別紙5
日本技術士会の技術士制度検討委員会において作成された比較表をもとに、平成
30年6月にロンドンで開催されたIEA会合で聞き取り調査を行い、その完成度を高めた。
日本技術士会による比較表の出典は以下の通りである。
上記2項目に留意して以下の通り各国の資格の分析、それに基づく比較検討を行った。
各国の制度の分析と国際的通用性検討作業部会における意見等は以下の通りである。文頭のマークにより内容を分類しており、分析にあたるものには○、比較表に基づく意見にあたるものは●としている。一部日本技術士会の技術士制度検討委員会による検討結果を引用及び参照している箇所がある。また、数値に関する分析等は、該当項目の数値が判明している国のみを記載している。
●技術士の部門数は他国と同等だが、各部門に内包される技術内容の区分が他国と異なっている部門が一部あり、相互認証等のため相手国の資格の専門性と照合させるときにうまくマッチしない問題がある。
●技術士は農業、森林、水産、繊維など産業別の区分になっている部門があるが、他の国では技術の専門性に着目し区分(例えばStructure、Civilなど)されている場合が多い。また、技術士は資源工学、衛生工学、応用理学のような他国にはない部門があり、上記のような問題の要因となっている。
●総合技術監理部門に対応する部門が国際的にみられず、独自の部門となっている。
○受験者に対する合格率は、10%程度の国(日本、シンガポール、韓国、台湾)、
30~50%の国(インドネシア、フィリピン)、60%以上の国(米国)に分けることができる。
○合格者の平均年齢は米国、オーストラリア、台湾は日本と比較して10~20歳若い。
●技術士制度は合格率の向上、受験者の若年化を目指しているところであり、これまでも制度の見直しを行ってきたが、今後も検討を進めるべきである。
●IPD教育を可能とする教材や講座を用意する必要がある。
●大学卒業の段階で資格の取得を意識するよう、周知を行う必要がある。
●技術士資格は、技術者として上位の管理者層の実力証明的な資格ではなく、現場で第一線を任されている若いエンジニアが持てる資格であるべきである。また、他国の同等資格を持つ現場のエンジニアと遜色なく協働できるようにするべきである。
○学歴要件として、各国の教育認定機関が指定する高等教育課程の卒業等が定められている国が多い一方、日本では第二次試験を受験するための要件として、JABEE認定課程の卒業もしくは第一次試験の合格が要件となっている。また、このうち現状第一次試験の合格者が大部分を占めている。
○業務経験の要件は各国ともに定めており、その期間は2~3年の国もあれば10年の国もある。そのうち、今回の調査では4年程度としている国が多かった。これは日本の技術士補、若しくは指導技術者の下で業務を行う場合と等しく、技術士の要件となる業務経験年数の設定は国際標準に合致している。
●国際的通用性の観点から見れば、第二次試験受験者がJABEE認定課程を修了していることが理想的であるが、JABEE認定課程修了者以外の若手技術者に対しても、学会や大学等を通して働きながら一次試験対策の勉強ができるような機会を増やすべきである。
○資格認定において、知識と経験を評価基準としている点は、ほとんどすべての国で一致している。
○資格の認定方法は上述の通り2タイプ(試験タイプ及び育成タイプ)がある。
○試験タイプのうち、米国のPEは専門知能を測る択一式のFE試験、PE試験を受験する。PE試験合格後、各州政府登録の際に5名の保証人を求め、これにより業務に基づくコンピテンシーを測っている。
その他、試験で評価を行う日本やシンガポール、韓国、マレーシアは、面接試験の実施、また、業務経歴のレポートや実務経歴書等の提出により、業務に基づくコンピテンシーを測っている。
○育成タイプの国のうち、英国のCEngは確認者のサインが必要とされる業務経験等の書類審査の後、面接を受ける。この面接ではコンピテンス(能力)が確認され、筆記試験は設けられていない。英国と同様の認定方法を取っているオーストラリアも同じような審査を経て認定を行っている。
●実績を評価する国と試験を行う国とがあるが、ともに何らかの方法で、知識と経験からコンピテンシーを測っている点は同じである。そのコンピテンシーの確認方法が試験タイプと育成タイプで異なる。
●試験を実施する国において、試験方法が筆記の場合、択一の場合、日本のように両方を用いる場合と、国によってばらつきがある。各国の試験の方法や内容の詳細はわからないため、各国の試験で測る能力のレベルは不明である。
●現在の第二次試験の試験方式等の適正について、PCの獲得を確認するという観点から、検討を継続する必要がある。
○IPDは実績で評価を行っている国(英国及びオーストラリア)はその制度が確立している。その他試験で資格認定を行う国についても、カナダ、シンガポール、香港、マレーシア、インドなどの国はIPDの仕組みが用意されているようである。
●各国で制度が確立しつつあるIPD制度の在り方について、我が国でも検討を始める必要がある。
○更新の方法や要件にばらつきがあるものの、約1年から5年ごとに更新を義務付けている国が多い。更新の要件としては、CPDや所属協会への会費の支払い等を定めている国が多数で、今回の調査によると更新を全く実施していない国はほとんどないことがわかる。1年ごとに更新を義務付けているものは、所属する技術者団体における会員更新(年会費の支払い)が資格の更新と結びついている場合が多い。
●ほとんどの国が更新制を持っていて、名簿の公開を実施している。
●更新制は技術士資格の国際的通用性を目指すためには緊急に進めるべき案件であるが、更新する会員および所属協会の双方にメリットがある形で設計しなければ、関係者の合意を得にくい。会員名簿の開示(和文・英文)や産業界(海外含む)の利活用にも通じるような制度設計を検討すべきである。
○海外にも日本の技術士会と同様の組織があり、試験合格者(資格保有者)には、これらの組織への加入が義務付けられ、その組織のCPD認定が資格の更新要件になっている国が多い。
○部分的に業務独占としている国も含めると、全体的に資格を業務独占資格として活用している国が多い一方、日本の技術士資格は名称独占資格である。他国での具体的な資格の活用状況としては、米国、台湾、ベトナム(建設関係調査計画設計業務)の設計図面について、各々の国のエンジニア資格所有者の押印が必須とされていた。
○資格保有者の社会の認知度は総じて高く、特に米国のPE資格は世界的にも認知度が高い資格となっている。一方で日本、カナダ、ドバイの認知度が低い国に分類されている。
○二国間協定の展開を積極的に行っているのは、オーストラリアと米国の2か国である。米国の場合、PE資格は州ごとの資格であるが、テキサス州、ネバダ州が積極的な展開を行っている。
●二国間の相互認証協定は、一部の国は活発に動いているものの、全体で見るとその動きは鈍く、あまり進んでいないのが現状である。今後各国の様子を見ながら我が国の方針を定めていくべき。
科学技術・学術政策局人材政策課