知的基盤整備委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成13年7月13日(金曜日) 17時~19時

2.場所

文部科学省 分館2階 201特別会議室

3.出席者

委員

 澤岡主査、井戸、岩田、岡、桂、黒木、小原、大島、河盛、合志、齊藤、二瓶、根岸各委員

文部科学省

 坂田研究振興局審議官、加藤研究環境・産業連携課長 他

4.議事録

(1)知的基盤整備計画(案)について

 資料2~3に基づき事務局より説明の後、自由討議が行われた。
 その内容は以下のとおり

【委員】
 知的基盤整備計画案の3ページの表1の数字、機関は整理が必要ではないかと思う。農業生物資源研究所の数字は、ベースコレクションであり、原則として配布を全部するとは言っていない。配布対象はアクティブコレクションとなり、ベースコレクションの6割程度に落ちる。他の機関もベースコレクションで扱っているのかアクティブコレクションで扱っているのか記載されないと、全部供与可能というで誤解を受けかねる。農業生物資源研究所の数字が間違っているだけなのか、他の機関はどうなのか教えていただきたい。
 米国の例で、農務省のナショナル・ファンガス・コレクションの生物遺伝資源の微生物で110万点という非常に大きな数字が記載されているが、これは乾燥標本ではないか思われる。それを生物遺伝子資源という範疇に入れるのであれば、話は相当変わってくると思われるがお考えはどうなのか。この2点を伺いたい。

【事務局】
 最初の質問については、基本的には広く配布するという前提で知的整備計画を作成している。調査した時、機関によっては配布するものと配布しないものとを区別して公開していない機関が結構あり、そういう場合は、まとめて全部配布されていることを前提で書いている。
 米国の例の話であるが、これはホームページを見た数字で、基本的に菌という形で書いてあり、もしかすると標本のようなものが入っている可能性がある。

【主査】
 生物遺伝資源の整備の現状についてはもう少し専門家の意見を聞きながら、今後整理をしていくということが必要。あるものは有効数字が5桁、6桁であり、あるものは端数が無いものになっているので、統一をとるように工夫したほうが良いのではないかと思う。

【委員】
 国内の研究機関については直接知的基盤整備計画案のこの表の趣旨を説明して、現段階ではどのような数字を使えばよいか相談をしたほうが確実な資料になると思う。
 ファンガス・コレクションについては、菌の場合は、乾燥標本で保存しておくのが常識であるので、約110万点の一部ではなく、ほとんどが乾燥標本であると考えたほうが良いと思う。ただ、生きた菌、特にバクテリアの場合は、液体窒素での凍結保存が可能であるが、寒天の上で飼わなければならないようなものも相当あり、そう簡単に数が増えるとは言えないので、特にファンガス・コレクションの記載については注意したほうがいいと思う。

【委員】
 日本が遅れていることを示すために、この知的基盤整備計画案の表は多数ある中のごく一部を記載していると理解している。これを外部に公表するが、様々な機関で自分のところにもあるのに記載されていないというところも当然あるし、数が違うというのもあるのではないか。例えば、知的基盤整備計画案には線虫が書かれているが、これは凍らせて保存できるので、実はどこにあってもよいものである。しかし逆にアメリカはセンター化している。
 必ずしも手元にないということが別にデメリットでもないという事情が他にもある。参考資料に数字が書いてあるから、計画案に全部書く必要はないとしても、この表をどのように使うかということに基づいてもう少し整理をしないと、変な誤解も生じるし、違ったデータに基づいた議論にもなりかねない。もう少し時間があるようなら、我々が協力し何とかしたいと思う。

【委員】
 知的基盤整備計画案の7ページにゲノムのデータベースが書いているが、日本では遺伝研のDDBJだけであるが、例えば東大医科研などは、全部DDBJに含まれているのか。
 また、今年の2月の『ネイチャー』に発表された配列というのは、このジェンバンクに入っているのか。

【委員】
 DNAデータ配列に関しては、最近、個々のシーケンシングセンター、あるいはタイピングセンターで、個々にデータベースを作っているが、最終的にはそのすべては日本であればDDBJ、アメリカだったらジェンバンクに登録されて、その後、ジェンバンク、DDBJ、EBIの間で15分おきだと思うが、アップデイトされるので基本的にそんなに変わらない数字が載っている。
 それから、ヒトゲノムの3ギガ弱が入っているかどうかというのは、いつごろのデータであるのか。
 ヒトゲノムであれば当然入っているはずだし、もしDDBJに入っていれば、それは即ジェンバンクにもEBIにも反映されるシステムである。

【委員】
 そうなると、ゲノム配列は、国際的な協力が非常によく進んでいるから、日本とアメリカとヨーロッパの比較そのものがあまり意味がないということになるのか。

【委員】
 ATGCの生データに関してはそのようになっている。ただ、それを使いやすい形で研究者に公開することに意味があると了解している。

【委員】
 「世界最高の水準を目指すべく」とか、「アメリカ並み」とか非常に頻繁にこの中に出てきて、基本的なトーンになっているが、もう少し整理したほうがよいのではないか。アメリカレベルを目指すということでは、世界最高水準に到達できるとは思えない。
 目標とする水準があり、そこに到達すると必ず時差があるので、アメリカはまたその先に進んでいて永久に抜けないということになる。永久に抜けなくてよいのかというと、日本の場合は少しまずいのではないかという感じがする。例えば、戦略的に重点化する部分については、少なくとも先行する意識で少数の分野をきちっと選んで、そこに集中し、他は世界最高水準並みでやっていくということでないと、現実にこの計画で動いたとしても、後を追っていたという格好になってしまう可能性が非常に高い。
 知的基盤整備ということでここで取り上げられて動き出したことは、大変貴重なことであると思うが、サイエンスの研究の中で、この知的基盤の部分というのは、忘れてはならない部分として位置づけられがちである。それはおかしなことで、先に進むいわゆる武器であり、そこがきちっとしていなければ本当の後追い研究になり、非常に能率よくやるというレベルからどうしても抜けられない。全部の分野についてそういうことをする必要はないけれども、重点と決めた分野で先を走るということを、5年かかって決めていければいいと思うが、現在の日本の立場としては、そのぐらいのことを明確に言っていく必要があると思う。
 言葉のあやだけではなく、サイエンスの政策の基本問題として、「重点化」という言葉を追いつくための重点化ではなくて、先行するための部分について「重点化」という言葉を使っていくという形で少し整理したほうがよい。いつもアメリカを目標として、そこまで行けば幸せだとどうしても聞こえてしまい、これでは日本の立場としてまずいのではないかなという印象がある。知的基盤整備計画案のどこか、一番最初のところか、最後の締めのところに、何かちょっとスパイスを効かせてもらえるとよいと思う。

【主査】
 ただいまご指摘いただいた点を踏えて、メリハリをつけた文章にブラッシュアップしたほうがよいと思うので、事務局側で工夫していただきたい。

【委員】
 今のご意見は非常に大事な点であるので詰めていただきたいと思う。
 よく分担について言われる。我が国が最も得意とする分野、やるべき分野については、重点的にやっていき公開する。そのかわりにアメリカあるいはヨーロッパの持っている資産を使わせていただく。そういう関係になっていったほうが正常なのか、それとも国益の立場から考えると、例えば農業に関わるものであればすべての分野で一定水準維持し、特別の分野はそれ以上維持する状況でいくのがいいのか、実は何を集めるのかという問題で常に悩んでいる。
 非常に特記されてくるが例えば、シロイヌナズナという植物の場合、研究は、ヨーロッパ、アジアでは既に圧倒的に進んでいる分野であるが、今、日本がそれを使って研究をしている。
 それに対して、例えば、我が国独自で稲のミュータントを3万つくっており、また、ミヤコグサという新しい豆科植物のモデル植物ができ上がってきており、今どんどんそういう新しい分野が出てきている。つまり、今シロイヌナズナが主流だからシロイヌナズナを目指すのか、それとも今後の展開を先取りしていくのかという視点が必要であると思う。どのような書き込みにすれば夢が持てるのかということを検討していただければありがたいと思う。

【主査】
 今の点はもっともなご指摘であるので、これを据えた書き方にいろいろ工夫したいと思う。

【事務局】
 いただいたご意見、ご指摘等踏まえて、当方でも参考とさせていただきたいと思う。
 先ほどの「2010年を目途に世界最高水準を目指すべく」という表現について補足させていただくと、3月30日に科学技術基本計画が閣議決定し、その中で知的基盤の整備という章があり、そこでは現在整備が進められている4つの領域の知的基盤について2010年を目途に世界最高の水準を目指すべく早急に整備を促進すると記載されており、科学技術基本計画のもとで、今回の知的基盤整備の具体的な計画を今ご検討いただいている次第である。

【委員】
 1985年ぐらいは多分日本のほとんどの方が、「世界でトップだ」、「もうアメリカに学ぶことはない」、と大体そういう雰囲気で世界で一番のつもりでいたと思う。そのときにいろいろ感じたが、米国では、若い人が知的基盤の本当のユーザーであると考えていた。本来の知的基盤のユーザーというのは、いずれ将来日本を背負って立つような本当にポテンシャルを持った若い人であるから、このような知的基盤をどういうふうにユーザーに渡すかという目標が2010年であると思う。
 そういう意味で、今現役でバリバリやっている方だけではなく、国にとって本当に力を蓄えるためのユーザーにどういう形で知的基盤を使わせるかという観点、つまりプロフェッショナルな考察というのはかなり大事である。その一部は教育であると思うが、ロングタームで見たときに、次の世代にどういうふうに上手に知的基盤の本当のエッセンスを渡していくかというデザインがすごく大事なのではないかいう気がする。
 そういうことをアメリカは、80年代に負けたふりをしてやっていたような気がする。日本も、今負けたふりをして上手に何か行えばよいのではないかと思う。

【委員】
 やはりこの知的基盤整備計画案には何か高度成長時代の文章みたいなところが随分残っているという気がする。その1つの理由は数値目標であり、数値目標を立てると、どうしても常に景気のいい数値を立てないといけないという心理状態に陥ってしまうのではないかと思う。
 これは日本だけではないと思うが、例えば文部科学省の別の会議でも、数値目標がかなり無理なところに背伸びしており、10年以内に肺がんの死亡率を50%下げるという数値目標を出せと言われてびっくりしたことがある。では本当にこの数値目標が達成できないとき、一体、誰が責任とるのかということまで考えると、この数値目標を設定することは無理だろうと思う。
 例えば、知的基盤整備計画案の24ページのところで、2010年の戦略目標の項目の植物遺伝資源については前回の会議の計画案の数字より30%減になっているが、動物細胞についても3万という数は、完全に不可能だろうと思う。これは輸入が困難と書いているが、今は少し高いお金を払えばATCCから幾らでも輸入ができる。
 いろいろなところで官民の協力ということが書いているが、もう一つ、これからますます必要になってくるのは、国際的なオーガナイゼーションということであり、その中で、日本がどういうふうに役割を果たすべきかという観点をもう少し計画案全体の中に入れていただきたい。

【委員】
 特に標準とか、基盤関係というのは、ある意味世界共通ということを基本的には目指す部分があるので、本質的にはコンプリメンタルに動くということが適切であり、しかもコンプリメンタリーでありながら、主要な部分を押さえていくというのが一番大事なことだろうと思うので、その点を強調して考えていただきたいと思う。
 それから、先ほどの「世界最高水準」ということは既に非常に大きな標語として決まっていることであり、これに外れるようなことを議論できないが、ただ、世界最高水準というのを実現する道として何をするかという表現がちょっと表に見えてこない。2005年までに決めればよいということであろうが、日本のだいたいの大計画の目標には共通の悪弊があり、標語は出るが、それに到達する道は必ずしもロジカルにきちんと詰めてられていなく、結果だけが踊るというような格好になる。
 ぜひ良い知的基盤整備計画をつくっていただきたく思う。

【委員】
 世界最高水準ということがいろいろ問題になっているようだが、日本の技術で非常に優れているものがあるので、そちらの方を重点的に伸ばしていかないと、逆に欧米や米国から追いかけられ、追い抜かれる懸念があると思う。そのうち具体的に、いろいろな重点領域、選別をするであろうが、そのときに、どうでもいいような遅れているものをほっといて、むしろ本当に追いつかなければならないところと、逆に最高のものを維持していくというところに重点を置くようにしていただきたい。
 それから、知的基盤整備計画案の25ページの、官民の役割分担についての考え方というところで、例えば国でやるというところでは、国立研究所とか、国立の機関でやるのか、それとも大学に依頼した場合にも官なのか、また、官としてどんなふうにやっていくのか、具体的にどこまで官で行うのかちょっと見えない。

【事務局】
 官といっているのは、昔の国立の試験研究機関、大学、公設の試験研究機関、その程度までを含んで官というふうに認識しながらこの計画案を書いている。

【委員】
 知的基盤整備計画案の24ページの2010年の生物遺伝資源に関する戦略目標で、これはこの前の会議でも議論があったが、例えば微生物とか動物細胞はすごく広く書かれていて、動物はマウスだけ書かれており、妙に細かく書いてあったり、妙に大ざっぱに書いてあったりしていて、これは重点目標、あるいは長い目で見て重要なものということで、整理が多分これからなされるんだと思うが、直していただきたいと思う。
 まだ白紙のところがたくさんあったので、ここに具体的なことが後でどんどん書き込まれるのではないかと思っていたが、これはあくまで方針であり、かなり一般的なことしか書かないのかもしれない。しかし具体的にこれはどうやっていくのかちょっと明確でないところがある。
 知的基盤整備計画案に記載されている数を集めるのは可能、不可能かどうかはともかくとして、現在、例えば大学にしても、いろいろなところでやっているが、これをどのようにやっていくのが一番品質がよく、かつ数も集まって、国際的に見える存在になるのかという戦略、つまりお金の使い方だと思うが、そこの原則というか、戦略が書かれていない、あるいは議論されていないなという気がする。
 ただ、経費を措置すると書いてあっても、例えば大学などの場合、概算要求で要求するとしても、これは結構難しいし、大学の特別会計というのも非常に逼迫しているので、ではどういうふうな形で来るのかと思う。
 それから、計画案などは通常5年だが2010年と書いているのは、10年という期間を書いておけば、かなり長期的なスパンでできることもあると思う。ある程度の見直しはあるとしても、最低10年ぐらいスパンが必要。特に人材などに関することはお金がないと出来ない。計画案を読んでみて、これからそれをどのようにやっていくかという希望を少しでも持てるものがあれば、みんな協力しようと思う。
 実際、大学等では物をたくさん持っているが、それを出して、データベース化したら、非常に数が多くとんでもなく大変なことになるので出せない。例えば大きなセンターを作って集めるということも、結構無理なことがある。それはそれぞれの生物種、あるいは集めるものによって違うから、集められるものもあるし、分散型のほうがよいというものもあるので、かなりきめ細かい施策をして、うまくやれば結構な数が集まり、外から見えるものになると思う。この事について多分まだ書かれてないと思うので、何かその辺の戦略のようなものがこれから出てくると、これに関わっている人は非常に勇気づけられると思う。

【主査】
 どの程度この計画案の中に具体的な道筋を書き込むかということであるか。

【委員】
 あまり具体的なことは書けないと思う。

【主査】
 計画案の中に思想、流れのようなものをもっと書いてもよいのではないかというご指摘はもっともであるが、現実には、難しい点が多い。

【事務局】
 どういうふうにやるかという個々の具体的な事例に基づいて書くと、膨大なものを書くことになってしまい、また最大公約数的なものを見出すと、多分また抜けているものが出てくるということで、なかなか難しいところではあるけれども、なるべく読んだ方がこうすればいいのではないかというような道筋が見えるような書き方に努力してみたいと思う。

【委員】
 多分こういう新しい箱をつくるということはすごくわかりやすいけれども、今あるもののポテンシャルを上げるという施策ができるとありがたく、またそのほうが早道だと思うので両方とも必要だと思う。

【委員】
 先程の話とすごく関連が深い話であるが、知的基盤整備計画案の18ページ、4章にこのような分野に携わる人が、力づけられるような書き方というのがもう少しあるのではないかという印象を持っている。
 例えば、知的基盤整備計画案の4章の1で、例えばお金の話しだけでいくと、現状は200億強ですという現状分析だけに終わっているが、この答申のスコープを2010年までに実現しようとすると、どのぐらいかかるということは書けないのかいう気がする。そうすると、全体の答申で目指している全体のスコープ、お金でいうと、今200億円で、例えばこれが50倍に膨らんだとしたら、随分この将来図が大きくなるなという、印象を与えることができるのではないか。要するに、表現をちょっと工夫していただき、実際にこういうことをやる人達に勇気を与えるような施策であってほしいという希望を強く持っている。

【主査】
 知的基盤整備計画案の4章にもう数ページ加わると聞いていたが、この報告書は余りにも簡略的すぎると思う。しかし、金額を書き込むためには、財政当局との下交渉があり、非常に難しい。部会で最終的に決定するときには、こんな簡単なものではなく、もう少し書き込んだものになっている思う。

【委員】
 それは承知している。

【主査】
 これではちょっと元気が出ないと言うのはおっしゃるとおりだと思う。大変つらいところではあるが、事務局には頑張っていただきたいと思う。

【事務局】
 可能な限り努力をしてみたいと思う。

【委員】
 知的基盤整備計画案の36ページの(6)の2の物性予測や逆設計というのは多分間違いではないかという気がする。(1)材料物性、データベース云々の4行目で、物性予測や逆設計等をというのは、逆が要らないか、材料設計にするか、逆問題とするかだと思う。

【委員】
 それから、全体的なところで、戦略的という言葉の意味であるが、経済産業省の知的基盤の委員会のときに申し上げたが、戦略的にやるためには、わざと手の内を見せたり、隠したり、それからひっそりとやっていたり、いろいろな方法があり、本当の戦略は見せてはいけない。これは表戦略で、裏戦略というのは、国のどこかでそれなりにしっかりと議論していただくというのはすごく大事であると思っている。

【主査】
 国家戦略としては、外国から見て、不気味な何かがあるぞと思わせることが一つ重要なことである。日本はそういうことが非常に下手な国である。

【主査】
 この知的基盤整備計画案は知的基盤に関する本格的なペーパーとしては、おそらく今回が初めての作業なので、そういう点をこれからだんだんよくし、最大限努力すると言うしかないと思う。本日はどんどんご指摘をいただいて、無理な注文も承知でつけていただき、またご意見を賜りたい。

【委員】
 植物遺伝資源の作物については現在22万点、2010年の戦略目標が60万点ということになっているが、この間の40万点の伸びという数字についてはエバリュエイトしている。60万点というのは、確かにアメリカとかロシアが現在持っている数よりちょっと多いところなので、たぶん実行は不可能ではないだろうと思うが、それは約100年かかって集めた財産である。日本は戦後40年かかって、現在22万点であるけれども、もっと増やしたいということで、ものすごく努力しているちょうどそういう時に、多様性条約の動きが出てきて、外に一切出さないという国が圧倒的に増えてきており、今収集が完全に止まっている。多様性条約の問題が解決して、それで戦略目標が達成するかどうかという話なので、やはりこの戦略目標の数字を再度検討していただき、特に農水省とのすり合わせをしていただきたい。

【委員】
 知的基盤整備計画案の29ページの1.重点的に整備すべき計測方法・機器等として、生物や生体の計測方法、あるいは材料や物質、国土、地球、海洋、宇宙、そのほか情報通信と指摘しているが、31ページの2010年の戦略目標のところでは、ライフサイエンス分野の計測方法だけが記述されていて、情報通信あるいは国土その他については、2010年の目標らしきものはないが、何かあったほうがいいのではないか。あるいは何か問題点、特別な理由があるのか。

【事務局】
 結果としてライフサイエンスしか出ていないというのは、ちょっと理由がある。重点的に整備する領域があり、この中で、特に国がやらなければならないものは何なのかを官の役割分担で切り分けていくと、基本的には民間企業の強い力で国際競争力が確保されているほとんどのものは落ちてしまう。結果としてライフサイエンス分野のものと企業がつくっても売れないような大型で高額な機器、この2つが残ってしまい、特に民間を通じて供給されているものの中では、ライフサイエンス分野のものが結果として抽出されてこれだけが挙がっている。

【委員】
 微生物と動植物に分かれてバンクをつくるとか、分譲するとか、いろいろなことがあるが、逆に、それれぞれの分野のユーザーが一番望んでいるものについて何かという同定がなされてない。微生物でいうと、自分達で長い間一生懸命やっていたので国が貧しくても民間は全然困っていなかった。
 微生物の世界というのはフレッシュ・アスレーというのが大事である。保存株がなぜ必要かというと、タイプカルチャーといって、スタンダードな株であれば名前のついている菌の分類学的な意味だけに必要。だから、はっきり言うと、今は国が1個しか持ってなくても少しも困らない世界である。
 もし今ここのセクターを政策的に考えるなら、民間ではなく、非常に広くお金も出してやっている大学の人たちに対して分譲とか保存とかをどう考えたらよいのかというのが、キーテーマだと思う。
 では、民間の立場だけで言えば、今どの研究に一番お金を出していて何が落ちているのか、ものすごくはっきりしている。それに対して、どういうバンク、どういうものを用意したらよいのかという同定がなされば、こういう指針はもう少しすっきり出ると思う。
 もう少し別なことを言えば、植物については民間はもう必要ない。分野によって全然違うので、植物と動物のニーズはもう少し分けたほうがいいのかもしれない。分野によって望まれていることが違っていると思う。まずユーザーが必要としているニーズを同定して、施策としてどこを後押しするのかということを決めれば、もうちょっとすっきりした答申が出来るのではないかと思う。

【委員】
 知的基盤整備計画案の37ページの2010年の戦略的目標達成で、ゲノムの配列等データベースが現在の600Mbpsを6,000Mbpsと大体10倍で、それからタンパク質構造の解析データは、現在の約800を約1万から1万2,000種類あるタンパク質の全ファミリー構造の3分の1以上と、このような目標を書かれているが、どういう根拠でこういう目標値を設定しているのか。また、それが実現可能なのかどうか。

【事務局】
 目標の根拠は科学技術基本計画から引用しており、そこには2010年に世界最高水準という一応の目標が掲げられており、それに沿ってこの数字を出している。
 実現可能性については、すぐ100%できるかというと、なかなかある意味では難しいと思う。
 ただ、計画に沿ってやるという意図でスタートされているが、この計画は2010年まで一切変えないという憲法みたいなものではないので、重点化の方向が変わったり、あるいは一方で継続しなければならないものもあるといった状況によって、見直しがあり得ると思っている。

【主査】
 来年以降はもう少し作業が早くなると思うが、総合科学技術会議が大枠を決め、それに基づいて作業を開始し、8月中に結論を出し、来年の概算要求に間に合うようにしなければならない。そういう点で現在大変苦しいところがあり、専門家から見たらおかしい部分があるというご指摘はもっとなことであるが、そのギャップをできるだけ小さく、より合理的なものにする作業を現在行っている。
 今日は第3回目の委員会であり、8月中に知的基盤整備計画が出なければ9月の各省の概算要求にも差し支える。あと2回、技術・研究基盤部会が予定されており、本日の委員の中の半分ぐらいの方が部会の委員として入っておられるし、また分野の違った新しい委員が多く参加されるので、違った視点から新しい意見が出るであろうし、今日いろいろご指摘いただいた点については、技術・研究基盤部会に出席される委員は、出た意見を踏まえて、計画案がどのように変わったかということについてもウォッチして頂き、また追加の意見も出して頂きたい。本来ならば、もう一回この委員会を開いて、バージョンアップしたものについてご審議いただいてから部会へ持っていくべきものであるが、以上のようなタイトなスケジュールであるため、本日はファイナルに近いものにまとめなければならない。ブラッシュアップという作業があるので、技術・研究基盤部会に参加されない委員は、特に今日ご意見を賜らなくても後でお気づきの点、それから時間の関係で指摘できなかった点については、何らかの形で事務局のほうへご意見をいただきたい。

【委員】
 知的基盤整備計画案の37ページの人間特性のデータベースが、寸法・形態でどうして2万人の寸法・形態が必要かということがなかなか理解できない。3,300人のデータと動態、視聴覚の4,000人規模のデータを測定すれば十分ではないかと思う。

【主査】
 この点は、どのようにまとめればよいか。

【委員】
 日本人は同じような形態で、同じような寸法でかなり標準偏差が低く、3,000人も集まれば十分だろうと思うし、ほんとうに動態特性というのであれば、例えば血液中のコレステロールの値などを見ればよく、それは病院で標準値をかなりまとめている。医学的に見て、これがどれだけの意味があるデータベースなのか理解できない。

【主査】
 これは備考に示された目標をそのまま鵜呑みをして書いたと思うのでどういう趣旨で書かれているのかよく調べ、専門家の意見を聞く必要がある。

【委員】
 昔、生命工研にこのような計測の項目があり、そこから出ている数字だと思う。

【委員】
 多分、アパレル系のいろんな設計のためのデータという感じで、かなり統計的に細かいデータが入っているのではないかという感じがする。

【委員】
 産学官連携のほうでもある程度やっていると思うが、天の声とユーザーつまりある意味で民の声をどういうふうにつなげるか。
 その間をつなげるためには、そのためのプロフェッショナルをある程度養成しないと、天の声だけでいろいろ体制をつくってサービスしようとしても、なかなか本当の意味の情報のサービスができないので、どのように活用するかというプロジェクトを試験的に幾つか立てたほうが、本当の意味で知的基盤の活用につながるのではないかと感じる。
 例えば、パリの地下鉄ではオペレーター側とユーザー側をつなげるためのサービスの専門家が大きな権限を持ち、人間に対していかに接するかということを含めて天の声と民の声をつなげるということを相当本気でやっている。
 我が国ではそういう意味で、情報に関して意外とそういう方が少ないという感じがするので、ぜひ天の声と民の声をつなげる役割を持つ体制をつくっていただければと思う。

【主査】
 現在、天の声と民の声を取り持つ専門家があまりにも少ないし、組織的に養成されていない。
 我々は、今、天の声を受けていろいろ作業をしているが、大変苦しんでいる。

【委員】
 知的基盤整備計画案の20ページ、前回の議論になった人材のことで、おそらく施設とか、そういうものはお金で解決するけれども、結局、遺伝資源、いろんな基盤というのは、人がいて初めて成り立つもので、当然研究はするけれども、この分野というのは若干特殊な人材を確保していかなければならない。そのために、この知的基盤整備計画案では1、2、3、4と書いているが、1の「OBを活用する」ということは、これは非常に結構なことではあるが、これが1番目というのは何かちょっと情けない感じがする。例えば2番目にある評価をきちっとするシステム、3番目のいろんな関連の者がきちっと協力するということがまずあって、その後、「OBを活用する」というのが良いのではないか。これはたしか前回議論になったところだと思うがそれが1番目にあると、ちょっとバランスが欠くのではないかと思う。

【事務局】
 順番には特に意味はない。

【委員】
 現実的にこの部分は、実際非常に有効であるが、1番目にOBの活用について出てこられると、ちょっと戦意を喪失してしまう。

【委員】
 知的基盤というのは、特に先端科学の分野で選ばれてきていると思う。
 21世紀の問題で、かなり大きなウエートを占めている環境研究の知的基盤に、環境の分析資料は入っていると思うが、一体どういうものがあるのか。
 我が国が今後、国際貢献していく分野として、やはり環境分析というのは非常に重要な位置を占めていくのだろうと思うが、その時に、例えば地球環境の現状、あるいは時系列で見るときに例えば、100年前からの土の資料の蓄積を面展開して、全国的に1万ヶ所というところで毎年サンプルを採っておくという、ある意味、地道ではあるが長い目で見た場合にそれがないと地球環境がどう汚染されていっているのかトレースできない。そのようなサンプルは一方では必要であると思う。
 そういう視点から見た知的基盤というものを、検討しておかなくはならないのではないかと思う。
 文科省で過去に視点の1つとしてそういうものが必要ではないかという検討があったのか、なかったのか、今後検討されるのかどうかということを少し教えていただきたい。

【事務局】
 全部お答えできるかどうかちょっとわからないが、この環境の土壌資料みたいなものが抽出されていない理由は、1つにはこの知的基盤整備計画が科学技術基本計画に沿って抽出しているというところがあって、それがなかなか浮かび上がっていない。
 もう一点気になるところは、いわゆる土壌の資料が広く配るものなのか、いわゆる共有可能なものなのかどうかということである。もちろん広く共有していくということであれば、知的基盤になるが、大事なものであるにしても、ただサンプルで置いてあるということであれば、この計画で扱うのはちょっとどうかと迷ったところである。

【委員】
 例えば、キログラム単位の土壌標本があるとすると、もう維持し切れないので捨てるかどうかという状況にあり、100回あるいは1,000回の分析ぐらいは耐えられるというようなものが研究の高度化という名前のもとにどんどん捨て去られている。本当に要らないものは捨てたほうがいいと思うが、今その選択を、多分大学もそうだと思うが、それぞれの機関がどれを捨てて、どれを残すのかということを迫られている。総合科学技術会議は、重点分野を選んでいるが、重点分野以外はするなという話ではないはずである。それ以外も当然重要であり、特に基礎的研究は重要であることを前提に置いた上での重点領域と認識している。
 だから、総合科学技術会議で議論された分野以外の知的基盤については、当然文科省のほうでも討議されたほうがいいのではないかと思う。何を資源と呼ぶのか、あるいは知的基盤と呼ぶのかという定義は重要であり、一度ぐらい議論を行えないかと思う。

【主査】
 文章を断定的な書き方をしないで、「近い将来、早急に検討すべきである」のような形で課題とし、どこかに書き込み、なるべく早く具体的な検討をしかるべきところで始めるべきであろう。

【委員】
 材料がなくなっていくということに対して心配している。例えば環境省で「そういう材料があるならば、ぜひ公的な基盤として残しておくべきだ」ということを言うならば、一緒にそういうものは残していけば良いと思うし、そのような材料の保存については環境省と農水省の研究機関のほうで話し合いが進み出しているが、大学を含めて、どういう利用形態があるのか、もうそんなのは要らないのか、その辺の見きわめも必要であるということでお話ししたので、必ずしも記載が絶対要るということではない。ただ、検討した上で、それが必要ないということであれば、それで良いと思う。

【委員】
 今の件で、いわゆる環境資料だけではなく、タイムカプセル化というような表現で、今ある種のプロポーザルが関係機関と連携しながら動きつつあるので、一応そこで考えていくのではないかと思っている。ただ、これは本当に大事なものであるので、テリトリーがどうであるという話とは別に、このような会合の場で触れていただくということは大変大事ではないかと思う。また、その担い手が、いわゆる省庁の分担の範囲を超えた、大学、公的機関にもあるので、ぜひそれに触れていたほうがよいのではないかと思う。

【主査】
 今後の検討課題であると書いたほうが良いと思う。

【事務局】
 検討する。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)