知的基盤整備委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成16年8月19日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10階 第3、4会議室

3.出席者

委員

 澤岡、飯塚、井戸、岩田、岩渕、小野、河盛、黒木、合志、齋藤(紘)、齋藤(宗)、二瓶、根岸各委員

文部科学省

 丸山研究振興局審議官、田中研究環境・産業連携課長、鎌田研究環境・産業連携課課長補佐、青木研究環境・産業連携課専門官、森振興企画課長、米倉基礎基盤研究課長、小島基礎基盤研究課大型放射光施設利用推進室長、佐藤海洋地球課長

オブザーバー

 吉良財団法人高輝度光科学研究センター理事長
 佐藤独立行政法人海洋研究開発機構地球シミュレータセンター長

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端大型研究施設・設備の活用促進について

(先端大型研究施設・設備の活用促進につき事務局より資料を基に説明の後、自由討論)

主査
 例えばSPring‐8で圧倒的に多い利用者は基礎研究の研究者で、新領域研究・トライアルユースとは定義しにくい、ルーティンワークの基礎的な積み重ねが必要な構造解析や結晶構造解析などのユーザーがかなり多いと思われるが、その方々は資料別添2のどこに相当するのか。

事務局の発言
 その方々は、多分今も多くSPring‐8を使っておられる方々だろうと思うが、従前どおりの運用というところに、今、理化学研究所が責任を持って管理している部分がある。そこに該当すると思う。

主査
 原則利用者負担という考え方が今日の議論の大きなポイントかと思うが、そのような方は従前どおりの運用なので、利用者は負担しなくてもよい、という考えか。前回の説明では、SPring‐8では基礎研究のユーザーの数が非常に多いということであり、原則利用者負担反対という声がユーザーコミュニティーから上がっているように聞いているが、また委員から原則利用者負担の考え方は反対という意見もあり、その辺りについてコメントしてほしい。

委員等
 従前通りの運用部分についても、光熱費のような最低限の経費のごく一部は利用者が負担すると理解したのだが。ユーザーから見ると、費用を薄く徴収されることは仕方がないという認識は最近増えてきているが、とにかく取られるものは何であれ、できれば勘弁してほしいという意見が多いので、負担内容の考え方は二の次になっている。
SPring‐8の課金問題と言う場合、いわゆる20号答申に出てくる課金はビームそのものに対してお金を取るかという話であるが、施設を利用するときには、ほかのお金も必要になってくる。20号答申に触れないような形で議論をすると、ほかのお金だけをとりあえず負担していただくか、という方向に議論が向いてしまう。だから、簡単に課金と言うと、利用者から見た場合、とにかくお金を取るか取らないかという認識になってしまい議論が混乱するので、その点はしっかり分けて考えたほうがよいと思う。

事務局の発言
 ここで特に議論していただく必要があると思っているのは、まさに20号答申で示している、例えばSPring‐8であればビームラインを使うということに伴う経費の負担を、利用者にある一部分負担していただくか、負担していただかないか、ということである。ビームライン以外の経費を薄く負担する部分については、おそらく20号答申に触れることなく、研究者コミュニティとの間で理化学研究所が判断されれば、基本的にできる部分であろう。ここでの考え方は、まさにビームラインに対する費用の一部分負担していただきたい、ということである。

委員等
 例えばSPring‐8であれば、タンパク質の構造を解析するというときには、利用料金は大体いくらぐらいになるのか。何百万という単位になるのか。

事務局の発言
 SPring‐8では、基本的に8時間使って1シフトという単位になっており、約48万円となっている。地球シミュレータでは全然違っていて、年間54億円で三十数課題をやっているので、1課題あたりフルコストとしては1億や2億かかってしまう。1億何千万を全部負担するというのはできないので、ここでは、施設側がうまく相談をして、固定的経費と利用に伴う経費との2つに分け、固定経費部分は施設側が運営費交付金とし、利用に伴う直接経費だけを利用者に負担していただくという考え方をしている。それによって、利用者が負担しやすくなり、かつ施設側もきちんとした責任がまっとうできるのではないか、と考えている。

委員等
 固定経費と利用に伴う経費で比較すると、実際には利用に伴う経費のほうがかなり少ないのか。

事務局の発言
 施設ごとによって違うので、各施設が利用料金を設定するときに、適切なものにすることが必要と考えている。ここでは基本的な考え方として大きく運営費を2つに大別して、新しく共用化する部分については、利用に伴う経費の部分について利用者負担の原則を導入しよう、ということである。

委員等
 利用者に負担してもらうということへの一番期待される機能を、非常に明確に徹底していく必要があると思う。いずれにせよ全額負担してもらうことはできないと考えれば、その場合の利用者負担はどのような意味を持つのか。いろいろな考え方があると思うが、1つにはいわゆる無駄な利用を抑えていくことが、重要な機能としてある。実際に何の役にも立っていない研究というものが、現実にはたくさんある。少なくともそういうものを防ぐことはできるのではないか。全額負担できないのであれば、思いつく限りではそれくらいしかないのではないかと思う。
 一方で、そのようなことをすると、今度はまさにトライアルユースの部分について、非常に阻害的に働く可能性があるので、必ず救済措置が必要ということを考えなくてはならない。
 そのような観点から、この骨子案の全体を読んだところ、今回の案は比較的万遍無くよく配慮されていると思う。ただ、利用者負担の意味付けは少し弱いと思うし、もっとはっきり有効なる利用を図るために行うのだと打ち出して、その機能を常にリマインドしながらいろいろな制度を考えていくべきではないかと思う。

委員等
 独法の経営側から考えると、要するに運営費全体として経費を節減しろと言われているので、運営費交付金の額が仮に削減されても他方から収入があるという観点からすると、産業利用のようなところを増やしたほうが運営費交付金の額を減らせてよい、という考えになり、トライアルユースで半分ほど節約されるよりも、非公開を増やしたほうがよい、という基本的な判断が働くのではないかと思う。そうなると、この骨子案に書いてあるところの、一定割合を共用プログラムにするというときの、一定割合を誰がどのような形で決めるのか。あるいは、それぞれのトライアルユースあるいは非公開という形のものまで決めるということなのか、それから専門家が利用する割合を検討する場を置くべきという議論があるが、その場合は独法の中に置かれることをイメージしているのか、独法の外で決めて独法に申し渡すという形で決められるのか。そのあたりをきちんと整理しないと、独法の効率化の圧力に対する経営者側の判断からすると、非公開でできるだけお金をもうけたほうが安定的な収入があってよい、という方向に働くのではないか。各委員がご懸念のような基礎研究に対する圧迫になるのではないかということがより強く出てきてしまうので、そのあたりの兼ね合いをどう考えるかが重要だと思う。

主査
 もう一度確認したいのだが、今、SPring‐8では利用者数の上で圧倒的な割合を占めているのは基礎研究で、その基礎研究の研究者は応募して、審査を受けて、ある程度スクリーニングされている。かつては旅費までサポートがあった時代もあるが、今では旅費はほとんどないということであるので、研究者にとってみれば、キャッシュをもらうことはないけれども、ほとんど手ぶらで自分のサンプルを持ってさえ行けばよいという今の状態が、新しい制度に切り替わり、ユーザーの応分の負担ということになると、何らかの負担が求められる。それは、科研費を取らなくても大学の研究者であれば毎年いただいている研究費で何とか補える程度の金額であれば、ユーザーが急に減ることはないと思うが、そのあたりが一番心配なところである。

委員等
 旅費を減らすときにもやはりユーザーが減るという話が出たが、実際にはユーザーの数は減っていない。だから、今度もユーザーが減ると言われているが、実際にどうなるかはなかなかわからない。SPring‐8にはかなり利用価値があると思うので、お金を取ったら本当に研究者が来なくなるかは、本当にわからないと思う。

主査
 若干減るという程度なら問題ないが、ユーザーが半分くらい減るということになると、非常に大きな問題かと思う。本当に基礎研究の部分で多くの研究者はそれほど研究費に恵まれておらず、科研費も結構競争率が高い中で、ルーティンの仕事を積み重ねていくタイプの研究テーマにはなかなか科研費がつかないので、年に50万とか80万円程度で学生をたくさん抱えている研究者が大部分のユーザーだと思う。そのユーザーが大打撃を被らないような温かい配慮があれば、全体の流れとしてはよいのではないかと思う。

委員等
 ただ、科研費が増えているという現実はあり、SPring‐8のユーザーがどのくらいの科研費をとっているか、という調査までやっているが、少額の科研費はたくさんとっているが、大きな金額のものは少ない。逆に、大きな科研費を用いてSPring‐8で研究をしたいというときに、そのようなものを優先するルールもないということは、どちらかというと学者が貧乏だった時代に合わせた制度になりすぎているので、その辺りを直すことは必要だと思う。

事務局の発言
 利用者の負担割合については固定的なものだとは思っておらず、当然、経営者のいろいろな判断や利用者の出具合によって上下するものだと思う。したがって、利用者の方々がこれによって大打撃を受けるということになると、柔軟に利用料金体系を変えなければいけないと考えている。決して、それぞれが固定的である必要はまったくなく、考え方だけがきちんと整理されていれば、柔軟に対応するべきものだろうと思う。
 また、確かに全体としてはそれほど多くないかもしれないが、利用料金を取る反面で、トライアルユースや新しい領域を拓くものについては国が適切に支援しよう、と考えている。

委員等
 実際のお金が動く話ではないことにすり替えてしまうのはよくないかもしれないが、このテーマについては実は国がこのくらい負担している、本当はこれだけの費用がかかっているということを常に明示的に出すとよいのではないか。そうすると、ある意味では学術的な支援がどの程度行われているか明確になるし、あまり無意味なテーマをやるということもなくなるだろう。そのような点で、実際のお金のやり取りはないけれども、ある種の効果は出てくると思う。そのような認識をもって研究を進めることは大事なことだと思う。

委員等
 例えばSPring‐8で実際に分析されると、SPring‐8の研究者は、論文を発表するときに共同研究者の中に入るのか。もしお金を取ると、お金を取りながら共同研究として入る場合など、いろいろなケースが考えられると思うが。

委員等
 現状は、共同研究者の中に入る場合と入らない場合がある。お金を取ると今とは同じにならないので、きちんと整理する必要があると思う。また、今でも必ずしも共同利用という建て前はとっていない。お手伝いするという形が結構多い。

委員等
 もしも民間がこのような設備を持って研究者から請け負うとなると、おそらく減価償却やいろいろなものが付いて非常に大きな金額になると思う。しかしこの場合は、国の政策として整備したものであるから、原則として実際にかかる費用というのであれば許容範囲であり、お金を取ってもよいと思う。もう1つ大事なことは、将来このような大型の施設をどんどん作っていかなければいけないと思うので、新しいものを作るときの妨げにならない、つまり財政当局にうまく説明できる構図を、将来を見通して、現在ある施設で1つモデルを作っておかなければいけないと思う。

事務局の発言
 今までは基本的に、このような大型研究施設を作る場合、整備する費用も運営する費用も全部国が負担する、という体系だった。しかし、昨今の状況になってみるとそれはやはり見直す必要があるだろうと思っており、最低限でもまず整備する費用は、これはインフラストラクチャーの整備として国が責任を持つべきだろう、ただ運営にあたってはこのモデルをきちんと適用して、使う方には使う方の責任をきちんと取っていただくような利用体系を作るべきだろうと考えている。その1つの良い先行事例がSPring‐8だと思っているし、地球シミュレータにしてもE‐ディフェンスにしても、必ずしもSPring‐8と同じレベルまでの共用化というのは進んでいないが、これからどんどん進んでくれば同様の共用化メカニズムということはできてくるだろうと思う。
 また、整備のあり方についても引き続きご議論いただく必要があるだろうと考えており、この共用化の考え方はやはりそこに引き継がれ、運営のあり方はそこでより具体的に議論していただきたいと思っている。

委員等
 独立行政法人の自己収入が増えることになるが、増えた分は運営費交付金から減らす、つまり独立行政法人にとってはお金が増えてもまったくプラスにもマイナスにもならないという構図にするのか。または実際の予算が自己収入として増えることにするのか。

事務局の発言
 この利用料金はそれぞれの管理機関に事業収入という形で入ってくる。運営費交付金は国からの経費なので、総事業費からそのような事業収入を引いたものが運営費交付金として入る、という形になると思われる。ただ、運営費交付金全体としては、御存知の通り年々減少化させるという大きな方針があって、そのときにいかに下支えするものを別に作るかということも我々の大きな使命であって、このようなものも1つの各法人の運営の自主努力としてきちんと認識していただきたいと思っている。

委員等
 全体の運営費のうち使用料金で幾ら取れるかというと、多分誤差のうちに入る程度の金額なのだと思うが、この場で議論すべきことはもう少し違う本当のポリシーの問題なのだと思うし、個々の経営の詳細に関しては経営感覚のある方をセンター長、理事長にお願いしているのでお任せするのがよいと思う。
 ここでの基礎的固定経費とか利用に伴う経費のところで意外と抜けているのは、成果の公開費や宣伝費のようなところで、例えばカミオカンデみたいな大型施設では1つの大きな学問的な成果で十分ペイしているとも言える。そのような意味で成果をどのように外に対して公開していくかというポリシーを決めておいたほうがよいと思う。単なる公開ではなくて、科学技術者全体に対して上手に発信していくような経費を考えておいたほうがよいのではないか。例えばSPring‐8だけではなくて、グルノーブルとどのように連携しながら情報をリンクしていくか、あるいはもう少し小さな施設で出てきたデータとどのように統合していくか、といった研究者全体の連携のための諸経費のようなものも必要なのではないかと感じた。

委員等
 大型研究施設・設備を整備する上でいろいろな問題が絡んできて難しいことだが、米国にあって日本には無い施設で、新しく整備していかなければならないものもあると思う。SPring‐8ができる前の状況を考えると、研究者は、日本にないから外国に使いに行っているという状況であった。SPring‐8ができてからは国内で利用できるようになったという点で非常に有効であったと思う。そのような整備の仕方をしなければいけないのだが、今問題になっている利用料金の問題とか、あるいは逆に支援する問題とか、いろいろと予算が絡んでくる。例えば米国のNHMFLに、今も日本から使いに行っている人がたくさんいるが、そのようなものを整備していかなければならないのか、それとも米国に使いに行くことに任せておけばいいのか、という問題など、現存の設備を整備することと新しく整備することとのバランスをどのように考えていけばよいのかが、一番問題になると思う。

事務局の発言
 私達も2つ考えており、まず今の施設の使い方については、既存の施設を出来る限り有効に使っていかなければいけない、いろいろな人の利用に供して良い成果をあげていかなければならない、と考え、これは共用化ということで進めたい。もう1つは、アメリカでは長期計画が作られて、DOEであればこれから整備するべき20ほどの主要な施設を決め、諸外国の状況やアメリカの研究状況を見てその中で優先順位を決めている。残念ながら日本では今までそのようなものがなく、個別分野対応でやってきたことは否めない。したがって大型研究施設・設備をこれからどういうふうに何を作っていくのかということを国として考えていかなければいけないだろうと思っており、まさに検討を開始する必要があるだろうと思っているところである。
 そのためにも、どのように整備するか、整備した施設をどのように運営していくのか、両面からきちんと考えなければならず、運営という面では今ご議論いただいていることが1つのモデルとなって、新しい施設・設備の運営にも反映できるだろうと思っている。

委員等
 地球シミュレータについても、本当に普遍的な道具であり、あらゆる分野に適用され、新たなる分野を開発していけるものだと思っている。その観点から考えると、今の議論は本来の設備の特徴を使い方に活かしていくという意味で非常に大きな進歩だと思う。地球シミュレータの運用の基本計画では、第一義は地球環境変動をできるだけ科学的に信頼のおける形で予測しいろいろな政策に提起をしていくためのデータを与えるということである。しかし、装置そのものは非常に普遍的であるために、それだけに限らずもっと広く使えるという基本計画に基づいて運用している。ただ、そうは言っても資源そのものは1年間の運転時間が決まっているので、どのように有効に配分していくかということが一番重要であり、経営者にかけられた要請だと思っている。
 現在使っているものを100%使うためには、今持っている設備そのものについてソフトを含めて開発していかなければならず、お金が必要。しかし今の交付金制度では新しく予算を増やすことは有り得なく、そのような中で新しいものを開発していける制度をポジティブに考えている。そのような意味でこの制度を使っていくことができ、非常に良い制度である。特に、この骨子案の中で非常に評価したいのは、このような設備には固定的な経費が必要なのだということをリファインしてもらったこと。これまでは運営費とは何かということを、非常に曖昧な形で定義されていた。それに対して固定的経費と、それから実際に直接的な経費というものがあることをはっきり定義していただいたことで、固定的なものに関してはやはり国が交付すべきであろう、直接的なものに関してはもっと別の財源を利用者から取っていくべきだ、という考え方である。
 それから、使われていない部分を使えるようにするにはどのような改良が必要かという問題がある。この制度の資金はそういうものに使えるだろう。したがって競争的資金を使った利用というものが出てくることになる。また、今までの公募形式、すなわち公募だけれども需要が直接料金に関係しないようなものと、どのように区別していくかという、技術的な問題がかなり残っているが、その辺りは経営者の判断に任せてもらいたい。新たな共用化プログラムという制度を作るための一定の運転時間についても、その一定というものは経営者に任せていただき、フレキシビリティーを残してくれている点で、非常によい制度だと思う。
 また、先ほどから問題になっている、新しいものを作っていくときにどうするか、ということであるが、そういったものに関しては、省庁も局も課も超えたようなものを作っていける制度が今の日本にはなかなかないのではないか。だから、文部科学省の中でも局あるいは課を超えて新しいものを作り出していけるような組織体を作ってほしい。

委員等
 経営者に任せるということだが、任せたからには責任が相当あるということであり、DOEやあるいはヨーロッパや先進諸国で非常に大規模な世界最高水準の大型施設がいくつかあるので、そういったところの経営形態と日本国内で持っている世界に誇るべき施設の経営形態についての比較をするとよいと思う。
 それから、SPring‐8の例では、砒素の事件や長官狙撃事件の分析の話があったが、社会の安全性という点にも先端科学技術を使えるということを示す良い例だと思う。それは非常に宣伝効果もあるし、非常に大きなリターンがあるだろうと思うので、ぜひそういったものをきちんと使っていただきたい。また、地球シミュレータで普遍性という話があったが、普遍性を追求することはサイエンスとしてどこまで知的財産にしぬくかということであるので、ぜひしっかりやっていただきたい。昔、50年分くらいの文献の調査をして、原子力科学技術と計算技術を比較したことがあるが、ハード依存だけだとユーザーがどうしても限定的、固定的になり、それぞれの科学技術そのものの公開性がどんどん失われていくところがあるので、そこのところを是非ご注意いただいて経営責任を全うしていただくことが一番大事かと思う。

委員等
 産業界の利用を促進するという方策を出してあるわけだが、実際に産業界の人たちが利用するためには現在のスタッフで十分サポート活動ができるのか。例えば地球シミュレータの場合では、リサーチャーが30名でエンジニアが10名という話であったが、実際利用する場合にスタッフを増やさないと、産業界が実際利用したくてもサポートできないということになるのではないか。

委員等
 今の話はまさに一番苦悩しているところ。こぢんまりと第一義的な領域の研究だけやっていればそれなりの成果で収まるのだと思うが、設備そのものを最大限使うには産業界の利用ということがまず考えられる。だから、地球シミュレータでも産業界に利用を広げたい。実際に、新しい産業創出のスタイルを創るためのシミュレーション文化というものを提案したところ、景気が悪くなったこともあり、かなり後ずさりされた。開発する人員がいない、派遣する人がいない、ということが一番のネックとなったので、その問題をディスカッションして、シミュレータセンターも協力するので、産業界も人材養成していく制度を作ろう、という話になった。そのときに、まさに今のシミュレータセンターの陣容で対応できるのかという大きな問題が出て、非常に難しい状況ではある。地球シミュレータを使ってエンジンから機械的な動力まで、自動車を丸ごとシミュレートするような文化を作るためには、センター側から産業界に対し、人を送っていかなければならないと考えている。今回のトレーニングコースの話で事務局ともだいぶ議論したが、そういう人を育てていくようなトレーニングコースの制度もぜひ入れたい、ということになった。トレーニングコースで若い人にシミュレーションの技術を最高に持てるように育てていくと同時に、そのような人達を産業界に送り込んで、そこで一緒にやってもらい、将来はそういう人たちが産業界のシミュレーションをリードしていくグループを作って育ててほしい、というような制度として使えると思う。どれくらいの人を育てられるかは勿論資金によるわけだが、この制度で1人でも2人でもそういった人たちを育てていくことが重要だと思う。これまでの交付金の中ではそのような問題にとても対応できない。

委員等
 この基本的考え方を自分なりに要約すると、共用化と有料化と利用促進の3点になるだろうと考えている。この中で先ほどから問題になっており、私も大変関心があるのは有料化のこと。全般的にはこの案に賛成だが、その中でも有料化について、特に基本的に受益者負担的な考え方を導入しているということだが、大学関係でトライアルユースあるいは基礎基盤研究をする人で研究費が弱い面の研究者に対して研究資金の支援をしていくという内容のことが文面のあちこちに書かれているが、それは本当にどこがやるのか。独立行政法人でそういうことをやるのか、あるいは国レベルとしてそういうものを支援するのか、そういう制度をきちんと作るのか、そのようなところが見えない抽象的な表現だと大学関係者は結局切り捨てになるのではないかと危惧する。この委員会は具体的な細かいところまで議論する場とは思わないが、どのような制度を作るかをきちんと提示しないと、先ほどから問題になっている弱い立場の研究者というか、研究費の少ない研究者であるが、しかし非常に有用な研究を将来行っていくという若い芽をそいでしまうのではないか、と危惧している。その辺りをきちんと明確に示す必要があると思う。

委員等
 ただいまの意見に全く賛成である。まず共用化をはっきりと宣言したことと、それに伴ってサービス機能を強化するという方向性をはっきり出したことは非常に評価したい。有料化についても、コスト意識を持っていただくというメリットと、それから当然使いやすさとの両面でうまく機能しなければならないと思う。1つだけ懸念しているのは、有料化の制度を導入することによって手続きがますます複雑になることのないような、シンプルな方法でできるようでないといけないということ。制度設計をうまくしないと逆効果になってしまうのではないかという気がするので、その点を是非お願いしたい。なお、民間の立場から言えば、トライアルユースなどにアプローチしやすいシステム作りをしていただくことは非常にありがたいことである。

委員等
 共同利用の施設について、利用率が高ければ高いほど好ましい状態にあると一般的には考えられるのだが、サイエンスや技術開発の観点からは100%利用というものは非常に良くない状態である。というのは、新しいことを試みるのに時間がかかり、スピードを殺してしまう。これは常に考えておく必要がある。極端に言えば、一律ではないけれども常に20%はアイドルの時間があるというくらいにしないと、本当の先端的なサイエンスはやっていけない。申請してから2年待って採択されたという施設は、100%利用で見事な施設だ、とはとても言えない。すこし空いているけれどもすぐに使える、というシステムが本来サイエンスのファシリティが持つべき姿だと思う。だから、スピードというものを考える場合には常に対応できるゆとりを設計しておく必要があると思う。

委員等
 今の意見に全く賛成だが、それに加えて、激しい国際競争で勝つことばかりを考えていて、ある意味で遊びの部分というか、サイエンスを楽しむ部分がどうしても抜けがちである。それにあわせて、先進国とはいくらでも競争するし、一番競争の厳しいときはどこまでフットワークがよくて、誰が先頭に立つかで結局すべて勝負が決まってしまうので、そのあたりは非常にダイナミックにサポートする必要があるということと、その一方でディベロップメントカントリーというかそういった国との協調というものをこのような大型施設の中でも触れておいていただくと、日本という国の懐の深さを出すという意味で非常に大事かと思う。

委員等
 先ほども申し上げたが、一定の割合を共用するというのは、専門家の場で議論すると同時に独立行政法人としての経営責任でやったらどうか、という議論で整理されることでよいかと思う。フレキシビリティーがある中で的確な判断をしていただければよい。ただ、独立行政法人は全体として行政改革という波の中にあるので、今言われたようなある程度の遊び的な要素というものはなかなか取り込みにくい環境にあるので、こういった施設を運営管理する独立行政法人が本当に独立した形で判断できるようなシステムを国として擁護しないとなかなか難しいのではないか。要するに、経営的な合理化を徹底しろという圧力のほうが非常に強いので、そのような意味で非常に基礎的な研究の芽をかえって摘むようなファクターが出てくるのではないかということを懸念しなければならないと思う。
 それから、いずれにしろ独立行政法人は評価委員会みたいなものが絶対あって、総務省を含めていろいろ評価をされるわけで、そのときに単なるアウトプットではなくて、それがどれだけ社会に生かされたか、科学の面で役立ったか、というアウトカムによって、この施設を運営する機関が的確に評価をしてもらえるような形で説明責任を果たしていくことが非常に重要だと思う。そういった説明をきちんとすることによって、基礎的な研究も含めてあるべき的確な評価がされ、それぞれの施設運営がより的確に行われるということなのではないか。

委員等
 地球シミュレータの場合でも、現在もセンター長裁量枠として20%の自由度を必ず持たせており、機械的な意味での100%には近づけるものの、その中の使い方に関しては自由度というものも必ず入れる、そういったものを許してくれるような制度には是非してほしい。自由度と責任、そしてそれに対してどのように評価していくか、という制度もきちんとしなければならない。もちろん経営者が正しいとは限らないので、間違ったことに対してはきちんと評価して、何らかの助言を与えられるような制度にしないといけないと思う。

委員等
 議論は出尽くしているように思うが、要するに新しいサービスを展開するということで、しかも有料化、すなわちサービスの商品化ということなので、このためにはそれなりのコストがかかり、その分、先行投資していかないとすぐには使えないということになる。そうすると、利用料金と所要経費との採算性というビジネスモデルの問題になり、難しい部分が相当出てくるのだと思う。いずれにしてもこういう風潮であるから有料化は必然だと思うが、有効に使われるような環境整備のための投資、経費というものが先行的に必要なのではないか。これについての配慮がないと、結局制度だけ作ってもまた使われませんね、という可能性も出てくるかと心配に思う。

主査
 原則利用者負担には反対であるという強いご意見の委員がいるので、繰り返し聞くことにはなるが、現在、基礎研究で公開を原則とする、公開する研究者に対してはSPring‐8では料金は一切いただかないというスタイルの運営部分は、今後も残ると考えていいか。それとも、応分の負担はいただきます、という形になるのか。

委員等
 最終的な結論は出ていないが、SPring‐8の諮問委員会では一応それを容認する方向にはなっている。非常に安い金額ではあるが。ユーザーとか学会といった利用者レベルで考えると反対という意見ばかりだが、それを学校の経営に係わる人とか学会の上層部のほうを集めた諮問委員会を開くと、今のような判断で、そこまでは仕方が無いか、というのが現状である。

主査
 この報告書には、婉曲でもいいからユーザーコミュニティ‐を説明できるようなキーワードが何か必要だと思う。本当の基礎的なルーティンの繰り返しの研究でも場合によっては非常に安く利用できる、という意味にとれるような言葉がほしい。

委員等
 有料と、かなり無料に近い有料、と2つ作るのは、いわゆるダブルスタンダードになると思う。基本的にはあまりよくないので、原則有料として、その中でそれぞれの機関の状況に応じて研究をサポートするシステムにしていかないと、スタンダードはやはり1つにしないと混乱が起こるのではないかと思う。

委員等
 これからの日本において、多分、この方向でないと最終的には渡り合えないと思う。しかし今、ユーザーの大部分には、原則有料と言って通るような雰囲気ではない。原則有料だがまとめてそれをどこかで面倒をみてもらう、というのが多分努力目標だと思う。その中で本当にお金を払う人、援助を受けられる人をきちんと定義して、国レベルできちんと考えていくことが一番よいと思う。

委員等
 利用者負担の件だが、利用者の中の受益者負担としたらどうか。ただ、利益がいつ頃上がって、ということは時間がかかることなので、例えば後で利益が上がれば使用料を負担するという形にするのはどうか。

委員等
 利用者負担という議論だが、総額としてどのようになるかが一番重要で、要するに利用者に現物支給するか、競争的資金で一旦金額表示にして支給するのか、ということであり、国の懐から見れば全体をどのくらい保証するのかという議論が一番重要なのではないか。研究者から見ると、現物支給・無料という環境に慣れているものの、今後はむしろ競争的資金のほうを増やして、現物支給分を減らすというような環境になりつつあるという認識はあると思うが、それにしても総額としてどの程度保証していくかを、どの程度この報告書に書き込めるかということが重要かと思う。

委員等
 基本的な考え方は結構だが、参考資料の海外の状況が主にアメリカと一部ヨーロッパについて書いてあるが、もう少し付け加えたらどうか。古い話になるが、ロシアあたりに作った当時はどういう方針でやったのか、ある意味では参考になると思う。

委員等
 前回にも出ていた意見で、この制度の課題審査のことについて今もそうなのだが、国の課題審査がありそしてまた現場の課題審査がある、という二重審査になってしまう。この骨子案にも課題決定にあたっては施設の特徴を十分に理解している専門家が参加した場合、公正に行われるとあるが、現在施設が持っているような審査委員会が動かし、上位の審査委員会はそれが適正に行われたか、あるいはこういう方針でやりなさいということを決めて、良くない場合は審査委員会を替えるあるいは委員長を更迭する勧告をする、という二重のメカニズムにしていただきたい。今のように両方で同じような審査をやって、そのすり合わせに現場が苦労するというのはやめてほしい。

委員等
 大賛成である。とにかく時間がかかるようなものを入れることは反対すべき。研究者は研究においても審査においても疲弊しているので、ぜひそれはないようにしてほしい。

主査
 それでは、利用者が原則的にはいくらかの料金を負担するという基本的な考え方をこの報告書の一番重要な骨子としてまとめていくということでよろしいか。

(委員一同了承)

主査
 基本的流れとしては各委員にお認めいただいたということで、事務局で本日の案に各委員からいただいたご指摘を検討の上、さらに肉付けして、次回委員会までに準備していただきたい。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)