発明に関する法律みたいなものも視野に入れて議論するのか。先ほどの長平先生のレポートの一番最後のページにも、法律か各大学の規則制定かといったことが書いてあったので、どの辺まで視野に入れて議論していくのか教えてほしい。
|
△ |
今の特許法第35条自体の見直しについては、経済産業省、特許庁を中心に検討されているようである。いずれにせよ、事務局としては今の特許法第35条の中での位置付けをどうするかということで議論していただきたいと考えている。ただ、議論の過程で出てきたいろいろな意見については参考にさせていただきたい。
|
○ |
私は大学と企業とは全く違うと考えている。大学こそ経済復興の再生のキーであると言い、大学が経営者になるべきだといったことを言う人もいるが、全くの間違いである。これは先日の東大の卒業式でオックスフォードの総長が講演でも述べられていたが、大学には大学のレゾン・デートル(存在理由)があり、それを失ったら、大学は全部株式会社にすればいいわけであり、そうなってはいけない。ただ、現在のところは公費を投入して社会に還元する技術を持っていながら、あえて還元していないことがおかしいだろうというだけの話だと思われる。それを還元するためのシステムを作っていけば、うまくいく。アメリカのシリコンバレーがうまくいったのは、別に法律をつくって尻を引っぱたいたわけではなく、そうした仕組みを作ったからである。それ以上、大学の研究の自由にまで介入して、企業の論理を持ち込むようなことはできないと思う。戦略会議のほうでも、そこに配慮した文章を書きたいと思っている。
|
○ |
米国では、1980年に、いわゆるバイ・ドール法を制定した。その際に、議会を含めて、大学はもとより大きな議論があり、内部で特許をやるべきではない、大学は企業ではないという意見が最初は主流であったが、今指摘があったように、学術的あるいは基礎的な研究であっても、大学に蓄積されている豊富な研究成果を何とか社会に活用しようという背景があった。ちょうど現在の日本と似ている。少なくとも知的財産権ということを議論するに当たっては、当初に指摘があったように、まず、ポリシーを確認しておく必要があるのではないかと思う。
国の研究機関の中には、独法化後に産学官連携センターとTLOを作って、それらが連携する形でスタートアップしているところもあるが、実務レベルで見ると、なかなか思うようにはいかない。また、研究者の特許への関心が比較的薄い。そうした中でスタートして一番感じるのは、いろいろ質問してみると、研究成果を社会に役立てたいというところでは、ほとんどの方が共通して言われるが、すぐに学会発表したいという方向に行ってしまうことが多いと思われる。米国の場合、これをどういうふうに解決したかというと、一つは大学のミッションとして、教育、研究に、パブリック・サービス(公共奉仕)という概念を入れたことである。社会貢献という意味から、特許を入れてもいいのではないかということで、パブリック・サービスの一環として技術移転システムというものを作った。
米国の場合、大学でパテントを論じる場合に必ず前提になるのは知的財産ポリシーであり、ポリシー(方針)&プロセデュアーズ(方法)が必ず対になっている。これがどういうわけか日本に入ってくると、プロセディアーズ単独となり、ポリシーの部分が飛んでしまう。ポリシーとは、各大学にこういう基本レベルを作りなさいということを連邦政府が義務づけたものである。それに基づいて各大学で横並びでない、各大学固有のふさわしいポリシーを制定し、その中でTLOや組織などの方法論を考えていく。TLOも非常に重要であり、今後組織的にも拡充していかなければならないと思うが、その前に当初の基本理念をどうするかというところを論じることが重要である。
|
○ |
私もいろいろな海外を含めた事例を調べていると、大学が産業界の論理で動くようになってしまうというのは、先ほど指摘があったように全くの間違いであると思うし、大学の中に存在する産業界で活用できる資産を有効に活用していくということも確かにそうだと思う。それに加えて、アメリカのいろいろな事例の中で、例えば競合している企業がコンソーシアムを組んで新しい研究開発を行っていくときに、そこに産業界の論理とは違った非営利的な機関である大学が入っていくことによって意見の調整がつくといった事例もある。積極的に産業界の中に新しい風を吹き込んでいくことによって産業界とともに発展していくという大学の在り方が、まさに法人化後の姿として望まれているのではないか。この制度設計の話としては、そうした目的を達成するために、いかにして自由度の高い、フレキシブルに対応できる組織を作っていくかということも念頭において議論を今後進めていけばいいのではないか。
|
○ |
基本的には知的財産が法人化後に組織に帰属するということに関しては、何ら異論はない。ここでは、大学でスタッフ、学生等総勢30人ぐらいで材料開発研究を進め、毎年10から20くらいの特許を申請している立場からの意見を少し述べたい。先ほど現状の制度に基づく国有特許と個人有特許の話があったが、残念ながら我々のところからは国有特許は1件も出していない。その原因は、国有特許の場合は、出願前の既存特許の調査、特許の執筆、公開後のクレーム処理等に多大の時間を割く必要があり、本務と考えてきた研究・教育および論文作成に問題が生じる事が多いこと、また学会発表と申請時期の整合性の問題の解決の困難さにある。しかし、費用等の問題で純粋に個人またはグループで申請するのは不可能であるので、個人有特許出願の許可をもらった後に、実際は企業と契約を結んで共願するか科学技術振興事業団の制度を使って申請している。このケースでは、国有特許出願の諸問題は大幅に軽減されると共に、特許申請の必然性/有効性に関して専門家の的確な意見を得ることが出来ること、また国際特許に持っていくことが容易で有る等の大きな利点がある。この様な経験を基にすると、法人化後に全ての特許を外部TLOあるいは内部TLOから出願する場合は、この様な問題点を解決しておかないと出願件数が減じる可能性がある。また、費用面では、出願する特許の内容を厳密にチェックできる体制をTLO内に構築する必要があり、そうでないと多くのTLOが短期間に行き詰まる可能性が大である。大学の研究成果の社会還元は、今後一層重要になると思われるが、この動きを加速するためには、TLOは特許出願に際して研究推進の阻害要因を完全に排除できる組織・機能を有すると共に、研究へのモチベーション(動機づけ)を刺激する組織でありたい。この為には、特許利益の個人への還元ならびに特許を研究成果として評価する事も重要と思われる。
|
○ |
職務発明規程というのは企業であれば100%企業帰属を前提に物事が動いている。もちろん就業規則で動いている。昔から大学と共同研究等をやってきたが、大学には個人帰属の問題があって非常にやりにくいと思っていたこともあった。しかし、今日の他の委員の意見を伺って、いろいろ大変難しい問題があることがわかった。ただ、一方で、実務上の体験からいうと、例えばアメリカの大学は、十何年前も前から、パテントについての機関があり、非常にビジネス感覚をわきまえていた。また、その先のライセンス契約の話や、そこからベンチャーを作ろうなどアイデアを出してくるなど積極性がものすごい。アメリカでは十数年前からそういうことが大学の中であり、大学自体がお金は自分で稼いでくるという姿勢である。日本が同じになるとは思わないが、そうしたところの差を埋めて、より近づくといいのではないか。
もう一つ感じているのは、職務発明制度というのは、日本では特許法で規定されている。一方、米国では全然形が違い、機関帰属が原則であり、日本のような規定は設けられていない。そうした規定がなくても、発明者個人にそれなりの対価が報われているという実情は、やはり日本とアメリカの社会の成り立ちの違いがあると思われる。会社でいえば、自分の研究を会社でやって、その成果を会社で認めなければ別の会社に移りましょうということになり、大学でも同じで、自分の研究成果をその機関が受け入れてくれなければ、別の機関に移り、自分の要求する条件が認められるような契約を結べるという社会風土があるため、アメリカの職務発明の制度はうまく機能しているのではないか。日本では、大学の先生は別機関に移ろうという意識が比較的あるかもしれないが、企業の場合ではそういう例はほとんどない。これからは多少変わるかもしれないが、終身雇用制に近い形で今まできていることを踏まえると、アメリカなどの制度を参考にするのも一つであるが、ベースになる社会基盤の違いがあるので、アメリカのものをそのまま日本に持ってきてうまくいくとはとても思えない。日本固有のやり方を模索して決めなくてはいけないと思われるので、特にこの職務発明関連の取扱いについては、その辺を十分考慮したほうがよいと思う。
|
○ |
このワーキング・グループの目的及び論点を拝見して、大体ここで論点は網羅されていると思う。ただ、日本の現状を前提にして、どううまくこの制度を設計していくかということになると法的な問題が出てくると思われる。私は法律家であるので、そういう法律的な論点からいろいろと判断していきたいと思う。現行法でいいのか、それとも立法が必要なのかというところまでを視野に入れることも必要だろうと考えている。また、組織的管理・活用の在り方については、法的な問題以上の様々な問題があると思われるので、これについては問題点を指摘してほしい。
|
◎ |
本日の議論では、大学における特許の意義というか、どうして大学がこれからきちんと特許を扱わなくてはいけないかという基本的なところについて、いろいろと意見が出てきた。次回も、識者からこの問題について説明があると思われるので、その辺をまず整理していきたい。また、大学の研究の現場にいると、本当に機関有にしたら、委員の方々の指摘にあったように問題がたくさん山積みしてくると思われる。どうやって組織有をうまくスタートアップさせていくかということに関する議論についても、これだけ多彩な専門家で構成されているワーキング・グループであるので、ぜひ考えていきたい。
|
△ |
なぜ大学が特許を取るのかについては委員から指摘があったように、社会還元が基本だと思われる。その考えを大学の先生方によく理解していただき、具体的に何が特許になるのかというようなことについても理解していただくよう努力をしなければならない。この点は、もちろんTLOの皆様方や大学の中にいる人たちにも頑張っていただきたいが、文部科学省としてもやれることはしっかりやっていきたい。特許など社会的な期待に応えることができる先生方にはぜひ取り組んでいただきたいが、何よりも前提として学問との両立が一番大事である。その観点でいえば、学問の多様性がベースにあるので、それを大事にしたい。ただ、社会の流れとして、先ほど指摘があったとおり、能力やアセット(資産)があるにもかかわらず使っていないというところから大学が批判され、結果として本来の多様性のところにまで言われなき批判を受けている部分があると思われる。そうした誤解を解消していくためにも、産学官連携や知財の問題について取り組んでいただきたい。また、第1回から、実務的ないろいろな問題を提起していただいた。仕組みの話があったが、それは本当に大事であり、法人化後は各大学が自律的に判断してやるというのが基本であるので、一律の仕組みが適当であるとは思われない。各大学の置かれている状況を踏まえた選択肢があり、そこから大学の一番いい形を選んでいただくというのがいいのではないか。しかも、それはリアリティを踏まえた実効性のあるものでないといけない。幾つかの選択肢がある場合、それは大学自身で判断して選んで実行していただく話であるが、この知的財産の問題は公的な問題でもあるので、公的セクターである我々役所として支援すべきところがあると思われる。仕組みの問題や大枠、あるいは経過措置について論点を詰めていただいた上で、それぞれについて公的に支援すべきことは一体何なのかというところまで御教授いただければ大変ありがたい。ただし、行政の不適切な関与については除去することに留意して対応していきたい。最後に、法律を新しく作るとか、法律を改正するという指摘があったが、我々としては積極的には考えていない。ただ、この問題を詰めていく過程で、そのような論点が出てくれば、ぜひ遠慮なく御議論いただきたい。
|