第7期 技術士分科会 制度検討特別委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成25年6月3日(月曜日)9時58分から12時14分まで

2.場所

文部科学省東館15階 局1会議室

3.議題

  1. 今後の技術士制度の在り方について(技術士のキャリア形成について)
  2. その他

4.出席者

委員

池田主査、福山主査代理、岩熊委員、内村委員、岸本委員、中谷委員

文部科学省

斎藤基盤政策課長、吉田専門官ほか

オブザーバー

経済産業省、公益社団法人日本技術士会、一般社団法人日本技術者教育認定機構

5.議事録

9時58分開会


【池田主査】 皆さん、おはようございます。ただいまから科学技術・学術審議会技術士分科会の第2回制度検討特別委員会を開催します。御多用中、御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは、まず事務局から資料の確認をお願いします。

【小林係長】 お手元の資料を御確認願います。議事次第の後に、配付資料が資料1から資料9までございます。順に御確認いただきたいと思いますが、資料5の岩熊委員の資料の中で、第18回技術サロンについての案内を別紙でお配りさせていただきます。カラーのものでございますので、それが関連する資料でございます。
 続きまして、資料8につきましては、内村委員に御用意いただいた資料でございますけれども、この中にある別紙1と書いてある資料が、この「技術士CPD」という冊子でございます。その前に別紙2というようについておりますけれども、これが別紙1ということでございます。
 その後、参考資料として、これまでお配りしたものがございます。参考1から参考7までと、参考8が今回新しく加えております。
 机上資料につきましては、冊子で技術士関連の法令集を置かせていただいております。御確認をお願いいたします。

【池田主査】 どうもありがとうございます。資料の数はちょっと多いんですが、お手元にありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、早速ですが、議事次第に従いまして、議題1、今後の技術士制度の在り方についてに入ります。本日は、3名の委員より資料を基に御説明いただき、その後、今日は特に技術士のキャリア形成についてというテーマで意見交換をお願いしたいと思います。
 まず、前回委員会における主な発言内容を含めて、事務局から説明をお願いします。

【小林係長】 資料1から資料3につきまして、事務局より御説明させていただきます。
 資料1につきましては、前回5月13日に開催いたしました第1回制度検討特別委員会におきまして、福山主査代理、内村委員より資料を基に御説明いただきまして、その後、意見交換していただきました。その中で御発言いただいたものをまとめさせていただいております。
1ページ目のところにつきましては、一番上の黒丸のところでございますけれども、高等教育機関を卒業した後に、技術者が技術や知識のレベルを継続的に向上させ、その後、真に社会に役に立つ技術者として成長するキャリア形成スキームを構築することが重要だという御説明を頂きました。
 具体的には、卒業後適当な期間、例えば7年程度とありますけれども、7年程度を経て技術士となり、その後、例えば7年程度の研さんを重ねて上位の技術士、総合技術士と記載させていただいておりますけれども、この総合技術士となって更に研さんを積んでいくということではどうかという御意見がございました。
 さらに、技術者がどのような役割を担って、それをどのように果たしていくかというガイドラインのような筋道があれば、技術者もキャリア形成のイメージが描けるのではないかという御意見もございました。
 続いて、技術者と技術士の違いについてということで、技術士は社会に対する倫理的な責任を持つことが技術士に求められる資質能力の一つになるのではないかという御意見がございました。
 2ページ目でございますけれども、上のところで、第一次試験の在り方を今後しっかり考えなければならないということで、第一次試験を予備試験、検定試験のような扱いにして、大学で身に付けた技術や能力を検定する試験という位置付けにした方がよいのではないかと。その場合に、今、1年間に1回の実施ですけれども、年間で何回か実施する機会を設ける方がよいのではないかということでございます。
 下の方ですと、CPDについて、平成12年制度改正のときは議論されてこなかったということで、CPDを誰が行うのか、教育機関、学協会、企業等それぞれがどのような役割を果たしていくのかということを議論しないと、CPDの実質化につながらないのではないかという御意見を頂いております。
 3ページ目でございますけれども、CPDにつきましてはその内容に少し偏りがあるのではないかということ、少しバランスを持たせたCPDを構築していくことが必要だという御意見がございます。
 最後に、普及拡大・活用促進のためには、女性技術者に対して魅力ある資格にするにはどうすればよいかという御意見を頂いております。
 これらを踏まえまして、資料2や資料3を構成しております。資料2は既に御覧いただいておりますけれども、前回の制度検討特別委員会の検討を踏まえまして、右から二つ目のグレーに塗ったところがございますけれども、ここである程度制度改革に向けた方向性、内容というのを記載させていただいております。これも今回の特別委員会や、次回以降頂きました御意見を基に追記してまいりたいと思っております。
 資料3につきましては、資料2も踏まえた形で、更に抽出して今後の技術士制度のイメージというものをつくっていきたいという考えで作成したものでございます。3ページ目でございますけれども、普及拡大・活用促進のところがこれまで抜けておりましたので、これらを追加で記載させていただきます。
 5ページ目の最後のところですけれども、キャリア形成のイメージの中で、技術士補、技術士(20部門)、総合技術士の位置付けをここに記載させていただいておりまして、例えばということで、民間企業等では技術士になる方につきましては、主任や係長の職の方でどうかということで、例示的に記載させていただきます。総合技術士につきましても、例として管理職の方が取得するような資格とすることでどうかという考えに基づきまして、追記させていただいております。以上でございます。

【池田主査】 どうもありがとうございました。前回、きちんとおまとめいただきまして、どうもありがとうございます。
 続きまして、3名の委員より、資料を基に御説明を頂きたいと思います。続けて御説明いただいた後に、説明内容について質問等がありましたらお願いしたいと思います。
 それでは、まず岸本委員より、資料4、高等教育機関における技術者教育の在り方について、説明をお願いいたします。

【岸本委員】 それでは、資料4に基づきまして説明させていただきたいと思います。15分くらいというふうに思っておりますが、よろしいでしょうか。

【池田主査】 はい、結構です。よろしくお願いいたします。

【岸本委員】 先ほどの資料1でのまとめというところで、一つは大学や高等専門学校等の高等教育機関を卒業したときで、後の話がありましたけれども、まず卒業する時点でどれだけの能力、あるいは資質を身に付けるのかというのが一つ大事なポイントであるかと思います。そのお話と、もう一つは資料1の最後の方にありました、実際に試験をして能力を測るということですので、そういった試験をどんなふうに考えていったらいいかという観点から、資料4に関連してお話ししたいと思います。
 それで、二つのことをお話しさせていただくのですが、1はJABEE認定と教育の国際的な質保証ということで、こちらの方は高等教育の終了時点で学生がどういうことを身につけていたらいいかという観点になります。2の方がOECD-AHELOの概要ですが、こちらについては、試験を通じてどのようなことが測れるかということについての国際的な取組になっておりまして、それについてお話ししたいと思います。
 それでは、最初のJABEE認定と教育の国際的な質の保証ということですが、3ページの表を見ていただきますと、我が国の大学教育の評価システムというのがいろいろあるわけですが、それを「政府による規制」、「専門的権威による同僚規制」、それと「市場による規制」というような形でまとめてあります。一つは一番下の方で、入り口ということからするとセンター入試がありますし、出口からすると、例えば医師の試験だとか教員採用試験があります。
 その上を見ていくと「設置認可」ということになるわけで、このようなまとめの中で、右側のところ、「専門的権威による同僚規制」については、認証評価ということだと大学基準協会だとか大学評価・学位授与機構ということで、これは大学全体の教育システムの評価になりますが、プログラムごとという意味ではJABEEの認定というのがございます。
 少し下の方を見ていただきますと、今度は大学の終了時点での能力を測る試験というので考えると、土木学会の認定技術者資格制度でありますとか、今回問題になっている技術士試験というのがあると位置付けられると思います。
 次に、4ページを御覧になっていただきますと日本技術者教育認定機構すなわちJABEEのことが書いてありますが、JABEEは技術系の学協会と密接に連携しながら、技術者教育プログラムの認定・審査を行う非政府団体です。設立は1999年で、実際の認定審査は2001年よりスタートいたしまして、昨年度までで466プログラム、修了生の累計が約18万人ということで、かなりの数になっているということがお分かりいただけるかと思います。
 それで、このプログラム認定の目的が5のところに書いてありますけれども、一つは技術者教育の質の保証をするということで、これが一番大切な点かと思います。
 それに続いて2番目が、優れた教育方法の導入を促進するということで、技術者教育を継続的に発展させていくということが狙いとなっております。
 3番目ですが、そういったことをするには評価方法がきちんとないといけないというわけで、そういった評価方法について発展させるということと、評価を行うことができる専門家も育成していくということが必要になります。
 あと、4番目は教員の役割、教育に対する役割をもっと明示化していこうというのがあります。
 そういった形でプログラムの認定の目的がありますが、では、どういった観点から審査するかというのが下に書いてあります。審査の視点というのは、教育の成果によって評価するということですけれども、学生がきちんと学習・教育目標を達成しているかという観点から評価していこうということであります。そういうことからするとゴールが大切で、その教育のアプローチについては大学に任せるということで、これは多様なアプローチがあるということを認めています。
 そういった形で成果を評価するわけですから、その成果については明確かつ具体的な目標や評価基準が設定していなければいけないということであります。この目標、評価基準というのは、大学がそれぞれの考えで立てるわけですが、その良しあしについては社会が評価するということで、JABEEが直接良い悪いということは言わないということであります。
 それで、実際の認定・評価をするわけですけれども、そのときの評価の基準というのがございまして、これは2012年度に基準を改定いたしまして、それが示されています。まず、共通基準がありますが、その前に、下に個別基準と書いてあるのを先に御覧になっていただきたいと思います。学士課程のプログラム、これはエンジニアリング系の学士課程と、更に修士課程のプログラム、それに加えて情報系、専門系の学士課程、4番目は建築系の学士修士課程プログラムがあります。そして、これらのプログラムを共通するような形の基盤になる基準ということで、共通基準として基準1から4が設けられています。
 基準1は、学習・教育達成目標の設定と公開ということで、高等教育機関がどういう目標を設定し公開しなくてはいけないかということの基準になります。これがプランを立てるところであります。
 基準2は、教育手段で、実際に実行するところのドゥーであります。
 基準3は、チェックということで、学習・教育達成目標がどのくらい達成されているかということに関わります。
 基準4は、教育改善ということで、アクションということになります。
したがった、基準1から4を通じてPDCAサイクルが回るような形の構成になっています。
 ということで、どういうプランを立てるかということが大切になるわけですけれども、それについては8ページのところに書いてありまして、JABEEが定める学習・教育達成到達目標という形で書いてあります。評価の基準となる指標でありまして、プログラムが保証する具体的な学習・教育の成果、どの程度かという水準も含めた形で提示する必要があります。それには、学生が卒業時に身に付けている知識だとか能力が示されているということが必要になります。これらは認定審査の前提になるものでありますが、プログラム側が自らの教育理念に基づいて独自に設定するということで、次のページにどういう内容かを示しています。大枠では決められていますが、その中身についてはそれぞれの教育プログラム、大学側が決めるということになっております。
 それで、どのような内容かというのが具体的に9ページに示してありますが、卒業時点で身に付けているべき能力としては、(a)から(i)という形で提示しております。先ほども述べましたように、この基準1というのはエンジニアリング系の学士課程のプログラム、修士課程のプログラム等々を包含しますので、それぞれのプログラムに応じて、具体的な内容だとか水準についてはプログラム側が設定するということになります。細かい内容については御覧になっていただきたいと思いますけれども、本来技術者として身に付けていかなければいけないであろうという項目が、それぞれ能力という形で記述されています。
 なお、2012年度の改定で、一番下にあります(i)チームで仕事をするための能力について、以前はこの上の項目に含まれていましたが、別項目となりました。
 あともう一つ、(e)のところにデザイン能力というのがありますが、JABEEが後ほど述べますワシントンアコードに加入したときに、このデザイン能力について、日本はいい教育をしているが、ここのところをもう少し充実するべきだというようなコメントを頂きまして、その辺の改善を大学とともに行ってきたというような経緯がございます。
 ということで、(a)から(i)については、技術者として仕事をしていく上で必要な能力を提示したということになっております。
 これが日本の中での枠組みですが、では、国際的にどういうのかということが簡単に10ページにまとめています。海外での技術者教育認定ということになりますと、職能団体、技術士会等になりますが、その職業の社会的地位を守り、向上させる目的で教育認定をやってきた欧米の歴史がございます。それと、これらの認定は教育の独立性を確保するために、非政府組織であるということであります。
 そういったことから、国によっては技術士法によって教育認定が職能団体に委託されています。また、認定されたプログラムの修了生でないと技術士になれない、すなわちエンジニアとして仕事ができないような国々もあります。
 ワシントンアコードに加入している国々では、ほとんど全ての工科系の大学が認定を受けているという状況で、これはアメリカでも例外ではなくて、アメリカのリーディング大学でも、そこに書いてあるような形でABET、これはアメリカの認定組織ですけれども、認定を受けているというような状況です。
 それで、先ほどからワシントンアコードと申しましたけれども、これは11ページにありますように、1989年に英語圏の国々が中心になって、教育の質の保証、お互いの国々での高等教育の同等性を保証しようということから、ワシントン協定を制定しました。その内容としては、同じ考え方で技術者教育の認定を行うとか、認定プログラムの質的な同等性の相互認証である、認定思想の継続的な改善をしていく、1国1団体が加盟ということがあります。日本は2005年に加盟しましたが、非英語圏で初めての国として加盟を果たしました。
 その後の動きですが、12ページに示すように、アジアの国々が積極的にワシントンアコードに加入しているという状況です。現在は下の方にありますけれども、中国、フィリピンが加入を検討しているということで、アジアの国々の多くが入ってくるということになります。技術者の流動性を考えたときに、非常に大きな枠組みになるであろうと考えることができると思います。
 次に13ページですが、ワシントンアコードの中では教育の質の同等性の視点になりますが、一方では専門職としての知識や能力がどういうふうになっているのかということで、エンジニア、テクノロジスト、テクニシャンという形で技術者としての3つのカテゴリーが、日本とは違って海外では明瞭に区別していますが、それとワシントンアコード等との関係について整理をしていこうという動きがありまして、国際エンジニアリング連合(IEA)が2009年にまとめています。その日本語訳は「技術者教育に関する分野別の到達目標の設定に関する調査研究」の報告書に収録されています。例えば、エンジニアというのはどういうことができなくてはいけないかということを文章化して、それぞれの国でそれらを参考にしながら、高等教育の質の保証だとか、専門職としての質の保証をしていこうという動きであります。
 以上、JABEEについて説明いたしました。
 次に、OECD-AHELOですが、次のページを見ていただきますと、背景が書いてございます。今日では国を越えて教育プログラムの同等性を評価していくという動きがあるわけですけれども、そういった中で、学生が高等教育を通してどのような知識・技能・態度を習得したかを世界共通のツールを用いて測定できないかということで、そのための試行的な研究をしていこうということがOECDで持ち上がりまして、それを今年3月で一区切りつきましたが、4年間にわたって行ってまいりました。
 取組の背景としては、高等教育の拡大ということで、学生たちが国を越えて大学教育を受けるようになったので、そういった中で学位の等価性であるとか質の保証の要求が出てきたということであります。
 16ページには、どのような流れで行ってきたかを示しています。第1フェーズではどのような試験問題を作成したらいいのかということと、小規模なテストを実施して、その内容が適切か、どのようなところに着眼して改善したらいいかという検討を行いました。それに続いて第2フェーズでは、大規模な調査が行われました。2013年3月に最終会合があって、一応一区切りということになっております。
 そして、どのような分野を対象にしたかということですが、まず一般的技能ですが、学士課程修了時点でどのような汎用的な能力を身に付けているのかというものです。それと、専門分野として経済学と工学が対象になりました。さらに、大学や学生たちの背景情報、すなわち、学生たちが、どのような環境の中で勉強しているのか、学生の状況はどうなのかということを調査しています。
 日本は工学に参加しましたが、17ページに参加国を示しています。日本とオーストラリアが最初から、第1フェーズのところから連携をとりながら、このフィージビリティ調査を進めました。
 工学分野でどのような能力を世界共通で測るのかということが課題になります。そこで、工学分野におけるチューニングということで、ブリュッセルに専門家が集まって検討が行われました。そこでは18ページに示している1から9までの項目について検討し、レポートが作成されました。その中で,特に4番目「学習成果の記述の分類と順序付け」であるとか、5の「期待する学習成果の定義」等々をきちんと決め、その合意の下で問題を作成していこうというプロセスを取りました。これらのことを短時間で進めなければいけないこともあり、既存のものを参照して決定することがなされました。
 それが次のページに書かれているわけですが、学士課程の修了時点、これがなかなか難しいですが、ヨーロッパはボローニャ・プロセスで、スリーサイクルになっていますが、そのファーストサイクルの3年間の学習成果を対象にします。一方、日本やアメリカは4年間の学習成果を対象にするということで、同等性に課題がありますが、とにかくその最初のサイクルを終わった時点で、修了生が身に付けるべき能力について検討がなされました。
 19ページの表の一番左覧にEUR-ACEというのがありますが、ヨーロッパ側の技術者教育認定基準の枠組みで、知識と理解とか、工学的分析とか、工学デザインなどの項目があります。一方、真ん中のところがABETと書いてありますが、これはアメリカの技術者教育認定基準になりますけれども、こちらはワシントンアコードの加盟国ということなので、日本もこれと同等であると見ることができます。
 今回は、この中ではどちらがいいかという比較ではなくて、この共通部分を取り出してみようということになり、AHELOの取組の中では、学習成果の枠組みとしては、そこの右側に書いてあるような形で考えようということになりました。基礎科学と工学、これは基礎知識になります。その上で、応用力になりますが、分析力だとかデザイン力だとか実践力、こういったところを技術者の教育としては大事だということで取り出しています。
 ということで、この枠組みについて合意して、これに対応した問題を作成することになりました。20ページにテスト開発のための概念枠組みを示していますが、一つ目のカテゴリーは左下のところに「Basic and Engineering Sciences」と書いてある専門分野の基礎知識になります。対象とする分野も絞ろうということになりまして、このフィージビリティスタディでは土木分野を対象にやってみようということになりました。そういった意味で、このベーシック・アンド・エンジニアリング・サイエンスの知識をどう測るのかということと、もう一つは分析力、デザイン力、実践力をどう測るのかということで、そちらはエンジニアリング・プロセスと考えられますが、それらを対象とした問題をつくってみようということであります。
 具体的には21ページに概念枠組みに基づく問題の作成と修正のプロセスを示していますが、コンソーシアムが原案を作成となっている中で、実際はオーストラリアのチームと日本のチームで作成しました。記述式の問題、すなわちエンジニアリング・プロセスの問題についてはオーストラリア側が担当するということで、記述式の問題を作成しました。一方、基本的な知識については多肢選択式の問題で行うことを提案し、それについては日本側が問題を提案するということになりました。それで、新たに問題をつくるというのは、その水準とかいろいろ考えたときに難しいということで、日本技術士会にお願いいたしまして、技術士第一次試験の過去の問題を提供していただきました。それともう一つは土木学会認定の土木技術者資格試験、これはちょうど学部修了生に対する試験という位置付けなので、これらを英語化して提案いたしました。
 このようにして提案された問題から、国際的専門家の会合で、国際的に見て適切なのか、あるいは能力を測るのに適当な問題なのか等、問題の難易度も考えていろいろな議論がなされました。例えば日本の技術士試験ですと、日本の法律等に特化した問題がありますが、そのような問題には国際的通用性がないということで外していきまして、結局30題の問題が選択されて実際に使用されました。
 それで第1フェーズで小規模で実施いたしまして、特に記述式については、本日は余り細かいことまで申せませんが、いろいろな修正を加えて、その結果に基づいて第2フェーズの大規模な調査をしたという経緯であります。
 現在、その取りまとめがまだ続いておりますけれども、多肢選択式の問題については、かなりの国で行った結果、これで大凡(おおよそ)のことが測れるのではないかという評価になっております。一方、記述式の問題については、デザイン能力等を測るということで、第1フェーズにおける学生たちの感想では、非常にいい問題である、こういったことができなければいけないと自分たちも認識した、そういう意味であれば大学の教育も変えてほしいというような回答がありました。しかし、第2フェーズの調査では、無回答なものや、答えが書いてあっても的外れだというものが多くありました。問題の内容や試験方法の適切性については課題があり、改善が必要だということになっています。したがって、技術士試験の中身を考えていく際においても、測る能力を決めて問題を作成しても、なかなか想定通りにはならないというようなことを認識しておく必要があるように思います。
 最後に、22ページに我が国が参加したことの意義が書いてありますが、工学教育における学習成果の内容について、国際的に共通認識が醸成されていることを具体的な場面で確認することができた点が大きかったように思います。
 2番目が、日本の科学技術を支える我が国の工学教育に対する世界の関心と期待は強く、それにふさわしい国際的な貢献を、工学分野での学習成果の調査においても期待されていることを認識できたということです。例えば記述式の問題の答えというのは多種多様な答えが存在するわけですけれども、日本ではこう考えるということをきちんと説明することによって、他の国ではそれが正解ではないと思われていたものが正解になるなど、技術者としてどのような点が重要なのかも含めていろいろなやりとりがありました。そういった意味で、日本への期待ということも大きいのかなと感じました。
 3番目は、学習成果調査の在り方に対しては、何をどのように測定し、どのように比較するかについては、長期的展望をもって取り組む必要があり、国際的な専門家チームによる更なる検討が求められていることです。これに我が国も積極的に関わっていくことは大きな意義があるということですが、要するに達成目標を決めたとしても、能力を測れないといけないというわけで、これについてはやはりまだ長期的な取組が必要だなと感じております。
 最後に、こういった国際的枠組みの中で学習達成度調査に取り組むことは、国際的通用性のある専門職の資格試験をどのように実施すべきかについても示唆が得られるのではないかと考えております。
 以上、ちょっと長くなりましたけれども、以上で説明を終わります。

【池田主査】 どうもありがとうございます。
 それでは、事実関係でもし質問があればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【内村委員】 最後のOECD-AHELOの内容、大変興味を持って聞かせていただきました。日本ではどういう機関がここに参加しているんでしょうか。

【岸本委員】 はい。日本では、文部科学省からの委託事業ということで、東京工業大学が幹事校として委員会を設けて、取り組んでまいりました。その参加大学は国立大学が8大学、私立大学が4大学で、規模等々多様性を持った大学が参加して、実際にテストも学生に受けてもらったというところでございます。500名ぐらいの学生が実際に最終的には試験を受けております。

【池田主査】 もう受けたわけですね。

【岸本委員】 はい。

【池田主査】 分かりました。

【内村委員】 ありがとうございました。

【池田主査】 ほかにはいかがでしょうか。

【中谷委員】 ちょっと分からなくて質問させていただきますけれども、JABEEにのっとってその教育はやっているというところがあって、そして今回その修了生に対して試験を受けさせたということなんですか。

【岸本委員】 JABEEの枠組みというのは、いろいろな教育プログラムを認定するということで、先ほど申しました466のプログラムですが、それは大体工学分野で言うと4分の1ぐらいのプログラムが認定されていて、全てではないんです。しかしながら、いろいろな大学がそれを見ながら教育改善を行っているという意味で、JABEEの影響はかなりいろいろな大学に広まっていると思います。
 今回受けている、その試験を受けたグループというのは、必ずしもJABEEの認定プログラムの認定校ではないんですが、今、申しましたように同等の教育を行っているグループだと考えていただけるといいと思います。

【中谷委員】 なるほど。それでその成績といいますか、試験の結果というのが、全員が解けたわけではないというお話があったんですけれども、これは今後ということを考えますと、大学で教育をしましたと。それで、第一次試験が免除ということに現在なっていると思いますけれども、学生がその第一次試験に相当するような修了認定試験というのを合格するように教育を持っていくのか、それとも大学が作成した教育カリキュラムに基づいて教育を行って、学生自身の目標として、その修了の認定といいますか、第一次試験免除の資格を得るために勉強を別途するという、二本立てのような形になることを目指されているんですか。

【岸本委員】 そうですね,19ページのところの表を御覧になっていただきますと、今、工学教育で目指しているところというのは、19ページのまとめのところがかなり普遍性を持っていると思うんですが、その中で一番上が基礎科学・基礎工学と書いてありますが、これはいわゆるベーシックな知識になります。これについては確実に身に付けてほしいということになりますが、これについては多肢選択式の問題である程度は測れるように思います。それについてはそんなに成績は悪いわけではなくて、ある程度、学生たちは目標を達成していると理解しているわけです。
 その上で、工学分野、技術分野だと分析能力だとかデザイン能力だとか実践ということで、定まった答えのない問題、必ずしも答えが一つでないような問題に対してもどれだけチャレンジできるかというのが大切になるわけで、その能力を実際に測ろうとしたときに、どういう問題で作成して測るのかという課題があります。それに対して、OECD-AHELOでは、ある意味チャレンジだということでやってきていましたので、学生たちが試験の点数が悪いからそのような能力を本当に身に付けていないのか、あるいは試験問題に慣れていないからできなかったのか、そのあたりのところがまだはっきりしていないので、ここのところの成績が悪かったからどうだというのは、すぐに結論付けられないかと思っています。
 だから、ここのところを今度技術士の第一次試験で測るのか、測らないのか。それは第二次試験になってからやるのかということを、技術士試験の制度設計では考えていった方がいいのかなと思っております。

【池田主査】 なるほど。はい、ありがとうございました。じゃあ、よろしいでしょうか。それでは、また後でも議論できると思いますので、次に進みたいと思います。
 それでは、岩熊委員より、女性技術者が技術士資格を取得する支援の取組事例と、「IEA Graduate Attributes and Professional Competencies」の御説明をお願いしたいと思います。

【岩熊委員】 まず1番目が、女性技術者が技術士資格を取得する支援の取組事例です。
 女性技術士の受験状況は前回も出ました。第一次試験が5.9%、第二次試験が3.1%。合格者は第二次試験3.5%です。技術士はどのくらいいるかということですが、複数登録を含めた登録数は1,373で1.4%、頭数、実数は1,120で1.4%です。30年前は数名でしたが、平成17年に507名、この7年で2倍になっています。参考までに、この7年の男性も含めた全登録者実数は1.3倍になっています。数値は日本技術士会で調べて教えてもらいました。ですから、少ないですが、速いピッチで増えてはいるのかなと思います。
 取組の事例は、いろいろ調べてみましたが、技術士制度を紹介している大学はありますが、特に女性に特化してというのはなく、私が知っている限りの、幾つかの団体でやっていることを紹介します。
 一つは、1983年に発足した土木技術者女性の会です。これは、土木系の女性技術者に対するいろいろな問題提起をしたり、特有の問題を考えたり、あるいは何か提案したりする会ですが、初めから数少ない技術士が2名ほどおりまして、それから何年かで複数合格者が出ました。そういうことがありましたので、発足10年後ぐらいに資格取得、主に技術士についての研修を実施しました。そういうことで、この技術士という資格があるということをかなり明確にアピールしてきました。継続的に多くの会員が技術士に挑戦しているのが現状です。正確な数字は分かりませんが、合格率は非常に高いと聞いています。
 2005年、キャリアパスアンケートをしています。ここでも会員数155人と少ないですが、回答者70名のうち35%が技術士。ここで特筆すべきは、30歳、35歳ぐらいで取得した方が多いことです。ですから、土木系の技術者である限り技術士は当たり前で、それに向かって強く意識して日々仕事をしているというようなことが分かっています。
 つい最近、土木技術者女性の会、地盤工学会、土木学会が出した「継続は力なり 女性土木技術者のためのキャリアガイド」という冊子があり、そこで土木分野で働いている10人の女性技術者の仕事やキャリアが紹介されています。7名は技術士なんですね。それぞれのキャリアステージの中で、技術士というのは太字で書かれていまして、技術士が非常に意識されているということが分かります。読者にも明確に意識されていて、アンケート等をみても技術士に対する意識というものが分かります。
 それから、女性技術士の会です。これは1993年10月に任意団体で発足し、2007年11月にNPO法人化しました。これは、正会員は技術士と修習技術者で70名、そのほかいろいろな方を入れて百十何名の会員です。もともとは日本技術士会の中のグループから声がかかって、当時は勉強会のようなものだったのですが、もう少し社会へいろいろ発信していこうではないかということで、NPO法人化しました。
どういうことをしているかといいますと、女子中高生理系選択支援事業の夏の学校に継続的に出たり、サイエンスアゴラに継続的に出ています。そこでどういうことを展示しているかといいますと、女子学生向けに職業と技術士、小中学生向けには理系の職業とか理系のお仕事とかいうことです。学生向けには明確に技術士のことを話しています。
 もう一つ、今日回覧させていただく「行動する女性技術士」という冊子を編さんしまして、いろいろなところで配ったり、300円で買っていただいたりしています。2009年にそれをつくりましたので、今、もうまさに新しい改訂版をつくっているところです。
 それから、このNPO法人では定期的にニュースレターを発行していまして、そこに、後で出ますけれども、「技術サロンに参加して」、「技術士を目指して」という寄稿をしてもらっています。これはウェブで公開しています。
 NPO法人化にしますと日本技術士会とは別組織になります。そこで日本技術士会の中に登録グループという組織を発足させまして、女子学生向けの活動は共同でやるようになっています。NPO法人としては、技術士を増加させようということが明確な目的ではなく、女性技術士がいろいろな場面で行動することによって発信源となっているという位置付けだと思います。国内だけではなくて、国際会議でP.E.JPという肩書で、シンポジウム等、日本の女性技術者の現状等を報告しています。
 日本技術士会の登録グループは2007年3月に発足し、JABEE課程並びに理系に学ぶ女子学生を対象としたキャリア形成支援活動の企画を実施しています。「技術サロン」という名前の懇話会を年4回必ず開催しています。それから、大学から要請があれば女子学生を集めて話をしています。女性技術士は少ないですから、女性技術士の会や日本技術士会と連携してやっています。
 この懇話会の「技術サロン」というチラシというか印刷物をお配りしましたけれども、明確に女子学生・若い女性技術者を対象として、技術士取得の動機付けを行う活動です。広報としては、工学教育協会の機関誌(2011年5月)に、この取組を紹介しました。
 日本技術士会の男女共同参画推進委員会、これは2011年3月と比較的新しく、技術士の増加を図るための積極的な広報活動をするというのが一番目の目的になっています。それから、女性技術者のキャリアパスにおける技術取得の優位性を明確化していくことがあります。そのためにいろいろなところと連携し、いろいろな活動に出たりするということです。3つの方針があります。
 具体的には教育機関と連携の下で、女性技術士及び女性会員の増加に向けた活動、JABEE、中高生向けの活動、技術者に向けた技術士取得推進活動です。これは、企業内の女性技術者へキャリアモデルを提示して技術士取得を推進する広報活動をするものです。それから、男女共同参画学協会連絡会へ入りまして、日本技術士会としてPRをしていくというようなことです。まだ2年しかたっておりませんが、一部は登録グループの、先ほど申し上げました技術サロンを引き継いでいます。
技術サロンの参加者は、17回で146人です。これが多いか少ないかは分かりませんけれども、定期的に10人前後の人が参加しています。技術士取得が、キャリアを積む上で重要なパスポートになっているということを理解してもらっています。それから、女性ですから、仕事と家庭の両立の工夫ということまで含めて話をしています。もう一つは、やはり女性というのは企業の中でなかなか恵まれない環境にいる人もいまして、技術士を自分の専門からどういうふうに受験したらいいかというような相談にも乗っています。自分自身のキャリア形成に技術士をほとんどの人が意識するようになっています。この取り組みも国際会議で3回、3年ごとに発表してきました。
 2013年、つい最近ですが、ウェブページに企業に働く技術者・管理職向けに女性技術士のロールモデルを掲載しました。技術士挑戦の動機、技術士になってよかったこと、ワーク・ライフ・バランスなど、技術士が女性技術者の身近な目標になるようにつくっているつもりです。
 あとは、高等教育機関からキャリア教育の点、一般的な技術者ではなくて技術士というようにして話をしてほしいという要請が時々あります。出かけていって対応しています。
 日本技術士会の中で、この委員会以外は特に女性をターゲットにしてということは今まで余りなかったのですが、最近では女性を意識した活動というのが始まってきています。
 6番目の4ページの一番下ですが、これは私の個人的な意見がかなり含まれていますが、活動実績から見た女性技術士増加に向けたいろいろな課題です。日本技術士会だけの女性が少ない一つだけの組織ではなかなかできないので、外部の団体、地域の団体との連携をしながらやっていく必要があると思っています。
 次の2番目が、前回の議論でも出ましたけれども、女性技術者にとって技術士の価値の理解促進ということが必要だということです。大人だけじゃなくて高校生も視野に入れた活動が必要だし、PRするのでなくて、これは考えないといけないと思うのですが、会の行事への招待をするのはどうか。さらに女性にとって魅力ある資格かどうか。あとは多様なロールモデルをどんどん提供して、見栄えのいいものをつくっていかなければいけないということです。
 それで、女性にとって魅力ある資格かどうかということで、このペーパーを出した後に思い出したことがありまして、1997年に女性技術士の会が、技術士は切り札になるかというアンケートをしています。30代ぐらいでは、技術士は切り札にはならない。40代以降ぐらいになりますと切り札になると。後輩に技術士を勧めるかどうかは、ほとんどの人が受験を勧めるという結果があります。そういう動機付けの調査もしてまいりました。
 いままでの話については、下の方に参考資料として幾つかあります。今日はその抜粋を持ってきましたが、登録者数や受験者数の推移、それから女子学生向けの活動の実績をカラーで、これはウェブページに順次掲載しているものです。見ていただきたいのは、日本技術士会男女共同参画推進委員会のウェブサイト用の資料でこれは、御本人とその会社に了解を頂いて、こういった顔写真と経歴入りで、全体で20人ぐらいを目標に、今、校閲しているところです。
 それから、ページの最後になっていますか、ニュースレターの抜粋です。ここは明確に技術サロンに参加して技術士のことを教えてもらったと書いてあります。この方は福島大学の方ですが、高専の専攻科の方も来られています。NPO法人女性技術士の会の東北支援事業で、福島県内の学生をこの技術サロンに招待する取組をやっていて、ここに参加していただいています。右側の方はもう第一次試験に多分合格されている方で、技術士のことが比較的身近に分かっているこういう方にも参加していただいて技術士を目指してということを書いてもらっています。これは女性技術士会のウェブページに掲載して、この例のようにできることは今発信しているところです。
続いて資料6です。この翻訳の経緯と、技術士との関連について個人的な意見を述べさせていただくペーパーにまとめました。
 翻訳の経緯は、今日の参考資料の中にもとじられていますが、大学における実践的技術者教育の在り方に関する協力者会議があります。報告書で定義されていた求められる技術者像を受けて、そこに到達するために必要な能力と、何をどうすればいいか、そういった学習成果を評価する指標に関して、共通的な到達目標を示すという事業である先導的大学改革推進委託事業「技術者教育に関する分野別の到達目標の設定に関する調査研究事業」が続きました。
 伝統的な工学の分野、7分野を対象とし、それぞれ工学の知識と技術を専門分野ごとに異なる部分、共通する部分に分けて、必要な項目を整理しました。それぞれ到達するのに何が欲しいかということを整理しました。後で表が出てきます。
 その到達目標を整理するに当たって、いろいろな基準を参考にしていきました。その中で代表的な基準であるIEAのGAとPCの翻訳が必要だということになり、今まで共通的な翻訳文書がなかったということで、正式にその事業の中でチームを組んで翻訳をしたというのが経緯でございます。
 次に、私がそこに参加して、技術士との関連でどう思ったか、どういうふうに感じてきたかということをお話しします。初めは翻訳という話は出ていなくて、原文を参照にしながら指標を検討してきましたけれども、やはり委員の中でも共通理解できない部分がありますので、これはやはりきちっと共有をしておくべきだということになりました。
 後ろの方に出ているのですけれども、(表1)になりまして、その右側に表4-2、これは報告書の中にあるものです。一番右側が、この調査研究で分野別の指標としてはこういうものが知識・能力の指標としては必要だろうということです。それから、その次がこのIEAのGAの枠組みです。次いで、JABEE、ABET、チューニング・テキサス、これはテキサス州の教育評価の仕組みです。こういう項目を横並びにして、この調査研究で掲げた項目が、今まで検討されてきている他の項目と整合性がとれるかということを確認するために翻訳が必要でした。
 ここに私は資料としてつけていなくて申し訳ないのですが、この横並びの表を参考に何をするのかというと、一つは、能力と習得レベルのコアとして、大学でこれだけ最低限はやってほしい、これだけは身に付けてほしいというコアです。次にできればここまでやってほしいという要望という定義をしまして、それを項目ごとに二つ並べています。
 例えば、課題発見解決力、論理的思考力のところで、コアですと課題発見、情報の収集と分析、課題解決などの手法を用い、当該分野の工学問題の課題を挙げ、その構造を分析できるという定義になっています。要望は、課題発見、情報の収集と分析、課題解決などの方法を用い、当該分野の工学問題の課題を挙げ、その構造を分析し、複数の解を提案し、その中から最良の解を選ぶことができる。そこまでやってもらえると非常にいいという要望とコアで分けて、それぞれ専門分野ごとに整理しています。基礎と専門分野では、共に工学の専門に関連する科目ですが、汎用的技能や態度、志向性、総合的な学習経験と創造的思考力、コミュニケーション、課題発見、そういうものは共通的に考えられています。そういうものを定義するために、この翻訳を参考にしました。
 改めて私がこのGraduate Attributes Profilesを見ますと、これは技術者が理工学教育と卒業後の実務経験に基づいて習得して保持すべきコンピテンシーを表していて、コンピテンシーというのは、多分技量とか力量というようにも言え、ここでは知識・能力と翻訳されています。Graduate Attributes Profilesは、将来技術者を目指す学生が技術者として求められるものを表していますが、Professional Competency Profilesと構造的にはそう変わっていない。その内容の深さとか広がり、重み付けの置き方が、違いとなっているように設計されていると思っています。
 加えて、プロフェッショナル・コンピテンシーの方は複合的な技術問題を解決するための評価と判断を、人から教えてもらうのではなくて自立的に行う。それは特定の仕事の中だけで何ができるということではなく、全ての獲得したいろいろな知識・能力を発揮して仕事がきちんとできると。そういう能力を遂行する上での個人的な属性も含んで定義されていると思います。
 これは技術士の視点で見ますと、GAには実務経験を積み重ねる技術者のキャリアパスというのには言及していないのですが、その後の技術者としての業務を行うためのベースとなると考えることができます。その後は実務経験に裏打ちされて資質と能力が獲得され、途中で資格を取得して認定される。これが総合技術士ということになれば更に高度なところへ行くのですけれども、どんな場合でも継続研さんを重ねることにより、技術者から技術士へと大成していくキャリアパスのイメージをつくることができると思いました。
 Professional Competencyの知識・能力の項目を少し振り返りまして、2000年の法改正のときに新たに制定された修習技術者に向けた基本修習課題に対比させてみます。この基本修習課題、池田主査に委員長になっていただいて設定したものです。これを対比させてみました。表2にあります。
 基本修習課題で、これは2000年の法改正で平成14年につくったものですね。専門技術能力と業務遂行能力、行動原則というフレームの中にPCを私が当てはめてみました。この評価と問題解決のところが左側の日本語の修習課題にはないのですが、これは業務遂行能力として当然のことであって、継続研さんも、ここには入れていなかったのですが、これも技術士の義務として当然のことであり、よく対比ができているように思いました。
 ここからは、個人的なことも踏まえてお話しします。技術士は、こういった能力とか資格のような、専門職の技術的な面や能力的な面だけを述べているのですけれども、実はもう少し人間的な面を含めて、技術士になろうというところが必要なのではないかと思ってあえて書きました。
 技術士は、他の技術系資格との関連では横に並べて比較するものでなくても、ファンダメンタル(基礎的)なものだと。それ以外に、業務資格があると考えています。技術者として大成する視点から、本当に人間的な面も含めて少し整理してみました。職業を通じて社会に役立つのだと。それから、ここで国の認証を得ることで、能力を社会に認められる立場になる。家族を含め、社会から信頼を得る。仕事を通じて達成感を得る。自分が尊重され、能力が評価される。それなりの報酬が得られる。この仕事をして幸せに感じられる。ですから、技術者として資格を取得して、更にプロフェッショナルになっていこうと思うためには、こういった複数の動機がないとなかなかキャリアを形成していくのは難しいのではないかと思います。
 技術士資格は専門能力が身に付いただけではなく、更に高度な能力獲得の途上にあって、資格プラス経験という時間軸を重ねながらキャリアが形成され、組織を離れてもただの人にならない。すなわち技術士=プロフェッショナルとなり、次のような評価と満足があると思います。
 社会からの信頼、企業の評価、対外的な評価、会社の技術力の評価、技術レベルを保証する第三者評価、総合コンサルタントとして必要である。それから有資格者の待遇が上がる。自立した個人としての自分自身のプライドということがある。
 技術者に対する社会の期待や、東日本大震災以降、科学技術に対する信頼が少し低下しましたけれども、それを回復させなければいけない。国際的な観点から、何がどうできるから技術士なのかというところの定義が非常に重要ではないか。技術士は技術者としての知識・能力・資質の上に、次の三つを重ねたものではないかと思います。複合的な技術問題を解決するための能力。自律した判断を行い、自立して業務を遂行できる、実証・実現できる能力。それから、業務遂行過程で倫理的判断を下す。その判断の仕方の考え方も、恐らく技術者と技術士では少し違うのかと思います。そういう責務を負うということです。
 技術者の能力と資質は、学生から見ても分かりやすいように時間軸、キャリアパスの絵がありましたけれども、あのようなものを考慮し、目標となる要件とレベルを示して、そして技術士の能力と資質、役割も示していくと。こういったものが示されて、キャリアパス上に技術士が位置付けられるということが重要ではないかと思います。
 最後に、技術者に必要な知識と能力の項目を定義して、共通的に理解するというのは非常に大事なことのですが、このGAとPCに示されている三つの役割と三つの職種の定義の内容と運用の考え方は、そのままでは必ずしも日本における工学系高等教育と技術的職業になじまないということを、十分考慮する必要があると思います。
 私、先ほど今日の資料につけませんでしたと申し上げた件、後で配っていただきました。このコアと要望を具体的に何ができるという、分析、評価、提案等は、私は教育学に詳しくないのですが、教育学のブルームのタキソノミーという教育学評価の手法ですね。記憶、理解、解釈、例示、分類、要約、それから推論、説明、比較、そういう段階の評価を使っています。教育目標の分類学の考え方を使っています。

【池田主査】 そうですか。どうもありがとうございます。
 時間が押しているんですが、何か事実関係で確認したいことがあればいかがでしょうか。よろしいですか。
今、御説明いただきましたが、後で議論の時間もありますので、もしそのときに御質問等があれば、お願いしたいと思います。
 それでは、次に内村委員から、資料7と資料8を用いてお願いしたいと思います。

【内村委員】 はい。議論の時間をなるべくとりたいので、少し駆け足で説明させていただきます。説明の前に、前回のこの委員会で技術士試験の受験申込者数を報告いたしましたが、5月8日に締め切りました第二次試験の速報がまとまりましたので、参考のために数字を御報告したいと思います。参考資料の5を開けていただければと思います。
1枚めくっていただきますと、そこに前回報告いたしましたグラフがございます。黒い実線が第二次試験ですけれども、昨年度は3万2,843名、第二次試験申込者がございました。速報ですので概数で申し上げますが、平成25年度は約3万1,400名の申込みでしたので、約4%の減なり、ほぼ24年度、23年度と同様の減少が継続しているという状況かと思います。25年度は、24年度に第一次試験が大量の合格を出したことと、試験制度が変更になることで、どのように推移するかというのを見ておったわけですが、数字としては大体同様の減少傾向であるということでございます。
 一方、JABEEの申込者ですけれども、昨年約900名でしたけれども、今年は1,150名ほどですので、全体が減っている中で増加はしておりますけれども、占める割合は大変小さいという状況は変わっておりません。
 それでは、私の資料、資料7でございます。これは本日の議題と直接は関係いたしませんが、この一年間、日本技術士会において特別委員会を設けまして、総合技術監理部門と選択科目について検討してまいりました結果を、私、会長として答申を受けましたので、今後のこの委員会の議論の参考としていただきたいということで報告させていただきます。
 検討の背景と経緯が1番に書いてございますけれども、ここは時間の関係で省略させていただきます。
 2ページを開けていきますと、これが提言の骨子でございます。三点ございまして、1番目が総合技術監理部門の位置付けの明確化及び試験方法の変更ということでございますが、総合技術監理部門については、20部門の第二次試験の合格を総合技術監理の受験要件とするよう制度改正すること。上記の改正に伴い、総合技術監理部門の選択科目は廃止し、試験日を現行の2日から1日に短縮するとされています。
 後者は少し分かりにくい点もあるかと思いますが、総合技術監理と言う以上は、細かい選択科目というのは不要ではないかということが一点です。それから、現在21番目の部門ということですので、20技術部門と併願できるようになっておりまして、このことによって試験が2日間にわたるということもありますので、試験の運用の効率化の面からも、このような改正をお願いしたいということでございます。
 2番目は選択科目の再編でございますが、これは産業界の動向に合わせて、現在ある選択科目をどのように考えるべきかということで議論してまいりましたが、次のページに別表がついております。総括表と書いてございますが、これを見ていただきますと、まず一番左側に部門が20部門ございます。その次に現行の選択科目がございます。右下が合計ですけれども、96の選択科目数となっています。
 いろいろ議論した結果、例えば機械部門で申し上げますと、現在の「機械設計」、「材料力学」、「機械力学・制御」、これを「エネルギー変換機械」ということで一つにまとめてくくるということ、それから名称も変更いたしまして、現在の10科目を7科目に3科目減少する。例えばこのようなことを日本技術士会の中の各部門にお願いしまして、大変真剣な議論をしていただきました。その結果でございますが、右下にございますように、合計で86科目に10科目減少するという提案を受けております。
 各部門の中の細かい科目の変更については省略させていただきますが、もう一枚開けていただきますと、この科目の中にはどのような内容を含むかということが記述されております。これについて、先ほど申し上げました機械部門で申し上げますと、新しい「エネルギー変換機械」というところで、このような内容を含むということを記述させていただきましたので、名称が変更になっていない選択科目においても、内容については現在の産業動向に合わせた変更を行っております。
 本編の文章の方に戻らせていただきますが、提言の骨子の2)の1番目のポチは、今、申し上げたとおりでございます。2番目の点でございますが、受験申込者数が極端に少ない選択科目については、技術士分科会でもある目安を設けて検討するということになっておりますので、日本技術士会としてもその前提の下に、今後十分議論を行うということにさせていただきました。
 それから、出題数について、解答数を2倍程度とするということが試験制度の変更でうたわれておりますけれども、このあたりについては試験制度による出題の動向、選択科目の再編状況を見て、場合によっては少し増やすということも御検討いただきたいということでございます。
 それから、3番目は少し具体の話になりますが、環境部門と、例えば衛生工学部門の中に「大気管理」、「水質管理」という似たような部門がございますが、これについて検討しまして、そこにあるような整理が必要であるということを書かせていただきました。あと、資源工学部門のところについても同様でございます。
 以上、今後の検討の参考にしていただくとともに、この内容については法改正を伴わなくても実施できる内容ですので、できるだけ速やかに改正の方向で御検討いただければ有り難いということでございます。
 資料8でございます。技術士の継続的な資質向上(CPD)についてということで、私の方から提言させていただきます。
 日本技術士会におけるCPDの実施状況と登録の現況につきましては、別紙2に最近のデータとして収録いたしましたが、前回報告の内容と大きな変更がございませんので、説明を省略いたします。
 それから、2番が関連する学協会におけるCPDの現状でございますが、こちらについても前回報告の内容と変更がございませんので、省略させていただきます。
 それから、3番、CPD登録の活用状況については、前回報告いたしましたように、国土交通省の建設コンサルタントの選定の中で技術者評価ということで、CPD登録記録を求めることができるとされておりますけれども、まだその活用は限定的であるということについて、前回御報告させていただいたとおりでございます。
 それで、今日は4番と5番のところを新たに書かせていただきましたけれども、CPDの課題ということでございますが、まずCPDの内容につきまして、大きな課題として、今、議論されております技術士のキャリア、あるいは職業に応じた技術士に求められるCPDの内容といったものが明確でないということです。
 それから、別途カラーの技術士CPDという冊子をお配りしておりますが、そこを開けていただきますと、これは日本技術士会で行っておりますCPDの内容について、左側の部分がCPDの課題ということで、どのような内容を受講すべきかということを1番の倫理から書かせていただいております。
 技術士の登録の内容を見ますと、この中で最も多いのはAの4番の技術動向並びにBの1番の専門分野の最新技術、こういったところの登録が多くなっております。例えば倫理であるとか環境であるとか安全であるとか、こういったところを受講する方が少ない、あるいは受講機会の提供も少ないという状況でございます。
 右側のページはCPDの形態、どのような形でCPDを受けるかということでございますが、1番に講演会等の受講と書いてございますが、ここが最も多くなっておりまして、それ以外の企業内での研修であるとか、あるいは公的な技術資格の取得であるとか、こういったところは限定的な登録状況でございます。
 本編に戻りますけれども、4のマル2、マル3というところが、今、私が申し上げましたところでございます。
 マル4は、先ほどのマル1とも関連いたしますが、総合技術監理部門に対するCPDというのも一般の技術士と全く区別をしておりませんので、このあたりも課題であると言っております。
 それからマル5ですが、CPDの活用については、先ほど申し上げましたように、行政、産業界における活用がほとんど進んでいない。
 マル6はCPDの受講機会でございますが、現役世代、分かりやすく言いますと、忙しい人ほどCPDが受けにくいのが実態でございます。あるいはマル7では地域であるとか海外の方に対する受講機会も少ないとされています。
 それからマル8では関連する学協会、あるいは大学等の教育機関との連携が十分ではないということでございます。
 それから、登録確認システムでございますが、マル9ではCPDの登録システムも、日本技術士会を含む各団体でウェブの登録等が充実してきておりますけれども、それぞれ個別にシステムができておりまして、連携がとられていないということが課題としてあります。
 それと、最も大きな課題ですが、マル10では義務化された技術士CPDを確認するというシステムができていないので、特にCPDをやっているかやっていないかということと、技術士の資格との関連は、今、全く確認されていないということでございます。
 このような課題を踏まえまして、CPDの目指すべき方向ということで、5点書かせていただきました。
 まずマル1は、今、議論されております技術士のコアコンピテンシーとキャリア形成に対応した技術士CPDプログラムの構築が必要であろうと思っております。特に新たな総合技術監理部門の構築においては、所要のCPDを受験要件とするなどの検討が必要ではないかと思います。
 マル2ですが、誰でもどこでも技術士CPDが受講できる受講機会の拡大と均等化。そのためには関連学協会、大学、教育機関等との連携、あるいは企業及び自己学習におけるCPDの充実と促進を図ることが必要であると思います。
 それから、マル3ではCPDを行政における入札制度、あるいは産業界における人事システム等に活用促進することを進めて、このCPDの実施と登録の実効性の確保を図るということ。
 マル4では、CPDの質の担保を含めたCPD登録システムの改善と関連学協会の登録システムとの連携を図る。
 マル5で、CPD記録を基にCPD実施状況が把握できるシステムを構築し、技術士全体の資質向上及びその活動の施策に反映させるということを書かせていただきました。
 このような方向を検討するに当たって、是非この委員会を通じまして、他の学協会、団体のCPDの登録状況であるとか、あるいは海外、特に先ほど議論にありました米国であるとか豪州などの海外のCPDの実施状況等についても、実態調査をしておく必要があるのではないかと考えております。以上でございます。

【池田主査】 どうもありがとうございます。
 それでは、何か事実確認の質問がありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、最後に私の方から、土木学会のCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)のヒアリングを行いましたので、それについて簡単に御紹介したいと思います。
 もともと、これは最後のものを見ていただきますと、土木技術検定試験という名前になっていまして、これは大学生とか、主に学生が受けるものが多いんですが、若手の技術者も受けるということになっています。これに受かると、たしか1年間研さんを積んで二級土木技術者と名乗ることができる。その上に一級、上級、特別上級というキャリアを積んでいけるようになっているわけです。CBTはこの土木技術検定試験というもので、最初に受けるものになっています。これは2011年に導入いたしました。
 それから、その次に書いてあるのは、これは試験業者に委託しています。問題はもちろん土木学会の方で委員会をつくって、そこでつくるわけですが、実施は試験業者ということになっています。2011年は121会場だったのが、2012年は163会場を使えたということでした。それから、受験者は事前に受けたい時間帯で、期限があったかと思いますが、ここに書いてありますね。受験希望日の2か月前から3営業日前までに申し込むということになっているようです。コンピューターで試験はランダムに出題されるということです。
 私はこれにも昔関係していたんですが、正答率80%を目標にしています。それに対して非常に低いものとか高いものはもう外していって、新しい問題を追加しながらレベルをそろえているという努力をしていると思います。100題出題なんですが、内10題は必須です。これは倫理等が必須になっていると思います。それから、あと50題を選択して選ぶということになっています。ですから90題のうちの50題を選んで、選択で回答するということのようです。
 受験料ですが、6,000円。これまでの実績で契約を1,000人で契約したんですが、実はCBTにしたところ受験者数が600人になってしまって、違約金を支払うことになってしまったので、結局土木学会にはほとんど収入がないんだという説明でした。
 どうして減ったかというのは少し後でお話ししたいと思いますが、学生は減ったんだけれども、逆に社会人は増加しているようです。
 学生の減少の理由ですが、これは学生らしい理由ですけれども、いつでも受けられるよという意識があるものですから、逆に受験しないことになる。それから、学生は一緒に行かないというのは、仲間で連れ立って受けるんだけれども、CBTだと個人なので結局行かなくなる。それから大きいのは、次ですが、以前は大学の24会場で行っていたんですけれども、これはペーパーテストでやっていたんですね。ですから、担当の会場の教員が、お前たちも受けろということで受験を勧めたんだけれども、それがなくなったので減ったのではないかと。そういう3つの理由が挙げられました。
 それから、社会人増加につきましては、忙しい社会人は受けられる時間帯が増加したので、受験機会が増えたというのが大きな理由のようです。
 合格率は未公表のようですが、かなり高い合格率になっています。
 検定試験の利用は建設大手4社、コンサルタンツ大手の4社、JR東はこの資格の有無をエントリーシートに明記することになっているようです。
 それから、次ページが土木技術検定試験受験者数の推移ですが、2009年まではかなり同じぐらいだったんですが、2010年に学生がどっと増えて、2011年には一気に減ってしまったという状況のようです。一方では下の方の四角印が、これは社会人なんですが、当初100人程度だったのが現在では300人を超えるぐらいということで、社会人の方は増えている。ところが学生は減っているということで、これをどのように取り入れるかというのは少し考えておかないといけないのではないかと思います。
 簡単ですが、以上で説明を終わりたいと思います。
 それでは、これまで資料について御説明を頂きましたが、御意見をこれから頂戴したいと思います。今日は「技術士のキャリア形成」というテーマで意見交換してまいりたいと思いますので、発言をお願いしたいと思います。

【岩熊委員】 この「土木技術者グレードガイドライン」というペーパーは主査からでしょうか。

【池田主査】 これは参考資料で、土木学会のホームページからとったものですが、これはやはりキャリア形成というのを非常に強く意識しているもので。

【岩熊委員】 そうですよね。

【池田主査】 学卒から始まって30歳前後、それから40歳台、それから50歳以上ということで、グレードが1から6までに分けられています。その中で技術者像とか、それからやはり御質問が多いのは、自分はこのあたりのクラスだけれども、どこで相当する試験を受ければいいでしょうかという御質問が結構ありますので、これは書き出したものです。官庁、それから民間、それから教育について主に書いていると思います。
 それから、その下に土木学会の技術者資格について、二級から一級、上級、特別上級ということで、基本的に見ると技術士が目指している30歳から35歳というのは、一級技術者ぐらいかと。それから総合技術者になると、上級から特別上級ぐらいが相当しているかと思います。
 あと、下の方に資格に要求される専門的能力とか、あるいは受験資格ですね。これは以前は土木学会の会員とかそういうのがあったんですが、最近はもうそれを外しまして、誰でも受けられるようになっていますので、経験年数で大体決めているということです。
 それから、実務経験年数は、下に大体の目安を書いているということで、活用状況がそのあと、下に書かれています。これは国土交通省等も比較的最近利用されるようになりましたので、特に上級の技術者は国土交通省の方々も結構受けられているようです。以上です。

【内村委員】 池田主査、よろしいですか。

【池田主査】 はい、どうぞ。

【内村委員】 岸本委員と岩熊委員の御説明を拝聴いたしまして、2点申し上げたいと思います。まず1点目は、岩熊委員の資料6の3ページの最後のくだりですけれども、この3つのアコードと3つの職種の定義とプロファイル、運用の考え方はそのまま必ずしも日本にはなじまないということを十分考慮すべきだということは、私もまさにそのとおりだと思っております。エンジニアであるとかテクニシャンであるという区別が、我が国の場合は非常に不明確な中で書かれているPCについては、なかなか日本にはなじみにくいといいますか、分かりにくいという観点があると思っておりますので、是非これを技術士に当てはまるような形で具現化する必要があるんだろうと思っております。
 その一つの例として、先ほど池田主査がお示しになりました土木技術者のキャリアプランに応じた在り方というのは、これは土木技術者というので非常に限定的に書いてありますけれども、こういったものを技術士制度においても、一つでまとまるのか、少し分野別に整理するか、あるいは職業別に整理するかということはありますけれども、このようなものを今後議論していく必要があるのではないかと思っております。これが1点目でございます。
 それから、2点目は岸本委員の御説明とも関連いたしますけれども、グローバルスタンダードといいますか、欧米においては技術士相当の資格になるためには、必ず大学、工学教育を受けて認定を受けた工学教育を出なければいけないということで言われておりまして、日本の技術士制度はそうでないルートが残っている。むしろ、今、そちらがある面で主流になっている。第一次試験経由ということですね。非常に異質であるという指摘を受けていると聞いております。
 ただ、現実にJABEE制度が全ての工学課程に適用されているわけではないという現状とか、あるいは日本のこれまでの社会的な成り立ち、非常に平等であるというようなことも含めて、そこを踏まえると、やはり何らかのそういうルートは残しておくべきだろうと思っておりますので、その中で第一次試験の在り方というのを議論していただければ有り難いと思っております。

【池田主査】 どうもありがとうございました。これ、両方とも関連していますね。

【内村委員】 そうですね。

【池田主査】 結局、日本の場合は社会的にテクノロジストだとかテクニシャンとか、そういうのがはっきり区別されていないですよね。技術士だとこれはエンジニアに間違いないわけで、ここはやはりエンジニアに絞っておいた方が、それまで議論し始めると拡散してしまうので、技術士という観点でキャリアパスをどう考えるかということを議論してはどうかと思います。そういうことで、皆さん、どうでしょうか。

【中谷委員】 ちょっと質問を。今回はその土木技術者に関する認定試験というものを紹介していただいたんですけれども、この技術士に関していうと様々な分野がありますが、それぞれの分野でこういった資格試験、認定試験というのは提供されているものですか。例えばこの土木技術者のグレードガイドラインというのがありましたけれども、例えばグレード1、2、3、4というものが設定されていて、それぞれについての認定試験というようなものはあるんでしょうか。

【池田主査】 ほかの学会は、個別のはあるんですけれども、機械はお持ちですよね。電気もたしかお持ちですね。個別ですよね。

【岸本委員】 そうですね。例えば機械系では、例えば,計算力学技術者の資格認定がありますが、計算力学に分野を限っていまして、土木学会のように全体を包括するようなものは存在しておりません。

【中谷委員】 情報処理の関係ですと、ちょうどこのグレードの1から6に相当する7段階のキャリアパスというのが設定されていまして、実際にもう既に試験が行われていて、かなりの数の試験認定者というのが出ているんですね。ただ、その現状の試験が提供しているレベルというのは、この土木技術者のグレードで言うと多分グレード3、4ぐらいのもので、ちょっと対応関係を見てみたんですけれども、技術士というともうちょっと上のレベルの、情報処理ですと7段階に分かれていまして、技術士だと多分5、6、7ぐらいのランクになるんですね。そうすると、大学でJABEE認定しました、第一次試験免除の資格を得ましたという、その人たちはキャリアパスとして次には第二次試験を受けるというルートが設定されますけれども、実は情報処理分野の技術者ということになりますと、いろいろな分野からこの業界に入ってくるんですね。それで、彼らはどうなるかというと、情報処理技術者試験というのを受けていくことになるんです。ところが、その情報処理技術者試験でこのグレードの1、2、3、4というグレードに相当するような試験を受けても、技術士の試験との連携がとれていないために、また第一次試験を受けなければいけないという状況になっているんですね。
 だとすると、様々な分野でもしもそういう資格認定制度というのがあるのであれば、第一次試験との対応であるとか、第二次試験との対応とか、第一次試験との対応がメインになると思いますけれども、その辺の対応関係というのが必要になるんじゃないかと思うんですけれども、そういう検討というのはいかがでしょうか。その情報処理技術者試験との対応関係というのをちょっとつくってみたので、次回はその資料を準備したいと思いますけれども。

【池田主査】 なるほど。

【岩熊委員】 情報処理のグレードの高い人であっても、技術士を受けようとすると第一次試験から受けなくてはならないのですか。

【中谷委員】 そうですね。現状は、はい。

【岩熊委員】 やはり情報処理の資格を持っている方が技術士を紹介するところに来られて、それだけ持っているのにという話をしたら、一つは第一次試験から受けなきゃいけないということと、もう一つは情報処理のそういうのは飽くまでスキルであって、やはりエンジニアとしてのステータスから考えると、次は技術士を受けたいと思っているというお話を伺ったことがあります。

【池田主査】 多分そうですね。土木学会以外の学協会のはスキル中心ですね。ですから技術士はそれだけではないので、技術者全体、プロフェッショナル・コンピテンシーというのを重視していますので、その部分のうちのスキルの部分は多分重視して資格認定されているんだと思うんですね。だからちょっと考え方が少し違っている。

【岸本委員】 よろしいですか。先ほどの内村委員の御意見についてですが、技術士の第一次試験の位置付けのことですけれども、一つはエンジニアリング系の四年制の学士課程を終わったかどうかについてもう少し明確にした方がいいんじゃないかということと、どんな道筋でも技術士になれるということを少し区別しておいた方がいいのかと思っているんですけれども、まずその点で、四年制のエンジニアリング課程を経たかどうかというところに対しての位置付け。
 もう一つは、高専の学生たちが二年終わった段階で社会に出て、彼らの技術士を目指すパスをどう用意するのかというようなこと。もう一つは、高等学校の中で工業の勉強をしてきた人たちがどうなのか。そういうパスと、それとは全く別のパスの人たちと少し区別していかないと、外から透明性がないのかなということで、四年制以外の大学のエンジニアリング課程を経ていない人たちへの取扱いというのを、もうちょっと明確化していかないといけないのかという観点でやったらどうかと思っています。

【岩熊委員】 そうですね。

【池田主査】 つまり、基本的にはグローバルスタンダードはそうしてやっていかないといけないということですね。

【岸本委員】 はい。

【池田主査】 そうすると、第一次試験といいますか、今は第一次試験と称しているわけですけれども、それをどうやって制度設計をしていくかということが視野に入ってきますね。

【岸本委員】 はい。

【池田主査】 そうすると、どういう点を第一次試験、検定試験とかそういう名前があるかもしれませんが、どういう観点が重要だと思われますか。そこのあたりの方向性をやはり議論しておかないと、制度設計できないので。

【岸本委員】 やはり、工学系のエンジニアリング教育を受けた学士課程の卒業生と同等かどうかを第一次試験で検定するというのが適切なように思うんですね。

【池田主査】 今はそれだけではなくて、それにプラス技術者としてのいわゆる知識というか、スキルというか、そういうものを第一次試験で少し問うことになっていますよね。経験をかなり…。

【岸本委員】 そういう意味では、第一次試験で経験を問うということになっていますが。

【池田主査】 問うことになっていますよね。そこをはっきり割り切らないといけない。

【岸本委員】 だからその経験なのか、先ほどのエンジニアリングデザイン能力だとか、そういった意味では、素養を問うということになると、余りその経験に立脚しないような問題の出し方、先ほどAHELOのところでもそこがすごく難しいんですけれども、そこをやっておく必要があるのかなと思うんですね。

【池田主査】 土木学会はそのあたりはっきりしているんですよ。検定試験は、大学のエンジニアリング課程を修了するだけの力があるかどうかということを検定することになっていますね。ところが、この第一次試験は両方がちょっとまたがっているので、そこのところをやはりはっきりさせないと。

【岸本委員】 はっきりさせた方がいいと思う。

【岩熊委員】 そうですね。

【池田主査】 これ、前にも十何年前の改定のときにもその議論がありまして、でもそのときはやはり現役の技術者がたくさんいらっしゃるので、そちらの方も配慮しましょうということで今のような形になったんですが、そのあたりを今後どうするかということでしょうね。

【岸本委員】 そうですね。はい。

【池田主査】 司法試験の予備試験はどうなっているんでしょうか。司法試験の予備試験、普通はあれは法科大学院を修了してなるというのが普通ですよね。ところがそれを修了できない人がいますよね。そういう人は予備試験を受けて、それから司法試験を受けるという形になっていると思うんですけれども、予備試験の中身っていうのはどうなんですか。これは大学院修了の中身を問うことになっているのでしょうか。調べてもいないんですけれども、そのあたりどうなんでしょうか。法科大学院修了と同等ということを、多分認定しているんじゃないかと思うんですけどね。

【岸本委員】 そうでないと、本来は制度設計として適切でないように思いますので、そこの辺が具体的にどうなっているかについては調べてみないと。

【池田主査】 JABEEとそれから第一次試験との整合性が、そのあたりがちょっとそごがあるんじゃないかと私は思うんですね。JABEEは新しくできた制度だし、第一次試験はやはり過去の歴史を背負っていますので、昔のものがかなり残っているということになっているんじゃないかと思うんですけれども、そこをどういうふうに考えるか。

【岸本委員】 あと、ちょっと話がそれるかもしれませんけれども、技術士の資格の場合は、大学を出てからですけれども、実務経験をしながら更に能力を高めるというフェーズがあってから、そこで最終的に技術士になれるかどうかの試験をしているわけですので、その第一次試験で、ちょっと言い方が変かもしれませんけれども、大学の卒業生に求められるものを全てそこでチェックしておく必要があるのかどうかという。やはり大学卒業して、その時点ではなかなか試験で全てがはかれるわけではないですよね。なので、第一次試験ではかること、まだこれが予備試験になるかどうか分かりません。そこと、最終的に技術士の試験ではかることを、どう明確化してやっていくかということが、なかなか制度設計のところでは工夫が要るのかなと思うんですね。
 例えばエンジニアリングデザイン能力というのを多肢選択式できちんとはかろうとすると、本当に我々としてそこがはかれるのかどうかという問題になりますので、そこについては大学での教育をある程度信頼していただいて、更に実務を経た上でそのところを的確に面接なりいろいろな形で調べるとかですね。

【池田主査】 予備試験は、あれは面接をやるんでしたっけ。

【岸本委員】 面接はやりませんね。

【池田主査】 いやいや、司法試験というか司法関係で。

【小林係長】 ちょっと詳しく調べますので。

【池田主査】 何か面接をやるようなことをちらっと書いてあったので、多分そのところちょっと心配しているんじゃないかと思うんですね。多肢選択だけじゃなくて。でも、それをこの第一次試験のところで面接なんかやり始めたら、これは大変なことになるので、それはちょっと無理でしょうね。
 それから、その第一次試験がこういう国際的なコンピテンシーをきちんとはかるような試験にしないといけないということだと私は思うんですね。

【内村委員】 今の岸本委員のお話を整理すると、一つはやはりグローバルスタンダードから言うと、工学認定教育、いわゆるJABEEを卒業した方が技術士を受けるというのは、これはメインルートであって、そうでない工学課程を卒業した方、この中には高専とか工業高校が含まれるかもしれませんけれども、そういった方に対する第一次試験の付加と、それと全く別な、例えば技術士には実は弁護士さんという方もいらっしゃるんですけれども、そういった方が受けていただくルートと、大きく三つある。今、法科大学院がいろいろ課題を抱えていて、どちらかというと予備試験の方にシフトしているというようなことが、この技術士試験の中で起こってはまずいと思っていますので、そういうバランスを考えた制度設計になるのかと思いますけれども、大体そんな考えでよろしいんでしょうか。

【岸本委員】 そうですね。

【池田主査】 いや、司法試験は結構大変で、大学院へ行かないといけないので大変なんですが、一方ではJABEEはどんどん受審校が増えてくると、当然それがメインになると思うんですね。ですから司法試験とはちょっと性格が違うんじゃないかという気がするんですけれども。技術者になるには、基本的には大学はとにかく卒業しないといけないので。

【岸本委員】 現在でJABEE認定プログラムの修了生の累計は18万人ぐらいに達していますね。

【池田主査】 だから努力していただかないといけない。JABEEの受審校をどんどん増やしていこうということではないかと思います。ところが、やはり学生は自分の努力ではできないところがあるので、学科がそれを受けていない場合には、当然そこに所属している学生はJABEEの認定を受けられませんよね。ですから、そういう人たちにはやはり門戸を開いておかないといけない。

【岸本委員】 はい、そうですね。

【池田主査】 今、4分の1とおっしゃった。

【岸本委員】 4分の1ぐらいですね。

【池田主査】 だから、残りの4分の3はチャンスがないわけですから。

【岩熊委員】 前回、教職のような考え方を、JABEE認定課程でなくても、ある科目を履修することによってその同等の受験資格を得られるというような話がありました。教員試験を受けるためには、この科目をやらなきゃいけないというようなものです。

【池田主査】 ええ。たしかそういう発言がありましたね。

【岩熊委員】 そういうのも一つあるとよいと思いますが。

【池田主査】 ですから、第一次試験で経験を問うかどうかということだったんですけれどもね。経験も踏まえたような問題を出すべきかどうかということだと思うんですね。経験を踏まえたということと、多分いわゆるIEAで言っているようなデザイン能力とか、そういうのとはまたちょっと異質、完全にオーバーラップしていませんよね。

【岸本委員】 そうですね。

【池田主査】 ですから、必ずしも経験を問わないとデザイン能力が身に付かないかというと、そんなことはないと思うんですね。中身はやはり工夫して、できるだけIEAで言っているようなものがはかれるような試験にしていくと。社会人が受けやすいような制度にしていくというのが大事なような気がしますね。
 CBTは今のところどうでしょうか。

【岸本委員】 コンピューター上でテストをする方法ですね。AHELOの方でも二次調査はCBTで実施しましたが、先ほど説明した記述試験のところで、解答がきちんと書かれていないものが多くありました。というのが、CBTでは手で書くよりは、受験生に取って面倒だったようなところがありまして、そのデザイン能力を本当にはかろうとしたときに、上手にシステムを作らないといけないように思います。

【池田主査】 つまり、そういう能力をはかろうとすると、記述式の部分もある程度ないといけないということでしょうか。

【岸本委員】 はい、そうですね。例えば、表をつくらせるとか図を描かせるというのは、今回AHELOではできなかったんですね。それはコンピューターの制約があるため、出せる問題も限られてしまうという欠点も出てきます。CBTをやるときには事前調査を十分に行う必要があるように思います。

【池田主査】 土木学会のは本当に学部の学生が受けて、それでそれをスタートという位置付けにしていますので、大学で学んでいることを本当にちゃんと理解しているのかどうかということが骨子なので、その後経験を少し積んで二級土木技術者とか、あるいはその試験を受けて一級、それから上級、特別上級というように段階がかなりありますので、そこで担保をしていこうという発想じゃないかと思うんですね。

【福山主査代理】 少しよろしいですか。

【池田主査】 はい、どうぞ。

【福山主査代理】 今までの議論を聞かせていただきながら思っていることを申し上げますと、基本的に資料3の5ページにありますように、技術者のキャリア形成イメージというのをどう位置付けるかということじゃないかと思うんです。

【池田主査】 そうですね。

【福山主査代理】 このグラフにありますように、入り口が技術者教育の段階です。一つのフェーズとしてきちんと位置付ける必要があります。次は業務経験を積む段階です。技術士の数を増やすということからいうと、経験年数を問うというのは、結構若手の方に対して大きな障害になっていると思います。先ほども経験年数を問う必要があるのかという議論がありましたけれども、特に第一次試験は思い切って簡略化するとか、対策が必要なのかなと思います。
 次に、技術士の最後に行きつく姿が上級技術士であったり、総合技術士であったりするわけですが、その間をどう設計していくかというのは、先ほど内村委員がおっしゃっていた会社の事情とか、職業とか、いろいろな種類で変わってくると思うんですが、これは幾つかに分かれてくるんじゃないかなと思います。
今、全体的に人数を増やすポテンシャルのあるところは女性技術士と若手エンジニアです。例えば、この一本の線の中に女性エンジニアのキャリアパスも含めていいのかというあたりも、1回議論する必要があるんじゃないかと思います。今、女性を管理職を増やそうという動きがありますが、日本における女性の役割分担が低い状態でこのキャリアパスに女性の流れを書くと、現実とはかなりかい離してしまうんじゃないかなという気がします。
 このキャリアパスの入り口も何種類かあると思うんですけれども、行きつくところのイメージを何種類か描いてみて、日本における技術士の最後の姿はここなんだというのが提示できれば、その途中のルートの設計とかは比較的簡単にできるのではないかと思うんです。そのために、先ほどの土木学会の資料を参考にするとか。

【池田主査】 ええ。これも少し役に立つかもしれませんね。

【福山主査代理】 ええ、そうでしょうね。

【池田主査】 私も福山主査代理の意見に実は賛成していまして、基本になるキャリアパスは示しておいて、いろいろなものを少しそれにつけ加えていくと、説明するというのをやると分かりやすくなるかと思いますね。今、私が感じるのは、最初の入り口のところがやはりなかなかハードルが高いと。第一次試験のところがですね。そこで経験を問うので、かなりハードルが高いという気がします。それからあと、JABEEと整合性がちょっとそこでとれていないと。
 その後、業務経験で技術士補とか修習技術者というのがあるんですが、それは、今、どの程度機能しているのか、そのあたりどうでしょうか。内村委員、どうですか。それで働くということはまずないですね。

【内村委員】 そうですね。技術士補については名刺に表示してもいいと書いてありますけれども、書いた方がいいという場合と、逆に言うとまだ技術士を取っていないということで書かない人もいると聞いています。

【池田主査】 若い人なんかは。

【内村委員】 実態としては余り技術士補という制度は活用されているとはちょっと言いにくい面があるかと思います。

【池田主査】 結局、技術士補とか修習技術者というのは、技術士の監督を受けながら研さんを積んでいこうという発想ですよね。そういう制度っていうのは、プロフェッショナルの部分でほかにあるのかな。医師はどうなんですかね。医師は、医師の国家資格を取った後、病院に行ったり何かするんですかね。

【岩熊委員】 研修ですね。

【池田主査】 研修医ですかね。
 修習技術者とか技術士補というのがどれくらいの実態になっているのか。

【内村委員】 そのあたり、岩熊委員の方が詳しいかもしれませんけれども。

【池田主査】 余り実質化していないんじゃないかという気がするんだけれども。

【岩熊委員】 技術士補は、結局、先生も御存じのように、2000年のときに技術士補に登録するチャンスがない人がたくさんいて改訂された。

【池田主査】 そうそう。それで修習になっちゃった。

【岩熊委員】 それで実務経験を積む、いわゆる二番目の経路ができたところで、普通に会社の中で技術系の人について仕事をして経験を積むというのが、ある意味スタンダードな考え方だと思うのですよね。ただ、分かりにくいものですから、質問はよくあります。

【池田主査】 例えばその技術士を目指して業務に励んでいる人が、技術士を目指すときに、技術士の方からいろいろアドバイスあるいはメンターみたいなものを受けられているのかどうか、そのあたりはどうでしょうか。

【岩熊委員】 男性の方は分かりませんけれども、女性はかなり苦労されていますね。

【池田主査】 メンター制度みたいなのがあった方が。

【岩熊委員】 と、思います。

【池田主査】 そうですか。これは、逆にこういう制度があるということが、かなりハードルを高くしているということはないでしょうか。

【内村委員】 そこの部分は、企業にお勤めの方にとっては目の前に技術士がたくさんいらっしゃるケースが多いので、ほとんど御苦労はないと思いますけれども、特に地方で小さな企業で技術士を取られた方というのは、周辺に技術士がいなくて、そういう指導をどのように受けたらいいかという御相談を日本技術士会に相談に来られるケースが多いので、そういう面ではお困りのケースというのも幾らかあるんじゃないかなと思っています。

【岩熊委員】 最近非正規雇用、大学の理工系を出ても非正規あるいは期限付の雇用になる場合が多々あるのだと思うのです。そうすると、いわゆる技術士にふさわしい経験が積めるかどうかというところも問題があるみたいな話はあります。

【池田主査】 そうですね。技術士の試験を受ける段階では、経験を問われますよね。

【岩熊委員】 ええ。

【池田主査】 経験を問われるので、そこでやはり何か一種のメンター制度があった方が基本的にはいいんでしょうね。

【岩熊委員】 そうですね。

【池田主査】 基本的にはいいんでしょうけれども、あとは、ここのあたりのところの制度設計をどうすればいいのかがちょっとまだよく見えてこないんですけれども。総合技術士に至るプロセスは、これはもう技術士を取ってプロフェッショナルになっているわけですから、あとはもうCPDで研さんをしていただくというのが基本じゃないかと思うんですけれども、技術士になる前は、まだ一種の見習みたいなところがあるので、そこは指導制度がひょっとすると必要なのかなという気もするんですけれどもね。そのあたりをCPDで置き換えられるのかどうか。

【斎藤基盤政策課長】 すみません。事務局から発言します。

【池田主査】 よろしくお願いします。

【斎藤基盤政策課長】 先日、福山主査代理の御紹介を頂きまして、日立の技術士会の皆さんといろいろお話しする機会があったんですが、その際に我々の方から、今、この制度検討特別委員会の議論として、若手がなるべく入ってきやすい制度の議論をしていますというような話をしたところ、やはり若手以前に、先ほどからの話もありますように、企業の中のベテラン技術者でまだ技術士をお持ちでない方が多数おられます。そういう方をまず引っ張り込んで、そういう方が、「君たちもやりなさい」というエンカレッジをしてくれると、若い方も増えてくると。これは先ほどの指導体制にもつながる話だと思いますが、そういう御意見がありました。
 その際にベテランから見ると、やはり一つはその第一次試験で大学学部レベルに立ち返ったような勉強をするのはなかなか大変だということ。それは多分、その試験を受けるだけの時間がとりにくい。それは物理的に受験する時間がとりにくい、勉強する時間がとりにくいという見方と、もう一つは第二次試験を考えた場合、要するにある程度いい線まで行ったんだけれども、最後口頭試験で駄目になった場合というと、また一からやり直しをするとなると、これまた大変ハードルが高くて、1回、2回ぐらいはチャレンジするんだけれども、3回以降のチャレンジは実質的になかなか難しい、そこで諦めてしまうという話がある。
 例えば複数年にわたって、一部の科目については合格したのでそれは有効で、2年、3年かけて面接、口頭試験の合格までたどり着くという仕組みがあるといいんじゃないかなとか、そういういろいろな御意見もございました。非常に参考になる。ほかの税理士試験とか幾つかの試験では、何年かにわたって積み上げるという仕組みもあるように承知をしていますけれども、そのあたりもちょっと御議論いただくと。若手ばかりの議論ではないのかなという気がしました。

【池田主査】 そういう議論は十何年前にもあったんですね。年配者をどう救うかという議論があって、それで今の制度に落ち着いているんですけれども、それをいつまで続けるかと。
 私自身は、これからの日本の科学技術の発展というのを考えると、やはり若手に中心を置いていった方が、私はいいんじゃないかという気がするんですね。年配者を救う制度も必要なんだけれども、ただ、やはりベースは若手を中心に考えておいた方がという気がいたします。

【内村委員】 そのあたりはJABEE制度との関係も考えないといけないんですが、JABEEはできてまだ十数年ですが、これが20年、30年たつと、JABEE認定課程修了者のベテラン技術者という方が、同じような受験資格があるかという議論が恐らくこれは出てくるんじゃないかと思うんですね。
 そうしますと、そのときに少し何か所要のプラスアルファ、これぐらいのことはもう一回第一次試験でやって受けるということは、ひょっとしたらあり得るのかもしれません。そうすると、今言った高齢の技術者でベテランの技術者の方にも、その部分だけ同じようなことをやっていただいて、第二次試験を受けるチャンスがあるというのは、一つの在り方としてはあるのかという気もします。

【池田主査】 課長がおっしゃった全部やり直さないといけないというのは、これはなかなか大変だろうと思うんですね。ですから、筆記試験と面接とは例えば分離して、筆記試験の方が受かっていれば、面接は何回か受けられるという制度にした方がいいのかもしれませんね。

【岸本委員】 そうしたら第二次試験の在り方ですね。

【池田主査】 ええ。

【岸本委員】 思いつきの範囲になってしまうかもしれませんけれども、第一次試験を予備試験のような形に位置付けた場合、必ずしも筆記試験で見るだけではなくて、例えばベテランの方だと講習を受けてもらって、その講習のレポートだとか、いろいろな形で試験ではないような、第二次試験の受験資格を持たせるような制度設計というのもあるかなと思います。
 というのは、かなり業務を積まれた方で、基礎的な知識といっても学部卒でやるものと同じ試験ではちょっと厳しいのかなというのと、適切ではないかもしれないので、その辺、資格試験という意味で予備資格を行うという意味では、別の制度設計もあるかなと思うんですね。

【池田主査】 そうすると、二本立てになるということ。

【岸本委員】 はい。

【池田主査】 そういう年齢、ある年齢を境に。

【岸本委員】 どちらかで希望するとかね。要するに、CPDをちゃんとやっていると、その知識をどう問うかという問題だと思うんですよね。

【岩熊委員】 すみません。その日立のベテランの方は、第一次試験は何が大変だとおっしゃったんですか。

【池田主査】 数学とかやるのが大変なんでしょう。

【岩熊委員】 数学じゃなくて、いわゆる工学基礎ですか。基礎の方。

【池田主査】 数学、いわゆる工学基礎もそうでしょうけれども、もっと前。数学とか物理、それはもう免除なんですね。

【岩熊委員】 それはないですね。

【岸本委員】 やはり専門でしょうね。工学基礎でしょう。

【池田主査】 工学基礎だ。

【岩熊委員】 工学基礎の方ですか。

【池田主査】 数学とか物理とか、ああいうのは免除になるんですね。

【福山主査代理】 はい。

【岩熊委員】 それが大変だ。

【池田主査】 工学部を卒業していれば。

【岩熊委員】 そこが大変。工学の基礎のところが大変。

【池田主査】 でもね…。

【斎藤基盤政策課長】 そこは、ちゃんと学部教育をしっかりと振り返れば大丈夫かなという意見もありました。

【池田主査】 何回もこれから過去問を使えるようにしたので、そこは自分で学習できると思うんですよね。

【岩熊委員】 ええ、そうだと思います。

【池田主査】 以前よりは大分よくなったんじゃないかと思うんですけれども。

【斎藤基盤政策課長】 そうだと思います。

【池田主査】 第一次試験は、今、かなり過去問を使うでしょう。

【日本技術士会】 はい。

【池田主査】 それだけを本当にやっていただければ。

【岸本委員】 そういう意味では、焦点を絞って勉強するということをすればいいということかもしれませんね。

【岩熊委員】 そういうことが浸透してくれば、そこをポイントでやっていただけると。

【池田主査】 それは、ベテランの人にとってもかなりハードルを低くしたんじゃないかと私は思いますけれども。

【岩熊委員】 私もそう思います。

【中谷委員】 ちょっと質問ですけれども、要するに第一次試験を免除するであるとか、あるいはもうちょっと勉強してもらうとか、第一次試験を受けてもらうというのは、第一次試験が合格したその技術士補という方だと思いますけれども、それは要するに何を知っていて、何ができているのかという、そこのところの方の話がないと、ただ試験をこうしましょうとか、じゃあ、こうしてやりましょうとか…。

【池田主査】 いや、それはおっしゃるとおりなんです。だからそれはやはり国際的なスタンダードで言うと、IEAのGraduate Attributesですか、そこのところがしっかりしていればよろしいということになりましたのでね。

【中谷委員】 ですよね。だとすると、工学系の大学、ですからいろいろな入り口があるというお話が先ほどありました。そこをまずちょっと整理してみる必要があると思うんですね。

【岩熊委員】 そうですね。

【中谷委員】 工学系が、例えば物理とかの試験はいい。じゃあ、理学系はどうなんですか。

【池田主査】 いや、理学系もいいんですよ。

【中谷委員】 理学系もオーケーですか。

【池田主査】 ええ。

【中谷委員】 じゃあ、文系だったらもう全部最初から勉強しないといけないと。

【池田主査】 そうそう。それはもうこの前整理した。

【中谷委員】 じゃあ、これは20年選手でも大したことないような気もするんで、まあいいかなと思うんですけれども。

【池田主査】 それはだからなくなっている。いや、数学とか物理の共通科目はなくしたんです。工学基礎に全部繰り込んじゃって、一部を入れて、…。

【中谷委員】 勉強してもらう必要はありますよね。やはり基礎知識ですよね。

【池田主査】 免除する人はいなくなったんです。免除者はいなくなった。

【岩熊委員】 基礎知識は、やはり再確認していただかないと。

【池田主査】 文系の方も理系の方も、同じ試験を受ける。

【岩熊委員】 そうですね。基本的なところは。

【池田主査】 技術者になるんですから、同じ試験の内容を答える。

【中谷委員】 そうですね。みんなやはり譲れないという感じがしますよね。

【岸本委員】 そうすると、そこの問題はある程度現状でそんなに大きく変えなくてもいいという認識だとすると、やはり第二次試験のところに合わせて、もう少し議論を深めた方がいいということでしょうか。

【池田主査】 そう。だから、第一次試験は出題内容を少し変えるということでしょうね。経験を問う問題がかなりあるので、そこのところはもういいかと。

【岩熊委員】 そうですね。

【岸本委員】 大分減ってきているとは思うんですけれどもね。

【福山主査代理】 私はやはり全体的に、この若い方が技術士の資格を取りやすい仕掛けを何かつくっていく必要があると思うんですね。

【岩熊委員】 仕掛けね。

【福山主査代理】 経験というのが一つの拘束条件になってしまうと、なかなかハードルが高くなりますね。

【池田主査】 経験問題があるとですね。

【福山主査代理】 ええ。

【池田主査】 その後の業務経験を問うわけですから、そこで経験を積めばいいわけですよね。

【福山主査代理】 ええ。そこでしっかり問うと。

【池田主査】 ええ。第二次試験でそれも入れて、技術者というのは当然経験がないとできませんから、ちゃんとした技術士の試験の方ではそこはきちんと問うということですね。上級か総合技術士はそれを更に深めていって、それからもう一つ議論しておかないといけないと思うのは、総合技術士を一本でいくのか、あるいは大くくりの部門でいくのかという、そこの議論はまた必要だろうと思うんですね。そこのところが、やはり制度設計する上で大事になってくるんじゃないかと。専門試験を課さないという提案だったですね。日本技術士会の方がそうだったですね。

【岩熊委員】 専門科目ですね。

【池田主査】 専門科目の方は。

【内村委員】 せめて専門科目は廃止して、部門は一本だけにしたらということです。今の池田主査の御発言は、更にそれをもっと大くくりしたらとの御意見と思います。

【池田主査】 そこのところはちょっとはっきりしなかったので、それは大くくりぐらいでよろしいということですか。

【内村委員】 いえ、日本技術士会の特別委員会への諮問は、選択科目の在り方についてでしたので、部門については議論をしていただいていません。

【池田主査】 将来の技術部門を考えていくと、私は総合技術士というのを大くくりにしておいた方が、今後スムーズにいくんじゃないかという気はちょっとしているんですが。

【内村委員】 そこは是非この分科会の中で議論していただきたいと思っています。

【池田主査】 そのあたりの御意見を、やはり皆さんにお伺いする必要があると思いますね。

【福山主査代理】 私は当初私見で出しましたように、総合技術士は一本という感じの方がいいんじゃないかなと思います。会社で言うと上位の管理職若しくは経営層に関わるような人たちですから、仕事が違うかもしれないけれども、やる内容、考え方とかは同じなんじゃないかと。若しくは最小限に絞るということですね。

【池田主査】 そこのところ、部門の大くくり化にするか、一本で行くかというのは、ちょっと議論が必要ですね。

【福山主査代理】 そうですね。

【岸本委員】 部門で取られた技術士の方は、現状ではすぐに総合技術監理部門を取れてしまいますよね。受験資格が出てきますから。

【福山主査代理】 そうです。

【岸本委員】 だからそこのところが、やはり先に部門で技術士を取られてから、今度は何年間の実務経験があって。

【池田主査】 そうそう。多分違う能力ですから。

【岸本委員】 そういう新たな経験を積んでからのような制度設計にすれば、今のお話がうまく前へ。

【池田主査】 そうです。おっしゃるとおりですね。

【福山主査代理】 そうですね。そこは時間が必要なんですよ。

【池田主査】 やはり総合技術士の定義をしっかりさせておかないといけないと思うんですね。そうしないと、その経験を積む中でどういう能力を身に付けていくかということが分からないので。

【岸本委員】 そうですね。

【池田主査】 今のところは、総合技術監理部門が横並びですから、もともとの考え方は上へ置こうとしたんですけれども、抵抗があってできなかったので横並びにしちゃったんだけれども、もし上に置くとすると、そこでその間どういう能力を身に付けていただくかというのは、やはりはっきりさせておかないといけないですね。

【岸本委員】 しておいた方がいいと思います。

【池田主査】 そのときにもう一つ考えておかないといけないのは、総合技術士というものが国際的な整合性がとれるかどうかということですね。

【岸本委員】 今の段階でね。

【池田主査】 そのあたりはどうなんでしょうか。そのあたりについては、次回議論しますか。

【斎藤基盤政策課長】 次回は、今日、土木学会の非常に整理されたグレード分けと、それぞれに対応する資格なり技能、あるいはキャリアパスのイメージというのが出ましたので、それを、今日御質問があったような少しほかの情報分野とか、ほかの分野についてもやっておく。それから、女性についてというのは、これは新しい問題で、これこそなかなか画一的なモデルが書きにくいかもしれませんが、参考ケースみたいなものをお出しできれば、それを基に、今度は、国際的な目で見てどこが要するにスタンダードなのか。

【池田主査】 そうですね。

【斎藤基盤政策課長】 それは分野別、部門ごとの技術士のレベルでとるのか、あるいは総合技術士のレベルで目指していく。ここが制度設計上大きなポイントになりますし、下手に設計すると、非関税障壁ではないかとTPP交渉で突っ込みを頂く可能性もあるので。

【池田主査】 そうなんですね。そこのところをちょっと気をつけて。

【斎藤基盤政策課長】 そこを留意しながら、御議論いただければと思います。時期は未定ですけれども。

【池田主査】 どうもありがとうございます。
 次回はそういうキャリアパスの事例を出していただきながら、それを国際的な整合性を見ながら議論を進めるということにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後に事務局から何かありますでしょうか。

【小林係長】 議事録につきましては、後日事務局より皆様にお送りさせていただきまして、御了解いただきましたら、ホームページに公開することとさせていただきます。
 次回の日程につきましては、これから御予定をお聞きした上で決定させていただきたいと思います。

【池田主査】 大変活発な御議論、どうもありがとうございました。
 それでは、以上で本日の会議を終了したいと思います。


12時14分閉会

お問合せ先

科学技術・学術政策局人材政策課

(科学技術・学術政策局人材政策課)