知的基盤整備委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成16年7月22日(木曜日) 16時~19時

2.場所

文部科学省 10階 第3会議室

3.出席者

委員

 澤岡、飯塚、井戸、岩田、岩渕、岡、河盛、黒木、小原、齋藤(紘)、齋藤(宗)、二瓶、根岸、平木各委員

文部科学省

 丸山研究振興局審議官、田中研究環境・産業連携課長、米倉基礎基盤研究課長、小島基礎基盤研究課大型放射光施設利用推進室長、佐藤基礎基盤研究課材料開発推進室長

オブザーバー

有識者
 小中独立行政法人理化学研究所理事
 吉良財団法人高輝度光科学研究センター理事長
 木下独立行政法人海洋研究開発機構理事
 佐藤独立行政法人海洋研究開発機構地球シミュレータセンター長
 長我部株式会社日立製作所基礎研究所長

4.議事録

(◎:主査 ○:委員等 △:事務局の発言)

(1)先端大型研究施設・設備の活用促進について

「Spring‐8利用の現状と問題点について」

 財団法人高輝度光科学研究センター 理事長 吉良爽氏

委員等
 SPring‐8は、播磨に1,100億円をかけて平成9年10月に完成し、今年で7年目になる。これは、日本原子力研究所と理化学研究所が一緒に作り、実際の運営は、別に設立した財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。
 施設の年間運転時間は約5,000時間。運用開始からの実施課題数は、共同利用4,811件、専用施設利用1,080件。利用者数は共同利用30,113人、専用施設利用8,751人になっている。利用料は、成果を公開している場合には無料、成果を非公開の場合には8時間当たり約47万円となっている。
 運営に係る予算は文部科学省から出ており、日本原子力研究所と理化学研究所にまず渡されてその予算の中に入り、そこから代行、委託という形でJASRIの活動費となっている。それから、一部は交付金として直接文部科学省から来ており、全体で約98億円である。
 SPring‐8は直径が500メートルのリングに電子を流しておき、そこに磁場をかけるとX線や強い光が出てくるというのが基本的な原理である。このリングには、ビームラインが62本まで設置できるようになっているが、現在は、計画中のものも含めて48本で、あと14本が空いていている状況である。
 ビームラインには、共用(25本)、専用(10本)、原研/理研(11本)、加速器診断(2本)という区分があり、原研/理研というのは施設主が自分で使うためにつくった分であるので、今日の議論からははずれる。共用というのは本当にパブリックに共用されているもので、有料、無料というようなことは大体ここが対象となる。専用というのは、自分でお金を持ってきて、しかるべき審査を受けてつくったものである。
 利用システムとして、共用の場合については、成果を公開するという建前で、その公開の代償として利用料はとらないという精神で作られている。これは、建設当時に科学技術庁の航空・電子等技術審議会の20号答申で、この基本的な考え方が決められている。年に2回募集し、それを審査して使えるようにしている。また、緊急利用ということで、これは認めれば随時緊急枠がとってあり、それで使えるようにしてある。息の長い仕事をするためにこれも認められれば長期ビームタイムを確保することができる。
 有料の場合であるが、成果専有、つまり成果を公開しない場合に、利用料を出していただくというやり方になる。この場合は内容について踏み込まず、安全審査のみという形で年に2回募集している。利用料金は、8時間を1シフトという単位で割り振っており、8時間あたり47万2,000円としている。また、緊急に測りたいなどという場合には随時受け付けの時期指定という形態があり、なるべく都合をつけて、希望の前後で測定できるようにして、その場合には特急料金として70万8,000円という料金になっている。
 専用ビームラインは自分で作ったものであるから、完全に無料かというとそうではなく、成果専有の場合には1シフトあたり26万円を負担していただいている。
 一般的な利用の場合、課題を募集して審査をし、成果非専有の場合、つまり公開の場合は実施して報告書を出してもらうという流れになる。この報告書がA4版1枚であるというところは問題だという指摘がある。
 課題の選定基準としては、学術的なこと、産業基盤とか社会的意義というようなことが決められており、これは一番最初から決まった選定基準である。
 選定は施設が行っていると思われがちであるが、そうではなく、法律にも書いてある諮問委員会という独立の外部の委員会があり、その下に利用研究課題選定委員会があり、現在、7つの分科会が設置されている。これを指名するのはJASRI側であるが、外部の委員会が課題を選定している。
 これまでの応募者数と採択数を見ると、大体6、7割ぐらいの採択率となっている。
 一昨年、中間評価を受けており、そのときにSPring‐8は本格的利用期に移行する時期に来たと考え、最大限に成果を上げること、新たな利用者の拡大、産業利用をもっと促進せよというようなことを指摘されている。それに沿ったことを早速取り組んでおり、例えば、今までは、共同利用では一般研究利用課題しか利用形態はなかったが、それを重点課題として領域指定、利用者指定というようないろいろな制度をつくって、JASRI側のイニシアティブで行えるようにした。ユーザーとは一般利用研究課題の割合が50%を割らない範囲でこういうことに取り組むという約束で今行っている。もう1つは産業利用を活性化しなくてはいけないということで、産業利用について様々な取り組みをしている。
 成果専有と非専有の課題数の推移を見ると、成果専有課題は現在6%程度という状況であり、少し前までは1.数%程度であった。金額的には約1億円で、これを全体の予算の割合で見ると1%ぐらいしか稼いでいないというのが現在の状況である。また、どのよいうな人が使っているかというと、国立大学と私立大学とを合わせて大学が60数%使っている状況である。
 産業利用については、産業利用ビームラインをつくるとか、産業利用分科会を独立させるとか、トライアルユースなどいろいろな策をおこなってきた。特にトライアルユースは功を奏しており、産業利用は全体の2割ぐらいの応募があり、採択の比率は約12%に増加した。
 平成10年から利用者数は増えているが、予算はだんだんこの辺から落ち始めている。しかもここからタンパク3000というプロジェクトの一部をいただいて運営費に補てんしないとフルに運転できない状況になってきている。要するに、運転時間を確保するために外部資金に依存しているということはすでに平成14年から始まっている。
 世界に大体同等の大型施設が3つあり、ヨーロッパ連合が持っているESRF、アメリカのAPS、そして日本のSPring‐8である。開始以来何年目かのアウトプットの数、論文数で比較すると、ESRFが断然強くて、Spring‐8は少し見劣りがするというのが現状で、もう少し何とかして向上すべきである。
 支援の仕方についてのユーザーの意見から、何をしなくてはいけないかというと、やはり新分野の開拓、それから支援を充実させることである。我が方には1ビームライン当たり1.5人の支援サイエンティストがいるが、アメリカは3人以上、ヨーロッパはほぼ4人近くの数が割り当てられており、そういう問題があるということである。それから、新分野に対して、今までのユーザーが既得権を主張しているという意見があり、この辺はなかなか難しい問題である。
 産業利用の促進のためには、普通の人が使えるようにしていくことが一つの方向である。また、多様な利用に対して柔軟に対応するということも今後必要であろう。研究支援体制を強化しなくてはいけない。それから、挿入光源と称するものが産業利用用にないので、これを強化するともう少し伸びるであろう。
 SPring‐8の使用料について、財務当局からこれはとるべきであり、ユーザーは応分の負担をするべきであるという指摘がある。また、会計検査院からは成果公開というけれども、あの程度のものでは成果公開ではなかろうという厳しい指摘を受けている。
 それから、これは一般的に行政の側の意見であるが、競争資金は現在充実しているので、それを使ってユーザーは払ってもいいのではないかという意見もある。
 ほかにも特殊法人の理研、原研のステータスの変更とかでいろいろ考えなくてはいけないことがある。無料という考え方については、航電審の諮問第20号答申で担保されており、ここのところの議論が進まないと我々の判断で、これに対応するというのは非常に困難であるというのが今の状況である。

委員等
 理化学研究所としてもこのSPring‐8の安定的な運転をどう確保していくかを考えている。予想以上にビームが出ており、まだ7年か8年しかたっていないが、いわゆる劣化というか、本来、もう少しもつというところがかなり厳しくなっている。今年からメンテナンスの予算もいただき、これを使って安定的な運転を図っていくように考えている。

主査
 航電審の答申に基づいた料金の問題について、共用という考え方で基本的には公開されるものについては料金をとらないという基本方針でやってきたことに対して、財政当局その他、政府の方針なども徐々に変わりつつあり、このあたりを今後どう考えるかということを本委員会で議論し、さらに上部の審議会、航電審に代わるものが科学技術・学術審議会になっているので、いろいろな形で議論が反映されていくのだろうと思う。

委員等
 Spring‐8は国際的にオープンにされている施設なのか。

委員等
 この施設自身は国際的にオープンにする建前でつくられている。

委員等
 ヨーロッパ、アメリカの施設はどのように運営されているのか。それと比較してSPring‐8の財政的な状況はどうなのか。

委員等
 運営費について、APSには、DOEからの資金がおよそ90ミリオンダラー出ており、今の通貨換算で100億円近くになる。欧州のほうは、70ミリオンユーロというところで、現在1ユーロが132円ぐらいになっているので、これも100億円程度というように大体同じような運営費と聞いている。

事務局
 ヨーロッパはわからないけれども、アメリカの施設はSPring‐8と基本的に同じ考えになっていて、成果が公開されるような場合には無料ということになっている。ただし、施設に入るときに共益費のようなものを払って参加資格みたいなものを得て使っている。成果は非公開、自分の財産にしたいというようなものはどこまでフルコストなのか詳細はよくわからないが、フルコストリカバリーの精神で全部料金をとっているという状況になっている。

「地球シミュレータについて~現状と今後~」

 独立行政法人海洋研究開発機構 理事 木下肇氏

委員等
 地球シミュレータ計画の一番大きな目的は、地球変動予測のシミュレーションということで、その中には2つの項目があり、1つは気候変動、もう1つは地震や津波を含む固体地球の変動の解明ということである。2つ目の大きな目的は多様な分野へのシミュレーションのアプローチということである。
1997年から5か年かけて3法人(宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ)))、日本原子力研究所、海洋科学技術センター(現海洋研究開発機構(JAMSTEC))で協力して設置し、運営については海洋研究開発機構が一元化して行うよう指導があり、海洋研究開発機構で運営を行っている。
 予算については、システムの全体を動かすために平成16年度予算約54億円となっている。
 利用の基本的な考え方として、まず平和目的に使うということ。2番目には先進創出的分野に主として目を向けていくということ。それから、研究テーマの内容については高性能のシミュレータを使うことのみによってできるもの、要するにスーパーコンピュータ80台ぐらいを使うもの以上に限定している。
 応募資格については、国内外のいろいろなコンソーシアムあるいは単体の機関、あるいは個人の研究者という非常に幅広い対象を考えている。
 運用体制としては、非常に運営が軽くできるように組むことを許されている。運営委員会があり、その下に利用計画委員会があり、利用計画を理事長に具申する。理事長の下のセンター長が運転全体を司るということになっている。
 利用状況は、気候変動が35%。地球内部については20%。計算科学に関しては10%、先進的プロジェクトは15%を割り当てている。それから、センター長裁量として20%あり、新規課題をどう育てていくか、外国とどのように手をとりあっていくか、産業界とはどのように協力していくかということで、センター長が全体を見て割り当てる枠である。
 利用プロジェクト選定の流れは、ユーザーからプロポーザルが出て、選定委員会が選定を行い、決定事項が理事長に届けられ、これに従って運転にかけるという流れになる。平成15年度は、民間から3、公的機関18、大学13という34課題を運転している。
 これだけ大きな計算機になると、相当支援体制をしっかりしなくてはいけないということで、プログラムの開発、最適化など、いろいろな相談に乗りながら、ユーザーの教育に力を入れている。
 運転の効率は、80%ぐらいで動いている。
 ピーク性能は40TFLOPS(テラフロップス)であるが、実際に普通の計算を走らせると、平均の実効効率は30%程度である。それをオプティマリゼーションすることで、実効効率の向上がシミュレータセンターの研究の結果明らかになったので、効率の低いプログラムも問題の性質によってどうしても上がらないものもあるが、利用者に努力していただき、またセンターも支援を行っていき実効効率の向上に努めていきたいと思っている。
 私どもがこれから力を入れなくていけないと思っていることは、研究陣が気候変動モデルを研究し、世界の将来の気候変動モデルを提供していくということのほかに、産業界との連携はどうあるべきかということを真剣に考えていかなければいけないと思っている。
 大型施設、例えばSPring‐8とか、シミュレータというものがある意味でインテグレートされて始めて出てくる効果があり、産業界が将来どのような道具を作り、どのような計測をして、それをまた自分たちの産業構造の中にフィードバックしていくかというところで、大型施設が非常に基幹的な部分を担うわけである。これを国を挙げての国家的プロジェクトとして運転していけば、非常に将来に希望が持て、産業界の発展があり得るし、世界の一流の仕事を続けられると考えられる。
 産官、そして産学、学官の連携、やはり日本を主導した様々な立場の皆さんに横断的に考えていただき、このシミュレータを使った重要研究分野への指導及び国民に対する普及活動をしていただければというのが私どもの願いである。
 海洋研究開発機構はあくまでもシミュレータを自分で抱えていくというより、国の大きな仕事であるのでその趣旨に沿って皆様の希望する方向に物事を進めていきたいし、これからもいろいろ指導いただければ大変ありがたいと思っている。

委員等
 国家的な戦略として地球シミュレータのように世界に類のない装置というものが大いに使われるような方策、制度というものをつくっていただければありがたいと思っている。
 我々は、いろいろな先導的な分野にできるだけシミュレーションという文化を発信したい。センター長裁量部分というのは、地球シミュレータの成果が日本のみならず、世界にも評価してもらう、そのためには国際的な協力も必要だろうし、あるいは産業界というものに対しても特に重点的に考えている。
 地球シミュレータを利用する課題は、産業界から大いに応募してくれるだろうと思っていたのだが、意外と少ないということで、我々のほうからむしろ積極的にアタックした。それでわかったことは、小さなシミュレーション、部分的シミュレーションというものはこれまでのスーパーコンピュータぐらいの大きさでやっていたけれども、システム丸ごとシミュレーションするという概念がなかったということである。
 地球シミュレータを超えるようなものは世界にないわけであるから、ほとんど使ったことがない。そういう意味ではただ課題がいいというだけでは成果が上げられないので、有限の資源の中で成果を上げていくためには、この装置をよく熟知した人が公正な立場で判定していかないと、せっかくの国家的な財産が有効に使われないだろう。その辺のところだけはぜひこの委員会においても検討いただきたい。
 地球シミュレータというものは丸ごとという概念を始めて入れたということで非常に新しい。これは世界に、アメリカといえどもそういう考え方はないわけで、ぜひこの考え方を日本が国家的な戦略として継続できるようなこともこの委員会のところで考えていただきたい。

委員等
 独法であるので中期目標の中で地球シミュレータの運用の目標が書かれていると思うが、どのように書かれているのか、また、目標との関係での評価はどのような意見になっているのか。

委員等
 中期目標の条文の1つひとつは今記憶していないが、地球シミュレータを使った研究開発は、ここで話したような項目について、政府のほうから取り組むよう示されている。我々もそれについては十分答えるべき運営体制をとっており、例えばプロポーザルの選定をどうするかといったような公平性、それからユーザーをどういうふうに広い世界に広げていくかといったフィージビリティに取り組んでいる。外部評価については、私どもの理事長の考えでは5年は長すぎるから3年目に外部の評価を受け、それを通過したらもっと広いところで評価をみてみようと考えている。

委員等
 評価については、地球シミュレータプロジェクトが始まって、期間的には2年以上経過した時点で受けるということになっており、この秋ぐらいから始めようと思っている。

委員等
 天才的な面白い人をできるだけ、理事長裁量か何かで、思いっきり使わせてみるような、そういう支援体制がロングタームできちっとつくられないと、結局、速いパフォーマンスのコンピュータができただけになってしまうと思うので、その辺りのブレークスルーを本当に行うための体制づくりをぜひ考えいただきたい。

委員等
 地球シミュレータセンターは、全部で研究者が30人、技術者が10名程度の40名で運営している。地球シミュレータといえどもワンフィジクスに関しては丸ごとできるようになったが、マルチフィジクスまではいかない。本当にスケールの違うミクロとマクロを同時にシミュレートするようなものについて、具体的な問題でアルゴリズムに取り組む研究領域がこの4月から文科省のほうから認められて今まさに募集している。ぜひそのような人がいれば、推薦していただきたい。
 それから、我々が1つ提案したいのは、産業界では意外と丸ごとシミュレートするという文化がほとんどなく、取り組んでいる人はほとんどいない。そのような人をぜひ我々のところで育てたい。そのような制度をぜひこしらえて、我々のところで地球シミュレータあるいはそれ以上のものを使えるような新しい人を育て、会社に送り込んでいきたい。会社から送ってもらうだけではなくて、我々のほうから会社に人材を送り込んで、そこでそういう芽を育てるという形にすればかなりシミュレーション文化というものが広がるのではないかと考える。

主査
 54億円という16年度の予算の流れを教えていただきたい。

委員等
 システム運用費として、その中には保守、運用業務その他事務経費、利用研究推進費があり、交付金としてまとめていただいている。

事務局
 54億円のうちの30億円ぐらい、全体の6割ぐらいがJAMSTECに対して文科省から運営費交付金として出ている。残りはプロジェクト経費のような格好で積んである。そこはJAMSTECのほうに流れていくという格好になっていて、現在のところはJAMSTEC以外に原研とかJAXA(ジャクサ)からこの運営費に入ってくる予算はない。

委員等
 これから人材を育てて産業界に送り出したいという話であったが、関連する法人をもっと加えて、いろいろな開発を呼びかけるようにする方針はないか。

委員等
 原研、JAXA(ジャクサ)からかなり課題の公募はきている。そういったところには大きなシミュレーション、世界をリードするようなものを大いに出してほしいという形で、我々のほうからもお願いし、活用されている。大学関係も産業界も入っており、産業界の人たちも現在、20%ぐらいは参加している状況である。

「産業界の大型研究施設・設備の利用ニーズ」

 株式会社日立製作所 基礎研究所 所長 長我部信行氏

委員等
 産業界から大型研究施設・設備への利用ニーズということで、日立グループから見たニーズということをお話しさせていただく。
 日立グループでは、研究開発、設備の利用をどう効率的に行うかということで、今年度から新しいR&Dの体制を組んだ。先端基盤研究という中に、グループ横断型技術プラットフォームというものがあり、これが大型計測設備とか、あるいはシミュレーションへのアクセスのポイントになっている。このグループ横断型技術プラットフォームとして1材料、2計測、3シミュレーション、4組み込みソフトという4つをまず今年度設定した。
 設備とか、非常に高度に使える人を集約し、グループ全体で高度計測センターそして高度設計シミュレーションセンターというものを置き、それぞれ例えば地球シミュレータあるいはSPring‐8といったような国の非常に先端的な大型施設でどういうことができるかということをグループ内に宣伝した。そして、そこを基点にしてグループ内のニーズをつかまえ、問題点をコンサルティングして、社内でできるものは社内で、外注できるものは外注、そして国の大型設備を借りて行うものはそれを使うという振り分け、投資効率を上げるための取り組みを行った。
 企業から見てこうした大型のシミュレーションというものに対する期待は、試作レスでものの開発をしたいということである。先ほどから出ているマルチフィジクスというか、いろいろな物理モデルを連成させて解くということがこういった非常に速いコンピュータに求めていることである。企業はかなり実利的なことを求めるので、実験と計算結果を合わせてパラメータフィットさせて、とにかく設計に役立つツールをつくりたいというニーズがある。例えばデバイスについて、SPring‐8で行っているようないろいろな原子、分子レベルの構造解析とシミュレータの結果を合わせ込んで設計ツールとしての精度を上げていく、そういったような動きは非常に期待するところである。
 SPring‐8では、私ども民間13社の企業が集まり、産業用のビームライン、サンビームというものを2本つくり、13社で実験を行っている。日立グループの場合、年間25日ほどビームラインを使用することができ、デバイスあるいはエネルギー、環境といったような広い分野で使っている。その狙いとしては、企業として最先端技術をキープしたいというようなこと、あるいは、そういったものを積極的に情報発信して、それぞれ企業として製品に対して最先端の技術を持っていることをアピールするということである。運営にあたってはJASRIとの緊密な連携をとりながらやっていきたいという方針である。
 最後に地球シミュレータとSPring‐8の利用に関して、それぞれ私どもの目から見た要望を述べさせていただく。
 地球シミュレータに関しては、共同プロジェクトの公募の形態で年1回という受け付けであるが、企業活動から見ると何か問題が起こったとき、あるいは不良解析とかそういうことでどうしても大型の計算をして確認したいというような事情がある。そういう意味で年1回から随時受け付けというようなことにしていただければありがたい。
 使い方について、コンソーシアムとか幾つかの企業によるプロジェクト体制での提案という要求があるが、テーマ開示とか緊急の製品に直結したところではなかなか複数の企業で行うというのは難しいので、独自提案ということができればと思う。
 成果公開について、非常に先端的な部分は私どもも積極的に公開していこうと思っているけれども、特許出願ということがあり、出願した後に公開するというような非公開期間の弾力的な扱いといったものをお願いしたい。
 そのほか、運用に関して、装置の性能的な面で幾つか要望がある。
 SPring‐8に関する要望としては、成果公開に関して、非常に基礎的なものは私どもどんどん公開したいが、応用とか製品に近いところになると非公開としたい。その部分はもちろん料金体系を整えていただければ課金でもかまわないと思っている。また、地球シミュレータと同様に特許出願の期間を考慮して公開ということを考えていただければありがたく思う。
 運用に関しては、ビームラインの整備ということで、10年ごとのRenewal計画といったものに支援をいただきたい。地球シミュレータにも共通するが、こうした先端的な設備を利用するに当たって、やはりサポートが必要である。私どもの社内の中でも高度シミュレーションセンターと計測センターというのをつくり、そこにかなりプログラムができる、あるいは放射光のビームラインの設計ができるぐらいの人間を置いているけれども、やはり企業でコストを考えると、そこまで専従の人間を置くことが難しいということがある。コンサルあるいは技術サポート、この辺を充実していただくと、我々としてはますます使いやすくなる。また、データの解析について、非常に高度な解析になると、社内ではなかなか難しいので、大学の先生などとうまく連携して実験データの解析のような道を開いてくださるとありがたい。

主査
 遠心ポンプの解析に使用したソフトウェアはどのようなプログラムか、国産のものか。

委員等
 東大生研で走っている基盤ソフトウェアのプロジェクトで開発したものである。これを使っているのが日立インダストリーズという、非常に古典的な装置を使っているところで、そういうところに先端的な計算のニーズがかなりあるというところが我々としては非常に目新しかったと感じている。

委員等
 国際的な比較で、例えばEUの放射光施設に頼んだほうが速いとか、使い勝手がよいというようなことから、国内の施設はあまり使わずに海外の施設を使うというようなことはないか。

委員等
 企業の中では、やはり強いコア技術を持ちたいという考え方がある。高度な計測をするときに、簡単に海外に出すとほとんどお任せで、どうやって答えが出たか等々がわからないし、実験内容にはあまり手出しできない状況になる。ところが、こういった国内の施設だと、SPring‐8の例では、実際に行って実験するので、社内の暗黙知というところが十分高まってくる。社内の暗黙知あるいはコア技術を高める意味で、我々が簡単にアクセスできる国内の先端設備というのは必要と思っている。

(先端的研究施設・設備活用の促進について事務局より説明の後、自由討論。)

委員等
 コスト意識が低いから研究の最適化が図られず、効率的な活用がなされていないので、利用料金を取るべき、という考え方なのか。競争的資金が潤沢であれば勿論よいのだが、そうでない現状においては、大学や大学共同利用機関にいる者としては料金を取ることの理屈が理解しにくい。

事務局
 利用料金を取る理由は2つあると考えている。コスト意識については、メインの理由ではないと思う。ただ、自分の経費であれば切り詰めた研究計画になるところを、自分の研究ではあるけれども、理化学研究所やJASRI、海洋研究開発機構といった機関が全部経費を用意しているので、余裕を持たせた研究計画になっている、という指摘を受けているため書いたまでである。
 なぜ利用者負担を考えるかという理由の1つは、共用や他の者に利用してもらうことを、今の施設の運営主体だけに負担してもらってよいのか、ということである。例えば海洋研究開発機構であれば、海洋科学技術の振興などが主目的であるのでそのような運営をせざるを得ない。しかし、シミュレータを自動車業界に利用してもらうといったことも、正々堂々と大きな用途として考えていくべきものであり、もっとほかの用途についても海洋科学技術振興にとらわれずに進めていくべきものと思っている。
 もう1つは、競争的環境下で行ったほうがよいということだが、科研費や他の競争的資金を使ってほしいということではなく、最初のうちは効率的な活用方策を進める一環として、トライアルユースや新領域創生のための研究用に新しい競争的資金を用意することが必要ではないかと考えている。

委員等
 独立行政法人が持っている施設という観点から理解が及ばない点がある。1つは、各独法は設置目的があり、例えば海洋研究開発機構は、海洋開発とか地球という領域に見合った業務をすることが法人として規定されている。このシミュレータをいろいろなところで使おうということは、独法の目的からどのように読むのか、ということ。
 2つ目は、効率化を考える際に、独法は数値目標を含めた中期目標を与えられるので、シミュレータの稼働率は何%以上、民間から何件くらいお金を取る、という目標は設定され得る。そのような形の管理の仕方や運営の効率化を図るという手法もあるのではないかという疑問を持つ。3つ目は、共用財産として施設を活用するという考え方であれば、施設を運営する法人を別途立てて、その施設の運営という観点から効率化を図るという形でアプローチするほうが自然ではないかと思う。
 今回の議論ではこれまでの独法という枠組みをある程度捨象して考えるのか、独法という枠組みの中で考えるのかを、冒頭で整理したい。

事務局
 理化学研究所と海洋研究開発機構との違いもあるが、両方とも中期目標・中期計画を立てているわけで、今おっしゃられたような独法の設置目的あるいは業務範囲に限られることは当然だが、どこが施設を運営すると一番有効な運営ができるか、という観点も考えないといけないと思っている。共用業務と法人業務との関係を考えると、共用として現在行っているものはおおよそ共同研究スタイルで行っているが、その共同研究を行うことによって海洋科学技術振興のためにいろいろな知見が生まれてくる、という理解で行っており、だからこそ共同研究というスタイルを取っていることが多いと思う。ただ、それによる限界もあることは確かであるから、別に切り離した枠組みとして国が新たに措置をする、という仕組みを国側が作って、それを適切な機関が運営するというようにしていきたいと思っている。
 また、SPring‐8の場合はJASRIというそのような機関が既にできており、理研でも原研でもない、施設を運営するための法人としてできている。それが理想形という考え方もあるが、すべての大型施設についてJASRIのような、法律を作ってその法律の下に法人を作ることを一般化する、ということはなかなか現実的にも難しい。それよりは、今海洋研究開発機構とかいろいろな機関が一生懸命に努力されているのになかなかユーザーが広がらない、産業界の利用や新しい使い方がなかなか生まれてこない、といったことを解決し、早急に対応していく必要があると思い、このような案をたたき台としてお出ししたということである。

委員等
 理化学研究所も、JASRIの部分は別途法律があって共用業務をしなさいと書かれている。さらに理化学研究所法において、一般的な大きな施設の共用業務はまさに業務の範囲に入っている。今私共で作っている施設であるRIBFも、理化学研究所のユーザーだけでは使い切れないので、外部にもどんどん使ってもらうシステムも考えようとしている。この議論ともかなり重複すると我々は認識している。

委員等
 SPring‐8の人は御存知と思うが、立命館大学が「みらくる」というシンクロトロンを作っており、説明では、使い方によっては部分的にSpring‐8を凌ぐもので汎用性も高い、と言っている。結局、SPring‐8をいきなり利用しなさいと言ってもなかなか利用できない場合は、そのような汎用性の高いものを活用するように仕向けることによって、もっと高度な解析の場合にはSPring‐8を使ってみたいということも起こり得る。そのようなものとの併用を考えないと、利用拡大が今のままで果たせるのかよくわからないと思うが、いかがか。

主査
 今の点は、立命館とSPring‐8とは完全に棲み分けが出来ており、エネルギー領域もかなり違う。ある特定の分野に限れば立命館の施設のほうが極めて使い勝手がよくてお客さんもいるようだが、全体的に見ると圧倒的にSPring‐8のお客さんのほうが多いと感じている。

委員等
 今回の議論は、要するに産業界に使ってもらいたいというのが多分最大の狙いだろう。そうすると、産業界に使ってもらうのに一番使いやすい方策は何かというところが、多分スターティングポイントになっているのだろう。
 例えば我々のところでハイブリットマグネットや930メガヘルツのNMRを持っているが、ハイブリットマグネットは共用施設として既に運用している。ただ、最大の問題は企業の人にとって敷居が高いのかな、という感じがすることである。その最大の問題は共同研究契約を結ぶという利用の前提で、共同研究契約を結ぶということは、費用も50‐50、研究成果も50‐50、研究能力も50‐50、要するに相手側もそれなりの研究能力がないとだめですよ、といういわば敷居を作っているところがある。そのように結構敷居が高くなって、利用が期待したほど伸びていないというのが現状なのかもしれないと思う。
 事務局の考え方は総論としては賛成だが、各論としては各法人が持っている施設の公開ということであるから各法人のミッションに応じた使いみちというものがそれぞれの施設にあり、それに対してどのようにエクスキューズするかという辺りの調整が出てくるという気がする。また、別の見方として、独法はご存知のように毎年毎年運営費交付金を減らされ、こういった大型施設の運営を法人だけでやっていくのは厳しくなっている。ある意味それを企業の人に使ってもらってその分の収入を得ることは悪い話ではないという感覚は持っている。ただ、研究所内の研究員の立場になってみると、今まで自分たちが100%に近い形で使えていたのが突然そんなことになるのはおかしいという不満が出てくることは考えられる。

委員等
 利用者の専門分野が固定的になっていることは事実だと思う。それを専門の違うところからも利用できるようにすることはいいと思うが、初めての人にとっては、こういう大型設備でなくても壁が大きい。ここでも提案されているが、教育トレーニングの創設や運転支援は非常に大事であり、もう1つ、宣伝活動も重要である。どのような施設、設備があり、何ができるか、どのように使用するか、という情報の流通だけでなく、SPring‐8やシミュレータにいる研究者が新しい分野を開発してそれを宣伝する方向に持っていかないといけない。そうすると、人材が一番問題になると思う。

委員等
 同様の意見で、MITのメディアラボの例がよいと思っているが、まず一番大事なことは良い人材を集めることで、自然に良い成果が集まれるような環境をまず作り、それを1つのブランドにして、それを呼び水としてあとはお金を持ってくる人を集める。無理やり人を集めてお金を払わせるのではなく、お金を持ってくる人をどのように集めるかという、ビジネスモデルやマネジメントが非常に大事だと思う。その後、それを広報してポジティブ・フィードバックを生み出す。それを考えると、今の広報の仕方というのは、デジタル技術をどこまで駆使して、研究成果はどこまでデジタルの情報源として世界に対してオープンにするか、というものである。どこまでオープンにするかということを国として政策レベルできちんと議論しておかないと、ヨーロッパやアメリカのオープンソースやデータをオープンにしろという流れの中で、日本としてのポリシーを失ってしまう。
 最終的には納税者に対する責任をどのように果たすかであり、SPring‐8や地球シミュレータのようなものは膨大なお金を使っているので、どこまで活用しぬくかということだと思うし、そこでは日本全体の知的生産性あるいは製品の生産性に対するジャパンブランドを高めるためにやり抜くという、ある種の基本線を企業のほうも含めて合意し、その中で攻めなければいけないだろう。そのような意味で、本当の意味での戦略性をここで議論しなければいけない。ついでに、E‐ディフェンスであれば、防災研だけでなく本来は防衛庁や警察といったものを入れ込んで、日本全体にとってのディフェンスをきちんとやらなければいけない。その辺りの、役所のほうで壁を破るための一番大事なことを抽出していただいて、実行していただくのが大事ではないか。

委員等
 最初に、企業が使うという面から見ると、例えば外国に依頼するときは、目的を話して必要に応じて相手に援助してもらうというのに対して、見積もりが出てどれくらいの期間がかかるという交渉をした上で契約してやるのだが、これを見ると、運営委員会というものがあり、各社の人がおられて、ここで何をやりたいか根掘り葉掘り聞かれたのではたまらない。また、装置は貸すけれど自分で全部やりなさい、と言われたら、今まで触ったこともないわけだから、とてもこれではできない。コストを払うにしても、企業のやりたいことに対する支援体制もないと非常に頼みにくいのではないか。
 もう1つのポイントは、もともとこのシステムを作った時点で一体どういうことを目的にしたのか、その目的を戦略的に見直してどれだけ必要な予算措置をすべきかという、国家的な取り組みがないと、ジャパンブランドという域にはなかなか達しないのではないか。民間企業を入れることはいいとしても、まず基本となる国家的なプロジェクト戦略がはっきりしていないと非常に腰が砕けてしまうのではないかと思う。

主査
 SPring‐8についてはいろいろなことを経験して仕組みもかなり整ったが、地球シミュレータについてはまだ運用が始まって1,2年であり、本格的運用はこれからだと思う。また、今までは共同研究という形で運用されている。説明はいろいろつけることができるが、なぜ海洋開発研究機構が機械の振動を共同研究しているのか、直感的に国民には分かりづらい。やはりそこのところは堂々とお金を取れる仕組みがなければいけないので、その仕組みをどうするかが問題であると思う。
 その際に機関にお金が入ってくるとしても、利用料が高ければ民間はそっぽを向いてしまうわけで、応分の負担となるとやはり金額はほんの僅かではないかと思う。そうすると、組織として飯の種になるほど入ってくるはずはなく、100億使うのに1億しか入ってこない。これが3億になったところで大したことはなく、そのためにこれから大変な苦労をしなければならないが、それは日本にとってやるべき苦労なのか。国の戦略として、民間が応分の負担をする程度でいいのか、本当に役立つほどのお金が入ってこなくてはいけないのか、それだけのお金を取ろうとしたら民間はそっぽを向くのではないか、という辺りの仕組みをきちんと考える必要があると思う。

委員等
 SPring‐8について話すと、実際には民間が15%程度使っているが、そのうち金を払っているのはごく僅かで、全体の6%くらい程度、金額にするともっと少ないというのが実情である。だから、民間が使う時に金を払って使うような制度を作ってくれという希望が出ていたりする。次に、お金を取るという話にはいろいろなレベルがあり、今我々はこの問題に直面しているのだが、ビームに課金するかというレベルと、何らかの意味で使用料を払ってある程度負担するか、は違った考え方。航電審20号答申で言っているのは、ビームには課金しないということである。例えば実費で光熱費の一部を負担してもらうとか、消耗品費を負担してもらうという話は一応別の問題だろうと解釈している。そのあたりの議論が整理されていないという状況である。
 今我々のところでお金を取る話が出ていて、学会などから、それはけしからんとか反対であるとか、基礎研究を大事にしろとかいろいろな陳情書とか意見をもらっているが、それも含めて国レベルで、我々の場合で言うところの20号答申について、やはりきちんとした見解を出していただく必要があろうかと思う。この話は、同様の施設を持つアメリカとフランスも非常に関心を持っていて、あちらは無料でやっているから、日本が崩れると多分そこから雪崩うって崩れるだろうと気にしている様子である。
 もう1つ、サービスの話だが、日本ではただの文化が当たり前になっており、これは大学が主流だった研究世界の文化だと思う。それで、SPring‐8などで産業側の人が支援してくれと言ったときに、金を取って支援しようとしてもなかなかそういうことが制度として今まで作りにくかったという事情がある。例えば、ESRFというフランスの研究所では、ここまで面倒をみたらAグレードでいくら取る、時間当たりいくら取る、ここまで面倒をみたらいくら取る、という支援の段階がある。確か3段階くらいあり、本当に自分でやる人は支援料を払わずにやる。そういう制度もあるので広く考えたらよいと思う。

委員等
 国のポリシーとしては、2つとも世界に冠たる目玉が現実にあるわけで、これをどう活かしていくかということが最大の問題で、日本としてはどうしても活かしたい。ただ、活かし方にそれぞれ全然違う問題が2つあると思う。
 1つは、シミュレータのほうはこれだけハイスピードのコンピュータをもっとほかのところへ使えるのではないか、活用のテリトリーが狭いのではないか、という問題があり、ビームラインのほうももっと違った分野にも活用してほしいという、そういう意味の広げたいということ。それからもう1つは、どちらも非常にメンテにお金がかかっているので、それを多少とも言い訳のできるような形にしていきたい、そのためにはやはり有料化が必要、大学などの先生方がアプライするときは資金を別途用意しましょう、というのが当局の案である。この2つをどのようにうまく組み合わせて、国民に納得のいくような姿にしていくか、と考えていくべきだろうと、整理した。
 だから、メンテのコストを利用者がすべて負担するような形にはなかなかならないから、国としてはある程度の犠牲を払っても維持をして、かつできるだけそれを活用する人を広げたい、幅を広げたい、という視点がやはり一番キーポイントではないかと思うので、そのためには民間だけではなくて研究者仲間の中でももっと幅を広げたい。その両方の視点を入れてシステム作りをこれから考えていったほうがよい。その大部分は既に事務局案の中にも入っているが、これだけでいいかどうかは、疑問がある。独立行政法人として中期目標などにうまくフィットするような形になっていないという、いろいろな矛盾もあると思うので、そこも解決しながら考えていかないといけないと思う。

委員等
 いろいろな方から意見が出たが、皆さんが言われたことはもっともだと思っている。地球シミュレータというものは世界に1つしかないわけであり、できるだけ有効に使い、いろいろな分野で広げていき、ある意味では国家戦略として国のブランドというものをどんどん出していく、という気持ちは非常に強く持っている。だから問題は、それをやっている人たちが、どれだけその装置を知りそこからどれだけいいものを出そうとするか、という意欲の問題が非常に大きくて、必ずしも制度だけの問題ではない。
 ただ、運用の最低経費は非常に重要な問題であり、何らかの形で保証される必要がある。その中に課金の問題があると思うが、例えば五十数億円を地球シミュレータの利用経費で取ろうとしても誰も共用に参加しないわけであり、ほとんどを国が最低限保証するような制度がないといけない。一方、法人化の問題で予算は減ってくるという矛盾の中でどうするか、ということで、おそらく文科省として安定的に運営していくようなことを考えてくださろうとしていることは非常にありがたい。ただ、課金の問題が絡むと、問題が本質的なものから少し離れてくる可能性がある。
 それから、領域を広げるという問題は我々も最大限の努力をしている。地球シミュレータで言えば、非常にすばらしい装置であるからどの分野においてもこれは非常に役立つことは間違いない、では実際に使えるかというと、地球シミュレータというこれまでにないようなアーキテクチャーでできていると、誰でもいいから使わせたのでは非常に効率が悪くなる。しかも地球シミュレータの場合、1年間で使える時間は決まっており、ノードも決まっている、その中で今80%以上使っている。そのような中でどのようにしていくかということに関して、できるだけ他のシミュレータでできるものは他のシミュレータに振り分ける、といったことも一生懸命に考えて、最大限使っていくようにしている。だから、最大限の成果を出すと言ったときに、誰かがその判定をしないといけないが、それは本当に最大限使う方法を一番よく知り尽くした人がすべきであろう。また、その人が独裁的に判定するのではなく、いろいろな分野の人が入った中でいろいろな議論をしていく以外に、おそらく方法はないだろう。例えば資金を何らかの形で提供することを国で考えていただいても、その判定でそれほど精通していないところで決められてしまうと、本当に無駄になってしまう可能性もある。
 我々は産業界に向かってもこちらから攻勢をかけ、例えば自動車工業会の場合は1年以上かけて、これを使うことが今後産業界にとっていかに重要であるかということを我々のほうから説得をして、やっと丸ごとシミュレートしようという形になってきた。
 これまでのシミュレータと完全に違うところは、今までの部分的なもののシミュレータの規模から、全体を扱えるような規模になってきたこと。そうなると、いろいろな設計や、未来の予測に使えるが、誰も使っていないということで我々のほうからそれを支援していくような制度というか、人件費だと思うが、ある程度の資金が必要である。トレーニングをしてその人たちを会社に派遣していく、そういった制度ができないと、せっかく地球シミュレータという世界に冠たるものができても、その文化が育たず、効果が活きてこないのではないか。そういった制度を是非考えていただきたい。

主査
 次元が違うものを一緒に評価することは非常に難しいので、例えば地球シミュレータでは、これから3年間、固体地球の問題に30%、気象に30%、産業利用が30%、残り10%は新規開拓、という大枠を決めて、そこでまた議論をそれぞれやっていくということを最初に決めてしまおう、という議論はないのか。

委員等
 まさにそれをやってきた。いろいろな分野から来ていただいた23名が利用計画委員会の中で議論をして、まだ地球シミュレータ文化もできていないものの第一義的にやらなければいけないことについて、どれぐらい資源割り当てをすればよいかを決める。しかも、これは毎年これでいいのか、ということで、枠組みや、新しいものを入れていくための方策についても議論はしている。

委員等
 完全に理解できていないのだが、現在の地球シミュレータにしてもSPring‐8にしても独法であるからミッションがあって運営費交付金でやっているが、その交付金はどんどん減っている。それを維持してやっていくために、何らかの利用者負担ということを入れないともっと減るぞ、という状況があって、それをどう回避するか、その際にアカデミック、民間というものをうまく切り分けてそれぞれの使い方をもっとよくしていこう、という議論なのか。
 有料にしてはいけないと言っているわけではまったくないが、有料にしても100億円の全体費用のうち1%程度にしかならないのであれば、これを一生懸命に議論することがどれくらいの意味があるのかと逆に思う。しかし、有料化しないとこの先地球シミュレータもSPring‐8も非常に大変なことになるということなのか。そうであれば、日本の宝物がなくなっていくわけだから知恵を出し合わないといけないのだが、その辺りの率直なところを聞かせてほしい。

委員等
 それに関係して、独法を前倒しで見直そうというプレッシャーの中でこの議論が出ているのかどうかを聞きたい。

事務局
 私たちがこのようなことを考えているのは、確かに100分の1の外部資金を増やしたところで大したことはないというご指摘はあるかもしれないが、今いろいろなところでSPring‐8もシミュレータも努力はされておられるが、もっと新しい領域に使えるはずだ、あるいは今使っていない方々ももっと使えるようになる仕組みが大事なのではないか、というふうに、そこは純粋にそう思っている。センター長あるいは理事長が、いろいろと産業界とも話し合いながら新しい領域を開拓されており、これは大変素晴らしいことであるが、仕組みとしてそのようなことが確保されていくことが、このような大型施設が新しい領域に対してどんどん広がっていく、アカウンタビリティーのようなところを外に見せていく上で大事なのではないかと思っている。
 中期計画との関係では、理化学研究所の場合と海洋研究開発機構の場合、あるいは他の場合、とそれぞれ異なっていて、中期計画との関係がどうかというところまでは今回整理していない。今回は、基本的な考え方と、それぞれがバラバラでやっているところを大型共用施設全体として外にどんどん新しい領域を広げていこう、ということのための考え方を整理していただきたいと思っているので、中期目標、中期計画との関係は議論していただく必要はないかと思っている。
 また、独立行政法人の運営費交付金という世界で、運営費交付金の厳しさというものは若干現実的な問題となっている。国の戦略ということでたてた施設を外に共用していってほしい、という考え方は国の戦略だと考えており、それを限られた運営費交付金の中でそれぞれの法人がたくさんやりたいことがある中で、共用にしてくださいと言うからには、国もそれなりのことをやらなければならないと考えている。したがって、国としては、外に向かって広げてほしいと言うからには、その部分については国が支援をしていきたいと思っている。

委員等
 もう1つ大事な要素として、サービスやいろいろなコンサルをやっていただく必要がある。レベルに応じて経費は民間として払ってもいいと思うが、そのサービスやコンサルが機関の中で評価されなければいけないと思う。理事長と現場の研究者との間の乖離もあり運営が大変だとは思うが、1つの旗印として上げていただかないとこのような問題はうまくいかないと思う。

委員等
 民間利用についていろいろご意見があったが、民間をある種のお客さんとして見るならば、客の構造をよく理解してくださらないと難しいと思う。このようなシミュレータとか計測といったものは企業のどの部署の人間が使うかによって大きく違ってくるもので、企業の研究所が使う上では大体の企業では計測なりシミュレーションに詳しい人間がいるので、共同研究やあるいは自分たちで使える構造になっているが、もし企業の設計ツールとか、信頼性とか不良解析といったところの層の人間にアピールするとこれは違う話である。一概に民間企業といっても、企業の研究、開発、設計、品質保証、とそれぞれ技量が違うので、それぞれのユーザーニーズに合わせたサポート体制とか課金についても段階的にメニューが揃ってくると随分使いやすくなるかと思う。その辺りは我々のほうも企業の側の構造をお知らせしてそれに合ったメニューのようなものを決めていくと、ベストな使い方ができ、国としても、日本企業の国際競争力を高めて国益を高めるということが最大の目的だろうから、そのような目的にかなった使い方もできると思う。

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研究振興局研究環境・産業連携課

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