知的基盤整備委員会(第14回) 議事録

1.日時

平成17年11月15日(火曜日) 14時~16時

2.場所

古河ビル6階 F2会議室

3.出席者

委員

 澤岡、漆原、奥野、久保田、黒木、合志、小原、齋藤、豊則、二瓶(正)、二瓶(好)、根岸、藤田、松尾、御園生各委員

文部科学省

 根本研究環境・産業連携課長、呉ライフサイエンス課ゲノム研究企画調整官、斉藤ライフサイエンス課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)ナショナルバイオリソースプロジェクトについて

(ナショナルバイオリソースプロジェクトにつき事務局より資料を基に説明の後、質疑)

主査
 ナショナルバイオリソースプロジェクトについては、ライフサイエンス委員会の中にバイオリソース整備戦略作業部会というワーキンググループをつくって検討していくということか。

事務局の発言
 本年の夏にバイオリソース整備戦略作業部会を設けた。ライフサイエンスはカバーすべき領域が非常に広大であり、このほかにもプロテオミクスやゲノムなどについてもそれぞれ作業部会を設置、開催して、次期計画に向けて内容を根本的に見直していただき、一層の発展を図って行く予定である。
 とくにバイオリソースについては、現在展開している事業が非常に重要な時期にさしかかっているので、推進委員会や評価委員会を中心にしてご審議下さり、その議論の内容を作業部会に反映しつつ、本年度中には報告書をいただきたいと考えている。

委員等
 先ほどの説明では、これは公募という話だったが、毎年公募していくのか。つまり、リソースはかなり継続性が必要だが、それと公募で行うことをどういうふうに両立させようと考えているのか。

事務局の発言
 国として整備すべき生物種というものは容易に想定できるが、平成14年度に開始した段階では、特定のものを予め指定することなくすべてオープンにして、今後5年間を目途にリソースとして整備できることを条件に公募した。なお、15年度には、補遺として2課題を加え、現在は全部で24課題を実施している。もちろん「2010年に」という目標もいただいているので、公募に当たって長期的な観点に立って計画を組んでほしいとお願いした。
 評価書の指摘にもあるように、必ずしも順調に進んでいない、いろいろな課題を抱えている、中には時代の進展によって商業ベースの方がよい、といったものもあり、今後どのような生物種をどのように整備してゆくべきかについてはもう一度見直しを図る必要があるが、対象となるモデル生物については、例えばマウスなど、大幅な変更はないと考えている。

委員等
 総合科学技術会議からA評価を受けたという話だが、そのとき何か留意点とか、問題点の指摘はあったか。

事務局の発言
 「継続的な国の支援が必要であり、長期的な展望で着実に実施せよ」というのが、ご指摘の主旨であったと思う。つまりは長期的施策として、5年間で終わらないように手だてを考えていきなさいということであり、それには整備された価値あるリソースがきちんと使われるような努力をすることが、事業の推進にあたって何よりも重要ではないかと考える。
 推進委員会などのご指摘にもあるとおり、ただ配ればいいということではなく、実際にどういうふうに周知、普及していくのか、数値目標をどうするのか、ユーザーサイドでどのような需要があるのかなど、絶えず検討を加えてゆく必要がある。更に有償化の問題だとか、理研や遺伝研のような大きな専門機関の役割などについても、今後は避けられない問題ではないかと考えている。

委員等
 最近、遺伝子関係については、随分変わりつつあるということを耳にする。遺伝子そのものよりも発現の方をコントロールするファクターが非常に重要になってきたという話を聞く。そういう流れの変化に対して、現在ここでやっていることがもうそれを包含しているから、気にしないで悠々とやっていけばいいということなのか、それとも、そういう点に重点が移ってくると、また少し考え直さなければいけないという点があるのか。その辺の議論は何か行われていたことはあるのか。それとも、常識の線だから議論するにも及ばずということになっているのか。

委員等
 ちょっと関係しているので、追加発言させてもらう。
 先生がおっしゃるとおりであり、まずリソースが必要だが、それをどう解析するかということは、また時代とともに進んでいくわけである。そのために、実は既にいろいろな解析が進んでおり、これは、遺伝子発現とかDNAデータベースなどに取り込まれている。ところが、これは種が変わると、同じ遺伝子でも呼び方が違ったり、いろいろな障壁があり、なかなか通しでは見えない。こういうことも含めて、生物遺伝資源、それからDNAデータベースなどをくし刺しで見ていかないと本当の生き物の働きはわからないし、応用にも持っていけないということがある。特にこの情報プログラムの今後は、先生がおっしゃったようなことを受け取ってやっていくことが必要になってくると思っている。それは包含されているというか、計画としては考えているが、まだ実現はしていない。今後の課題だ。

(2)統合データベースプロジェクトについて

(統合データベースプロジェクトにつき事務局より資料を基に説明の後、質疑)

主査
 資料の最後の表にナショナルデータセンター等の新たな体制とあるが、これについては、具体的に議論されているのか。19年度以降の体制だが、今後こういうセンターを立ち上げるためには、どういう手順で、どういうところの議論が必要と考えているのか。

事務局の発言
 今まで何回か作業部会の議論の進捗を見ると、現状のままではなく、何かしらの形で統合化したものが必要であるという議論になっているが、それが物理的な形で新しい箱物を建ててつくるものなのか、それともある程度バーチャルでいくものなのか、そこまで具体的な議論にはまだ至っていない。それよりも、統合化することによって、例えばアメリカやヨーロッパにも同様の大規模なデータベースがあるので、そういったものと比較したときに、日本としてどのような戦略で進めるべきかといった内容を今議論しているところである。

委員等
 今の件も、先ほどの委員の質問と非常に関連しており、データといっても、例えばDNA配列、ATGCの配列だけを統合するのであれば、ただ線でつなぐだけでいい。しかし、先生がいったように、いろいろな実験をしたときにその意味が附加されている。その意味は、例えばがんの研究や植物の研究で、微生物や同じような遺伝子をつくっても違う。こういうことを全部共通で見て初めて新しい知識を得るという統合でなければいけない。そうすると、データのフォーマットなどの情報学の新しい技術開発が必要になる。これはまた当然世界的にも及ぶので、デファクトスタンダードのフォーマットをつくっていくという流れにもなってくると思う。それができないと、単に大きな箱物をつくっても、あるいはバーチャルにつないでも機能しないので、そのあたりが多分この文科省のプロジェクトのポイントになると思っている。

委員等
 関連で、データベースの統合は、ある意味では難しい部分で、特にこれはファクト型のデータベースなので、統合のレベルはいろいろあるけれども、今の話にもあったとおり、実際の利用まで含めると、オントロジーなど非常に難しいところに入り込む部分もあると思う。例えばポータルサイトはある種の統合ではあると思うが、どの辺まで踏み込むのか何か考えがあるのか。

事務局の発言
 先生がご指摘のとおり、どこの範囲でどこまで踏み込むのかは、非常にいろいろオプションがあると思い、やればやるほど非常に難しいという状況だと思う。そういうことで、18年度は手をつけられるところで、ポータルサイトから入らせてもらい、具体的にどこまでの範囲で、しかもどこまで掘り下げて本当に物理的に統合していくのかについて、まさに議論いただいている。将来的には予算の問題だとか、それを実施する組織や機関の問題だとか、いろいろな問題に波及してくると思っているが、今は理想的な形についてご議論いただいている段階で、どこまでやるべきかを検討いただいている状況である。

(3)計測方法・機器等の整備について

(計測方法・機器等につき事務局より資料を基に説明の後、自由討論)

主査
 資料のライフサイエンス分野の機器の開発については、従来の計画の部分については、もう白旗を上げて新しいところにつぎ込むべきだというふうに理解してよいか。そういう認識をした方がいいのかどうかも含めてご意見をお伺いしたい。お願いします。

委員等
 白旗を上げるのはまだ早いので、それはそういう意味ではないということを申し上げたい。
 ライフサイエンスはもちろん重要であることは間違いないが、我が国の研究レベルを世界トップにし、かつ社会への貢献、国際貢献も格段に高めようという意味では、ライフサイエンスだけが問題であるわけではなく、多分ライフサイエンスがここまで重視されている理由は、いろいろな意味で防戦に回っているからではないかと想像する。
 一方、ナノだとか、日本が得意分野とされている分野、これはそのままほうっておいていいわけではなく、実はアメリカに担がれているのではないかという議論があるくらいに、日本はトップを走っていると言われながら、かつ実情は不十分である。そうすると大事な点は、こういう機器や計測技術という分野は、特定の分野にのみ貢献するのではなく横断的に幅広く貢献する。そういう意味で戦略性が高い。そういう意味でバイオを一つの旗頭にして巻き返しをしようというのが一つの判断であることは間違いない。しかし、それでは視野が狭過ぎやしませんかという観点を盛り込んではいかがかというのが、今の時点で計画をまとめる上での大事な視点ではないかと思う。

委員等
 質問ですが、今のライフサイエンス系の機器の競争力向上がうまくいかなかったというのは、競争力向上を目標にして何らかの措置をしたのだけれども、うまくいかなかったということのはずだ。目標だけ掲げて、例えば予算的措置が何もないということはあり得ないと思うので、どういう総括でこんなになったのかということを、お聞かせ願いたい。

事務局の発言
 現実には、ライフサイエンス分野では外国製の計測機器標準になると、その種の機器を使った試験を行った場合に、どこの機器を使ったとかいうところまでが試験データの信頼性を左右するところがあり、ライフサイエンスでの機器は輸入品が多いから、ライフサイエンスの分野の機器を特に重点的に開発するというアプローチは、なかなかとり切れないかと思う。ちょっと引いてみて、ライフ分野も含め、要素技術全般を見て、日本が得意な分野、競争できる分はどこかという視点を含め、全般を見て機器開発を進めていった方が、むしろ重要ではないかということで、現状のようにまとめている。

事務局の発言
 機器開発に関しては、先端計測分析技術・機器開発事業という事業を、まさにこの場で始めた。ただ、それはライフサイエンスだけではなく、すべての分野についての機器の開発を進めていこうというプロジェクトである。しかし、機器の開発というのはそんなに簡単にできるものではなく、4、5年かかってようやく新しい機器ができるということになるので、このプロジェクトがすぐに反映されるわけではない。このライフサイエンス関係の機器のシェアについては、平成10年度に比べると減少しているが、このプロジェクトを開始したことによって、5年後、10年後には効果があらわれて回復しているかもしれないし、そのあたりはちょっとまだわからない。

委員等
 資料の3ページのところで計測方法・機器となっているので除外されるかもしれないが、ちょっと気になる点がある。分析や計測の分野で常に繰り返されているのは、ケミカルな方法と物理的な方法はお互いに刺激しながら発達していくということだ。しかし、この資料ではケミカルな部分は、余り表に見えていないのではないか。具体的に言うと、造影剤や試薬のたぐいで染色など古典的な方法があるが、これはいろいろモダン化されて、細胞内のいろいろな酵素の移動や、いろいろなアクティブな物質の移動までわかるようになってきている。しかし、これは分類からいくと試薬で、計測方法・機器という範囲から、もしかすると出てしまうかもしれない。しかし、現実にはライフサイエンスの中では非常に重要な役割を果たしている。ケミカルな方法と物理的な方法とは、お互いに綾をなしながら動いているのだということがはっきりわかるようになった方がいいと思うので、そういうものをここに加えた方がいいのではないか。
 しかも、その分野において日本の試薬メーカーはものすごく優秀で、特定の方法について、あるいは、高純度のものについては世界を凌駕している。ものすごく強く、みんな日本のものを使っている。バイオ関係はちょっと使っていないかもしれないが。

委員等
 特許で押さえられている。

委員等
 そう。その辺が難しいところで、その辺のことを忘れないで入れておくといいのではないか。

委員等
 資料については、ここまで白旗を上げる必要が本当にあるのか疑問だ。もっと新しい観点で、技術はどんどん発達するわけだから、こういう書き方で本当に将来の日本の科学技術を勇気付けることができるのか疑問だ。医工の連携でいろいろなことをやろうとしていて、新しいテクニックがこれから出てくると思っているので、もう少し開発している人を勇気付けるように書いた方がありがたいと思うし、日本のためにもなると思う。
 ただ、現実的には、例えばチップが出たり、ABIの機械が出たりするときに、本当にいいものが次から次に出てくる。マイクロディセレクションといって、顕微鏡の下である細胞だけをレーザーで確実に1つ取って、それを見るという技術も全部外国でやられてしまっている。そのときに、どうしてこんなものがライフでできたのだろうということを常に考えていたわけだが、結局、新しい発想であればもっと何か出るんじゃないかという希望は持っている。

委員等
 白旗を上げるという感覚がどこから出るのか、私は全然理解できない。
 これは全然白旗を上げているわけではない。ただ、4年前にこの計画ができて、その後どうなったかという見方からすると一向に進歩がないじゃないのという総括はたった今の時点であり得ると思う。しかし、5年間の第2期科学技術基本計画の中で、この文書の果たした役割は非常に大きくて、先ほど事務局から説明があったように、後半の最後の2年間にやっと機器開発をきちんとやろうということが予算化された。それが最初からできていれば、もうちょっと違うのだろうと私も思うが、結果はそうだ。それを第3期でより幅広く支援するというのが、恐らく事務局でこの文書をつくった最大の趣旨であり、白旗を掲げるどころか、ここでもっと巻き返しを図り、最初から支援する目的でこういう目標が議論され、既に一部実施に移されているわけだから、もしご指摘のような印象を与えるのであれば、それはおっしゃるとおり全く好ましくない。むしろライフサイエンスに限らず、私は前回創造ということを入れた方がいいと言ったが、新しいデータをつくることこそ大事なポイントであり、そこにもっと力を入れるべきだということが知的基盤の議論の中にももっと組み込まれなければいけない。だから、知的創造基盤、クリエーティブな部分をもっと強調しなければ、この分野は発展しないという意味だ。だから、生物の先生方から見て白旗を上げるというニュアンスがあれば、それは払拭しないといけないと思う。

委員等
 今おっしゃられた支援するという意味で、資料2ページ目の3番目の段落の、研究者自身が独自の計測データを取得するべく、計測方法・機器等の設計、製作、改良を行うような意識改革が重要であるという点は、すごく重要なポイントだと感じた。むしろこれがあってこそ、機器の高精度化や世界最高水準を追求していこうという方向に行くのであって、そういう意味で、これも重要というよりは、ここがむしろ出発点になってもいいのではないかと感じた。
 それに関連して、評価システムについてだが、今の世間一般の研究に対する評価というのは、買ってきた機器でたくさんデータを出した方が高い評価を得ることにつながりやすい状況で、目的として最高水準のデータを出すために、開発に労力を割くことはなかなか心のバランスがとりにくいところだと思うので、こういうところでぜひ応援していただくといいと思う。

委員等
 全く賛成。先ほどの議論があるが、ABIのシーケンサーといっても、要素技術は日立がかなり持っているし、いろいろな蛍光物質にしても日本はかなり持っている。一方、それが機器となると、試薬から始まって最後のデータ処理まで至る一連のシステムとして使い勝手がよくないとだめだ。私たちは、実は機械を買っても真っ当な使い方をしたことが余りない。使うが違う使い方をしていて、「こんな使い方をしているんですか」と言われたこともたくさんある。しかし、それはあくまで違った使い方であって、そこから新しい機器が出るはずだが、それについて日本で相談するところがなかなかない。仮にそれが市場性がある、なしということも含めて、企業はお金がないともたないので、そういうところをサポートするシステムがないと、結局その前でとまってしまう。そのあたりのことが我が国発の機器開発を行うためには重要ではないか。
 その後ろの方に、国のかかわり云々というところが幾つかあるが、ここがちょっとくどいなというふうに思う。ある程度企業だって、マッチングファンドなど最初のところのお金が用意されていれば、いけるのであればどんどんやるわけだから、システムとして新しいものを商品化できる直前までいける緩やかなお金がもっとあれば工夫の余地があるような気がする。ライフ系は特にそういう要素がいっぱいあるので、白旗じゃなくて、そういう形でやっていけば日本はまだまだ捨てたものじゃないと思っている。

委員等
 この資料の書き方は、何年間かの実績を総括した上で何か言っているように思えない。皆さんのご意見を入れれば、シェアの挽回はほとんど不可能というのではなくて、今のやり方を進めていけばいいのであればそう書くべきだし、今のままではいけないなら、こういう点を改めて新しい戦略に取り組む動きと書いて右の提案が出るという書き方になるべきじゃないかと思う。

委員等
 2点お伺いしたい。
 1点は細かい点だが、1ページの右側の新たに盛り込むべき内容を見ると、新しい機器及びシステムの開発、下の方に先端大型研究施設の共用化、あるいは外部利用の促進とがある。これらは、今まで共用化なされていなかったから、これから何とかしよう、休眠機器等があるから外部利用を促進しようということで書いていると思うが、書くのであれば、資料のタイトルの「計測方法・・機器等」と整合させて、共用化するにはどういうネットワークあるいはシステムの整備が必要、体制の整備が必要、と言った観点の書き方にした方がよいと思う。
  2番目は3ページだが、左側の現在と書かれたところの1の1から4までは、生物とか材料とか、あるいは地質関係だとか情報といった対象で分けているが、右側の新しい改訂案は、計測の方法の特性等で分けており、左側と単に切り口を変えて書いているように見受けられる。左側に書かれていることが、例えばゲノム配列あるいはその下の化学物質の安全性、生理活性などが過去の何年間の間にすべて解決されていて、次の段階は右のようにしなくてはならないということではなくて、左の方にもまだまだ多数の問題点があるにもかかわらず、政策上、目先を変えた言い方にしたいというような雰囲気が感じられる。そういう意味では、先ほど指摘のあったケミカルな面というものも、左側だと化学物質の安全性、生理活性、代謝性、このあたりに出てきている。それが右側のような形に整理されると、切り捨てられてしまっているように見えるので、継続性が必要という意味で、もう少し左側のニュアンスが右側にも残っているような書きぶりにできないかと思う。

委員等
 1ページ目の現行の計測機器等の電子商取引の場の整備を削除したいという案が出ていて、その理由として、国内メーカーのみでの電子商取引を実施しても利用されないかもしれないとある。国際的に利用されないという意味に私は解釈したが、現状を見ると、この見かたは世界の動向に逆行しているのではないかと感じている。というのは、今、ISOが主体となって13584という規格がかなり広く浸透しつつあり、日本の業界でも、例えば電子部品であるとJEITA(電子情報技術産業協会)等でこれを導入するということを積極的に進めていると伺っている。この場で関係するところで言うと、計測機器だとか分析機器についても日本電気計測工業会(JEMIMA)で取り組んでいるやに聞いている。
 そういったことで、この分野はむしろ積極的に進めないと、例えば、国内で非常にブレークスルーのある商品が出たとしても、国際市場においては、こういうところが参入障壁になって受け入れられないということも将来的には起こり得ると思う。このテーマそのものを今回の知的基盤整備計画の中で取り組むか、取り組まないかというのは別議論として、この理由では時代に逆行しているのではないかと思う。

委員等
 今後検討されるときに配慮していただきたい点がある。1ページ目の左の例えば2つは、もしも時間が十分あって、機器の提供者に一言議論に乗ってもらっていれば、こういうふうには書かれなかった可能性があると思う。だから、新たに盛り込むべき内容を固めるときに、機器の提供者がどんなふうに考えているかという意見を少し反映するようなメカニズムを入れておいた方が、同じ失敗を繰り返さなくて済むのではないかと思う。

(4)中核的センターについて

(中核的センターにつき事務局より資料を基に説明の後、自由討論)

主査
 この中核的センターは、早ければ19年度に立ち上がるというイメージを持てばいいわけか。

事務局の発言
 第3期科学技術基本計画の中で中核的センターの必要性がある程度盛り込まれているところであるが、この答申は来年の6月ぐらいに出す予定であり、中核的センターを具体化し、その次の年度の要求に反映させたいというふうに考えている。そのために、今この場でいろいろなご議論をいただき、それを踏まえて関係課との間で予算を詰めていきたいと思っている。

委員等
 中核的センターについて、3ページにいろいろな中核的センターの例を挙げているが、物材機構に関連するセンターとして、これは文科省の中核的センターだが、ナノテク支援センターがもう既にある。ことし3年目の中間評価を受けたばかりだが、なかなか評価結果はよかったと聞いているので、ぜひその辺を一度調べられるといいと思う。 形態としては、文科省からの委託費として物材機構で運営している。もちろん主体は文科省という形で、文科省のナノテク支援センターという形で名称はついている。そこで実際にどういうことをやっているかというと、大学、企業も含めたナノテク研究開発をしたいという研究者からのニーズを吸い上げて、こういう先端的機械を借りたいという情報をセンターで一括して窓口をつくって収集し、実際にその機器を貸すというサービスをしている。そこの運営形態をぜひ一度ヒアリングされたらいい参考になると思う。

委員等
 先ほど紹介があったナショナルバイオリソースプロジェクトにおいては、所在情報等の中核センターは、まだ不十分ではあるが、もう既に仕組みができており、今は遺伝研で窓口をつくって、すべてのリソースの情報はそこから入手できる形で整備ができている。
 それから、生き物はどうしても死ぬと終わりなので、継続的に、しかもそれをよく知っている先生がいるところでやる必要があり、基本的に、中核センターはつくるが、多くの先生の協力を得ざるを得ないという状況だ。したがって、単に中核ということを何か箱物としてつくっても、これはむしろまずいことが多くなる。つまり、人がそこに集まらないといいものが維持できないので、そういう注意が必要だ。
 それから、府省横断に関しても、きょうも他府省の委員がおられるが、ここは今、文科省だし、私たちは文科省のプロジェクトをやっているが、当然リソースは交換をしたり、持ち合ったり、それから特に地震等があるから、重複もあえてやっている。そういうことを含めて、いわゆる府省連絡会という、役員の方の連絡会と並行で、各省の中核的な機関が集まって話をするという場はつくっているし、毎年分子生物学会という学会で、資料2に書いてあるすべての機関が一堂に集まって展示をするということもやっている。そういう意味で現場レベルの交流は随分やっているので、そういうところを活用すれば、かなりのことができると思う。
 もう一つは、府省横断というときに、各省の、各リソースのミッションというのは随分違う。微生物といっても経済産業省の微生物の集め方、使い方と、文科省の方は随分違う。物は非常に似ているし、扱いも共通の部分もあるが、これを全く一緒にしようとすると非常に無理がある。そういうこともきめ細かくやっていかないと、単に研究材料といって中核センターをぽんとつくったらよいなんていうことは絶対あり得ない。一度集まったことがあるが、私たちは文科省だから学術研究用が主だが、研究材料、あるいはバイオリソースが全部集まるといったら、例えば林業なども全部来るわけで、そうするとどうしようもない面もあるので、そのあたりをきめ細かく見てやっていかないとまずいと思う。

委員等
 一つ教えてほしいのだが、バイオリソースは、実験動物、実験植物という形で、研究者が創出したものを集めるのが目的なのか。今、特許の世界で問題になっているのは、外国で収集してきた生物材料を利用した特許出願について、非常に複雑な問題が生じている。その発明から生じた利益をどういうふうに途上国と分配するかというような話が出ており、もしそういうものも含まれるのなら、そういうところの手当ても必要じゃないかということで、どういうことが対象になっているのか教えてほしい。

事務局の発言
 整備の対象にしているものは、国内の研究者が開発したものも含まれるし、海外のリソースも含まれる。ただ、現在はカルタヘナ議定書の生物多様性条約に基づいて、外国のリソースが国内に入ってくるには、事前に二国間協定を結ばなければできないという状況になっている。例えば海外の微生物を国内へ持ち込むということは、NITE(製品評価技術基盤機構)の方で二国間協定を結んで進めている。だから、外国のリソースを持ち込む整備もあるし、あるいは国内の研究者が開発したものを整備する、両方あると思う。

委員等
 私が関係しているバイオリソースプロジェクトでは、ほとんどは国内で開発・収集、国内で研究用リソースをちゃんと整備することが主眼だと思う。まれに、キクなどは日本独自だが、アジアのほかの国からも持ってきて、それで問題が起きていることがある。それがどういうふうに解決されるのかははっきりしないが、整備の基本は国内だと思う。

委員等
 これまではモデル生物や実験生物をみんなで共有しましょうというのが中心だったが、機軸のものがわかってくると、どう多様なのかというふうに興味が移っていく。そこから新しい遺伝子系が出るとか。そうすると、NITE(製品評価技術基盤機構)でもやっているが、いろいろなところへ行って微生物を取ってくるとか、場合によっては海から微生物を取って全部ゲノム解析してしまうとか、そういうことで新しい遺伝子がどんどん出てくる。それはもう財産なので、適切に管理して共有して、あるいは知財化しようということも当然含まれると思う。

委員等
 私どもは今、微生物を集めているが、むしろ外国の方が多い。自分たちが二国間協定で集める、あるいはアジアコンソーシアムで集める、あるいはサンプルを交換することで集めるということで、日本で集まるよりも外国で集まる方が多いぐらいになっている。今も我々は産業用というので、会社の方と一緒にベトナムに行って山を歩いているはずだが、そういうことをやっている。その辺の場合は二国間のアグリーメントで、どこまで行ったらどういうふうにお金を分けるという、一応了解のもとに進めているが、非常にお金がもうかって困ったということはまだないようである。
 もう一つは、先ほどおっしゃったことに私も大賛成だ。3つの領域の中核センターを例示しているが、この3つは大分性格が違うと思う。研究材料はまさにご指摘のようにリソースの種類も非常に多様だし、ミッションが非常に多様なので、今の段階で一律に大きなセンターをつくるのは現実的に無理ではないか。といってばらばらにやることがいいわけではないので、今ある中小のセンターの連携を進める形で、機が熟したらもっと大きなものをつくるということもあり得るのではないかというふうに感じている。計量標準や計測法においては、それぞれまた違うセンターのあり方があるんじゃないかというふうに感じる。

委員等
 資料には、中核センターをつくるのではなくて、指定すると書いてあるが、この中で、今ある、例えばバイオリソースプロジェクトで24ぐらいあったから、それをどういうふうに組織化するかと、その中でどういうふうに位置づけるかをはっきりさせた方がわかりやすいように思う。つまり、この中核的なセンターですべてをやるのではなくて、その下に幾つかのヒエラルキーをつくって、そこで集めた情報は全部そこに行って中核センターから出ていくなど、組織化をどう図るかという方法も示してもらえるとありがたい。
 理研のバイオリソースセンターはいろいろな生物資源の遺伝子や、ミュータントなどからとったものを全部寄託してもらい預かって、それをさらに分配するという機能を持っている。そこを非常に強く進めるのかどうかということも、将来にとってかなり大きな意味合いがあると思う。

委員等
 11月初め、ナショナルバイオリソースプロジェクトでイネを担当している遺伝研や九州大学の関係者と、生物研の関係者で協議をする機会があった。そのときに出た大きな問題は、リソースを集めて保存して、それを将来にわたって残すためには、どこかにセーフティーボックスを保存できるような施設が必要ではないかという点でした。通常は開けなくていいのだが、必要なときにオリジナルに戻れるセーフティーボックスを保存する施設が必要ではないかという話が出た。そのときに、生物研には大きな種子を保存する施設があるので、できるだけそこを利用してもらって構わないというふうに話をした。しかし、ナショナルバイオリソースプロジェクトでも、さまざまな種について新たなリソースが開発されたときに、旬の時期を過ぎてしまった材料や、不要になったような材料を将来にわたって残す必要があると国として考えるものについては、きちんとセーフティーボックスを保存して、将来提供できるような施設、貯蔵のためのシステムを考える必要があると思う。それが中核的センターの次の役割の一つになるという気がする。

主査
 種子の保存のための温度と湿度条件について説明下さい。

委員等
 我々の長期保存施設の温度はマイナス10度で、施設内の相対湿度は30パーセントです。この条件でほぼ永久的に保存できるかチェックするだけの歴史はないが、少なくとも数10年経過しても生存している。ほとんど同じ状態で保存できているから、ほぼ半永久的に維持できるのではないかと考えている。

委員等
 中核的センターだが、きょうの議論の中で分野によって違うというお話が出てきたが、センターの果たす役割で、取りまとめ的なことをする意味のセンターと、推進の役割をするセンターがあると思う。取りまとめ的には、バイオリソースセンターに関して言うと、情報が集まっていればよいのかと思っていたが、今の話のように、実際に物をバックアップして、ちゃんと保存しておくことが必要である。だけれども、例えば霊長類などはそういうところでは保存できないわけだから、リソースの種類によって、保存できるものはできるだけこういう体制でするとか、そういう仕分けをちょっと上に立って考えるような役割も、取りまとめのセンターにはあるのだろうと思う。
 一方、ここに拠点として書かれているものは、結局はリソースの集中配分などを推進するセンターだと思うので、そういう取りまとめ、情報収集センターと、実際の推進センターというふうに考えるとか、場合によっては情報の方はそれほど大きな中身にならないから、推進する機関で賄えるようなものもあるかもしれないとか、そのどちらが重くなるかというようなことは分野ごとに違うのではないかと思った。

委員等
 分野ごとの違いということで、先ほどから話を聞いていて、例えば生物資源などはいろいろなところで保管する必要があるなど、なるほどと思ったのだが、例えば計測機器等については、中核センターになることのメリットがいま一つわからない。こちらの資料でも、安全なリソースの保管とか、そういうものだったらわかるのだが、計測機器についてはちょっとわからなかった。こういう計測機器や方法がありますよという情報を集めて発信するだけだったら、そこの中核センターに名乗り出たところの機関の人は、そういう作業をすることになって、そこにいろいろないい機器が集まってくるとか、いい人材が集まってくるとか、何かそういうものがないと、ちょっとメリットが見えないように思ったのだが、その辺はどうか。

委員等
 ナノテク支援センターについては文科省のプロジェクトだが、そこで、実際に今おっしゃっているような問題点が最初から実はあった。実際に我々の組織として、そのプロジェクトにどういうふうに関与するかということを随分議論した。それで、結局、研究者にとってはメリットははっきり申し上げるとない。ただ、組織としてはメリットがあったと考えている。組織としてのメリットはどういうものかというと、やはり一つには、組織としての名前が売れたというのがある意味非常に大きい。だから、その辺は、組織の経営者の経営判断に近い感じかと思う。いわゆる現場の研究者とはちょっと違う感じでの判断が出てくる部分かと思う。
 実際問題として、それで我々研究者レベルでどういう得をしたかというと、例えば高分解能電顕のような高額な計測機器が入ったことは入ったけれども、それは共用という位置づけなので、100パーセント我々が使えるわけじゃない。だけれども、研究者レベルはそのぐらいで我慢している。ただ、組織としての判断と研究者としての判断とはちょっと違う。不整合を起こしている部分はある。例えばこういうプランニングをするとき、組織にインセンティブを与えるのか、あるいは研究者にインセンティブを与えるのかという点によって違ってくる可能性があるかと思う。先ほどお話ししたナノテク支援センターのケースをぜひリサーチされた方が、いろいろといいと思う。

主査
 資料7の説明と関連しての質問です。大学がその役割を果たせるのか疑問がある。組織としての名が売れるということは大学にとってそれほど重要ではない。欲しいのは資金と人であると思うが。

委員等
 ただいまの話に関係するので、計測機器等の中核センターのあり方の問題だが、私のイメージでは、1カ所に組織が存在して、そこが行うというものでは多分ない。なぜならば、もちろん幅が広いいろいろなものがあるということもあるが、本質的な部分は、拠点だから、拠点があって副拠点があって、あるいはネットワークが組まれる。そういうイメージのもとで言えば、それぞれ得意分野をアクティブに研究として進めている、要するに新しい知識をどんどん創造している。そういうところが幾つも集まって、初めて中核たる役目が果たせるのだと思う。したがって、余りサービスに重点を起き、サービスだけを切り取って議論すると、最初からこの話は成り立たない。もっと創造的なところを強調しないと成り立たないと思う。
 ではメリットは何かといえば、何といっても先ほどの話と似ているが、あの拠点はこの分野にかけては日本ナンバーワン、あるいは世界ナンバーワンだという周りからの評価があるということで、これは研究者にとって物すごく大きなメリットだ。単に精神的励ましだけではなくて、今の競争的資金の競争に勝つだけのある一定の評価をもう得られたようなものだからだ。そういう部分のインセンティブを確保しながら物を考えるということが、多分大事ではないかと思う。

委員等
 今後考えてほしいということで問題提起だけにしたいが、知的基盤を整備する業務、あるいはその成果の評価の点だ。
 アンケート結果にもあるように、評価基準を決めているところもあれば、決めていないところもかなり多い。知的基盤を整備する事業を発展させるために、やはり適切な評価基準、評価のシステムがないと、なかなか進めにくいところがあるので、知的基盤整備をいかに評価するかということもぜひどこかで考えてほしい。私どもも日常的にそういうことに大変悩まされていて、いろいろ工夫しており、今の時代はすぐお金にかえると幾らかということを計算したりする人もいるが、知的基盤というのは、そういうふうにすぐお金にかえて評価するのは適切ではない。それでは、かわって何でアピールするかというところで悩ましい問題があるで、問題提起したい。

委員等
 この中核センターの件だが、多分これは公募ということになってくると思うが、この機能の分担にもよるが、利用者ニーズの把握、広報などいろいろ書いてある。この公募に関して、近ごろは市場化テストで、民間にやらせた方がよほどよくできるという話があるが、この中核センターについても、公募については民間の企業等々も応募できるようにするのかどうか。それから、それを排除するのであれば、しっかりした理由を考えておかないといけないのではないかという気がする。

主査
 ありがとうございます。ほかにございませんか。
 非常に範囲が広くて、それぞれが寄って立つ哲学とか価値が随分違うものを一つの基準とか大きな切り口で議論するのは難しい。そういう大変難しい委員会だが、難しい、難しいではもう済まない時が来ているので、的確に進めてほしいと思う。あるときは中核的機関においてもサブを重要視して、それを取り仕切るところは非常に弱い連携を持って全体をコントロールするとか、本当に強い強力な中核的機関を置いて、そこでがっちり仕切るということが重要な分野もあるかもしれないし、非常に多様性に富んでいると思うので、一つ一つきめ細かくやっていくしかないのではないかと思う。今後も多くのご意見、ご提案をいただいて、それらをまとめて、19年度に備えていくということになるかと思うが、そういう方針でよいか。

事務局の発言
 今の段階では全体は無理で、一つの概念にまとめようとするのはかなり無理があるが、また検討を進めていく段階で、それぞれの分野別に細かく内容を書いて結果的にまとめていきたいと思うので、また今後ともいろいろな分野でご意見をいただければと思う。

委員等
 生物遺伝資源の分野においては2つあって、さっき旬のリソースといったが、守りと攻めと両方ある。かつてちょっと振り返ると、実は攻めのときには必ずリソースがあった。攻めの一番強い人がリソースの管理人であったことがある。つまり、もう少し言えば、リソースに名前をつけないといけないが、これは権威のある人がつけないと通用しないということで、リソースセンターというのはサイエンスのセンターでもある。そういうことも研究者に認識してもらわないと、守りも重要だが、結局は守りだけだともたないのではないかというふうに思う。ただ、先立つものは金であり、そこはどうするのか。大事だ、大事だと言い続けないといけないというなら言い続けるが、基盤的なところにある程度のものが確保される国としての体制については、ぜひ何らかの工夫はしてほしいと思う。

委員等
 ナショナルバイオリソースプロジェクトを外から見ていて大変いいなと思ったのは、個別の生物種についてはネットワークで運営し、一方、情報については遺伝研に一本化して、遺伝研のNBRPのページからすべてのリソースに到達できて検索もできる点である。ユーザーから見ると大変便利で、中核センターに個別に情報データベースが分散しているよりも、極めて利用者から見ると使いやすい形になっている。ほかの知的基盤の整備のときにも中核化してネットワークで整備していくものと、1カ所に集めて統合化してやるものと、戦略的に最初から整理した上で進んだ方がよいと思う。それともう一つ、資料を見たときに驚いたのは、計量のところで官民の役割の分担という言葉がある。まだ官と民と役割を分担しなければいけないのだろうかということを感じた。抽象的な言い方だが、何か別の言い方に工夫していただきたい。

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研究振興局研究環境・産業連携課

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