知的基盤整備委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成16年8月31日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10階 第1、2会議室

3.出席者

委員

 澤岡、飯塚、井戸、岩渕、河盛、黒木、合志、小原、二瓶、根岸、平木各委員

文部科学省

 小田研究振興局審議官、田中研究環境・産業連携課長、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官、米倉基礎基盤研究課長、佐藤海洋地球課長、中村地震・防災研究課防災科学技術推進室長

オブザーバー

 吉良財団法人高輝度光科学研究センター理事長
 平野独立行政法人海洋研究開発機構地球シミュレータセンター長特別補佐
 早山独立行政法人防災科学技術研究所理事

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端大型研究施設・設備の活用促進について

(先端大型研究施設・設備の活用促進につき事務局より資料を基に説明の後、自由討論)

主査
 前回から、基礎科学分野のユーザーが締め出されるという心配はないかという意見が挙がっていたが、このあたりにつき、来年の概算要求額42億円の競争的資金の中で、長い目で見て非常に重要な基礎研究の研究者が締め出されることがないか、という点について具体的にどうなっているか。

事務局の発言
 基本的に、この新しい共用化プログラムの中でどのような研究をサポートするべきなのかをご議論いただきたいと思っているが、この取り纏め案の中では、新領域の研究、利用領域を拡大する研究、施設の利用可能性を確かめるために行う試験的研究については国が競争的環境下で実施を確保する、と具体例を挙げている。極めて基礎的な研究については、基礎科学の取り扱いというところで言及している。これについては、従前からそれぞれの機関の事業の一環で実施されてきたと考えており、従前通りの運用の中でやっていただけるものと思っている。

委員等
 利用者負担にはいろいろな考え方があり、特に産業利用を広げることは当然必要であるのでその場合に利用料を取ればいいと思うのだが、一方で基礎研究の部分は国がやはりサポートすべきだと書かれており、そのような精神に基づいて、現在もいわゆる基本的なところは徴収しないという状況になっているのだと思う。
 厳しい状況の中での工夫であるとは思うが、原則はすべて利用者負担であるという理屈がこの文章からは読み取れない。理屈として唯一あるのはコスト意識だと思うが、それしかない。
 SPring‐8の場合、もともと航電審の答申に基づいて運営されており、基本的には料金を徴収しないが、成果を公開しない場合は料金を取ってよい、と答申にも明確に書かれており、ここでの議論と基本的に変わらない。そうすると、基本的に利用者負担にするのだという点が結構影響が大きいので確認したいのだが、本当にそれがよいのかということはどのような議論なのか。逆に言えば、前回の航電審の基本が間違っているということなのか。

事務局の発言
 まず、前回の航電審20号答申と言われるものが間違っていたということではなく、それを作った時点でSPring‐8の運用を考えるにあたっての、きちんとした利用の考え方だろうと考えている。ただ、科学技術が進み、科学技術から発生する研究成果についての取り扱いも、論文を出すと同時に特許化するということも並行的に進められるとか、いろいろと科学技術を取り巻く環境も変わってきたということも確かである。
 したがって、その20号答申を作ったときの科学技術あるいは先端研究を取り巻く状況と今の状況とは違っており、研究成果の取り扱いで研究に対しての課金を考えるということはふさわしくないのではないだろうか、と考えている。
 もう1つは、利用の研究というものをSPring‐8では先行的にやっておられるのだが、どういう方々が利用しているのかを見たときに、利用者の分野やセクターについてはやはり長年同じ割合で使っているとか、固定的な面がやはり出てきている。その理由はいろいろあり、この取り纏め案にも書いたのだが、やはり施設管理側にその運営を委ねることが1つの原因になっていて、例えば地球シミュレータにしても海洋研究開発機構の業務の一環ということで考えると、利用者の分野やセクターが固定的なものにならざるを得ないところがあるのではないだろうか。したがって、より幅広い研究者に活用してもらう方策を考える際に、今までの使い方とは違うものを作ったらよいのではないか、それはとりもなおさず施設側の視点ではなく利用者側にサポートするということだろう、と考えている。
 その利用者側へのサポートというものは利用料金で還元したり、あるいは利用支援ということに対しては施設側にサポートしたりすることである。よって、今言われたような20号答申との関連、あるいは成果の公開・非公開によって利用料金を取るか取らないかの判断をするということは、現状とは必ずしも合わない面があり、そこを直したい。また、より幅広い分野の研究者に使っていただくということについては、ある部分にこの新たな共用化プログラムを導入し、利用者負担の考え方を取り入れることによって、加速されるのではないかと考えている。

委員等
 要するに、共用の部分に関して、管理機関とは別に経費を措置し、一部は料金を取ろうということだと思うが、すべての利用者が負担するという原則になぜなるのかがわからない。共用化という枠では管理機関とは分けて別の資金にして実施していこう、それに対してはある場合には当然利用負担をしても構わないが、そうではない基礎科学に関しては実質的には競争的資金を用意してサポートしようという精神があるのだから、すべての利用者が負担しないといけないという原則にどうして直接至るのか、論理的にわからない。このことは、後で大きな問題となるので、そこだけははっきりしていただきたい。

事務局の発言
 ご説明申し上げたつもりであったが、すべての運営に当たって利用者負担の考え方を入れるとは、我々も必ずしも考えておらず、新たな共用化プログラムについては利用者負担の考え方を導入しようと申し上げてきたつもりであり、ここまでずっとご議論いただいてきた。
 資料別添2にあるとおり、施設の全体予算のうち「従前通りの運用」という部分については、それぞれの独立行政法人が運営費交付金の中で、今までどおりの自分の考え方に従って運営する部分と考えている。ここの部分で利用者からの負担を取ることは妨げはしないけれども、利用者負担の考え方を入れないというのであれば入れなくてもいいのではないか、と考えている。但し、ここで少し誤解しやすいので、この考え方と、消耗品などの実費を全体から薄く徴収しようという考え方とを、まず分けて考えていただきたい。
 例えば、SPring‐8であれば、従前通りの運用部分は当然残されるが、取り纏め案の文中では「一定割合」と書いた部分、すなわちより幅広い活用に提供していただく部分については、施設側へのサポートではなく、利用者側へのサポートなど利用者の主体性が最も発揮されるような仕組み作りにしたらよいのではないか、そこでは利用者が自分の研究費を持ってきて施設を利用する、という仕組みにしたほうがよいだろう、ということである。実際に、SPring‐8であれば、平成16年度全体で5,400時間運転されており、そのうち800時間をこの新たな共用化プログラムとしようと考えており、この部分については、より幅広い研究者が自分の経費を持ってきて利用できるような仕組みにしよう、と言っているのである。
 したがって、従前通りの運用の部分では、これまでも行ってきたいろいろな基礎的な研究を理化学研究所の業務の中で、今後も当然行うだろう。但し、その割合はこれから施設側が考えて、今は800時間くらいとなっているが、ニーズなどによって左右するのではないか、と申し上げている。

主査
 SPring‐8の従前通りの運用部分でのユーザーの負担はどのくらいになるのか。競争的研究資金を獲得しにくい地味なテーマの研究者はお金がないゆえに研究できなくなるものなのか。

委員等
 今の事務局からの説明部分がこの場での主たる議論であって、従来通りの運用部分についてはこの場での議論ではないように思うが、そこに議論が非常に集中しているようなので、私のわかる範囲でお答えする。
 財務省や政界からは、こんなにいい施設をただで使わせることはいかがなものかという強い声が相当ある。それへの対応として、ここでの共用化プログラムの議論もその一部にはなるかと思うが、それ以外に従前通りの運用部分についても、例えば8時間あたり2~3万円程度の額を負担してもらってもよいのではないか、という考え方が出てきている。8時間で1シフトと考えているが、大体普通のタンパクの実験であれば1シフトで済むし、もう少し煩雑な実験であれば5シフトくらい、という使い方になる。金銭的にはそのくらいの負担であれば研究者も払えると思う。むしろそのために施設管理機関側が費やす人的エネルギーを考えると実際にはより赤字になるのではないかと思われるが、今のところはやむを得ない状況かと考えている。それについては、ここで今議論しているプログラムとは別に、SPring‐8では平成18年度から開始できるかということを検討しているところである。そして、今、いろいろな学会関係の研究者から多く反対意見を表明されているものは、共用化プログラムに対する議論ではない。だから、ここでの議論とは別にしたほうがよいと思う。

主査
 従来通りの運用部分についてこの場で議論すべき問題であるかということだが、共用化プログラムについて議論する際に従来通りの部分について余り考えないで議論を進めてしまうと、後々大変なマイナスになるようなことにならないだろうか、という心配があり、委員からも意見が出ているのだと思う。従来通りの運用部分についての議論は、今後別の場で行われるべき問題であって、それについてここでの報告書が決定的に方向付けるものではない、と考えてよいのか。

事務局の発言
 今ご指摘いただいている点は、取り纏め案の中に「また、研究開発活動の実施により発生する消耗品などの実費については、大型研究施設・設備についてはこれまで管理機関が負担してきたところであるが、国内外の同種施設・設備の状況も踏まえ、多様な利用に応えるための体制整備の一環として、施設・設備の利用形態に依らず利用者側の負担とすることが適当であると考えられる。但し、その導入時期、負担の範囲、規模等については、各機関がそれぞれ状況にあわせ、主体的に判断することが適当である。」と書いている。諸外国の例あるいは国内的に運用されている大型コンピュータ施設の例というようなことも勉強したところ、基本的にはこのようなものは徴収されているところが通常である。ただ、SPring‐8などの施設ではこれまで徴収してこなかったので、導入の時期とか規模といったものは、それぞれの施設側で十分に判断をしてから決定したほうがよいのではないか、という考え方である。その一環として、SPring‐8では今検討を進めており、平成18年度から実施を考えているということだろう、と思っている。

委員等
 研究者が最も問題にしているのは、今まで無料だったところを他の資金から獲得する、そういう競争的な環境の中で資金を用意することになると、プロセスとして、行政的にも予算の移し替えなど非常に手間暇がかかるのではないか、また二重三重の審査があるのではないか、ということかと思う。だから、「課題選定プロセスにおける不必要な重複」と書いてあるが、不必要という言葉は要らないと思う。
 それから、新たな共用化プログラムの中で新領域研究、利用領域拡大研究の中に長期的あるいは基礎的な研究というのは入るのか。新領域というとどうしても重点領域とか大きなプロジェクトに何となく重点があるような気がするのだが、そうではなくてもう少し地味ではあるけれども新しい芽になるというものも、この中に含まれるというように考えているのか。
 また、「国が実施を確保」という表現になると、あくまで国のコントロールのもとで確保するという印象を受ける。民間の立場から言うと支援という言葉のほうがよいと思う。

事務局の発言
 「不必要」は削除したい。新領域研究、利用拡大研究等の中に基礎科学的な研究も入れたらどうかということは、随分議論があると思っている。ただ、新たな共用化プログラムで何を支援するべきかを考えたときに、施設の利用を拡大して活用するということを中心にプログラムを作りたいと思っており、施設を使って新しい領域を広げるような研究、あるいは施設の使い方に対して新しさを見出していただけるような研究について、この共用化プログラムの中で支援したいと思っている。純粋基礎的な研究については、いろいろ議論があることは重々承知しているが、科研費とか他の制度がいろいろあり、SPring‐8の利用者の大半は科研費をもらっているということもあるので、他の制度の重複という点からは、やはり施設の新しい使い方が見出されるようなものに軸足を置いていきたいと考えている。その範囲がはっきりしていないことは確かであるが、これは外部専門家に採択の審査をお願いする際に具体的に考えていきたいと思っている。
 「国が確保」という書き方をしたのは、競争的研究費の中で措置をするときに、支援というとどうしても補助金的な印象が出てしまうので、全体としてはやはり施設の活用という国の意思があるので国からの委託費という資金の形式にしたいと思っており、それが少し強調されすぎてしまったのだと思う。工夫したい。

委員等
 「競争的研究資金を実施研究者(機関)へ配分」とあるが、SPring‐8を使った研究をプランニングした人がその競争的資金を得ることになった場合、SPring‐8にある委員会との関係はどうなるのか。要するに、SPring‐8としてはこの研究をさせるわけにはいかない、という場合が生じないのか。どのようにするつもりなのかを教えてほしい。

事務局の発言
 今考えているのは、SPring‐8にも地球シミュレータにもE‐ディフェンスにもそれぞれ課題選定委員会というものが置かれているので、そこにこの共用化プログラムでどのような課題をやるべきなのかということについても新しい委員会を作っていただくとか工夫して、先ほど委員から言われたように、重複を避け、同じ研究を実施するために二度も三度もスクリーニングがあるということがないようにしていきたい。具体的にどうするかについては、これから施設の側の方々と具体的に相談させていただきたいと思っているところ。

委員等
 実費について「但し、その導入時期、負担の範囲、規模については、各機関がそれぞれ状況にあわせ、主体的に判断することが適当である。」とあるが、これは非常に含みが多くて、どういう仕組み、考え方で決められるのか、非常にあいまいすぎると思うが。

事務局の発言
 このような書き方になったのは、先ほどもご説明申し上げたが、SPring‐8ではこれについて具体的なやり方を今検討されており、18年度からは実際に何かの経費を取ることを始めると聞いているが、一方で地球シミュレータやE‐ディフェンスは、今はまだまったく議論されていない状態である。したがってSPring‐8も地球シミュレータもE‐ディフェンスも全部18年度から始めようといってもなかなかできないところがあるので、そこは各施設側で議論を積み上げていく必要があるだろうと思っている。余り拙速になりすぎるとまた利用者に混乱を招いてしまうこともあるかと思うので、それぞれの施設側の状況をきちんと判断して実施時期や実施の規模を考えていただきたいと思う。
 また、例えば地球シミュレータについて言えば、日本のいろいろな大型コンピュータセンターではこのような経費をかなり細かく利用料金を設定して取っているという実績もあるので、国内の状況ということを参考にして検討を進めていただきたい。

委員等
 民間企業であればこのような大型施設を使う研究というものは、当初は確率がそれほど高くは見込めないようなテーマが多いと思うので、あまり高い利用料金になると使おうという意欲をそぐ結果にならないだろうか。また取り纏め案の中では、諸外国の優秀な人材にも使ってもらうといい、と書いてあるが、そうなるとますます利用時間帯が限られてきて、利用料金が高くなってしまうと、そのような広範囲の共用という理念からずれてしまう恐れがあるのではないだろうか。

事務局の発言
 今ご指摘いただいた部分は、消耗品等の実費のことであり、それ自身はあまり大きな経費にはならないだろうと思っている。負担額そのものがどのくらいの規模になるのかということについては、施設の運営に係る経費全部を取らなくてもよいのではないか、という考え方になっている。要するに固定経費と利用経費に分けて、しかもその区分はニーズの多寡というようなことによって施設側が考え、少なくとも固定経費まで含めて取る必要はないのだろうか、利用者が負担可能な体系にする必要があると考えている。

委員等
 民間の場合は成果非公開という部分の利用が多いのではないか。そうすると、負担額の設定は各機関が主体的に判断されるということに対して、一定の枠を設けることはできないかと思うが、余りに高い料金になることのないように運営していただきたい。

委員等
 今のご意見に対しては少し違う考えを持っている。大型施設を管理している独立行政法人はそれぞれミッションを持っており、このような大型施設を有効活用するということも大きなミッションの1つとなっている。もしこの利用料金を高く設定して誰も利用しなかったとすると、それは独法の評価そのものが非常に下がってしまうので、多分その点についてはある程度放っておいても妥当なところに落ち着くだろうと思う。それは独法の評価というところで評価される項目になってくるはずであり、この委員会では別のスタンスで議論すればよいと思っている。

委員等
 企業だからいわゆる非公開の部分、と決め付けられることがしばしばあるが、これは非常に良くないこと。企業の研究といえどもバラエティーに富んでおり、産業技術の非常に基礎的なものについては企業もある面では公開もしていくし、そういうものを積極的に使ってみる機会を阻害することは大きなマイナスだと思う。大学のほうも企業スピリットに富んだ先生もいるので、2~3の企業と提携して研究しようという方もたくさん出てくるだろうから、その際にはやはり料金をはっきり要求してもよいと思う。そのあたりのグレーゾーンについてうまくコントロールすることが大事だと思う。

主査
 先ほどSPring‐8では18年度から数万円の経費をユーザーから徴収する方向で検討しているという話であったが、そうなると、18年度からは、この資料での従来の運用部分というところについても、ほんのわずかだけれどもいくらかを徴収するという理解でよいか。

委員等
 そうなると思う。

主査
 利用者負担の原則という言葉が、新たな共用化プログラムにおいても従来の運用部分についても対象となり、利用に際してただではないということが、この報告書の1つの精神と考えてよいのか。

事務局の発言
 原則利用者負担という言葉だけで考えると、それを適用したいと思っているのは新たな共用化プログラムの部分だけである。この部分については利用者がきちんと自分が集めた資金を持ってきて使用するという考え方である。今、SPring‐8について出ている話は、それ以外の部分についても薄くかかってくる消耗品などの費用であり、その実費については各機関で徴収する時期などを考えたらよいのではないかということは申し上げているが、原則利用者負担の議論とは区別して議論したほうがよいと思う。

委員等
 わかりにくい。従前通りの運用というところについても、いわゆる消耗品的なものは取ってよいということになっており、それはよいと思うのだが、言葉が独り歩きする危険がある。利用者負担の考え方は、ある意味ではこんなによいものをただで使わせてよいのかという考えもあるが、一方で、だからただで使わせるという考え方もある。国として作ったものをどのように使っていくかということは別の議論がある。だから、この委員会として、ただで使わせるのはけしからんと言われたから料金を取りましょうかという議論はできない。この報告書が出ることで、やはりこのような大きい施設では料金を取るのだ、ということが鮮明に出ていると読み取れる。
 先ほどの質問にもあったが、新たな共用化プログラムの新領域研究、トライアルユースのほうには、いわゆる基礎科学の何でもよいという研究はあまり入らないということになると、運営費交付金でまかなわれている従前の運用部分に全部入ることになり、これがどんどん縮小するのは困る。科研費を取って一部負担すると言っても、科研費の制度はまだまだ不十分であり、それで賄おうということはかなり無理がある。いわゆる基礎科学が従前の運用部分でしか研究できないということになると残念であり、共用化プログラムにも入るのだと思っていたのだが違うのか。

事務局の発言
 例えば科研費の中に利用料金を含めて研究を行うという例もあるわけで、それはどんどん進められるべきだと考えている。基礎的な研究の大事さについては私達も十分認識しており、基礎科学の研究が今後ともきちんと確保されるような配慮が必要ということはきちんと書かせていただいている。ただ、現状を見ると利用者の分野やセクターというものに若干の偏りがあるので、いろいろな人が使えるようにするにはやはり利用者側に支援することが一番ではないか、という考え方である。施設側に支援をすると、例えば地球シミュレータの場合は海洋研究開発機構に支援することになり、やはりどうしても海洋研究開発に軸足を置かれた研究活動になりがちである。そこを利用者側への支援に変えたら、幅広い研究というものが可能になるのではないかと考えている。
 ただ、その議論と、消耗品などの実費を薄く徴収するという議論はまったく違う。薄く徴収することは既に20号答申にも書かれており取るべきだろう。しかし、その徴収方法や規模や時期については実際に各機関側で考えたほうがよいだろう。
 そこで、今議論していただいている新たな共用化プログラムについても基礎研究を入れるべきではないかというご指摘については、少し考えさせていただきたいと思うが、なぜ科研費では経費を一部負担しないのか、という制度論の重複もあり、それが整理されないと難しいと思う。

主査
 この新領域研究などの競争的資金は、その資金をすべて施設利用に払うのではなく、研究者の研究費がかなり含まれているということか。

事務局の発言
 利用研究の中には施設の運用経費とデータ処理などのための本当の研究費との2種類がある。また、その研究を支えるために施設側で発生するいろいろな人件費や技術指導費もあり、そのようなものを合わせて1つの利用研究ということにしたいと考えている。

委員等
 ある研究の一部としてこの施設を使う場合、その研究を判断する主体がどこにあるのかという問題がある。施設側に主体があれば単に使うだけという判断になり、例えば環境科学でこういうものを測ることが非常に重要である、という判断もある。そのあたりをよく工夫していただかないとかえって阻害的になる可能性がある。

主査
 私自身、この報告書の中で従前の運用部分と新たな共用化プログラムとの関係を最初から誤解してきちんと理解できなかったので、外部の方がこの報告書を読んだときを考えて、そこを明確にわかるようにしてほしい。ただ、従前の運用部分についてどうあるべきかという議論はどこで行うべきなのか。

事務局の発言
 従前の運用部分については、各独立行政法人が中期目標、中期計画の中できちんと管理をしており、そこで運用されている。そこは従前通りの考え方で運用されているが、ただそれではうまく立ち行かない部分が出てきているので、新たな共用化プログラムとしてここでご議論いただいている。したがって、ここでの議論は新たな共用化プログラムの部分であり、従前の運用部分については、各機関がきちんとした運営をこれからもするということを大前提として議論していただければよいと思う。

委員等
 「予算面の取り組み」という部分で書かれているが、「なお、研究者が外部から獲得した競争的資金を用いて利用する場合には、経費負担額の一部を当該競争的資金の中に計上することによって活用を確保することも《一案である》が、各施設・設備の利用状況等を踏まえて《今後検討する》」というのは余りにも漠然としていて非常に誤解を招きやすいのではないかと思うが、いかがか。

事務局の発言
 科研費にしても振興調整費にしても、現在のところはその経費の中にSPring‐8の運用費というものは含まれていない。基本的には施設側が払っているから含まれていないのだが、今後は科研費の中に利用料金を入れるという考え方もあってよいのではないか、という考えであり、その部分については別の体系での議論が必要ではないだろうかと思っている。そのような意味で、現状では共用化プログラムの中に含まれないのだが、逆に科研費などの競争的資金の中に運転費を含めることが未来永劫できないというものではないので、いろいろ考えた結果、このような表現になってしまった。わかりにくいところは重々認識し、もう少し明確にしたいと思う。

委員等
 仮に科研費に運転費を含めた申請が認められたら、それは新たな共用化プログラムの中に入るのか。そうするとこれがどんどん増えて、自分で資金を取ってこないと結局ダメだという世界になり、従前通りの運用部分がどんどん少なくなる。つまり、比較的なかなかお金が取れないような方でいいアイデアを持っている方が締め出されないかという心配をどのようにすればよいのか。

事務局の発言
 再三ご説明しているとおり、この新しい考え方によって基礎研究ができなくなるようなことがないように配慮すべきだということは前の方にも書いており、基礎研究が実施できなくならないような施設側の配慮というものも必要だと考えている。ただ、現在のところは自分の科研費を用いて利用するという枠がないので、将来はこのような方法があってもよいのではないか、そこについては施設側がよく考えていただきたい、と思っている。

委員等
 いろいろと考えていることはわかるのだが、非常にわかりにくいというのが一番大きな印象であり、なぜわかりにくいかと言うと書き過ぎているのだと思う。要するにポイントは非常に簡単なことであり、「これはすごく立派な施設だからみんなで一生懸命使おう、そして日本の科学技術をもりたてよう。しかしやはりある程度のお金はいただきたい。ただそれによって基礎研究がおろそかにされてはいけない。」というのが基本的な考え方であり、それにいろいろな不確定要因まで考えて書き込んでいるからわかりにくくなっている。
 だから、これは相当な苦労をされて皆さんの意見を取り入れて書いたのだと思うが、やはり最終的にはもう少しわかりやすいものにしないと、この基本的な考え方というものを理解していただけないのではないかと思う。

委員等
 例えばSPring‐8の場合、今までの制度はここで言われている弱い基礎研究の人がマジョリティーであり、それに合わせた制度になっている。そして国が重点配分ということで科学研究予算を与えている人にどう対応するかという部分は、実はなかったというのが現状である。SPring‐8にかなりのウェイトを置いて研究する大きなプロジェクトの予算を誰かが取ったとしても、それをどのように組み込むかという制度は今までなかったが、そのようなものも今度は取り上げてくれるものと思っている。
 勿論、今も運用でいろいろなことはやっているが、今までの弱いと言われる人々のためだけの制度であって、その重点化している金持ちの人は締め出すという結果でよいのかということは、我々も気にしている部分である。やはりそれも必要なことであり、今の国の政策は重点化に向いているわけであるから、その国の政策が良い悪いと言う議論はもっと高いレベルできちんとしていただかないと、各機関にその判断を委ねられても困ること。
 また、従前の運用部分についても盛んに議論されているが、これは国の政策としての議論は、現段階ではSPring‐8であれば20号答申で尽きているわけであり、それを直す、直さないについては同じレベルの委員会で再審議してくださればまた違うメカニズムがあるのだと思う。その中で利用に伴う一部の経費を、財務省などとの議論によってある程度は徴収せざるをえない状況にあるのだが、その判断を各機関に任せるということをはっきり書かれたのは多分この取り纏め案が最初だと思うが、それではユーザーの圧力に負けて取らない、ということも起き得るかもしれない。
 ただ、先ほども申し上げた通り、弱いと自称するユーザーの言うことが全部正しいかどうかというのは、今の流れの中で問題だと思っている。前回も申し上げたが、大学の経営などにかかわる人に話をすると必ずしも全部反対ではない。けれども現場で実験だけやっている人はとにかく取らないでくれ、と言うばかりである。今この強い者を目指している国の政策の中で、自分を弱いと定義して発言する人の意見だけを反映してこれだけの施設が戦うことは、なかなか難しいということも申し上げたい。

委員等
 地球シミュレータでは、この7月から組織が少し変わり、計画推進委員会というものが運用方針を決めることになっている。これは地球シミュレータのいろいろな運営計画等について決めるものであり、多分費用問題もここで議論されると思うが、そのような計画推進委員会のもとで中期計画を実行していくということになる。
 実際の課題選定は課題選定委員会というところでやっており、先ほど事務局から、新たなプログラムの課題選定についても工夫をしてこの委員会との関係づけをしていきたいと話があったが、それでいいと思う。今の委員会では、新領域研究などを既に全部審査しているというわけではなく、いわば今の制度の中で苦労しながら幾つか先進的なものをやっており、例えば自動車工業会みたいな例がある。自動車のプログラムなどは全部外国製のものを使っており、これを地球シミュレータで使おうにも非常に苦労をするので、本当はそのようなものも含めて地球シミュレータも相当な支援をしたいと思っているわけだが、バックアップするための何らかの仕組みをこのような形で提供していただければ、非常にありがたいと思っている。地球シミュレータで産業界やその他いろいろな科学的なものにまでシミュレーション文化を広げたいという思いであり、このような新領域研究、トライアルユースということでバックアップしていただけるのは非常に助かる。特に支援するための人員というところについて、今非常に苦慮しているので、このやり方はありがたい。

委員等
 E‐ディフェンスは今建築中であり、今年度末に完成予定、来年度から実際の運用に入るという状況である。したがって、運用上どのようなことが問題になるか、今は必ずしもはっきりわかっていないが、それなりにいろいろ考えて今後の運用について計画しているところである。
 実際の利用については、大都市大震災軽減化特別プロジェクトの一環として地震防災にかかわるいろいろな問題をこの施設を使って解決していくという国主導のプロジェクト、それからアメリカのコンソーシアムとの共同研究とか、そのような利用についても現在計画を進めて来年度の概算要求に盛り込んでいるところ。もう1つ、各研究者の創意に基づく研究プランや産業界のいろいろな問題をどのように解決するかということも重要であると考えており、それらについては必ずしも明確な予算の裏付けがなかったわけだが、この共用化プログラムを通していろいろな産業界や大学の問題について解決する方法ができたことは、非常にありがたいことで是非推進していただきたいと思う。
 今問題になっている利用料金やデータの公開をどうするかという問題については、E‐ディフェンスに限った問題としてではあるが、文部科学省やユーザーや有識者の方々に相談しながら議論を進めている。先ほどから問題になっている従前通りの運用部分というところに該当すると思うが、そこについてもE‐ディフェンスでは利用料金をいただくという方向で検討しており、おそらくそうなると思う。これは国がどのくらい全面的にバックアップしていただけるか、利用者側にどれだけ負担していただけるか、ということにもかかわるので非常に難しい判断であるが、今考えているところである。それゆえ、機関の全体的な経営判断というところで決めさせていただきたいと考えている。共用化プログラムについてはまったくこの通りで異論は無いと思っている。
 この報告書については、私自身もよくわからなかったので、題目のところに共用化プログラムというような言葉を入れていただくと、それに関する提案だと理解しやすくなるのではないかと思う。

主査
 従前通りの運用部分については、SPring‐8、地球シミュレータ、E‐ディフェンス、それぞれの性質が違うので基本的に考え方も異なるし、特に基礎研究のコミュニティーから強い意見が出ているのは実績のあるSPring‐8であるので、そのあたりの文章をもう少しわかりやすくしてほしい。また、共用化プログラムというところを明確に打ち出した書きぶりに変える。書きすぎてわかりづらいというご指摘もいただいたので、特に基本的な考え方のところをもう少しわかりやすくすると同時に、SPring‐8を利用する基礎研究のコミュニティーが納得するように、基礎研究についてもう少し深く踏み込んでもよいのではないか。そのように報告書の書きぶりを少し工夫させていただきたいと思うが、よくあるように委員会の事務局と主査にご一任いただくのではきっとご納得いただけないと思うので、またメール等で各委員にご意見をお伺いし、またそれで問題があるようであればもう1回委員会を開催せざるを得ないと思う。できれば委員会を開催しないで報告書をまとめ上げたいと思うので、修正したものをなるべく早くお手元にお届けし、ご意見を伺う形で進めてよいか。

(委員一同了承)

委員等
 確かにここの会議での皆さんのご意見を納得していただくようにすると、ボリュームが増えるのは仕方ないので、要約版を最初につけて、それを見て更に納得いかないところは本文を見る、ということにしたほうがわかりやすいのではないか。

主査
 では、1~2ページのわかりやすい要約版を作りたい。

委員等
 わかりやすくするという意味で、別添の図にもう1つ付録を作り、これからの問題でどのようなところへ予算要求するとか、どのような予算の範疇で行うかということも含めて、もう少し詳しくリストアップするようにお願いできないかと思うのだが。

主査
 それでは、先ほど提案したように、要約版をつける、内容についても特に従前通りの運用部分と共用化プログラムとの関係がはっきりとわかるような書きぶりに改める、ということを含めて報告書の案をお届けしてご意見を伺い、そこで深刻な問題が発生しない限り、委員会を開催しないで中間報告をまとめ上げたいと思う。

委員等
 確認したいのだが、この共用化プログラムという言葉は、図の右側の3つ(新領域研究・トライアルユース、競争的資金を使った利用、非公開)を指すのか。

事務局の発言
 その通りである。

事務局の発言
 それぞれの施設によって事情が違っており、SPring‐8ではまだ能力を全部使ってないという事情や弱いユーザーといった立場の人達との関係、地球シミュレータ設立の時からユーザーが積極的に関与してここまで作り上げてきた実績、新しくできるE‐ディフェンス、とそれぞれ異なるが、やはりその中でSPring‐8はかなり実績があり影響が大きいという点で本当に慎重にやる必要があると思う。
 しかし、我々は基本的には大きく根底から覆すということではなく、この共用化プログラムについて新たな展開といった中で利用者負担の話が全面的に表に出ているわけだが、むしろ共用の促進を図るという視点が一番大事であるので、その精神を守りながらしっかりやっていきたいと考えている。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)