知的基盤整備委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成13年5月14日(月曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 別館 5階 第一会議室

3.出席者

委員

 澤岡、飯塚、井戸、岩田、岡、桂、黒木、小原、大島、河盛、合志、齊藤、二瓶、根岸、平木各委員

文部科学省

 坂田研究振興局審議官、中西研究環境・産業連携課長

オブザーバー

 伊藤経済産業省知的基盤課長

4.議事録

(1)主査代理の指名について

 澤岡主査の指名により、岩田委員が主査代理となった。

(2)知的基盤整備委員会の運営規則について

 資料2、参考1~3に基づき事務局より説明の後、原案のとおり了承、決定された。

(3)知的基盤整備のあり方について

 資料3、参考1~4に基づき事務局より説明の後、自由討議が行われた。

 その内容は以下のとおり。

【主査】
 扱う分野が生物材料、生きてない材料、データベース、計測機器など考え方がそれぞれの分野によってかなり違うものを1つの考え方で比較するのは大変難しい。2010年に日本が世界のトップになるということであるが、相手が今後、何もしないでいれば追いつくことが可能だが、日本よりもっと速いスピードで動いている国にどのようにして追いつくのか。また、限られた資金、資源の範囲で、どこを中心に日本が重点化しなければならないのかということを議論することが非常に重要ではないか。

【委員】
 知的基盤整備ということを見るときに、どういう視点で見ていくかということは非常に重要ではないか。資料3の1ページ目は、知的基盤というものを研究開発を支えるという意識で見るか、それとも研究開発を先導する部分として見るかによって、非常に観点が違ってくるのではないか。2010年に全てではないにしても、相当の分野で我々がトップに立つという意識を持つには、支える部分が3分の2ぐらいで、研究を先導する部分が3分の1ぐらいないと、国家戦略という立場からすると非常に不安を覚えざるを得ない。
 そのことが、端的にあらわれるのが、資料3の1ページ目の官民の役割分担の考えのところ。一番重要である知的基盤に関する基礎的な研究開発は国が行うというのが、本来は第1番に出てきて欲しいが、後ろに記述されており何となく自己防衛的なニュアンスが漂う。10年後に何割かでトップに立とうという意気込みが出にくいので、色々な機会に強調して頂きたい。
 少なくとも知的基盤というものは、研究開発を支えるという要素と、研究開発を先導する要素の2つの要素があり、2対1ぐらいの比率で先導する部分を相当色濃く出さないと、日本のようなタイプの国のあり方としては、ちょっと物足りないのではないかと思う。

【事務局】
 ご指摘のあった1ページ目の順番には意味は無く、後ろの表は全部国主体で整備すべきものからだんだん降りていって、民間主体で整備するというようになっているので、それに合わせて重要なものから書くようにしたいと思う。それから先導的なものをきちっと考慮しなければならないという意見を踏まえ、エッセンスを入れていきたいと思っている。

【委員】
 先ほどの委員のご意見は、最初に主査がお話になった、「外国も何もしないでいるわけではなく、益々増えていく」ということと関連していると思う。だからそのような先を見た整備をしないと、10年後にはまた同じ結果になってしまうというのは言われるとおりだと思う。
 ただ、私はデータベースや全部の分野が、米国、欧州よりも先に行くことが本当に必要なのか、データベースという地味な分野というのは同等でいいのではないか、最終目標は同等でも良いのではないかと思う。
 ただし、それは10年後に同等ということであり、その辺は考慮していく必要があるのではないかと思う。
 分析試験機器を今、日本が全部欧米と同等のものをつくって、マーケットに出すというのはかえって問題がある。試験分析方法というのは、対象となる分野の研究からのニーズがあって、初めて出てくるものなので、知的基盤の中で整備するということは、少し筋違いであり、研究そのものから出てくるべきものと思う。知的基盤の整備としては極めて汎用なものだけに、かなり限定すべきではないか思う。
 様々なものが整備されると、どのようにメンテナンスし、誰がサポートするのかという問題が出てくる。外国の色々な機関の例を挙げているが、どのようにサポートされているのかということを、機会があれば事務局のほうで教えて頂きたい。
 全部揃えてもメンテナンスが出来なければ、実際に後で動かなくなりまずいと思う。
 特に併せて、今度は日本が途上国等に対するサービスを求められないか。その時に、本当にそれをサービスができるかどうかということが大問題だと思う。
 計量標準については、最近は大分整備されてきつつあるが、限定的でも外国へサービスが出来るような体制を考えて頂きたい

【委員】
 アンケートにあったように、日本は結構質は良いというのがあったが、これは各大学の先生が苦しい中で質だけは守ろうということで頑張っておられるということではないか。逆に言えば、きちっとした体制をつくれば、すぐに成果が出せる。そういう意味で、人、経費の安定化、評価がきちんとできれば、すぐに、ほぼニーズにこたえることができるのではないかと思う。特に、例えば技術者だけをとっても、指導する人がなかったら質がすぐ落ちる。今、ほとんどの大学では、教官そのものが先頭に立ってやらないとどうにもならないということが多い。
 しかし、物は全部研究から出て、研究なしに出てくることはあり得ない。研究から出たものを各研究者はシェアしようと思っている。しかし、プロジェクトにしても個別研究にしても、その後の経費、あるいは人の手当てがないから、どうしようもなくなる。そこの体制づくりをやれば、生物資源に関しては、比較的受け皿としては整っていると思う。
 特に生物は一度絶やしてしまうと生まれ変わらないが、ある程度安い金額で維持できると思われるので、役に立つかどうかわからないようなものであるが非常に長期的に保存するものと、先導的なすぐ役立つものをタイムリーに世界中に出すという二面作戦ができるような体制をつくっていかないと、小回りがきかないなと言われるのではないかと思っている。

【委員】
 重点的な分野として、大きく8つ挙げられたが、日本は研究者の人数が多いにも関わらず、何かよく似た研究のところにたくさん集まるという傾向がある。非常に大切であるにもかかわらず、外国では研究が行われているが、日本ではあまりないという研究も結構ある。その辺のところをピックアップして、人材を養成し、重点分野として取り上げていくようにしないといけない思う。

【委員】
 私は個人的に高分子の化合物に関するデータベースを、JSTで4年、準備から含めると6年間ぐらい続けているが、その経験から得られた非常に大きな知見として、データベースというのは、やはり継続は力なりと思う。
 ところが実際に現場でそのデータを蓄積していくとなると、やっている本人はものすごく意義を感じていても、例えば中央省庁から来られた方が自分の派遣期間の間に何か新しい事業を起こそうとすると、もう6年も前から続いているものはいい加減にやめようじゃないかという話になったりする。また、本年度の予算をとるのに大変な努力、苦労を必要とし、それがやっと通ると、今度は、平成14年度はどうなるんだろうということを、現場では心配することになる。
 データベースの整備について、例えば米国と同程度でもいいということを目標に挙げるならば、実際にそれを続けてため込んでいくことができるのかどうかというところ、いかにその事業を継続させていくのかというような具体的なところ、が今求められていると実感している。

【委員】
 例えば、生物資源の場合だと、長期間あるいは永久保存という視点が非常に重要になってくる。そこで一番問題になってくるのは、重点化、つまり生物資源というのは重点項目だというのはわかるが、どこを重点化するのかという論議が非常に問題になってくる。例えば私どもが扱っている範囲で、産業としてはなくなってきたものをどう扱うのか。研究資源としては、今後化けるかもしれない、非常に重要になるかもしれない。そこで、なおかつそれを非常な労力と資金をかけて保存していくという作業がどういう意味を持つのかということが、常時問われている。
 多分、生き物を扱っていく、資源管理というのは、常時この問題で悩んでいくだろうと思う。しかし、今はやりの材料、国際的に海外でやっている材料を追いかける分には、予算がつく。以前あったのは捨てるのかという問題と、新しいものはどうするんだという論議の中で我々は非常に悩んでいる。ここで例示されている乳酸菌のような微生物は民間主体で提供とあるが、乳酸菌の中にも、山ほど遺伝資源がある。それをどこが保存し、どこが特性評価していくのか、分類は誰がやるのかということになってくると、こんな仕分けは出来ないというような考え方になっていく。
 特性を考えて、産業、サイエンス、今後の独創性の担保、こういう点から、わが国が重点化して維持していく遺伝資源、整備していく生物遺伝資源というもののあり方を検討していかなくてはならない。

【主査】
 この委員会は、文部科学省の委員会であるが、今日、説明された内容というのは、ほとんどオールジャパンのことであり、その位置づけをどのように考えたらよいのか。事務局としてはどのように整理するつもりなのか。

【事務局】
 もともと科学技術庁の時代に関係省庁の研究開発に関する事務の総合調整というのがあり、大蔵省に要求するときの予算の額と内容の総合調整を行う見積もり方針調整や、各省庁が合同で研究開発をするとき、それをサポートするようなファンドである科学技術振興調整費の提供も行っていた。そのファンクションは、そのまま文部科学省のほうに引き継がれており、引き続き各省庁の科学技術に関する事務の調整をさせて頂くことになっている。
 しかし、その上に総合科学技術会議が発足し、より高い立場から基本的な方針を示すこととなり、それに基づいて、我々文部科学省は、各府省にまたがる知的基盤の整備の具体的な計画づくりをしていくという役割にあると思っている。
 各機関で整備されているものも含めた形で、オールジャパンで計画づくりをしていきたいと思っており、そのときにはもちろん協力・連携関係というのが不可欠であるということで、各省庁の研究機関の方々にも委員として来て頂いている。

【委員】
 特にデータベースの整備では、本当にオールジャパンでやらないと分けてやったのでは意味が無い。そういう面で、今後どういう対応をとればよいのかということに対して、一つお答え頂いたと思う。
 もう一つは、現状はどうしてこのように欧米に遅れをとったのか、あるいは整備が不足しているのかという原因についてある程度一定の理解がないと今後、同じようなインフラ整備をしても同じ結果になる。過去どうしてこういう状況だったのかということを今後何に大きなウエートを置いて整備していくべきかということの参考にすべきだと思う。

【委員】
 官民の役割分担というところの決定の仕方であるが、これは対象物のある種の市場との関連性において、こっちが官で、こっちが民という、二手に分けたような印象があるが、要は、公的資金の流れをどう設定するかが重要である。これはある種の産業政策的な手法で以前からあると思うが、補助金を交付する、減免税をする、あるいは規制をする、逆に保護をする、それから特別認可法人をつくる、ベンチャーキャピタルを供給して、民間でできるようにするなど、そういう種類の手法が随分あると思う。したがって、官民で、ここからここは国で、こっちは民というように、この資料では割に単純に分けているが、実際はそうではなくて、国の資金をうまく流して、全体として効率よく、しかも成果が上がるとそれが種になって民間でも効率よく回るようにするというような手法、それを分野別、あるいは対象別に、もう少しきちんと分けて考えると、計画としても随分効率の良い資金配分になってくるのではないかと思う。

【委員】
 私はデータベースを実際につくったことがあり、それについて反省をしながら資料3の内容について考えると、この資料3ではいろいろ問題提起されており、まとめられていることを現実の施策としてうまく実行していけば、これは随分違ってくるだろうという期待をもたせるペーパーだと思う。
 この知的基盤の整備というのは、一度始めると、スパンが5年、10年というスパンでないと思う。多分20年、30年、あるいは50年というスパンで考えていかないといけないだろう。要するにスパンをできるだけ長くとるというのが、こういう知的基盤整備の根本として考えなければならない部分で、施策を立てるときにも、当然ながらそれをベースに考えるというのが、重要なことではないかと考える。
 もう一つ、この中でも指摘しているが、インセンティブの問題。これは実際、重要であると思っている。例えばデータベースを例に取り上げると、データを提供する側のインセンティブ、データベースを構築する側のインセンティブ、データベースを利用する側のインセンティブの多分異なった3つのフェーズがあると思う。これをいかに組み上げていくのかが、成功するか、失敗するか、施策上の大きな問題になってくるような気がする。

【委員】
 昨年度までの政策委員会知的基盤整備小委員会というのは、科学技術振興調整費の知的基盤整備推進制度の課題を公募によって決めていたが、今回は、重点問題をこの委員会でピックアップして、それについて研究を進めるということになるのか。

【事務局】
 従来科学技術振興調整費というのがあるという説明を先ほど申し上げたが、大体40億円ぐらいかけ、各府省にまたがる知的基盤の整備をサポートさせていただいた。
 科学技術振興調整費の知的基盤整備の課題は、公募をし、募集のあった中から委員の方に選考して頂いた。本年度も、引き続き科学技術振興調整費の先導研究というプログラムの中に知的基盤整備が入っており、現在、統一公募の最中であり、当然いくつかの提案課題が出てくると思う。その中から、同じように課題として優れたものを採択させていただきたいと思っているが、残念ながら、期間が3年とか5年という短い期間である。先ほど話があったように、もっと長いタイムスパンでものを考え、安定的な資金の提供が必要である。そういうことができるような別のメカニズムを考えていかなければならないと思っている。これも、どこまでできるかわからないが、当委員会、知的基盤整備のレポートを急いでいる理由の一つである。大体8月末には、財務省に予算を提出しなければならないし、その前の省内手続きというのは、もっとずっと早いタイミングで行わなければならない。それに間に合わせようということで、このような、少しはしょった議論をしていただいている。

【委員】
 先端的な技術分野では、失敗事例もたくさんあるが、だれもが認めるような成功事例というのも割とある。一方知的基盤に関しては、必ずしも世界的なレベルで本当の意味で成功事例がなかなかない。ぜひ、この機会にそういう成功事例をつくれるような、きちっとした枠組みをつくっていただければいいと思う。ニュービジネスの知恵を寄せ集めて、知恵を結集して、そういうものをつくるためのものができたらという感じがする。ぜひお願いしたい。

5.今後の日程

 次回は6月上旬から下旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

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研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)