知的基盤整備委員会(第12回) 議事録

1.日時

平成16年12月17日(金曜日) 10時~12時

2.場所

古河ビル6階 F1会議室

3.出席者

委員

 澤岡、飯塚、井戸、岩田、岡、河盛、黒木、合志、小原、齋藤(紘)、齋藤(宗)、二瓶各委員

文部科学省

 清水研究振興局長、小田研究振興局審議官、根本研究環境・産業連携課長、室谷研究環境・産業連携課研究成果展開企画官、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官

オブザーバー

 徳増経済産業省産業技術環境局知的基盤課長

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)知的基盤整備の推進(第3期基本計画に向けた議論)について

(事務局より資料を基に説明の後、自由討論)

主査
 他の研究用材料と比較して、動物細胞の収集株数だけが、なぜ目標を早く達成できたのか。事務局としての考えはあるか。

事務局
 まずは数値の把握をした段階であり、徐々に来年の基本計画策定に向けてその背景や理由分析を進めていきたいと思っているところだが、おそらくは目標設定そのものが第2期基本計画を受けた知的基盤整備計画の中で初めての取り組みであったこともあり、必ずしも精度良く目標設定できなかったのではないかと思われる。であるがゆえに、第3期基本計画を受けてまた目標を設定する際には、今回の理由分析を踏まえて新たに考えなければならないと思っている。

委員等
 なぜ動物細胞の収集が目標の120%に達成したかということだが、私も関係していたので意外な数字で驚いているが、1つは、筑波のバイオリサーチで非常に整備してきたということがあると思う。大学で収集されていたものが、教授が辞める際に、集中して全部筑波に移動するシステムで、最近では東北大学の細胞バンクが、担当の教授が辞められた際に筑波にかなりの数が移された。それからもう1つ、厚生労働省のヒューマンサイエンス財団でも力を入れていたこともあると思う。
 ただ、国際的に見るとアメリカのATCCが圧倒的に材料を持っており、そこにはまだ追いついていないと思う。だから、120%というのは国際的に見ると決してそれほど良い数字ではないのだが、やはり筑波が1つの大きな集中力になっていると思う。

事務局
 確かに、2002年以降バイオリソースを中心とした予算的な手当てや、理化学研究所にバイオリソースセンターが作られてかなり体系的にいろいろな機関から生体試料をもらって蓄積している。制度的な進展と分野としての急速な進展の結果として、非常に大きく効果が出ているのだと思う。

委員等
 国際的な標準をどこに置くかということの決め方が、自分の都合で決めているような感じがあり、このレポートをどこに出すものかによって随分と違ってくると思う。国際的にはこういうものがあり、どういう基準でそれを比較したのかということをきちんとする必要がある。それから、日本の国力に見合って何ができるのか、国としてやらなければいけない部分は何なのかということを、もう少し絞り込んで論理的に書かないといけない。国際的にも国内的にも自分のポジショニングがあって初めて戦略というものが立てられるのであり、こういう何となくのポジショニングでは実質は戦略になっていないと感じるので、具体的なところを詰めないといけないと思う。

事務局
 この資料は、冒頭、主査から説明があったように、来年春を目途にまとめる文部科学省が考える基本計画の姿といった報告書作成への議論に提出する予定である。だから、その過程で英文にするかどうかは定かではないが、いずれにせよ最終的には基本計画という形で英文化されて出て行くものと思う。
 今の時点での戦略性の緩さというご指摘だが、どうしても知的基盤というものは「基盤」という名前にあるように、第3期基本計画でまた新たに目指す国の姿と重要分野ごとの戦略を、半ば一部受身的に対応して、どのような分野の知的基盤を充実させていくかという議論にもなるので、我々も書いていて非常にもどかしく思っているところで、第3期計画における重要分野の策定と連動しながら今後書き込んでいくことと考えている。

主査
 可能な限り情緒的な表現をもう少し論理性の高い表現に変えていったほうがよいという意見であり、可能な限り努力していただきたい。
 この会合としては本件に関しては最後の会合であり、ここでまとめたものを基本計画の特別委員会に報告しご審議いただき、文部科学省としての考え方を取りまとめ、それから総合科学技術会議になるべく早くインプットするという予定となっているので、いろいろなご意見をお願いしたい。

委員等
 いわゆる知的基盤に係わる人をできるだけ評価しなさいという考え方は、今まで抜けていた部分であると思うので、非常に評価している。黙っていれば知的基盤ができるというものではなく、積極的に作りなさい、そのためには作る人を評価してやりなさいということを積極的に言ってもらうことは非常にありがたい。
 これは答申であるから全体的なことしか書けない部分が当然あると思うが、例えば「ユーザー」という言葉が使われているが、知的基盤のユーザーにはいろいろなレベルがあり、トップレベルの研究者なのか、標準的な研究者なのか、大企業のエンジニアなのか、中小企業のエンジニアなのか、そのレベルに応じて知的基盤にもいろいろなレベルがある。そういう全体をカバーする形が見えるような表現に少し工夫していただくとよいかと思う。

委員等
 最終段階になって一般的なことを言うのは遅すぎるかもしれないが、知的基盤整備ということを取り上げてきた背景が鮮明に浮き出るように表現していただきたい。まず一番重要なことは、知的基盤を整備するために努力している人がたくさんいるけれども気の毒だから何とかしなくてはならない、というアプローチは非常に良くないのであり、要するに知的基盤を強力に持たないと戦いになり得ない状態なのだ、という危機感が一番重要である。それがまず第一に出るようにすべてを練っていく必要がある。
 もう1つは、知的基盤を国内のほかの政策に従属的に考える必要はなく、例えば自動車産業が国内だけでなく世界戦略で動いているように、むしろ知的基盤はそういう立場で見る部分が必要である。日本の計測機器には世界を制覇しているという部分が相当あってしかるべきなのである。そういう意味で、日本国内の第3期計画に追随する形で全部をやる必要はないと思う。よく見たら追随しているけれども、しかしながら独自の産業として作っていく方向はこれなのだ、という主張が大事ではないかと思う。
 それから、基盤整備について議論すると、自動車で言えばF1のレーシングカーを作るような話になるが、それは世界で1台あればよいのであり、本当に大事なのは日常に使う車のレベルをきちんと上げることが重要なのである。日常に使うものの信頼性を上げることが非常に大事であるので、是非その点が抜けないようにしていただきたい。
 さらに、いろいろな法整備や知財の問題整備も重要だが、もっと大事なことは知的基盤のサービスのスピードであり、その点も入れる必要があると思う。バイオの機器で海外に負けていると言っているが、要するに結局スピードで負けている。外国では1万の処理能力を持った機器を100台持っているが、日本では性能は良いのだが5万の処理能力のものを10台で行っている、という話が非常に多い。質も大事だけれども量掛ける時間という部分も見ていく必要がある。

委員等
 今の話にあったように、知的基盤に関する歴史観というか、この先どうすべきかという点が大事である。例えばデータベースであればまともな科学者が作っている自分のデータベースは多数あるが、むしろ国としてない部分は、それぞれのデジタルなリソースをどのように国全体のポテンシャルにするのかということ。誰もがデジタルな情報を作るようになり、計測機器にしてもお金さえあれば良い物が買えるようになっているので、もっと国として欠けている部分は何かという本当の戦略理論が必要。

委員等
 知的基盤にはいくつかの分野があり、例えば生物遺伝資源とデータベースと計量標準とではかなり性格が違い、どのように進めていくかという体制も当然変わってくるので、うまく書き分けてほしい。例えば生物資源であれば、生かして飼うためのサポートの人材も必要であり、中核拠点への集中化は難しいのでネットワーク化、そのためのコーディネーターも必要。それぞれの知的基盤によって重点がそれぞれ違うので、4つをすべて同じ整理にすることは難しいと思う。
 生物遺伝資源については、わが国できちんと整備し、皆で共有しないとどうしようもないものである。その際、まさに研究現場で行われているものと、少し時間が経っているがきちんと残しておかなければいけないものと、2種類ある。ある程度の質は研究者自身がチェックするという前提で研究者コミュニティがどんどん利用できる体制を作ることと、長期的に安心できるものをきちんと整備する、という二段構えにしていかないと、非常に立派な中核センターができても誰も使わないということになってしまう。この5年間で中核センターが一応整備され、どのくらいのものがあり、どのように使われているかということがわかってきたので、それに基づいて次の戦略を作る時期かと思っている。
 それから最初に議論があった目標達成率であるが、この計算方法をきちんと見直す必要があると思う。多分、アンケートを単純に足しているのだと思うが、整備されている場所が移っただけで二重に足されていることはないだろうか。数字だけが一人歩きするので、留意するべきである。

委員等
 この答申は科学技術・学術審議会に上がり、さらに総合科学技術会議に行くということであるが、最近、総合科学技術会議では競争的資金にシフトするという方向を明確に打ち出している。競争的資金の場合、このような基盤的なものでないものに偏る傾向があるので、知的基盤の重要性を強調する答申を作っていただきたい。競争的資金だけではなくて基盤が重要であるということを、あえて競争的資金を対比の言葉として残して表現することで、重要性を強調していただきたい。
 それから、産官学の連携ということが非常に言われているが、地方の大学にいるので感じるところだが、大企業があると同時にその下請けの中小企業が多くある。その中小企業は計測機械などの大きな設備は持てず、結局、大学の機器解析センターなどに非常に依存しており、大学はそういう点で随分役に立っていると思う。だから、産学官の推進する中において、そのような計測機器開発などを整備することは中小企業や産業の基盤を支えるのに非常に有効であることも、どこかで指摘していただきたい。

委員等
 今、大学の話が出たが、法人化される前は特別会計から100くらいの系統保存事業というものが各大学に配分されていたが、法人化され運営費交付金になると、大学としての売りになれば大きく持ち上げられるが、売りにならなければ概算要求もままならず、消えていく可能性がある。個々には小さいが、たくさんの研究現場で知的基盤の産出、あるいはその提供ということが細々とではあるが続けられてきた。ほとんどの知的基盤は大学から出てくるのであるから、その判断は大学の学長次第ではあるが、一定の配慮をしてほしいということは、今書いておかないと消えてしまうと思う。

委員等
 学長の立場から言うと、運営費交付金がどんどん減らされ、基盤教育研究費も削減される中で、新しくこういう知的基盤にお金を回すということは非常に大変な状況。だからこそ、知的基盤のほとんどは大学から出るわけだから、大学としてこれをどのようにしていくのかを真剣に考えなければならないと思う。大学の判断として戦略的に資金を配分することができるようになったのであるから、それを納得できる形で出せるかということだと思う。

主査
 資料2-3のアンケートを見ても、研究機関はかなりポリシーを持って動きつつあるように見えるが、大学は本来のあり方として各研究者の自主性が一番尊重されている世界なので、法人化されても命令だけで動くことは難しく、唯一の方法はお金をつけることだと思うのだが、そのお金もないとなると、大学に対する戦略的な働きかけをどうするかということも第3期における重要な課題ではないかと思う。

委員等
 研究者・技術者の評価についてだが、大学では一応業績を毎年登録しているが、例えば退職した場合やポスドクみたいな立場の場合は業績の登録がないため、知的基盤への貢献が一部失われることになる。そのあたりは、文部科学省が率先して、大学が知的基盤を整備するガイドラインを作り、現役の研究者だけでなく産業界も含めていろいろなところで登録するようにしたらよいのではないか。

主査
 ただいまのご意見は、大学が評価を受ける際にその重要な評価項目としてきちんと盛り込んでおく必要があるということになろう。

委員等
 資料2-1の4ページに書いてあるが、知的基盤の整備について独法として中期目標に書き込んでおくことは、一見何でもないようだが後になって大きな効果が出てくることだと思う。物質・材料研究機構では来年度で第1期を終えるため、今年見直しをしたのだが、そのような際にポイントとなるのは、結局、中期目標をどの程度達成したかということであり、中期目標上に明確に書かれていることは、後になって効いてくる。中期目標の中に知的基盤整備をやると書き込んだら、否応なく、予算があってもなくてもやらなければならないという義務を負う。文部科学省としてどのくらい中期目標に圧力をかけるのかは微妙なところかと思うが、知的基盤整備を推進するということ自身は誰も反対する人はないと思うので、できるだけこの項目は生かして、できるだけ各研究機関の中期目標に反映させるという基本方針は維持していただきたい。

委員等
 5ページのニーズについての例は、総合科学技術会議などに提出するにはちょっと中途半端な気がするので、ニーズがはっきりしたものについてはビジネスになるし、将来ニーズに関してはもう少し徹底的な調査をしてトレンドを解析しないと、説得力のある資料になっていかないという感じがする。利用者の利便性についてももっと突っ込んだ議論が必要かと思う。
 6ページの4については、国際的に戦える人材をこれからどのように育てていくかということについて、もうちょっと真剣に考えたほうがいい。
 7ページについては、世の中全体として、デジタル化して初めて知的財産になるし、それをベースに評価が進むという流れになっていると思うので、すべての研究者が自分の結果についてデジタル化することをぜひ第3期計画の目玉に提案したらどうか。アジア全体にとってどのような役割のある知的財産にしていくかというところで、多様性のあるアジア地域で欧米並みの知的資産の作り方で足りるのかということを考えた際に、少し足りない気がする。

委員等
 前回も、国全体の知的基盤に対する司令塔がないということを申し上げたが、この委員会がその役割を果たすのであるとすれば、総合科学技術会議から付託されているということがはっきりされないといけないと思う。そこの場において、資金の安定確保と重点の置き方などについて俯瞰した立場から検討し、戦略を立てるべきではないか。今はまだ重点領域も決まっていないので無理だが、今後そういう体制を作っていただきたい。
 それから、3ページについて、2010年までに世界最高水準に整備することだけでなく、整備されたものの今後の活用体制ということを、もっと真剣に考えた取り組みを付加的にする必要があるのではないか。
 次に、4ページの「第3期において採るべき方向性と方策」について、この中に国際標準化への貢献を知的基盤への貢献度合いを評価する手段として入れていただきたい。
 6ページの方策について、計量標準だけ、あるいは研究用材料もあてはまるかもしれないが、供給体制のための手段と体制の強化ということを入れていただきたい。あくまで標準ができるとか材料が用意されたということだけではだめで、それが利用されなければいけない。その体制はどうしても遅れ遅れになり実際には機能しない可能性もあるので、もう少し強く主張していただきたい。
 11ページの国際的な取り組みへの参画について、先ほど申し上げた国際標準化、国際的な活動を強化するということを入れていただきたい。
 それから、13ページの第3期基本計画において採るべき方向の中で、評価の点で「利用頻度を指標として」とあるが、非常に数が少なくても非常に価値のある知的基盤というものがあるのではないか。例えば、基礎定数に係わる研究というのがあるが、このようなものの精度を一桁上げる研究は非常に地味であるが、基礎物理と密着しているため物理の最先端と密着しているような研究もある。単に外部からのアクセスが多いというだけではなくて、学術的な価値などについても評価の1つの観点として入れていただきたい。

委員等
 今、要求があるものについて力を入れるということも大事だが、知的基盤として実現するのは数年後になる。今のデータで大変だと思われるものだけではなく、将来的に重要なものについて注力していくことのほうが有効だと思う。今大変な分野については非常に極端に言えばお金を出して買ってくることで乗り切れないわけではない。しかし、将来重要になる部分については、一生懸命考えないとどうにもならないので、そのあたりを加えたほうがよいのではないか。要するに、我々が立てる計画がいつの時点で実現するかを考えて、いろいろな表現をとっておいたほうがよいと思う。

主査
 利用頻度を評価指標とするだけでは多少問題が生じるだろうという点について、同感である。

委員等
 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)での事例を紹介したい。まず、中期目標に掲げると圧力になるという議論だが、NITEでは知的基盤整備を行うことを使命として持っており、例えば微生物資源を集めている。中期目標において来年度までの5年間に5万株を集めるという目標が明示されていて、今約4万株まで集めているところである。また、バイオリソースセンターと比較すると、NITEについてこの資料にはほとんど書かれていないのだが、例えば国際的な展開については「アジア・コンソーシアム」としてアジアの11カ国を集めて総合的な微生物の交換が実現するような枠組み作りをやっているし、インドネシアと覚書を締結して現地に行って微生物を実際に集めてきたり、ミャンマーと覚書を締結してミャンマーの土壌を持ってくるというようなことを具体的に開始しており、国際的な資料を集める体制ができている。さらに集めるだけではなく、保管して分譲するということが基本的な使命となっているので、分譲も行っている。
 中核センターを作るという議論が出たが、微生物に関してはNITEが実質的に中核センターになりつつあるかと思う。国内では24、5の微生物収集機関があるが、そのような機関とのネットワークを組むことをやっており、どのような微生物があるかという情報が流れる枠組み作りを行っているし、もしNITEに寄託があれば寄託を受けた上で分譲サービスはNITEが行うという形を作っているし、そういった意味で、国際的に集める活動からそれを産業界・学会に分譲するという仕組みまでを専門機関として実質的にやっており、かつ国内でのいろいろな情報の結節点になるべく努力している。
 文部科学省の委員会という議論で終始せず、日本全体としての議論をするということであれば、文部科学省所管以外の活動についても目配りをして、何らかの参考にしていただければと考えている。

主査
 この委員会は、従来の科学技術庁の流れから考えると、日本全体の調整機関の役割を果たした歴史的な流れを持っているので、文科省の審議会の下部組織であると同時に、オールジャパンのいろいろな活動についてもまとめる責任も持っている委員会だと考えている。
 ここまで随分たくさんご指摘いただいたので、それをこの中に取り込み、かつ重要なところはメリハリをつける必要があると思う。事務局でその作業をするのにこれから数週間かかると思うが、今後の手順としては、作業したものを一度メール等で見ていただきご意見をフィードバックさせ、特に大きな問題がなければ収斂したものを基本計画の特別委員会のほうに送り、そちらでまたご意見をいただくという形になるが、本日さらにご意見があればお願いしたい。

委員等
 事務局が日本全体を見たときに、これだけはやらなければならない、という部分はきちんと最初にまとめ、それ以外のところについてもどのように文章にしていくかを考える必要があると思うし、そこには戦略や戦術といったものが当然背景にあるだろうから、それはきちんと整理し継続的に進めたほうがよいと思う。
 それから、先ほど議論にも出たが、知的基盤の中にはいろいろあるので、科学技術への貢献という点で重要であるので長期間継続的に行わなければいけない部分と、競争が非常に激しいので短いうちに勝負をつけなければいけない部分とがある。時間スケールに応じて、科学的に、政治的に、ビジネスとして、技術的に、どのような意味があるのかということについて、国全体を考えてそれなりの基本的な考え方をきちんと書いたほうがよい。
 また、国際協力について一番大事なことは、国際的な活動のアウトカムとして出てくるいろいろなつながりである。要するに、例えばアジアならアジアで本当によくできる人たちのつながりがきちんと形成されることによって、次のもっと大事なことを進めていくときに非常に大きな力になる。単に知的基盤というだけではなく、何か具体的なプロジェクトでそれを通して人を育てること、日本全体でアジア全体のネットワークをきちんと作り上げていくことを考えたらどうかと思う。

事務局
 事務局から若干補足したい。今の第2期科学技術基本計画の中での知的基盤整備に関する記述は、第1期でも知的基盤はきちんとできていないが、これから競争的資金などを通じて多くの成果が出てきているのにそれを蓄える体制が整っていないことは問題だ、ということで、競争的資金の推進とセットで知的基盤もきちんと整備することを位置付けようという議論であった。
 今回の第3期計画に向けた議論にあたり、先ほど知的基盤整備のために大学あるいは機関に対して一定割合のお金をかけていただくという記述があったが、これは基本的には競争的資金など増えて入ってくる部分について常に一定割合をその成果のデジタル化のために取っておいてください、という内容であるので、大学などに対して今までかからなかった費用を新たに求めるというのではなく、成果のデジタル化のためのお金をきちんと確保していただきたいという精神である。
 それから中核機関についてだが、この資料での説明上、あたかも利用者の利便性の向上という部分だけで掲げているが、この中核機関というものは役割が非常に多く、単にニーズの把握だけではなく、例えば研究者・技術者の評価においても先導的な役割を果たし、関連する分野の機関・大学に対して模範を示すべきであると考えているし、法的問題など各機関で取り組むには難しい問題については中核機関がモデルを示して各機関に使っていただく、国際的な取り組みの問題についてもその分野を代表して窓口的に世界とやりあっていくということも含まれる。さらに、先ほどご指摘があったように、整備状況について我々が集計すると、各機関が出してくる回答をクロスチェックするにはどうしても限界があるが、こういった中核機関がその分野のスペシャリストであるわけだから、その分野において何がどれだけ整備されたかということも、きちんと責任を持って把握していただくという役割も期待している。
 今回のこの資料は、おっしゃるとおり戦略をきちんと考えなければいけないが、その上でそういった戦略を実現するために、中核的センターというものをしっかりと指定して、それらにいろいろな役割を果たしていただきたいと考えている。先生方のご意見を十分に考え、またご提案申し上げたいと思っている。

主査
 小さなことではあるが、知的基盤整備に携わる人の表彰制度を作るということが書いてあるが、表彰しておしまいということであれば余りにも寂しいのでもう少し励みになるようなものも入れていただきたいと思う。

以上

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)